以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図5は、実施の形態1に係る部品実装システムの構成を示す外観図である。
部品実装システム10は、基板上に部品を装着し、回路基板を生産するシステムであり、部品実装機100と、実装条件決定装置300とを備えている。
部品実装機100は、上流から下流に向けて回路基板20を送りながら電子部品を実装していく装置であり、同時かつ独立して部品実装を行う2つのサブ設備(前サブ設備110および後サブ設備120)を備える。各サブ設備110(120)は、直交ロボット型装着ステージであり、部品テープを収納する最大48個の部品カセット114の配列からなる2つの部品供給部115aおよび115bと、それら部品カセット114から最大10個の部品を吸着し回路基板20に装着することができる10個の吸着ノズル(以下、単に「ノズル」ともいう。)を有する装着ヘッド112(10ノズルヘッド)と、その装着ヘッド112を移動させるXYロボット113と、装着ヘッド112に吸着された部品の吸着状態を2次元または3次元的に検査するための部品認識カメラ116と、トレイ部品を供給するトレイ供給部117等を備える。
この部品実装機100は、具体的には、高速装着機と呼ばれる部品実装機と多機能装着機と呼ばれる部品実装機それぞれの機能を併せもつ実装機である。高速装着機とは、主として□10mm以下の電子部品を1点あたり0.1秒程度のスピードで装着する高い生産性を特徴とする設備であり、多機能装着機とは、□10mm以上の大型電子部品やスイッチ・コネクタ等の異形部品、QFP(Quad Flat Package)・BGA(Ball Grid Array)等のIC部品を装着する設備である。
すなわち、この部品実装機100は、ほぼ全ての種類の電子部品(装着対象となる部品として、0.6mm×0.3mmのチップ抵抗から200mmのコネクタまで)を装着できるように設計されており、この部品実装機100を必要台数だけ並べることで、生産ラインを構成することができる。
図6は、部品実装機100の主要な構成を示す平面図である。
シャトルコンベヤ118は、トレイ供給部117から取り出された部品を載せて、装着ヘッド112による吸着可能な所定位置まで運搬するための移動テーブル(部品搬送コンベア)である。ノズルステーション119は、各種形状の部品種に対応するための交換用ノズルが置かれるテーブルである。
各サブ設備110(または120)を構成する2つの部品供給部115aおよび115bは、それぞれ、部品認識カメラ116を挟んで左右に配置されている。したがって、部品供給部115aまたは115bにおいて部品を吸着した装着ヘッド112は、部品認識カメラ116を通過した後に、回路基板20の実装点に移動し、吸着した全ての部品を順次装着していく動作を繰り返す。「実装点」とは、部品を装着すべき基板上の座標点のことであり、同一部品種の部品が異なる実装点に装着される場合もある。同一の部品種に係る部品テープに並べられた部品(実装点)の個数の合計は、その部品種の部品数(実装すべき部品の総数)と一致する。
ここで、装着ヘッド112による部品の吸着・移動・装着という一連の動作の繰り返しにおける1回分の動作(吸着・移動・装着)、またはそのような1回分の動作によって実装される部品群を「タスク」と呼ぶ。例えば、装着ヘッド112によれば、1個のタスクによって実装される部品の最大数は10となる。なお、ここでいう「吸着」には、ヘッドが部品を吸着し始めてから移動するまでの全ての吸着動作が含まれ、例えば、1回の吸着動作(装着ヘッド112の上下動作)で10個の部品を吸着する場合だけでなく、複数回の吸着動作によって10個の部品を吸着する場合も含まれる。
図7は、装着ヘッド112と部品カセット114の位置関係を示す模式図である。この装着ヘッド112は、「ギャングピックアップ方式」と呼ばれる作業ヘッドであり、最大10個の吸着ノズル112a〜112dを装着することが可能であり、このときには、最大10個の部品カセット114それぞれから部品を同時に(1回の上下動作で)吸着することができる。
装着ヘッド112には、さらに、部品カセット114から部品を吸着する際に、部品の形状を認識するためのカメラ130が設けられている。
図8は、装着ヘッド112を模式的に示す図である。装着ヘッド112には、上述したように10個の吸着ノズル112a〜112dが設けられており、また、装着ヘッド112の内部には、吸着ノズル112a〜112dに接続された真空室132が設けられている。真空室132は、部品実装機100内に設けられた真空発生装置134と、吸着圧センサ412とに接続されている。真空発生装置134が真空室132内のエアーを吸引することにより、真空室132内を真空状態にするような構造になっている。これにより、真空室132に接続された吸着ノズル112a〜112dは、部品を真空吸着することができる。
吸着圧センサ412は、装着ヘッド112内の真空室132内の圧力を計測するセンサである。なお、以下の説明では、「吸着圧」といった場合には、ゲージ(Gage)圧で真空圧を表現した場合の絶対値を示すものとする。
図9は、実装条件決定装置300の内部構成を示す機能ブロック図である。
実装条件決定装置300は、部品の実装条件を決定する装置であり、パラメータ取得部302と、実装条件決定部304と、通信I/F部317とを備えている。
通信I/F部317は、部品実装機100との間で各種データのやり取りを行なう処理部である。
パラメータ取得部302は、部品の吸着力に関連するパラメータを取得する処理部である。部品の吸着力に関連するパラメータとは、以下の実施の形態で、部品の吸着圧、部品重量、リークパラメータ等に具現化される。
実装条件決定部304は、パラメータ取得部302で取得されたパラメータに基づいて決定される吸着力で吸着ノズルが部品を吸着したときに、部品を落下しないような部品の実装条件を決定する処理部である。部品の実装条件は、以下の実施の形態で、部品吸着数、タスク、移動速度等に具現化される。
バス321は、実装条件決定装置300を構成する各処理部を相互に接続するバスである。
図10は、実装条件決定装置300が実行する処理のフローチャートである。
パラメータ取得部302は、通信I/F部317等を介して部品実装機100等より部品の吸着力に関連するパラメータを取得する(S102)。
実装条件決定部304は、S102で取得したパラメータに基づいて決定される吸着力で吸着ノズルが部品を吸着したときに、部品を落下しないような部品の実装条件を決定する(S104)。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る部品実装システムについて説明する。本実施の形態では、実施の形態1に示した実装条件決定装置300を具現化したものである。
図11は、実装条件決定装置300の内部構成を示す機能ブロック図である。
実装条件決定装置300は、タスクおよびタスク順を決定する装置であり、低下吸着圧計測部311と、最大部品吸着数算出部313と、タスク決定部315と、通信I/F部317と、最大部品吸着数テーブル記憶部319と、バス321とを備えている。
通信I/F部317は、部品実装機100との間で各種データのやり取りを行なう処理部である。
低下吸着圧計測部311は、通信I/F部317を介して部品実装機100より、部品の吸着圧を取得し、部品吸着前後の吸着圧の差である低下吸着圧を算出する処理部である。このような吸着圧の低下は、部品を吸着した際に部品と吸着ノズル112aとの間に生じる隙間からエアーがリークすることによって発生する。
最大部品吸着数算出部313は、低下吸着圧に基づいて、装着ヘッド112が吸着可能な部品の最大数(以下、適宜「最大部品吸着数」という。)を部品種ごとに算出する処理部である。
最大部品吸着数テーブル記憶部319は、算出された最大部品吸着数を部品種ごとにまとめたテーブルである最大部品吸着数テーブル319aを記憶する記憶装置である。
タスク決定部315は、最大部品吸着数テーブル319aに基づいて、タスクを決定する処理部である。
バス321は、実装条件決定装置300を構成する各処理部および最大部品吸着数テーブル記憶部319を相互に接続するバスである。
図12は、実装条件決定装置300が実行する処理のフローチャートである。
低下吸着圧計測部311は、通信I/F部317を介して部品実装機100に部品の吸着指示を送信する(S11)。吸着指示を受けた部品実装機100は、装着ヘッド112を移動させ、部品を1つだけ、吸着ノズル112aに吸着する。その後、部品実装機100は、吸着圧センサ412で計測された部品吸着時の吸着圧を実装条件決定装置300の通信I/F部317へ返信する。低下吸着圧計測部311は、通信I/F部317を介して、部品吸着時の吸着圧を取得する。低下吸着圧計測部311は、装着ヘッド112が部品を吸着していない状態の吸着圧と部品を1つ吸着した状態の吸着圧との差である低下吸着圧を算出する(S12)。なお、部品を吸着していない状態の吸着圧は予め求められているものとする。上述したように、部品吸着時には、部品と吸着ノズル112aとの間に隙間が生じ、そこからエアーがリークするために、吸着圧の低下が生じる。
最大部品吸着数算出部313は、低下吸着圧計測部311で算出された低下吸着圧に基づいて、同種の部品を吸着した際の最大部品吸着数を算出する(S14)。
図13は、ある部品に対する部品吸着数と吸着圧との関係を示したグラフである。以下、図13を用いて、最大部品吸着数の計算方法について説明する。部品を吸着していない状態の吸着圧が40kPaであり、部品を1つ吸着した状態の吸着圧が36kPaであるものとすると、低下吸着圧は4kPa(=40kPa−36kPa)として求められる。また、装着ヘッド112が部品を落下させることなく移動可能な限界の吸着圧を30kPaとする。装着ヘッド112が部品を2個吸着した状態では、吸着圧は、32(=40−4×2)kPaであり、30kPa以上である。しかし、部品を3個吸着した状態では、吸着圧は、28(=40−4×3)kPaであり、30kPa未満となり、装着ヘッド112がこの部品を3個吸着して移動させたとしたら、当該部品を落下させてしまう。このため、最大部品吸着数算出部313は、着目している部品種に対する最大部品吸着数を2個と定める。なお、上述の限界の吸着圧30kPaは、吸着ノズル112aの形状等により求めることができる。なお、限界の吸着圧は、例えば、吸着する部品の形状、重量、設定された装着ヘッド112の移動速度、加速度等によっても影響される。
なお、「装着ヘッド112が部品を落下させることなく移動可能な限界の吸着圧」とは、その部品に対して予め定められている最高速度で装着ヘッド112を移動させたとしても吸着ノズル112aが部品を落下させることがない吸着圧の限界値のみならず、その部品に対して予め定められている最高速度よりも下位のレベルの速度で装着ヘッド112を移動させたとしても吸着ノズル112aが部品を落下させることがない吸着圧の限界値をも含む。すなわち、その部品を吸着して移動されるのに設定した速度(最高速度またはそれ以下の速度)において、吸着圧が限界値以上になるように最高部品吸着数を決定するものであれば、如何なる方法で最大部品吸着数を決定しようとも本発明に該当する。
最大部品吸着数算出部313は、最大部品吸着数算出処理(S14)で定めた最大部品吸着数を、その部品種とともに最大部品吸着数テーブル319aに書き込む(S16)。
図14は、最大部品吸着数テーブル319aの一例を示す図である。最大部品吸着数テーブル319aは、(部品名、最大吸着数)を1つのレコードとするデータベースである。たとえば、1つ目のレコードは、(部品名、最大吸着数)が(A、2)である。このレコードは、装着ヘッド112が部品名「A」の部品ばかりを吸着したとしたら、最大2個吸着できることを示している。
実装条件決定装置300の各処理部は、上述の処理(S11〜S16)を、回路基板20への実装対象となっているすべての部品種について繰返し、最大部品吸着数テーブル319aを作成する。なお、既に最大部品吸着数が算出され、当該最大部品吸着数が最大部品吸着数テーブル319aに登録されている部品種については、上述の処理(S11〜S16)を省略することが可能である。
次に、タスク決定部315は、最大部品吸着数テーブル319aより、回路基板20への実装対象となっているすべての部品種の最大吸着数を読み込む(S18)。タスク決定部315は、読み込んだ最大吸着数を制約条件として、タスクを決定する(S20)。例えば、図14に示した最大部品吸着数テーブル319aでは、部品種「A」の部品は最大2個までしか吸着することができないことが示されており、それを制約条件とする。また、1タスク内に複数の部品種の部品を含める場合には、複数の部品種の最大吸着数の最小値を、そのタスクにおける最大吸着数とする。例えば、1タスク内に部品種「B」の部品と部品種「C」の部品とを含める場合には、部品種「B」の最大吸着数「5」と部品種「C」の最大吸着数「3」との最小値「3」が最大吸着数となる。よって、タスク決定部315は、1タスク内の部品種「B」の部品個数と部品種「C」の部品個数との和が最大3個となるように、タスクを決定する。なお、タスクの決定方法は、これまで種々の方法が提案されており、本願発明の主眼ではないため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
このようにして決定されたタスクに基づいて、部品実装機100は回路基板20上に部品を実装する。
以上説明したように、本実施の形態によると、エアーのリークによる部品吸着圧の低下を考慮して、最大部品吸着数を決定している。また、最大部品吸着数を制約条件としてタスクを決定している。このため、エアーのリークによる部品吸着圧の低下が発生する場合であっても、位置精度が正確で、かつ実装時間が短くなるようなタスクを決定することができる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る部品実装システムについて説明する。本実施の形態では、部品の重量に基づいて、タスクを決定する点が実施の形態2と異なる。
実施の形態3に係る部品実装システムの構成は、図5に示した部品実装システム10において、実装条件決定装置300の代わりに、実装条件決定装置500(後述)を用いたものである。
部品実装機100の構成は、図6および図7に示したものと同様である。ただし、図15に示すように、装着ヘッド112には、吸着圧センサ412の代わりに吸着ノズル112aで吸着した部品の重量を検出する重量センサ413が設けられている点が実施の形態1および2に係る部品実装機100とは異なる。
図16は、実装条件決定装置500の内部構成を示す機能ブロック図である。
実装条件決定装置300は、タスクおよびタスク順を決定する装置であり、低下吸着圧推定部511と、最大部品吸着数算出部313と、タスク決定部315と、通信I/F部317と、最大部品吸着数テーブル記憶部319と、バス321とを備えている。
低下吸着圧推定部511は、通信I/F部317を介して部品実装機100より、部品の重量を取得し、部品吸着前後の吸着圧の差である低下吸着圧を推定する処理部である。それ以外の各処理部は、図11に示したものと同様である。
図17は、実装条件決定装置500が実行する処理のフローチャートである。
低下吸着圧推定部511は、通信I/F部317を介して部品実装機100に部品の吸着指示を送信する(S31)。吸着指示を受けた部品実装機100は、装着ヘッド112を移動させ、部品を1つだけ、吸着ノズル112aに吸着する。その後、部品実装機100は、重量センサ413で計測された部品の重量を実装条件決定装置500の通信I/F部317へ送信する。低下吸着圧推定部511は、通信I/F部317を介して、部品の重量を取得する。低下吸着圧推定部511は、部品の重量から、当該部品を吸着した際の低下吸着圧を推定する(S32)。例えば、低下吸着圧推定部511は、部品の重量をx(g)とし、低下吸着圧をy(kPa)とした場合、次式(1)に従い、低下吸着圧を推定する。
y=x×0.8 …(1)
例えば、部品の重量を5gとした場合には、低下吸着圧は、式(1)に従い、4(=5×0.8)kPaとして求めることができる。
最大部品吸着数算出部313は、低下吸着圧推定部511で推定された低下吸着圧に基づいて、同種の部品を吸着した際の最大部品吸着数を算出する(S14)。なお、S14以降の処理は、実施の形態1および2と同様である。このため、その詳細な説明はここでは繰り返さない。
以上説明したように、本実施の形態によると、実施の形態1と同様に、エアーのリークによる部品吸着圧の低下を考慮して、最大部品吸着数を決定している。また、最大部品吸着数を制約条件としてタスクを決定している。このため、エアーのリークによる部品吸着圧の低下が発生する場合であっても、位置精度が正確で、かつ実装時間が短くなるようなタスクを決定することができる。
また、部品実装機100に重量センサしか取り付けることができないような場合であっても、部品吸着圧の低下を考慮したタスクを決定することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2および3とは異なり、吸着ノズルからのエアーのリーク度合いを示すリークパラメータに基づいて最大部品吸着数を決定する。
図18は、部品実装条件決定装置300の内部構成を示すブロック図である。
部品実装条件決定装置300は、タスクおよびタスク順を決定する装置であり、部品ライブラリ記憶部310と、入力部312と、表示制御部314と、表示部316と、最大部品吸着数決定部323と、最大部品吸着数テーブル記憶部324と、タスク決定部315とを備えている。
部品ライブラリ記憶部310は、後述する部品ライブラリ310aを記憶する記憶装置である。
表示部316は、文字や画像等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイなどである。
入力部312は、各種データを入力するためにユーザが使用する装置であり、具体的にキーボードやマウス等である。
表示制御部314は、部品ライブラリ310aに含まれるデータや、入力部312より入力されたデータを表示部316に表示する制御を行なう処理部である。
最大部品吸着数テーブル記憶部324は、最大部品吸着数を決定するための最大部品吸着数テーブル324aを記憶している記憶装置である。
最大部品吸着数決定部323は、入力部312から入力されたリークパラメータに基づいて、最大部品吸着数テーブル記憶部324に記憶されている最大部品吸着数テーブル324aを参照することにより最大部品吸着数を決定する処理部である。
タスク決定部315は、最大部品吸着数決定部323で決定された最大部品吸着数に基づいてタスクを決定する処理部である。
図19は、部品ライブラリ310aの一例を示す図である。部品ライブラリ310aは、部品実装機100が扱うことができる全ての部品種それぞれについての固有の情報を集めたライブラリであり、部品種ごとの部品サイズ、タクト(一定条件下における部品種に固有のタクト)、その他の制約情報(使用可能な吸着ノズルのタイプ、部品認識カメラ116による認識方式、装着ヘッド112のヘッド速度レベル等)からなる。なお、同図には、参考として、各部品種の部品の外観も併せて示されている。
装着ヘッド112によるヘッド速度レベルは、装着ヘッド112による装着時の最高移動可能速度のレベルを示しており、「1」が最高速であり、値が大きくなるにつれ低速になる。
このヘッド速度レベルは、図20に示すようなテーブルに基づいて予め定められている。同図に示すテーブルの各レコードは、部品種別と、使用データと、判別式と、ヘッド速度レベルとを含む。例えば、部品種別が箱型汎用部品の場合には、部品の厚みTを使用し、同図に示す判別式に基づいて、ヘッド速度レベルが決定される。このとき、厚みTが1.0mmとすると、ヘッド速度レベルが3と決定される。
図21は、最大部品吸着数テーブル324aの一例を示す図である。
最大部品吸着数テーブル324aは、リークパラメータと最大部品吸着数との関係を示しているテーブルであり、リークパラメータは値が小さいほど吸着ノズルからのエアーのリークが少ない。例えば、最大部品吸着数テーブル324aによると、リークパラメータが「0」の場合には最大部品吸着数が「4」であり、リークパラメータが「2」の場合には最大部品吸着数が「3」である。
図22〜図33は、吸着ノズル112aにより部品を吸着した際のエアーのリーク現象について説明する図である。なお、その他の吸着ノズルで部品を吸着した場合にも同様の現象を生じる。
図22および図23は、吸着ノズル112aにより吸着面が曲面形状を有する部品を吸着した場合を説明する図である。図22は、凸円弧形状を有する部品340を吸着ノズル112aにより吸着した様子を示す図である。図23は、図22に示した状態を部品340の側方から見た図である。部品340の吸着ノズル112aとの接触面が凸円弧形状をしていることより、吸着ノズル112aと部品340との間に隙間ができ、そこから図中矢印方向にエアーがリークする。
図24〜図26は、吸着ノズル112aによりIC(Integrated Circuit)部品を吸着した場合を説明する図である。図24は、IC部品342の一例を示す図である。図25は、IC部品342の幅よりも大きな内径を有する吸着ノズル112aを用いてIC部品342を吸着した様子を示しており、図26は、図25に示す状態をIC部品342の下方から見た図である。IC部品342の幅よりも吸着ノズル112aの内径のほうが大きいことより、IC部品342の吸着時にIC部品と吸着ノズル112aとの間に隙間344ができ、そこからエアーがリークする。
図27および図28は、吸着ノズル112aによりネジ穴を有する部品を吸着した場合を説明する図である。図27は、ネジ穴を有する部品346である。図28は、ネジ穴を有する部品346を吸着した状態を示す図である。図28に示すように、部品346の吸着時に部品346のネジ穴と吸着ノズル112aとの間に隙間ができ、そこから図中矢印方向にエアーがリークする。
図29は、コネクタ部品348を吸着している状態を吸着ノズル112aの上方から見た場合の模式図である。コネクタ部品348の内側領域348bは、その外周領域348aに比べて一段低くなっている。このため、このような凹凸のあるコネクタ部品348を吸着した場合には、吸着ノズル112aとの間に隙間350ができ、そこからエアーがリークする。
図30および図31は、吸着ノズル112aによりチップ部品を吸着した場合を説明する図である。図30は、チップ部品352を示す図である。図31は、吸着ノズル112aがチップ部品352を吸着した状態をチップ部品352の下方から見た図である。このように、チップ部品352の短辺の長さに比べて吸着ノズル112aの内径の方が大きい場合には、隙間354ができ、そこからエアーがリークする。
図32および図33は、吸着ノズル112aによりチップ部品を吸着した場合を説明する図である。図32は、吸着位置ずれがなく吸着ノズル112aがチップ部品356を吸着した状態をチップ部品356の下方から見た図である。この図のように、チップ部品356の短辺の長さに比べて吸着ノズル112aの内径の方が小さい場合には、チップ部品356と吸着ノズル112aとの間に隙間を生じることなく、部品を吸着することができる。ただし、部品吸着時に位置ずれが生じている場合にはこの限りではない。図33は、吸着位置ずれを生じて吸着ノズル112aがチップ部品356を吸着した状態をチップ部品356の下方から見た図である。このように、部品吸着時に位置ずれが生じている場合には、隙間358が生じ、そこからエアーがリークする。
次に、実装条件決定装置300が実行する処理について説明する。図34は、実装条件決定装置300が実行する処理のフローチャートである。
表示制御部314は、部品ライブラリ310aを参照して、各部品種ごとにリークパラメータの入力画面を表示する(S2)。図35は、リークパラメータの入力画面の一例を示す図である。この画面は、図19に示した部品ライブラリ310aの部品名「0603CR」に対するリークパラメータの入力画面である。入力画面370には、部品名と、部品サイズと、吸着ノズルと、装着ヘッド112のヘッド速度レベルとが表示されている。入力画面370には、さらに、リークパラメータを入力するための入力欄372が表示されている。
オペレータが、入力欄372にリークパラメータを入力すると(S4)、最大部品吸着数決定部323が、入力されたリークパラメータについて、図21に示す最大部品吸着数テーブル324aを参照して、最大部品吸着数を取得する(S106)。例えば、図35に示した入力画面370では、部品名「0603CR」の部品種のリークパラメータとして「2」が設定されている。図21に示されるように、リークパラメータが「2」の場合には、最大部品吸着数は「3」である。このため、最大部品吸着数決定部323は、部品名「0603CR」の部品種の最大部品吸着数を「3」と決定する。
タスク決定部315は、決定された最大吸着数を制約条件として、タスクを決定する(S20)。タスクの決定方法は、本願の主眼ではないため、その詳細な説明は繰り返さない。
以上説明したように、本実施の形態によると、リークパラメータを設定することにより、部品と吸着ノズルとの隙間によるエアーのリークを考慮してタスクを決定することができる。このため、装着ヘッド112の移動時に、部品を落下させたり、部品の吸着位置ずれを生じたりすることがなくなる。よって、正確な位置精度で基板上に部品を実装することができるようになる。
(実施の形態5)
本実施の形態は、カメラで部品を撮像した画像より、部品実装機100がリークパラメータを求める点が実施の形態4とは異なる。
図36は、本実施の形態に係る部品実装機100の構成を示す機能ブロック図である。
部品実装機100は、カメラ130と、隙間量算出部382と、最大部品吸着数決定部383と、ヘッド制御部387と、装着ヘッド112と、リークパラメータ算出表記憶部390と、最大部品吸着数テーブル記憶部324とを含む。
カメラ130および装着ヘッド112は、実施の形態1で説明したものと同様である。
隙間量算出部382は、カメラ130で撮像された部品の画像から部品のサイズを求め、当該サイズと吸着ノズル112aの内径とから、部品と吸着ノズル112aとの間に生じる隙間量を算出する処理部である。
リークパラメータ算出表記憶部390は、後述するリークパラメータを算出するためのリークパラメータ算出表390aを記憶している記憶装置である。
図37は、リークパラメータ算出表390aの一例を示す図である。リークパラメータ算出表390aは、隙間面積とリークパラメータとを対応付ける表であり、例えば、隙間面積aが0mm2以上5mm2未満の場合には、リークパラメータは「0」と導き出される。
最大部品吸着数テーブル記憶部324は、実施の形態4で説明したものと同様である。
最大部品吸着数決定部383は、隙間量算出部382で算出された隙間量から、装着ヘッド112による最大部品吸着数を決定する処理部である。
ヘッド制御部387は、最大部品吸着数決定部383において決定された最大部品吸着数に基づいて、装着ヘッド112を制御する処理部である。
次に、部品実装機100が実行する処理について説明する。図38は、部品実装機100が実行する処理のフローチャートである。
部品供給部115aまたは115bにおいて部品カセット114の交換が行なわれた際に、部品実装機100は、部品カセット114の部品吸着口にカメラ130を移動させ、吸着ノズル112aによる部品の吸着面を撮像する(S12)。
隙間量算出部382は、カメラ130で撮像された部品の画像と、当該部品を吸着する際に使用される吸着ノズル112aの内径とから、吸着ノズル112aにより部品を吸着する際に生じる隙間の面積を算出する(S14)。
図39は、吸着ノズルと部品と隙間との関係を示す図である。部品400の短辺402の長さをxとし、吸着ノズル112aの内径404をyとする。x≧yの場合には、吸着ノズル112aが部品400の中心を吸着すれば部品400と吸着ノズル112aとの間には隙間は生じない。このため、隙間面積aを0とする。一方、x<yの場合には、部品400と吸着ノズル112aとの間に隙間406が生じる。このとき、隙間面積aは次式(2)により算出することができる。
最大部品吸着数決定部383は、式(2)に基づいて算出された隙間面積aに対応するリークパラメータを、リークパラメータ算出表390aから抽出する(S16)。なお、最大部品吸着数決定部383は、隙間面積aから所定の演算によりリークパラメータを算出するようにしてもよい。
最大部品吸着数決定部383は、算出されたリークパラメータについて、図21に示す最大部品吸着数テーブル324aを参照して、最大部品吸着数を取得する(S118)。S118の処理は、実施の形態4のS106の処理と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
ヘッド制御部387は、決定された最大部品吸着数よりも多くの部品を吸着しないように装着ヘッド112を制御し、基板を生産する(S120)。
以上説明したように、本実施の形態によると、部品を撮像した画像に基づいて、部品を吸着ノズルで吸着した際に生じる隙間面積を計算し、隙間面積によりエアーのリークを考慮した装着ヘッドの最大部品吸着数を決定することができる。このため、装着ヘッドの移動時に、部品を落下させたり、部品の吸着位置ずれを生じたりすることがなくなる。よって、正確な位置精度で基板上に部品を実装することができるようになる。
また、部品実装機において部品切れを生じ、部品切れを起こした部品と同一の特性を有するが異型の部品に部品換えが行なわれたような場合には、吸着ノズルと部品との隙間の面積が異なるため、エアーのリーク量が変化する。しかし、そのような場合であっても、本実施の形態によると、部品換えの時点で隙間量を算出しなおす。このため、適切な装着ヘッドの最大部品吸着数を決定することができる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6に係る部品実装機について説明する。
本実施の形態では、部品実装時に吸着ノズルによる部品の吸着圧をリアルタイムで計測し、吸着圧が予め定められた移動可能吸着圧未満になった場合に、部品の吸着動作を中止し、タスクをリアルタイムに再構成する点が上述の実施の形態とは異なる。
図40は、本実施の形態に係る部品実装機600の機能的な構成を示すブロック図である。部品実装機600は、機能的には、機構部602と、実装制御部604と、移動可能判断部606と、吸着可能判断部608と、タスク再構成部610と、記憶部612と、部品廃棄指示部614と、部品吸着中止指示部616と、速度変更指示部618とを含む。
機構部602は、図6〜図8を用いて説明した部品実装機100の装着ヘッド112、吸着圧センサ412等を含む機構関連の構成要素の集合である。
記憶部612は、部品実装順序を示すタスクデータ612aを記憶している記憶装置である。
実装制御部604は、タスクデータ612aに基づいて、機構部602を制御することにより部品を回路基板20上に実装させる処理部である。
移動可能判断部606は、吸着圧センサ412の出力値に基づいて、現在吸着している部品を、装着ヘッド112の現在の移動速度で移動させることが可能か否かを判断する処理部である。
吸着可能判断部608は、吸着圧センサ412の出力値に基づいて、現在吸着している部品を吸着ノズルが吸着したまま移動させることが可能か否かを判断する処理部である。
タスク再構成部610は、部品が吸着できなかった場合に、吸着できなかった部品を次順以降にまわして、タスクを再構成する処理部である。
部品廃棄指示部614は、現在吸着している部品の廃棄を実装制御部604に指示する処理部である。
部品吸着中止指示部616は、部品の吸着の中止を実装制御部604に指示する処理部である。
速度変更指示部618は、装着ヘッド112の移動速度の変更を実装制御部604に指示する処理部である。
次に、部品実装機600が実行する処理について説明する。
図41は、部品実装機600が実行する処理のフローチャートである。なお、ここでは、説明の簡単化のために装着ヘッド112が備える吸着ノズル112a〜112dは4本であるものとする。
実装制御部604は、タスクデータ612aに従い、機構部602を制御することにより回路基板20上に部品を順次実装していく(S32)。図42は、タスクデータ612aの一例を示す図である。図42に示すように、装着ヘッド112の4本の吸着ノズルを使用して、部品種「A」〜「D」までの部品を1つずつ吸着し、回路基板20に装着する。この部品種の組を1つのタスクとした場合に、装着ヘッド112は、3回のタスクの部品を回路基板20に実装する。
移動可能判断部606は、吸着ノズルが部品を吸着したときの吸着圧が予め定められた移動可能吸着圧未満になっているか否かを判断する(S34)。ここで、「移動可能吸着圧」とは、現在の速度で装着ヘッド112を移動させたとしても、吸着ノズルが部品を落下させることがない吸着圧の限界の値を指す。すなわち、吸着圧が移動可能吸着圧未満になった場合には、装着ヘッド112の移動速度を低下させなければ、部品が落下してしまう。なお、上述の「現在の速度」は、その部品に対して予め定められた最高速度のみならず、最高速度よりレベルを低下させた速度を含めて、予め定められた速度であれば、「現在の速度」に該当する。
吸着圧が移動可能吸着圧以上である場合には(S34でNO)、実装制御部604は、機構部602を制御し、回路基板20への部品実装を続行する(S32)。
吸着圧が移動可能吸着圧未満になった場合には(S34でYES)、吸着可能判断部608は、吸着圧が予め定められた吸着可能吸着圧未満になっているか否かを判断する(S36)。ここで、「吸着可能吸着圧」とは、移動可能吸着圧よりも小さな値であり、速度を低下させて装着ヘッド112を移動させれば、吸着ノズルが部品を落下させることがない吸着圧の限界の値を指す。すなわち、吸着圧が吸着可能吸着圧未満になった場合には、速度を低下させて装着ヘッド112を移動させたとしても、吸着ノズルが部品を落下させてしまう。
吸着圧が吸着可能吸着圧未満になった場合には(S36でYES)、部品廃棄指示部614は、最後に吸着した部品を廃棄するように実装制御部604へ指示する。指示を受けた実装制御部604は、最後に吸着した部品を廃棄するように機構部602を制御する(S38)。
図43は、部品廃棄処理(S38)について説明するための図である。同図に示すグラフの横軸は、装着ヘッド112が現在吸着している部品の吸着数を示し、縦軸は、装着ヘッド112による吸着圧を示している。また、移動可能吸着圧は35kPaであり、吸着可能吸着圧は30kPaであるものとする。ここで、部品を吸着しない場合(吸着数が0である場合)の吸着圧は40kPaであるが、部品を吸着するにつれて、吸着圧は減少していく。4本目の吸着ノズルが部品を吸着した段階で、吸着圧は29kPaとなり、吸着圧は、吸着可能吸着圧30未満になる。このため、4本目の吸着ノズルにより吸着された部品は廃棄されることになる。よって、装着ヘッド112は、このタスクにおいては、最初に吸着した3つの部品のみを回路基板20に実装することになる。
吸着圧が吸着可能吸着圧以上である場合には(S36でNO)、部品吸着中止指示部616は、同一タスク内で次に吸着する予定の部品の吸着の中止を実装制御部604へ指示する。実装制御部604は、当該部品の吸着を中止するように機構部602を制御する(S40)。
図44は、部品吸着中止処理(S40)について説明するための図である。同図に示すグラフは、図43に示したグラフと同様のものである。図44に示すグラフでは、2本目の吸着ノズルが部品を吸着した時点の吸着圧は36kPaであり、移動可能吸着圧35kPa以上である。しかし、3本目の吸着ノズルが部品を吸着した時点で、吸着圧は33kPaになる。この値は、移動可能吸着圧35kPa未満であるが、吸着可能吸着圧30kPa以上である。したがって、3本目の吸着ノズルが吸着した部品は、廃棄されることはない。ただし、4本目の吸着ノズルが吸着する予定であった部品は吸着を中止される。
その後、実装制御部604は、装着ヘッド112の速度を予め定められた値だけ下げる制御を行なう(S42)。
また、タスク再構成部610は、吸着を中止された部品または破棄された部品を次順以降のタスクで実装するようにタスクを再構成しなおし、タスクデータ612aに格納する(S44)。
図45は、図42に示したタスクデータ612aを再構成した後のタスクデータ612aの一例を示す図である。図42に示したタスクデータ612aにおいて4本目の吸着ノズルにより吸着されるはずであった部品種「D」の部品が、吸着を中止されたかまたは廃棄されたものとする。このとき、図45に示すように、タスク再構成部610は、吸着を中止または廃棄された部品種「D」の部品ばかりをまとめた4番目のタスクを決定することにより、タスクを再構成し、タスクデータ612aを更新する。
次に、実装制御部604は、回路基板20の生産が完了したか否かを判断し(S46)、終了していなければ(S46でNO)、タスクデータ612aに従い、基板の生産を続行する(S32)。このとき、タスクが再構成されていれば再構成後のタスクデータ612aに従い、回路基板20が生産されることとなる。
以上説明したように、本実施の形態によると、部品実装時に動的に部品の吸着圧を計測し、適宜、部品の吸着を中止したり、部品の廃棄を行なったりする。よって、一定値以上の吸着圧を保ちつつ、装着ヘッドにより部品を回路基板に実装することができる。また、装着ヘッドの移動速度も適宜低下させる。このため、エアーのリークや、吸着ノズルのつまりなどによる部品吸着圧の低下が発生する場合であっても、位置精度を正確に維持しながら、部品を実装することができる。
また、部品の吸着中止や部品の廃棄に伴い、タスクが動的に再構成される。このため、次に生産する回路基板は、再構成後のタスクに従い生産されることとなる。このため、位置精度を正確に維持しながら、かつ実装時間が短くなるように回路基板を生産することができる。
なお、図41に示した部品実装機600が実行する処理においては、吸着圧が吸着可能吸着圧未満になった場合に、最後に吸着した部品を廃棄するようにしているが(S36でYES、S38)、吸着圧が移動可能吸着圧未満になった場合に(S34でYES)、最後に吸着した部品を廃棄し、タスクを再構成するようにしてもよい。このようにすることにより、当初の設定速度で装着ヘッドを移動させることが可能となる。
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7に係る部品実装機について説明する。
本実施の形態では、部品吸着時に吸着ノズルによる部品の吸着ずれを計測し、吸着ずれが予め定められた移動可能ずれ量未満になった場合に、部品の吸着動作を中止し、タスクをリアルタイムに再構成する点が上述の実施の形態とは異なる。
図46は、本実施の形態に係る部品実装機700の機能的な構成を示すブロック図である。部品実装機700は、機能的には、機構部702と、実装制御部604と、移動可能判断部706と、吸着可能判断部708と、タスク再構成部610と、記憶部612と、部品廃棄指示部614と、部品吸着中止指示部616と、速度変更指示部618とを含む。
機構部702は、図6〜図8を用いて説明した部品実装機100の装着ヘッド112、部品認識カメラ116等を含む機構関連の構成要素の集合である。ただし、本実施の形態に係る部品実装機700には、吸着圧センサ412は備えられていないものとする。
移動可能判断部706は、部品認識カメラ116による認識結果に基づいて、現在吸着している部品を、装着ヘッド112の現在の移動速度で移動させることができることが可能か否かを判断する処理部である。
吸着可能判断部708は、部品認識カメラ116による認識結果に基づいて、現在吸着している部品を吸着ノズルが吸着したまま移動させることが可能か否かを判断する処理部である。
その他の部品実装機700を構成する処理部および記憶装置は、実施の形態6に示したものと同様である。
次に、部品実装機700が実行する処理について説明する。
図47は、部品実装機700が実行する処理のフローチャートである。なお、ここでは、説明の簡単化のために装着ヘッド112が備える吸着ノズル112a〜112dは4本であるものとする。
実装制御部604は、タスクデータ612aに従い、機構部602を制御することにより回路基板20上に部品を順次実装していく(S52)。タスクデータ612aの一例は、図42に示したものと同様である。
部品認識カメラ116は、4本の吸着ノズル112a〜112dが部品を吸着した後に、部品の吸着状態を検査し、部品のずれ量を求める(S54)。図48は、部品を吸着した状態の装着ヘッド112を下方から見た図である。同図において、吸着ノズル112a〜112dの並びの方向をx軸方向とし、それに直交する方向をy軸方向とする。吸着ノズル112aおよび112cは、部品720aおよび720cをほぼ中央でそれぞれ吸着している。吸着ノズル112bは、本来の部品720bの吸着位置に比べ、x軸方向にずれた状態で部品720bを吸着している。しかし、この場合には、吸着ノズル112bと部品720bとの間に隙間は生じておらず、エアーはリークしない。このため、部品の吸着圧には影響を及ぼさない。
一方、吸着ノズル112dは、本来の部品720dの吸着位置に比べy軸方向にずれた状態で部品720dを吸着している。この場合には、吸着ノズル112dと部品720dとの間に隙間722が生じており、エアーがリークし、部品の吸着圧が低下する。よって、以下の説明では、「ずれ量」といった場合には、y軸方向のずれ量を指すものとする。
移動可能判断部706は、吸着ノズル112a〜112dの各々が部品を吸着したときの、いずれかの部品のずれ量が予め定められた移動可能ずれ量以上になっているか否かを判断する(S56)。ここで、「移動可能ずれ量」とは、現在の速度で装着ヘッド112を移動させたとしても、吸着ノズルが部品を落下させることがないずれ量の限界の値を指す。すなわち、ずれ量が移動可能ずれ量を超えた場合には、装着ヘッド112の移動可能速度を低下させなければ、部品が落下してしまう。
すべての部品のずれ量が移動可能ずれ量以下である場合には(S56でNO)、実装制御部604は、機構部602を制御し、回路基板20への部品実装を続行する(S52)。
いずれかの部品のずれ量が移動可能ずれ量を超えた場合には(S56でYES)、吸着可能判断部708は、吸着ノズル112a〜112dの各々が部品を吸着したときのいずれかの部品のずれ量が予め定められた吸着可能ずれ量を超えているか否かを判断する(S58)。ここで、「吸着可能ずれ量」とは、移動可能ずれ量よりも大きな値であり、速度を低下させて装着ヘッド112を移動させれば、吸着ノズルが部品を落下させることがないずれ量の限界の値を指す。すなわち、ずれ量が吸着可能ずれ量を超えた場合には、速度を低下させて装着ヘッド112を移動させたとしても、吸着ノズルが部品を落下させてしまう。
いずれかの部品のずれ量が吸着可能ずれ量を超えた場合には(S58でYES)、部品廃棄指示部614は、当該部品を廃棄するように実装制御部604へ指示する。指示を受けた実装制御部604は、最後に吸着した部品を廃棄するように機構部602を制御する(S60)。
すべての部品のずれ量が吸着可能ずれ量以下であれば(S58でNO)、実装制御部604は、装着ヘッド112の速度を予め定められた値だけ下げる制御を行なう(S62)。
部品廃棄処理(S60)の後、タスク再構成部610は、ずれ量が吸着可能ずれ量を超えている部品を次順以降のタスクで実装するようにタスクを再構成しなおし、タスクデータ612aに格納する(S64)。タスクの再構成処理(S64)は、実施の形態6で説明したタスクの再構成処理(S44)と同様である。すなわち、タスク再構成部610は、ずれ量が吸着可能ずれ量を超えている部品のみをまとめたタスクを決定することにより、タスクを再構成し、タスクデータ612aを更新する。
タスク再構成処理(S64)または速度ダウン処理(S62)の後、実装制御部604は、回路基板20の生産が完了したか否かを判断し(S66)、終了していなければ(S66でNO)、タスクデータ612aに従い、基板の生産を続行する(S52)。このとき、タスクが再構成されていれば再構成後のタスクデータ612aに従い、回路基板20が生産されることとなる。
以上説明したように、本実施の形態によると、部品実装時に動的に部品のずれ量を計測し、適宜、装着ヘッドの移動速度を低下させる。また、ずれ量が特に大きい場合には、その部品を廃棄する。このため、部品カセット114から部品を吸着する際に位置ずれが生じ、エアーのリークによる部品吸着圧の低下が発生する場合であっても、位置精度を正確に維持しながら、部品を実装することができる。
また、部品吸着時のずれに伴い、タスクが動的に再構成される。このため、次に生産する回路基板は、再構成後のタスクに従い生産されることとなる。このため、位置精度を正確に維持しながら、かつ実装時間が短くなるように回路基板を生産することができる。
以上、本発明の実施の形態に係る部品実装システムおよび部品実装機について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
例えば、実施の形態2および3では、算出された最大吸着数を最大部品吸着数テーブル319aに記憶したが、部品ライブラリに記憶するようにしても良い。部品ライブラリとは、部品実装機が扱うことができる全ての部品種それぞれについての固有の情報を集めたライブラリであり、部品種ごとの部品サイズ、タクト(一定条件下における部品種に固有のタクト)、その他の制約情報(使用可能な吸着ノズルのタイプ、部品認識カメラ116による認識方式、装着ヘッド112の速度レベル等)からなる。図49は、部品ライブラリの一例を示す図であり、同図の最右欄に最大吸着数が示されている。なお、同図には、参考として、各部品種の部品の外観も併せて示されている。
また、実施の形態2および3では、部品の吸着圧または重量計測する際に、吸着ノズルが自動的に部品を吸着するようにしているが、部品吸着時の吸着ずれを防ぐために、人手で部品を吸着ノズルに吸着させるようにしても良い。
さらに、実施の形態2では、低下吸着圧計測部311が低下吸着圧を算出しているが、吸着圧センサ412が低下吸着圧を算出し、実装条件決定装置300に送信するようにしても良い。
さらにまた、実施の形態3における低下吸着圧の推定式は、式(1)に限定されるものではなく、その他の式であってもよいし、部品の重量と低下吸着圧との関係を定めるテーブルを予め用意しておき、当該テーブルを参照することにより、低下吸着圧を推定するようにしても良い。
また、実施の形態6および7では、タスクを再構成する際に、図45のタスクデータ612aに示すように、吸着を中止された部品または廃棄された部品ばかりをまとめて、新たなタスクを決定したが、タスクの再構成の方法は、必ずしもこの方法に限られるものではない。例えば、当該部品を、部品が割り当てられていない吸着ノズルに吸着させるように、すでに存在するタスクに挿入しても良い。
また、実施の形態6および7に示した移動可能判断部606(706)は、吸着力またはずれ量に基づいて、現在吸着している部品を、装着ヘッド112の現在の移動速度で移動させることが可能か否かを判断しているが、それ以外の物理量に基づいて、このような判断を行ってもよい。例えば、部品の重量、部品の形状、吸着ノズル112aの形状、部品と吸着ノズル112aとの隙間量等である。
また、実施の形態6および7に示した吸着可能判断部608(708)は、吸着力またはずれ量に基づいて、現在吸着している部品を吸着ノズルが吸着したまま移動させることが可能か否かを判断しているが、それ以外の物理量に基づいて、このような判断を行ってもよい。例えば、部品の重量、部品の形状、吸着ノズル112aの形状、部品と吸着ノズル112aとの隙間量等である。
(実施の形態8)
実施の形態8に係る部品実装システムの構成は、図5に示したものと同様である。
また、部品実装機100の主要な構成は、図6に示したものと同様である。
さらに、装着ヘッド112と部品カセット114との位置関係は、図7に示したものと同様である。
図50は、装着ヘッド112を模式的に示す図である。装着ヘッド112には、上述したように10個の吸着ノズル112a〜112dが設けられており、また、装着ヘッド112の内部には、吸着ノズル112a〜112dに接続された真空室132が設けられている。真空室132は、部品実装機100内に設けられた真空発生装置134に接続されている。真空発生装置134が真空室132内のエアーを吸引することにより、真空室132内を真空状態にするような構造になっている。これにより、真空室132に接続された吸着ノズル112a〜112dは、部品を真空吸着することができる。
図51は、部品実装条件決定装置300の内部構成を示すブロック図である。
部品実装条件決定装置300は、部品実装機100が備える装着ヘッド112の移動速度を決定する装置であり、部品ライブラリ記憶部310と、入力部312と、表示制御部314と、表示部316と、ヘッド速度決定部318と、ヘッド速度更新表記憶部320とを備えている。
部品ライブラリ記憶部310は、部品ライブラリ310aを記憶する記憶装置である。部品ライブラリ310aの一例は、図19に示したものと同様である。
表示部316は、文字や画像等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイなどである。
入力部312は、各種データを入力するためにユーザが使用する装置であり、具体的にキーボードやマウス等である。
表示制御部314は、部品ライブラリ310aに含まれるデータや、入力部312より入力されたデータを表示部316に表示する制御を行なう処理部である。
ヘッド速度更新表記憶部320は、後述する装着ヘッド112の移動速度を決定するためのヘッド速度更新表320aを記憶している記憶装置である。
ヘッド速度決定部318は、入力部312により入力されたデータとヘッド速度更新表320aとに基づいて、装着ヘッド112の移動速度を決定する処理部である。
図52は、ヘッド速度更新表320aの一例を示す図である。ヘッド速度更新表320aは、吸着ノズルからのエアーのリーク度合いを示すリークパラメータと、リークパラメータに基づき定められる装着ヘッド112の移動速度の変化度合いを示すヘッド速度変化度とからなる。例えば、リークパラメータが「0」の場合には、装着ヘッド112の速度変更はないが、リークパラメータが「1」の場合には、装着ヘッド112を現在のヘッド速度レベルで示される速度よりも10%ダウンさせることとなる。
エアーのリークの現象は、図22〜図33を参照して説明したとおりである。
次に、部品実装条件決定装置300が実行する処理について説明する。図53は、部品実装条件決定装置300が実行する処理のフローチャートである。
表示制御部314は、部品ライブラリ310aを参照して、各部品種ごとにリークパラメータの入力画面を表示する(S2)。リークパラメータの入力画面の一例は、図35に示したものと同様である。
オペレータが、入力欄372にリークパラメータを入力すると(S4)、ヘッド速度決定部318が、入力されたリークパラメータについて、図52に示すヘッド速度更新表320aを参照して、当該リークパラメータに対応するヘッド速度変化度を取得する。また、ヘッド速度決定部318は、取得したヘッド速度変化度に基づいて、着目している部品種のヘッド速度レベルで示される移動速度を変化させることにより、装着ヘッド112の移動速度を決定する(S6)。例えば、図35に示した入力画面370では、リークパラメータとして「1」が設定されている。また、ヘッド速度レベルは「1」である。図52に示されるようにリークパラメータが「1」の場合には、装着ヘッド112の移動速度を10%ダウンさせることとなる。このため、ヘッド速度決定部318は、装着ヘッド112のヘッド速度レベルが「1」で示される移動速度を10%ダウンさせた速度を新たな装着ヘッド112の移動速度と決定する。
このようにして、部品種ごとに装着ヘッド112の移動速度が決定される。装着ヘッド112により回路基板20に部品が装着される際には、移動速度決定処理(S6)で決定された移動速度に基づいて、装着ヘッド112が移動することになる。なお、装着ヘッド112は、複数の部品を吸着することができるため、装着ヘッド112の移動時には、現在吸着している複数の部品にそれぞれ対応する複数の移動速度のうちの最小速度で装着ヘッド112は移動することになる。
以上説明したように、実施の形態8によると、リークパラメータを設定することにより、部品と吸着ノズルとの隙間によるエアーのリークを考慮して装着ヘッド112の移動速度を決定することができる。このため、装着ヘッド112の移動時に、部品を落下させたり、部品の吸着位置ずれを生じたりすることがなくなる。よって、正確な位置精度で基板上に部品を実装することができるようになる。
(実施の形態9)
次に、本発明の実施の形態9に係る部品実装機について説明する。
本実施の形態では、吸着ノズルによる部品の吸着面をカメラで撮像し、撮像された画像から装着ヘッド112の移動速度を決定する点が実施の形態8と異なる。
本実施の形態に係る部品実装機100の構成は、実施の形態8に示したものと同様である。ただし、図54に示すように、部品の実装条件を決定するための処理部がさらに備えられている点が、実施の形態8に示した部品実装機100とは異なる。
図54に示すように、部品実装機100は、カメラ130と、隙間量算出部382と、ヘッド速度決定部384と、ヘッド制御部386と、装着ヘッド112と、リークパラメータ算出表記憶部390と、ヘッド速度更新表記憶部320とを含む。
カメラ130、装着ヘッド112およびヘッド速度更新表記憶部320は、実施の形態8で説明したものと同様であるため、その詳細な説明はここでは繰り返さない。
隙間量算出部382は、カメラ130で撮像された部品の画像から部品のサイズを求め、当該サイズと吸着ノズル112aの内径とから、部品と吸着ノズル112aとの間に生じる隙間量を算出する処理部である。
リークパラメータ算出表記憶部390は、後述するリークパラメータを算出するためのリークパラメータ算出表390aを記憶している記憶装置である。リークパラメータ算出表390aの一例は、図37に示したものと同様である。
ヘッド速度決定部384は、隙間量算出部382で求められた隙間量とリークパラメータ算出表390aとヘッド速度更新表320aとに基づいて、装着ヘッド112の移動速度を決定する処理部である。
ヘッド制御部386は、ヘッド速度決定部384において決定された移動速度に基づいて、装着ヘッド112を移動させる制御を行なう処理部である。
次に、部品実装機100が実行する処理について説明する。図55は、部品実装機100が実行する処理のフローチャートである。
部品供給部115aまたは115bにおいて部品カセット114の交換が行なわれた際に、部品実装機100は、部品カセット114の部品吸着口にカメラ130を移動させ、吸着ノズル112aによる部品の吸着面を撮像する(S12)。
隙間量算出部382は、カメラ130で撮像された部品の画像と、当該部品を吸着する際に使用される吸着ノズル112aの内径とから、吸着ノズル112aにより部品を吸着する際に生じる隙間の面積を算出する(S14)。隙間面積aは、上述した式(2)に従って算出される。
ヘッド速度決定部384は、式(2)に基づいて算出された隙間面積aに対応するリークパラメータを、リークパラメータ算出表390aから抽出する(S16)。なお、ヘッド速度決定部384は、隙間面積aから所定の演算によりリークパラメータを算出するようにしてもよい。
また、ヘッド速度決定部384は、抽出されたリークパラメータに対応するヘッド速度変化度をヘッド速度更新表320aより抽出し、抽出されたヘッド速度変化度に基づいて、現在の装着ヘッド112の移動速度をダウンさせる(S18)。
ヘッド制御部386は、ダウンした後の移動速度で装着ヘッド112を移動させ、部品400を回路基板20上に装着する(S20)。
以上説明したように、実施の形態9によると、部品を撮像した画像に基づいて、部品を吸着ノズルで吸着した際に生じる隙間面積を計算し、隙間面積によりエアーのリークを考慮した装着ヘッドの移動速度を決定することができる。このため、装着ヘッドの移動時に、部品を落下させたり、部品の吸着位置ずれを生じたりすることがなくなる。よって、正確な位置精度で基板上に部品を実装することができるようになる。
また、部品実装機において部品切れを生じ、部品切れを起こした部品と同一の特性を有するが異型の部品に部品換えが行なわれたような場合には、吸着ノズルと部品との隙間の面積が異なるため、エアーのリーク量が変化する。しかし、そのような場合であっても、本実施の形態によると、部品換えの時点で隙間量を算出しなおす。このため、適切な装着ヘッドの移動速度を決定することができる。
(実施の形態10)
次に、本発明の実施の形態10に係る部品実装機について説明する。
本実施の形態では、装着ヘッドの真空室内の圧力(真空圧)をセンサで検知し、検知された真空圧から装着ヘッドの移動速度を決定する点が上述の実施の形態8および9とは異なる。
本実施の形態に係る部品実装機100の構成は実施の形態8に示したものと同様である。ただし、図56に示すように、部品の実装条件を決定するための処理部がさらに備えられている点が実施の形態8に示した部品実装機100とは異なる。
図56に示すように、部品実装機100は、吸着圧センサ412と、部品ライブラリ記憶部416と、ヘッド速度決定部418と、ヘッド速度テーブル記憶部420と、ヘッド制御部422と、装着ヘッド112とを備えている。
吸着圧センサ412は、図50に示したような装着ヘッド112内の真空室132内の圧力を計測するセンサである。なお、以下の説明では、「吸着圧」といった場合には、ゲージ圧で真空圧を表現した場合の絶対値を示すものとする。
部品ライブラリ記憶部416は、後述する部品ライブラリ416aを記憶する記憶装置である。
ヘッド速度テーブル記憶部420は、後述するヘッド速度テーブル420aを記憶する処理部である。
ヘッド速度決定部418は、吸着圧センサ412の出力値、部品ライブラリ416aおよびヘッド速度テーブル420aに基づいて、装着ヘッド112の移動速度を決定する処理部である。
ヘッド制御部422は、ヘッド速度決定部418により決定された移動速度に基づいて、装着ヘッド112を移動させる制御を行なう処理部である。
図57は、部品ライブラリ416aの一例を示す図である。部品ライブラリ416aは、図19に示した部品ライブラリ310aに加えて、ヘッド速度決定部418で決定された変更後の装着ヘッド112のヘッド速度レベルを入力するための欄「変更後ヘッド速度レベル」が設けられている。
図58は、ヘッド速度テーブル420aの一例を示す図である。ヘッド速度テーブル420aは、吸着圧センサ412で計測された吸着圧と、現在の装着ヘッド112のヘッド速度レベルと、変更後の装着ヘッド112のヘッド速度レベルとの関係を示したテーブルである。例えば、吸着圧pが35kPaであり、かつ現在の装着ヘッド112のヘッド速度レベルが1の場合には、変更後の装着ヘッド112のヘッド速度レベルは2となる。また、同図中の「NA」は、部品を吸着するための吸着圧が小さく、かつこれ以上ヘッド速度レベルを低下させることができないため、部品を吸着しないことを示している。
次に、部品実装機100が実行する処理について説明する。図59は、部品実装機100が実行する処理のフローチャートである。
部品実装機100が回路基板20の生産を開始する(S32)。その間、吸着圧センサ412は常に真空室132内の真空圧(吸着圧)を測定する。吸着圧が規定値以上の場合には(S34でNO)、生産が続行される(S32)。
吸着圧が規定値未満になった場合には(S34でYES)、ヘッド制御部422は、現在、装着ヘッド112が部品を吸着中か否かを判断し(S36)、吸着中の場合には吸着動作を中止させる(S38)。
その後、ヘッド速度決定部418が、図58に示したヘッド速度テーブル420aに基づいて、現在の吸着圧と装着ヘッド112のヘッド速度レベルとから、更新後のヘッド速度レベルを算出する。また、ヘッド制御部422は、更新後のヘッド速度レベルに基づいて、装着ヘッド112を移動させる(S40)。例えば、現在の吸着圧pが25kPaであり、かつ装着ヘッド112のヘッド速度レベルが「2」の場合には、装着ヘッド112のヘッド速度レベルを「4」に変更する。
また、ヘッド速度決定部418は、算出されたヘッド速度レベルを部品ライブラリ416aの「変更後ヘッド速度レベル」欄に書き込む(S42)。回路基板20にすべての部品実装が完了した場合には(S46でYES)、部品実装機100による処理を終了し、完了していない場合には(S46でNO)、部品実装機100による生産を続行する(S32)。
以上説明したように、実施の形態10によると、装着ヘッド112内の真空室132の真空圧に基づいて、吸着ノズルによる吸着力が規定値よりも減少したと判断した場合には、装着ヘッド112の移動速度を減少させるような制御を行なうことができる。このため、装着ヘッド112の移動時に、部品を落下させたり、部品の吸着位置ずれを生じたりすることがなくなる。よって、正確な位置精度で基板上に部品を実装することができるようになる。
また、部品ライブラリ更新処理(図59のS42)で、部品ライブラリ416aの「変更後ヘッド速度レベル」欄に、真空室132内の吸着圧から算出された速度レベルを書き込むようにしている。これにより、部品実装時に同様の吸着圧の低下が生じた場合には、部品ライブラリ416aに書き込まれた変更後ヘッド速度レベルを参照するだけで、低下すべき装着ヘッド112の移動速度を特定することができる。
以上、本発明の実施の形態に係る部品実装システムおよび部品実装機について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
例えば、実施の形態8で説明した部品実装条件決定装置300の機能が部品実装機100内に設けられていても良い。
また、実施の形態9または10で説明した部品実装機100による装着ヘッド112の移動速度決定のための機能が、部品実装機100とは別の装置である部品実装条件決定装置に設けられていても良い。
また、図60に示すように、装着ヘッド112の内部に2つの真空室132aおよび132bを設けても良い。この場合、真空室132aおよび132bに対して、それぞれ真空発生装置134aおよび134bが設けられる。また、真空室132aには5本の吸着ノズル112a〜112bが接続され、真空室132bには5本の吸着ノズル112c〜112dが接続されている。
また、図61に示すように、装着ヘッド112の内部に吸着ノズルごとに吸着室を設けても良い。すなわち、吸着ノズル112a〜112dにそれぞれ対応する真空室132a〜132dが設けられる。また、真空室132a〜132dに対してそれぞれ真空発生装置134a〜134dが設けられる。
さらに、図62に示すように、吸着ノズル112aが1つだけ備えられた装着ヘッド112であっても良い。この場合には、吸着ノズル112aに対して装着ヘッド112内に真空室132が設けられる。また、真空室132に対して真空発生装置134が設けられる。
図61および図62に示すように、吸着ノズルごとに真空室が設けられる場合には、他の吸着ノズルからのエアーのリークが生じたとしても、吸着力の低下の影響を受けることがない。このため、図59のフローチャートにおいて、部品吸着力が落ちたとしても、部品吸着動作を中止する処理(S38)は実行せずに、装着ヘッドの速度を低下させるのみですむ。
また、図54に示した部品実装機100の隙間量算出部382では、部品と吸着ノズル112aとの間に生じる隙間の面積を算出するようにしているが、カメラ130の代わりに3次元計測が可能なカメラを用いることにより、隙間の体積を算出し、隙間の体積とリークパラメータとの対応関係を示した表から、リークパラメータを算出するようにしてもよい。
また、図54に示した部品実装機100のヘッド速度決定部384では、隙間面積からリークパラメータを算出し、リークパラメータに基づいて装着ヘッド112の移動速度を決定しているが、図63に示すような、隙間面積とヘッド速度レベルとの対応表を記憶しておき、隙間面積からヘッド速度レベルを直接求め、ヘッド速度レベルに基づいて装着ヘッド112の移動速度を決定するようにしても良い。
また、図56に示した部品実装機100のヘッド速度決定部418は、ヘッド速度テーブル420aの代わりに、図64に示すようなリークパラメータテーブルを用いて装着ヘッド112の速度を決定しても良い。図64に示すリークパラメータテーブルは、吸着圧センサ412で計測された吸着圧と、現在の装着ヘッド112のヘッド速度レベルと、リークパラメータとの関係を示したテーブルである。例えば、吸着圧pが47kPaであり、現在の装着ヘッド112のヘッド速度レベルが「2」の場合には、リークパラメータは「1」となる。このため、ヘッド速度決定部418は、現在のヘッド速度レベル「2」に対応する速度を10%ダウンさせた速度を新たな速度として決定する。
なお、本明細書中で「速度」という場合には、「加速度」を含むものとし、「速度」を「加速度」に置き換えても構わない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。