JP3131407B2 - セラミックス成形用バインダー及びその製造方法 - Google Patents

セラミックス成形用バインダー及びその製造方法

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JP3131407B2 JP09271125A JP27112597A JP3131407B2 JP 3131407 B2 JP3131407 B2 JP 3131407B2 JP 09271125 A JP09271125 A JP 09271125A JP 27112597 A JP27112597 A JP 27112597A JP 3131407 B2 JP3131407 B2 JP 3131407B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックスの成
形の際にバインダーとして使用される水系のバインダー
樹脂及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】セラミックスの焼結前の成形品、例えば
積層コンデンサーとして使用されるチタン酸バリウムの
シートや電気回路の基板として使用されるアルミナのシ
ートの製造はセラミックスの微粉末を樹脂バインダーを
使用して所定形状に成形し、グリーンシートとした後に
焼成して製造される。
【0003】上記のバインダーとしては従来から有機溶
剤にポリビニルブチラール等の樹脂を溶解した溶液タイ
プのバインダーが使用されていたが、有機溶剤を使用す
ることに基づく問題が指摘されるにしたがって、水系の
樹脂、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルエ
マルジョン、水溶性のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂
エマルジョン等の水系の樹脂が使用されるようになっ
た。このような水系の樹脂としては以下のようなものが
知られている。
【0004】(イ)いずれもが水溶性であるポリウレタ
ン樹脂とアクリル系樹脂を組み合わせたもの(特開昭5
8−190867号公報)。 (ロ)アクリル酸エステルとカルボキシル基含有単量体
との共重合体を使用するもの(特開昭59−12115
2号公報、特開昭60−122768号公報、特開昭−
122769号公報)。 (ハ)アルコキシ(ポリ)エチレングリコールと不飽和
カルボン酸のエステルを必須成分として含有する共重合
体を使用するもの(特開昭60−122770号公報、
特開昭60−155567号公報)。 (ニ)カルボキシル基を有する共重合体とアルキレンイ
ミンとの反応によって得られた重合体を酸性試薬で中和
した重合体を使用するもの(特開平1−226762号
公報)。 (ホ)水性(メタ)アクリル系樹脂であって、セラミッ
クススラリーの分散性及び成形品の水への再分散性を改
良したバインダーを使用するもの(特開平1−2869
55号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の水溶性
ないしは水分散性の樹脂バインダーは乾燥したセラミッ
クスグリーンシート(焼結前のシート)に反りや割れが
生じること、また焼結時にクラックが発生すること、並
びに乾燥セラミックスグリーンシートの物性調整のため
に可塑剤の使用が必要であること等の課題を有し、上記
の他に特に水溶性樹脂の場合には成形シートの乾燥性、
吸湿性が問題となる。ポリ酢酸ビニル系エマルジョン等
の粒子径の大きいエマルジョン樹脂をバインダーとして
使用すると、セラミックスの微粒子よりもエマルジョン
樹脂の粒子径が大きいために近年要求されているシート
の薄膜化に限界がある。さらに、特開平1−28695
5号公報記載の技術によれば上記の乾燥性や吸湿性の課
題は解決され、シートの薄膜化も可能であるが、なおセ
ラミックスの薄膜成形シートの強度(強伸度)、グリー
ンシートの反りや割れ、グリーンシート作成時に使用す
る基材フィルムからの剥離性不足、焼結時のクラックの
発生等の課題が残されている。
【0006】本発明は、薄膜化においても可塑剤を使用
することなく充分なシートの強度と伸度が得られ、シー
トの基材シートからの剥離性が良好であってシートの反
りや割れが発生せず、焼結時のクラック発生を防止する
作用を有する水系のセラミックス成形用バインダー並び
にその製造方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のセラミックス成
形用バインダーは、水系重合体(a)の存在下に、 (b)(メタ)アクリロニトリル 5〜40重量部 (c)(メタ)アクリル酸エステル 5〜95重量部 (d)不飽和カルボン酸 0.01〜20
重量部 を含むラジカル重合性単量体を乳化重合又は懸濁重合し
て得られるアクリル系水分散共重合体樹脂を主成分とす
ることを特徴とする。
【0008】発明者は種々の実験を重ねた結果、上記の
単量体組成を有する重合体をバインダーとして成形した
セラミックスシートは、充分なシートの強度を有する薄
膜シートを得ることができ、セラミックス成形シートの
基材フィルムよりの剥離性が良好であり、シートの反り
や割れが発生せず、焼結時のクラックの発生も少ないこ
とを見いだし、本発明を完成した。
【0009】(メタ)アクリロニトリルは、アクリロニ
トリル、メタアクリロニトリルの一方又は双方を含むこ
とを意味し、また(メタ)アクリル酸エステルはアクリ
ル酸エステル、メタクリル酸エステルより選択されるエ
ステルの1種以上を含むことを意味する。
【0010】(b)成分である(メタ)アクリロニトリ
ルは(c)成分のうちの比較的炭素数の多いアルキルエ
ステルと共に共重合することによってバインダーの強
度、柔軟性、良好な分解性等を付与する作用を有する。
(b)成分は、5重量部以下ではシート強度が弱く伸度
が減少し、40重量部を越えて使用するとグリーンシー
トが硬くなりすぎるると共にセラミックス焼結時のバイ
ンダーの分解性が低下する。特に長鎖のアルキル基を有
する(メタ)アクリル酸エステルを使用すると共重合体
のガラス転移温度が低下し、樹脂に柔軟性が付与される
ので、バインダー樹脂の物性を調節するために可塑剤を
使用する必要がないという利点が得られる。なお、上記
(b)成分は特に10〜30重量部の範囲であることが
グリーンシートの硬度、強度並びに分解性のバランスの
よいバインダーが得られ、好ましい。
【0011】(c)成分の(メタ)アクリル酸エステル
は、選択する種類に応じて本発明のバインダー樹脂に剛
性を付与する作用を有するとともに、グリーンシート焼
結時の分解性に優れた性質を発揮する。(c)成分が5
重量部以下の場合には相対的に他の単量体成分が増加
し、バインダー樹脂の特性の調節が充分行えなくなり、
分解性も低下する。95重量部以上になるとシート強度
が低下するという課題が生じる。なお、この(c)成分
は20〜90重量部の範囲であることがより好適であ
り、50〜90重量部の範囲において最も好ましい特性
が得られる。
【0012】(d)成分である不飽和カルボン酸は、主
として本発明のバインダー樹脂である水分散樹脂の粒子
を安定化する作用を有する。(d)成分が0.01重量
部以下では粒子の安定性が充分でなくなり、そのためセ
ラミックススラリーの配合時に水分散樹脂粒子の安定性
がなくなり、粒子同志の凝集が発生して均一なシートの
製造が難しくなる。20重量部以上になると樹脂の凝集
力や親水性が大きくなりすぎてシートの反りや割れが発
生し、また乾燥性、吸湿性に問題が生じる。なお、上記
(d)成分は0.5〜10重量部の範囲であることが特
に好適であり、良好なバインダー特性が得られる。
【0013】本発明における水系重合体(a)は、水溶
性もしくは水分散性の重合体を意味し、特にこの水系重
合体は架橋反応を起こし得る架橋性官能基を有するもの
であることが好ましい。このような架橋性の官能基によ
るバインダー重合体の架橋によりバインダー樹脂自体の
強度が向上する結果、グリーンシートの物性、特に強度
が向上するという効果が得られる。
【0014】上記水系重合体(a)は本発明のバインダ
ー樹脂の水分散体の製造において、また製造後の保存状
態において系の安定に重要な作用を有すると共に開始剤
や分散媒である水等に由来し、セラミックス製品の電気
特性に影響を与える金属イオンや硫酸イオン等の不純物
を低減する作用も有する。
【0015】また請求項1または2に記載のセラミック
ス成形用バインダーである前記アクリル系水分散共重合
体樹脂は異層構造を有する粒子であることが好ましく、
前記粒子の内層を形成する第1の樹脂はガラス転移温度
が−50〜20℃よりなり、前記第1の樹脂の外層とし
て形成される第2の樹脂はガラス転移温度が0〜50℃
よりるものであることが好ましい。即ち本発明のセラミ
ック成形用バインダー樹脂は比較的剛性の高い第2の樹
脂よりなる外層、比較的柔軟な第1の樹脂よりなる内
層、及びその外側を取り巻く親水性の高い水系重合体樹
脂の層より構成されているものであることが好ましい。
【0016】このような異層構造を有する樹脂をバイン
ダーとして使用してセラミックスの粒子を結合すると、
得られたセラミックスのグリーンシートに外部より応力
がかけられた場合にその応力が緩和され、単一構造のバ
インダーを使用した場合に比べてグリーンシートの反り
や割れを防止する優れた効果が得られる。
【0017】第1の樹脂のガラス転移温度が20℃以上
になると室温付近で樹脂がガラス状態となりバインダー
の柔軟性が低下してグリーンシートに反りや割れが生じ
やすくなる。また第2の樹脂のガラス転移温度が0℃以
下の場合はグリーンシートが柔軟になりすぎて、基材フ
ィルムからの剥離性が不良となる。また50℃以上の場
合は水分散体の造膜性が不良となり、均一なグリーンシ
ートを得ることが困難となる。
【0018】上記の構造を有する粒子の水分散体をバイ
ンダーとして使用したグリーンシートは反り、割れが発
生せずまた焼結時においてもクラックが発生しにくい。
またグリーンシートと基材フィルムの剥離性も優れたも
のとなる。ガラス転移温度の低い柔軟な第1の樹脂の周
囲にガラス転移温度の高い第2の樹脂の層を設けること
によりこのような効果が得られるものと考えられる。
【0019】本発明におけるアクリル系水分散共重合体
樹脂の粒子径は、0.05〜1μmであることが好まし
く、0.05μm以下では水溶性高分子に近い性質が強
くなり、乾燥性、吸湿性に問題が生じる。また1μm以
上になると粒子径が大きくなるためにセラミックスシー
トの薄膜化が困難となる。このような1μm程度ないし
はそれ以下の平均粒子径を有するアクリル系水分散共重
合体樹脂の製造は、乳化重合によることが好適である。
【0020】請求項3に記載した異層構造の粒子におい
て、外層を構成する第2の樹脂は(メタ)アクリル酸エ
ステルのうち、短鎖アルキルエステルを主成分とする樹
脂であることが好適であり、ガラス転移温度が0〜50
℃の樹脂が容易に形成される。第2の樹脂は(c)成分
である上記の比較的短鎖のアルキルの(メタ)アクリル
酸エステル以外に少なくとも親水性官能基を有する単量
体、反応性官能基を有する単量体を共重合したものであ
ることが好ましく、(d)の単量体の一部が使用され
る。
【0021】また内層を構成する第1の樹脂は(b)
(メタ)アクリロニトリルと(c)成分である(メタ)
アクリル酸エステルのうち、比較的長鎖のアルキルの
(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする樹脂である
ことが好適であり、ガラス転移温度が−50〜20℃の
樹脂が容易に形成される。第1の樹脂は第2の樹脂同様
に少なくとも親水性官能基を有する単量体、架橋性官能
基を有する単量体を共重合したものであることが好まし
く、親水性官能基を有する単量体としては(d)の単量
体の一部が使用される。
【0022】上述の(c)成分の(メタ)アクリル酸エ
ステルは、第1の樹脂成分として使用するものは上述の
ように比較的長鎖のアルキル基のエステルが好ましく、
第2の樹脂成分として使用する場合には比較的短鎖のア
ルキル基のエステルが好ましいが、第1の樹脂成分に短
鎖のアルキルエステルを一部使用してもよく、また第2
の樹脂成分に長鎖のアルキル基のエステルを一部使用し
てもかまわない。
【0023】本発明は異層構造を有する粒子よりなるア
クリル系水分散共重合体樹脂を含むセラミックス成形用
バインダーの製造方法に関するものでもあり、前記製造
方法は水溶性もしくは水分散性の重合体(a)の存在下
にラジカル重合開始剤を使用し、(b)(メタ)アクリ
ロニトリルと(c)成分である(メタ)アクリル酸エス
テルのうち、比較的長鎖のアルキルの(メタ)アクリル
酸エステルを主成分として含む単量体を重合して外層を
形成して第2の樹脂とし、次いで(c)(メタ)アクリ
ル酸エステルを主成分として含む単量体を重合して内層
を形成する第1の樹脂とすることを特徴とする。
【0024】上述の製造方法により製造されるアクリル
系水分散共重合体樹脂は、その特性やバインダーとして
の効果より上述の異層構造の粒子を構成しているものと
推定される。
【0025】上述の製造方法においては前記ラジカル重
合開始剤として金属イオンを含有しない化合物を使用す
ることが好適である。セラミックスのグリーンシートを
焼成して目的とする製品を製造する際に、加熱により揮
散しない金属イオンが残留すると、セラミックスの焼成
製品であるシートをコンデンサー部品等の電気製品に使
用した場合に電気特性を損なう場合がある。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明に使用する原料は以下のと
おりである。水系重合体(a)としては、分子中に親水
性のカルボキシル基や水酸基等の官能基を多く有する高
分子材料を使用する。具体的には、メチルセルロース、
ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ース等のセルロース誘導体や、水溶性ポリウレタン樹
脂、水溶性アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン系樹
脂、ポリビニルアルコール、スターチ等の保護コロイド
を形成する化合物から選択して使用することができ、2
種以上を併用してもよい。
【0027】特に請求項2に記載したような架橋性官能
基を有する水系重合体としては、反応性の官能基を有す
る単量体を共重合して得られる重合体が好適であり、水
溶性のアクリル樹脂ないしはアクリル樹脂エマルジョン
即ち水系アクリル樹脂を好適なものとして例示すること
ができる。
【0028】上述の水系アクリル樹脂は親水性の単量
体、架橋性官能基を有する単量体、及び必要に応じて他
の単量体を共重合することにより得られる。架橋性官能
基とは室温もしくは加熱下に反応して重合体分子間の架
橋を形成する官能基であり、加水分解性シリル基、グリ
シジル基等が例示されるが、本発明のようなバインダー
においては加水分解性シリル基、特にアルコキシシリル
基が好適である。
【0029】(c)の(メタ)アクリル酸エステルとし
ては、アクリル酸アルキルエステル等のアクリル酸エス
テル、メタアクリル酸アルキルエステル等のメタアクリ
ル酸エステルが使用できる。これらの(メタ)アクリル
酸エステルの中で、(メタ)アクリロニトリルと共に第
1の樹脂を形成するために使用することが好適な化合物
は、炭素数が4以上程度の比較的長鎖のアルキルエステ
ルであり、具体的にはn−ブチルアクリレート、2−エ
チルヘキシルアクリレート、イソブチルアクリレート、
n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレー
ト、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレー
ト等が例示される。
【0030】また第2の樹脂を形成するために使用可能
な化合物は炭素数が3以下程度の比較的短鎖のアルキル
エステルであり、具体的には、メチルアクリレート、エ
チルアクリレート、n−ないしiso−プロピルアクリ
レート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレー
ト、n−ないしiso−プロピルメタクリレートおよび
これらに官能基を付加した単量体が挙げられる。
【0031】本発明においては、(b)、(c)の単量
体に加えて他の単量体を共重合してもよく、特にガラス
転移温度の高い外層を形成する第2の樹脂に使用する単
量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニル
トルエン等のスチレン系単量体、塩化ビニル等のハロゲ
ン化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン
等が例示できる。また、2以上の単量体を選択して併用
することも自由である。
【0032】ガラス転移温度の低い内層を形成する第1
の樹脂の原料として使用する単量体としては、上述の比
較的長鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エス
テルのほかに、酢酸ビニル等のビニルアルコール誘導体
等のビニル系単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロ
プレン等の共役ジエン系単量体が使用可能である。
【0033】本発明において使用する(d)不飽和カル
ボン酸成分は、カルボキシル基を有し、ラジカル重合可
能な不飽和結合を有する化合物は特に限定なく使用可能
である。具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイ
ン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等が例示される。
【0034】上記の不飽和カルボン酸と共に他の親水性
の単量体も併せて使用することが可能であり、例えば水
酸基、ポリオキシエチレン基等を有する単量体が使用可
能であり、水酸基含有ビニルエステル、水酸基含有ビニ
ルエーテル、水酸基含有アクリルもしくはメタアクリル
エステル等があげられる。具体例としては、ヒドロキシ
アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエ
ステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒド
ロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシア
ルキルアクリル酸エステル、ヒドロキシアルキルメタク
リル酸エステル、グリシジルメタクリレート、メトキシ
ジエチレンメタクリレート、メトキシジエチレンメタク
リレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレ
ート等の使用が好ましい。さらに、スルホン酸塩基を有
する単量体、アクリルアミド、ビニルピロリドン等も使
用可能である。
【0035】上述のカルボキシル基ないしその他の親水
性官能基を有する単量体は水系重合体(a)を合成する
際に原料として使用することも可能である。
【0036】上記のような単量体の他に、バインダー樹
脂の物性調節のために2官能以上の単量体を使用するこ
とも望ましい。このような単量体としては、ジビニルベ
ンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ト
リメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタ
クリレート、ジアリルフタレート、エチレングリコール
ジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレ
ート、トリアリルイソシアヌレート等が例示できる。
【0037】なお、上記に例示したいずれの単量体も、
共重合により要求される特性、特にガラス転移温度を満
足すれば、第1の樹脂、第2の樹脂のいずれにも使用す
ることができる。また水系重合体(a)として使用され
る水系アクリル樹脂等のビニル系単量体を使用する重合
体を構成する単量体としても使用可能である。
【0038】架橋性官能基である反応性ケイ素基として
例示されるアルコキシシリル基を有する単量体として
は、具体的にはビニルトリクロルシラン、ビニルトリエ
トキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ
ス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリルオ
キシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキ
シプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビ
ニルトリアセトキシシラン、3−アクリルオキシプロピ
ルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ア
リルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラ
ン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジア
セトキシシラン、3−メチルアクリルオキシプロピルメ
チル−ジエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピル
ジメチルメトキシシラン等が例示でき、単独使用しても
よく、また、2種以上を併用してもよい。
【0039】また、グリシジル基を有する単量体として
はグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート
が代表的な化合物として例示できる。
【0040】上記の架橋性官能基を有する単量体も第1
の樹脂、第2の樹脂並びに水系重合体(a)を構成する
成分として使用することができる。架橋性官能基は第1
の樹脂、第2の樹脂に付与すると主として内層と外層の
結合に寄与し、その結果バインダー樹脂の強度が高くな
るという効果を発揮する。また、水性重合体(a)ない
し第2の樹脂に付与すると主としてバインダー粒子間の
結合に寄与し、その結果グリーンシートの強度を向上す
るという効果を発揮する。
【0041】上述の単量体の重合を開始させるための開
始剤としては、周知のものが使用できるが、請求項5に
記載したように焼成によってもセラミックスの成形品中
にイオンとして残留し、電気特性に影響を及ぼす金属イ
オン、硫酸イオンを含有する開始剤は好ましくない。本
発明において好適な開始剤としては、アゾビスイソブチ
ロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ME
Kパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド
等の過酸化物系の開始剤が例示できる。
【0042】なお、重合転化率、重合安定性を確保する
ために、セラミックス製品中に残留しても問題のない程
度に過硫酸アンモニウム等を使用することは支障がな
い。さらにL-アスコルビン酸、エリソルビン酸等の還元
剤を使用して開始剤の使用量を低減することは特に好適
である。
【0043】上述の重合開始剤は第1の樹脂の重合、第
2の樹脂の重合のいずれにも適用でき、さらに保護コロ
イドとして使用する水系重合体(a)の製造に使用する
ことも好ましい。
【0044】上記の単量体を乳化させるために乳化剤を
併用することも好ましく、かかる乳化剤としては、公知
の界面活性剤が使用可能である。乳化剤の中でも特にノ
ニオン系の乳化剤の使用が安定性に優れており、好まし
い。重合性を考慮して少量のアニオン系界面活性剤や反
応性の界面活性剤を使用することも好適である。
【0045】本発明のバインダーを構成するアクリル系
水分散共重合樹脂は、いわゆるソープフリータイプであ
ることも好ましく、このようなソープフリー水分散樹脂
は反応性界面活性剤を使用して製造される。本発明にお
いては当業者に周知の反応性界面活性剤は特に限定され
ることなく使用することができ、市販の反応性界面活性
剤としては例えばラテムル(花王製)、エレミノール
(三洋化成工業製)、アクアロン(第一工業製薬製)等
の一連の商品群が挙げられ、いずれも使用可能である。
【0046】本発明のアクリル系水分散共重合体樹脂は
当業者に周知の方法により合成される。本発明において
特に好ましい異層構造を有するアクリル系水分散共重合
体樹脂の製造方法の例は以下の通りである。まず水溶性
の重合体、及び必要な界面活性剤を添加した水中に、予
め水系重合体及び必要に応じて界面活性剤を用いて乳化
した単量体を加え、開始剤を使用して第1段の重合を行
い内層を形成する重合体を作成する。次いで乳化した重
合体と開始剤を加えて第2段の重合を行い、外層を構成
する樹脂を形成することにより異層構造を有する樹脂の
水分散体が得られる。
【0047】本発明のセラミックス成形用バインダーを
使用してセラミックスのグリーンシートを作成する方法
は当業者に周知の方法による。一般には、バインダー樹
脂を含む液と成形すべきセラミックスの微粉末を混合
し、ボールミル、超音波分散機等の分散装置により均一
に分散してスラリーとし、得られたセラミックスのスラ
リーを脱泡した後、基材フィルム上にドクターブレード
等を用いてシート状に成形し、乾燥することにより作成
する。
【0048】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。この実施
例においては、本発明において特に好ましい異層構造を
有する水分散体の製造例を示す。 (1)水性共重合体成分の作製 表1に示した組成の原料を使用し、水に可溶性の有機溶
剤中にて重合を行い、有機溶剤を除去した後にアルカリ
により中和し、溶剤を水に置換し、固形分濃度が25重
量%の重合体水性液を得た。この水性液は水溶液もしく
は水分散液であり、以下において水性共重合体成分
(A)と称する。
【0049】
【表1】
【0050】(2)アクリル系水分散共重合樹脂の合成 〔実施例〕アクリロニトリル(AN)、メチルメタクリ
レート(MMA)、メチルアクリレート(MA)、n−
ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)、ジ
アリルフタレート(DAP)、トリアリルイソシアヌレ
ート(TAIC)、並びにアルコキシシリル基含有単量
体としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラ
ンを使用原料とし、これらの中から適宜選択された材料
を使用して表2及び表3に記載の配合により単量体乳化
物組成B(B1〜B6)、単量体乳化物組成C(C1〜
C6)を作製し、以下に記載の方法により重合を行なっ
た。単量体乳化物(B)は第1段階の重合反応により重
合して内層(コア)を形成し、単量体乳化物(C)は第
2段階の重合反応により重合して外層(シェル)を形成
する。単量体乳化物組成B及び単量体乳化物組成Cは、
単量体を表2、3に記載の比率で混合して乳化し、単量
体乳化物(B)及び(C)とした。単量体乳化物(B)
は単量体濃度が69重量%であり、単量体乳化物(C)
は単量体濃度が69重量%であった。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】(4)樹脂水分散体の作成 攪拌機、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に水性重
合体成分(A)を140gとポリオキシエチレンノニル
フェニルエーテル系乳化剤14g及び蒸留水1500g
を仕込み、窒素置換を行う。反応容器を加熱して昇温し
つつ、60℃にて単量体乳化物(B)の全量の5%を滴
下し、65℃にて過硫酸アンモニウム(APS)の水溶
液(3.5gAPS/420g蒸留水)の84.7g
(20%)を加え、反応容器の内温を75℃まで昇温し
て初期反応を行う。初期の重合反応が終了したことを目
視により確認し、その20分後、単量体乳化物(B)の
残量(95%)を1時間30分、上記の過硫酸アンモニ
ウム水溶液338.8g(80%)を5時間20分かけ
てそれぞれ滴下して重合を行う。以上の重合反応におい
て内層となる第1の樹脂が形成される。
【0054】上記の第1段の単量体乳化物(B)の滴下
を終了した1時間後より、単量体乳化物(C)の全量を
2時間かけて滴下する。滴下終了後液温を75℃に維持
したまま完結反応を1時間行う。このようにして外層を
構成する第2の樹脂が形成される。その後液温が40℃
以下になるまで冷却し、25%アンモニア水を加えて液
のpHを7に調整する。得られたアクリル系水分散共重
合体樹脂の固形分濃度、粘度並びにpHの測定結果を表
2、3の下段の分散液の項にまとめて示した。
【0055】〔比較例〕表4に比較例として使用した単
量体乳化物の組成を示した。樹脂水分散体の作成は上述
の実施例と同様に行った。比較例1、2は水性共重合体
成分(A)は使用せず、かつ第1段反応のみにより樹脂
水分散体を作製した。また、比較例3は水性共重合体成
分(A)としてA5を使用し、第1段反応のみにより樹
脂水分散体を作製した。第1段反応のみにより作製した
樹脂水分散体は当然ながらいわゆるコア・シェル構造の
樹脂とはなっていないものと考えられる。
【0056】
【表4】
【0057】(5)セラミックスグリーンシートの作成 セラミックス粉末であるチタン酸バリウムBT−50
(堺化学工業(株)製)100重量部に蒸留水91.4
重量部を加え、上記のアクリル系水分散共重合体樹脂2
8.6重量部(セラミックス/樹脂=100/10、ス
ラリー中の固形分は50重量%)を加えて分散装置によ
り均一に混合した。分散性が不良である場合はさらに分
散剤を添加し、分散を継続した。得られたスラリーを真
空下に脱泡し、基板(ポリプロピレン、PET等の)上
に2×7(dm)の大きさにキャスティングし、平衡調
整した50℃のオーブン中にて20時間乾燥し、厚さ
0.2mmのグリーンシートを作成した。
【0058】(6)評価 分散性の評価 上述のグリーンシート作成工程におけるスラリーにおけ
る分散性を目視により評価した。分散性がよく、スラリ
ーが均一なものを○、分散性が不十分で不均一さが認め
られるものを×として表示した。 シート状態の評価 セラミックスのグリーンシートの表面状態を目視により
観察し、表面が均一で滑らかなものを○、表面が滑らか
でないものを×として表示した。 グリーンシート剥離性評価 2×7(dm)のグリーンシートを使用して引張試験機
により90度の剥離性強度を測定した。測定条件は温度
20℃、クロスヘッド速度は50mm/min.、チャ
ック間距離は20mmであった。 グリーンシートの強度並びに伸度の測定 上述の2×7(dm)のグリーンシートより作成した1
×7(dm)の試料を使用し、引張試験機によりグリー
ンシート強度と伸度を測定した。測定条件は温度20
℃、クロスヘッド速度は5mm/min.、チャック間
距離は20mmであった。
【0059】(7)結果 上記〜の評価結果は表5に示した。
【0060】
【表5】
【0061】以上のように、本発明のアクリル系水分散
共重合体樹脂を使用したスラリーは分散性が良好であ
り、得られたグリーンシートは剥離性が良好で、グリー
ンシート強度と伸度が共に優れたものであることが明ら
かである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−182266(JP,A) 特開 昭63−260855(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/63 - 35/638

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水系重合体(a)の存在下に、 (b)(メタ)アクリロニトリル 10〜30重量部 (c)(メタ)アクリル酸エステル 50〜90重量部 (d)不飽和カルボン酸 0.01〜20重
    量部 を含むラジカル重合性単量体を乳化重合または懸濁重合
    して得られるアクリル系水分散共重合体樹脂を含む水系
    のセラミックス成形用バインダー。
  2. 【請求項2】 水系重合体(a)の存在下に、 (b)(メタ)アクリロニトリル 5〜40重量部 (c)(メタ)アクリル酸エステル 5〜95重量部 (d)不飽和カルボン酸 0.01〜20重
    量部 を含むラジカル重合性単量体を乳化重合または懸濁重合
    して得られるアクリル系水分散共重合体樹脂を含む水系
    のセラミックス成形用バインダーであって、 水系重合体(a)が架橋性官能基を有するものであるセ
    ラミックス成形用バインダー。
  3. 【請求項3】 水系重合体(a)の存在下に、 (b)(メタ)アクリロニトリル 5〜40重量部 (c)(メタ)アクリル酸エステル 5〜95重量部 (d)不飽和カルボン酸 0.01〜20重
    量部 を含むラジカル重合性単量体を乳化重合または懸濁重合
    して得られるアクリル系水分散共重合体樹脂を含む水系
    のセラミックス成形用バインダーであって、 アクリル系水分散共重合体樹脂が異層構造を有する粒子
    であり、前記粒子の内層を形成する第1の樹脂はガラス
    転移温度が−50〜20℃であり、前記第1の樹脂の外
    層として形成される第2の樹脂はガラス転移温度が0〜
    50℃であるセラミックス成形用バインダー。
  4. 【請求項4】 水系重合体(a)が架橋性官能基を有す
    るものである請求項3に記載のセラミックス成形用バイ
    ンダー。
  5. 【請求項5】 異層構造を有する粒子よりなるアクリル
    系水分散共重合体樹脂を含む水系のセラミックス成形用
    バインダーの製造方法であって、 水系重合体(a)の存在下にラジカル重合開始剤を使用
    して、(b)(メタ)アクリロニトリルと(c)(メ
    タ)アクリル酸エステルを主成分として含む単量体を重
    合して内層を構成する第1の樹脂を形成し、次いで
    (c)(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含む
    単量体を重合して外層を構成する第2の樹脂を形成する
    セラミックス成形用バインダーの製造方法。
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