JP4947749B1 - 化粧品基材及び該化粧品基材を含有する化粧品 - Google Patents

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Abstract

【課題】損傷によって毛髪表面の疎水性が失われて官能的特性が低下した毛髪表面を疎水化し、毛髪に柔軟性、保湿性、滑らかさ、艶やかさを付与する化粧品基材と該化粧品基材を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体であって、少なくともその陰イオン性官能基の一部がカチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤とイオンコンプレックスを形成しているペプチド又はペプチド誘導体からなることを特徴とする化粧品基材及び該化粧品基材を含有する化粧料。
【選択図】なし

Description

本発明は、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体であって、少なくともその陰イオン性官能基の一部がカチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤とイオンコンプレックスを形成しているペプチド又はペプチド誘導体からなる化粧品基材及びそれを含有する化粧品に関するものである。すなわち、本発明は、上記のような特定の界面活性剤とのイオンコンプレックスを有する特定のペプチド又はペプチド誘導体からなり、化粧品、特にヘアトリートメントなどの毛髪処理剤などに配合された際に毛髪に対して優れたコンディショニング作用を発揮する化粧品基材とそれを含有する化粧品に関するものである。
健康な毛髪表面には18−メチルエイコサン酸などの疎水性物質が存在し、それが毛髪の柔軟性やしっとり感、艶やかさや滑らかさなどの官能的特性に大きく関与しているものと考えられる。しかし、パーマ、ヘアカラーなどの化学処理やブラッシングなどの物理処理によって損傷した毛髪は、毛髪表面の疎水性が失われ、柔軟性やしっとり感、艶やかさや滑らかさなどの官能的特性が著しく低下している。そこで、それらの官能的特性の低下を改善する目的で様々な毛髪コンディショニング作用を有する化粧品基材が開発され、化粧品に配合されている。
毛髪コンディショニング作用を有する化粧品基材としては、毛髪への吸着力が強いという理由でペプチドやその誘導体が多用され、既にヘアトリートメントやシャンプーなどの毛髪処理剤に配合されている。それらの中でも、タンパク質を加水分解することで得られるタンパク質加水分解物(加水分解タンパク)やその誘導体が広く利用されている(特許文献1)。
ペプチドの誘導体としては、タンパク質加水分解物と脂肪酸をアミド結合させることで得られるアシル化加水分解タンパクが、タンパク質加水分解物の毛髪コンディショニング作用を高めた化粧品基材として開発され、多種の毛髪処理剤に配合されている(特許文献2、特許文献3)。
また、毛髪コンディショニング作用を有する界面活性剤としては、脂肪酸アミドアミンやモノアルキルトリメチルアンモニウム塩が一般的に用いられており、これらは損傷して疎水性が失われた毛髪表面を疎水化し、健康な毛髪の官能的特性に近づける目的で配合されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6)。
しかしながら、ペプチドやその誘導体は、毛髪への吸着力は強いものの、損傷して疎水性が失われた毛髪を疎水化する能力が弱く、一方、脂肪酸アミドアミンやモノアルキルトリメチルアンモニウム塩のみでは、損傷した毛髪への吸着力が弱いため、充分なコンディショニング作用を発揮することができないという問題があった。
特開2007−302615号公報 特開2004−196733号公報 特開2004−231517号公報 特公平6−45526号公報 特許第4247805号公報 特許第3981828号公報
本発明は、損傷によって毛髪表面の疎水性が失われて官能的特性が低下した毛髪表面を疎水化し、毛髪に柔軟性、保湿性、滑らかさ、艶やかさなどを付与する化粧品基材と該化粧品基材を含有する化粧品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基とカチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤とがイオン結合して形成するイオンコンプレックスが、毛髪への吸着力が高く、損傷によって毛髪表面の疎水性が失われて官能的特性が低下した毛髪表面を疎水化し、毛髪に柔軟性、保湿性、滑らかさ、艶やかさなどを毛髪に付与する作用が優れていることを見出し、それに基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体(以下、これを「成分A」で表す場合がある)であって、少なくともその陰イオン性官能基の一部がカチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤(以下、これを「成分B」で表す場合がある)とイオンコンプレックスを形成しているペプチド又はペプチド誘導体からなることを特徴とする化粧品基材を基本発明とするものであって、これを請求項1に係る発明とする。
上記発明の化粧品基材は、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基の少なくとも一部が成分Bの界面活性剤とイオン結合することで、イオンコンプレックスを形成する。そのため、上記のイオンコンプレックスを形成しているペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基が、ペプチド又はペプチド誘導体の全陰イオン官能基中で一定量以上であることが特性上から好ましい。
そこで、本発明においては、前記構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体の全陰イオン性官能基の30モル%以上が、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤とイオン結合することでイオンコンプレックスを形成していることを特徴とする請求項1に記載の化粧品基材を、請求項2に係る発明とする。
なお、本発明において、陰イオン性官能基とはカルボキシ基とスルホ基を言い、全陰イオン性官能基とは酸性アミノ酸側鎖のカルボキシ基とスルホ基にペプチド主鎖の末端カルボキシ基を合わせたものを言い、それら陰イオン性官能基の総和を100モル%とする。
また、本発明の化粧品基材は、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基の少なくとも一部が成分Bの界面活性剤とイオン結合することによって、イオンコンプレックスを形成するものであるため、成分Bの界面活性剤はペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基とイオン結合しやすく、かつ、化粧品に結合しても安全性の高いものであることが好ましい。
そこで、本発明においては、前記カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤が、一般式(I)
Figure 0004947749
(式中、Rは、炭素数11〜25の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキレン基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す)
で表される脂肪酸アミドアミン及び/又は一般式(II)
Figure 0004947749
(式中、Rはメチル基又は炭素数11〜25の直鎖もしくは分岐鎖炭化水素基を表し、2つのRのうち少なくとも1つは炭素数11〜25の直鎖もしくは分岐鎖炭化水素基である)
で表されるアルキル型4級アンモニウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧品基材を、請求項3に係る発明とする。
構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部のアミノ酸重合度の好適な範囲は、配合する化粧品の種類によっても異なるが、化粧品に配合した際の化粧品の安定性と本発明の化粧品基材の毛髪への吸着能力から考えると、アミノ酸平均重合度が2〜500であることが好ましい。そこで、本発明においては、前記ペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部のアミノ酸平均重合度が、2〜500であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の化粧品基材を、請求項4に係る発明とする。
構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体としては、工業的に比較的容易に入手できるものが好ましい。そこで、本発明においては、前記ペプチド又はペプチド誘導体が、タンパク質加水分解物、タンパク質加水分解物の誘導体、ポリ酸性アミノ酸、又はポリ酸性アミノ酸の誘導体であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化粧品基材を、請求項5に係る発明とする。
請求項6に係る発明は、酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部が植物タンパク質の加水分解物又はケラチンの加水分解物であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化粧品基材である。
本発明の化粧品基材は、損傷によって毛髪表面の疎水性が失われて官能的特性が低下した毛髪表面を疎水化し、毛髪に柔軟性、保湿性、滑らかさ、艶やかさなどを付与することを目的としている。そのため、ペプチド又はペプチド誘導体1分子に対して、複数の界面活性剤が結合してイオンコンプレックスを形成することが好ましい。つまり、成分Bの界面活性剤が結合できる陰イオン性官能基がペプチド又はペプチド誘導体1分子当たりに対して、複数存在することが好ましい。一般的に植物タンパク質やケラチンは酸性アミノ酸を20モル%(mol%)以上含んでおり、かつ、工業的に容易に入手できることから、本発明の化粧品基材を製造するにあたって使用するペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部としては、それらの加水分解物が適している。
請求項7に係る発明は、ペプチド誘導体が、アシル化加水分解タンパク、グリセリル化加水分解タンパク、第4級アンモニウム化加水分解タンパク、シリル化加水分解タンパク、アルキルグリセリル化加水分解タンパク、又は2−ヒドロキシアルキル化加水分解タンパクであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化粧品基材である。
ペプチド誘導体としては、加水分解タンパクのアミノ基を化学修飾することによって得られるアシル化加水分解タンパク、グリセリル化加水分解タンパク、第4級アンモニウム化加水分解タンパク、シリル化加水分解タンパク、アルキルグリセリル化加水分解タンパク、又は2−ヒドロキシアルキル化加水分解タンパクが、工業的に容易に入手でき、化粧品に配合しても安全であることから、好ましい。
本発明の化粧品基材は、損傷によって毛髪表面の疎水性が失われて官能的特性が低下した毛髪表面を疎水化し、毛髪に柔軟性、保湿性、滑らかさ、艶やかさなどを毛髪に付与することができるという特徴を有するので、化粧品への配合が好適である。
特にヘアトリートメントなどの毛髪コンディショニング剤に配合した際には、本発明の効果が顕著に奏される。本発明においては、前記請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の化粧品基材を含有することを特徴とする化粧品を、請求項8に係る発明とする。
請求項9に係る発明は、前記化粧品基材の含有量が0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項8に記載の化粧品である。化粧品中の本発明の化粧品基材の含有量の好適な範囲は、化粧品の種類や使用の形態等によって変動するが、通常では化粧品の全質量に対して0.1〜30質量%が好ましい。
本発明の化粧品基材は、毛髪への吸着力が高く、損傷によって毛髪表面の疎水性が失われて官能的特性が低下した毛髪表面を疎水化して、毛髪に柔軟性、保湿性、滑らかさ、艶やかさなどを付与することができる。従って、化粧品、特に毛髪化粧品に好適に用いられ、上記の機能が発揮される。また、本発明の化粧品基材は、皮膚化粧品にも配合でき、乾燥した皮膚に滑らかさと保湿性を付与することができる。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。まず、本発明の化粧品基材の特徴部分を構成する構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基とカチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤とのイオンコンプレックスは、例えば、下記の一般式(III)及び/又は一般式(IV)で表される。
Figure 0004947749
式(III)中、R6とR10は水素原子又は後述する一般式(VII)、一般式(VIII)、一般式(IX)、一般式(X)、一般式(XI)もしくは一般式(XIII)で表される基を表す。Rは中性アミノ酸の側鎖の残基を表し、Rは側鎖にアミノ基を有する塩基性アミノ酸のアミノ基を除いた側鎖の残基を表し、Rは炭素数1〜2のアルキレン基を表す。
また、式(III)中のAはカチオン界面活性剤および両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤(成分B)、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はマグネシウムなどを表し、少なくともその一部が成分Bの界面活性剤であり、その30モル%以上が成分Bの界面活性剤であるものが好ましい。
さらに、式(III)中のa、b、c及びdは各アミノ酸の数を表し、a+b+c+dはアミノ酸重合度を表すが、a+b+c+dは2以上、かつ、c+dが1以上である。なお、a、b、c及びdはアミノ酸の数を表すのみで、アミノ酸配列の順序を表すものではない。a、b、c、d、a+b+c+d、及びc+dは理論的には整数であるが、ペプチドは分子量の異なるものの混合物として得られることが多いため、これらの値は平均値になり、通常は整数以外の数で表されることが多い。
Figure 0004947749
式(IV)中、R11は水素原子又は後述する一般式(VII)、一般式(VIII)、一般式(IX)、一般式(X)、一般式(XI)もしくは一般式(XIII)で表される基を表す。
また、式(IV)中のAはカチオン界面活性剤及び両性界面活性剤の群から選ばれる1種以上の界面活性剤(成分B)、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はマグネシウムなどを表し、少なくともその一部が成分Bの界面活性剤であり、その30モル%以上が成分Bの界面活性剤であるものが好ましい。
さらに、式(IV)中のe、f及びgは各アミノ酸の数を表し、e+f+gはアミノ酸重合度を表すが、e+f+gは2以上である。なお、e、f及びgはアミノ酸の数を表すのみで、アミノ酸配列の順序を表すものではない。e、f、g及びe+f+gは理論的には整数であるが、ペプチドは分子量の異なるものの混合物として得られることが多いため、これらの値は平均値になり、通常は整数以外の数で表されることが多い。
構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部のアミノ酸平均重合度は、2〜500の範囲内が好ましい。従って、一般式(III)においてa+b+cが2〜500であることが好ましく、より好ましくは3〜400であり、さらに好ましくは6〜350である。又、一般式(IV)においてe+f+gが2〜500であることが好ましく、より好ましくは3〜400であり、さらに好ましくは6〜350である。
前記イオンコンプレックスを構成する各アミノ酸単位の数、すなわち、イオンコンプレックスの1分子内の側鎖にアミノ基を有する塩基性アミノ酸単位〔式(III)でbが付されているアミノ酸単位〕、側鎖にカルボキシ基を有する酸性アミノ酸単位〔式(III)でc及び式(IV)でe、f又はgが付されているアミノ酸単位〕、側鎖にスルホ基を有する酸性アミノ酸単位〔式(III)でdが付されているアミノ酸単位〕、及びそれ以外のアミノ酸単位〔式(III)でaが付されているアミノ酸単位〕のそれぞれの数の好ましい範囲はその用途や原料事情、各アミノ酸単位の種類などにより変動し、特に限定されることはないが、通常の化粧品に用いる場合は、a+b+c+dが2以上かつ500以下である範囲で、a+bは0〜485が好ましく、0〜400がより好ましく、3〜300がさらに好ましい。一方、c+dは1〜500が好ましく、1〜300がより好ましく、2〜200がさらにより好ましい。
また、式(IV)においては、e+f+gが2以上かつ500以下である範囲で、e+fは0〜500が好ましく、0〜100がより好ましく、0〜30がさらに好ましい。gは0〜500が好ましく、0〜100がより好ましく、0〜30がさらに好ましい。
なお、a+b、c+d、e+f、及びgが上記範囲外であると、本発明の化粧品基材を含有する毛髪処理剤などを毛髪に塗布した際に得られる官能的特性が悪くなるおそれがある。
次に、本発明の化粧品基材を製造するにあたって使用される、ペプチド、ペプチド誘導体、成分Bの界面活性剤、及びイオンコンプレックスの形成方法について、詳しく説明する。
[ペプチド]
本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用されるペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部は、その構成アミノ酸にカルボキシ基やスルホ基を有する酸性アミノ酸を含んでいれば良く、例えば、下記一般式(V)
Figure 0004947749
〔式(V)中、Rは中性アミノ酸の側鎖の残基を表し、Rは側鎖にアミノ基を有する塩基性アミノ酸のアミノ基を除いた側鎖の残基を表し、Rは炭素数1〜2のアルキレン基を表す。また、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び/又はマグネシウムを表す。さらに、a、b、c及びdは各アミノ酸の数を表し、a+b+c+dはアミノ酸重合度を表すが、a+b+c+dは2以上、かつ、c+dが1以上である。なお、a、b、c及びdはアミノ酸の数を表すのみで、アミノ酸配列の順序を表すものではない。a、b、c、d、a+b+c+d、及びc+dは理論的には整数であるが、ペプチドは分子量の異なるものの混合物として得られることが多いため、これらの値は平均値になり、通常は整数以外の数で表されることが多い〕
で表されるペプチド、又は下記一般式(VI)
Figure 0004947749
〔式(VI)中、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び/又はマグネシウムを表す。さらに、e、f及びgは各アミノ酸の数を表し、e+f+gはアミノ酸重合度を表すが、e+f+gは2以上である。なお、e、f及びgはアミノ酸の数を表すのみで、アミノ酸配列の順序を表すものではない。e、f、g及びe+f+gは理論的には整数であるが、ペプチドは分子量の異なるものの混合物として得られることが多いため、これらの値は平均値になり、通常は整数以外の数で表されることが多い〕
で表されるポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸〔ポリ(γ−グルタミン酸)〕などのポリ酸性アミノ酸であり、工業的に入手しやすく、かつ本発明の化粧品基材が化粧品に配合される際の安全性の観点から考えると、タンパク質を加水分解することで得られるタンパク質加水分解物(加水分解タンパクとも言う)を用いることが好ましい。
前記タンパク質加水分解物は、タンパク質を酸、アルカリ、酵素、又はそれらの併用によって部分加水分解することで得られ、そのタンパク質源としては、動物性タンパク質、植物性タンパク質、微生物由来のタンパク質などが挙げられるが、動物性タンパク質としては、例えば、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、フィブロイン、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、プロタミン、鶏などの卵黄タンパク質や卵白タンパク質などを挙げることができ、植物性タンパク質としては、例えば、大豆、小麦、米(米糠)、ゴマ、エンドウ、トウモロコシ、イモ類などに含まれるタンパク質を挙げることができ、微生物由来のタンパク質としては、例えば、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌、ビール酵母や清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク質、キノコ類(担子菌)やクロレラより分離したタンパク質、海藻由来のスピルリナタンパク質などを挙げることができる。
本発明の化粧品基材は、ペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基の少なくとも一部がカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤とイオンコンプレックスを形成することが必要であるため、該ペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部はその構成アミノ酸に酸性アミノ酸を含んでいることが必要である。前記タンパク質の中でも、植物タンパク質やケラチン、カゼインは酸性アミノ酸を多く含んでいるので、本発明の化粧品基材においてイオンコンプレックスを形成するためのタンパク質源として適しており、これらのタンパク質を加水分解することで得られる植物タンパク質加水分解物やケラチン加水分解物(加水分解ケラチン)、カゼイン加水分解物(加水分解カゼイン)が、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用するペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部として適しており、それらの中でも、特に植物タンパク質加水分解物が好ましい。
また、ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸〔ポリ(γ−グルタミン酸)〕などのポリ酸性アミノ酸も、本発明の化粧品基材の製造にあたって使用される構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部として用いることができる。
以上のように本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用するのに適したペプチドについて述べてきたが、工業的な入手のしやすさや化粧品に配合した際の安全性の高さに加え、本発明の化粧品基材が毛髪に適用された際の毛髪への吸着能力や官能的特性を考慮すると、ペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部としては、植物タンパク質加水分解物、ケラチン加水分解物、カゼイン加水分解物、ポリアスパラギン酸、ポリ(γ−グルタミン酸)が好ましく、それらの中でも、特に植物タンパク質加水分解物が好ましい。
[ペプチド誘導体]
本発明の化粧品基材を構成するA成分としての構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド誘導体としては、ペプチドのアミノ基が化学修飾されたものが該当する。つまり、上記の一般式(V)中のペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基の少なくとも一部の水素原子が官能基で置換されたもの又は上記一般式(VI)中のペプチド主鎖の末端アミノ基の少なくとも一部の水素原子が官能基で置換されたものが該当し、具体的には、例えば、アシル化ペプチド、グリセリル化ペプチド、第4級アンモニウム化ペプチド、シリル化ペプチド、アルキルグリセリル化ペプチド、2−ヒドロキシアルキル化ペプチドなどが挙げられる。
前記アシル化ペプチドとしては、ペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基に炭素数8〜32の直鎖又は分岐鎖の飽和または不飽和の脂肪酸や樹脂酸をアミド結合させたものが該当する。つまり、上記一般式(V)中のペプチド主鎖の末端アミノ基及びアミノ酸側鎖のアミノ基の少なくとも一部又は上記一般式(VI)中のペプチド主鎖の末端アミノ基の少なくとも一部に、炭素数8〜32の直鎖又は分岐鎖の飽和もしくは不飽和の脂肪酸や樹脂酸のカルボキシ基中の−OH基を除いた残基が結合しているものが該当する。
前記炭素数8〜32の直鎖又は分岐鎖の飽和もしくは不飽和の脂肪酸や樹脂酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、樹脂酸、水素添加樹脂酸などが挙げられる。そして、アシル化ペプチドの塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩などが挙げられる。
既に述べたようにタンパク質加水分解物(加水分解タンパクとも言う)は工業的に入手しやすく、人体に対して安全性が高いので、アシル化ペプチドのペプチド部にも加水分解タンパクを用いるのが好ましく、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用するアシル化ペプチドとしては、アシル化加水分解タンパクが好ましい。
グリセリル化ペプチドとしては、上記一般式(V)中のペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基の少なくとも一部又は上記一般式(VI)中のペプチド主鎖の末端アミノ基の少なくとも一部に、下記一般式(VII)
Figure 0004947749
で表される基又は下記一般式(VIII)
Figure 0004947749
で表される基が結合したものが該当する。このグリセリル化ペプチドは、例えば、特開2005−306799号公報に記載の方法で製造することができる。
前記アシル化ペプチドの場合と同様に、グリセリル化ペプチドのペプチド部にも加水分解タンパクを用いるのが好ましく、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用するグリセリル化ペプチドとしては、グリセリル化加水分解タンパクが好ましい。
第4級アンモニウム化ペプチドとしては、上記一般式(V)中のペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基の少なくとも一部又は上記一般式(VI)中のペプチド主鎖の末端アミノ基の少なくとも一部に、下記一般式(IX)
Figure 0004947749
〔式(IX)中、R12、R13、R14は同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、あるいはR12〜R14のうち1個または2個が炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基で、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基またはベンジル基を表す。Bは炭素数2〜3の飽和炭化水素又は炭素数2〜3の水酸基を有する飽和炭化水素を表し、Xはハロゲン原子を表す〕
で表される基が結合したものが該当する。第4級アンモニウム化ペプチドは、アルカリ条件下でペプチドと第4級アンモニウム化合物とを反応させることによって得られる。
上記第4級アンモニウム化合物の具体例としては、例えば、グリシジルステアリルジメチルアンモニウムクロリド、グリシジルヤシ油アルキルジメチルアンモニウムクロリド、グリシジルラウリルジメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドなどのグリシジルアンモニウム塩、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルステアリルジメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルヤシ油アルキルジメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルラウリルジメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエチルジメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどの3−ハロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩、2−クロロエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどの2−ハロ−エチルアンモニウム塩、3−クロロプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどの3−ハロ−プロピルアンモニウム塩などが挙げられる。
前記アシル化ペプチドの場合と同様に、第4級アンモニウム化ペプチドのペプチド部にも加水分解タンパクが好ましく、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用する第4級アンモニウム化ペプチドとしては、第4級アンモニウム化加水分解タンパクが好ましい。
シリル化ペプチドとしては、上記一般式(V)中のペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基の少なくとも一部又は上記一般式(VI)中のペプチド主鎖の末端アミノ基の少なくとも一部に、下記一般式(X)
Figure 0004947749
〔式(X)中、R15は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Dは結合手で、メチレン、プロピレン、−CHOCHCH(OH)CH−または−(CHOCHCH(OH)CH−で示される基である〕
で表される基が結合したものが該当する。このシリル化ペプチドは、例えば、特開平8−059424号公報、特開平8−067608号公報などに記載の方法で製造することができる。
なお、シリル化ペプチドは加熱によって容易にシラノール基同士が脱水縮合してシロキサン結合を形成し、重合体(以下、この重合体を「シリコーンレジン化ペプチド」という)となる。そのため、本発明で用いるシリル化ペプチドには、前記一般式(X)がアミノ基に結合したペプチドに加えて、一般式(X)がアミノ基に結合したペプチドの重合体であるシリコーンレジン化ペプチドを含有したものも含まれる。
前記アシル化ペプチドの場合と同様に、シリル化ペプチドのペプチド部にも加水分解タンパクを用いるのが好ましく、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用するシリル化ペプチドとしては、シリル化加水分解タンパクが好ましい。
アルキルグリセリル化ペプチドとしては、上記一般式(V)中のペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基の少なくとも一部又は上記一般式(VI)中のペプチド主鎖の末端アミノ基の少なくとも一部に、下記一般式(XI)
Figure 0004947749
〔式(XI)中、R16は炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、またはフェニル基を示す〕
で表される基が結合したものが該当する。このアルキルグリセリル化ペプチドはアルカリ条件下でペプチドと下記の一般式(XII)
Figure 0004947749
〔式(XII)中、R16は炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はフェニル基を示す〕
で表されるアルキルグリセリル化剤を反応させることによって得られる。
ペプチドとアルキルグリセリル化剤を反応させる際の温度は、30℃〜80℃が好ましく、40℃〜70℃がより好ましい。前記温度以下では、ペプチドとアルキルグリセリル化剤との反応性が悪くなり、前記温度以上では、ペプチドが著しい着色や不快臭を生じるため化粧品基材としては適切でなく、加熱温度を高くすることによる反応性の向上も見込めない。
また、ペプチドとアルキルグリセリル化剤を反応させる際の反応時間は、温度やpH、ペプチドの濃度によっても異なるが、1〜10時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。反応時間が前記時間より短い場合では、未反応のアルキルグリセリル化剤が残存し、前記時間より長い場合では、ペプチドが着色や不快臭を生じやすくなる。
前記アシル化ペプチドの場合と同様に、アルキルグリセリル化ペプチドのペプチド部にも加水分解タンパクを用いるのが好ましく、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用するアルキルグリセリル化ペプチドとしては、アルキルグリセリル化加水分解タンパクが好ましい。
2−ヒドロキシアルキル化ペプチドとしては、上記一般式(V)中のペプチド主鎖の末端アミノ基とアミノ酸側鎖のアミノ基の少なくとも一部又は上記一般式(VI)中のペプチド主鎖の末端アミノ基の少なくとも一部に下記一般式(XIII)
Figure 0004947749
〔式(XIII)中、R17は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はフェニル基を示す〕
で表される基が結合したものが該当する。この2−ヒドロキシアルキル化ペプチドはアルカリ条件下でペプチドと下記の一般式(XIV)
Figure 0004947749
〔式(XIV)中、R17は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はフェニル基を示す〕
で表される2−ヒドロキシアルキル化剤を加熱反応させることによって得られる。
ペプチドと2−ヒドロキシアルキル化剤を反応させる際の温度は、30℃〜80℃が好ましく、40℃〜70℃がより好ましい。前記温度以下では、ペプチドと2−ヒドロキシアルキル化剤との反応性が悪くなり、前記温度以上では、ペプチドが著しい着色や不快臭を生じるため化粧品基材としては適切でなく、加熱温度を高くすることによる反応性の向上も見込めない。
また、ペプチドと2−ヒドロキシアルキル化剤を反応させる際の反応時間は、温度やpH、ペプチドの濃度によっても異なるが、1〜10時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。反応時間が前記時間より短い場合では、未反応の2−ヒドロキシアルキル化剤が残存し、前記時間より長い場合では、ペプチドが着色や不快臭を生じやすくなる。
前記アシル化ペプチドの場合と同様に、2−ヒドロキシアルキル化ペプチドのペプチド部にも加水分解タンパクを用いるのが好ましく、本発明の化粧品基材を構成するにあたって使用する2−ヒドロキシアルキル化ペプチドとしては、2−ヒドロキシアルキル化加水分解タンパクが好ましい。
[成分Bの界面活性剤]
構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体(成分A)の陰イオン性官能基とイオン結合することでイオンコンプレックスを形成する界面活性剤(成分B)としては、カチオン界面活性剤と両性界面活性剤が該当する。
カチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン塩、アルキルアミン塩、アルキルアミンポリオキシエチレン付加物、脂肪酸トリエタノールアミンモノエステル塩、脂肪酸ポリアミン縮合物などのアミン塩型カチオン界面活性剤、アルキル型4級アンモニウム塩であるモノアルキルトリメチルアンモニウム塩やジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アシルアミノアルキル型アンモニウム塩、アシルアミノアルキルピリジニウム塩、ジアシロキシエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、イミダゾリンやイミダゾリウム塩型のカチオン界面活性剤が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、アルギニン、リシン、ヒスチジン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸をアシル化することで得られるアシルアミノ酸型の両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインやアルキルアミドプロピルジメチルアンモニオ酢酸塩、アルキルジメチルアミノスルホベタインなどのベタイン型の両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、プロタミンなどの塩基性アミノ酸を多く含んだタンパク質を加水分解して得られたタンパク質加水分解物のアシル化誘導体などが挙げられる。
前記界面活性剤の中で好ましいものは、脂肪酸アミドアミン塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩やジアルキルジメチルアンモニウム塩などのアルキル型第4級アンモニウム、アルキルアミン塩、塩基性アミノ酸をアシル化することで得られるアシルアミノ酸などである。
すなわち、脂肪酸アミドアミン塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩やジアルキルジメチルアンモニウム塩などのアルキル型第4級アンモニウム、アルキルアミン塩、塩基性アミノ酸をアシル化することで得られるアシルアミノ酸などは、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体(成分A)の陰イオン性官能基とイオンコンプレックスを形成しやすく、工業的に比較的安価に製造できることから、好ましい界面活性剤として挙げられる。それらの中でも、特に脂肪酸アミドアミン塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩やジアルキルジメチルアンモニウム塩などのアルキル型第4級アンモニウムが好ましく、この脂肪酸アミドアミン塩の中でも有用性の高いものとしては、前記の一般式(I)で表される脂肪酸アミドアミンが挙げられ、また、アルキル型第4級アンモニウムの中でも有用性の高いものとしては、前記の一般式(II)で表されるアルキル型第4級アンモニウムが挙げられる。
[イオンコンプレックスの形成方法]
本発明の化粧品基材におけるイオンコンプレックスは、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体(成分A)の陰イオン性官能基の少なくとも一部とカチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤(成分B)のイオンコンプレックスからなることを特徴し、既に述べた成分(A)としてのペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基と成分(B)の界面活性剤とがイオン結合することによって形成される。
特に、本発明の化粧品基材におけるイオンコンプレックスとしては、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体の全陰イオン性官能基の30モル%以上と、一般式(I)で表される脂肪酸アミドアミン及び/又は一般式(II)で表されるアルキル型4級アンモニウムとがイオン結合することでイオンコンプレックスを形成したものが、工業的に製造しやすいことから好ましく、脂肪酸アミドアミンを用いた場合が毛髪に適用された際の官能的特性の良さから特に好ましい。
本発明の化粧品基材におけるイオンコンプレックスの形成方法としては、例えば、ペプチド又はペプチド誘導体を水やエタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどの溶剤で溶液状にし、そのペプチドまたはペプチド誘導体の溶液に塩酸や硫酸などの酸剤を加えて、ペプチド又はペプチド誘導体の溶液のpHを5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下の弱酸性〜酸性にする。続いて、この弱酸性〜酸性ペプチド溶液又はペプチド誘導体溶液を電気透析装置や透析チューブに供して、脱塩処理を行う。この際、用いたペプチドやペプチド誘導体が弱酸性〜酸性条件下で不溶化するものであれば、濾過やデカンテーションを行って残渣を回収することで、脱塩されたペプチドやペプチド誘導体を得ることができる。
次に、脱塩されたペプチド又はペプチド誘導体の溶液に成分Bの界面活性剤の添加することで、イオンコンプレックスを形成させることができる。この界面活性剤添加の際に、一般式(I)で表される脂肪酸アミドアミンのような塩基性の界面活性剤を添加することによって、脱塩された弱酸性〜酸性のペプチドやペプチド誘導体の溶液を中和することでイオンコンプレックスを形成させると、より精製度の高い本発明の化粧品基材を得ることができる。
また、一般式(II)で表されるアルキル型4級アンモニウムやアシルアルギニンのように強いカチオン性官能基を有している界面活性剤は、ペプチドやペプチド誘導体とイオンコンプレックスを形成しやすいので、前記のように酸剤を加えてpHを5以下にし、電気透析機や透析チューブを用いて脱塩処理を行う工程を省き、ペプチドやペプチド誘導体溶液をpH5〜8調整した後、アルキル型4級アンモニウムやアシルアルギニンを添加してもイオンコンプレックスの製造が可能である。
さらに、一般式(I)で表される脂肪酸アミドアミンのような塩基性の界面活性剤は、塩酸や硫酸で脂肪酸アミドアミンを脂肪酸アミドアミン塩として、ペプチドやペプチド誘導体の溶液に添加することによって、イオンコンプレックスを形成させることができる。この場合、脂肪酸アミドアミン塩はペプチドやペプチド誘導体とイオンコンプレックスを形成しやすいので、脂肪酸アミドアミン塩の添加前に、ペプチドやペプチド誘導体の溶液に酸剤を加えてpHを5以下にし、電気透析機や透析チューブを用いて脱塩処理を行う前処理を省くことが可能である。
次に上記のようにして形成されたイオンコンプレックスを例示する。ペプチドまたはペプチド誘導体と界面活性剤とのイオンコンプレックスの形成は、ペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基、つまり、カルボキシル基とスルホ基のところで生じるので、カルボキシル基のところでイオンコンプレックスが生じる場合とスルホ基のところでイオンコンプレックスが生じる場合とに分けて説明する。
まず、ペプチド又はペプチド誘導体と一般式(I)で表される脂肪酸アミドアミンとのイオンコンプレックスが、ペプチド又はペプチド誘導体のカルボキシル基のところで形成された場合、該イオンコンプレックスは、次の一般式(XV)で表される。なお、ペプチド又はペプチド誘導体は、前記のように、一般式(III)で表されるが、それが脂肪酸アミドアミンとイオンコンプレックスを形成する部分は、ここで示す例では、カルボキシル基のところなので、ペプチド又はペプチド誘導体に関しては、そのカルボキシル基の部分のみを抜き出して表示し、他の部分は「ペプチド」で表す。つまり、ペプチド又はペプチド誘導体を全部表すと、一般式(III)のように詳細で広い面積を占めることになるので、イオンコンプレックスを形成する特徴的部分のみを表示した簡略表示にしている。
Figure 0004947749
そして、一般式(II)で表されるアルキル型4級アンモニウムがペプチド又はペプチド誘導体のカルボキシル基のところでイオンコンプレックスを形成した場合、該イオンコンプレックスは、次の一般式(XVI)で表される。なお、ペプチド又はペプチド誘導体に関する表示方法は前記と同じである。
Figure 0004947749
次に、ペプチド又はペプチド誘導体がそのスルホ基のところで一般式(I)で表される脂肪酸アミドとイオンコンプレックスを形成した場合、該イオンコンプレックスは、次の一般式(XVII)で表される。なお、ペプチド又はペプチド誘導体に関しては、前記カルボキシル基の場合と同様に、そのスルホ基の部分のみを抜き出して表示し、他の部分は「ペプチド」で表す。
Figure 0004947749
そして、一般式(II)で表されるアルキル型4級アンモニウムがペプチド又はペプチド誘導体のスルホ基のところでイオンコンプレックスを形成した場合、該イオンコンプレックスは、次の一般式(XVIII)で表される。なお、ペプチド又はペプチド誘導体に関する表示方法は前記と同じである。
Figure 0004947749
本発明においては、成分Bの界面活性剤とイオンコンプレックスを形成するペプチド又はペプチド誘導体の陰イオン性官能基が、全陰イオン性官能基の30モル%以上であることを好ましいとしているが、これはイオンコンプレックスを形成している陰イオン性官能基が全陰イオン性官能基中の30モル%以上であると、イオンコンプレックスによる毛髪への柔軟性、保湿性、滑らかさ、艶などの付与作用が好適に発揮されるからであり、上記のような特性をより好適に発揮させるためには、イオンコンプレックスを形成している陰イオン性官能基が多いほど好ましく、そのような観点から、イオンコンプレックスを形成している陰イオン性官能基が全陰イオン性官能基中の50モル%以上であることがより好ましく、もとより、イオンコンプレックスを形成している陰イオン性官能基が全陰イオン性官能基の100モル%(すなわち、全陰イオン性官能基がイオンコンプレックスを形成している)であってもよい。
前記のようにして形成されたイオンコンプレックスを有するペプチド又はペプチド誘導体は、そのままで本発明の化粧品基材に供することができるが、イオンコンプレックス形成後に溶液状態であれば、該溶液をさらに電気透析装置や透析チューブを用いて脱塩処理を行うことで、より精製された状態で本発明の化粧品基材に供することができる。
また、ペプチド又はペプチド誘導体を溶液状にした状態で成分Bの界面活性剤を添加することで形成したイオンコンプレックスが、不溶性物質の場合、該イオンコンプレックスを有するペプチド又はペプチド誘導体を、そのままで本発明の化粧品基材に供することができるが、水や含水低級アルコールなどの適切な溶媒で不溶化したイオンコンプレックスを洗浄して、より純度の高い状態で本発明の化粧品基材に供することができる。
ペプチド誘導体と成分Bの界面活性剤とのイオンコンプレックスを得るためには、前記のようにペプチドを誘導体化した後に、成分Bの界面活性剤とイオンコンプレックスを形成させるのが好ましい。しかし、シリル化ペプチドを用いる場合、成分Bの界面活性剤とのイオンコンプレックス形成中にシリル化ペプチド同士の重合化を極力避けたいなどの事情がある場合は、ペプチドと成分Bの界面活性剤とのイオンコンプレックス形成後に、そのイオンコンプレックスの構成ペプチドのアミノ基に前記一般式(X)で表される官能基を結合させても構わない。ただし、この場合において、先に形成させたイオンコンプレックスが水に不溶性の場合は、ペプチドのアミノ基を誘導体化させにくいため、低級アルコールや多価アルコールなどを適時用いて、イオンコンプレックスを分散させた溶液にした後、誘導体化させるのが好ましい。
次に、本発明の化粧品基材、つまり、構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体(成分A)の陰イオン性官能基の少なくとも一部が、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤(成分B)とイオンコンプレックスを形成しているペプチド又はペプチド誘導体からなる化粧品基材の用途について説明する。
本発明の化粧品基材が配合される化粧品としては、例えば、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、枝毛コート、ヘアクリーム、パーマネントウェーブ用第1剤及び第2剤、セットローション、染毛剤、染毛料、液体整髪料、養毛・育毛剤などの毛髪化粧品、クレンジングクリーム、エモリエントクリーム、ハンドクリーム、アフターシェービングローション、シェービングフォーム、洗顔クリーム、洗顔料、ボディーシャンプー、各種石鹸、脱毛剤、フェイスパック、乳液、化粧水、メイクアップ用品、日焼け止め用品などの皮膚化粧品が挙げられる。
本発明の化粧品基材の配合量(化粧品中での含有量)の好ましい範囲は、化粧品の種類により異なり、特に限定されるものではないが、化粧品中0.1〜30質量%が好ましい場合が多く、特に1〜20質量%程度が好ましい場合が多い。化粧品中への配合量が上記範囲より少ない場合は、毛髪や皮膚に優れた柔軟性や保湿性、滑らかさ、艶を付与する効果が充分に発現しないおそれがある。また、本発明の化粧品基材の配合量が上記範囲より多くなっても、それに見合う効果の向上が見られない。
上記化粧品に、本発明の化粧品基材と併用して配合できる成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマーなどの合成ポリマー、半合成ポリマー類、動植物油、炭化水素類、エステル油、高級アルコール類、アミノ酸類、増粘剤、動植物抽出物、シリコーン類、防腐剤、香料、動植物由来及び微生物由来のタンパク質を加水分解したタンパク質加水分解物及びそれらタンパク質加水分解物のエステル化誘導体、第4級アンモニウム誘導体、シリル化誘導体、アシル化誘導体とその塩などが挙げられる。これら以外にも本発明の化粧品基材の特性を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中などで表記されている%はいずれも質量%である。また、実施例の説明に先立って、実施例中などで採用しているアミノ態窒素と総窒素量の測定法及び全陰イオン性官能基のモル数の推定法について説明する。
[アミノ態窒素と総窒素量の測定法]
実施例中でのアミノ態窒素量の測定は、ファンスレーク(van Slyke)法によって行った。また、総窒素量の測定は、改良デュマ法によって行った。
[全陰イオン性官能基のモル数の推定法]
構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体の全陰イオン性官能基のモル数は以下のようにして求めた。つまり、ファンスレーク法によって測定して得られたアミノ態窒素量から求めたアミノ態窒素のモル数と等モルの末端カルボキシ基が存在するものとし、アミノ酸分析によって得られた酸性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、及びシステイン酸)の存在モル数をペプチド又はペプチド誘導体の側鎖カルボキシ基とスルホ基の総モル数とした。そして、これら末端カルボキシ基のモル数と側鎖カルボキシとスルホ基のモル数の和をペプチド又はペプチド誘導体の全陰イオン性官能基のモル数と推定した。
なお、実施例で使用したペプチドやペプチド誘導体のペプチド部のアミノ酸重合度〔つまり、一般式(V)におけるa+b+c+d又は一般式(VI)におけるe+f+g〕は、総窒素量とアミノ態窒素量の割合から算出した。また、日立製作所社製のアミノ酸自動分析装置を用いたアミノ酸分析によってa:b:c:dやe+f:gを求め、アミノ酸重合度からa〜d、e+f及びgの値を求めた。また、実施例中で使用している各タンパク質加水分解物は、それぞれのタンパク源を、酸、アルカリ又は酵素を使用した公知の方法によって加水分解したものである。
実施例1:
〔小麦タンパク質加水分解物とN−[2−(ジエチルアミノ)エチル]オクタデカンアミド〔一般式(I)におけるRはヘプタデシル基、Rはエチレン基、Rはエチル基、Rはエチル基であり、以下、これを「ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド」という)とのイオンコンプレックスの形成〕
小麦タンパク質加水分解物[一般式(V)におけるaは3.0、bは0.1、cは2.4、dは0.2で、a+b+c+dは5.7]の30%水溶液400gに希塩酸を加えpHを2.7に調整した。電気透析装置を用いて、この小麦タンパク質加水分解物の水溶液を脱塩することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH又は−SOH)になっている小麦タンパク質加水分解物の水溶液を得た。
次に、前記溶液の濃度を25%に調整した小麦タンパク質加水分解物の水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.44モル)を70℃で加熱撹拌し、その中にステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド84g(小麦タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基に対して50モル%)を添加し、均一になるまで70℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、小麦タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基中の50モル%の陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、このステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物の固形分濃度が38%の水溶液を484g得た。
実施例2:
〔小麦タンパク質加水分解物と、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]ドコサン〔一般式(I)におけるRはヘンイコシル基、Rはエチレン基、Rはエチル基、Rはエチル基であり、以下、これを「ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド」という)、及びN−[2−(ジエチルアミノ)エチル]イソオクタデカンアミド〔一般式(I)におけるRはイソヘプタデシル基、Rはエチレン基、Rはエチル基、Rはエチル基であり、以下、これを「イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド」という)とのイオンコンプレックスの形成〕
実施例1の場合と同様の小麦タンパク質加水分解物を、実施例1と同様の方法にて処理することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH又は−SOH)になっている小麦タンパク質加水分解物の水溶液を得た。
次に、前記溶液の濃度を25%に調整した小麦タンパク質加水分解物の水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.44モル)を80℃で加熱撹拌し、その中にステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド75.9g、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド8.0g、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド0.1g(前記3種の脂肪族アミドアミンの総和は小麦タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基に対して50モル%)を添加し、均一になるまで80℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、小麦タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基中の50モル%の陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、このステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物の固形分濃度が38%の水溶液を484g得た。
実施例3:
〔小麦タンパク質加水分解物と、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスとの形成〕
実施例1の場合と同様の小麦タンパク質加水分解物を、実施例1と同様の方法にて処理することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH又は−SOH)になっている小麦タンパク質加水分解物の水溶液を得た。
次に、前記溶液の濃度を25%に調整した小麦タンパク質加水分解物の水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.44モル)を80℃で加熱撹拌し、その中にステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド34g、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド20g、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド30g(前記3種の脂肪族アミドアミンの総和は小麦タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基に対して50モル%)を添加し、均一になるまで80℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、小麦タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基中の50モル%の陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、このステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物の固形分濃度が38%の水溶液を484g得た。
実施例4:
〔エンドウタンパク質加水分解物と、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスの形成〕
エンドウタンパク質加水分解物[一般式(V)におけるaは55.3、bは10.5、cは32.9、dは1.3で、a+b+c+dは100]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.29モル)に希塩酸を加えpHを2.5に調整することで、エンドウタンパク質加水分解物を不溶化させて沈殿させた。この不溶化したエンドウタンパク質加水分解物に水1000mlを添加し、攪拌した後、デンカンテーションによって水層を除去し、エンドウタンパク質加水分解物に含まれている塩類を脱塩することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH又は−SOH)になっているエンドウタンパク質加水分解物を得た。
次に、前記の脱塩したエンドウタンパク質加水分解物溶液を80℃で加熱撹拌し、その中にステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド39.7g、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド19.9g、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド6.6g(前記3種の脂肪族アミドアミンの総和はエンドウタンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基に対して50モル%)を添加し、均一になるまで80℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、エンドウタンパク質の加水分解物の全陰イオン性官能基中の50モル%の陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、固形分濃度が40%になるように水を添加して、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びイソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有するエンドウタンパク質加水分解物の固形分濃度が40%の水溶液を341g得た。
実施例5:
〔ケラチン加水分解物とステアリルトリメチルアンモニウム〔一般式(II)におけるRの1つはステアリル基、他の1つはメチル基〕とのイオンコンプレックスの形成〕
ケラチン加水分解物[一般式(V)におけるaは186.9、bは9.9、cは82.2、dは21.0で、a+b+c+dは300]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.28モル)を70℃で加熱撹拌し、この中に塩化ステアリルトリメチルアンモニウム97.3g(ケラチン加水分解物の全陰イオン性官能基に対して100モル%)を添加し、均一になるまで80℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、ケラチンの加水分解物の全陰イオン性官能基に対してステアリルトリメチルアンモニウムをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、固形分濃度が40%になるように水を添加して、エンドウタンパク質加水分解物とステアリルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックス、つまり、全陰イオン性官能基に対してステアリルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを形成させたエンドウタンパク質加水分解物の固形分濃度が40%の水溶液を493g得た。
実施例6:
〔大豆タンパク質加水分解物のアシル化誘導体(以下、「アシル化加水分解大豆タンパク」という)とステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスの形成〕
大豆タンパク質加水分解物[一般式(V)におけるaは1.7、bは0.3、cは1.2、dは0で、a+b+c+dは3.2である]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.54モル。アミノ基のモル数は0.25モルで、前記のアミノ態窒素と総窒素量の測定法による測定値より求めた値であり、以後の実施例においても同じ方法で求めた)に20%水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを9に調整した。この溶液を45℃で撹拌しながら、ヤシ油脂肪酸クロライド58.8g(大豆タンパク質加水分解物のアミノ基に対して1当量)を1時間かけて滴下してアシル化反応を行った。ヤシ油脂肪酸クロライドの滴下中は、20%NaOH水溶液を添加して、溶液のpHを9に保った。滴下終了後、50℃で2時間撹拌を続け反応を完結させた。なお、前記大豆タンパク質加水分解物のアシル化反応率は80.2%であり、アシル化反応前の大豆タンパク質加水分解物のアミノ態窒素量をu、反応後のアミノ態窒素量をtとして、下記式より求めた値である。
アシル化反応率(%)=1−(t/u)×100
反応終了後、反応液に希硫酸を加えてpHを2にしてアシル化加水分解大豆タンパクを不溶化させ、この不溶性物質をイオン交換水でpHが3.5になるまで洗浄を繰り返し、塩類を除去することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH)になっているアシル化加水分解大豆タンパク得た。
次に、このアシル化加水分解大豆タンパクを70℃で加熱撹拌下、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド61.9g(大豆タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基に対して30モル%)を添加し、均一になるまで70℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、大豆タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基中の30モル%の陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオン結合させでイオンコンプレックスを形成させ、固形分濃度が40%になるように水を添加して、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有するアシル化加水分解大豆タンパクの固形分濃度が40%の水溶液を432g得た。
実施例7:
〔カゼイン加水分解物の第4級アンモニウム化誘導体(以下、「第4級アンモニウム化加水分解カゼイン」という)とステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド〔一般式(I)中におけるRはヘプタデシル基、Rはプロピレン基、Rはメチル基、Rはメチル基〕とのイオンコンプレックスの形成〕
カゼイン加水分解物[一般式(V)におけるaは3.6、bは0.8、cは1.8、dは0で、a+b+c+dは6.2である]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.36モル。アミノ基のモル数は0.13モル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを9に調整した。この溶液を55℃で撹拌しながら、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド19.7g(カゼイン加水分解物のアミノ基に対して1当量)を1時間かけて滴下して第4級アンモニウム化反応を行った。滴下終了後、55℃で3時間撹拌を続け反応を完結させ、第4級アンモニウム化加水分解カゼイン〔塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解カゼイン〕を得た。なお、前記のカゼイン加水分解物の第4級アンモニウム化反応率は76.6%であり、反応前のカゼイン加水分解物のアミノ態窒素量をu、反応後のアミノ態窒素量をtとして、下記式より求めた値である。
第4級アンモニウム化反応率(%)=1−(t/u)×100
前記第4級アンモニウム化加水分解カゼインの反応液に希塩酸を加えてpHを2.5に調整し、電気透析装置を用いて脱塩することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH)になっている第4級アンモニウム化加水分解カゼインの水溶液を得た。
次に、陰イオン性官能基が遊離状態になっている第4級アンモニウム化加水分解カゼインの水溶液を70℃で加熱撹拌下、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド53.4g(カゼイン加水分解物の全陰イオン性官能基に対して50モル%)を添加し、均一になるまで70℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、第4級アンモニウム化加水分解カゼインの全陰イオン性官能基中の50モル%の陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、固形分濃度が40%になるように濃縮して、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドとのイオンコンプレックスを有する第4級アンモニウム化加水分解カゼインの固形分濃度が40%の水溶液を389g得た。
実施例8:
〔ゴマタンパク質加水分解物のシリル化誘導体(以下、「シリル化加水分解ゴマタンパク」という)とジステアリルジメチルアンモニウム〔一般式(II)のRは2つともステアリル基〕とのイオンコンプレックスの形成〕
ゴマタンパク質加水分解物[一般式(V)におけるaは5.6、bは1.4、cは3.0、dは0で、a+b+c+dは10である]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.32モル。アミノ基のモル数は0.08モル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを9に調整した。この溶液を55℃で撹拌しながら、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン19.9g(ゴマタンパク質加水分解物のアミノ基に対して1.0当量)を1時間かけて滴下してシリル化反応を行った。滴下終了後、55℃で3時間撹拌を続け反応を完結させ、シリル化加水分解ゴマタンパク〔すなわち、N−〔2−ヒドロキシ−3−〔3−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ〕プロピル〕加水分解ゴマタンパク〕を得た。なお、前記のゴマタンパク質加水分解物のシリル化反応率は72.0%であり、反応前のゴマタンパク質加水分解物のアミノ態窒素量をu、反応後のアミノ態窒素量をtとして、下記式より求めた値である。
シリル化反応率(%)=1−(t/u)×100
得られたシリル化加水分解ゴマタンパクの反応液に希塩酸を加えてpHを3.0に調整した後、80℃で加熱撹拌下、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム56.2g(シリル化加水分解ゴマタンパクの全陰イオン性官能基に対して30モル%)を添加した。
以上の処理によって、シリル化加水分解ゴマタンパクの全陰イオン性官能基中の30モル%に対してジステアリルジメチルアンモニウムをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、冷却後放置したところ、上記のジステアリルジメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを有するシリル化加水分解ゴマタンパクは不溶化して沈降した。
次に、この不溶化したジステアリルジメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを有するシリル化加水分解ゴマタンパクをイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで、ジステアリルジメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを有するシリル化加水分解ゴマタンパクの固形分濃度が92%の固形物を76.6g得た。
実施例9:
〔米タンパク質加水分解物のグリセリル化誘導体(以下、「グリセリル化加水分解米タンパク」という)とベヘニルトリメチルアンモニウム〔一般式(II)におけるRの1つはベヘニル基で、他の1つはメチル基〕とのイオンコンプレックスの形成〕
米タンパク質加水分解物[一般式(V)におけるaは62.5、bは11.8、cは25.4、dは0.3で、a+b+c+dは100である]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.22モル。アミノ基のモル数は0.01モル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを9に調整した。この溶液を55℃で撹拌しながら、グリシドール0.74g(米タンパク質加水分解物のアミノ基に対して1.0当量)を0.5時間かけて滴下して、米タンパク質加水分解物のアミノ基に対してグリセリル化反応を行った。滴下終了後、55℃で3時間撹拌を続け反応を完結させた。
反応液に希塩酸を加えてpHを5に調整した後、電気透析装置で脱塩し、グリセリル化加水分解米タンパクを得た。なお、前記の米タンパク質加水分解物のグリセリル化反応率は70.8%であり、反応前の米タンパク質加水分解物のアミノ態窒素量をu、反応後のアミノ態窒素量をtとして、下記式より求めた値である。
グリセリル化反応率(%)=1−(t/u)×100
前記グリセリル化加水分解米タンパクを80℃で加熱撹拌し、この中に塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム88.8g(米タンパク質加水分解物の全陰イオン性官能基に対して100モル%)を添加し、80℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、グリセリル化加水分解米タンパクの全陰イオン性官能基のすべてに対してベヘニルトリメチルアンモニウムをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、これを冷却し、放置すると、不溶化して沈降した。
次に、この不溶化物をイオン交換水で洗浄した後、乾燥することで、固形分濃度が91%のグリセリル化加水分解米タンパクとベヘニルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックス、つまり、全陰イオン性官能基に対してベヘニルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを形成させたグリセリル化加水分解米タンパクの固形分濃度が91%の固形物を104g得た。
実施例10:
〔シルク加水分解物のアルキルグリセリル化誘導体(以下、「アルキルグリセリル化加水分解シルク」という)とステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスの形成〕
シルク加水分解物[一般式(V)におけるaは96.0、bは0.9、cは3.1、dは0で、a+b+c+dは100である]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.05モル。アミノ基のモル数は0.013モル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを9に調整した。この溶液を55℃で撹拌しながら、ブチルグリシジルエーテル1.69g(シルク加水分解物の全アミノ基に対して1.0当量)を1時間かけて滴下してアルキルグリセリル化反応を行った。滴下終了後、55℃で3時間撹拌を続け反応を完結させ、アルキルグリセリル化加水分解シルク〔すなわち、ブチルグリセリル化加水分解シルク〕を得た。なお、前記のシルク加水分解物のアルキルグリセリル化反応率は76.2%であり、反応前のシルク加水分解物のアミノ態窒素量をu、反応後のアミノ態窒素量をtとして、下記式より求めた値である。
アルキルグリセリル化反応率(%)=1−(t/u)×100
前記ブチルグリセリル化加水分解シルクの反応液に希塩酸を加えてpHを2.5に調整し、電気透析装置を用いて脱塩することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH)になっているブチルグリセリル化加水分解シルクの水溶液を得た。
次に、陰イオン性官能基が遊離状態になっているブチルグリセリル化加水分解シルクの水溶液を70℃で加熱撹拌下、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド19.1g(シルク加水分解物の全陰イオン性官能基に対して100モル%)を添加し、均一になるまで70℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、シルク加水分解物の全陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、固形分濃度が40%になるように濃縮して、ブチルグリセリル化加水分解シルクとステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックス、つまり、全陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを形成させたブチルグリセチル加水分解シルクの固形分濃度が40%の水溶液を291g得た。
実施例11:
〔コラーゲン加水分解物の2−ヒドロキシアルキル化誘導体(以下、「2−ヒドロキシアルキル化加水分解コラーゲン」という)とステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスの形成〕
コラーゲン加水分解物[一般式(V)におけるaは15.9、bは1.7、cは2.4、dは0で、a+b+c+dは20である]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.17モル。アミノ基のモル数は0.05モル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを9に調整した。この溶液を55℃で撹拌しながら、1,2−エポキシヘキサン5.0g(コラーゲン加水分解物の全アミノ基に対して1.0当量)を1時間かけて滴下して2−ヒドロキシアルキル化反応を行った。滴下終了後、55℃で3時間撹拌を続け反応を完結させ、2−ヒドロキシアルキル化加水分解コラーゲン(つまり、2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲン)を得た。なお、前記のコラーゲン加水分解物の2−ヒドロキシアルキル化反応率は72.6%であり、反応前のコラーゲン加水分解物のアミノ態窒素量をu、反応後のアミノ態窒素量をtとして、下記式より求めた値である。
2−ヒドロキシアルキル化反応率(%)=1−(t/u)×100
前記2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲンの反応液に希塩酸を加えてpHを2.5に調整し、電気透析装置を用いて脱塩することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH)になっている2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲンの水溶液を得た。
次に、陰イオン性官能基が遊離状態になっている2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲンの水溶液を70℃で加熱撹拌下、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド64.9g(コラーゲン加水分解物の全陰イオン性官能基に対して100モル%)を添加し、均一になるまで70℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、コラーゲン加水分解物の全陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、固形分濃度が40%になるように濃縮して、2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲンとステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックス、つまり、全陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを形成させた2−ヒドロキシヘキシル化加水分解コラーゲンの固形分濃度が40%の水溶液を403.5g得た。
実施例12:
〔ポリアスパラギン酸とステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックス〕
ポリアスパラギン酸[一般式(VI)におけるe+fは8、gは0で、e+f+gは8]の30%水溶液400gに希塩酸を加えpHを2.0に調整した。電気透析装置を用いて、このポリアスパラギン酸の水溶液を脱塩することで、陰イオン性官能基が遊離状態(−COOH)になっているポリアスパラギン酸の水溶液を得た。
次に、前記溶液に水を添加し25%に調整したポリアスパラギン酸の水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.88モル)を70℃で加熱撹拌し、この中にステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド100.8g(ポリアスパラギン酸の全陰イオン性官能基に対して30モル%)を添加し、均一になるまで70℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、ポリアスパラギン酸の全陰イオン性官能基中の30モル%の陰イオン性官能基に対してステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオン結合させ、固形分濃度が40%になるように調整して、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有するポリアスパラギン酸の固形分濃度が40%の水溶液を474g得た。
実施例13:
〔ポリグルタミン酸とステアリルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスの形成〕
ポリグルタミン酸[一般式(VI)におけるe+fは0、gは20で、e+f+gは20]の25%水溶液400g(全陰イオン性官能基のモル数は0.78モル)に希塩酸を加えpHを4.0に調整した後、電気透析装置を用いて、脱塩したポリグルタミン酸の水溶液を得た。
次に、前記溶液中に塩化ステアリルトリメチルアンモニウム205.7g(ポリグルタミン酸の全陰イオン性官能基に対して80モル%)を添加し、均一になるまで70℃で加熱撹拌した。
以上の処理によって、ポリグルタミン酸の全陰イオン性官能基中の80モル%の陰イオン性官能基に対してステアリルトリメチルアンモニウムをイオン結合させてイオンコンプレックスを形成させ、固形分濃度が40%になるように調整して、ステアリルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを有するポリグルタミン酸の固形分濃度が40%の水溶液を726g得た。
実施例14〜16、比較例1〜3及び対照例1:ヘアトリートメント
実施例1〜3で脂肪族アミドアミンとのイオンコンプレックスを形成させた小麦タンパク質加水分解物(つまり、脂肪族アミドアミンとのイオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物)を用いて、表1に示す組成のヘアトリートメントを実施例14〜16として調製した。また、実施例1〜3のイオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物に代えて、実施例1〜3でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いた小麦タンパク質加水分解物と脂肪族アミドアミンをコンプレックスを形成させずに配合した比較例1〜3のヘアトリートメントも同様に調製した。さらに、イオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物、イオンコンプレックスを形成させていない原料としての小麦タンパク質加水分解物、及び脂肪族アミドアミンのいずれも配合していないヘアトリートメントも対照例1として調製した。なお、表1に実施例14〜16、比較例1〜3及び対照例1のヘアトリートメントの組成を表示するにあたって、スペース上の関係で、それらのヘアトリートメントに共通して配合する成分をヘアトリートメント基剤として表1に先立って表示し、表1には、それらの共通成分全体の量をヘアトリートメント基剤の量として表示する。各配合成分の配合量はいずれの場合も質量部によるものである。
ヘアトリートメント基剤:
流動パラフィン#70S 1.0
セチルアルコール 1.5
ステアリルアルコール 1.0
塩化ステアリルトリメチル 2.8
アンモニウム(25%)
メチルポリシロキサン100cs 2.0
フェノキシエタノール 0.5
計 8.8
Figure 0004947749
上記のように調製した実施例14〜16、比較例1〜3及び対照例1のヘアトリートメントを、下記に示す[ブリーチ処理]によって損傷を与えた毛束に対し、下記に示す[ヘアトリートメント処理]にて処理した後、[官能試験]に供した。その結果を表2に示す。
[ブリーチ処理]
長さ15cmで重さ1.5gの毛束を3%過酸化水素水と1%アンモニアを含む水溶液に30℃で30分間浸した後、水道水で洗浄した。この処理を5回繰り返すことで、ブリーチ処理とした。
[ヘアトリートメント処理]
上記ブリーチ処理後の毛束を2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。これらの各毛束に対して、上記実施例14〜16、比較例1〜3及び対照例1のヘアトリートメントをそれぞれ2g用いて処理した後、流水ですすぎ、ヘアドライヤーで乾燥した。このポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液による洗浄と、ヘアトリートメンによる処理と、流水によるすすぎと、ドライヤー乾燥とをそれぞれ5回ずつ繰り返した。
[官能試験]
上記実施例14〜16、比較例1〜3及び対照例1のヘアトリートメントによるヘアトリートメント処理をした毛束に対して、柔軟性、保湿感、滑らかさ、艶やかさの4項目について10人のパネリストにブラインド評価(盲検)させた。評価は対照例1を基準として、対照例1に比べて良い場合は<2点>、悪い場合は<0点>、対照例1と同じ場合は<1点>と採点し、評価項目毎の合計得点で評価した。
この[官能試験]の結果を下記の表2に示す。また、表2には調製した各ヘアトリートメンの乳化物としての様相も併記した。
Figure 0004947749
表2に示すように、実施例1〜3のイオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物を配合した実施例14〜16のヘアトリートメントは、小麦タンパク質加水分解物と脂肪族アミドアミンをイオンコンプレックスを形成させないで配合した比較例1〜3のヘアトリートメントに比べて、全ての評価項目で良い官能特性を示していた。つまり、実施例1〜3の脂肪族アミドアミンとのイオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物は、毛髪に吸着し、毛髪に柔軟性、保湿感、滑らかさ及び艶やかさを付与することができる化粧品基材であることが確認できた。また、実施例14〜16のヘアトリートメントは均一な乳化物であるのに対して、比較例1〜3のヘアトリートメントは不均一な乳化物であったことから、実施例1〜3のイオンコンプレックスを有する小麦タンパク質加水分解物からなる化粧品基材はヘアトリートメントなどの乳化型化粧品への配合が容易であることが明らかであった。
実施例17〜19、比較例4〜6及び対照例2:シャンプー
実施例4で脂肪族アミドアミンの混合物とのイオンコンプレックスを形成させたエンドウタンパク質加水分解物(つまり、脂肪族アミドアミンの混合物とのイオンコンプレックスを有するエンドウタンパク質加水分解物)、実施例5で塩化ステアリルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを形成させたケラチン加水分解物(つまり、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを有するケラチン加水分解物)及び実施例6でステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを形成させたアシル化加水分解大豆タンパク(つまり、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有するアシル化加水分解大豆タンパク)を用いて、表3に示す組成のシャンプーを実施例17〜19として調製した。また、実施例4のイオンコンプレックスを有するエンドウタンパク質加水分解物に代えて、実施例4でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いたエンドウタンパク質加水分解物と脂肪族アミドアミンの混合物をイオンコンプレックスを形成させずに配合したシャンプーを比較例4として同様に調製した。実施例5のイオンコンプレックスを有するケラチン加水分解物に代えて、実施例5でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いたケラチン加水分解物と塩化ステアリルトリメチルアンモニウムをイオンコンプレックスを形成させずに配合したシャンプーを比較例5として同様に調製した。実施例6のイオンコンプレックスを有するアシル化加水分解大豆タンパクに代えて、実施例6でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いたアシル化加水分解大豆タンパクとステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをコンプレックスを形成させずに配合したシャンプーを比較例6として同様に調製した。さらに、エンドウタンパク質加水分解物、ケラチン加水分解物、アシル化加水分解大豆タンパク、脂肪族アミドアミン及び塩化ステアリルトリメチルアンモニウムのいずれも配合していないシャンプーも対照例2として調製した。なお、表3に実施例17〜19、比較例4〜6及び対照例2のシャンプーの組成を表示するにあたって、スペース上の関係で、それらのシャンプーに共通して配合する成分をシャンプー基剤として表3に先立って表示し、表3には、それらの共通成分全体の量をシャンプー基剤の量として表示する。また、表3では、スペース上の関係で、「実施例4でイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して、「実施例4で用いた」成分と表示し、「実施例5でイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して、「実施例5で用いた」成分と表示し、「実施例6のイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して「実施例6で用いた」成分と表示する。なお、いずれの場合においても、各成分の配合量はいずれも質量部によるものである。
シャンプー基剤:
ポリオキシエチレン(3)ラウリル 30.0
エーテル硫酸ナトリウム(30%)
ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド※1 5.0
カチオン化セルロース※2 0.1
パラオキシ安息香酸エステル・フェノキシエタノール混合物※3 0.5
計 35.6
※1:花王株式会社製 コカミドメチルMEA(商品名)
※2:ユニオンカーバイド株式会社製 Ucare Polymer JR−400(商品
名)
※3:株式会社成和化成製 セイセプトH(商品名)
Figure 0004947749
上記のように調製した実施例17〜19、比較例4〜6及び対照例2の各シャンプー2gを用いて前記と同様の[ブリーチ処理]にて損傷を与えた毛束を洗浄し、流水でゆすいだ後、ヘアドライヤーで乾燥した。このシャンプー洗浄、ゆすぎ及びヘアドライヤーによる乾燥をそれぞれ10回ずつ繰り返した後、前記と同様の[官能試験]に供した。その結果を表4に示す。
Figure 0004947749
表4に示すように、実施例4〜6のイオンコンプレックスを有するペプチド又はその誘導体を配合した実施例17〜19のシャンプーは、ペプチド又はその誘導体と脂肪族アミドアミン又はアルキル型4級アンモニウムをイオンコンプレックスを形成させずに配合した比較例4〜6のシャンプーに比べて、全ての評価項目で良い官能特性を示していた。つまり、実施例4〜6のイオンコンプレックスを有するペプチド又はその誘導体は、毛髪に吸着し、毛髪に柔軟性、保湿感、滑らかさ及び艶やかさを付与できる化粧品基材であることが確認できた。
実施例20〜22、比較例7〜9及び対照例3:パーマネントウェーブ用第1剤
実施例7でステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドとのイオンコンプレックスを形成させた第4級アンモニウム化加水分解カゼイン(つまり、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドとのイオンコンプレックスを有する第4級アンモニウム化加水分解カゼイン)、実施例8で塩化ジステアリルジメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを形成させたシリル化加水分解ゴマタンパク(つまり、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを有するシリル化加水分解ゴマタンパク)、及び実施例9で塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを形成させたグリセリル化加水分解米タンパク(つまり、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムとのイオンコンプレックスを有するグリセリル化加水分解米タンパク)を用いて、表5に示す組成のパーマネントウェーブ用第1剤を実施例20〜22として調製した。また、実施例7のイオンコンプレックスを有する第4級アンモニウム化加水分解カゼインに代えて、実施例7でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いた第4級アンモニウム化加水分解カゼインとステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドをイオンコンプレックスを形成させずに配合したパーマネントウェーブ用第1剤を比較例7として同様に調製した。実施例8のイオンコンプレックスを有するシリル化加水分解ゴマタンパクに代えて、実施例8でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いたシリル化加水分解ゴマタンパクと塩化ジステアリルジメチルアンモニウムをイオンコンプレックスを形成させずに配合したパーマネントウェーブ用第1剤を比較例8として同様に調製した。実施例9のイオンコンプレックスを有するグリセリル化加水分解米タンパクに代えて、実施例9でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いたグリセリル化加水分解米タンパクと塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムをイオンコンプレックスを形成させずに配合したパーマネントウェーブ用第1剤を比較例9として同様に調製した。さらに、第4級アンモニウム化加水分解カゼイン、シリル化加水分解ゴマタンパク、グリセリル化加水分解米タンパク、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及び塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムのいずれも配合していないパーマネントウェーブ用第1剤も対照例3として調製した。なお、表5に実施例20〜22、比較例7〜9及び対照例3のパーマネントウェーブ用第1剤の組成を表示するにあたって、スペース上の関係で、それらのパーマネントウェーブ用第1剤に共通して配合する成分をパーマネントウェーブ用第1剤基剤として表5に先立って表示し、表5には、それらの共通成分全体の量をパーマネントウェーブ用第1剤の基剤の量として表示する。また、表5では、スペース上の関係で、「実施例7でイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して、「実施例7で用いた」成分と表示し、「実施例8でイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して、「実施例8で用いた」成分と表示し、「実施例9でイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して、「実施例9で用いた」成分と表示する。なお、いずれの場合においても、各成分の配合量はいずれも質量部によるものである。
パーマネントウェーブ用第1剤基剤:
チオグリコール酸アンモニウム(50%) 12.0
モノエタノールアミン 1.8
ポリオキシエチレン(15) 0.5
ラウリルエーテル
エデト酸ニナトリウム 0.1
アンモニア水(28%) 1.6
計 16.0
Figure 0004947749
上記のように調製した実施例20〜22、比較例7〜9及び対処例3のパーマネントウェーブ用第1剤による毛髪の処理は下記のように行った。すなわち、長さ20cmに揃えた毛髪をあらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水の流水中でゆすいで室温で風乾し、これらの毛髪50本からなる毛束を7本作製し、それらをそれぞれ長さ10cmで直径1cmのロッドに巻き付けた。そのロッドに巻き付けた毛束に、実施例20〜22、比較例7〜9及び対照例3のパーマネントウェーブ用第1剤をそれぞれ2mlずつ塗布し、それらの毛束をラップで覆い、15分間放置後、水道水による流水で静かに10秒間洗浄した。ついで、パーマネントウェーブ用第2剤を2mlずつ塗布し、ラップで覆い、15分間放置した後、毛束をロッドからはずし、流水中で30秒間静かに洗浄した。各毛束は60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、乾燥後、前記と同様の[官能試験]に供した。その結果を表6に示す。
Figure 0004947749
表6に示すように、実施例7〜9のイオンコンプレックスを有するペプチド誘導体を配合した実施例20〜22のパーマネントウェーブ用第1剤は、ペプチド誘導体と脂肪族アミドアミン又はアルキル型4級アンモニウムをイオンコンプレックスを形成させずに配合した比較例7〜9のパーマネントウェーブ用第1剤に比べて、全ての評価項目で良い官能特性を示していた。つまり、実施例7〜9のイオンコンプレックスを有するペプチド誘導体は毛髪に吸着し、毛髪に柔軟性、保湿感、滑らかさ及び艶やかさを付与できる化粧品基材であることが確認できた。
実施例23〜25、比較例10〜12及び対照例4:酸化型染毛剤第1剤
実施例10でステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを形成させたブチルグリセリル化加水分解シルク(つまり、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有するブチルグリセリル化加水分解シルク)、実施例11でステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを形成させた2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲン(つまり、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有する2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲン)、及び実施例12でステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを形成させたポリアスパラギン酸(つまり、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドとのイオンコンプレックスを有するポリアスパラギン酸)を用いて、表7に示す組成の酸化型染毛剤第1剤を実施例23〜25として調製した。また、実施例10のイオンコンプレックスを有するブチルグリセリル化加水分解シルクに代えて、実施例10でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いたブチルグリセリル化加水分解シルクとステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオンコンプレックスを形成させずに配合した酸化型染毛剤第1剤を比較例10として同様に調製した。実施例11のイオンコンプレックスを有する2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲンに代えて、実施例11でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いた2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲンとステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオンコンプレックスを形成させずに配合した酸化型染毛剤第1剤を比較例11として同様に調製した。実施例12のイオンコンプレックスを有するポリアスパラギン酸に代えて、実施例12でイオンコンプレックスの形成にあたって原料として用いたポリアスパラギン酸とステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオンコンプレックスを形成させずに配合した酸化型染毛剤第1剤を比較例12として同様に調製した。さらに、ブチルグリセリル化加水分解シルク、2−ヒドロキシへキシル化加水分解コラーゲン、ポリアスパラギン酸、及びステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドのいずれも配合していない酸化型染毛剤第1剤も対照例4として調製した。なお、表7に実施例23〜25、比較例10〜12及び対照例4の酸化型染毛剤第1剤の組成を表示するにあたって、スペース上の関係で、それらの酸化型染毛剤第1剤に共通して配合する成分を酸化型染毛剤第1剤基剤として表7に先立って表示し、表7には、それらの共通成分全体の量を酸化型染毛剤第1剤基剤の量として表示する。また、表7では、スペース上の関係で、「実施例10でイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して、「実施例10で用いた」成分と表示し、「実施例11でイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して、「実施例11で用いた」成分と表示し、「実施例12でイオンコンプレックスの形成にあたって用いた」成分に関し、簡略化して、「実施例12で用いた」成分と表示する。なお、いずれの場合においても、各成分の配合量はいずれも質量部によるものである。
酸化型染毛剤第1剤基剤:
p−フェニレンジアミン 3.0
レゾルシン 0.5
オレイン酸 20.0
ポリオキシエチレン(10) 15.0
オレイルエーテル
イソプロパノール 10.0
アンモニア水(28%) 10.0
計 58.5
Figure 0004947749
また、上記実施例23〜25、比較例10〜12及び対照例4の酸化型染毛剤第1剤と組み合わせて用いる酸化型染毛剤第2剤の組成を次の表8に示す。
Figure 0004947749
上記酸化型染毛剤第1剤及び第2剤による毛髪の処理は下記のように行った。すなわち、長さ15cmで重さ1gの毛束を7本用意し、それらの毛束を2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水の流水中でゆすいだ後、風乾した。これらの毛束に、実施例23〜25、比較例10〜12および対照例4の酸化型染毛剤第1剤のそれぞれと、表8に示す酸化型染毛剤第2剤を同量ずつ混合した酸化型染毛剤をそれぞれ2gずつ均一に塗布した後、30分間放置し、お湯でゆすぎ、ついで2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水道水の流水中でゆすぎ、ヘアドライヤーで熱風乾燥した。乾燥後の毛束を前記と同様の[官能試験]に供した。その結果を表9に示す。
Figure 0004947749
表9に示すように、実施例10〜12のイオンコンプレックスを有するペプチド又はペプチド誘導体を配合した実施例23〜25の酸化型染毛剤第1剤は、ペプチド又はペプチド誘導体とステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドをイオンコンプレックスを形成させずに配合した比較例10〜12の酸化型染毛剤第1剤に比べて、全ての評価項目で良い官能特性を示していた。つまり、実施例10〜12のイオンコンプレックスを有するペプチド又はペプチド誘導体は毛髪に吸着し、毛髪に柔軟性、保湿感、滑らかさ及び艶やかさを付与できる化粧品基材であることが確認できた。

Claims (7)

  1. 構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体であって、少なくともその陰イオン性官能基の一部が下記の一般式(I)
    Figure 0004947749
    (式中、R は、炭素数11〜25の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を表し、R は炭素数1〜3のアルキレン基、R 、R は炭素数1〜3のアルキル基を表す)
    で表される脂肪酸アミドアミンイオン結合することでイオンコンプレックスを形成しているペプチド又はペプチド誘導体からなることを特徴とする化粧品基材。
    ただし、前記ペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部は、植物タンパク質加水分解物、ケラチン加水分解物、カゼイン加水分解物、ポリアスパラギン酸またはポリ(γ−グルタミン酸)である。
  2. 前記構成アミノ酸に酸性アミノ酸を有するペプチド又はペプチド誘導体の全陰イオン性官能基の30モル%以上が、前記一般式(I)で表される脂肪酸アミドアミンとイオン結合することでイオンコンプレックスを形成していることを特徴とする請求項1記載の化粧品基材。
  3. 前記ペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部のアミノ酸平均重合度が、2〜500であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧品基材。
  4. 前記ペプチド又はペプチド誘導体のペプチド部が、植物タンパク質の加水分解物又はケラチンの加水分解物であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の化粧品基材。
  5. 前記ペプチド誘導体が、アシル化加水分解タンパク、グリセリル化加水分解タンパク、第4級アンモニウム化加水分解タンパク、シリル化加水分解タンパク、アルキルグリセリル化加水分解タンパク又は2−ヒドロキシアルキル化加水分解タンパクであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化粧品基材。
  6. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の化粧品基材を含有することを特徴とする化粧品。
  7. 前記化粧品基材の含有量が0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項に記載の化粧品。
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