JP3792737B2 - 磁石材料およびそれを用いた永久磁石 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、永久磁石を構成する磁石材料とそれを用いた永久磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
高性能希土類永久磁石としては、従来から Sm-Co系磁石や Nd-Fe-B系磁石等が知られており、現在量産化が進められている。これらの磁石にはFeやCoが多量に含まれ、飽和磁束密度の増大に寄与している。また、これらの磁石にはNdやSm等の希土類元素が含まれており、希土類元素は結晶場中における4f電子の挙動に由来して、非常に大きな磁気異方性をもたらす。これにより保磁力の増大化が図られ、高性能な磁石が実現されている。
【0003】
このような高性能磁石は、主としてスピーカ、モータ、計測器等の電気機器に使用されている。近年、各種電気機器への小形化の要求が高まり、それに対応するために永久磁石の最大磁気エネルギー積(BHmax )を向上させた、より高性能の永久磁石が求められている。より高性能の永久磁石を得るための素材としては、やはり希土類元素とFe等の遷移金属元素との組合せが有力視されている。
【0004】
上述したような永久磁石への要望に対して、近年、高性能磁石としてExchange -Spring磁石が提案されている。これは、永久磁石内に硬磁性相と軟磁性相とを微細に分散させ、これらを互いに交換結合させたものであり、これによりリコイル透磁率が大きく、逆磁場に対して磁化率が大きいという特徴を示すものである。また、 Exchange-Spring磁石は、等方性磁石の場合であっても、飽和磁束密度(Bs )に対する残留磁束密度(Br )の比率(Br /Bs )が 0.5を超えるという特徴を有する。このため、逆磁場下での永久減磁の心配がなく、かつ残留磁束密度が大きいために、高いエネルギー積をもつ永久磁石を得ることができる。上述した軟磁性相としてα-Fe を用いた場合にも、 Exchange-Spring磁石を構成することが可能であることが知られているが、この場合磁石加工プロセスにおいて、ホットプレス等の高温下での熱処理を行うと、α-Fe の析出量が増大し、保磁力が著しく低下するという問題があった。このため、プロセス条件に大きな制約があった。
【0005】
またα-Fe 相は、上述した Exchange-Spring磁石のように積極的に存在させる場合に限らず、余剰のFeの未反応物や磁石加工プロセスにおける析出物等として永久磁石中に存在する。α-Fe 相自体は軟磁性相であるため、その量が多いと保磁力等の磁気特性を低下させることになる。しかし、α-Fe 相の析出等を抑制しようとすると、上述したようにプロセス条件が大きな制約を受けるという問題があった。
【0006】
他に、永久磁石のさらなる高性能化のために、磁石素体中における主相の結晶格子間に窒素のような侵入型元素を導入することが提案されており、これにより主相のキュリー温度、飽和磁束密度、磁気異方性が大きく改善される。これまで、上記した窒素の効果は、Th2 Zn17型結晶構造、Th2 Ni17型結晶構造、ThMn12型結晶構造およびTbCu7 型結晶構造を主相とする化合物で見出されている。
【0007】
上述したような窒素含有化合物は、通常以下に示す方法で合成される。まず、窒素を含有しない母合金を溶解等によって作製する。この母合金をボールミル等を用いて数μm 〜数10μm に粉砕した後、窒素または窒素含有ガス中で熱処理することにより、窒素含有合金粉末が合成される。そして、窒素含有合金粉末を用いて、例えば樹脂結晶磁石、メタルボンド磁石等に加工することによって、高性能永久磁石が作製されている。
【0008】
しかしながら、これまでに得られている窒素含有化合物を用いた永久磁石は、その素材である窒素含有合金粉末の作製工程で行う熱処理等によりα-Fe 相析出等の分解が生じ、永久磁石の製造過程で磁気特性が劣化してしまうという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の高性能化を図った永久磁石材料において、 Exchange-Spring磁石では高温下での熱処理によりα-Fe 相の析出量が増大し、保磁力が著しく低下するという問題が、また窒素含有化合物を用いた永久磁石では、熱処理等によりα-Fe 相析出等の分解が生じ、磁気特性が劣化してしまうという問題があった。また、α-Fe 相は軟磁性相であるため、上記 Exchange-Spring磁石や窒素含有化合物を用いた永久磁石に限らず、通常の希土類−鉄系永久磁石においても、その量が多いと保磁力等の磁気特性を低下させ、さらにα-Fe 相の析出等を抑制しようとすると、プロセス条件が大きな制約を受けるという問題があった。
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、本発明の主とする目的は、α-Fe 相の影響による磁気特性の劣化等を抑制した磁石材料を提供することにあり、具体的にはプロセス条件に制約を及すことなく、α-Fe 相の析出等に伴う磁気特性の劣化を抑制した磁石材料を提供することを目的としている。また、 Exchange-Spring磁石等を構成する場合に、高温下での熱処理に伴うα- Fe相の析出量の増大を抑制した磁石材料を提供することを目的としており、さらには窒素含有化合物を用いた磁石材料のα-Fe 相析出等の分解を抑制することを可能にした磁石材料を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段と作用】
本発明の磁石材料は、請求項1に記載したように、
一般式:R1 xR2 yT100-x-y-z-vMzNv …(1)
(式中、R1はYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、R2はZr、HfおよびScから選ばれる少なくとも1種の元素を、TはFeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を、MはTi、 Cr、Mo、W、 Ni 、 Ga および Snから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、x、y、z、vはそれぞれ2≦x≦20原子%、0≦y≦15原子%、2≦x+y≦20原子%、0≦z≦20原子%、0.01≦v≦20原子%を満足する数である)
で組成が表される磁石材料であって、前記磁石材料粉末の表面から深さ1μm以下の外殻部分に存在する前記R1元素の量が2原子%以上であり、かつ 420kA/m 以上の保磁力を有することを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の磁石材料は、請求項1記載の磁石材料において、TbCu7型結晶構造を有する相を主相とすることを、また請求項3記載の磁石材料は、請求項1または請求項2記載の磁石材料において、前記磁石材料の主相中に、前記T元素が90原子%以上含まれることを特徴としている。
【0014】
ここで、前記主相とは、化合物中の各結晶相および非晶質相のうちで最大の体積占有率を有する相を意味するものである。
【0015】
また、本発明の永久磁石は、請求項1、請求項2または請求項3記載の磁石材料を、結合剤により固着してなることを特徴としている。本発明の磁石材料は、ThMn12型結晶構造、Th2Zn17型結晶構造、Th2Ni17型結晶構造、TbCu7型結晶構造等のいわゆる化合物相からなる硬質磁性相(Hard相)を主相とするものであり、この主相は少なくとも50体積%含まれることが望ましい。主相が50体積%未満であると、永久磁石としての磁気特性を十分に得ることができない。
【0016】
また、本発明の磁石材料における主相は、上記したような化合物相のうち、特にTbCu7 型結晶構造から主としてなることが好ましく、これにより保磁力の増大を図ることができる。特に、窒素等の侵入固溶型の元素を導入する場合には、例えば窒化物の磁気異方性の向上等により、保磁力を増大させることができる。さらに、上述したような主相は、 T元素を90原子% 以上含むことが好ましい。これにより、主相の飽和磁束密度が向上し、ひいては残留磁束密度や最大磁気エネルギー積等の磁気特性が向上する。
【0017】
次に、本発明の磁石材料の主構成元素の配合理由および配合量の規定理由について説明する。
【0018】
R1 元素は、上述したような化合物相の希土類元素が占めるサイト(Rサイト)に位置する元素であり、磁石材料に大きな磁気異方性をもたらし、高い保磁力を付与する成分である。このような R1 元素としては、 Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の希土類元素が挙げられる。 R1 元素の含有量が 2原子% 未満であると、保磁力の低下により磁気特性が劣化する。一方、 R1 元素の含有量が20原子% を超えると、 T元素量が相対的に減少するために、飽和磁束密度が低下する。より好ましい R1 元素の配合量は 2〜16原子% の範囲である。
【0019】
上述した R1 元素の一部は、Zr、HfおよびScから選ばれる少なくとも 1種の元素である R2 元素で置換することができる。 R2 元素は、磁気異方性の付与に寄与すると共に、 Rサイトの原子半径を小さくする等の作用を有することから、主相(硬質磁性相)中の T元素の濃度を増加させる等して、飽和磁束密度の向上に寄与する。ただし、 R2 元素による R1 元素の過剰の置換は、磁気異方性の観点から不利となるため、 R2 元素の含有量は15原子% 以下とする。また、 R2 元素は R1 元素の置換成分であるため、上述した R1 元素の上限値の規定理由と同様な理由から、 R1 元素と R2 元素の合計量は20原子% 以下とする。
【0020】
R1 元素と R2 元素の合計量のより好ましい範囲は 4〜16原子% である。 R1 元素と R2 元素の合計量が 4原子% 未満であると、多量のα-Fe(あるいはCo)が生成して保磁力が低下する。 R1 元素および R2 元素は、特にその総量の50原子% 以上がSm、NdおよびPrから選ばれる少なくとも 1種の元素(特にSm)であることが望ましい。これにより、より一層磁気異方性が向上する。
【0021】
T元素は、FeおよびCoから選ばれる少なくとも 1種の元素であり、磁石材料に高い飽和磁束密度を付与するものである。このような T元素は、磁石材料中に70原子% 以上配合することによりその効果が顕著になる。特に、 T元素のうちFeが50原子% 以上、より好ましくは65原子% 以上占めることが望ましく、これらにより磁石材料の飽和磁束密度が向上する。また、Coは主相中のFeおよびCoの濃度を増大させる効果を有し、Coを含まない場合に比較して飽和磁束密度を向上することができ、かつ主相の熱安定性を向上させることができるため、適量のCoを含有させることが好ましい。
【0022】
また、上述したT元素の一部はM元素、すなわちTi、 Cr、Mo、W、 Ni 、 Ga および Snから選ばれる少なくとも1種の元素で置換してもよい。T元素の一部をM元素で置換することにより、磁石材料中の主相、例えばTbCu7型結晶構造を有する相の割合を増大させることができると共に、主相中に占めるT元素の濃度を増大させることが可能になる。ただし、M元素によるT元素の置換量が過剰になると、T元素の濃度が減少すると共に、結晶のバンド構造にM元素が影響を与え、飽和磁束密度が大幅に低下してしまうため、M元素量は20原子%以下とする。特に、M元素による置換量はT元素の総量中の20原子%以下とすることが望ましい。
【0025】
本発明の磁石材料は、上述したような主構成元素以外に、0.01〜20原子%のNを含有するものである。Nは主として主相のインタースティシャルサイトに存在し、Nを含まない場合と比較して、主相の結晶格子を拡大させたり、電子帯構造を変化させる。その結果、主相のキュリー温度、飽和磁束密度、磁気異方性を向上させることができる。
【0026】
N量が0.01原子% 未満であると、上述した効果を十分に得ることができない。一方、 N量が20原子% を超えると、α-Fe の析出が顕著になり、そのために磁気特性の劣化を招く。 Nのより好ましい配合量は0.01〜10原子% の範囲である。なお、 Nの一部は H、 C、 Pにより置換することができる。
【0028】
本発明の磁石材料は、いずれも酸素等の不可避的不純物を微量含有していてもよいが、特に酸素は主相である化合物相の生成を阻害するために 4.0原子% 以下とすることが好ましい。酸素量が 4.0原子% 以下であれば酸化物が問題にならない範囲で、所定の化合物相(主相)を生成させることができる。
【0029】
上記した磁石材料を作製する際、特にメカニカルアロイイングやメカニカルグラインディング等の固相反応により作製する際、余剰のT元素はα-Fe相の塊状粒子となる。α-Fe相自体は軟磁性相であるため、その量が多いと保磁力等の磁気特性が低下するため、α-Fe相の量は少ないほどよいが、X線回折測定による未反応のα-Fe相や析出したα-Fe相の量が同じであっても、α-Fe相の塊状粒子の平均粒径が1μm以下と小さく、かつα-Fe相の塊状粒子の最大粒径が10μm以下である場合には、保磁力低下の度合が大幅に小さくなる。
【0030】
また、α-Fe 相の粒子の大きさがさらに小さい場合には、前述した Exchange-Spring磁石になり得るので、等方性磁石としては磁気特性上問題を生じることはない。なお、α-Fe 相の量は、磁石材料の形態によっても異なるが、最大でも50体積% 未満とすることが好ましい。α-Fe 相量が50体積% 以上となると、α-Fe 塊状粒子の粒径を上述したように規定したとしても、永久磁石としての磁気特性を十分に得ることができない。
【0031】
上記した磁石材料においては、Fe3C相を0.001〜20体積%の範囲で存在させることができる。磁石材料中にFe3C相を存在させることによって、高温下で熱処理した場合の保磁力の劣化を抑制することができる。Fe3C相が上記効果を示す理由は明らかではないが、以下に述べるようなことが推測される。すなわち、α-Feを軟磁性相として用いたExchange-Spring磁石の場合、磁石加工工程で必須の熱処理によりα-Fe相が粒成長する。このようなα-Feの粗大化は、α-Fe中心部と硬磁性相との距離の増大を引き起こし、α-Feと硬磁性相との交換結合を低下させる。これに対して、磁石材料中に適量のFe3C相が存在すると、これを含まない場合と比較して、α-Feの粒成長が抑制されると考えられる。α-Feの粒成長の抑制は、交換結合の低下を抑制し、ひいては保磁力等の磁気特性の劣化を抑制する。
【0032】
上述したようなFe3 C 相が 0.001体積% 以下であると、上記保磁力等の劣化抑制効果を十分に得ることができず、また20体積% を超えると磁束密度の低下が顕著になる。より好ましい範囲は 0.001〜10体積% であり、さらに好ましい範囲は0.01〜 3体積% である。
【0033】
本発明の磁石材料は、その粉末の表面から深さ1μm以下の外殻部分に存在するR1元素の量が2原子%以上であることを特徴としている。前述したように、従来の窒素含有の希土類−鉄系磁石は、その素材である窒素含有合金粉末の作製時に行う熱処理等によりα-Fe相の析出等の分解が生じ、磁気特性が劣化する場合が見られた。本発明者らは、上記分解が主として合金粉末表面で起っており、かつ上記分解が合金粉末表面から希土類元素が飛散する等して表面の希土類元素が欠乏することにより発生することを見出した。また、上記分解が起こる部分は、合金粉末最表面から深さ1μm程度である。
【0034】
これに対して、磁石材料粉末の表面から深さ 1μm 以下の外殻部分に存在する R1 元素量を 2原子% 以上であると、上述したα-Fe 相の析出等の分解を防止することができ、従って磁気特性の劣化を抑制することができる。上記外殻部分の R1 元素量が 2原子% 未満であると、上記分解が顕著となる。上記外殻部分の R1 元素量は 5原子% 以上であることがより好ましい。
【0035】
本発明の磁石材料は、例えば以下のようにして製造される。
【0036】
本発明の磁石材料の製造には、通常の合金作製方法を適用することができるが、組織が微細でかつ一様となるような製造方法を適用することが好ましい。このようなことから、以下に示すような製造方法が好適である。
【0037】
すなわち、まず前述した(1)式の組成(ただし、 Nを除く組成)を満足する材料を、アーク溶解または高周波溶解により作製する。続いて、得られた合金溶湯を高速で回転する単ロールまたは双ロールにより急冷する。急冷プロセスとしてはその他に、合金溶湯を高速で回転するディスク上に噴射して急冷する回転ディスク法、合金溶湯をHeのような不活性ガス中に噴射して急冷するガスアトマイズ法等を採用することができる。なお、上記した各急冷は、酸化による磁気特性の劣化を防止する観点から、Ar、He等の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。
【0038】
また、上述した合金溶湯急冷法以外に、(1)式の組成(ただし、 Nを除く組成)を満足する混合体に、機械的エネルギーを付与して合金化させるメカニカルアロイイング法やメカニカルグラインディング法等を適用してもよい。これらの方法は、上記混合体を固相反応させることにより合金化する方法である。
【0039】
上記固相反応の具体的な手段としては、例えば遊星ボールミル、回転式ボールミル、スクリュー式ボールミル、アトライタ等に、所定量の R1 元素、 R2 元素、 T元素、 M元素、さらには Cを含む原料混合粉末、あるいは所定組成の合金粉末例えば急冷粉末を投入し、これらに容器とボールまたはボールとボールとの衝突による機械的なエネルギーを与える方式が採用される。ここで、容器を密閉するときには、Ar等の不活性ガス雰囲気で満たしたドライボックスのような装置内で行うか、または容器に排気弁を設けて容器内を排気することが好ましい。しかし、上述したような装置は、密閉容器といっても容器内で衝突を起こさせるため、容器の合せ目等にも衝撃が及び、密閉性低下の一因となる。そこで、密閉性を確保するために容器を二重蓋にしたり、あるいはこの考えを延長して装置自体を不活性雰囲気で満たしたり、さらには真空にした部屋に入れてしまう等の工夫をすることが望ましい。また、不活性ガスの代りに、 Nを侵入させるための窒素ガスないしアンモニアガスを用いることもできる。
【0040】
不活性雰囲気にする場合には、不活性ガスの純度も制御されていることが望ましい。例えば、酸素濃度100ppm以下、水分濃度 50ppm以下に抑えることが望ましい。このことは、窒素ガスないしアンモニアガスを用いる場合でも同じであり、純度が制御されていることが望ましい。
【0041】
他の固相反応としては、薄板の圧延、高圧製造装置によるプレス等を挙げられ、本発明はこれらの適用を除外するものではない。さらには、アーク溶解や高周波溶解等により溶解した後、鋳造することによって、磁石材料を作製する方法等を、本発明は除くものではない。
【0042】
上記した磁石材料においては、上述した合金溶湯急冷法における急冷速度を制御したり、あるいはメカニカルアロイイングやメカニカルグラインディングにおける条件を制御することにより、磁石材料中のα-Fe相の塊状粒子の平均粒径を1.0μm以下とし、かつ塊状粒子の最大粒径を10μm以下とすることができる。α-Fe相の塊状粒子を機械的に分散させ、小粒子とすることができることから、メカニカルアロイイングやメカニカルグラインディング等を適用することが好ましい。
【0043】
Fe 3C相は、主として上述した合金溶湯を急冷する際に析出する。また、固相反応を利用する場合には、固相反応により生成することもできるが、混合体中に予め作製したFe3C型結晶構造をもつ合金を加えることにより、磁石材料中にFe3C相を容易に存在させることができる。
【0044】
上述したような方法により得られた磁石材料には、必要に応じてArやHe等の不活性ガス雰囲気または真空中にて、 573〜 1273Kの温度で 0.1〜10時間程度の熱処理を施してもよい。このような熱処理により、磁性材料の保磁力を増加させることができる。
【0045】
次に、上記磁石材料を粉末粒径数μm 〜数 100μm に粉砕する。紛砕には、通常、乳鉢、ボールミル、ブラウンミル、スタンプミル、ディスクミル、ジェットミル等が用いられる。ただし、メカニカルアロイイング法やメカニカルグラインディング法により作製した磁石材料は粉末状態であるため、粉砕工程を省略することができる。
【0046】
本発明の磁石材料は、上述したような磁石材料粉末を、0.1〜1000kPa程度の窒素ガス雰囲気中にて、573〜1073Kの温度下で0.1〜100時間程度熱処理することにより、磁石材料を構成する主相中に窒素を含有させることができる。この熱処理の際の雰囲気は窒素ガスに代えて、アンモニア等の窒素化合物ガスを用いてもよい。また、この熱処理においては、窒素を含まない別のガスを混合することが可能である。ただし、酸素を混合する場合には熱処理中の酸化物生成による磁気特性劣化を避けるため、酸素分圧を2kPa以下とすることが望ましい。本発明の磁石材料、すなわち粉末の表面から深さ1μm以下の外殻部分に存在する前記R1元素の量が2原子%以上である磁石材料を作製する上で、上記した窒化処理工程において、磁石材料粉末表面からのR1元素の飛散を防止するために、予め磁石材料粉末表面にR1元素またはR1元素を含む化合物をコーティングすることが有効である。このようなコーティングは、例えばR1元素またはR1元素を含む化合物の粉末を磁石材料粉末と混合することにより実施することができる。
【0047】
また、窒化処理前または処理中に R1 元素の蒸気を供給することによっても、上記コーティングと同等な効果が得られる。さらに、磁石材料粉末作製時に粉末表面層に R1 元素を多く含ませることによって、上記コーティングと同等な効果をもたせることも可能である。またさらに、上述したような粉末表面層の R1 元素量を増大させる方法以外に、窒化処理後に塩酸や硝酸等を用いて表面部分を除去することによって、外殻部分に存在する R1 元素量を 2原子% 以上とすることもできる。
【0048】
なお、前述した粉末表面からの R1 元素の飛散は、窒化処理工程以外にも、例えば真空中における熱処理中等においても起こる。このような真空熱処理時における R1 元素の飛散を防止するためには、真空封入時に R1 元素を試料と一緒に熱処理することにより、常に R1 元素の蒸気を試料表面に供給する方法が有用である。
【0049】
上述したような方法によって、磁石材料粉末の表面部分におけるα-Fe相析出等の分解を防止したり、あるいは分解部分を除去することによって、本発明の磁石材料が得られ、磁気特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0050】
また、場合によっては、 Cもメタンガス等の気体中で熱処理することで含有させる方が磁気特性上好ましいことがある。一方、上記磁石材料粉末の調整過程において、RN等の窒素化合物を原料として用い、固相反応の際に調整することにより窒素を含有させることも可能である。さらに、 Nに代えて P、 C、 H等のいわゆる侵入型元素を磁石材料中に導入させる場合に、 Pや Cは上記の手順において同時に溶解、急冷、あるいは固相反応をさせることができるが、 Hの場合には水素ガスや水素を含む混合気体中で熱処理させるこことにより、容易に合金中に導入することができる。この際の最適な熱処理温度は、合金組成によっても異なるが、 473〜 1073K程度とすることが好ましい。
【0051】
次に、上述した方法により製造された磁石材料粉末から永久磁石を製造する方法について述べる。
【0052】
上述した磁石材料粉末からボンド磁石を製造するには、例えば磁石材料粉末をエポキシ樹脂やナイロン系樹脂等の樹脂結合剤と混合した後に、所望の磁石形状に成形して固着する。固化方法としては、結合剤がエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂である場合には、圧縮成形後に約 373〜473K程度の温度でキュア処理を施す。また、結合剤がナイロン系樹脂のような熱可塑性樹脂である場合には、例えば射出成形をてきようすればよい。結合剤としては、樹脂系材料以外に金属を用いることもできる。金属系結合剤としては、
等が例示される。
【0053】
また、磁石材料粉末をホットプレスや熱間静水圧プレス(HIP) で高密度の成形体として一体化することにより、永久磁石を作成することも可能である。加圧時に磁場を印加して結晶方位を揃えることにより、高磁束密度を有する永久磁石を作製することができる。さらに、加圧後に 573〜 1073K程度の温度下で加圧しながら塑性変形を施すことにより、磁化容易軸方向に磁気的な配向が成された永久磁石を製造することが可能になる。なお、磁石材料粉末を焼結することにより永久磁石を作製することもできる。
【0054】
本発明の磁石材料は、特に結合剤を用いたボンド磁石を作製する際の原料として有効である。ボンド磁石を作製する場合には、磁石材料の状態(特性)が直接永久磁石の特性に影響を与えるため、本発明の磁石材料が特に有効である。
【0055】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0056】
参考例1、2
まず、粒径0.8mm以下の高純度のSmおよびZrの各粉末と、粒径0.1mm以下の高純度のFeおよびCoの各粉末とを、表1に示す組成となるように、所定の割合で調合して原料混合体をそれぞれ調整した。得られた各原料混合体を中炭素鋼(S45C)製の二重蓋の容器に中炭素鋼製のボールと共に入れ、酸素濃度10ppm以下、水分濃度1ppm以下に制御されたAr雰囲気で容器内を満たし、Oリングで密閉して回転数200rpmにてボールミルを60時間行った。
【0057】
上記メカニカルアロイイングにより作製した各粉末に、真空中にて 823〜1073K × 2時間の条件で熱処理を施した。さらに、この真空熱処理に続いて、100kPaの窒素中で723Kの熱処理、いわゆる窒化処理を行った。窒化後はいずれも Nを 6〜15原子% 含む組成となった。これらの磁石材料粉末を Cu-Kα線を用いた粉末X線回折で解析したところ、TbCu7 型結晶構造を主相とし、α-Fe やCoの析出を示すピークも観察された。また、上記各粉末の組成をTEM分析により調べたところ、α-Fe 相の含有量は15体積% 、10体積% で、主相中に含まれるFeおよびCoの総量は90.5原子% 、90.8原子% であった。
【0058】
このようにして得た各磁石材料粉末の微細組織をSEMにより観察したところ、いずれも全体が一様で、粒径10μm 以上の大きなα-Fe 相の塊状粒子は認められなかった。このときのα-Fe 相の塊状粒子の平均粒径を表1に示す。
【0059】
次に、上述した各磁石材料粉末にエポキシ樹脂をそれぞれ 2質量% 添加して混合した後、圧力 8ton/cm2 で圧縮成形し、さらに423Kの温度で 2.5時間キュア処理を施して、ボンド磁石をそれぞれ製造した。各ボンド磁石の保磁力、残留磁束密度および最大磁気エネルギー積(BHmax )を併せて表1に示す。
【0060】
【表1】
参考例3〜12
まず、高純度のSm、Nd、Pr、Gd、Zr、Hf、Fe、Co、Si、Ti、Al、Ga、V、Ta、Mo、Nb、Cr、W、Mn、Ni、C、Pの各粉末を、表2に示す組成となるように所定の割合で調合して原料混合体をそれぞれ調整した後、Ar雰囲気中でアーク溶解してそれぞれ原料インゴットを作製した。得られた各原料インゴットを溶解に至るまで加熱した後、それら各合金溶湯をAr雰囲気中で単ロール法により急冷して、リボン状合金をそれぞれ作製した。ここでは、直径300mmの銅ロールを用い、周速40m/sで回転させた。
【0061】
これら各リボン状合金を原料として、参考例1と同様に、S45C製の容器およびボールを用いて、回転数200rpmにてボールミルを60時間行った後、同様の真空中熱処理を施した。続いて、参考例3〜9については、100kPaの窒素中で723Kの窒化処理を行った。窒化後はいずれもNを6〜15原子%含む組成となった。また、参考例10〜12については、100kPaのアンモニアガス中で733Kの熱処理を行った。熱処理後は、いずれもNを6〜15原子%含み、かつHを1〜4原子%含む組成となった。これら各磁石材料粉末のα-Fe相粒子の平均粒径を同様に表2に示す。
【0062】
次に、参考例1と同様に、上記各磁石材料粉末をボンド磁石に成形し、同様に各磁気特性を測定した。それらの結果を表2に併記する。
【0063】
【表2】
比較例1、2
上記参考例と同様に、粒径0.8mm以下の高純度のSmおよびZrの各粉末と、粒径0.1mm以下の高純度のFeおよびCoの各粉末を、表3に示す組成となるように所定の割合で調合し、得られた各原料混合体をS45C製の容器およびボールを用いて、回転数200rpmにてボールミルを3時間行い、次いで同様の真空中熱処理を施した。続いて、100kPaの窒素中で723Kの窒化処理を行った。窒化後はいずれもNを6〜15原子%含む組成となった。
【0064】
得られた各磁石材料粉末の微細組織をSEMにより観察したところ、いずれもSmとα-Feが縞模様をなしており、反応が十分でないことが確認された。また、粒径が10μmを超える大きなα-Fe相の塊状粒子も認められた。また、これらの粉末を参考例と同様にしてボンド磁石に成形し、得られた各磁石体の磁気特性を測定した。それらの結果を表3に併記する。表3から明らかなように、参考例と比較して保磁力が小さく、磁石として良好な特性は得られなかった。
【0065】
【表3】
参考例13〜17、比較例3
まず、高純度のSm、Nd、Zr、Hf、Fe、Co、Cの各粉末を表4に示す組成にそれぞれ調合し、Ar雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットをそれぞれ作製した。次いで、各インゴットを溶融した後、Ar雰囲気中で40m/sの速度で回転する直径300mmの銅ロールに溶融物をそれぞれ噴射する単ロール法により急冷して、リボン状合金を作製した。さらに、各リボン状合金を673K、1時間の熱処理を施し、さらに表4に示す温度で15分間熱処理をした後、粉砕して磁石材料粉末とした。次に、上記各磁石材料粉末にエポキシ樹脂をそれぞれ2質量%添加して混合した後、8ton/cm2の圧力で圧縮成形し、423K×2.5時間の条件でキュア処理を行って、それぞれボンド磁石を製造した。
【0066】
得られた各ボンド磁石について、残留磁束密度、保磁力および最大磁気エネルギー積を測定した。また、上記合金粉末のTEM分析によるFe3 C 相の含有量を表4に併記する。
【0067】
なお、表4中の比較例3は、組成を変更する以外は参考例13〜17と同様にして作製した磁石材料粉末、およびそれを用いて参考例13〜17と同様な方法で製造したボンド磁石である。
【0068】
【表4】
実施例1、比較例4
まず、高純度のSm、Fe、Coの各粉末を、原子分率でSm14%、Co20%、残部が実質的にFeとなるように調合した後、Ar雰囲気中でアーク溶解してインゴットを調整した。続いて、このインゴットを溶融し、Ar雰囲気中にて40m/sの周速で回転する直径300mmの銅ロールに噴出する液体急冷法により急冷して、リボン状合金を作製した。次に、このリボン状合金を1023Kで15分間熱処理した後、乳鉢を用いて粉砕して、粒径10〜30μmの粉末を作製した。
【0069】
さらに、この粉末を100kPaの窒素ガス雰囲気中にて、753Kで 4時間熱処理を施すことにより、窒素含有合金粉末を合成した。この粉末をCu-Kα線を用いた粉末X線回折で解析したところ、TbCu7 型結晶構造を主相とし、他にα-Fe 、Coの析出を示すピークが観察された。また、上記粉末の組成をTEM分析により調べたところ、主相中に含まれるFeおよびCoの総量は91.5原子% であった。
【0070】
次に、上記粉末を 1規定の塩酸中に15秒間放置し、表面層を溶解した。この処理後の粉末にエポキシ樹脂を 2質量% 添加して混合した後、 8ton/cm2 の圧力で圧縮成形し、さらに423K、 2.5時間の条件でキュア処理を施すことにより、ボンド磁石を製造した。
【0071】
得られたボンド磁石の室温における磁気特性を調べた。その結果、残留磁束密度、保磁力および最大エネルギー積は、それぞれ 0.64T、 420kA/m、70kJ/m3 であった。
【0072】
また、本発明との比較(比較例4)として、実施例1の窒素含有合金粉末に前述した塩酸処理を施すことなく、実施例1と同様にしてボンド磁石を製造し、その磁気特性を調べた。その結果、残留磁束密度、保磁力、最大エネルギー積はそれぞれ0.51T、80kA/m、42kJ/m3であり、実施例1と比較して磁気特性が劣ることが分かった。
【0073】
上述した塩酸処理前後の粉末表面について、オージェ電子分光にて分析した結果、処理前すなわち比較例4の粉末は表面より0.5μmまでSmが観測されず、FeおよびCoのみであり、また表面から深さ1μm以下の外殻部分に含まれるSm量は1.4原子%であった。これに対し、塩酸処理後すなわち実施例1の粉末においては、表面からSmが観測され、表面より深さ1μm以下の外殻部分に含まれるSm量は6.5原子%であった。このように、Smが少ない表面部分を除去することにより、著しく磁気特性が改善される。
【0074】
実施例2
まず、平均粒径が0.5mmのSm粉末と、平均粒径が5〜40μmのFeおよびCoの各粉末を、Smが12原子%、Coが13原子%、残部が実質的にFeとなるように調合し、この混合物をボールミルに投入して、Ar雰囲気中で65時間粉砕混合処理するというメカニカルアロイング法により合金化した。続いて、この粉末を真空中にて1073Kで1時間熱処理した後、平均粒径0.1mmのSm粉末と共にAr雰囲気中で再度1時間ボールミルによる粉砕混合処理を施し、さらに100kPaの窒素ガス雰囲気中にて743Kで4時間熱処理を施した。ただし、真空中熱処理の際は、粉末表面からのSmの飛散を防止する目的から、真空封入時にSmインゴットを試料と共に封入した。この試料の表面組成について、実施例1と同様に測定したところ、表面より深さ1μm以下の外殻部分にSmが7.2原子%存在していた。
【0075】
上記熱処理後、実施例1と同様にボンド磁石を作製して、磁気特性を調べた。その結果、残留磁束密度、保磁力、最大エネルギー積は、それぞれ0.65T、580kA/m、75kJ/m3であった。また、窒素ガス雰囲気中で熱処理後のX線回折の結果、Th2Zn17型結晶構造を主相とすることが確認された。
【0076】
実施例3〜7
平均粒径が0.5μmのNd、Pr、Sm、Dy、Zrの各粉末と、平均粒径が5〜40μmのFe、Co、Ni、Ti、Ga、Mo、Sn、Cr、Wの各粉末を、表5に示す組成となるように調合(ただし窒素は除く)し、実施例2と同様にメカニカルアロイング法にて合金化した。次いで、各粉末を真空中にて1023Kで1時間熱処理した後、平均粒径0.1mmのSm粉末と共にAr雰囲気中で再度1時間ボールミルで粉砕混合処理を施し、さらに100kPaの窒素ガス雰囲気中にて、733Kで6時間熱処理(窒化処理)を施した。ただし、真空中熱処理の際、粉末表面からのSmの飛散を防止する目的で、Smインゴットと同時に真空封入して熱処理した。なお、窒化処理後の試料表面組成について、それぞれ実施例1と同様に測定した。表面から深さ1μm以下の外郭部分におけるR量を表5に併記した。
【0077】
窒化処理後の各粉末を用いて、実施例1と同様にボンド磁石を作製し、磁気特性を調べた。残留磁束密度、保磁力、最大エネルギー積を表5に示す。なお、窒化処理後の各粉末のX線回折の結果、実施例3〜5がTh2Zn17相、実施例6、7がTbCu7相を主相とすることが確認された。
【0078】
【表5】
比較例5
平均粒径が0.5mmのSmの粉末と、平均粒径が5〜40μmのFeおよびCoの各粉末を、Smが10原子%、Coが9原子%、残部が実質的にFeとなるように調合し、実施例2と同様にメカニカルアロイング法にて合金化した。次いで、この粉末を1023Kで1時間真空中熱処理した後、100kPaの窒素ガス雰囲気中にて733Kで6時間熱処理(窒化処理)を施した。すなわち、実施例2と比較して、真空中熱処理時にSmインゴットを同時に封入せず、また、窒化処理前にSm粉末と試料とを再度ボールミルすることを省いた。窒化処理後の粉末の表面組成について、実施例1と同様にして測定したところ、表面から深さ1μm以下の外郭部分のR量は0.5原子%であった。
【0079】
上記熱処理後、実施例1と同様にボンド磁石を作製して磁気特性を調べたところ、残留磁束密度、保磁力、最大エネルギー積はそれぞれ0.52T、380kA/m、45kJ/m3であり、実施例2と比較して劣っていることが分かった。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁石材料によれば、窒素含有化合物を用いた磁石材料表面のα-Fe相析出等の分解を抑制することが可能となるため、保磁力等の磁気特性の劣化を抑制することができる。
【0083】
このように、本発明の磁石材料を用いることによって、高性能の永久磁石例えばボンド磁石を提供することが可能となる。
【0084】
Claims (4)
- 一般式:R1 xR2 yT100-x-y-z-vMzNv
(式中、R1はYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、R2はZr、HfおよびScから選ばれる少なくとも1種の元素を、TはFeおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を、MはTi、 Cr、Mo、W、 Ni 、 Ga および Snから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、x、y、z、vはそれぞれ2≦x≦20原子%、0≦y≦15原子%、2≦x+y≦20原子%、0≦z≦20原子%、0.01≦v≦20原子%を満足する数である)
で組成が表される磁石材料であって、
前記磁石材料粉末の表面から深さ1μm以下の外殻部分に存在する前記R1元素の量が2原子%以上であり、かつ 420kA/m 以上の保磁力を有することを特徴とする磁石材料。 - 請求項1記載の磁石材料において、
TbCu7型結晶構造を有する相を主相とすることを特徴とする磁石材料。 - 請求項1または請求項2記載の磁石材料において、
前記磁石材料の主相中に、前記T元素が90原子%以上含まれることを特徴とする磁石材料。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の磁石材料を、結合剤により固着してなることを特徴とする永久磁石。
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