JP3563189B2 - 水性エマルジョンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性エマルジョンの製造方法に関する。さらに詳しくは、耐水性に優れる水性エマルジョンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)はエチレン性不飽和単量体、特に酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体の乳化重合用保護コロイドとして広く用いられており、これを保護コロイドに用いて乳化重合して得られるビニルエステル系水性エマルジョンは紙用、木工用およびプラスチック用などの各種接着剤、含浸紙用および不織製品用などの各種バインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工および繊維加工などの分野で広く用いられている。このような水性エマルジョンは、分散剤(保護コロイド)として使用するPVA系重合体のけん化度を高くすることにより、比較的耐水性の良好なものが得られている。しかし、水性エマルジョンを用いて接着された木工製品や紙工製品、また、水性エマルジョンをバインダーに用いて得られた含浸紙や繊維加工品においては、近年、さらなる耐水性の向上が求められている。
【0003】
このような要求を満足させるために、自己架橋性基を導入したPVA系重合体の使用や、架橋性基を導入したPVA系重合体を使用した水性エマルジョンと架橋剤との組み合わせ等による耐水化手法が提案されている。しかしながら、このような架橋による耐水化は、耐水性の向上には効果があるが、その一方で、保存安定性が低下したり、架橋剤添加時のポットライフが短縮するという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、保存安定性及びポットライフに問題がなく、耐水性に優れ、紙用、木工用およびプラスチック用などの各種接着剤、含浸紙用および不織製品用などの各種バインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工および繊維加工などの分野で好適に用いられるPVA系重合体を保護コロイドとする水性エマルジョンを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン単位を1〜15モル%含有し、けん化度が99.5モル%を越える変性ポリビニルアルコールを含む水性媒体中で、酢酸ビニルを乳化重合することを特徴とする水性エマルジョンの製造方法を見いだし、本発明を完成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において水性エマルジョンの分散剤として用いられるエチレン単位を1〜15モル%含有し、けん化度が99.5モル%を越える変性PVAは、ビニルエステルとエチレンとの共重合体をけん化することにより得ることができる。エチレンの含有量としては、1〜15モル%であることが必要である。エチレンの含有量が1モル%未満の場合には、顕著な耐水性向上効果が発現せず、15モル%を越える場合には、変性PVAの水溶性が低下し、安定な水性エマルジョンが得られない。ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、酢酸ビニルが経済的にみて好ましい。
【0007】
また、該分散剤は本発明の効果を損なわない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を、エチレンと共重合し、それをけん化することによって得られる末端変性物も用いることができる。
【0008】
本発明において水性エマルジョンの分散剤として用いる変性PVAのけん化度は、99.5モル%を越えることが必要である。けん化度が99.5モル%以下の場合には、顕著に耐水性に優れた水性エマルジョンが得られない。変性PVAの重合度は、100〜8000の範囲が好ましく、300〜3000がより好ましい。重合度が100未満の場合にはPVA保護コロイドとしての特徴が発揮されず、8000を越える場合には変性PVAの工業的な製造に問題がある。
【0009】
本発明の水性エマルジョンの製造方法において、分散質を構成する酢酸ビニルとしては、とくに酢酸ビニルの単独使用、エチレンと酢酸ビニルとの併用および酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステルの併用が好適である。
【0010】
本発明において水性エマルジョンは、前述した変性PVAの水溶液を分散剤に用いて、従来公知の重合開始剤の存在下に、酢酸ビニルを一時または連続的に添加して、酢酸ビニルを乳化重合することにより得られる。また、酢酸ビニルを、予めエチレン単位を有する変性PVA水溶液を用いて乳化したものを、連続的に重合反応系に添加する乳化重合法も採用できる。エチレン変性PVA系重合体の使用量については特に制限はないが、酢酸ビニルの重合体100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部の範囲である。該使用量が1重量部未満および30重量部を越える場合には、重合安定性が低下したり、耐水性が低下することがある。本発明の水性エマルジョンは、上記の方法で得られる水性エマルジョンをそのまま用いることができるが、必要に応じて、従来公知の各種エマルジョンを本発明の効果を損なわない範囲で添加して用いることができる。なお、本発明の水性エマルジョンにおける分散剤としては、前述の変性PVAが用いられるが、必要に応じて、従来公知のアニオン性、ノニオン性あるいはカチオン性の界面活性剤や、PVA系重合体、ヒドロキシエチルセルロースなどを併用することもできる。
【0011】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。また、得られたエマルジョンの耐水性および保存安定性は、下記の方法で評価した。
【0012】
(1)耐水性
米ツガ材に、エマルジョンを200g/m2塗布し、ただちに同種の米ツガ材を貼り合わせ、7kg/cm2の圧力で24時間圧締した。その後、解圧し、20℃,65%RH下で7日間養生し、それを60℃の温水に3時間浸漬した後のせん断接着力を測定した。
【0013】
(2)保存安定性試験
エマルジョンを100mlのガラス製サンプル管に入れ、5℃で10日間放置した場合および40℃で30日間放置した場合の状態をそれぞれ観察した。
【0014】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入口を備えた5リットルのガラス製重合容器に、イオン交換水1400g、エチレン変性PVA(重合度1000、けん化度99.7モル%、エチレン7.5モル%変性)225gを仕込み、95℃で完全に溶解した。次に、この変性PVA水溶液を冷却後pHを4に調整し、塩化第一鉄0.05gを添加し、窒素置換後、140rpmで撹拌しながら酢酸ビニル350gを仕込み、60℃に昇温した後、0.7%過酸化水素水を15mL/hrで、6%ロンガリット水溶液を10mL/hrで連続添加しながら70〜80℃で重合を行った。重合開始30分後から酢酸ビニル1400gを3時間にわたって連続的に添加した。添加終了後、内温を80℃に1時間保持し熟成を行って重合を完結させた。固形分濃度50.4%、粘度12000mPa.s(ミリパスカル秒)の安定なポリ酢酸ビニルエマルジョンが得られた。この水性エマルジョンの固形分100重量部に対してジブチルフタレート10部を添加混合して配合エマルジョンを調製した。この配合エマルジョンについて、上記の耐水性及び保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0015】
実施例2〜6
および比較例1〜5表1に示したPVAをそれぞれ分散剤として用いた以外は、実施例1と同様に操作して、酢酸ビニルの乳化重合を行った。得られたエマルジョンの評価結果を表2に示す。
【0016】
表1および表2より明らかな様に、エチレンを含有しない未変性PVAおよびエチレン含有量が1〜15モル%から外れたり、けん化度が99.5モル%を越えるものから外れるエチレン変性PVAは、得られたエマルジョンの耐水性が比較的低く、本発明のエチレン変性PVAから製造した水性エマルジョンは、耐水性が顕著に向上する優れたものであることがわかる。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【発明の効果】
本発明の方法によって得られる水性エマルジョンは、耐水性が顕著に優れており、紙用、木工用等の接着剤、含浸紙用、不織製品用のバインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工および繊維加工などの分野で好適に用いられる。
Claims (1)
- エチレン単位を1〜15モル%含有し、けん化度が99.5モル%を越える変性ポリビニルアルコールを含む水性媒体中で、酢酸ビニルを乳化重合することを特徴とする水性エマルジョンの製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP03445496A JP3563189B2 (ja) | 1996-02-22 | 1996-02-22 | 水性エマルジョンの製造方法 |
Publications (2)
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JP03445496A Expired - Lifetime JP3563189B2 (ja) | 1996-02-22 | 1996-02-22 | 水性エマルジョンの製造方法 |
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- 1996-02-22 JP JP03445496A patent/JP3563189B2/ja not_active Expired - Lifetime
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