JP2005126544A - アクリル系エマルジョン及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 重合時や重合後のエマルジョンの安定性が良好で、さらに得られるエマルジョンの機械安定性、凍結安定性、放置安定性及び該エマルジョンの耐水性に優れるアクリル系エマルジョンを提供すること。
【解決手段】 側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性ポリビニルアルコールを含有してなり、特に乳化剤として含有してなるアクリル系エマルジョン。

Description

本発明は、重合安定性、耐水性、機械安定性、凍結安定性、放置安定性に優れるアクリル系エマルジョンに関する。
エチレン性不飽和系重合体エマルジョン製造法時の乳化用分散安定剤として、従来からポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)が知られている。PVAを乳化剤として用いると比較的高粘度の乳化液が得られること、該乳化液は粘度の経時変化が少ないこと、ならびに放置安定性、顔料混和性などに優れるなどの利点があるが、該乳化液を乾燥して得られる皮膜の耐水性が充分でないという欠点があった。かかる欠点を克服するためにアリリデンジアセテート等の不飽和エステルと酢酸ビニルとの共重合物をケン化して得られる変性PVAを添加する乳化重合液の製造法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特公昭47−41727号公報
近年、安価で色々の用途に幅広く適用できるアクリル系のエマルジョンが注目されている。しかしながら、上記の開示技術には酢酸ビニル系モノマーを主体としたエマルジョン重合が記載され、特許文献1の開示技術を酢酸ビニル系モノマーに適用したときの重合時や重合後の安定性は良好なものの、アクリル系のモノマーに適用したところ重合時のエマルジョンの安定性が悪く、機械安定性、凍結安定性、放置安定性の点でもまだまだ改良の余地があった。
そこで、本発明者等は、かかる事情を鑑みて鋭意研究を重ねた結果、アクリル系モノマーの乳化重合時または重合後に、側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性ポリビニルアルコールを添加すると、重合時や重合後のエマルジョンの安定性が飛躍的に向上し、さらに得られるエマルジョンは機械安定性、凍結安定性、放置安定性に優れ、また該エマルジョンの被膜は耐水性に優れることを見いだし本発明を完成するに至った。
本発明のエマルジョンは、重合時や重合後のエマルジョンの安定性が良好で、さらに得られるエマルジョンの機械安定性、凍結安定性、放置安定性及び該エマルジョンの耐水性に優れるという効果を奏するものである。
まず、本発明に用いる側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性PVAについて以下順に詳しく説明する。
本発明に用いる変性PVAは、側鎖にアルデヒド基を有するもので、例えば、(a)下記一般式(1)で表される不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合体をケン化する方法、(b)下記一般式(2)または(3)の不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合体をアルカリ触媒でケン化した共重合体ケン化物を、さらに酸処理する方法等により得ることができ、これらについて以下に説明するが、特にこれらに限定されるものではない。
Figure 2005126544

(但し、式中R、Rは水素、メチル基、フェニル基のいずれか、Rは炭素数1〜8のアルキル基、nは0〜8の整数)
Figure 2005126544

(但し、式中R、Rは水素またはメチル基またはフェニル基、好ましくは水素またはメチル基、R、Rは各々独立して炭素数1〜8のアルキル基、好ましくはメチル基、nは0〜8、好ましくは0〜3、特には0〜1の整数)
Figure 2005126544
(但し、式中R、Rは水素またはメチル基、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、好ましくはエチレン基、nは0〜8、好ましくは0〜3、特には0〜1の整数)
まず、(a)上記一般式(1)で表される不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合物をケン化して本発明で用いる変性PVAを得る方法について説明する。
上記一般式(1)で表される不飽和モノマーの例としては、アリリデンジアセテート、2−メタリリデンジアセテート、2−フェニルアリリデンジアセテート、クロチリデンジアセテート、シンナミリデンジアセテート、アリリデンジベンゾエート、アリリデンベンゾエートアセテート等が挙げられ、特にアリリデンジアセテートがコストや原料入手のし易さの点で好ましい。また、これらは単独で用いても併用して用いても良い。
ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、工業的な入手のし易さにより酢酸ビニルが好ましく、これらは単独で用いても併用しても良い。
上記のモノマー以外に、本発明の目的を阻害しない範囲において、更に他のモノマーも共重合に利用することができ、かかる他のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン等を挙げることができる。
かかる不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーの共重合に当たっては、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の公知の重合方法を採用することができるが、通常は溶液重合法が行われる。
重合に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、iso−プロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができるが、好適にはメタノールやiso−プロパノールが用いられる。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の平均重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すれば良い。例えば、溶媒がメタノールの時は、溶媒量/上記各種モノマーの合計量(重量比)は0.1〜2程度の範囲となる量で使用される。
また、重合開始剤としては、例えば2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレイト、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレ−ト、t−ヘキシルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシ−ジ−カーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシ−ジ−カーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシ−ジ−カーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシ−ジ−カーボネート類、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチラルパーオキサイド等のジアシルパーオキシド類などを挙げることができる。尚、必要に応じて、メルカプタン系化合物等の公知の連鎖移動剤を併用することも可能である。
重合は、反応缶に溶媒を仕込んだ後、ビニルエステル系モノマーと上記一般式(1)で表される不飽和モノマー、重合開始剤を仕込み、35〜200℃程度、好ましくは40〜80℃、更には55〜75℃で重合させる。ビニルエステル系モノマーと一般式(1)で表される不飽和モノマーは溶媒中に初期に一括仕込みしてもよいが、HANNAの式に従って滴下仕込みしてもよい。重合後未反応のモノマーを除去して上記一般式(1)で表される不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合体が得られるのである。
次いで、かかる共重合体はケン化されるのであるが、かかるケン化も公知の方法で行うことができる。この時使用されるケン化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルコラートの如きアルカリ触媒、更に硫酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸等の酸触媒を挙げることができ、好ましくは水酸化ナトリウムが用いられる。
また、かかるケン化時の溶媒としては、メタノール、エタノール、iso−プロパノール、酢酸メチル、ベンゼン、ヘキサン等が挙げられ、好適にはメタノールが用いられる。また、残存酢酸基のブロック性の調整を目的として、これらの溶媒を任意に組合わせて誘電率をコントロールしながらケン化を行ってもよい。
ケン化温度は特に制限はないが、10〜70℃が好ましく、更には30〜50℃、特には35〜45℃の範囲から選ばれる。
上記の如きケン化を行うに当たっては、連続式でもバッチ式でもよいが、粒子径の制御の意味から好ましくはバッチ式が採用される。かかるバッチ式のケン化装置としては、ニーダー、リボンブレンダー等を挙げることができる。
次に、(b)上記一般式(2)または(3)の不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーを共重合して本発明の変性PVAを製造する方法について説明する。
上記一般式(2)で表される不飽和モノマーの具体的な例としては、(メタ)アクロレインジメチルアセタール、(メタ)アクロレインジエチルアセタール、3−メチル−3−ブテナールジメチルアセタール、3−メチル−3−ブテナールジエチルアセタール、3−ブテナールジメチルアセタール、3−ブテナールジエチルアセタール、2−(2−プロペニル)−1,3−ジオキソラン、4−ペンテナールジメチルアセタール、4−ペンテナールジエチルアセタール、5−ヘキセナールジメチルアセタール、5−ヘキセナールジエチルアセタール、6−ヘプテナールジメチルアセタール、6−ヘプテナールジエチルアセタール、7−オクテナールジメチルアセタール、7−オクテナールジエチルアセタール等を挙げることができる。
また、上記一般式(3)で表される不飽和モノマーの具体的な例としては、2−ビニル−1,3−ジオキソラン、2−イソプロペニル−1,3−ジオキソラン、2−(2−メチル−2−プロペニル)−1,3−ジオキソラン、2−(3−ブテニル)−1,3−ジオキソラン、2−(5−ペンテニル)−1,3−ジオキソラン、2−(6−ヘキセニル)−1,3−ジオキソラン、2−(1−ヘプテニル)−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
かかる方法における共重合体の製造方法は、上記一般式(1)で表される不飽和モノマーを用いた重合の場合と同様に実施される。ケン化はアルカリ条件で行う必要があり、その実施にあたっては、前述のアルカリ触媒を用いて同様に実施すればよい。
上記のモノマーを使用して目的のPVAを得る方法として具体的には、上記一般式(2)または(3)の不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合体をアルカリ条件下でケン化して共重合体のケン化物とし、更にそれを酸処理してアルデヒド基を生成させる方法が挙げられる。なお、このときに上記一般式(2)または(3)の不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合体を酸性条件下で加水分解し、ビニルエステル基のケン化とアルデヒド基の生成とを同時に行う方法も可能であるが、ケン化物の調製が容易である点で前者が好ましく、かかる方法についてより具体的に説明する。
酸性処理する方法は、得られた共重合体ケン化物を含む水溶液に塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や、酢酸、蟻酸等の有機酸等から選ばれる少なくとも1種類の酸を添加して水溶液を酸性にすればよく、その時のpHは1.0〜6.5、好ましくは1.5〜6.0、より好ましくは2.0〜5.5の範囲に調整される。pHが1.0より低い場合は製造装置の腐触等の問題があり、6.5より高いとアルデヒド基の生成が十分に行われない場合がある。pH調製の時の温度は特には制限されないが、通常常温で実施され、必要に応じて加温される。
かくして、下記に示される単位を主鎖に有する変性PVAが得られるのであるが、かかる変性PVAのケン化度は91モル%以上とすることが必要であり、好ましくは92モル%以上、さらには93モル%以上である。かかるケン化度が91モル%未満では、重合が不安定となるため不適当である。
Figure 2005126544

(ここで、X及びYは上記の一般式(1)〜(3)のR、R、R及びR、R、Rに対応するもので、nもそれぞれの一般式に対応する整数である。)
また、該変性PVAのJIS K6726に準拠して測定される平均重合度は1500以下とすることが必要であり、好ましくは200〜1300、さらには300〜1000である。かかる平均重合度が1500を越えるとエマルジョン粘度が増大し重合が不安定となるため不適当である。
さらに該変性PVAのアルデヒド基の含有量は、5モル%未満であることが必要であり、好ましくは0.1〜3.5モル%、更には0.1〜2.0モル%である。5モル%以上含有した場合は重合安定性が損なわれるため不適当である。尚、変性PVA中のアルデヒド基の含有量は、高分子化学、第15巻、第156号、第249〜254頁(1958)に記載の方法によって調製したp−ニトロフェニルヒドラジンとアルデヒド基含有ポリビニルアルコール(完全ケン化品)との反応物を、H−NMR(DMSO−d6,60℃)で測定して、δ=8.0〜8.1ppmのピーク強度の合計値(X)とδ=4.6〜4.0ppmのピーク強度の合計値(Y)から以下の式で算出する。
アルデヒド基の含有量(モル%)=〔0.5X/(0.5X+Y)〕×100
また、本発明で用いる側鎖にアルデヒド基を有する変性PVAの1,2−グリコール量としては特に限定されないが、1〜4モル%程度が好ましい。1,2−グリコール量はNMRによって算出することができる。
本発明のアクリル系エマルジョンは、側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性PVAを含有してなるもので、かかるエマルジョンを得るにあたっては、該変性PVAを乳化剤として用いて、該変性PVAの共存下でアクリル系モノマーを乳化重合する方法や、アクリル系モノマーを乳化重合した後、該変性PVAを添加して後乳化する方法などが好ましく、さらに前者の方が、得られるエマルジョンの機械安定性や凍結安定性の面でより好ましく、以下かかる方法で調製したアクリル系エマルジョンについて説明する。
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、更に必要に応じて、官能基含有モノマーやその他共重合可能なモノマーを含有するものである。
かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルや、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
乳化重合を実施するに当たっては、1)水、変性PVA及び重合触媒の存在下にアクリル系モノマーをすべて一括に添加して、加熱、撹拌する方法、2)水、変性PVA及び重合触媒の存在下にアクリル系モノマーの少なくとも一部を滴下して、加熱、撹拌する方法、3)水、変性PVA及び重合触媒の存在下に、アクリル系モノマーを変性PVAの水溶液に混合分散した分散液(プレエマルジョン)を一括に添加あるいは滴下して、加熱、撹拌する方法、等が挙げられるが、2)の方法が好ましい。
本発明の変性PVAの使用量としては、その種類やエマルジョンの樹脂分等によって多少異なるが、通常乳化重合反応系の全体に対して0.1〜30重量%(更には1〜25重量%、特には2〜20重量%)とすることが好ましい。
かかる使用量が0.1重量%未満ではポリマー粒子の安定な乳化状態で維持することが困難となり、逆に30重量%を越えるとエマルジョン粘度が上昇しすぎて作業性が低下したり重合安定性が損なわれたりすることとなり好ましくない。
重合開始剤としては、普通過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、臭素酸カリウム等がそれぞれ単独で又は酸性亜硫酸ナトリウムと併用して、更には過酸化水素−酒石酸、過酸化水素−鉄塩、過酸化水素−アスコルビン酸−鉄塩、過酸化水素−ロンガリット、過酸化水素−ロンガリット−鉄塩等の水溶性のレドックス系の重合開始剤が用いられ、具体的には化薬アクゾ社製『カヤブチルB』、『カヤブチルA−50C』等の有機過酸化物とレドックス系からなる触媒を用いることもできる。
重合開始剤の添加方法としては、特に制限はなく、重合初期に一括添加する方法や、重合の経過に伴って連続的に添加する方法等を採用することができるが、後者の方が重合安定性が高く、得られるエマルジョンの機械安定性や凍結安定性が高まるためより好ましい。
上記の乳化重合においては、乳化剤として、本願の側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上、かつ平均重合度が1500以下の変性PVAの他に、公知一般の水溶性高分子や非イオン性活性剤、アニオン性活性剤を併用することもできる。
水溶性高分子としては、未変性PVA、カルボキシル基含有PVA、PVAのホルマール化物、アセタール化物、ブチラール化物、ウレタン化物、スルホン酸、カルボン酸等とのエステル化物等のPVAやメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はその塩ポリメタクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等不飽和酸との共重合体、スチレンと上記不飽和酸との共重合体、ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体及び前記共重合体の塩類又はエステル類等が挙げられる。
非イオン性活性剤としては、例えばポリオキシエチレン−アルキルエーテル型、ポリオキシエチレン−アルキルフェノール型、ポリオキシエチレン−多価アルコールエステル型、多価アルコールと脂肪酸とのエステル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
アニオン性活性剤としては、例えば高級アルコール硫酸塩、高級脂肪酸アルカリ塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等が挙げられる。
更に、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤等も併用され得る。
また、エマルジョンの重合安定性及び機械的安定性をさらに向上させる目的で変性PVAを乳化剤としながら、水溶性の重合禁止剤をモノマーに対して10〜500ppm(さらには10〜200ppm)共存させた中でアクリル系モノマーの重合を行ってもよい。
かかる水溶性重合禁止剤としては、特に限定されないが、例えば、チオシアン酸塩、亜硝酸塩、水溶性イオウ含有有機化合物等が挙げられ、チオシアン酸塩としては、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アルミニウム等が挙げられる。亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸銀、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム等を挙げることができる。水溶性イオウ含有有機化合物としては、メルカプトエタノール、モノチオプロピレングリコール、チオグリセロール等の水酸基置換メルカプタン;チオグリコール酸、チオヒドロアクリル酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸等のメルカプトカルボン酸;チオエタノールアミン等のアミノ置換メルカプタン;β−ニトロエチルメルカプタン等のニトロ置換メルカプタン;1,2−ジチオグリセロール、1,3−ジチオグリセロール等の水酸基置換2価メルカプタン;1,3−ジメルカプトアセトン等のジメルカプトケトン;β,β−ジチオイソ酪酸等のジメルカプトカルボン酸;チオグリコール等の水酸基置換スルフィド;チオジグリコール等の水酸基置換スルフィド;チオジグリコール酸、β,β−チオジプロピオン酸、チオジ乳酸等のスルフィドカルボン酸;β−メチルチオプロピオンアルデヒド等のアルデヒド置換スルフィド;β−アミノエチルスルフィド等のアミノ置換スルフィド;β−ニトロエチルスルフィド等のニトロ置換スルフィド;β−メルカプトエチルスルフィド等のメルカプト置換スルフィド等を挙げることができる。該水溶性重合禁止剤の添加時期としては、アクリル系モノマーの重合転化率5〜75%の範囲であることが好ましい。5%より早い時期に添加されると重合系が分散不良となり得られるアクリル系エマルジョンに粗粒子が多くなる。また、重合転化率75%より後に添加されるとアクリル系エマルジョン中の粗粒子生成の抑制や機械的安定性の向上効果の面で好ましくない。
水溶性重合禁止剤を添加する際に用いる重合開始剤は、油溶性であることが好ましく、予めモノマーに溶解させて用いることが、粗粒子の生成を抑制できる点でさらに好ましい。
かかる油溶性の重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等パーオキシジカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などを挙げることができる。
必要であればポリオキシエチレン−アルキルエーテル型、ポリオキシエチレン−アルキルフェノール型、多価アルコールエステル型等の非イオン性活性剤、又は高級アルキルアミン塩等のカチオン性活性剤を始めとし、前記した乳化重合時に使用される各種界面活性剤が何れも併用可能である。又これらの活性剤は乳化対象物の方に混合しておくことも可能である。更にフタル酸エステル、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤、、耐水化剤、顔料、分散剤、消泡剤、油剤、粘性改質剤、増粘剤、保水剤、平滑剤、帯電防止剤等の添加剤を適宜混合することができる。
重合条件としては通常40〜100℃程度の温度範囲が適当であり、重合時間としては1〜8時間程度である。たとえば、上記ロ)の方法ではアクリル系モノマーの少なくとも
1重量%以上(好ましくは 2〜50重量%)を初期一括仕込みして0.1〜1時間程度かけて初期重合した後、残りのモノマーを1〜7時間程度かけて滴下しながら加熱撹拌する方法が、重合安定性や得られるエマルジョンの機械安定性や凍結安定性の面で好ましい。
かくして得られたアクリル系エマルジョンは、粗粒子が少なく、耐水性、機械安定性、凍結安定性、放置安定性に優れるので、セメント・モルタル混和剤、セメント・モルタル塗布剤、土木用原料、塗料、接着剤、粘着剤(感圧接着剤)、繊維加工剤、紙加工剤、無機物バインダー、塩ビ等の樹脂の改質剤、汚泥や産業廃棄物等の粘性土の固化安定剤、表面保護用再剥離性被覆材、化粧品等の用途等に好適に使用できる。この中でも特に、その機械安定性を活かし、再分散樹脂粉末の形態にしてセメント・モルタル混和剤、セメント・モルタル塗布剤、土木用原料、塗料などに用いたり、優れた耐水性、粘接着力を活かして、接着剤や粘着剤(感圧接着剤)として用いるのが好ましく、以下に説明する。
かかる接着剤として用いるにあたっては、本発明のエマルジョンをそのまま一液の接着剤として使用することができ、エマルジョンは通常樹脂分濃度が20重量%以上に調整されるのが好ましく、さらには45重量%以上に調整されるのが好ましい。
樹脂分濃度が20重量%未満では、乾燥に時間がかかったり接着力に劣る傾向 となり好ましくない。
更に得られるエマルジョンには、必要に応じて架橋剤、耐水化剤、顔料、分散剤、消泡剤、油剤、粘性改質剤、粘着付与剤、増粘剤、保水剤、繊維柔軟剤、平滑剤、耐電防止剤等、各種用途に応じた添加剤を適宜混合することができる。
また、対象となる接着物(被着体)としては、木材、紙、プラスチックス、繊維等が挙げられる。
また、本発明のアクリル系エマルジョンの水分を除去して、再分散性合成樹脂粉末とすることも可能であり、かかる水の除去方法は特に限定されず、噴霧乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、凍結乾燥、パルス衝撃波による乾燥等の方法を挙げることができ、工業的には噴霧乾燥が好適に行われる。
噴霧乾燥には、液体を噴霧して乾燥する通常の噴霧乾燥機が使用できる。噴霧の形式によりディスク式やノズル式等が挙げられるが、何れの方式も使用される。熱源としては熱風や加熱水蒸気等が用いられる。
乾燥条件は、噴霧乾燥機の大きさや種類、エマルジョンの濃度、粘度、流量等によって適宜選択される。乾燥温度は80〜150℃が好適である。乾燥温度が80℃未満では充分な乾燥が行われず、150℃を越えると重合体の熱による変質が発生するため好ましくなく、更に好ましくは100〜140℃である。
また、再分散性合成樹脂粉末は、貯蔵中に粉末同士が粘結して凝集しブロック化してしまう恐れがあるため、貯蔵安定性を向上するために、抗粘結剤を使用することが好ましい。抗粘結剤は噴霧乾燥後のエマルジョン粉末に添加し均一に混合してもよいが、エマルジョンを噴霧乾燥する際に、エマルジョンを抗粘結剤の存在下に噴霧することが均一な混合を行いうる点、粘結防止効果の点から好ましい。同時に両者を噴霧して乾燥することが特に好ましい。
抗粘結剤としては、微粒子の無機粉末が好ましく、炭酸カルシウム、クレー、無水珪酸、珪酸アルミニウム、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。特に平均粒子径が約0.01〜0.5μmの無水珪酸、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム等が好ましい。抗粘結剤の使用量は特に限定されないが、エマルジョン粉末に対して2〜20重量%が好ましい。
かくして再分散性合成樹脂粉末が得られるのであるが、該粉末は水中に添加して撹拌することにより、容易に再乳化しエマルジョンと同様に使用することができ、得られた再分散エマルジョンは、粗粒子が少なく、高い機械安定性、凍結安定性、耐水性、放置安定性を発現する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準を示す。
(変性PVA−1)
パドル翼を付けた3リットルのジャケット付反応缶に、酢酸ビニル1000g、アリリデンジアセテート18g及びメタノール980gを仕込み、加熱還流させた。別途、重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル1gをメタノール20gに溶解したものを用意して、上記の反応缶に仕込み、重合を開始した。重合率が90%を越えた時点で、重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼン0.1gをメタノール100gに溶解したものを反応缶に仕込み、内温を30℃以下にして重合を停止し共重合体のペーストを得た。減圧蒸留により未反応のモノマーを除去した後、メタノールで希釈して共重合体のペーストを得た。
2リットルのジャケット付のケン化用反応缶に、上記で得られた共重合体ペーストを樹脂分30%となるようにメタノールで希釈して400g仕込み、ジャケットを加熱してペースト温度を35℃とした。ケン化触媒として、水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液75gを仕込み、ケン化を開始した。ケン化触媒添加終了後ケン化物が析出し始めて、ペーストが増粘し、ケン化母液が発生し、スラリー状態となった後、酢酸の10%メタノール溶液を所定量添加してスラリーを中和して、変性PVA−1のスラリーを得た。得られた変性PVA−1を分析したところ、ケン化度は97.0モル%であった。また、アルデヒド基含有量は1.0モル%、平均重合度は1050であった。
変性PVA−1において、アリリデンジアセテートの仕込み量、ケン化に用いる水酸化ナトリウム量、メタノール量等を適宜変更して、以下の表1に示す各種変性PVAを用意した。
また、下記に示す要領で、変性PVA−6及び7も用意した。
〔表1〕
変性度 ケン化度 平均重合度
(モル%) (モル%)
変性PVA−1 1.0 97.0 1050
変性PVA−2 1.9 99.1 500
変性PVA−3 4.7 98.0 400
変性PVA−4 0.3 95.0 700
変性PVA−5 1.1 85.0 500
変性PVA−a 1.1 90.0 800
変性PVA−b 1.2 98.5 1600
変性PVA−c 6.3 98.5 1020
(変性PVA−6)
酢酸ビニルと共重合させるモノマーとして、アリリデンジアセテートの代わりにアクロレインジエチルアセタールを用いた以外は変性PVA−1の合成と同様に行って、共重合体のペーストを得た後、アルカリケン化も同様に実施して、ケン化物を得た。かかるケン化物の水溶液に0.5N塩酸を加えpH3.0とし、室温で1日酸処理を行って、固形分濃度11%の変性PVA−6(変性度1.5モル%、ケン化度98.0モル%、平均重合度1000)水溶液を得た。
(変性PVA−7)
酢酸ビニルと共重合させるモノマーとして、2−ビニル−1,3−ジオキソランを使用した以外は、上記の変性PVA−6の合成と同様に行い、固形分濃度11%の変性PVA−7(変性度1.3モル%、ケン化度97.5モル%、平均重合度960)水溶液を得た。
実施例1
撹拌器、還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えたジャケット付き反応缶にイオン交換水85部、上記で製造したPVA−1を10部、pH調整剤として酢酸ナトリウム0.02部、重合モノマー(メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル=60/40重量比)15部を仕込み、撹拌しながらジャケットに70〜75℃の熱水を循環させて、重合系の温度を70℃に上げた。重合系の温度が70℃に到達した時点で1%の過硫酸アンモニウム水溶液を5部添加して重合を開始した。初期重合を60分間行い、残りの重合モノマー85部を3時間かけて滴下し、更に1%の過硫酸アンモニウム水溶液5部を1時間毎に4回添加して重合を行った。重合モノマーの滴下終了後、75℃で1時間加熱攪拌を続行して熟成を行った後、冷却して、樹脂分50%のメタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル共重合体のアクリル系エマルジョンEm−1を得た。
得られたエマルジョンについて、以下の如く、重合安定性、エマルジョンの機械安定性、凍結安定性、放置安定性、耐水性及び該エマルジョンを木工用接着剤としたときの接着力について評価した。
また、かかるエマルジョンを粉末化して再分散生合成樹脂粉末とするときの噴霧乾燥性と得られた再分散生合成樹脂粉末を再分散させたエマルジョンの機械安定性についての評価を行った。
(重合安定性)
得られたエマルジョンを水で希釈して、100メッシュの金網で濾過し、金網上に残った樹脂分を105℃で3時間乾燥後にその樹脂分の重量を測定して、下記の式より粗粒子量(%)を算出して、以下の如く評価した。
粗粒子量(%)=(金網上の乾燥樹脂分重量/エマルジョンの固形分重量)×100
○・・・粗粒子量が0.2%未満
△・・・ 〃 0.2%以上、0.5%未満
×・・・ 〃 0.5%以上
(エマルジョンの機械安定性)
安田精機製作所製マロン試験機を用い、下記の条件にて測定した。
樹脂分 :20%
使用量 :50g
回転数 :100rpm(±20)
時間 :10min
荷重 :40kgf
試験後のエマルジョンを80メッシュ金網で濾過し、金網上の凝集物の乾燥重量
(Wg)を測定して、次式により、発生凝集物量(%)を求めて下記のように評価した。
発生凝集物量(%)=Wg/[50(g)×エマルジョンの樹脂分(20%)]
×100
○・・・発生凝集物量<0.10%
△・・・0.10%≦発生凝集物量<1.00%
×・・・1.00%≦発生凝集物量
(凍結安定性)
100mlポリ容器に得られたエマルジョン50gを入れ、−15℃の冷凍庫内に16時間放置し、エマルジョンを冷凍した。その後、25℃の恒温槽内に8時間放置し、エマルジョンを解凍した。これを繰り返して、解凍後に、エマルジョン状態に戻らず、固形分と水分に分離するまでの回数を測定して以下のように評価した。
○・・・10回以上
△・・・4〜9回
×・・・3回以下
(放置安定性)
エマルジョンを25℃で10日間保存した時の状態を観察し、以下のように評価した。
○・・・粘度増加率50%未満
△・・・粘度増加率50%以上
×・・・ゲル化
(耐水性)
得られたエマルジョンを乾燥時の膜厚が約0.2mmになるようにガラス板上に流延し、50℃で6時間乾燥させた。次いで該ガラス板を新聞紙の上に置いて、該ガラス板の上部から表面の樹脂皮膜上に水滴を約0.1cc滴下して新聞紙の文字(8ポイントの大きさ)が判読不可能となるまでの時間を調べた。評価基準は下記の通りである。
○・・・30秒以上
△・・・5秒以上、30秒未満
×・・・5秒未満
(接着力)
ラワン材(25mm×50mm、厚み10mm)の表面に得られたアクリル系エマルジョンを100g/mになるように塗布して、もう1枚のラワン材(同上)にそれぞれの半分の面積(25mm×25mm)が接着するように張り合わせ、10kg/cmの力で20℃にて1時間圧着し、その後20℃、65%RHで48時間養生して試験体を作成した。次いで、20℃にて、得られた試験体の圧縮剪断接着強度を圧縮速度10mm/minで測定し、以下の通り評価した。
○・・・25kg/cm以上
△・・・5kg/cm以上、25kg/cm未満
×・・・5kg/cm未満
(噴霧乾燥性)
得られたエマルジョンに固形分に対して5重量%の無水珪酸微粉末(抗粘結剤)を添加して、120℃の熱風中で噴霧乾燥を行って以下のように評価した。
〇・・良好なエマルジョン粉末が得られた
×・・・粉末化できなかった
(再分散エマルジョンの機械安定性)
得られたエマルジョン粉末20部を脱イオン水80部に添加し、攪拌して再分散エマルジョンを得た。得られた再分散エマルジョンの機械安定性を上記「エマルジョンの機械安定性」と同様に評価した。
実施例2
実施例1における変性PVA−1に替えて変性PVA−2を同量使用した以外は同様に行ってアクリル系エマルジョンEm−2を調製し、実施例1と同様に評価した。
実施例3
実施例1における変性PVA−1に替えて変性PVA−3を同量使用した以外は同様に行ってアクリル系エマルジョンEm−3を調製し、実施例1と同様に評価した。
実施例4
実施例1における変性PVA−1に替えて変性PVA−4を同量使用した以外は同様に行ってアクリル系エマルジョンEm−4を調製し、実施例1と同様に評価した。
実施例5
実施例1における変性PVA−1に替えて変性PVA−5を同量使用した以外は同様に行ってアクリル系エマルジョンEm−5を調製し、実施例1と同様に評価した。
実施例6
変性PVA−6の水溶液を用いて、実施例1同様の組成となるように、使用するイオン交換水の量を調節しながら、実施例1同様の手法によりアクリル系エマルジョンEm−6を調製し、実施例1と同様に評価した。
実施例7
変性PVA−7の水溶液を用いて、実施例1同様の組成となるように、使用するイオン交換水の量を調節しながら、実施例1同様の手法によりアクリル系エマルジョンEm−7を調製し、実施例1と同様に評価した。
比較例1
実施例1における変性PVA−1に替えて未変性PVA(ケン化度97.5モル%、平均重合度1000)を同量使用した以外は同様に行ってアクリル系エマルジョンを調製しようとしたところ、重合途中で凝集が発生し、以後の評価を実施できなかった。
比較例2
実施例1における変性PVA−1に替えて変性PVA−aを同量使用した以外は同様に行ってアクリル系エマルジョンEm−8を調製し、実施例1と同様に評価した。
比較例3
実施例1における変性PVA−1に替えて変性PVA−bを同量使用した以外は同様に行ってアクリル系エマルジョンEm−9を調製し、実施例1と同様に評価した。
比較例4
実施例1における変性PVA−1に替えて変性PVA−cを同量使用した以外は同様に行ってアクリル系エマルジョンEm−10を調製し、実施例1と同様に評価した。
実施例1〜7、比較例1〜4の評価結果を表2〜3に示した。
〔表2〕
使用した 重合安定性 エマルジョンの 放置安定性 凍結安定性 耐水性
エマルジョン 機械安定性
実施例1 Em−1 ○ ○ ○ ○ ○
実施例2 Em−2 ○ ○ ○ ○ ○
実施例3 Em−3 ○ ○ ○ ○ ○
実施例4 Em−4 ○ ○ ○ ○ ○
実施例5 Em−5 ○ ○ ○ ○ ○
実施例6 Em−6 ○ ○ ○ ○ ○
実施例7 Em−7 ○ ○ ○ ○ ○
比較例1 重合中に凝集して、エマルジョンが得られず評価不能
比較例2 Em−8 △ △ △ × ×
比較例3 Em−9 △ ○ △ × ×
比較例4 Em−10 △ ○ △ × ×
〔表3〕
使用した 接着力 噴霧乾燥性 再分散エマルジョンの
エマルジョン 機械安定性
実施例1 Em−1 ○ ○ ○
実施例2 Em−2 ○ ○ ○
実施例3 Em−3 ○ ○ ○
実施例4 Em−4 ○ ○ ○
実施例5 Em−5 ○ ○ ○
実施例6 Em−6 ○ ○ ○
実施例7 Em−7 ○ ○ ○
比較例1 重合中に凝集して、エマルジョンが得られず評価不能
比較例2 Em−8 △ × *
比較例3 Em−9 △ × *
比較例4 Em−10 △ × *
*:噴霧乾燥することができず評価不能であった。
本発明のアクリル系エマルジョンは、重合時や重合後のエマルジョンの安定性が良好で、さらに得られるエマルジョンの機械安定性、凍結安定性、放置安定性及び該エマルジョンの耐水性に優れるという効果を奏するもので、接着剤や再分散性合成樹脂粉末として有用である。

Claims (10)

  1. 側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性ポリビニルアルコールを含有してなることを特徴とするアクリル系エマルジョン。
  2. 側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性ポリビニルアルコールを乳化剤として含有してなることを特徴とするアクリル系エマルジョン。
  3. 側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性ポリビニルアルコールの共存下でアクリル系モノマーを乳化重合して得られたことを特徴とする請求項1または2記載のアクリル系エマルジョン。
  4. 側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性ポリビニルアルコールが下記一般式(1)で表される不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合体をアルカリでケン化して得られたものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のアクリル系エマルジョン。
    Figure 2005126544

    (但し、式中R、Rは水素、メチル基、フェニル基のいずれか、Rは炭素数1〜8のアルキル基、nは0〜8の整数)
  5. 側鎖に5モル%未満のアルデヒド基を有し、かつケン化度が91モル%以上で、平均重合度が1500以下の変性ポリビニルアルコールが下記一般式(2)または(3)で表される不飽和モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合体をアルカリでケン化した後、酸処理して得られたものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のアクリル系エマルジョン。
    Figure 2005126544

    (但し、式中R、Rは水素またはメチル基またはフェニル基、R、Rは各々独立して炭素数1〜8のアルキル基、nは0〜8の整数)
    Figure 2005126544

    (但し、式中R、Rは水素またはメチル基、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、nは0〜8の整数)
  6. 変性ポリビニルアルコールとして、側鎖に0.1モル%以上2.0モル%未満のアルデヒド基を有し、ケン化度が95モル%以上で、平均重合度が1000以下の変性ポリビニルアルコールを用いることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のアクリル系エマルジョン。
  7. 変性ポリビニルアルコールの共存下に、アクリル系モノマーの少なくとも一部を滴下により仕込みながら重合させて製造することを特徴とする請求項3〜6いずれか記載のアクリル系エマルジョン。
  8. 樹脂分濃度が45重量%以上であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載のアクリル系エマルジョン。
  9. 請求項1〜8いずれか記載のアクリル系エマルジョンを粉末化することを特徴とする再分散性合成樹脂粉末。
  10. 請求項1〜8いずれか記載のアクリル系エマルジョンを用いることを特徴とする木工用接着剤。
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