JP4903314B2 - 薄膜結晶質Si太陽電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は薄膜結晶質Si太陽電池等に代表される光電変換素子に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
薄膜多結晶Si太陽電池に代表される薄膜結晶質Si太陽電池は、次世代太陽電池として注目されているが、結晶Siの光吸収係数が薄膜たる膜厚に対して充分大きな値ではないため、充分な光電流値を得るには光閉じ込め構造を導入して光利用効率の向上を図ることが特に重要である。
【0003】
光閉じ込め技術としては、従来から光入射面側へ反射防止膜を形成することや凹凸構造を形成することが知られており、太陽電池に応用実用化されて久しい。
【0004】
しかし、薄膜結晶質Si太陽電池においては、結晶Siの光吸収係数が長波長側で小さいため、数μm程度以下の膜厚で光吸収を充分に生ぜしめて光電変換をより効率的に行わせるためには、入射光が結晶質Si膜内を多数回反射往復するようにして光をより有効に閉じ込められる構造にすることが特に重要である。このため、薄膜結晶質Si太陽電池では、従来の半導体層の光入射面側表面へ凹凸構造を形成することに加えて、半導体層の光入射面とは反対側にも凹凸構造を形成して光閉じ込めをより有効に行う検討が進められている。
【0005】
これらの従来例は、例えば特許第2713847号、特許第2771414号、特許第2784841号、特許第3027669号、特許第3029169号、特開平5−218469号、特開平6−196738号、特開平10−117006号、特開平11−233800号等の文献に述べられており、いずれにおいても光電流が増大して変換効率が向上する結果が得られている。
【0006】
ここで代表的な素子構造を図3、図4、図5に示す。図3、図4、図5中、31、41、51は基板、32、42、52は裏電極層、33、43、53は裏透明導電層、34、44、54は半導体層、35、45、55は表透明導電層、36、46、56は表集電極である。
【0007】
しかしながら、図3、図4、図5で示した半導体層両面を凹凸構造とする従来の両面凹凸構造では、半導体層34、44、54を既に凹凸構造が形成された面を堆積面として成長させることになる。これは電気的に良質な半導体膜を成長させるためには本来は好ましくないものである。なぜならば、フラット面への薄膜成長であれば、凹凸構造に起因した不要な核発生サイトが少ないので結晶の大粒径化がはかりやすく、また、全ての結晶がフラット面に対して垂直な方向に成長していくために成長した結晶粒どうしが衝突して結晶粒界を生じさせたりすることがなく、また結晶配向も一方向にそろいやすく望ましい結晶配向特性に制御しやすいという利点があるのに対して、凹凸構造面上への薄膜成長ではこれらの利点が失われてしまうからである。
【0008】
特に太陽電池においては、結晶粒径が小さいことによる結晶粒界の増加や、成長結晶粒どうしの衝突による結晶粒界の生成は、結晶粒界部がリーク電流の発生経路となるため半導体層34、44、54の電気的特性が劣化し、開放電圧特性の低下や曲線因子特性の低下を招く致命的なマイナス因子となる。
【0009】
実際、凹凸形状と開放電圧との関係については、第61回秋期応用物理学会予稿集6a−C−6,p.829(2000)、同6a−C−7,p.830(2000)で報告されており、凹凸形状の増大(凹凸構造を形成する凹凸単位の平均サイズ(特性長)の増大や、凹凸構造を形成する面の基板水平方向に対する傾斜角度の増大)とともに光電流は増大するが、開放電圧は低下してしまうことが述べられている。
【0010】
このように、半導体層両面を凹凸構造とする従来の両面凹凸構造では、光学的に望ましい凹凸構造を形成して光電流を増大させることはできても、リーク電流の増大が抑えられず、本来期待される特性レベルにまでは到達できないという課題があった。
【0011】
また光活性層部である結晶質Si層については、その結晶配向特性を(110)配向とすることが、光閉じ込めに適した凹凸形状をその成長表面に自生的に形成するためには重要であるが、半導体層34、44、54を形成する前に既に凹凸形状が形成されている場合は、この配向の制御性が乱されてしまい、理想的な強い(110)配向を得にくいという課題があった。
【0012】
これに対して、本発明者らは、既に特願2001−20623号で、前記従来例よりもリーク電流量を少なくできる両面凹凸構造素子を開示しており、これを図6、図7に示す。図6、図7中、61、71は基板、62、72は裏電極層、63、73は裏透明導電層、64、74半導体層、65、75は表透明導電層、66、76は表集電極である。これらの素子構造では、前記した図3、4、5で示した素子構造に対して、半導体層64、74をより平坦化された面上に成長させることができるので、電気的により良質な半導体層64、74を得ることができる。
【0013】
ところが、この場合でも、裏電極層62、72の表面の凹凸構造の特性長と傾斜角度がある程度以上の値になると、裏透明導電層63、73でこれを完全に被覆して埋め込むためには裏透明導電層63、73をかなり厚く成膜する必要があり、この成膜工程に時間がかかるとともに、厚膜となるほど透明導電層の結晶構造を反映した表面凹凸形状がより増大し、ある程度の平坦化工程を必要とするという課題があった。このため、裏電極層62、72の表面の凹凸形状をより増大させた方が光学的には望ましいとわかっていても、その凹凸構造の特性長と傾斜角度にはなお実質的な制約があった。
【0014】
本発明は、リーク電流の増大が抑えられないという従来の両面凹凸構造での問題点を解決しつつ、さらには凹凸構造の特性長と傾斜角度にはなお実質的な制約があるという他の従来の問題をも解決するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の一形態に係る薄膜結晶質Si太陽電池は、透光性基板の一主面側に、裏電極となる裏透明導電層、結晶質Siからなる半導体層、表電極となる表透明導電層および表集電極を順次積層した薄膜結晶質Si太陽電池において、前記透光性基板の他の主面側が3角錐以上の多数の多角錐からなる凹凸構造を有し、この凹凸構造の隣接する多角錐の頂点間の平均距離が100nm以上であり、前記凹凸構造上に金属からなる光反射層を形成し、さらに前記半導体層を平坦な前記裏透明導電層の上に形成してなることを特徴とする。
【0016】
また、前記凹凸構造の凹部が曲面からなっていて、この凹凸構造の隣接する凹部の最下点間の平均距離を100nm以上としたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一形態に係る薄膜結晶質Si太陽電池は、基板の一主面側に、裏電極となる裏透明導電層、結晶質Siからなる半導体層、表電極となる表透明導電層および表集電極を順次積層した薄膜結晶質Si太陽電池において、前記基板の一主面側が3角錐以上の多数の多角錐からなる凹凸構造、または凹部が曲面からなる凹凸構造を有し、この凹凸構造の隣接する多角錐の頂点間の平均距離、または凹凸構造の隣接する凹部の最下点間の平均距離が100nm以上であり、前記凹凸構造と前記裏透明導電層との間に、表面が平坦な透光性薄膜層を形成し、さらに前記半導体層を平坦な前記裏透明導電層の上に形成してなることを特徴とする。
【0018】
また、上記薄膜結晶質Si太陽電池において、前記基板が透光性基板である場合は、この透光性基板と前記透光性薄膜層との間に金属からなる光反射層を設けたことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図1を用いて請求項1に係る発明の実施の形態を説明する。図中、11は透光性基板、12は光反射層、13は裏透明導電層、14は光活性層部を結晶質Siで形成した半導体接合を有する半導体層、15は表透明導電層、16は表集電極である。なお、図1は請求項1を説明するためのものであるが、請求項2を説明する際にも凹凸構造を請求項2で述べた形状のものと解釈することと約して流用することにする。
【0020】
透光性基板11の一主面側に、裏電極となる裏透明導電層13、光活性層部を結晶質Siで形成した半導体接合を有する半導体層14、表電極となる表透明導電層15および表集電極16を順次積層する。透光性基板の他の主面側は、3角錐以上の多数の多角錘からなる凹凸構造を有し、この凹凸構造の隣接する多角錐の頂点間の平均距離が100nm以上であり、さらにこの凹凸構造上に金属からなる光反射層12を形成している。
【0021】
この素子構造によれば、両面凹凸構造のうち光入射面とは反対側に位置する裏面側凹凸構造は、半導体形成面側とは反対側の透光性基板11の裏面に形成されるので、半導体層14は実質的にフラットな面に形成されることになり、半導体層14が凹凸形状表面に形成されることによって生ずるリーク電流の増大を回避することができるとともに、裏透明導電層13の表面の平坦化工程も省くことができる。また、凹凸構造の特性長と傾斜角度の上限についての実質的制約も完全になくすことができる。よって、素子の電気特性(リーク特性)とのトレードオフを全く考慮する必要がなく、独立に光学的な最適構造化をはかれる素子構造を実現することができる。
【0022】
なお、素子表面から入射した光のうち半導体層14と裏透明導電層13との界面にまで達したものは、一部は半導体層14側へ反射され、残りは裏透明導電層13と透光性基板11との界面にまで達し、後者の一部は半導体層14側へ反射され、残りは透光性基板11中を透過して光反射層12に達する。光反射層12に達した光は、裏面側凹凸構造の傾斜角度に応じて半導体層14側へ向けて斜めに反射される。この反射した光のうち素子表面にまで達したものは素子表面に形成された結晶質Siの自生的凹凸構造を反映した凹凸面においてその傾斜角度に応じて半導体層14へ向けて斜めに反射される。このように凹凸構造導入素子では、入射光が素子中をある傾斜角をもって多数回反射することによって光電変換がなされるが、半導体層中を斜めに進む光に対しては、表透明導電層15と半導体層14との界面、および半導体層14と裏透明導電層13との界面は全反射条件がより成立しやすくなっているので、非常に高い光閉じ込め効果が得られる。
【0023】
この素子構造においては、裏面側凹凸構造における傾斜角度には上限がないので、例えば45°を超えるようなかなり急角度な傾斜面を形成することも可能となり、光反射層12で反射した光をより水平な方向に進ませることができる。より水平な方向に進む光は半導体層14中を次に反射するまでにより長い距離を進むことができるので、半導体層14中の光の走行距離に対する反射回数を減らすことができ、反射時にわずかに生ずる光吸収の累積ロスがより低く抑えられたより効率的な光電変換を実現することができる。
【0024】
また、基板11裏面の凹凸構造における隣接する任意の多角錐の頂点間の平均距離(以後、凹凸構造単位の平均サイズと表現したり、特性長と表現したりする)を100nm以上としたのは、それ以下では光学的にフラットとみなされてしまい、期待する光散乱効果が得られないからである。
【0025】
すなわち、一般に、光波長の1/4程度の特性長を有する凹凸構造は光学的にフラットとみなされるので、期待する光散乱効果を有する凹凸構造とするには、その特性長を少なくとも問題とする光の波長の1/4以上、望ましくは1/2以上とする必要がある。
【0026】
本発明の場合、光活性層たる半導体膜は結晶質Siで構成されているので、利用できる最長光波長は約1200nmである。つまり本件で問題にすべき光の波長は1200nmまでであるが、このとき本件の透光性基板11または透光性薄膜層22(後述)の代表的材料としてガラスを例にとると、その屈折率は約1.5であるため、この材料媒質中での光波長は800nmとみなせる。つまり、波長1200nmの光を素子裏面側の光反射層部で斜め反射させて素子内部に有効に閉じ込めるにはその凹凸構造の特性長は、少なくとも800nmの1/4の200nm以上、望ましくは1/2の400nm以上とする必要があることになる。実際には波長800nm前後までの光に対して光閉じ込め効果が得られるだけでもかなりの実質的特性向上効果があるので、この場合の最小特性長は少なくとも133nm前後以上、望ましくは267nm前後以上とすればよく、これが前記した特性長を100nm以上とするとした理由である。
【0027】
なお、前記透光性基板12や後記する透光性薄膜層22としてガラスの他にプラスチックや樹脂を使っても屈折率はやはり1.5程度なので、前述した数値はやはり有効である。
【0028】
前記透光性基板11の裏面の凹凸構造の凹部は曲面からなっていてもよい。
【0029】
次に、上述した薄膜結晶質Si太陽電池の製造方法を説明する。
まず、透光性基板11として、ガラス、プラスチック、樹脂などを材料とした板材あるいはフィルム材などを用意し、基板11の裏面を凹凸形状に加工する。
【0030】
ここで、基板11の裏面の凹凸構造として、請求項1に述べられている3角錐以上の多数の多角錐からなる凹凸構造を形成したい場合には、予めこのネガ構造を有した金型等のネガレプリカを用意しておき、これによって基板11の表面を適当な温度条件でプレス加工すれば比較的低コストで容易に実現できる。ここで、この凹凸構造における隣接する任意の多角錐の頂点間の平均距離は100nm以上、より好ましくは200nm以上とする。なお、ネガレプリカを作製するためのオリジナル凹凸構造としては、例えば結晶Si基板を所定のウェットエッチング条件やドライエッチング条件でエッチングすることによって形成されるSi結晶の面方位を反映した凹凸構造を利用することができるし、SnO2等の透明導電膜を所定の条件で製膜することによって得られる自生的表面凹凸構造などを利用することもでき、得たい凹凸構造に応じて様々な材料を利用することができる。
【0031】
また、基板11の裏面の凹凸構造として、請求項2に述べられている凹部が曲面の凹凸構造を形成する場合には、ドライエッチング法やウエットエッチング法を用いて加工すれば比較的低コストで実現することができる。特にドライエッチング法の一種であるRIE法を用いれば、ガス種、ガス圧、プラズマパワー等のエッチング条件によって所望の凹凸形状が得られることが、例えば特願2000−301419号に述べられている。この凹凸構造における凹部の曲面の最下点間の平均距離は100nm以上、より好ましくは200nm以上とする。なお、この凹凸構造の形成にあたっても前述したネガレプリカによるプレス加工法を利用することができる。
【0032】
次に、光反射層12となる金属膜を前記凹凸構造が形成された透光性基板11の裏面側に成膜する。金属材料としては、光反射特性に優れるAl、Agなどを用いるのが望ましい。製膜方法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の技術を使用できる。このとき膜厚は、0.01μm程度以上とする。なお、光反射層12と透光性基板11との接着強度が弱い場合は、Tiなどの酸化しやすい金属薄膜を厚さ1〜10nm程度で光反射層12と透光性基板11との間に挿入させるとよい。
【0033】
次に、裏透明導電層13を透光性基板11の表面側に形成する。透明導電膜材料としては、SnO2、ITO、ZnOなど公知の材料を用いることができるが、この後に堆積するSi膜形成時にSiH4とH2を使用することに起因して水素ガス雰囲気に曝されることになるので、耐還元性に優れるZnO膜を少なくとも最終表面として形成するのが望ましい。製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法など公知の技術を用いることができる。このとき、膜厚は、裏透明導電層13が裏電極を兼ねることを考慮して、そのシート抵抗値を充分低くするために、10nm以上、より好ましくは20nm以上とする。なお、透明導電層は膜厚増大とともにその結晶構造に起因した凹凸形状が増大していく傾向があるので、条件によっては期待する実質的に平坦な表面形状が得られない場合があるが、この場合は透明導電層13をまず非晶質状態で成膜しておき、その後熱アニール処理などによって結晶化させれば実質的に平坦な表面形状を得ることができる。
【0034】
次に、光活性層部を結晶質Siで形成した半導体接合を有する半導体層14を形成する。プロセスは大別して下地層の形成、光活性層の形成、接合の形成となる(それぞれ不図示)。なお、これらの半導体層の形成においては、前述したように既に半導体堆積面が実質的に平坦化されているので不要な核形成が抑えられて半導体結晶粒の大粒径化を行いやすく、また結晶粒は共に基板に垂直な方向に平行して柱状成長していくので結晶粒どうしの衝突による結晶粒界発生を抑えることができ、結晶粒界に起因した半導体膜の品質低下が極力抑制された半導体層形成を行うことができる。また比較的容易に強い(110)配向特性を得ることができるので、半導体層14表面に光閉じ込めに適した理想的な自生的凹凸構造を形成することができる。
【0035】
まず、下地層として非単結晶Si膜を触媒CVD法やプラズマCVD法などの方法で形成する。膜厚は、10〜500nm程度とする。ドーピング元素濃度については1×1E18〜1E21/cm3程度としてp+型(またはn+型)とする。
【0036】
次に、光活性層として結晶質Si膜を触媒CVD法やプラズマCVD法などの方法で形成する。膜厚は、0.5〜10μm程度とする。なお、導電型は、上記下地層よりはドーピング濃度が低い同導電型とするか、あるいは実質的なi型とする。
【0037】
次に、半導体接合を形成するべく、非単結晶Si膜を触媒CVD法やプラズマCVD法などの方法で形成する。膜厚は5〜500nm程度とする。ドーピング元素濃度は1×1E18〜1E21/cm3程度とし、前述した下地層とは反対導電型であるn+(またはp+型)とする。なお、接合特性をより改善するために光活性層と接合層との間に実質的にi型の非単結晶Si層を挿入してもよい。このとき挿入層の厚さは結晶質Si層の場合は10〜500nm程度、非晶質Siの場合は1〜20nm程度とする。
【0038】
次に、表透明導電層15を形成する。透明導電膜材料としては、SnO2、ITO、ZnOなど公知の材料を用いることができる。製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法など公知の技術を用いることができる。このとき、膜厚は光学的干渉効果を考慮して60〜300nm程度にする。
【0039】
最後に、表集電極16となる金属膜を形成する。金属膜材料としては、導電性に優れるAl、Agなどを用いるのが望ましい。製膜方法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スクリーン印刷法などの公知の技術を使用できる。電極パターンについては、マスキング法、リフトオフ法などを用いて所望のパターンに形成することができる。なお、表透明導電層15との接着強度強化のためには、表透明導電層15と表集電極16との間に、Ti等の酸化物材料との接着強度に優れる金属材料を挿入すると効果的である。
【0040】
以上によって、リーク電流を増大させることのない両面凹凸光閉じ込め構造を有した高効率な薄膜結晶質Si太陽電池を得ることができる。
【0041】
次に、図2を用いて請求項3及び請求項4に係る発明の実施の形態を説明する。図中、20は基板、21は金属からなる光反射層、22は透光性薄膜層、23は裏電極となる裏透明導電層、24は光活性層部を結晶質Siで形成した半導体接合を有する半導体層、25は表電極となる表透明導電層、26は表集電極である。
【0042】
まず、基板20として、ガラス、プラスチック、ステンレス等の金属などを材料とした板材あるいはフィルム材などを用意し、該基板の一主面側を凹凸形状に加工する。
このとき、基板20の一主面側は、実施例1で述べた方法を用いれば、3角錐以上の多数の多角錐からなる凹凸構造を有し、この凹凸構造の隣接する多角錐の頂点間の平均距離が100nm以上、より好ましくは200nm以上であるような凹凸構造とすることもできるし、凹部が曲面からなる凹凸構造を有し、この凹凸構造の隣接する凹部の最下点間の平均距離が100nm以上、より好ましくは200nm以上であるような凹凸構造とすることもできる。
次に金属からなる光反射層21を形成する。この金属材料としては、光反射特性に優れるAl、Agなどを用いるのが望ましい。製膜方法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の技術を使用できる。このとき膜厚は、0.01〜1μm程度とする。なお、光反射層21と基板20との接着強度が弱い場合は、Tiなどの酸化しやすい金属薄膜を厚さ1〜10nm程度で光反射層21と基板20との間に挿入させるとよい。なお、基板20がステンレス材などの光反射性を有する金属などから成っている場合はこの基板20自体が光反射層の機能を兼ねることができるので光反射層21を省略することができる。
次に、透光性薄膜層22として、ガラス層、プラスチック層、あるいは樹脂層などを堆積する。このとき、これらの材料を適当な条件下で流動性のある状態として、これを前記光反射層21上に適量堆積すれば、該透光性薄膜層22の表面は前記流動性の効果で自然と凹凸形状が低減された実質的に平坦な面を得ることができる。なお、この流動化による平坦化処理は前記材料を堆積した後に行ってもよい。さらに、必要な場合は平坦化加工を追加してもよい。なお、透光性薄膜層22と光反射層21との接着強度が弱い場合は、Tiなどの酸化しやすい金属薄膜を厚さ1〜10nm程度で透光性薄膜層22と光反射層21との間に挿入させるとよい。
以下、裏透明導電層23、光活性層部を結晶質Siで形成した半導体接合を有する半導体層24、表透明導電層25、表集電極26を順次形成していくが、実施内容は実施例1で述べたものと同一であるため以下は省略する。
【0043】
この素子構造によれば、実施例1のところで述べたのと同様に、半導体層24が実質的に平坦な面上に形成できるようになるので、素子の電気特性(リーク特性)とのトレードオフを考慮する必要が全くなく、完全に独立に光学的な最適構造化をはかれる素子構造を実現することができる。また、この実施例2での素子構造では、実施例1でいう透光性基板が透光性薄膜層となっているので、透光性材料中での光走行距離を短くすることができ、この透光性材料中でも生じているわずかな光吸収ロスを減らすことができる。さらに、基板として金属材料を用いれば光反射層の形成を省略することもでき低コスト化をはかれる。
【0044】
以上のように、発明によれば、薄膜結晶質Si太陽電池において、リーク電流を増大させることのない両面凹凸光閉じ込め構造を実現できるので、従来よりも高効率な薄膜結晶質Si太陽電池を製造することが可能となる。
【0045】
また、発明によれば、透光性薄膜層を用いているので、この材料中での光吸収ロスを減らすことができ、また、基板として金属材料を用いれば光反射層の形成を省略することもできるのでさらなる低コスト化をはかれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の請求項1及び請求項2に係る薄膜結晶質Si太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の請求項3及び請求項4に係る薄膜結晶質Si太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
【図3】従来の両面凹凸構造を有した薄膜結晶質Si太陽電池の一例を示す断面図である。
【図4】従来の両面凹凸構造を有した薄膜結晶質Si太陽電池の他の例を示す断面図である。
【図5】従来の両面凹凸構造を有した薄膜結晶質Si太陽電池のその他の例を示す断面図である。
【図6】従来の両面凹凸構造薄膜結晶質Si太陽電池の有する課題を解決するためになされた先行技術の一例を示す断面図である。
【図7】従来の両面凹凸構造薄膜結晶質Si太陽電池の有する課題を解決するためになされた先行技術の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
11;透光性基板、12;光反射層、13;裏透明導電層、14;光活性層部を結晶質Siで形成した半導体接合を有する半導体層、15;表透明導電層、16;表集電極

Claims (4)

  1. 透光性基板の一主面側に、裏電極となる裏透明導電層、結晶質Siからなる半導体層、表電極となる表透明導電層および表集電極を順次積層した薄膜結晶質Si太陽電池において、前記透光性基板の他の主面側が3角錐以上の多数の多角錐からなる凹凸構造を有し、この凹凸構造の隣接する多角錐の頂点間の平均距離が100nm以上であり、前記凹凸構造上に金属からなる光反射層を形成し、さらに前記半導体層を平坦な前記裏透明導電層の上に形成してなることを特徴とする薄膜結晶質Si太陽電池。
  2. 前記凹凸構造の凹部が曲面からなっていて、この凹凸構造の隣接する凹部の最下点間の平均距離を100nm以上としたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜結晶質Si太陽電池。
  3. 基板の一主面側に、裏電極となる裏透明導電層、結晶質Siからなる半導体層、表電極となる表透明導電層および表集電極を順次積層した薄膜結晶質Si太陽電池において、前記基板の一主面側が3角錐以上の多数の多角錐からなる凹凸構造、または凹部が曲面からなる凹凸構造を有し、この凹凸構造の隣接する多角錐の頂点間の平均距離、または凹凸構造の隣接する凹部の最下点間の平均距離が100nm以上であり、前記凹凸構造と前記裏透明導電層との間に、表面が平坦な透光性薄膜層を形成し、さらに前記半導体層を平坦な前記裏透明導電層の上に形成してなることを特徴とする薄膜結晶質Si太陽電池。
  4. 前記基板が透光性基板であり、この透光性基板と前記透光性薄膜層との間に、金属からなる光反射層を設けたことを特徴とする請求項3に記載の薄膜結晶質Si太陽電池。
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