JP4936593B2 - 磁石粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、高性能永久磁石として用いられる磁石粉末の製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】
従来から、高性能永久磁石の一種として、Sm−Co系磁石、Nd−Fe−B系磁石などの希土類系磁石が知られている。これらの磁石にはFeやCoが多量に含まれ、飽和磁束密度の増大に寄与している。また、NdやSmなどの希土類元素は、結晶場中における4f電子の挙動に由来して、非常に大きな磁気異方性をもたらす。これにより保磁力の増大が図られている。
【0003】
このような高性能磁石は、主としてスピーカ、モータ、計測器などの電気機器に使用されている。近年、各種電気機器への小形化の要求が高まり、それに対応するためにより高性能な永久磁石が求められている。このような要求に対して、磁石特性に優れたTbCu7型結晶構造を有する化合物やそれに窒素を含有せしめた化合物が提案されている(特開平6−172936号公報、同9−74006号公報、米国特許第5,480,495号、同第5,482,573号、同第5,549,766号、同第5,658,396号、同第5,716,462号など参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
TbCu7型結晶相を主相とする磁石材料は、通常、液体急冷法やメカニカルアロイング法などによる母合金の作製工程、母合金の金属組織の制御を主たる目的とした熱処理工程、さらに主相の格子間位置に窒素を導入して主相の結晶磁気異方性を高めることを主たる目的とした窒化処理工程などを経て作製される。
【0005】
窒化処理工程では、通常以下のようにして磁石材料中に窒素を導入している。すなわち、窒素ガスもしくはアンモニアなどの窒素化合物ガスを含む雰囲気中で、材料を熱処理して窒素を吸収させる。この際、従来は窒素の吸収効率を高めるために、急冷薄帯などの母合金材料を平均粒子径が数10μm〜数100μm程度となるように粉砕して、比表面積を大きくした後に、窒化処理工程としての熱処理を実施している。
【0006】
上述したような磁石材料の窒化処理工程において、粒子径が小さい粉末は熱処理時に過剰に窒素を吸収するなどして、磁気特性が劣化してしまう。従来の窒素含有の磁石材料は、過剰に窒素を吸収するなどして磁気特性が劣化した微粉を比較的多量に含有している。このような微粉を多量に含有していると、磁石材料全体としての磁気特性が劣化してしまう。このようなことから、窒化処理を施す磁石材料においては、窒素を過剰に吸収する微粉量を低減することによって、磁気特性の低下を抑制することが求められている。
【0007】
さらに、上記した磁石材料の製造工程のうち、急冷工程では例えばメルトスパン法により薄帯状の合金が作製される。このような合金薄帯(急冷薄帯)においては、数nmから数10nmというような平均結晶粒径を持つ微細な結晶相(例えばTbCu7型結晶相)が生成される。このような微細な結晶相は、磁石材料の高い残留磁化、ひいては高い最大磁気エネルギー積を得るための必要条件となっている。
【0008】
しかしながら、従来のメルトスパン法などによる急冷工程では、TbCu7型結晶相などからなる主相の結晶粒径にばらつきが生じやすく、これが磁石材料の残留磁化や最大磁気エネルギー積の低下原因となっている。このように、TbCu7型結晶相を主相とする磁石材料の特性を向上させる上で、磁石材料の形成材料となる急冷薄帯、ひいてはそれを用いた磁石材料の結晶粒径の制御が重要である。そこで、結晶粒径を再現性よくかつ均一に微細化した磁石材料が求められている。
【0009】
本発明の目的は、窒化処理で磁気特性が劣化する微粉の量を少なくすることによって、優れた磁気特性を再現性よく得ることを可能にした磁石粉末の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、母合金として液体急冷法により作製した急冷合金(例えば急冷薄帯)を用い、この急冷合金を従来のように平均粒子径が数10〜数100μm程度となるように粉砕することなく、窒化処理工程に供することによって、高い磁気特性を有する磁石粉末が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、急冷合金薄帯などの急冷合金の表面積をSとしたとき、表面積Sの平均値が0.99〜11.32mm 2 かつ表面積が0.1mm 2 以上である粒子の比率が50%以上である急冷合金に対して、窒素を含有させる熱処理を施すことによって、過剰に窒素を吸収したり、また酸化の影響を受けるなどして磁気特性が劣化した微粉量を低減することができる。このような微粉量を低減した磁石粉末によれば、磁石粉末全体としての磁気特性を高めることが可能である。
【0012】
この際、急冷薄帯などの急冷合金は窒素を含有することにより割れるため、当初の急冷合金の表面積Sの平均値が0.99〜11.32mm 2 と大きくても、窒素の吸収効率を低下させることはない。よって、所望量の窒素を含有せしめた磁石粉末を得ることができる。
【0014】
本発明の第1の磁石粉末の製造方法は、一般式:R1 XR2 YBZT100−X−Y−Z(式中、R1は希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、R2はZr、HfおよびScから選ばれる少なくとも1種の元素を、TはFeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、X、YおよびZはそれぞれ2原子%≦X、0.01原子%≦Y、4≦X+Y≦20原子%、0≦Z≦10原子%を満足する数である)で表される組成を有し、かつTbCu7型結晶相を主相とし、表面積の平均値が0.99〜11.32mm 2 かつ表面積が0.1mm 2 以上である粒子の比率が50%以上となる合金薄帯を、急冷法により作製する工程と、
前記急冷合金薄帯に対して0.1〜20原子%の範囲の窒素を吸収させる熱処理を施し、最大径が22μm以下の微小粒子の比率が20重量%以下、表面積が1×10−3mm2以下の微小粒子の比率が20重量%以下、かつ磁石粉末の平均窒素含有量に対する最大径が22μm以下の微小粒子中の窒素含有量の比率が1.3以下の磁石粉末を得る熱処理工程と
を有することを特徴としている。
【0016】
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
本発明の第1の磁石粉末は、 一般式:(R1 XR2 YBZT100−X−Y−Z)100−QNQ…(1)
(式中、R1は希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、R2はZr、HfおよびScから選ばれる少なくとも1種の元素を、TはFeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、X、Y、ZおよびQはそれぞれ2原子%≦X、0.01原子%≦Y、4≦X+Y≦20原子%、0≦Z≦10原子%、0.1≦Q≦20原子%を満足する数である)で表される組成を有し、かつTbCu7型結晶相(TbCu7型結晶構造を有する相)を主相とするものである。
【0018】
第1の磁石粉末は、特に表面積の平均値が0.5mm 2 以上を維持するように破砕された急冷合金薄帯に対して窒素を吸収させるための熱処理を施すことにより得られたものであって、最大径が22μm以下の微小粒子の比率が20重量%以下、表面積が1×10 −3 mm 2 以下の微小粒子の比率が20重量%以下、かつ磁石粉末の平均窒素含有量に対する最大径が22μm以下の微小粒子中の窒素含有量の比率が1.3以下であることを特徴としている。
【0019】
まず、本発明の磁石粉末を構成する各成分の配合理由および配合量の規定理由について述べる。
【0020】
R1元素としての希土類元素は、磁石材料に大きな磁気異方性をもたらし、ひいては高い保磁力を与える成分である。このようなR1元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Lu、Yなどの希土類元素が挙げられる。これらのうち、特にR1元素の50原子%以上がSmであることが好ましい。これにより主相の磁気異方性を高め、保磁力を増大させることができる。
【0021】
R1元素の含有量Xは金属成分の2原子%以上とする。ここで言う金属成分とは、窒素および後述するX元素を除く全ての成分を含むものとし、便宜的に硼素を含むものとする。金属成分中のR1元素の含有量が2原子%未満であると磁気異方性の低下が著しく、大きな保磁力を有する磁石粉末を得ることが困難になる。一方、Rl元素を過剰に含むと磁石粉末の飽和磁束密度が低下する。金属成分中のR1元素の含有量Xは4≦x≦16原子%の範囲とすることがより好ましい。
【0022】
R2元素はZr、HfおよびScから選ばれる少なくとも1種の元素である。このようなR2元素は、主相の希土類サイトを占有して希土類サイトの平均原子半径を小さくするなどの作用を有する。これにより、TbCu7結晶相からなる主相中のFeやCoの濃度が高められる。さらに、R2元素は結晶粒を微細化するなど、磁石材料の微細組織に好影響を及ぼし、保磁力や残留磁化の向上にも寄与する。
【0023】
金属成分中のR2元素の含有量Yは、上記したような効果を得る上で0.01原子%以上とする。より好ましい金属成分中のR2元素の含有量Yは0.1≦Y≦10原子%の範囲である。さらに、Yは1≦Y≦3原子%の範囲とすることが望ましい。
【0024】
R1元素とR2元素の合計量(X+Y)は、磁石粉末を高保磁力化するために、金属成分の4原子%以上とする。金属成分中のR1元素とR2元素の合計量(X+Y)が4原子%未満であるとα−Fe(Co)の析出が著しくなり、保磁力などの磁気特性が劣化する。一方、20原子%を超えると飽和磁化の低下が大きくなる。よって、金属成分中のR1元素とR2元素の合計量(X+Y)は4≦X+Y≦20原子%の範囲とする。XとYの合計量は4≦X+Y≦16原子%の範囲とすることがより好ましい。
【0025】
T元素は、FeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素であり、磁石粉末の飽和磁化を増大させる働きを有する。飽和磁化の増大は残留磁化の増大をもたらし、これに伴って最大磁気エネルギー積も増大する。このようなT元素は磁石粉末中に70原子%以上含有させることが好ましく、これにより効果的に飽和磁化を増大させることができる。さらに、磁石粉末の飽和磁化をより一層増大させる上で、T元素の50原子%以上をFeとすることが好ましい。
【0026】
T元素の一部はTi、V、Cr、Mo、W、Mn、Ga、Al、Sn、Ta、Nb、SiおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素(以下M元素と記す)で置換してもよい。このようなM元素でT元素の一部を置換することにより、耐食性や耐熱性などの実用上重要な諸特性を改善することができる。ただし、T元素をあまり多量のM元素で置換すると磁気特性の低下が顕著となるため、M元素によるT元素の置換量は20原子%以下とすることが望ましい。
【0027】
B(硼素)は、磁石材料の残留磁化の向上に有効な元素であるが、必ずしも本発明の磁石粉末中に配合しなければならないものではない。Bを過剰に含有すると、熱処理工程でR2Fe14B相の生成が顕著になり、磁石粉末の磁気特性が劣化するおそれがある。従って、Bを配合する場合の含有量Zは金属成分の10原子%以下とする。金属成分中のBの含有量Zは0.001≦Z≦4原子%の範囲とすることがより好ましい。さらに好ましくは0.001≦Z≦2原子%の範囲である。
【0028】
N(窒素)は、主として主相の格子間位置に存在し、Nを含まない場合と比較して主相のキュリー温度や磁気異方性を向上させる働きを有する。このうち、磁気異方性の向上は磁石粉末に大きな保磁力を付与する上で重要である。Nは少量の配合でその効果を発揮するが、あまり過剰に含有させるとアモルファス相やα−Fe相が生成しやすくなり、磁石粉末の磁気特性を劣化させる。よって、磁石粉末中の窒素の含有量Qは0.1≦Q≦20原子%の範囲とする。より好ましい窒素の含有量Qは5≦Z≦20原子%の範囲であり、さらに好ましくは10≦Z≦20原子%の範囲である。
【0029】
窒素(N)の一部は、水素(H)、炭素(C)およびリン(P)から選ばれる少なくとも1種の元素(X元素)で置換してもよい。これにより、保磁力などの磁気特性を改善することができる。ただし、X元素によるNの置換量があまり多いと、主相のキュリー温度や磁気異方性の向上効果が低下する。このため、X元素によるNの置換量はNの50原子%以下とする。
【0030】
なお、上記した(1)式で表される磁石粉末は、酸化物などの不可避的不純物を含有することを許容する。
【0031】
窒素は上述した各元素を所定量含む急冷薄帯などに熱処理を施すことにより導入される。この際、窒素は表面積Sの平均値が0.5mm2以上である急冷薄帯、好ましくは表面積Sが0.1mm2以上の粒子が50%以上である急冷薄帯に対して熱処理を施すことにより導入される。このように、急冷薄帯を微粉砕することなく、粗大な急冷薄帯に窒素導入処理(窒化処理)を施すことによって、過剰に窒素を吸収するなどして磁気特性が劣化した微粉量が低減される。具体的には、最大径が22μm以下の微小粒子の比率を20重量%以下とした、磁気特性に優れる薄片状の磁石粉末を得ることができる。
【0032】
急冷薄帯は窒素を含有させることにより割れる。このような窒素の吸収に伴う薄帯の破断は、窒化処理時間の経過と共に順次進行する。従って、表面積Sの平均値が0.5mm2以上、好ましくは表面積Sが0.1mm2以上の粒子が50%以上というように、当初の急冷薄帯が比較的粗大であっても、言い換えると当初の急冷薄帯の比表面積が小さくても、窒素の吸収効率を低下させることはない。すなわち、所望量の窒素を含有させることができる。
【0033】
窒化処理を施す急冷薄帯の表面積が大きければ、窒化処理後に得られる磁石粉末の粒子径を大きく保つことができる。すなわち、磁石粉末を構成する磁石粒子において、過剰に窒素を吸収したり、また酸化の影響を受けるなどして磁気特性が劣化する、最大径が22μm以下の微小粒子の比率を20重量%以下とすることができる。
【0034】
このような微粉量を低減した磁石粉末によれば、磁石粉末全体としての磁気特性を向上させることができる。磁石粉末の磁気特性はT元素中のCo量を増大することによっても向上させることができるが、CoはFeに比べて高価であるため、磁石粉末の製造コストの増大を招く。本発明の磁石粉末によれば、Co量の増大などを図ることなく、安価に磁気特性を向上させることができる。さらに、微粉量を低減した磁石粉末は取扱い性に優れることから、それを用いたボンド磁石の製造コストの低減などに寄与する。
【0035】
最大径が22μm以下の微粉の比率が20重量%を超えると、そのような微粉が磁石粉末全体の磁気特性に及ぼす影響が大きくなり、磁石粉末全体としての磁気特性が低下する。さらに、窒素含有量が多い微粉の比率が20重量%を超えると、磁石粉末中の窒素量の分布が不均一になり、これが磁石粉末の磁気特性を劣化させる。上記した微粉の磁石粉末中の比率は10重量%以下とすることがさらに好ましい。ここで、磁石粒子の最大径とはそれを含む最小円の直径を示すものとする。
【0036】
本発明において、最大径が22μm以下の微小粒子の比率は磁石粉末を画像処理し、その結果に基づいて算出することができる。また、本発明における最大径が22μm以下の微小粒子の比率は、目開き22μmの篩(#22の篩)で磁石粉末を篩い分けし、この篩を通過した粒子の比率で近似することができる。
【0037】
本発明の磁石粉末は、さらに表面積Sが1×10−3mm2以下の微小粒子の比率が20重量%以下である。これにより、さらに磁石粉末の磁気特性を高めることができる。表面積が1×10−3mm2以下の微小粒子の比率は10重量%以下であることがさらに好ましい。急冷薄帯に窒化処理を施して得られる磁石粒子の形状はおおよそ平板状(薄片状)であるため、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて磁石粒子を観察し、その厚さおよび平板面の面積を測定することにより、磁石粒子の表面積を算出することができる。
【0038】
本発明の磁石粉末は、TbCu7型結晶相を主相とするものである。TbCu7型結晶相を主相とする磁石材料は、Th2Zn17結晶相を主相とする磁石材料などに比べて、飽和磁化などの磁気特性に優れる。さらに、TbCu7型結晶相は格子定数の比c/aが0.847以上であることが好ましい。このような場合に、より大きな飽和磁化を得ることができ、さらに残留磁化を増大させることができる。TbCu7型結晶相の格子定数の比c/aは、磁石粉末の成分組成や製造方法により制御することができる。
【0039】
なお、本発明の磁石粉末における主相とは、合金中のアモルファス相を含む構成相中の体積比が最大のものであり、具体的には体積比が50%以上であることが好ましい。TbCu7型結晶相の体積比は80%以上であることがより好ましい。磁石粉末の構成相はX線回折などにより容易に確認することができる。磁石材料中に生成する各相の体積占有率は、磁石材料の断面の透過型電子顕微鏡写真から面積分析法で求めることができる。面積分析法による断面積比で体積比を近似的に表すことができる。本発明における体積占有率は10点を測定した平均値とする。
【0040】
本発明において、窒素が導入された薄片状の磁石粉末は、ボンド磁石などを作製するにあたって、さらに粉砕して使用してもよい。本発明の磁石粉末は上述したように、予め比較的粗大な急冷薄帯に対して窒化処理を施し、磁気特性が劣化した微小粒子の比率を低減しているため、その後に粉砕しても従来の磁石粉末のように、磁石粉末全体としての磁気特性が劣化することはない。
【0041】
本発明によれば、最大径が22μm以下の微小粒子中の窒素含有量を、磁石粉末の平均窒素含有量に対して1.3倍以下とすることができる。このように、微粉中の窒素量が過剰となることを抑制することによって、磁石粉末全体としての磁気特性の向上を図ることができる。ここで、微小粒子中の窒素含有量の平均窒素含有量に対する比率とは、磁石粉末の平均窒素含有量をx、微小粒子中の窒素含有量をyとしたとき、y/xで表される値である。
【0042】
本発明の磁石粉末の粉砕は、例えば最大径が10〜500μmの範囲となるように実施することが好ましい。磁石粉末の最大径を10μm未満とすると、酸化などの影響で磁気特性が劣化するおそれがある。一方、磁石粉末の最大径が500μmを超える場合には、粉砕による効果を十分に得ることができない。すなわち、磁石粉末の粒子径を上記した範囲に調整することによって、本発明の磁石粉末を用いてボンド磁石を成形する際に、充填密度を高めて磁気特性を向上させたり、生産性を高めることができる。
【0043】
本発明の第1の磁石粉末は、例えば以下のようにして製造される。
【0044】
まず、所定量のR1、R2、T、Bの各元素、さらには必要に応じてM元素などを含有するインゴットを、アーク溶解または高周波溶解にて調製する。このインゴットを小片に切り出し、高周波誘導溶解などにより溶融した後、ノズルから溶湯を高速で回転する金属製ロール上に噴出させて急冷薄帯を作製する。このような単ロール法の他に、急冷薄帯は双ロール法、回転ディスク法、ガスアトマイズ法などを適用して作製してもよい。
【0045】
急冷工程はAr、Heなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。このような雰囲気中で急冷させることによって、酸化による磁気特性の劣化を防止することができる。急冷工程で得られた急冷薄帯には、必要に応じてAr、Heなどの不活性ガス雰囲気中または真空中にて、300〜1000℃程度の温度で0.1〜10時間の熱処理を施してもよい。このような熱処理を施すことにより、急冷工程で生成されるアモルファス相を結晶化したり、また保磁力などの磁気特性を向上させることができる。熱処理条件は700〜800℃の温度で0.2〜1時間とすることがより好ましい。
【0046】
上述したような急冷および熱処理工程によって、一般式:R1 XR2 YBZT100−X−Y−Z …(2)
(式中、R1は希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、R2はZr、HfおよびScから選ばれる少なくとも1種の元素を、TはFeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、X、YおよびZはそれぞれ2原子%≦X、0.01原子%≦Y、4≦X+Y≦20原子%、0≦Z≦10原子%を満足する数である)
で表される組成を有し、かつTbCu7型結晶相を主相とする合金薄帯を作製する。
【0047】
次に、急冷薄帯に窒化処理を施して窒素を吸収させることによって、本発明の薄片状の磁石粉末が得られる。窒化処理は0.001〜100気圧の窒素ガス雰囲気中にて、400〜500℃の温度下で実施することが好ましい。窒化処理は0.1〜300時間の範囲で実施することが好ましい。
【0048】
窒化処理時の雰囲気は窒素ガスに代えて、アンモニアガスなどの窒素化合物ガスを用いてもよい。アンモニアガスを用いた場合、窒化反応速度を高めることができる。この際、水素、窒素、アルゴンなどのガスを同時に用いることによって、窒化反応速度を制御することもできる。さらに、窒化処理の前工程として0.001〜100気圧の水素ガス雰囲気中にて100〜700℃の温度で熱処理を行ったり、あるいは窒素ガスに水素ガスを混合したガスを用いることによって、窒化処理の効率を高めることができる。
【0049】
上記した窒化処理は、従来のように粉末の平均粒子径を数10〜数100μmとするような粉砕工程を行うことなく、表面積Sの平均値が0.5mm2以上である急冷薄帯、好ましくは表面積Sが0.1mm2以上の粒子が50%以上である急冷薄帯に対して実施する。
【0050】
窒化処理を施す急冷薄帯の表面積Sの平均値が0.5mm2未満であると、あるいは表面積Sが0.1mm2以上の粒子が50%未満であると、熱処理時に過剰に窒素を吸収するなどして磁気特性が劣化する微粉が結果的に増大する。これによって、磁石粉末全体としての磁気特性が劣化する。窒化処理を施す急冷薄帯の表面積Sの平均値は1.0mm2以上であることがさらに好ましい。
【0051】
この際、急冷薄帯は窒素を含有することにより割れる。このような窒素含有に伴う薄帯の破断は窒化処理時間の経過と共に順次進行する。従って、当初の急冷薄帯の表面積Sの平均値が0.5mm2以上と大きくても、窒素の吸収効率を低下させることはない。すなわち、前述したような所望量の窒素を含有させることができる。これらによって、磁石粉末全体として磁気特性を向上させることができる。
【0052】
本発明においては、窒化処理工程の前処理工程として、急冷薄帯に対して最大径が50μm以下の比較的微細な粒子が多量に発生しないような破砕工程を実施する。このような前処理工程は急冷薄帯の表面積Sの平均値が0.5mm2以上を維持するように実施する。好ましくは、表面積Sが0.1mm2以上である粒子の比率が50%以上となるように、破砕工程を実施する。破砕工程は、最大径が50μm以下の粒子の比率が10重量%以下となるように調整することが好ましい。
【0053】
窒化処理工程を経た薄片状の磁石粉末は、必要に応じてさらに粉砕される。この際、前述したように磁石粒子の最大径は10〜500μmの範囲とすることが好ましい。このような粉砕工程を実施しても、本発明の磁石粉末は予め急冷薄帯の段階で窒素導入処理が施されているため、従来の磁石粉末のように磁気特性が劣化することはない。
【0054】
次に、参考例としての磁石粉末ついて説明する。
【0055】
参考例の磁石粉末は、前述した(1)式で組成を有し、かつTbCu7型結晶相を主相とするものである。このような磁石粉末において、参考例では磁石粉末を構成する粒子の表面粗さをJIS B 0601で規定する最大高さRyで5μm以下としている。磁石粒子の表面粗さは最大高さRyで2μm以下とすることがより好ましく、さらには最大高さRyで1μm以下とすることが望ましい。なお、主相としてのTbCu7型結晶相の体積占有率や格子定数比などについては、第1の磁石粉末と同様とすることが好ましい。
【0056】
磁石粒子の表面粗さは、例えば最大径が150μm以上の粒子を用いることで測定することができる。前述したように、急冷薄帯に窒化処理を施して得られる磁石粒子の形状はおおよそ平板状(薄片状)であるため、そのうち例えば最大径が150μm以上の粒子を用いることによって、最大高さRyを測定することができる。
【0057】
上述したような磁石粉末は、最大高さRyが5μm以下の合金薄帯(急冷薄帯)に窒素を含有させることにより得ることができる。前述した(2)式で表される組成を有する急冷薄帯を、単ロール法や双ロール法などの液体急冷法を適用して作製する場合、急冷時の溶湯とロールとの濡れ性を改善することによって、急冷薄帯の表面平滑性を向上させることができる。
【0058】
一般に、溶湯の濡れ性が悪いと急冷薄帯の平滑性が悪く、濡れ性がよい場合には表面が平滑な急冷薄帯が製造される。ロールとの濡れ性が良好で表面粗さが小さい急冷薄帯(合金薄帯)、具体的には最大高さRyが5μm以下の急冷薄帯は、ロールに接触する面(ロール面)と自由凝固面との冷却速度の差が小さい。従って、薄帯の厚さが厚くても材料全体が均一かつ十分に急冷される。
【0059】
図1に模式的に示すように、表面が平滑な急冷薄帯1は薄帯全体として結晶粒径を再現性よくかつ均一に微細化することができる。一方、図2に示すように、表面粗さが大きい合金薄帯2は十分に急冷されていない部分を有する。そのような部分では結晶粒径が粗大化してしまう。
【0060】
表面粗さを最大高さRyで5μm以下とした急冷薄帯1は、薄帯全体として微細かつ均一な結晶粒径を有するものである。このような急冷薄帯1に窒化処理を施すことによって、表面粗さが最大高さRyで5μm以下の平坦な磁石粒子が得られる。このような磁石粒子は平均結晶粒径が数nmから数10nmの微細なTbCu7型結晶相を有する。表面を平滑化した急冷薄帯1は、その後の窒化処理工程で材料全体を均一に窒化するという観点からも好都合である。これらによって、磁石粉末の残留磁化や最大磁気エネルギー積などの磁気特性を再現性よく高めることが可能となる。
【0061】
さらに、参考例で用いられる磁石材料用急冷薄帯は、厚さが厚くても材料全体が均一かつ十分に急冷されている。例えば、厚さが17μm以上というような厚い急冷薄帯であっても、結晶粒径を再現性よくかつ均一に微細化することができる。このような急冷薄帯に窒化処理を施した磁石粉末によれば、それを用いてボンド磁石を作製する際に、ボンド磁石中の磁石粉末の充填率を高めることができる。従って、優れた磁気特性を有するボンド磁石を得ることができる。
【0062】
磁石材料用急冷薄帯の表面粗さを低減するためには、急冷工程における製造条件を適切に制御することが有効である。急冷工程における製造条件としては、例えば射出圧力、ロールの材質、ロール周速、ロールの表面状態、ノズル穴の形状と大きさ、ロールとノズルとの間のギャップ、射出時の雰囲気圧、溶湯温度などが挙げられる。
【0063】
前述したように、表面粗さは特に溶湯とロールとの濡れ性と密接に関係することから、例えば射出時の溶湯温度をできるだけ高めて溶湯の粘性を低下させることが有効である。ただし、希土類元素R1としてSmを用いる場合、過剰に溶湯温度を高めると揮発量が大きくなり、組成の制御が困難となるおそれがある。溶湯の粘性を低下させるという観点から、合金組成中のZr量やB量、また必要に応じてT元素の配合量を調節して材料の融点を低下させることも有効である。
【0064】
参考例で用いられる磁石材料用急冷薄帯およびそれを使用した磁石材料は、例えば以下のようにして製造される。
【0065】
まず、第1の発明と同様に、前述した(2)式で表される組成を有する合金溶湯を、ノズルから高速で回転する金属製ロール上に噴出させて急冷薄帯を作製する。この際、合金組成、溶湯温度、ノズルの穴径、ロール周速、ロール材質、射出圧力などを制御することによって、溶湯とロールとの濡れ性を高める。これら以外の条件は第1の発明と同様とすることが好ましい。熱処理などについても同様である。
【0066】
次に、上記した急冷薄帯を必要に応じて、ボールミル、ブラウンミル、スタンプミル、ジェットミルなどにより粉砕する。このような合金粉末に窒化処理を施して窒素を吸収させる。窒化処理条件は前述した通りである。窒化処理は急冷薄帯を粉砕した後に実施してもよいし、第1の発明と同様に急冷薄帯もくしはそれを破砕した程度のものに対して実施してもよい。比較的粗大な急冷薄帯に対して窒化処理を施すことによって、第1の発明で述べたように、過剰に窒素を吸収するなどして磁気特性が劣化した微小粒子の比率を低減することができる。
【0067】
本発明の磁石材料は、例えばボンド磁石の構成材料として好適である。以下に本発明の磁石粉末からボンド磁石を製造する方法について説明する。なお、ボンド磁石を製造する場合、通常、磁石材料を粉砕して用いる。ただし、前述した磁石材料の製造工程において、既に粉砕が行われている場合にはこれを省略することができる。
【0068】
(a)本発明の磁石粉末を有機系のバインダと混合し、これを所望の形状に圧縮成形または射出成形することによりボンド磁石を製造する。バインダとしては、例えばエポキシ系、ナイロン系などの樹脂を使用することができる。バインダとしてエポキシ系樹脂のような熱硬化性樹脂を用いる場合には、所望形状に成形した後に100〜200℃程度の温度でキュア処理を施すことが好ましい。
【0069】
(b)本発明の磁石粉末を低融点金属または低融点合金と混合した後、圧縮成形することによりメタルボンド磁石を製造する。この場合、低融点金属や低融点合金がバインダとして機能する。低融点金属としては例えばAl、Pb、Sn、Zn、Cu、Mgなどを、また低融点合金としては上記低融点金属を含む合金などを用いることができる。
【0070】
次に、本発明の第1の磁石粉末の具体的な実施例およびその評価結果について説明する。
【0071】
(実施例1〜11)
まず、高純度の各原料をそれぞれ所定の割合で調合し、Ar雰囲気中で高周波溶解して原料インゴットをそれぞれ作製した。次いで、これら各原料インゴットをAr雰囲気中で高周波誘導加熱により溶融した後、穴径0.6mmのノズルから周速40m/sで回転する金属ロール上に溶湯を噴射して、それぞれ急冷薄帯を作製した。
【0072】
引き続いて、上記各急冷薄帯をAr雰囲気中にて770℃で35分間熱処理した。熱処理後の各急冷薄帯のX線回折を行った結果、全ての急冷薄帯において微小なα−Fe相の回折ピークの他は全てTbCu7型結晶構造で指数付けされ、その格子定数の比c/aは0.856〜0.868の範囲にあることが分かった。
【0073】
次いで、上記各急冷薄帯について、光学顕微鏡およびSEMを用いた観察を行い、急冷薄帯の厚さおよび凝固面の面積を測定することにより急冷薄帯の表面積を算出した。表面積は各実施例の急冷薄帯に対して20〜30ケ所について計算を行い、その平均値とした。この値をそれぞれ表1に示す。また、表面積が0.1mm2以上の粒子はいずれも50%以上存在していた。
【0074】
次に、上記各急冷薄帯に窒素を含有させるために、各急冷薄帯をアンモニアガスと水素ガスの混合気流中で430℃×3時間の条件で熱処理した。その後、同温度でアルゴン気流中にて3時間の熱処理を施して、それぞれ薄片状の磁石粉末を作製した。
【0075】
得られた磁石粉末の組成を表1に示す。なお、表1に示す組成は、ICP発光分光法、燃焼赤外線吸収法および高周波加熱熱伝導検出法により分析した結果である。上記した窒化処理により各材料の重量が3.2〜3.9%増加した。アンモニアガスと水素ガスの流量比は1:15とした。
【0076】
また、各磁石粉末を目開き22μmの篩で篩い分けした。この篩を通過した粒子の比率を、最大径が22μm以下の微小粒子の比率として求めた。さらに、光学顕微鏡およびSEMを用いた観察に基づいて磁石粉末の表面積を算出し、表面積が1×10−3mm2以下の微小粒子の比率を求めた。これらの結果をそれぞれ表1に示す。
【0077】
この後、薄片状磁石粉末をそれぞれ平均粒径が150μm程度となるように粉砕した。これら各粉砕粉末について、磁石粉末の平均窒素含有量xに対する最大径が22μm以下の微小粒子中の窒素含有量yの比率(y/x)を測定した。その結果を表1に示す。
【0078】
粉砕した各磁石粉末にエポキシ樹脂を2.5重量%添加、混合した後、1200MPaの圧力条件で圧縮成形し、さらに150℃の温度で2.5時間キュア処理した。このようにして、それぞれボンド磁石を作製した。得られた各ボンド磁石の保磁力、残留磁束密度、最大磁気エネルギー積をそれぞれ測定した。それらの結果を表1に併せて示す。
【0079】
(比較例1〜2)
上記した実施例1と同様な方法で作製した各急冷薄帯を、実施例1と同様にAr雰囲気中で熱処理した後、それぞれ平均粒子径が250μm程度となるように粉砕した。これら各合金粉末に対して実施例1と同一条件で窒化処理を施した後、実施例1と同様にしてボンド磁石をそれぞれ作製した。これら各ボンド磁石の保磁力、残留磁束密度、最大磁気エネルギー積を表1に併記する。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から明らかなように、粉砕した母合金に対して窒化処理を施した比較例によるボンド磁石と比べて、急冷薄帯の段階で窒化処理を施した各実施例によるボンド磁石は磁気特性に優れていることが分かる。これは、各実施例による磁石粉末は窒化処理時点で過剰に窒素を吸収するなどして磁気特性が劣化しやすい微粉量が極めて少ないためである。
【0082】
次に、参考例の磁石粉末の評価結果について説明する。
【0083】
(参考例12〜16)
まず、高純度の各原料をそれぞれ所定の割合で調合し、Ar雰囲気中で高周波溶解して原料インゴットをそれぞれ作製した。次いで、これら各原料インゴットをAr雰囲気中で高周波誘導加熱により溶融した後、穴径0.5mmのノズルから周速35m/sで回転する直径300mmの銅ロール上に溶湯を噴射して、それぞれ急冷薄帯を作製した。噴射時の溶湯温度は1400℃以上とした。このようにした得た各急冷薄帯の平均表面粗さ(Ry)を測定した。その結果を表2に示す。
【0084】
次に、上記した各急冷薄帯をAr雰囲気中にて780℃で30分間熱処理した。熱処理後の各急冷薄帯に対してX線回折を行った結果、全ての急冷薄帯において微小なα−Fe相の回折ピークの他は全てTbCu7型結晶構造で指数付けされ、その格子定数の比c/aは0.856〜0.868の範囲にあることが分かった。
【0085】
次いで、各急冷薄帯に窒素を含有させるために、各急冷薄帯にアンモニアと水素との混合ガス中にて430℃×3時間の条件で熱処理を施した。このようにして、薄片状の磁石粉末をそれぞれ作製した。得られた磁石粉末の組成を表2に示す。また、得られた各薄片状磁石粉末の最大高さRyを最大径が150μm以上の粒子を用いて測定したところ、それぞれ急冷薄帯の表面粗さを維持していた。なお、表2に示す組成は、ICP発光分光法、燃焼赤外線吸収法および高周波加熱熱伝導検出法により分析した結果である。
【0086】
上記した各薄片状磁石粉末をそれぞれ粉砕し、これら各磁石粉末にエポキシ樹脂を2重量%添加、混合した。この後、1200MPaの圧力条件で圧縮成形し、さらに150℃の温度で2.5時間キュア処理することにより、それぞれボンド磁石を作製した。得られた各ボンド磁石の保磁力、残留磁束密度、最大磁気エネルギー積を表2に示す。
【0087】
(比較例3)
上記した参考例12と同様な方法で急冷薄帯を作製した。ただし、溶湯噴射時の溶湯温度は1300〜1400℃とした。次に、この急冷薄帯に参考例12と同様な方法でAr中熱処理および窒化処理を施して磁石粉末を作製した。そして、参考例12と同様な方法でボンド磁石を作製した。この比較例3における急冷薄帯の平均表面粗さ(Ry)およびボンド磁石の磁気特性を表2に併せて示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表2から明らかなように、表面粗さが小さい急冷薄帯(合金薄帯)を使用した各実施例の磁石粉末およびそれを用いたボンド磁石は、表面粗さが大きい急冷薄帯を使用した比較例3の磁石粉末およびそれを用いたボンド磁石に比べて、磁気特性に優れることが分かる。
【0090】
(参考例17)
参考例14と同様な組成の合金薄帯を作製する際に、射出圧力、ロール周速、ノズルの穴径、ロールとノズルとの間のギャップ、射出時の溶湯温度を変化させることによって、表面粗さが異なる複数の急冷薄帯を作製した。これら各急冷薄帯に参考例12と同様な方法でAr中熱処理および窒化処理を施して磁石粉末を作製し、また参考例12と同様な方法でボンド磁石を作製した。
【0091】
このようにして得た複数のボンド磁石の最大磁気エネルギー積を測定した。その結果を急冷薄帯の表面粗さ(磁石粒子の表面粗さ)とボンド磁石の最大磁気エネルギー積との関係として図3に示す。図3から明らかなように、急冷薄帯(磁石粒子)の表面粗さの低下に伴ってボンド磁石の特性は向上する。そして、最大高さRyが5μm以下の急冷薄帯(磁石粒子)を使用することによって、良好な磁気特性が得られる。
【0092】
【産業上の利用可能性】
本発明の第1の磁石粉末は、過剰に窒素を吸収して磁気特性の劣化原因となる微粉量を低減している。従って、材料全体として優れた磁気特性を有する磁石粉末を提供することができる。そして、そのような磁石粉末を使用することによって、優れた磁気特性を有するボンド磁石を安定して提供することが可能となる。
【0093】
【図面の簡単な説明】
図1は参考例の磁石粉末の作製に用いた急冷薄帯の微細構造を模式的に示す図、 図2は図1に示す参考例との比較として示した表面粗さが大きい急冷薄帯の微細構造を模式的に示す図、 図3は磁石材料用急冷薄帯および磁石粒子の表面粗さとそれを用いたボンド磁石の最大磁気エネルギー積との関係を示す図である。
Claims (1)
- 一般式:R1 XR2 YBZT100−X−Y−Z(式中、R1は希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、R2はZr、HfおよびScから選ばれる少なくとも1種の元素を、TはFeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、X、YおよびZはそれぞれ2原子%≦X、0.01原子%≦Y、4≦X+Y≦20原子%、0≦Z≦10原子%を満足する数である)で表される組成を有し、かつTbCu7型結晶相を主相とし、表面積の平均値が0.99〜11.32mm 2 かつ表面積が0.1mm 2 以上である粒子の比率が50%以上となる合金薄帯を急冷法により作製する工程と、
前記急冷合金薄帯に対して0.1〜20原子%の範囲の窒素を吸収させる熱処理を施し、最大径が22μm以下の微小粒子の比率が20重量%以下、表面積が1×10−3mm2以下の微小粒子の比率が20重量%以下、かつ磁石粉末の平均窒素含有量に対する最大径が22μm以下の微小粒子中の窒素含有量の比率が1.3以下の磁石粉末を得る熱処理工程と
を有することを特徴とする磁石粉末の製造方法。
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