JP6713339B2 - 水性エマルジョン組成物、それを用いた接着剤、水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョン組成物の製造方法 - Google Patents

水性エマルジョン組成物、それを用いた接着剤、水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョン組成物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6713339B2
JP6713339B2 JP2016087282A JP2016087282A JP6713339B2 JP 6713339 B2 JP6713339 B2 JP 6713339B2 JP 2016087282 A JP2016087282 A JP 2016087282A JP 2016087282 A JP2016087282 A JP 2016087282A JP 6713339 B2 JP6713339 B2 JP 6713339B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
aqueous emulsion
unsaturated monomer
ethylenically unsaturated
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016087282A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017197606A (ja
Inventor
達也 谷田
達也 谷田
圭介 森川
圭介 森川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2016087282A priority Critical patent/JP6713339B2/ja
Publication of JP2017197606A publication Critical patent/JP2017197606A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6713339B2 publication Critical patent/JP6713339B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)

Description

本発明は、耐熱性、耐温水性、耐沸騰水性、及び粘度安定性に優れる水性エマルジョン組成物、および当該水性エマルジョン組成物を含む接着剤に関する。さらに詳しくは、接着剤層の着色性がない接着剤に関する。
従来から、ビニルアルコール重合体(以下、PVAと略記することがある)を保護コロイドとして用いて酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニル系水性エマルジョンは、紙加工用、木工加工用及び繊維加工用の接着剤や塗料等に広く使用されている。なかでも耐水性や接着性が要求される場合には、PVAを保護コロイドとして用い、カルボキシル基含有不飽和単量体を併用して重合することが広く行われている。
しかしながら、このようにして得られる水性エマルジョンを用いた接着剤は、接着性や耐水性は向上するものの耐熱性に劣り、耐温水性、耐沸騰水性等が不十分であるという問題点があった。
そこで、これらの問題点を解決するためにいくつかの解決策が提案されてきた。例えば、特許文献1では、酸性媒体中でアルデヒド基を生成しうるポリアルデヒドを含有するエマルジョン接着剤が提案されている。しかしながら、この方法では耐水性に優れる反面、粘度安定性が不十分であった。さらには、当該接着剤は架橋反応の触媒として強酸やアルミニウム金属等を用いるため、これらが接着層、及び木材等の被着体の強度劣化を助長するとともに接着層(グルーライン)が着色する問題があった。
特許文献2では、酢酸ビニルモノマーとN−メチロールアクリルアミドを共重合したエマルジョンが提案されている。しかしながら、この方法では低温での耐水性が不十分であり、接着剤として使用した際、ホルムアルデヒドが発生するという環境上の問題点もあった。
特許文献3には、エチレンを含有させた変性PVA(以下、単に「エチレン変性PVA」ということがある。)を保護コロイドとして、酢酸ビニル、又は酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステル類を乳化(共)重合することが提案されている。しかしながら、これらの方法ではある程度は耐熱性、耐温水性が改善するものの未だ不十分であり、また最終的な接着強度や耐沸騰水性に関しては満足すべきものは得られていない。
特許文献4では、保護コロイドとしてエチレン変性PVAを用い、酢酸ビニルを重合する際にカルボキシル基含有不飽和単量体の(共)重合物又はアマイド変性PVAを併用することが提案されている。しかしながら、この方法でも、耐熱性において未だ不十分であった。
特開平8−60116号公報 特開平10−121017号公報 特開平11−106727号公報 特開2001−123138号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、耐熱性、耐温水性、耐沸騰水性、及び粘度安定性に優れる水性エマルジョン組成物の提供を目的とする。さらには、当該水性エマルジョン組成物を含み、接着剤層の着色性がない接着剤を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体を含む水性エマルジョン(A)と、周期表2族元素、4族元素、6族元素、7族元素、8族元素、9族元素、11族元素、12族元素および13族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む多価金属化合物(B)を含有する水性エマルジョン組成物が上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のエマルジョン組成物は、
[1]リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体を含む水性エマルジョン(A)と、周期表2族元素、4族元素、6族元素、7族元素、8族元素、9族元素、11族元素、12族元素および13族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む多価金属化合物(B)を含有する水性エマルジョン組成物
[2]さらにビニルアルコール系重合体(C)を含む[1]に記載の水性エマルジョン組成物
[3]前記多価金属化合物(B)が有機酸塩、無機酸塩、酸化物、水酸化物およびハロゲン化物から選択された少なくとも一種である[1]または[2]に記載の水性エマルジョン組成物
[4]前記多価金属化合物(B)が、Mg、Ca、Ti、Zr、Fe、Cu、ZnおよびAlから選択された少なくとも一種の元素を含む[1]〜[3]のいずれか一項に記載の水性エマルジョン組成物
[5]前記多価金属化合物(B)が水不溶性である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物
[6]前記エチレン性不飽和単量体(b)が、ビニルエステル系単量体及びジエン系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物
[7]前記エチレン性不飽和単量体(a)の単量体単位の含有量が、エチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)の単量体単位の全量に対して0.01〜10質量%である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物
[8]前記ビニルアルコール系重合体(C)がエチレン変性ポリビニルアルコールである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物
[9][1]〜[8]に記載の水性エマルジョン組成物を含有する接着剤
に関する。
本発明の水性エマルジョン組成物は、耐熱性、耐温水性、耐沸騰水性、及び粘度安定性に優れる。さらに、当該水性エマルジョン組成物を含有する接着剤は、接着剤層の着色がない。また、本発明はホルムアルデヒドのような揮発性低分子の発生がないため、安全性にも優れる接着剤を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<水性エマルジョン組成物>
本発明の水性エマルジョン組成物は、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体を含む水性エマルジョン(A)と、周期表2族元素、4族元素、6族元素、7族元素、8族元素、9族元素、11族元素、12族元素および13族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む多価金属化合物(B)を含有する。なお、この明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルとメタクリルの総称であり、これと類似の表現についても同様である。
(水性エマルジョン(A))
本発明に用いる水性エマルジョン(A)は、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体を含む。
(エチレン性不飽和単量体(a))
本発明に用いるエチレン性不飽和単量体(a)は、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基を有する限り特に限定されないが、例えば、
アシッドホスホキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリオキシエチレンモノアリルエーテルリン酸エステルなどのリン酸基含有モノマーまたはその塩;
前記リン酸基含有モノマーのリン酸基の一部、または全てが炭素数1から8のアルコールとエステル化しているジメチルビニルホスホナートなどのリン酸エステル基含有モノマー;
ビニルホスホン酸、アリルスルホン酸、1−ホスフィニル−1−メチルエテン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸などのホスホン酸含有モノマーまたはその塩;
前記ホスホン酸基含有モノマーのホスホン酸基の一部、または全てが炭素数1から8のアルコールとエステル化しているホスホン酸エステル基含有モノマー;が挙げられる。
本発明に用いる水性エマルジョン(A)は、前記した不飽和単量体(a)の1種又は2種以上の重合体を含有することができる。
本発明に用いる水性エマルジョン(A)において、前記した不飽和単量体(a)の単量体単位の含有量は、エチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)の単量体単位の全量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。前記単量体(a)の単量体単位が0.01質量%未満の場合、耐熱性、耐水性、耐温水性及び耐煮沸水性が不十分となるおそれがある。一方、10質量%超の場合は、重合が困難となる場合がある。
上記水性エマルジョンの固形分含有量は特に限定されず、通常、30〜60質量%である。
(エチレン性不飽和単量体(b))
本発明において、前記不飽和単量体(a)との共重合に用いるエチレン性不飽和単量体(b)としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、ビニルエステル系単量体、ジエン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、α,β−不飽和モノ又はジカルボン酸系単量体、オレフィン系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、ニトリル系単量体、芳香族ビニル系単量体、複素環式ビニル系単量体、ビニルエーテル系単量体、アリル系単量体、多官能性アクリレート系単量体等が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を併用してもよい。これらのうち、ビニルエステル系単量体及びジエン系単量体からなる群から選ばれる不飽和単量体が好ましく、ビニルエステル系単量体がより好ましい。
ビニルエステル系単量体としては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、桂皮酸ビニル、クロトン酸ビニル、デカン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、イソノナン酸ビニル、トリメチル酢酸ビニル、4−tert−ブチルベンゼン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられ、工業的観点から、酢酸ビニルが特に好ましい。
ジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル等が挙げられる。
α,β−不飽和モノ又はジカルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のモノオレフィン化合物;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ニトリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリルニトリル等が挙げられる。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、α−ブトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、1−エチル−2−ビニルベンゼン等が挙げられる。
複素環式ビニル系単量体としては、例えば、ビニルピロリドン等が挙げられる。
ビニルエーテル系単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等が挙げられる。
アリル系単量体としては、例えば、酢酸アリル、塩化アリル、スルホン酸アリル、フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
多官能性アクリレート系単量体としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。さらに、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩等のビニル化合物等も使用できる。
(多価金属化合物(B))
本発明に用いる多価金属化合物(B)は、周期表2族元素、4族元素、6族元素、7族元素、8族元素、9族元素、11族元素、12族元素および13族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む化合物である。例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属などの周期表2族元素;チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハルニウム(Hf)などの4族元素;クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などの6族元素;マンガン(Mn)などの7族元素;鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)などの8族元素;コバルト(Co)などの9族元素;銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などの11族元素;亜鉛(Zn)などの12族元素;アルミニウム(Al)などの13族元素から選択された少なくとも一種の元素(以下、「多価金属元素」と称する場合がある)を含む化合物が挙げられる。これらの多価金属化合物は単独で又は二種以上組合せて使用してもよい。
多価金属化合物(B)は、前記多価金属元素を含む限り特に制限されないが、例えば、有機酸塩、無機酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物等が挙げられる。
有機酸塩としては、例えば、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウムなどのカルボン酸塩、乳酸チタン、パントテン酸カルシウムなどのアミノ酸誘導体などやこれらに対応する前記多価金属元素を含む塩などが挙げられる。
無機酸塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸鉄(硫酸第一鉄および硫酸第二鉄)、硫酸銅、硫酸アルミニウムなどの多価金属元素の硫酸塩やこれらに対応する硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩およびケイ酸塩(例えば、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸亜鉛など)などが挙げられる。また無機酸塩には、例えば、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムクロム、硫酸クロムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムナトリウムなどの複無機酸塩、タルク、ベントナイト、カオリン、ゼオライトなどの多価金属のケイ酸塩複合体を含む天然または合成鉱物などが挙げられる。
酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などが挙げられる。
水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛などが挙げられる。
ハロゲン化物としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、塩化コバルトなどの前記多価金属元素を含む塩化物やこれらに対応するフッ化物、臭化物やヨウ化物(例えば、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムなど)などが挙げられる。
前記多価金属化合物(B)は、水性エマルジョン組成物の保存安定性の観点から、水不溶性である多価金属化合物が好ましい。例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、酸化クロム、水酸化クロム、水酸化第一鉄、リン酸第一鉄、炭酸第一鉄、塩化第一銅、水酸化マンガン、硫酸マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛、タルク、ベントナイト、カオリン、ゼオライトなどが挙げられる。ここで水不溶性とは水への溶解度が1g/100cm以下である性質をいう。
前記多価金属化合物(B)の使用量は水性接着剤の安定性などを損なわない範囲で、水性接着剤の粘度などに応じて選択でき、例えば、水性エマルジョン(A)の固形分100質量部に対して0.001〜30質量部、好ましくは0.01〜20質量部、さらに好ましくは0.05〜10質量部程度である。前記多価金属化合物の水性エマルジョンへの添加方法は特に限定されるものではなく、例えば固体の状態で添加しても、水溶液または水分散液の状態で添加してもよい。水溶液または水分散液の状態で添加する場合には特に固形分0.01〜50質量%の水溶液または水分散液として使用するのが好ましい。
(ビニルアルコール系重合体(C))
本発明に用いる水性エマルジョン(A)は、粘度安定性、耐水性の観点から、ビニルアルコール系重合体(PVA)(C)の存在下で、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)とを共重合して得らえることが好ましい。
前記PVA(C)のけん化度は、80モル%以上であり、83モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることが好ましい。けん化度が80モル%未満では、保護コロイドとしての効果が乏しく安定な水性エマルジョンが得られない場合がある。一方、けん化度の上限は特に制限が無いが、99.9モル%以下であることが好ましく、99.5モル%以下であることがより好ましい。けん化度が99.9モル%を超えると、得られる水性エマルジョンの粘度安定性に劣るおそれが有る。また、前記けん化度は、JIS K 6726(1994年)に記載の方法により求めた値である。けん化度が80モル%以上のPVAであれば、無変性PVAであってもよく、変性PVAであってもよい。変性PVAとしては、特に限定されないが、例えば、スルホン酸基変性PVA、カルボン酸基変性PVA等のアニオン変性PVA;第4級アミン基変性PVA等のカチオン変性PVA;アミド変性PVA;アセトアセチル基変性PVA;ダイアセトンアクリルアミド変性PVA;エチレン変性PVA等が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を併用してもよい。これらのうち、得られる水性エマルションの耐水性の観点からエチレン変性PVAが好ましい。変性基の含有量は特に限定されないが、0.5〜10モル%であってもよい。
前記PVA(C)の粘度平均重合度P(以下単に重合度と言うことがある)は、一般的に乳化重合に使用される範囲であればよく、下限値は300以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましく、400以上であることがさらに好ましい。重合度が300未満の場合は、乳化重合時の重合安定性に劣るおそれがある。一方、重合度の上限値は4000以下が好ましく、3800以下がより好ましく、3500以下がさらに好ましい。重合度が4000を超えると乳化重合時の粘度が高くなりすぎ、攪拌や除熱が困難になる。ここで前記重合度は、JIS K 6726(1994年)に記載の方法により求めた値である。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化したPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて式により粘度平均重合度(P)を求めた。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
本発明に用いる水性エマルジョン(A)中の前記PVA(C)の含有量は特に制限は無いが、水性エマルジョンの固形分100質量部に対して2〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。当該含有量が2質量部未満の場合は、水性エマルジョンの重合安定性に劣ることがある。一方、当該含有量が20質量部超の場合は、得られる皮膜の耐水性に劣ることがある。
<接着剤>
本発明の水性エマルジョン組成物を含有する接着剤は本発明の実施形態の一つである。このような接着剤は、本発明の水性エマルジョン組成物からなる主剤に、可塑剤等の副剤を配合することによって得られる。副剤としては、架橋剤を含むものを用いても良い。
可塑剤としては、例えば、ジカルボン酸エステル系化合物、アリールオキシ基含有化合物等が挙げられる。
ジカルボン酸エステル系化合物としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート、アジピン酸メチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジヒドロアビエチル、イソフタル酸ジメチル等が挙げられる。
アリールオキシ基含有化合物におけるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、置換フェノキシ基が挙げられ、置換フェノキシ基としては、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基等が挙げられる。置換基の数は、特に限定されず、1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましい。アリールオキシ基含有化合物としては、置換又は無置換フェノキシ基含有化合物が好ましく、ビニル基を含まない置換又は無置換フェノキシ基含有化合物がより好ましい。アリールオキシ基含有化合物の具体例としては、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジ(ノニル)フェニルエーテル等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
可塑剤の含有量は、各種の状況に応じて適宜選定すればよく、固形分換算で主剤の固形分100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、1.0〜10質量部がより好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲にあることにより、接着性に優れる接着剤が得られる。固形分換算の方法は、後記する実施例の機械的安定性の評価項目における水性エマルジョンの固形分濃度測定法を利用できる。
架橋剤としては、例えば、多価イソシアネート化合物等が挙げられる。多価イソシアネート化合物は分子中に2個以上のイソシアネート基を有する。多価イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、水素化TDI、トリメチロールプロパン−TDIアダクト(例えばバイエル社の「Desmodur L」)、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビスジフェニルイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(PMDI)、水素化MDI、重合MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。多価イソシアネート化合物としては、ポリオールに過剰のポリイソシアネートで予めポリマー化した末端基がイソシアネート基を持つプレポリマーを用いてもよい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明の接着剤には、多価イソシアネート化合物、アミン化合物、多価アルデヒド、ヒドラジン化合物、多価アセタール等を含めてもよい。
架橋剤の含有量は、状況に応じて適宜選定すればよく、固形分換算で主剤の固形分100質量部に対して、3〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲にあることにより、接着性に優れる水性エマルジョンを安価に製造することができる。固形分換算の方法は、後記する実施例の機械的安定性の評価項目における水性エマルジョンの固形分濃度測定法を利用できる。
<水性エマルジョン(A)の製造方法>
本発明の特定の要件を満たす水性エマルジョン(A)の製造方法としては、1)前記エチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)を含むエチレン性不飽和単量体に対し、前記PVA(C)を分散剤として存在させた下で重合開始剤を適宜選択して乳化重合する方法が一例として挙げられる。また、その他に乳化重合時の調整方法として、2)前記エチレン性不飽和単量体(a)に対するPVAの添加量を変更する方法、3)イオン交換水の量を変更する方法等が挙げられる。本発明の水性エマルジョンの製造方法としては、これらの方法を適宜組み合わせ使用してもよい。
乳化重合する方法において、重合系内へ上記乳化重合用分散剤を仕込む場合、その仕込み方法及び添加方法については特に制限はない。重合系内に乳化重合用分散剤を初期一括で添加する方法、重合中に連続的に添加する方法等を挙げることができる。なかでも、PVAのエマルジョン分散質へのグラフト率を高める観点から、重合系内に乳化重合用分散剤を初期一括で添加する方法が好ましい。
本発明で分散剤として使用するPVA(C)の使用量は特に制限は無いが、通常、前記エチレン性不飽和単量体の全単量体単位に対して2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。PVA(C)の使用量が2質量%未満では、乳化重合時の安定性が十分に得られないことがある。一方、前記エチレン性不飽和単量体の全単量体単位に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。PVA(C)の使用量が20質量%を超えると得られる水性エマルジョンを用いる皮膜の耐水性、耐温水性及び耐沸騰水性が低下することがある。
乳化重合用分散剤にPVA(C)を用いた乳化重合において、重合開始剤としては、乳化重合に通常用いられる水溶性の単独開始剤又は水溶性のレドックス系開始剤が使用できる。これらの開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、レドックス系開始剤が好ましい。
水溶性の単独開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化水素、過硫酸塩(カリウム、ナトリウム又はアンモニウム塩)等の過酸化物等が挙げられる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、酸化剤と還元剤を組み合わせたものを使用できる。酸化剤としては、過酸化物が好ましい。還元剤としては、金属イオン、還元性化合物等が挙げられる。酸化剤と還元剤の組み合わせとしては、過酸化物と金属イオンとの組み合わせ、過酸化物と還元性化合物との組み合わせ、過酸化物と、金属イオン及び還元性化合物とを組み合わせたものが挙げられる。過酸化物としては、過酸化水素、クメンヒドロキシパーオキサイド、t−ブチルヒドロキシパーオキサイド等のヒドロキシパーオキサイド、過硫酸塩(カリウム、ナトリウム又はアンモニウム塩)、過酢酸t−ブチル、過酸エステル(過安息香酸t−ブチル)等が挙げられる。金属イオンとしては、Fe2+、Cr2+、V2+、Co2+、Ti3+、Cu+等の1電子移動を受けることのできる金属イオンが挙げられる。還元性化合物としては、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、フルクトース、デキストロース、ソルボース、イノシトール、ロンガリット、アスコルビン酸が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群から選ばれる1種以上の酸化剤と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、ロンガリット及びアスコルビン酸からなる群から選ばれる1種以上の還元剤との組み合わせが好ましく、過酸化水素と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、ロンガリット及びアスコルビン酸からなる群から選ばれる1種以上の還元剤との組み合わせがより好ましい。
また、乳化重合に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、アルカリ金属化合物、界面活性剤、緩衝剤、重合度調節剤等を適宜使用してもよい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム)を含む限り特に限定されず、アルカリ金属イオンそのものであってもよく、アルカリ金属を含む化合物であってもよい。
アルカリ金属化合物の含有量(アルカリ金属換算)は、用いられるアルカリ金属化合物の種類に応じて適宜選択することができるが、アルカリ金属化合物の含有量(アルカリ金属換算)は、エマルジョン(固形換算)の全重量に対して、100〜15000ppmが好ましく、120〜12000ppmがより好ましく、150〜8000ppmが最も好ましい。アルカリ金属化合物の含有量が100ppmより低い場合、水性エマルジョンの乳化重合の安定性が低下することがあり、15000ppm超えると、水性エマルジョンからなる皮膜が着色するおそれがあるため好ましくない。なお、アルカリ金属化合物の含有量は、ICP発光分析装置により測定した値であってもよい。
アルカリ金属を含む化合物としては、具体的には、弱塩基性アルカリ金属塩(例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属ハロゲン化物塩、アルカリ金属硝酸塩)、強塩基性アルカリ金属化合物(例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド)等が挙げられる。これらのアルカリ金属化合物は、1種単独又は2種以上を併用してもよい。
弱塩基性アルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等)、アルカリ金属カルボン酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等)、アルカリ金属硫酸塩(硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム等)、アルカリ金属ハロゲン化物塩(塩化セシウム、ヨウ化セシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等)、アルカリ金属硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム等)が挙げられる。これらのうち、エマルジョン内が塩基性を帯びる観点から、解離時に弱酸強塩基の塩として振舞えるアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩が好ましく用いられ、アルカリ金属のカルボン酸塩がより好ましい。
これらの弱塩基性アルカリ金属化合物を用いて、本発明の水性エマルジョンの重合系のpH緩衝作用をすることで、エマルジョン重合を安定に進めることができる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤のいずれを使用してもよい。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、アルキルスルフォネート、ヒドロキシアルカノールのサルフェート、スルフォコハク酸エステル、アルキル又はアルキルアリールポリエトキシアルカノールのサルフェート及びホスフェート等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。界面活性剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)の全量に対して2質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の使用量が2質量%を超えると、耐水性、耐温水性及び耐沸騰水性が低下することがあるため好ましくない。
緩衝剤としては、酢酸、塩酸、硫酸等の酸;アンモニア、アミン荷性ソーダ、荷性カリ、水酸化カルシウム等の塩基等が挙げられる。重合度調節剤としては、メルカプタン類、アルコール類等が挙げられる。
上記乳化重合における分散媒は、水を主成分とする水性媒体であることが好ましい。水を主成分とする水性媒体には、水と任意の割合で可溶な水溶性の有機溶媒(アルコール類、ケトン類等)を含んでいてもよい。ここで、「水を主成分とする水性媒体」とは水を50質量%以上含有する分散媒のことである。コスト及び環境負荷の観点から、分散媒は、水を90質量%以上含有する水性媒体であることが好ましく、水であることがより好ましい。前記水性エマルジョン組成物の製造方法において、乳化重合の開始の前に上記分散剤のPVAを加熱し、分散媒に溶解させたのち、冷却し、窒素置換を行うことが好ましい。加熱温度は90℃以上が好ましい。乳化重合の温度は、特に限定されないが、20〜85℃程度が好ましく、40〜80℃程度がより好ましい。
上記の方法で得られる本発明の水性エマルジョンは、木工用、紙加工用等の接着用途をはじめ、塗料、繊維加工等に使用でき、中でも接着用途が好適である。当該エマルジョン組成物は、そのままの状態で用いることができるが、必要であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の各種エマルジョンや、通常使用される添加剤を併用し、エマルジョン組成物とすることができる。添加剤としては、例えば、有機溶剤(トルエン、キシレン等の芳香族化合物、アルコール、ケトン、エステル、含ハロゲン系溶剤等)、架橋剤、界面活性剤、可塑剤、沈殿防止剤、増粘剤、流動性改良剤、防腐剤、消泡剤、充填剤、湿潤剤、着色剤、結合剤、保水剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。その他、本発明の水性エマルジョン組成物は、例えば、無機物バインダー、セメント混和剤、モルタルプライマー等広範な用途に利用され得る。さらには、得られた水性エマルジョンを噴霧乾燥等により粉末化したいわゆる粉末エマルジョンとしても有効に利用される。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
水性エマルジョン組成物の乳化重合安定性、粘度安定性、および接着剤の接着性(常態、耐水、耐温水、耐沸騰)、耐熱性、熱処理時の着色性を以下に示す方法で評価した。
(1)乳化重合安定性の評価
実施例及び比較例で用いる水性エマルジョン500gを60メッシュの金網にてろ過し、ろ過残分を秤量し以下の通り評価した。
○:ろ過残分が1.0%以下である
△:ろ過残分が1.0%より大である
×:重合不安定となり粗粒化のためろ過できない
(2)接着性評価(常態、耐温水性、耐煮沸性の評価)
〔接着条件〕
被着材:ツガ/ツガ(マサ目)
塗布量:150g/m(両面塗布)
圧締条件:20℃、24時間、圧力10kg/cm
〔測定条件〕
JIS K 6852(1994年)による圧縮剪断接着強度を測定した。
常態:20℃、7日間養生後そのままの状態で測定した。
耐温水性:60℃の水に3時間浸漬した後、濡れたままの状態で測定した。
耐煮沸性:20℃で7日間養生後、試験片を煮沸水中に4時間浸漬した後、60℃の空気中で20時間乾燥し、更に煮沸水中に4時間浸漬してから、室温の水中に冷めるまで浸し、濡れたままの状態で測定した。
(3)耐熱性評価
接着性評価と同様の試料を作製し、以下の条件で処理を行い圧縮剪断接着強度を測定した。
〔測定条件〕
耐熱性:20℃、7日間養生後、80℃で1hr恒温槽にて加熱後、熱いままで測定した。
(4)皮膜の耐着色性の評価
実施例及び比較例で得られた接着剤を20℃65%RH下でPETフィルム上に流延し、7日間乾燥させてPETフィルムから剥離し、500μmの乾燥皮膜を得た。この皮膜をステンレス製の金属型枠(20cm×20cmで幅1cmの金属枠)にクリップで固定し、ギアオーブンにて120℃で3時間加熱処理した場合の、皮膜の着色性を目視で以下の通り評価した。
○:着色がない
△:やや着色
×:黄色に着色
(5)粘度安定性の評価
実施例及び比較例で得られた接着剤の粘度をB型粘度計(40℃、20rpm)で粘度(η0)を測定した。その後40℃で1ヶ月間水性エマルジョンを静置した。静置後、再度B型粘度計(40℃、20rpm)で粘度(η30)を測定した。増粘倍率をη30/η0として定義し、下記の通り評価した。
◎:増粘倍率が1.5よりも小さい
○:増粘倍率が1.5以上、2.0以下
△:増粘倍率が2.0よりも大きく、3.0よりも小さい
×:増粘倍率が3.0以上
(実施例1)
(Em−1の合成)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水275g、「PVA−117」(株式会社クラレ製、けん化度98.5モル%、平均重合度1700)20.9gを仕込み95℃で2時間攪拌し、完全に溶解した。さらに、酢酸ナトリウム(NaOAc)を0.3g添加し、混合溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、200rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸の20%水溶液2.4g及び5%過酸化水素水3.2g(初期仕込みの全単量体に対し、モル比でそれぞれ0.015)をショット添加後、酢酸ビニル26gを仕込み重合を開始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量が1%未満)を確認した。酒石酸の10%水溶液1g及び5%過酸化水素水3.2gをショット添加後、酢酸ビニル250g及びジメチルビニルホスホナート2.8gを2時間にわたって連続的に添加し、重合温度を80℃に維持して重合を完結させ、固形分濃度49.1%のポリ酢酸ビニル系エマルジョン(酢酸ビニルの全量に対しジメチルビニルホスホナートを1質量%含有)が得られた。得られたエマルジョン(Em−1)の重合安定性を評価したところ、ろ過残分が1.0%以下であった。Em−1の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。
(接着剤−1の評価)
前記水性エマルジョンEm−1の100質量部(固形分)に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、乳酸チタン(TC−315、マツモトファインケミカル製)を1質量部添加して接着剤−1を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価、及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例2)
(Em−2の合成)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水275g、特許4772175号の実施例に記載の方法に準じて作製したエチレン変性PVA1(重合度1700、けん化度95モル%、エチレン変性量5モル%)21gを仕込み95℃で2時間攪拌し、完全に溶解した。さらに、酢酸ナトリウム(NaOAc)を0.3g添加し、混合溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、200rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸の20%水溶液2.4g及び5%過酸化水素水3.2g(初期仕込みの全単量体に対し、モル比でそれぞれ0.015)をショット添加後、酢酸ビニル28gを仕込み重合を開始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量が1%未満)を確認した。酒石酸の10%水溶液1g及び5%過酸化水素水3.2gをショット添加後、酢酸ビニル250g及びジメチルビニルホスホナート6.8gを2時間にわたって連続的に添加し、重合温度を80℃に維持して重合を完結させ、固形分濃度50.2%のポリ酢酸ビニル系エマルジョン(酢酸ビニルの全量に対しジメチルビニルホスホナー3質量%含有)が得られた。得られたエマルジョン(Em−2)の重合安定性を評価したところ、ろ過残分が1.0%以下であった。Em−2の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。
(接着剤−2の評価)
前記水性エマルジョンEm−2の100質量部(固形分)に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、、乳酸チタン(TC−315、マツモトファインケミカル製)を1質量部添加して接着剤−2を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価、及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例3)
多価金属化合物を乳酸チタンに変えて塩化コバルトを5質量部添加した以外は実施例2と同様に接着剤−3を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価、及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例4)
多価金属化合物を乳酸チタンに変えて塩化マンガンを5質量部添加した以外は実施例2と同様に接着剤−4を作製した。得られた接着を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価、及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例5)
(Em−3の合成)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水310g、特許4772175号の実施例に記載の方法に準じて作製したエチレン変性PVA2(重合度1700、けん化度90モル%、エチレン変性量5モル%)19gを仕込み95℃で2時間攪拌し、完全に溶解した。さらに、酢酸ナトリウム(NaOAc)を0.3g添加し、混合溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、200rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸の20%水溶液2.4g及び5%過酸化水素水3.2g(初期仕込みの全単量体に対し、モル比でそれぞれ0.015)をショット添加後、酢酸ビニル25gを仕込み重合を開始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量が1%未満)を確認した。酒石酸の10%水溶液1g及び5%過酸化水素水3.2gをショット添加後、酢酸ビニル226g及びジメチルビニルホスホナート13gを2時間にわたって連続的に添加し、重合温度を80℃に維持して重合を完結させ、固形分濃度44.5%のポリ酢酸ビニル系エマルジョン(酢酸ビニルの全量に対しジメチルビニルホスホナート8質量%含有)が得られた。得られたエマルジョン(Em−3)の重合安定性を評価したところ、ろ過残分が1.0%以下であった。Em−3の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。
(接着剤−5の評価)
前記水性エマルジョンEm−3の100質量部(固形分)に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、硫酸銅を0.5質量部添加して接着剤−5を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価、及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例6)
多価金属化合物を硫酸銅に変えて硫酸クロムアンモニウムを0.5質量部添加した以外は実施例5と同様にして接着剤−6を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価、及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例7)
ジメチルビニルホスホナートに変えて、アシッドホスホキシエチルメタクリレート(PAM−4000、ソルベイ日華製)を8質量部使用したこと以外はEm−2と同様にして水性エマルジョン(Em−4)を得た。Em−4の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。前記水性エマルジョンEm−4の100質量部に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、硫酸第2鉄0.1質量部を添加して接着剤−7を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例8)
ジメチルビニルホスホナートに変えて、アシッドホスホキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート(PAM−200、ソルベイ日華製)を11質量部使用したこと以外はEm−2と同様にして水性エマルジョン(Em−5)を得た。Em−5の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。前記水性エマルジョンEm−5の100質量部に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、炭酸ジルコニアアンモニウム0.1質量部を添加して接着剤−8を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例9)
多価金属化合物を塩化コバルトに変えて水酸化アルミニウム20質量部を添加した以外は実施例3と同様にして接着剤−9を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例10)
ジメチルビニルホスホナートに変えて、ポリオキシエチレンモンアリルエーテルリン酸エステル(PAM−5000、ソルベイ日華製)を0.05質量部使用したこと以外はEm−2と同様にして水性エマルジョン(Em−6)を得た。Em−6の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。前記水性エマルジョンEm−6の100質量部に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、酸化亜鉛20質量部を添加して接着剤−10を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例11)
ジメチルビニルホスホナートに変えて、ビニルホスホン酸を1質量部使用したこと以外はEm−2と同様にして水性エマルジョン(Em−7)を得た。Em−7の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。前記水性エマルジョンEm−7の100質量部に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、炭酸カルシウム20質量部を添加して接着剤−11を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例12)
ジメチルビニルホスホナートに変えて、アシッドホスホキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(PAM−100、ソルベイ日華製)を1質量部使用したこと以外はEm−2と同様にして水性エマルジョン(Em−8)を得た。Em−8の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。前記水性エマルジョンEm−8の100質量部に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、炭酸マグネシウム20質量部を添加して接着剤―12を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例13)
ジメチルビニルホスホナートに変えて、ジエチルビニルホスホナートを1質量部使用したこと以外はEm−3と同様にして水性エマルジョン(Em−9)を得た。Em−9の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。前記水性エマルジョンEm−9の100質量部に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、酸化アルミニウム20質量部を添加して接着剤−13を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例14)
ジメチルビニルホスホナートに変えて、1−(ジメトキシホスフィニル)−1−メチルエテンを0.5質量部使用したこと以外はEm−3と同様にして水性エマルジョン(Em−10)を得た。Em−10の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。前記水性エマルジョンEm−10の100質量部に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、酸化チタン10質量部を添加して接着剤−14を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(実施例15)
(Em−11の合成)
いかり型攪拌機を備えた内容量1.5リットルのステンレス型オートクレーブに、イオン交換水360g、ポリビニルアルコール「PVA−205」(株式会社クラレ製、けん化度88モル%、平均重合度500)24.3g及び「PVA−217」(株式会社クラレ製、けん化度88モル%、平均重合度1700)2.9gを仕込み95℃で2時間攪拌し、完全に溶解した。さらに、酢酸ナトリウム(NaOAc)を0.04g添加した。次に酢酸ビニル350g、1−(ジメトキシホスフィニル)−1−メチルエテン3.65gを仕込み、オートクレーブ内の空気をエチレンで充分に置換した。続いて10%アスコルビン酸水溶液19.5gを仕込み、攪拌下、重合温度を60℃に、エチレン圧を5.0MPaに昇圧した。1%過酸化水素水100gを8時間かけて均一に添加すると共に、酢酸ビニル117gと1−(ジメトキシホスフィニル)−1−メチルエテン1.22gを6時間かけて均一に添加した。エチレン圧は酢酸ビニル及び1−(ジメトキシホスフィニル)−1−メチルエテン添加終了まで5.0MPaを保った。触媒添加終了後に冷却して、消泡剤及びpH調整剤を添加し、水性エマルジョンを得た。得られたエマルジョン(Em−11)の重合安定性を評価したところ、ろ過残分が1.0%以下であった。Em−11の組成及び重合安定性の評価結果を表1に示す。
(接着剤−15の評価)
前記水性エマルジョンEm−11の100質量部(固形分)に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、酸化ジルコニウム5質量部を添加し接着剤―15を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(比較例1)
ジメチルビニルホスホナートを使用しないこと以外はEm−2と同様にして水性エマルジョン(Em−12)を得た。Em−12の100質量部(固形分)に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部を添加して接着剤−16を作製した。得られた接着剤を用いて上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、および皮膜の耐着色性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(比較例2)
前記水性エマルジョンEm−12の100質量部に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、炭酸カルシウム20質量部を添加して接着剤−17を作製した。得られた接着剤を用いて上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、皮膜の耐着色性の評価及び粘度安定性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(比較例3)
ジメチルビニルホスホナートに変えてN−メチロールアクリルアミドを3質量%使用したこと以外はEm−1と同様にして水性エマルジョン(Em−13)を得た。Em−13の組成および重合安定性の評価結果を表1に示す。前記水性エマルジョンEm−13の100質量部(固形分)に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部、架橋剤としてAlCl1.5質量部を添加して接着剤−18を作製した。得られた接着剤を用いて、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、および皮膜の耐着色性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(比較例4)
特許文献1(特開平8−60116号公報)の実施例1に記載された内容に従いエマルジョンEm−14を作製した。Em−14の組成および重合安定性の評価結果を表1に示す。表1において、Mowiol(R) 18−88は、88モル%の加水分解度の部分的に加水分解されたポリビニルアルコールを表す。Em−14の100質量部(固形分)に対して可塑剤としてフェノキシエタノール5質量部を添加混合し、架橋剤としてAlCl3.4質量部、20%グルタル酸ジアルデヒド−ビスナトリウム亜硫酸水素塩水溶液2.5質量部を添加して接着剤―19を作製した。次いで、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、および皮膜の耐着色性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(比較例5)
特許文献4(特開2001−123138号公報)の実施例1に記載された内容に従いエマルジョンEm−15を作製した。Em−15の組成および重合安定性の評価結果を表1に示す。次いで、比較例−1と同様の方法で接着剤−20を作製し、上記方法に従って、各種条件下での接着性の評価、耐熱性評価、および皮膜の耐着色性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
Figure 0006713339
Figure 0006713339
表1に示すように、Em−1〜Em−11は乳化重合が安定に進行した。特に、エチレン性不飽和単量体(a)の単量体単位の含有量が、エチレン性不飽和単量体の単量体単位の全量に対して0.01〜10質量%で乳化重合して得られた水性エマルジョンは重合安定性が優れていた(Em−1〜Em−4、Em−6〜Em−11)。
表2に示すように、本発明の水性エマルジョン組成物を含有する接着剤は、耐熱性、耐温水性、耐沸騰水性、粘度安定性、および接着剤層の着色が少なかった(実施例1〜実施例15)。特に、ビニルアルコール系重合体(C)にエチレン変性ポリビニルアルコールを用いた場合は、耐熱性、耐温水性、耐沸騰水性に優れていた(実施例2〜実施例14)。さらに、水不溶性の多価金属化合物を用いた水性エマルジョン組成物を含有する接着剤は粘度安定性に優れていた(実施例9〜実施例14)。一方、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)を用いない水性エマルジョン組成物を含有する場合は耐温水性と耐煮沸性に劣っていた(比較例1と比較例2)。また、エチレン性不飽和単量体(a)をN−メチロールアクリルアミドに変えて作製したエマルジョンを用いた水性エマルジョン組成物を含有する接着剤、特開平8−60116号公報の実施例1に記載された内容に従い作製したエマルジョンを用いた水性エマルジョン組成物を含有する接着剤は皮膜着色性および粘度安定性に劣っていた(比較例3、比較例4)。さらに、特開2001−123138号公報の実施例1に記載された内容に従い作製したエマルジョンを用いた水性エマルジョン組成物を含有する接着剤は、粘度安定性に劣っていた(比較例5)。
本発明の水性エマルジョンを用いた接着剤は、耐熱性に優れ、耐水性、耐温水性、耐沸騰水性にも優れ、木工用、紙工用等の接着用途をはじめ、塗料、繊維加工等に使用できる。

Claims (10)

  1. リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体を含む水性エマルジョン(A)と、周期表2族元素、4族元素、6族元素、7族元素、8族元素、9族元素、11族元素、12族元素および13族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む多価金属化合物(B)を含有する水性エマルジョン組成物であって、
    該水性エマルジョン組成物がビニルアルコール系重合体(C)を含み、
    該多価金属化合物(B)を該水性エマルジョン(A)の固形分100質量に対して0.001〜30質量部含有する、水性エマルジョン組成物。
  2. 前記多価金属化合物(B)が有機酸塩、無機酸塩、酸化物、水酸化物およびハロゲン化物から選択された少なくとも一種である請求項1に記載の水性エマルジョン組成物。
  3. 前記多価金属化合物(B)が、Mg、Ca、Ti、Zr、Fe、Cu、ZnおよびAlから選択された少なくとも一種の元素を含む請求項1又は2のいずれか一項に記載の水性エマルジョン組成物。
  4. 前記多価金属化合物(B)が水不溶性である請求項1〜いずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物。
  5. 前記エチレン性不飽和単量体(b)が、ビニルエステル系単量体及びジエン系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜のいずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物。
  6. 前記エチレン性不飽和単量体(a)の単量体単位の含有量が、エチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)の単量体単位の全量に対して0.01〜10質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物。
  7. 前記ビニルアルコール系重合体(C)がエチレン変性ポリビニルアルコールである、請求項1〜のいずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性エマルジョン組成物を含有する接着剤。
  9. リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体及びビニルアルコール系重合体(C)を含む水性エマルジョンの製造方法であって、ビニルアルコール系重合体(C)の存在下で該エチレン性不飽和単量体(a)と該エチレン性不飽和単量体(b)とを共重合する工程を含む、水性エマルジョンの製造方法。
  10. リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基の群より選ばれる少なくとも1つの基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体を含む水性エマルジョン(A)と、周期表2族元素、4族元素、6族元素、7族元素、8族元素、9族元素、11族元素、12族元素および13族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む多価金属化合物(B)と、ビニルアルコール系重合体(C)とを含有する水性エマルジョン組成物の製造方法であって、
    ビニルアルコール系重合体(C)の存在下で該エチレン性不飽和単量体(a)と該エチレン性不飽和単量体(b)とを共重合して水性エマルジョン(A)を得る工程、及び
    該水性エマルジョン(A)に該多価金属化合物(B)を添加する工程、
    を含む、水性エマルジョン組成物の製造方法。
JP2016087282A 2016-04-25 2016-04-25 水性エマルジョン組成物、それを用いた接着剤、水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョン組成物の製造方法 Active JP6713339B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016087282A JP6713339B2 (ja) 2016-04-25 2016-04-25 水性エマルジョン組成物、それを用いた接着剤、水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョン組成物の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016087282A JP6713339B2 (ja) 2016-04-25 2016-04-25 水性エマルジョン組成物、それを用いた接着剤、水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョン組成物の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017197606A JP2017197606A (ja) 2017-11-02
JP6713339B2 true JP6713339B2 (ja) 2020-06-24

Family

ID=60238844

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016087282A Active JP6713339B2 (ja) 2016-04-25 2016-04-25 水性エマルジョン組成物、それを用いた接着剤、水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョン組成物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6713339B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102472691B1 (ko) * 2021-09-01 2022-12-01 대한기술연구원 주식회사 타피오카 전분 활용 보수모르타르 조성물

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2005640A1 (en) * 1988-12-29 1990-06-29 Theodore A. Del Donno Improved phosphorus-containing polymer compositions containing water - soluble polyvalent metal compounds
JP3313745B2 (ja) * 1991-10-02 2002-08-12 株式会社クラレ ビニル化合物の乳化重合用分散剤および酢酸ビニル重合体エマルジョンの製法
JP3466316B2 (ja) * 1994-07-14 2003-11-10 株式会社クラレ 木工用接着剤
JP3563189B2 (ja) * 1996-02-22 2004-09-08 株式会社クラレ 水性エマルジョンの製造方法
JP2000204294A (ja) * 1999-01-14 2000-07-25 Japan Exlan Co Ltd 重合体組成物
JP2001019831A (ja) * 1999-07-12 2001-01-23 Japan Exlan Co Ltd 重合体組成物
AU785239B2 (en) * 2001-06-20 2006-11-23 Rohm And Haas Company Aqueous composite particle composition
JP4354999B2 (ja) * 2007-01-09 2009-10-28 昭和高分子株式会社 水性エマルジョン組成物及びそれで処理された紙又は繊維加工品

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017197606A (ja) 2017-11-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101044571B1 (ko) 현탁 중합용 분산 안정제
US8426518B2 (en) Dispersion stabilizer
ES2775792T3 (es) Uso de un estabilizador de dispersión que comprende un copolímero a base de alcohol vinílico en una polimerización en suspensión de un monómero a base de vinilo
EP1174444B1 (en) Dispersion stablizer for suspension polymerization of vinyl compound
CN107735411B (zh) 水性乳液组合物
JP6704350B2 (ja) 懸濁重合用分散安定剤及びビニル系樹脂の製造方法
US11365271B2 (en) Vinyl polymer production method
JPWO2018235924A1 (ja) 水性エマルジョン及びそれを用いた接着剤
JP6713339B2 (ja) 水性エマルジョン組成物、それを用いた接着剤、水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョン組成物の製造方法
JP6247394B2 (ja) 水性エマルジョン
JP6692007B2 (ja) 水性エマルジョン、その製造方法及びその用途
JP6163122B2 (ja) 乳化重合用安定剤及びその製造方法
JP6867954B2 (ja) 水性エマルジョン及びそれを用いた接着剤
JP7388910B2 (ja) 水性エマルジョン
JP2001233905A (ja) ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤
JP5528959B2 (ja) 樹脂粉末
JP5465615B2 (ja) 懸濁重合用分散安定剤
JP2002030104A (ja) 塩化ビニル懸濁重合用分散安定剤
JP3905815B2 (ja) ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤
JP2002012477A (ja) セラミックス成形用バインダー

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190906

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190917

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191114

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200602

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200603

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6713339

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150