JP5142430B2 - 再分散性合成樹脂粉末およびその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル系樹脂等のように、エチレン性不飽和単量体やジエン系単量体からなる樹脂を主成分とする再分散性合成樹脂粉末およびその用途に関し、更に詳しくは、耐ブロッキング性や再分散時の分散性、造膜性、(形成皮膜の)耐水性等に優れ、セメントやモルタル用の混和剤として有用な再分散性合成樹脂粉末および該混和剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酢酸ビニル系樹脂やアクリル系樹脂等のエマルジョンは、接着剤や塗料等に幅広く利用されており、該エマルジョンは液状で供給されることが殆どである。しかし、液状であるために輸送費が高くついたり、凍結の恐れが生じたり、経時変化が生じたり、エマルジョン使用後の廃液の処理が必要になったり等の液状であるがための欠点も有する。
【0003】
そこで、最近では、かかるエマルジョンを乾燥させた粉末状のエマルジョンが各種用途に用いられるようになってきた。かかる粉末状のエマルジョンは、上記の問題点を解決できるものの、再度水に分散させることが必要で、かかる分散時における再分散性が重要となってくる。
この新たな問題点を解決すべく、特開2000−53711号公報には、ビニル系共重合体粒子の表面にアニオン変性ポリビニルアルコール系樹脂を吸着させた再分散性エマルジョン粉末が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が上記の公知技術について検討を行ったところ、再分散性には優れるものの、エマルジョンの皮膜物性、特に耐水性に改善の余地があることが判明した。
【0005】
即ち、本発明の目的とするところは、再分散性、造膜性、耐水性、耐ブロッキング性等の性能に優れ、さらにはセメントやモルタル用の混和剤として有用な再分散性合成樹脂粉末を得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者はかかる現況に鑑みて鋭意検討した結果、エチレン性不飽和単量体またはジエン系単量体の少なくとも1種から構成される重合体粒子の表面に、アニオン性基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコール系樹脂をPVAと略記することがある)であって、製造時のケン化工程において、誘電率が10〜28c.g.s.e.s.u.の酢酸メチル/メタノール系混合溶媒の共存化でアルカリケン化して得られたポリビニルアルコール系樹脂が吸着した再分散性合成樹脂粉末が、上記の目的に合致することを見出して本発明を完成するに至った
【0007】
なお、ヨード呈色度とは、0.1重量%に調製した試料(PVA)溶液5ml、純水11ml、1/1000[N]ヨード溶液4mlを混合し、25℃に調節して20分間静置させた後、波長490nm、スリット幅1mmにて測定した吸光度を示す。
【0008】
【発明に実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0009】
本発明の再分散性合成樹脂粉末は、エチレン性不飽和単量体またはジエン系単量体の少なくとも1種から構成される重合体粒子の表面に、特定のポリビニルアルコール系樹脂が吸着したもので、かかるエチレン性不飽和単量体やジエン系単量体としては、エマルジョン重合に多く用いられるモノマーが主として挙げられ、ビニルエステル系モノマー、アクリル系モノマー、ジエン系モノマー等であり、その他のモノマーとしては、オレフィン系モノマー、アクリルアミド系モノマー、ニトリル系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエーテル、アリル系モノマー等が挙げられる。
【0010】
かかるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が、アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸等が、ジエン系モノマーとしては、ブタジエン−1,3、2−メチルブタジエン、1,3又は2,3−ジメチルブタジエン−1,3、2−クロロブタジエン−1,3等をそれぞれ挙げることができる。
【0011】
更に、オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン系単量体や塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類が、アクリルアミド系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が、ニトリル系モノマーとしては、(メタ)アクリルニトリル等が、スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等を、ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等が、アリル系モノマーとしては、酢酸アリル、塩化アリル等がそれぞれ挙げることができる。
【0012】
また、上記以外にも、フマール酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、無水トリメット酸等のカルボキシル基含有化合物及びそのエステルやエチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有化合物、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物、更には酢酸イソプロペニル、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
上記の中でも、合成樹脂粉末の耐アルカリ性を考慮すれば、(メタ)アクリル系エステル、スチレン、ブタジエン系モノマーの組合せが好ましい。
【0013】
上記のエチレン性不飽和単量体やジエン系単量体は、それぞれ単独で重合に用いることも可能であるが、2種類以上混合して重合に用いること(共重合)も勿論可能である。
【0016】
かかるPVAを得るに当たっては、工業的には、PVAの製造時のケン化工程において、誘電率が10〜28c.g.s.e.s.u.の溶剤の共存下でアルカリケン化を行うことで可能となる。
【0017】
かかる誘電率が10〜28c.g.s.e.s.u.の溶媒としては、例えば、酢酸メチル/メタノール=1/1(重量比)の混合溶媒(21.0c.g.s.e.s.u.)、酢酸メチル/メタノール=3/1(重量比)の混合溶媒(13.9c.g.s.e.s.u.)、酢酸メチル/メタノール=1/3(重量比)の混合溶媒(27.1c.g.s.e.s.u.)等を挙げることができる
【0019】
に限定されないが、かかるPVAのケン化度としては、96モル%未満(更には95〜68モル%、特には92〜70モル%)であることが好ましく、かかるケン化度が96モル%を越えると得られるエマルジョンの形成皮膜の耐水性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0020】
また、PVAの平均重合度についても、特に限定されないが、200〜3000(更には250〜2200、特には300〜1700)とすることが好ましく、かかる重合度が200未満では、製造中あるいは製造後、また再分散した時のエマルジョン中に粗大粒子が多くなったり、或いは得られるエマルジョンの形成皮膜の耐水性が低下する傾向にあり、逆に3000を越えると重合が不安定になったり、エマルジョンの粘度が高くなり過ぎて好ましくない。
【0021】
尚、上記のヨード呈色度とは、上述したように0.1重量%に調製した試料(PVA)溶液5ml、純水11ml、1/1000[N]ヨード溶液4mlを混合し、25℃に調節して20分間静置させた後、波長490nm、スリット幅1mmにて測定した吸光度を意味する。
【0022】
本発明に用いるPVAとしては、上記如きPVAであれば良いが、本発明では、かかるPVAがアニオン性基を含んでいることが必要で、スルホン酸、カルボン酸またはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のイオン性基を含有するPVAであることが好ましい。
【0023】
かかるPVAの製造方法については特に制限はなく、スルホン酸基やカルボキシル基を有する単量体及びビニルエステル系化合物より共重合体を得た後、該共重合体をケン化して、スルホン酸基やカルボキシル基を導入する方法が有用で、以下かかる方法について説明する。
【0024】
先ず、スルホン酸基を導入する方法を以下に示す。
▲1▼共重合体より導入する方法。
このときのスルホン酸基を有する単量体としては以下のものが挙げられる。
(イ)エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩
(ロ)下記一般式(3)又は(4)で表されるスルホアルキルマレート
【0025】
CH−COOR1
‖ ・・・(3)
CH−COO−(CH2)nSO3
【0026】
CH−COO−(CH2)nSO3
‖ ・・・(4)
CH−COO−(CH2)nSO3
【0027】
[但し、上記一般式(3)、(4)においてR1はアルキル基、nは2〜4の整数、Mは水素原子又はアルカリ金属又はアンモニウムイオンを示す。]
【0028】
上記のスルホアルキルマレートとして具体的には、ナトリウムスルホプロピル2−エチルヘキシルマレート、ナトリウムスルホプロピル2−エチルヘキシルマレート、ナトリウムスルホプロピルトリデシルマレート、ナトリウムスルホプロピルエイコシルマレート等が挙げられる。
【0029】
(ハ)下記一般式(5)〜(7)のいずれかで表されるスルホアルキル(メタ)アクリルアミド、スルホアルキル(メタ)アクリレート
【0030】
Figure 0005142430
【0031】
Figure 0005142430
【0032】
Figure 0005142430
【0033】
[但し、上記一般式(5)〜(7)において、R2,R3,R4,R5,R7,R8,R9 は水素又はアルキル基、R6はアルキル基、nは2〜4の整数、Mは水素原子 又はアルカリ金属又はアンモニウムイオンを示す。]
【0034】
上記のスルホアルキル(メタ)アクリルアミドとして具体的には、ナトリウムスルホメチルアクリルアミド、ナトリウムスルホt−ブチルアクリルアミド、ナトリウムスルホS−ブチルアクリルアミド、ナトリウムスルホt−ブチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
Figure 0005142430
【0036】
[但し、上記一般式(6)においてR10は水素又はアルキル基、nは2〜4の整数、Mは水素原子又はアルカリ金属又はアンモニウムイオンを示す。]
【0037】
上記のスルホアルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、ナトリウムスルホエチルアクリレート等が挙げられる。
(ニ)下記一般式(9)で表されるエチレンオキサイドモノアリルエーテルの末端水酸基の硫酸エステル体
【0038】
Figure 0005142430
【0039】
[但し、上記一般式(9)においてRは水素又はアルキル基(好ましくは炭素数4以下)、nは1〜60の整数を示す。]
【0040】
共重合により導入する場合、スルホン酸基を有する単量体の中でもオレフィンスルホン酸、又はその塩が好適に使用される。
【0041】
▲2▼スルホン酸基を有するアルコール、アルデヒド或いはチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させて重合する方法。
このときは、特に連鎖移動効果の大きいチオールに由来する化合物が有効で以下の化合物が挙げられる。
【0042】
Figure 0005142430
【0043】
Figure 0005142430
【0044】
Figure 0005142430
【0045】
Figure 0005142430
【0046】
[但し、上記一般式(10)〜(13)において、R11〜R19はそれぞれ水素又はメチル基、nは2〜4の整数、Mは水素原子又はアルカリ金属又はアンモニウムイオンを示す。尚、nが複数のときは、nの数だけ存在する各R14,R15,R17,R18は同じものでも異なるものでもよい。]
【0047】
具体的には、チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロパン等が挙げられる。
【0048】
▲3▼ポリビニルアルコールを臭素、ヨウ素等で処理した後、酸性亜硫酸ソーダ水溶液で加熱する方法。
▲4▼ポリビニルアルコールを濃厚な硫酸水溶液中で加熱する方法。
▲5▼ポリビニルアルコールをスルホン酸基を有するアルデヒド化合物でアセタール化する方法、等である。
【0049】
次に、カルボキシル基を導入する方法を以下に示す。
▲1▼共重合により導入する方法。
このときのカルボキシル基を有する単量体としてエチレン性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、又はエチレン性不飽和カルボン酸モノエステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等)又はエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル(マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等)又はエチレン性不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)、あるいは(メタ)アクリル酸等の単量体およびその塩が挙げられ、その中でもエチレン性不飽和カルボン酸モノエステル又はその塩が好適に使用される。
【0050】
また、カルボキシル基を導入した場合、ケン化反応時あるいは乾燥時にラクトン環が生成されることによる不溶化が懸念されるがその対策として水溶解性が良いポリビニルアルコールの製法で既に公知であるマレイン酸又は無水マレイン酸に対して0.5〜2.0モル当量のアルカリ存在下で酢酸ビニルを有機溶媒中共重合させケン化する方法やカルボン酸基のNa塩のNaを2価金属(Ca、Mg、Cu等)で置換後、ケン化する方法も使用される。
【0051】
▲2▼カルボキシル基を有するアルコール、アルデヒドあるいはチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させ重合する方法。
このときは、特に連鎖移動効果の大きいチオールに由来する化合物が有効で以下の化合物が挙げられる。
【0052】
HS−(CH2)n−COOH ・・・(14)
【0053】
Figure 0005142430
【0054】
[但し、上記一般式(14)、(15)において、R20,R21,R22はそれぞれ 水素原子又は低級アルキル基(置換基を含んでもよい)、nは0〜5の整数を 示す。]
【0055】
Figure 0005142430
【0056】
[但し、上記一般式(16)において、nは0〜20の整数を示す。]
【0057】
及び上記一般式(14)〜(16)で表される化合物の塩。
【0058】
具体的にはメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトステアリン酸等が挙げられる。
【0059】
更にビニルエステル系化合物としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられるが中でも酢酸ビニルが好適に使用される。
上記のビニルエステル系化合物の重合の形式は、従来の公知の形式、例えば塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、又はエマルジョン重合のいずれをも採用し得るが工業的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやトルエン等を用いる溶液重合が好ましい。
【0060】
またビニルエステル系化合物の製造法については特に制限はなく、上記に示した方法を採用することができるが、その多成分の仕込み方法として一括、分割、連続滴下等が挙げられ、適宜選択すればよい。連鎖移動剤として共存させ重合する場合は所定の変性量になるように重合系のビニルエステルの反応率に応じて連鎖移動剤を添加することにより、反応系の連鎖移動剤量がビニルエステルに対しあまり変化しないようにすることが好ましい。
【0061】
上記の如く側鎖又は末端にスルホン酸基またはカルボキシル基が導入された共重合体(ポリビニルエステル系重合体)は、次いでケン化されるのであるが、かかるケン化方法としては、アルカリケン化又は酸ケン化のいずれも採用できるが、工業的にはメタノールを含む溶媒でNaOHやCH3ONaを触媒としたエステル交換反応が最も有利である。
【0062】
かくして、側鎖又は末端にスルホン酸基またはカルボキシル基(スルホン酸またはその塩、或いはカルボン酸またはその塩から選ばれるイオン性基)を導入されたPVAが得られるのであるが、かかるPVA中のスルホン酸基またはカルボキシル基の含有量(変性量)は0.1〜5モル%であることが好ましく、更には0.8〜3.8モル%であることが好ましく、かかる含有量が0.1モル%未満では、エマルジョンの乳化時の重合温度がPVAの曇点以上になって重合が不安定になることがあり、逆に5モル%を越えると得られるエマルジョンの形成皮膜の耐水性が低下する傾向にあり、また乳化重合時のエマルジョンの重合安定性が低下することがあり好ましくない。
また、上記のイオン性基の中でも、重合安定性を考慮すれば、スルホン酸基を採用することが特に好ましい。
【0063】
本発明の再分散性合成樹脂粉末は、上記の如きエチレン性不飽和単量体またはジエン系単量体の少なくとも1種から構成される重合体粒子の表面に、上記の如き官能基含有PVAが吸着されてなるもので、かかる粉末を得る方法については特に限定されないが、通常は、かかるPVAを含有する該重合体のエマルジョン(溶液)を得た後、かかるエマルジョンを乾燥させることにより得ることができる。
かかる方法について、以下に説明するがこれに限定されるものではない。
【0064】
エマルジョンを得るにあたっては、乳化重合、後乳化方法等の方法があり、前者の乳化重合を実施するに当たっては、1)水、官能基含有PVA及び重合触媒の存在下にエチレン性不飽和単量体及び/又はジエン系単量体を一時又は連続的に添加して、加熱、撹拌する如き通常の乳化重合法や、2)水、官能基含有PVA及び重合触媒の存在下に、エチレン性不飽和単量体及び/又はジエン系単量体を官能基含有PVAの水溶液に混合分散した分散液(プレエマルジョン)を一時又は連続的に添加して、加熱、撹拌する如き乳化重合法が実施し得る。
【0065】
官能基含有PVAの使用量としては、その種類やエマルジョンの樹脂分等によって多少異なるが、通常乳化重合反応系の全体に対して下限を0.1重量%(更には1重量%、特には2重量%)とすることが好ましく、上限を30重量%(更には25重量%、特には20重量%)とすることが好ましい。
【0066】
かかる使用量が0.1重量%未満ではポリマー粒子を安定な乳化状態で維持することが困難となり、逆に30重量%を越えるとエマルジョン粘度が上昇しすぎて作業性が低下することとなり好ましくない。
【0067】
重合開始剤としては、普通過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、臭素酸カリウム等がそれぞれ単独で又は酸性亜硫酸ナトリウムと併用して、更には過酸化水素−酒石酸、過酸化水素−鉄塩、過酸化水素−アスコルビン酸−鉄塩、過酸化水素−ロンガリット、過酸化水素−ロンガリット−鉄塩等の水溶性のレドックス系の重合開始剤が用いられ、また、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の油溶性の重合開始剤も用いることができる。
重合開始剤の添加方法としては、特に制限はなく、初期に一括添加する方法や重合の経過に伴って連続的に添加する方法等を採用することができる。
【0068】
上記の乳化重合においては、乳化分散安定剤として、水溶性高分子や非イオン性活性剤、アニオン性活性剤を併用することもできる。
水溶性高分子としては、上記の官能基含有PVA以外の、未変性PVA、カルボキシル基含有PVA、PVAのホルマール化物、アセタール化物、ブチラール化物、ウレタン化物、スルホン酸、カルボン酸等のとのエステル化物等のPVA、ビニルエステルとそれと共重合可能な単量体との共重合体ケン化物等が挙げられる。ビニルエステルと共重合可能な単量体としてはエチレン、ブチレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩類、アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0069】
また、上記のPVA以外の水溶性高分子として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はその塩ポリメタクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等不飽和酸との共重合体、スチレンと上記不飽和酸との共重合体、ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体及び前記共重合体の塩類又はエステル類が挙げられる。
【0070】
非イオン性活性剤としては、例えばポリオキシエチレン−アルキルエーテル型、ポリオキシエチレン−アルキルフェノール型、ポリオキシエチレン−多価アルコールエステル型、多価アルコールと脂肪酸とのエステル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0071】
アニオン性活性剤としては、例えば高級アルコール硫酸塩、高級脂肪酸アルカリ塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等が挙げられる。
更に、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤等も併用され得る。
【0072】
また、エマルジョンの重合安定性及び機械的安定性を向上させる意味で、本発明のポリビニ−ルアルコール系樹脂を乳化剤としながら、水溶性の重合禁止剤を単量体に対して10〜500ppm(さらには10〜200ppm)共存させることが好ましい。
【0073】
かかる水溶性重合禁止剤としては、特に限定されないが、例えば、チオシアン酸塩、亜硝酸塩、水溶性イオウ含有有機化合物等が挙げられ、チオシアン酸塩としては、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アルミニウム等が挙げられる。亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸銀、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム等を挙げることができる。水溶性イオウ含有有機化合物としては、メルカプトエタノール、モノチオプロピレングリコール、チオグリセロール等の水酸基置換メルカプタン;チオグリコール酸、チオヒドロアクリル酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸等のメルカプトカルボン酸;チオエタノールアミン等のアミノ置換メルカプタン;β−ニトロエチルメルカプタン等のニトロ置換メルカプタン;1,2−ジチオグリセロール、1,3−ジチオグリセロール等の水酸基置換2価メルカプタン;1,3−ジメルカプトアセトン等のジメルカプトケトン;β,β−ジチオイソ酪酸等のジメルカプトカルボン酸;チオグリコール等の水酸基置換スルフィド;チオジグリコール等の水酸基置換スルフィド;チオジグリコール酸、β,β−チオジプロピオン酸、チオジ乳酸等のスルフィドカルボン酸;β−メチルチオプロピオンアルデヒド等のアルデヒド置換スルフィド;β−アミノエチルスルフィド等のアミノ置換スルフィド;β−ニトロエチルスルフィド等のニトロ置換スルフィド;β−メルカプトエチルスルフィド等のメルカプト置換スルフィド等を挙げることができる。該水溶性重合禁止剤の添加時期としては、アクリル系モノマーの重合転化率5〜75%の範囲であることが好ましい。5%より早い時期に添加されると重合系が分散不良となり得られるアクリル系エマルジョンに粗粒子が多くなる。また、重合転化率75%より後に添加されるとアクリルエマルジョン中の粗粒子生成の抑制や機械的安定性の向上効果の面で好ましくない。
【0074】
水溶性重合禁止剤を添加する際に用いる重合開始剤は、油溶性であることが好ましく、予め単量体に溶解させて用いることが、粗粒子の生成を抑制できる点でさらに好ましい。
【0075】
かかる油溶性の重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等パーオキシジカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などを挙げることができる。
【0076】
また、後乳化方法によりエマルジョンを製造するに当たっては、官能基含有PVAを水に溶解し、これに溶液状のエチレン性不飽和単量体及び/又はジエン系単量体の重合体を滴下し撹拌するか、溶液状態の該重合体中に該官能基含有PVA水溶液を滴下し撹拌すればよい。エマルジョン化に当たり加熱等の必要は特にないが、必要であれば45〜85℃程度に加熱すればよい。乳化する物質には特に限定はなく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素−ホルマリン初期縮合物、フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物、アルキッド樹脂、ケテンダイマー、ロジン、シリコン樹脂、ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン、アスファルト等が挙げられる。
【0077】
必要であればポリオキシエチレン−アルキルエーテル型、ポリオキシエチレン−アルキルフェノール型、多価アルコールエステル型等の非イオン性活性剤、又は高級アルキルアミン塩等のカチオン性活性剤を始めとし、前記した乳化重合時に使用される各種界面活性剤が何れも併用可能である。又これらの活性剤は乳化対象物の方に混合しておくことも可能である。更にフタル酸エステル、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤も併用され得る。
【0078】
更に得られるエマルジョンには、必要に応じて架橋剤、耐水化剤、顔料、分散剤、消泡剤、油剤、粘性改質剤、粘着付与剤、増粘剤、保水剤、繊維柔軟剤、平滑剤、帯電防止剤等、各種用途に応じた添加剤を適宜混合することができる。
【0079】
かくして得られたエマルジョンは、水分が除去されて本発明の再分散性合成樹脂粉末となるのであるが、かかる水の除去方法は特に限定されず、噴霧乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、凍結乾燥、パルス衝撃波による乾燥等の方法を挙げることができ、工業的には噴霧乾燥が好適に行われる。
【0080】
噴霧乾燥には、液体を噴霧して乾燥する通常の噴霧乾燥機が使用できる。噴霧の形式によりディスク式やノズル式等が挙げられるが、何れの方式も使用される。熱源としては熱風や加熱水蒸気等が用いられる。
乾燥条件は、噴霧乾燥機の大きさや種類、エマルジョンの濃度、粘度、流量等によって適宜選択される。乾燥温度は80℃〜150℃が好適である。乾燥温度が80℃未満では充分な乾燥が行われず、150℃を越えると重合体の熱による変質が発生するため好ましくなく、更に好ましくは100〜140℃である。
【0081】
また、再分散性エマルジョン粉末は、貯蔵中に粉末同士が粘結して凝集しブロック化してしまう恐れがあるため、貯蔵安定性を向上するために、抗粘結剤を使用することが好ましい。抗粘結剤は噴霧乾燥後のエマルジョン粉末に添加し均一に混合してもよいが、エマルジョンを噴霧乾燥する際に、エマルジョンを抗粘結剤の存在下に噴霧することが均一な混合を行い得る点、粘結防止効果の点から好ましい。同時に両者を噴霧して乾燥することが特に好ましい。
【0082】
抗粘結剤としては、微粒子の無機粉末が好ましく、炭酸カルシウム、クレー、無水珪酸、珪酸アルミニウム、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト、等が挙げられる。特に平均粒子径が約0.01〜0.5μmの無水珪酸、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム等が好ましい。抗粘結剤の使用量は特に限定されないが、エマルジョン粉末に対して2〜20重量%が好ましい。
【0083】
かくして本発明の再分散性合成樹脂粉末が得られるのであるが、該粉末は水中に添加して撹拌することにより、容易に再乳化しエマルジョンと同様に使用することができる。
【0084】
かかるエマルジョンは、紙加工剤、接着剤、塗料、繊維加工剤、化粧品、土木建築原料、粘着剤(感圧接着剤)等として有用であり、特に、本発明の再分散性合成樹脂粉末は、セメントやモルタルの混和剤として非常に有用で、かかる用途について説明する。
【0085】
セメントやモルタルの混和剤として用いるときは、セメント100重量部に対して、20重量部前後(5〜30重量部、更には10〜30重量部)とすることが得られる硬化物の物性等の面で好ましいが、経済的な面も考慮すれば10重量部前後(5〜15重量部、更には8〜12重量部)とすることが好ましい。
【0086】
かかる合成樹脂粉末の配合にあたっては、イ)予めセメントに混合(配合)しておく、ロ)予め水に混合(配合)しておく、ハ)セメントと水と同時に混合する、等の方法が挙げられる。
【0087】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは、特に断わりのない限り、重量基準を意味する。
【0088】
[PVAの製造]
〔PVA−〕アリルスルホン酸が1.2モル%重合(初期一括)されたポリ酢酸ビニル(完全ケン化後の平均重合度が600)40部と誘電率が23.7c.g.s.e.s.u.に調製された酢酸メチルとメタノールの混合溶媒60部をニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら水酸化ナトリウムを加えて中和した。これに更に水酸化ナトリウムをポリマー中の酢酸ビニル単位1モルに対して12ミリモル加えてケン化し、析出物をろ別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥してスルホン酸基含有PVA〔PVA−〕を得た。得られたスルホン酸基含有PVAのスルホン酸基含有量は1.2モル%、ケン化度(SV)は83.0モル%、平均重合度は600であった。
【0089】
〔PVA−〕2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が1.3モル%ランダム重合(Hanna法により重合を行った。尚、酢酸ビニルの反応性比γを0.05、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の反応性比γを1.16とした)されたポリ酢酸ビニル(完全ケン化後の重合度が500)40部と誘電率が27.1c.g.s.e.s.u.に調製された酢酸メチルとメタノールの混合溶媒60部をニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら水酸化ナトリウムを加えて中和した。これに更に水酸化ナトリウムをポリマー中の酢酸ビニル単位1モルに対して12ミリモル加えてケン化し、析出物をろ別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥してスルホン酸基含有PVA〔PVA−〕を得た。得られたスルホン酸基含有PVAのスルホン酸基含有量は1.3モル%、ケン化度(SV)は87.0モル%、平均重合度は500であった。
【0090】
〔PVA−〕アリルスルホン酸が1.2モル%重合(初期一括)されたポリ酢酸ビニル(完全ケン化後の重合度が500)40部と誘電率が27.1c.g.s.e.s.u.に調製された酢酸メチルとメタノールの混合溶媒60部をニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら水酸化ナトリウムを加えて中和した。これに更に水酸化ナトリウムをポリマー中の酢酸ビニル単位1モルに対して12ミリモル加えてケン化し、析出物をろ別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥してスルホン酸基含有PVA〔PVA−〕を得た。得られたスルホン酸基含有PVAのスルホン酸基含有量は1.2モル%、ケン化度(SV)は88.0モル%、平均重合度は500であった。
【0091】
〔PVA−〕2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が0.5モル%ランダム重合(Hanna法により重合を行った。尚、酢酸ビニルの反応性比γを0.05、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の反応性比γ2を1.16とした)されたポリ酢酸ビニル(完全ケン化後の重合度が600)40部と誘電率が28.0c.g.s.e.s.u.に調製された酢酸メチルとメタノールの混合溶媒60部をニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら水酸化ナトリウムを加えて中和した。これに更に水酸化ナトリウムをポリマー中の酢酸ビニル単位に対して14ミリモル加えてケン化し、析出物をろ別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥してスルホン酸基含有PVA〔PVA−〕を得た。得られたスルホン酸基含有PVAのスルホン酸基含有量は0.5モル%、ケン化度(SV)は92.0モル%、平均重合度は600であった。
【0092】
〔PVA−a〕PVA−1の製造において、酢酸メチルとメタノールの混合溶媒に変えて、誘電率が34.2c.g.s.e.s.u.に調製されたメタノール水混合溶液を用い、水酸化ナトリウムをポリマー中の酢酸ビニル単位に対して16ミリモルとした以外は同様に行って、スルホン酸基含有PVA〔PVA−a〕を得た。得られたスルホン酸基含有PVAのスルホン酸基含有量は1.2モル%、ケン化度(SV)は83.0モル%、平均重合度は5000であった。
【0093】
実施例1
撹拌器、還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えたセパラブルフラスコに水90部、上記のPVA−▲1▼10部及びpH調整剤として酢酸ナトリウム0.02部、重合モノマー(メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル=55/45重量比)10部を仕込み、撹拌しながらフラスコ内の温度を70℃に上げた。その間窒素ガスでフラスコ内を置換しながら、1%の過硫酸アンモニウム水溶液を5部添加して重合を開始した。初期重合を30分間行い、残りの重合モノマー90部を4時間かけて滴下し、更に1%の過硫酸アンモニウム水溶液5部を1時間毎に4分割して重合を行った。その後、75℃で1時間熟成した後冷却して、固形分50%のメタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体のエマルジョンを得た。
【0094】
上記で得られたエマルジョンの重合安定性を以下の要領で調べた。
(重合安定性)
得られたエマルジョンを水で希釈して、100メッシュの金網で濾過し、金網上に残った樹脂分を105℃で3時間乾燥後にその樹脂分の重量を測定して、下記の式より粗粒子量(%)を算出した。
粗粒子量(%)=(金網上の乾燥樹脂分重量/エマルジョンの固形分重量)×100
【0095】
次いで、上記得られたエマルジョンを、エマルジョンの固形分に対して5%の無水珪酸微粉末(抗粘結剤)の存在下にて、120℃の熱風中で噴霧乾燥して、再分散性合成樹脂粉末を得た。
得られた再分散性合成樹脂粉末について以下の評価を行った。
【0096】
(耐ブロッキング性)
得られた再分散性合成樹脂粉末を円筒形の容器に入れて、上部から30g/cm2の荷重をかけて、20℃、65%RHの雰囲気下で1ヶ月間放置後、該荷重を取り除いてその時の該粉末の状況を目視観察した。評価基準は下記の通りである。
○・・・ブロッキングの発生無し
△・・・一部ブロッキングが発生
×・・・ブロッキングが著しく全体が塊になっていた
【0097】
(再分散性)
得られた再分散性合成樹脂粉末100部を脱イオン水100部に添加し、撹拌して再分散液を得て、分散状態を調べた。評価基準は下記の通りである。
○・・・再分散液の325メッシュオンが10%未満
△・・・再分散液の325メッシュオンが10〜40%未満
×・・・再分散液の325メッシュオンが40%以上
【0098】
(造膜性)
得られた再分散性合成樹脂粉末100部を脱イオン水100部に添加し、撹拌して再分散液を得て、該再分散液を乾燥時の膜厚が約100μmになるようにガラス板上に流延し、50℃で6時間乾燥させて、得られる皮膜物性を調べた。評価基準は下記の通りである。
○・・・均一で強靱な皮膜が得られた
×・・・均一で強靱な皮膜を形成しない
【0099】
(耐水性)
得られた再分散性合成樹脂粉末100部を脱イオン水100部に添加し、撹拌して再分散液を得て、該再分散液を乾燥時の膜厚が約0.2mmになるようにガラス板上に流延し、50℃で6時間乾燥させた。次いで該ガラス板を新聞紙の上に置いて、該ガラス板の上部から表面の樹脂皮膜上に水滴を約0.1cc滴下して新聞紙の文字(8ポイントの大きさ)が判読不可能となるまでの時間を調べた。評価基準は下記の通りである。
○・・・30秒以上
△・・・5〜30秒未満
×・・・5秒未満
【0100】
さらに上記で得られた再分散性合成樹脂粉末を用いて、モルタル組成物(セメント100部、再分散性合成樹脂粉末10部、砂300部、水60部)を調整し、該組成物のスランプ値及び該組成物から得られる硬化物の諸物性(曲げ強さ、圧縮強さ、接着強さ、吸水率、耐衝撃性)を以下の要領で測定した。
【0101】
(スランプ値)
JIS A 1173に準拠して測定。
【0102】
(曲げ強さ、圧縮強さ、接着強さ、吸水率)
JIS A 6203に準拠して測定。
【0103】
(耐衝撃性)
モルタル組成物を6cm×6cm×0.35cmに硬化成形して、20℃、65%RHで25日間養生後、鋼球(約67g)を硬化物の表面に落下させて、該硬化物が破壊される時の鋼球の落下高さ(cm)を調べた。
【0104】
実施例2
窒素吹き込み口、温度計を備えた耐圧オートクレーブにPVA−▲1▼の10%水溶液100部を仕込んで、希硫酸でpH=4に調整し、スチレン60部及びt−ドデシルメルカプタン1部を仕込んだ。
次いで、系を窒素置換した後、ブタジエン40部を圧入して70℃まで昇温して重合を行って、固形分49.5%のスチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンについて、実施例1と同様に重合安定性の評価を行うと共に、同様にして再分散性合成樹脂粉末を得た後、得られた再分散性合成樹脂粉末についても同様に評価を行った。
【0105】
実施例3
実施例1において、PVA−▲1▼に変えてPVA−▲2▼を用いた以外は同様に行って、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体のエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンについて、実施例1と同様に重合安定性の評価を行うと共に、同様にして再分散性合成樹脂粉末を得た後、得られた再分散性合成樹脂粉末についても同様に評価を行った。
【0106】
実施例4
実施例1において、PVA−▲1▼に変えてPVA−▲3▼を用いた以外は同様に行って、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体のエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンについて、実施例1と同様に重合安定性の評価を行うと共に、同様にして再分散性合成樹脂粉末を得た後、得られた再分散性合成樹脂粉末についても同様に評価を行った。
【0107】
実施例5
実施例1において、PVA−▲1▼に変えてPVA−▲4▼を用いた以外は同様に行って、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体のエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンについて、実施例1と同様に重合安定性の評価を行うと共に、同様にして再分散性合成樹脂粉末を得た後、得られた再分散性合成樹脂粉末についても同様に評価を行った。
【0108】
実施例6
撹拌器、還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えたセパラブルフラスコに水90部、上記のPVA−▲1▼10部及びpH調整剤として酢酸ナトリウム0.02部、重合モノマー(メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル=55/45重量比;モノマー全量100部に対してアゾビスイソブチロニトリル0.2部を溶解)10部を仕込み、撹拌しながらフラスコ内の温度を65℃に上げた。初期重合を30分間行い、残りの重合モノマー90部を4時間かけて滴下した。なお、重合開始2時間後(重合率42%時)にチオシアン酸アンモニウムを仕込みモノマー全量に対して100ppm添加した。その後、75℃で1時間熟成した後冷却して、固形分50%のメタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体のエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンについて、実施例1と同様に重合安定性の評価を行うと共に、同様にして再分散性合成樹脂粉末を得た後、得られた再分散性合成樹脂粉末についても同様に評価を行った。
【0109】
実施例7
実施例2において、チオシアン酸アンモニウムの仕込み量を200ppmとし、さらに、重合開始2.5時間後(重合率53%時)に仕込んだ以外は同様に行って、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体のエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンについて、実施例1と同様に重合安定性の評価を行うと共に、同様にして再分散性合成樹脂粉末を得た後、得られた再分散性合成樹脂粉末についても同様に評価を行った。
【0110】
実施例8
実施例1において、チオシアン酸アンモニウムの仕込み量を200ppmとし、さらに、重合開始1時間後(重合率18%時)に仕込んだ以外は同様に行って、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体のエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンについて、実施例1と同様に重合安定性の評価を行うと共に、同様にして再分散性合成樹脂粉末を得た後、得られた再分散性合成樹脂粉末についても同様に評価を行った。
【0111】
比較例1
実施例1において、PVA−▲1▼に変えてPVA−aを用いた以外は同様に行って、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体のエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンについて、実施例1と同様に重合安定性の評価を行うと共に、同様にして再分散性合成樹脂粉末を得た後、得られた再分散性合成樹脂粉末についても同様に評価を行った。
【0112】
実施例及び比較例の結果を表1及び2に示す。
【0113】
Figure 0005142430
【0114】
Figure 0005142430
【0115】
【発明の効果】
本発明の再分散性合成樹脂粉末は、特定のPVAが吸着しているため、耐ブロッキング性や再分散性、造膜性、耐水性等に優れ、かかる樹脂粉末は、紙加工剤、接着剤、塗料、繊維加工剤、化粧品、土木建築原料、粘着剤(感圧接着剤)等のエマルジョン用途に有用で、特にセメントやモルタルの混和剤として有用である。

Claims (8)

  1. エチレン性不飽和単量体またはジエン系単量体の少なくとも1種から構成される重合体粒子の表面に、アニオン性基を含有するポリビニルアルコール系樹脂であって、製造時のケン化工程において、誘電率が10〜28c.g.s.e.s.uの酢酸メチル/メタノール系混合溶媒の共存でアルカリケン化して得られたポリビニルアルコール系樹脂が吸着したことを特徴とする再分散性合成樹脂粉末。
  2. アニオン性基がスルホン酸基またはカルボン酸基の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の再分散性合成樹脂粉末。
  3. アニオン性基の含有量が0.01〜5モル%であることを特徴とする請求項1または2記載の再分散性合成樹脂粉末。
  4. ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が50〜2000であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の再分散性合成樹脂粉末。
  5. ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が85〜99モル%であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の再分散性合成樹脂粉末。
  6. エチレン性不飽和単量体がアクリル系モノマーであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の再分散性合成樹脂粉末。
  7. 重合体粒子が、水溶性重合禁止剤をアクリル系モノマーの重合転化率5〜70%の範囲で添加しながら重合されたものであることを特徴とする請求項6記載の再分散性合成樹脂粉末。
  8. 請求項1〜7いずれか記載の再分散性合成樹脂粉末を用いることを特徴とするセメントあるいはモルタル用混和剤。
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