JP4864191B2 - セラミックグリーンシートの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックグリーンシートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子部品の小型化、軽量化、高密度化等の要求が一層強まってきている。このような要求に応えるものとして、セラミックグリーンシート上に電極を形成し、積み重ねて圧着した後、電極とセラミックとを同時に焼成するという工程を経て製造されるチップタイプの積層型電子部品があり、その種類や生産量は増大の一途をたどっている。
【0003】
これらチップタイプの積層型電子部品には、様々な膜厚のセラミックグリーンシートが要求されており、その製造には、ドクターブレード法、ダイコーダ、ディップ成形などのシート成形方法が一般に採用されている。
【0004】
上記のような成形方法を採用してセラミックグリーンシートを製造するには、セラミック原料粉末をスラリー化する必要があり、そのバインダーとしては、ポリビニルブチラールやアクリル系樹脂等が用いられている。このため、セラミックスラリーの溶媒には、アルコールや芳香族系溶媒等の各種有機溶媒が用いられ、このことにより、爆発や火災に対する防爆設備を設置したり、あるいは臭気や毒性等に対する作業者の安全衛生を確保する必要があった。
【0005】
このような問題点を解決するものとして、有機溶剤を使用しない水系バインダーが提案されている。例えば、特公平6−6504号公報では、ビニルエステルおよび該ビニルエステルとラジカル共重合可能な非イオン性単量体との共重合体をけん化して得られる特定のビニルアルコール共重合体からなるバインダーが提案されている。しかしながら、このバインダーを用いることにより得られる厚みが薄いシートを成形した場合のグリーンシートのタフネスは必ずしも十分とは言い難い。また、特開2000−63181号公報では、特殊なアクリルエマルジョンと水溶性アクリル樹脂とを含んでなるバインダーが提案されており、このバインダーを用いることにより、スラリーの粘性などは改善されるものの、得られるグリーンシートのタフネスは依然として十分とは言えないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形時に有機溶剤を使用する必要がなく、柔軟性に富み、十分なタフネスを有するセラミックグリーンシートを製造するのに適したセラミックス成形用バインダー、およびこれを用いたセラミックグリーンシートの製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の実状に鑑み鋭意検討した結果、 メルカプト基を有するビニルアルコール系重合体からなる分散剤の存在下でエチレン性不飽和単量体およびジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体を乳化重合して得られる水性エマルジョンをセラミックス成形用バインダーとして使用することで、成形時に有機溶剤を使用する必要がなく、柔軟で十分なタフネスを有するグリーンシートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、平均重合度が100〜3500である、メルカプト基を有するビニルアルコール系重合体(A)からなる分散剤の存在下で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、スチレン系単量体、ハロゲン化不飽和単量体、オレフィン系単量体およびジエン系単量体から選ばれる一種または二種以上の単量体(B)を乳化重合して得られる水性エマルジョンを主成分とし、該ビニルアルコール系重合体(A)と該単量体(B)の重量比[(A)/(B)]が0.5/99.5〜95/5であるセラミックス成形用バインダー、セラミック原料粉体および水を含む水系セラミックスラリーを成形することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法である。
【0009】
本発明において、水性エマルジョンの分散質を構成するエチレン性不飽和単量体単位およびジエン系単量体単位としては、ラジカル重合可能なものであれば特に制限はなく、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、スチレン系単量体、ハロゲン化不飽和単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体等が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基を有する単量体単位、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホ酸およびそのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のα−β−エチレン性不飽和カルボン酸のN−アルキロールアミド類、エチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられる。スチレン系単量体としては、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)もしくはアンモニウム塩などが挙げられる。
【0010】
また、ハロゲン化不飽和単量体としては、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、臭化ビニリデン等が挙げられる。オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。また、ジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ネオプレン等が好適である。また、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びその塩等も共重合可能である。
【0011】
これらエチレン性不飽和単量体およびジエン系単量体は、本発明の目的に応じて一種または二種以上を任意に用いることができる。
【0012】
また、本発明において、水性エマルジョンの分散剤としては、メルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体(以下、ポリビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある)が用いられる。メルカプト基を有するPVAとして、重合体の主鎖中にメルカプト基を有するPVAを用いてもよいが、このものは、PVA自体の酸化によりジスルフィド結合を形成して不溶化する恐れがあるので、片末端のみにメルカプト基を有するPVAが、不溶化の心配がなく取扱いが容易であることから好ましい。なお、末端にメルカプト基を有するPVAは、末端のメルカプト基以外に、PVAの主鎖や側鎖に各種の官能基を有するものであってもよい。上記の片末端のみにメルカプト基を有するPVAは、例えば、チオール酸の存在下にビニルエステル系単量体を主体とするビニル単量体を重合して得たポリビニルエステル系重合体を常法によりけん化することによって調製することができる。また、メルカプト基を有するPVAは、メルカプト基以外に従来公知のアニオン性、カチオン性、非イオン性等の各種の変性基を導入することもできる。
【0013】
本発明において使用されるメルカプト基を有するPVAの平均重合度(以後「重合度」と略記する)は100〜3500の範囲内であり、200〜1500の範囲内にあるのがより好ましい。重合度が100より小さい場合には、グリーンシートのタフネスが十分でなく、重合度が3500を越える場合には、得られる水系エマルジョンの粘度が高くなり過ぎて使用に支障をきたす場合があり、好ましくない。
【0014】
また、メルカプト基を有するPVAのけん化度は、メルカプト基以外の他の変性基の種類によっても異なり、一義的には定められないが、水溶性の点から60モル%以上であるのが好ましく、70モル%以上であるのがより好ましい。
【0015】
また、この分散剤は、メルカプト基を有するPVAのみから構成することもできるが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、従来公知のPVAや、PVA以外の乳化安定剤を併用することができる。メルカプト基を有するPVAは、そのメルカプト基がラジカル反応において極めて活性を示すため、メルカプト基を有しない従来のPVAを分散剤とした場合には安定なエマルジョンを得ることが極めて困難であったメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ジエン系単量体およびハロゲン化不飽和単量体などのラジカル反応性の比較的小さい単量体に対しても、高い反応性を示す。その結果、末端にメルカプト基を有するPVA系単量体は、上記単量体を構成単位とする共重合体からなる分散質の粒子と化学的に結合して極めて安定な水性エマルジョンを与える。
【0016】
本発明における水性エマルジョンの製造に際し、乳化重合の開始剤としては、メルカプト基を有するPVAのメルカプト基とのレドックス反応によってのみラジカルを発生させる臭素酸カリウムの他、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の水溶性開始剤やアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の油溶性開始剤が単独または各種還元剤との組み合わせによるレドックス系で用いられる。これらの開始剤に使用方法について特に制限はないが、重合反応の初期に一括して添加する方法や、重合系に連続的に添加する方法等が採用される。
【0017】
本発明において、水性エマルジョンの製造には連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、連鎖移動を起こすものであれば特に制限はないが、連鎖移動の効率の点でメルカプト基を有する化合物が好ましい。メルカプト基を有する化合物としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。連鎖移動剤を用いる場合には、得られるエマルジョンの皮膜物性等を考慮し、通常は使用量を単量体100重量部あたり5重量部以下に制限するのがよい。連鎖移動剤の添加方法は、重合系に連続的に添加する方法が好ましく、具体的には、連鎖移動剤を単独で連続的に添加する方法や、単量体に予め混合したものを連続添加する方法等がある。
【0018】
本発明において、水性エマルジョンの製造方法に特に制限はなく、従来公知の乳化重合方法が採用される。単量体の重合系への添加方法としては、重合反応の初期に全単量体を一括して添加する方法、単量体の一部を添加して重合を開始した後、残りの単量体を逐次的または間欠的に添加する方法、単量体と乳化重合用分散安定剤との水溶液を予め乳化しておき、それを添加する方法等があげられる。また、乳化重合用分散安定剤の添加方法としては、乳化重合用分散安定剤の全量を重合開始前に重合系に添加する方法、乳化重合用分散安定剤の一部を重合反応の初期に仕込んで重合を開始した後、残りを逐次的または間欠的に重合系に添加する方法等があげられる。
【0019】
水性エマルジョンの製造に際し、重合系は酸性であることが望ましい。これは、ラジカル重合において極めて活性な反応性を示すPVA中のメルカプト基が塩基性下においては、モノマーの二重結合へイオン的に付加して消失する速度が大きく、そのために重合効率が著しく低下するためであり、不飽和単量体の種類にもよるが、全ての重合操作をpHが6以下、好ましくは4以下となる条件下で実施することが望ましい。
【0020】
本発明にしたがう水性エマルジョンの製造において、上記以外の重合条件および重合方法について特に制限はなく、従来公知の乳化重合方法を採用することができる。
【0021】
このようにして得られる水性エマルジョンは、ビニルエステル系単量体はもちろんのこと、従来のPVAを分散剤とした乳化重合によっては安定性の良好なエマルジョンを得ることが困難であったスチレン−ブタジエン共重合系、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合系、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系の単独重合または共重合系においても、実用的および工業的規模で安定かつPVAの分散質への乳化結合(グラフト)率が高く、機械的安定性に優れているという特性を備えている。したがって、水性エマルジョンはボールミルなどを用いたセラミックス原料粉体の分散など機械的な外力が加わる際にも極めて安定であり、そのうえPVAが本来有する造膜性および強靱なフィルム物性を付与して、グリーンシートのタフネスを向上させる。
【0022】
本発明において、メルカプト基を有するビニルアルコール系重合体(A)とエチレン性不飽和単量体およびジエン系単量体から選ばれる一種または二種以上の単量体(B)の重量比[(A)/(B)]は好ましくは0.5/99.5〜95/5であり、より好ましくは1/99〜90/10であり、最適には3/95〜70/30である。重量比[(A)/(B)]が0.5/99.5に満たない場合には、水性エマルジョンにPVAを導入する効果が発現しないことがあり、また95/5を越える場合には、本発明の特徴であるグリーンシートの柔軟性が発揮されない場合があり好ましくない。
【0023】
本発明におけるセラミックス成形用バインダーの使用にあたり、上記水性エマルジョンとセラミック原料粉末とは任意の割合で組み合わせて用いることができるが、セラミック原料粉末100重量部に対して水性エマルジョンを1〜25重量部の割合で用いるのが好ましい。
【0024】
本発明においてセラミックス成形用バインダーの特性が発揮される成形方法としては、シート成形、プレス成形、押し出し成形、泥奬鋳込成形などの、水系スラリーを成形工程として持つ成形方法が挙げられる。ここで言う水系スラリーとは、セラミックス原料粉と、水およびセラミックス成形用バインダーを含むものであり、これには必要に応じて、解膠剤、可塑剤、滑剤などが添加されていてもよい。
【0025】
成形方法の中でも、例えば水系スラリーをドクターブレード法などにより、キャリヤーシート上に一定厚みで塗布し、乾燥によって水を揮発させて固化させてグリーンシートを得るシート成形法(テープ成形法)が特に効果的である。この場合、目的に応じてグリーンシートの厚みが異なるため一概に規定はできないが、通常1〜300μmの範囲で成形する。また、乾燥温度もグリーンシートの厚みなどにより一概に規定できないが、60〜200℃の範囲である。
【0026】
本発明において、セラミック成形用バインダーおよびセラミック原料粉体を含む水系スラリーを製造する際には、必要に応じて解膠剤、潤滑剤、可塑剤などを併用してもよい。解膠剤としては通常用いられているものが使用できる。解膠剤には無機解膠剤と有機解膠剤とがあり、無機解膠剤としては、例えば燐酸ソーダ、苛性ソーダ、クエン酸ソーダなどが挙げられる。また、有機解膠剤としては、アミン類、ピリジン、ピペリジン、ポリアクリル酸の金属塩またはアンモニウム塩、スチレンもしくはイソブテンと無水マレイン酸との共重合物の金属塩またはアンモニウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどが挙げられる。潤滑剤としては通常用いられるものが使用でき、例えばみつろう、木ろう等の天然ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子ポリエチレン及びその誘導体等の合成ワックス、ステアリン酸、ラウリル酸等脂肪酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等脂肪酸の金属塩、マレイン酸イミド、ステアリン酸アミド等脂肪酸アミド、ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらは水系分散体になっていてもよい。可塑剤としては、グリコール類、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリオールなどの水溶性の可塑剤や、水に溶解せず、エマルジョンに移行してグリーンシートを可塑化するフタル酸ジブチルやフタル酸ジオクチルなどのようなフタル酸エステル系可塑剤等を使用してもよい。
【0027】
また、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、メルカプト基を有するPVAは他のバインダーと共に用いられてもよい。この目的に用いることができる他のバインダーとしては、例えば、各種澱粉類およびそれらの誘導体、各種糖類およびそれらの誘導体、ゴム類、可溶性蛋白質、セルロース誘導体のほか、合成高分子として、PVA、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、イソブテン−無水マレイン酸共重合体やアクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステル化物の単独または共重合物、水系分散体としてエチレン、プロピレンなどのオレフィン、ブタジエン、イソプレンなどのジオレフィン、酢酸ビニルなどのビニルエステル、ラウリルビニルエーテルなどのビニルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステル、スチレンなどの単量体の一種または二種以上からなるポリマーの水系分散体などを挙げることができる。
【0028】
本発明において用いることができるセラミックス粉末としては、セラミックスの製造に使用されうる金属もしくは非金属の酸化物または非酸化物の粉末が挙げられる。また、これらの粉末の組成は単一組成、化合物の状態のものを単独または混合して使用してもさしつかえない。なお、金属の酸化物または非酸化物の構成元素はカチオンまたはアニオンともに単元素でも複数の元素から成り立ってもよく、さらに酸化物または非酸化物の特性を改良するために加えられる添加物を含む系についても本発明に使用することができる。具体的には、Li、K、Mg、B、Al、Si、Cu、Ca、Br、Ba、Zn、Cd、Ga、In、ランタノイド、アクチノイド、Ti、Zr、Hf、Bi、V、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、Ni等の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物等が挙げられる。また、通常複酸化物と称される複数の金属元素を含む酸化物粉末の具体的なものを結晶構造から分類すると、ペロブスカイト型構造をとるものとしてNaNbO3、SrZrO3、PbZrO3、SrTiO3、BaZrO3、PbTiO3、BaTiO3等が、スピネル型構造をとるものとしてMgAl2O4、ZnAl2O4、CoAl2O4、NiAl2O4、MgFe2O4等が、イルメナイト型構造をとるものとしてはMgTiO3、MnTiO3、FeTiO3等が、ガーネット型構造をとるものとしてはGdGa5O12、Y6Fe5O12等が挙げられる。
【0029】
本発明により得られるセラミックスグリーンシートは、各種電子部品、とりわけセラミックグリーンシート上に電極を形成し、積み重ねて圧着した後、電極とセラミックとを同時に焼成するという工程で作製されるチップタイプの積層型電子部品に好適に使用できる。
【0030】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例により詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお実施例および比較例において「部」および「%」は特に断りのない限り重量基準を意味する。
また、実施例および比較例において用いた水性エマルジョンおよび重合体は以下のようにして製造した。
【0031】
エマルジョン1の製造
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備えたガラス製容器に、末端にメルカプト基を有するPVA(PVA−A1:重合度550、鹸化度88.3mol%、メルカプト基含量3.3×10-5当量/g)5部と、イオン交換水90部を仕込み、95℃で完全溶解させた。次いで、希硫酸によりpH=4とした後、150rpmで撹拌しながらメチルメタクリレート10部、n−ブチルアクリレート10部、n−ドデシルメルカプタン0.1部を添加し、窒素置換後70℃まで昇温した。1%過硫酸カリウム5部を添加し重合を開始し、さらに2時間かけてメチルメタクリレート40部、n−ブチルアクリレート40部、n−ドデシルメルカプタン0.4部を混合したものを連続的に添加した。重合開始3時間後、転化率99.5%となり重合を終了した。固形分濃度52.0%、粘度400mPa.sの安定なメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン(エマルジョン1)を得た。
【0032】
エマルジョン2の製造
窒素吹き込み口、温度計を備えた耐圧オートクレーブに、末端にメルカプト基を有するPVA(PVA−A2:重合度350、鹸化度88.5mol%、メルカプト基含量7.0×10-5当量/g)の10%水溶液100部を仕込み、希硫酸でpH=4に調整し、スチレン60部、t−ドデシルメルカプタン1部を仕込んだ。次いで、窒素置換を行った後、ブタジエン40部を耐圧計量器より圧入して、70℃に昇温した。その後、2%tーブチルハイドロパーオキサイド10部を圧入して重合を開始した。内圧は4.5Kg/cm2から重合の進行と共に低下し、20時間後には0.3Kg/cm2となり、重合率を求めたところ99.2%であった。固形分濃度51.2%、粘度650mPa.sの安定なスチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン(エマルジョン2)を得た。
【0033】
エマルジョン3の製造
エマルジョン1の製造に使用したPVA−A1を2.5部、および末端にメルカプト基を有するPVA(PVA−A3:重合度1550、鹸化度88.3mol%、メルカプト基含量2.3×10-5当量/g)を2.5部使用した以外は合成例1と同様にして固形分濃度47.0%、粘度900mPa.sの安定なメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン(エマルジョン3)を得た。
【0034】
エマルジョン4の製造
PVA−A1の代わりに、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.5部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル1.5部を用いたこと以外はエマルジョン1の製造と同様にして、固形分濃度52.0%、粘度40mPa.sのメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン(エマルジョン4)を得た。
【0035】
エマルジョン5の製造
PVA−A2の代わりに、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.5部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル1.5部を用いること以外はエマルジョン2の製造と同様にして、固形分濃度49.2%、粘度35mPa.sの安定なスチレン−ブタジエン共重合体エマルジョンを得た(エマルジョン5)。
【0036】
重合体1の製造
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備えたガラス製容器に、純水130部、イソプロピルアルコール130部、およびアゾビス(4−シアノ吉草酸)2部を入れ、窒素ガス気流下80℃に加熱した。次に、滴下ロートに2−ヒドロキシエチルアクリレート50部およびポリエチレンオキシドアクリレート(n=8)50部を入れ、2時間かけて滴下した。次に、還流温度で1時間加熱後、冷却し、アンモニア水でpH7に調整した。さらに、純水130部を加えた後、なす型フラスコに移し、エバポレータでアルコールを蒸発除去して固形分濃度30.2%、粘度4000mPa・sの水溶性アクリル樹脂(重合体1)の溶液を得た。
【0037】
重合体2の製造
公知の方法により、鹸化度88.5mol%、重合度550のPVA(重合体2)を得た。
【0038】
重合体3の製造
特公平6−6504号公報に記載の公知の方法により、アリルアルコール単位を10.2mol%含有する鹸化度67.0mol%、重合度260のビニルアルコール系重合体(重合体3)を得た。
【0039】
実施例1
チタン酸バリウム粉末(平均粒径0.8μm)100重量部、エマルジョン1を固形分換算で3部、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウム(数平均分子量1000)を固形分で0.5重量部と、可塑剤としてジエチレングリコール2部、および純水70部とをジルコニアボールとともにボールミル容器に入れ、15時間湿式混合を行ってセラミックスラリーを得た。
このようにして得られたセラミックスラリーをブレードコーターを用いて、厚み約25μmのセラミックグリーンシートを作製して、90℃で5分間乾燥した後に30mm×70mmに打ち抜き、オートグラフにてグリーンシートのタフネスを測定した(チャック間隔:40mm、引張速度:20mm/min.、測定温度20℃)。
【0040】
また、20℃で五酸化二リンの存在下、上記した打ち抜きシートをデシケータ中で2週間かけて絶乾状態にした後に取り出し、シートを曲げた際の亀裂の状態を目視で観察した。判定基準を以下に示す。
○;亀裂が生じない
×;シートに小さな亀裂が生じるか又は破断する
評価結果を表1に示す。
【0041】
実施例2および実施例3
実施例1で用いたエマルジョン1の代わりにエマルジョン2またはエマルジョン3を用いてセラミックグリーンシートを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0042】
比較例1〜比較例5
実施例1で用いたエマルジョン1の代わりに表1に示したエマルジョンまたは重合体を用いてセラミックグリーンシートを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
Figure 0004864191
【0044】
表1から明らかなように、メルカプト基を有するビニルアルコール系重合体からなる分散剤の存在下で乳化重合して得られる水性エマルジョンをセラミックス成形用バインダーとして使用した場合(実施例1〜3)、タフネスおよび柔軟性の点で優れたセラミックスグリーンシートを製造することができる。
それに対して、従来公知の水性エマルジョンをセラミックス成形用バインダーとして使用した場合(比較例1および2)、得られるセラミックスグリーンシートは柔軟性には優れるものの、タフネスの点で十分でない。同様に水性エマルジョンに水溶性アクリル樹脂や従来公知のPVAを添加して用いた場合には(比較例3および4)、タフネスは若干向上するが、その程度は十分とは言えない。また、特定の単量体単位を有するPVAを使用した場合には(比較例5)、タフネスは改善されるものの柔軟性が不足する。
詳細は不明であるが、本発明のセラミックス成形用バインダーを構成する水溶性エマルジョンは、PVAの分散質への乳化結合(グラフト)率が高くて、機械的安定に優れていることから、ボールミルなどを用いたセラミックス原料粉体の分散など機械的な外力が加わる際にも極めて安定であり、PVAが本来有する造膜性および強靱なフィルム物性を付与して、グリーンシートのタフネスの向上に寄与しているものと推察される。また、上記水溶性エマルジョンは分散質のガラス転移温度をコントロールすることで柔軟性を付与することができることから、この水溶性エマルジョンを用いて得られるグリーンシートはタフネスおよび柔軟性を同時に満足することができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の製造方法を採用することで、有機溶剤を使用することなく成形でき、柔軟で十分なタフネスを有するセラミックグリーンシートを提供することができる。

Claims (1)

  1. 平均重合度が100〜3500である、メルカプト基を有するビニルアルコール系重合体(A)からなる分散剤の存在下で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、スチレン系単量体、ハロゲン化不飽和単量体、オレフィン系単量体およびジエン系単量体から選ばれる一種または二種以上の単量体(B)を乳化重合して得られる水性エマルジョンを主成分とし、該ビニルアルコール系重合体(A)と該単量体(B)の重量比[(A)/(B)]が0.5/99.5〜95/5であるセラミックス成形用バインダー、セラミック原料粉体および水を含む水系セラミックスラリーを成形することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法。
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