以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
<実施の形態1>
[概要]
本発明の実施の形態1である電子部品実装システムは、図1に示すように、プリント基板140に複数の電子部品150を実装する電子部品実装装置(チップマウンタ)100が、プリント基板搬送路130に対してX方向に複数(図中では省略して1つのみ表示)直列に配置されており、これらに対してネットワーク400を介して、プリント基板140に実装する各電子部品150の実装条件を設定する実装条件設定装置200および各電子部品150の実装順序を設定する実装順序設定装置300を有する。なお、図1の内容の詳細については後述する。
図17は、本願発明の実施の形態1を簡単に説明するため、実装条件の変更と実装順序との関係の例について概要を示すものである。図17上段の図では、電子部品タイプA〜Cの3種類の電子部品をプリント基板上に実装する順序と、その際の電子部品装着ヘッドの移動経路の例を矢印で示している。ここで、電子部品装着ヘッドの標準移動速度を40とした場合、上段の図では、電子部品タイプA〜Cの全ての電子部品について速度率(標準移動速度に対する割合を示す)が100(%)であるため、3種類全ての電子部品を吸着した状態であっても、電子部品装着ヘッドは、標準速度40×100%=40の速度で移動することができることを示している。
一方、図17の中段の図では、例えば、電子部品タイプCについて、実装条件設定装置200において実際は速度率100(%)ではなく25(%)が適切であるというチューニングがされた場合の例を示している。このとき、電子部品タイプCについては標準速度40×25%=10の速度に減速して電子部品装着ヘッドを移動させる必要があるため、他に電子部品タイプA、Bを吸着している場合であっても電子部品タイプCを吸着している間は電子部品装着ヘッドは速度10で移動する必要がある(図中の点線の矢印の区間)。すなわち、電子部品装着ヘッドは、複数種類の電子部品を吸着して移動する際、最も移動速度を遅くしなければならない電子部品(速度率が低い電子部品)に合わせて移動する必要がある。
なお、図17の中段の図の状態では、図中の矢印(点線、実線)で示される実装順序はもはや最適なものではなくなってしまう。すなわち、図17の中段の図の例のように、例えば、電子部品タイプCの速度率の制約が厳しい(電子部品タイプCを吸着している間は電子部品装着ヘッドを大きく減速させる必要がある)場合には、図17の下段の図の例に示すように、電子部品タイプCの実装を早い段階で完了してしまうよう実装順序を変更することで、その後、電子部品タイプAおよびBのみになった際に速度率を100(%)に上げることができ、全体の実装時間が短くなる場合が生じ得る。
従って、図17の中段の図の例のように実装条件を変更した場合に、これに合わせて図17の下段の図の例のような効率的な実装順序を再計算して反映させるということも考えられる。しかしながら、実装する電子部品数や種類が多数となる場合は、採り得る実装順序のパターン数も膨大となり、実装順序の再計算には長時間を要する。従って、電子部品の実装を継続しながら、実効的な時間範囲内で実装順序を再計算して動的に反映させるということは困難である。
そこで、図17の下段の図に示すように、破線の矢印で示す順序である電子部品タイプA、次に電子部品タイプC、次に実線の矢印で示す順に電子部品を実装することで、減速しなければならない電子部品タイプCを先にプリント基板へ装着することによって、以降の電子部品装着ヘッドは電子部品タイプA、Bを運ぶ速度で移動できるようになる。このように、サイクル内の順序を変更する例や、複数サイクル間の実装順序を変更する例は実施の形態において詳細に説明する。
本発明の実施の形態1である電子部品実装システムは、新規の電子部品など、適切な実装条件が不明な電子部品について、実装条件の初期値を設定した上で、これを所与として効率的な実装順序を計算して設定するとともに、予め、初期値以外の他の複数の候補値の組み合わせからなる各電子部品の実装条件の候補パターンについても、これらの値を所与として効率的な実装順序をそれぞれ計算しておく。
これにより、電子部品実装中に電子部品の実装条件を変更・調整する場合、調整後の各電子部品の実装条件に最も近い(類似する)実装条件の候補パターンを選択し、これに対応する実装順序に動的に切り替えることで、電子部品実装を継続しつつ、短時間で実装順序を切り替えることを可能とするものである。
[システム構成]
図1は、本発明の実施の形態1である電子部品実装システムの構成例について概要を示した図である。電子部品実装システム1は、上述したように、例えば、プリント基板140に複数の電子部品150を実装する電子部品実装装置(チップマウンタ)100が、プリント基板搬送路130に対して複数(図中では省略して1つのみ表示)直列に配置されており、これらに対してネットワーク400を介して、プリント基板140に実装する各電子部品150の実装条件を設定する実装条件設定装置200および各電子部品150の実装順序を設定する実装順序設定装置300を有する。
図中の電子部品実装装置100については、装置の上面から見た状態について概略を示している。電子部品実装装置100は、例えば、プリント基板搬送路130上を搬送されてくるプリント基板140等の対象物に対して、リフロー方式によるはんだ接合等により複数種類の電子部品等の電子部品150を多数装着することを可能とする装置であり、プリント基板搬送路130を挟んで一対の電子部品パレット110(電子部品供給部)と電子部品装着ヘッド120の組を有する2ヘッド構成をとる。なお、電子部品装着ヘッド120の数や配置等の構成はこれに限られない。電子部品パレット110は、複数の電子部品フィーダ111を搭載しており、各電子部品フィーダ111はそれぞれ異なる種類の電子部品を供給することができる。
電子部品装着ヘッド120は、X軸方向(図中の水平方向)にビームに沿って移動し、さらに当該ビーム全体がY軸方向(図中の垂直方向)にビームに沿って移動することで、電子部品パレット110およびプリント基板140上のXY平面上を移動することができる。また、電子部品150を吸着・装着することができる電子部品装着ノズルを複数有する。これにより、必要な電子部品150を供給する電子部品フィーダ111から電子部品150を複数種類、複数個吸着するとともに、吸着した各電子部品150をプリント基板140上の所定の位置に順次実装する機能を有する。電子部品実装時の各電子部品150についての実装条件や、実装順序の情報は、実装条件設定装置200および実装順序設定装置300からそれぞれ取得して設定する。
なお、図1の例では、電子部品装着ヘッド120は電子部品装着ノズルが円状に複数配置された例を示しているが、これに限られず、複数の列状等に配置してもよい。また、電子部品装着ヘッド120において、電子部品を取り出して保持し、装着する部材(電子部品装着部材)として、電子部品を吸着して保持する電子部品装着ノズルを用いるものとしているが、電子部品装着部材はこれに限らず、例えば、電子部品を挟んで取り出して保持するチャック等を用いることも可能である。
プリント基板搬送路130は、例えばX方向に1つ以上並べられた電子部品実装装置100に対してX方向にプリント基板140を順次搬送し、電子部品実装装置100内の所定の位置で固定する機能を有する。なお、例えば、プリント基板搬送路130の近傍などに、電子部品装着ヘッド120が吸着した電子部品150の状態を撮影するための図示しない電子部品認識カメラを有し、撮影画像に基づいて吸着した電子部品150の姿勢等のズレを判定する機能を有していてもよい。
実装条件設定装置200は、例えば、PC(Personal Computer)やサーバ機器などのコンピュータシステムにより構成され、図示しないOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System:データベース管理システム)などのミドルウェアに加えて、ソフトウェアプログラムにより実装される実装条件算出部210および入出力部220などの各部を有する。また、データベースやファイルテーブルなどにより実装される、実装電子部品データ231、実装エラーデータ232、および実装条件データ233などの各テーブルを有する。
実装条件算出部210は、実装電子部品データ231に登録されている、電子部品150の種類毎のサイズや重量などの属性情報や、実装エラーデータ232に記録されている、電子部品150の実装時に電子部品実装装置100において検出されたエラー等の情報を含む過去の実装実績に基づいて、電子部品装着ヘッド120の移動速度や加速度、電子部品150の実装時のヘッドの静止時間などの実装条件を所定の手法により算出(チューニング)して、実装条件データ233に記録する機能を有する。
なお、過去の実装実績がない新規の電子部品150については、ユーザが実装条件の初期値を設定する。また、チューニングについても、実装条件算出部210が算出するのではなく、ユーザが値を手動で設定するようにしてもよい。算出・設定した実装条件のデータは、後述する入出力部220を介して電子部品実装装置100に送信され、設定される。
入出力部220は、実装条件設定装置200に対する各データの入出力のためのインタフェースを提供する。例えば、電子部品実装装置100や実装順序設定装置300との間のデータの授受に係るインタフェースや、ユーザがデータを登録・照会・変更等する際の画面インタフェースなどを含む。
実装順序設定装置300は、本発明の主要な機能を担う装置であり、実装条件設定装置200と同様に、例えば、PCやサーバ機器などのコンピュータシステムにより構成され、図示しないOSやDBMSなどのミドルウェアに加えて、ソフトウェアプログラムにより実装される実装順序算出部310、実装条件候補生成部320、実装順序選択部330、および入出力部340などの各部を有する。また、データベースやファイルテーブルなどにより実装される、電子部品実装ラインデータ351、電子部品実装装置データ352、プリント基板データ353、実装電子部品データ354、実装条件データ355、電子部品配置データ356、不確実項目データ357、および実装順序データ358などの各テーブルを有する。
実装順序算出部310は、実装条件設定装置200もしくは後述する実装条件候補生成部320により算出・設定され、実装条件データ355に保持する各電子部品150の実装条件の情報と、プリント基板データ353に保持するプリント基板140上に実装する各電子部品150の種類や実装位置などの情報に基づいて、これらの値を所与として、どの電子部品150をどの電子部品フィーダ111から取得し、どのような順序でプリント基板140上の所定の場所に配置するのが最も効率的かという実装順序を算出し、実装順序データ358に記録する機能を有する。
なお、効率的な実装順序の計算手法としては、上述したように、例えば、実装する全電子部品150について採り得る実装順序のパターンを求め、それぞれのパターンで要する実装時間を計算して、実装時間が最も短くなるパターンを実装順序とするなど各種の公知の計算手法を適宜用いることができる。
実装条件候補生成部320は、実装条件データ355に保持する各電子部品150の実装条件のうち不確実な状態となっている項目について候補値を複数生成し、各候補値の組み合わせに基づく各電子部品150の実装条件の候補パターンについて実装条件データ355に登録する機能を有する。さらに、実装条件の各候補パターンについて、これらを適用した場合の効率的な実装順序をそれぞれ実装順序算出部310により予め生成して実装順序データ358に登録しておく。ここで、実装条件が不確実な状態とは、主に、過去に実装実績がなく、適切な実装条件の値が不明であるために、実装条件設定装置200においてユーザにより初期値が設定された状態を指す。
また、このときに生成する複数の候補の値については、例えば、ユーザにより予め実装条件中の当該項目について取り得る値の上限値と下限値、および生成する候補の数を予め設定しておき、上限値と下限値との間の範囲を候補数に応じて均等割りして求める。均等ではなく、例えば、ユーザにより設定されている初期値の近辺についてはより細かく分割して、実装条件の候補を算出してもよい。初期値とは言いつつ、例えばユーザの判断等により適当と思われる値が設定されていると考えられるからである。
実装順序選択部330は、実装条件設定装置200から、ある電子部品150についての実装条件が変更された旨およびその内容を受け取った場合に、実装条件候補生成部320により予め算出され、実装条件データ355に登録されている実装条件の各候補パターンのうち、変更後の各電子部品150の実装条件に最も類似する候補パターンを所定の方法により選択し、これに対応する実装順序を実装順序データ358から抽出する機能を有する。抽出した実装順序のデータは、後述する入出力部340を介して電子部品実装装置100に送信され、設定される。
入出力部340は、実装順序設定装置300に対する各データの入出力のためのインタフェースを提供する。例えば、電子部品実装装置100や実装条件設定装置200との間のデータの授受に係るインタフェースや、ユーザがデータを登録・照会・変更等する際の画面インタフェースなどを含む。
なお、本実施の形態では、実装条件設定装置200と実装順序設定装置300とをそれぞれ独立したコンピュータシステムとして実装する構成としているが、十分なコンピュータリソースが確保できる場合はこれらを同一のコンピュータシステム上に一体化して実装することも可能である。さらに、電子部品実装装置100自体がコンピュータシステムとして十分な構成を有する場合には、電子部品実装装置100に一体化して実装することも可能である。
[処理の流れ]
図2は、本実施の形態の実装順序設定システムにおける、電子部品150の実装処理の流れの例について概要を示したシーケンス図である。実装条件設定装置200は、まず、プリント基板に実装する各電子部品150についての実装条件の初期値についてユーザからの入力を受け、もしくは実装条件算出部210により算出してこれを実装条件データ233に設定・記録し(S01)、設定・記録した実装条件の初期値の情報を電子部品実装装置100に送信して設定するとともに、実装順序設定装置300にも送信する。
また、実装順序設定装置300では、実装順序算出部310により、プリント基板140に実装する各電子部品150の属性値や、プリント基板140上での実装位置などの情報に基づいて、電子部品実装装置100の電子部品パレット110上における電子部品フィーダ111の配置(電子部品パレット110上のどの位置にどの種類の電子部品150を供給する電子部品フィーダ111を配置するか)を算出する(S02)。なお、最も効率的な電子部品フィーダ111の配置の算出手法としては、各種の公知の計算手法を適宜用いることができる。その後、これらの条件を所与のものとして実装順序を算出して実装順序データ358に記録する(S03)。算出した実装順序の情報は電子部品実装装置100に送信して設定する。
その後、電子部品実装の開始前に、もしくは電子部品実装の開始後にこれと並行して、実装順序設定装置300の実装条件候補生成部320により、実装条件が不確実な状態の電子部品150について複数の候補値を算出し、各候補値の組み合わせに基づく各電子部品150の実装条件の候補パターンを算出して実装条件データ355に記録しておく(S04)。さらに、算出した候補パターン毎に、これらの実装条件を所与のものとして実装順序算出部310により実装順序を算出して実装順序データ358に記録しておく(S05)。
一方、実装条件と実装順序の情報を設定した電子部品実装装置100では、電子部品実装の準備が完了すると、ユーザからの指示等をトリガとして電子部品実装を開始する(S06)。電子部品実装中にエラーや警告を検出した場合、当該情報を実装条件設定装置200に送信する。なお、このとき電子部品実装装置100では、従前の実装条件と実装順序で電子部品の実装を継続する。
実装エラー等の情報を受信した実装条件設定装置200では、対象の電子部品150について実装条件を変更・再設定する(S07)。変更した実装条件の情報は、電子部品実装装置100に送信し、電子部品150の実装と並行して再設定するとともに、実装順序設定装置300にも実装順序の変更要求として送信する。変更した実装条件の情報を設定した電子部品実装装置100では、例えば、実行中の電子部品実装サイクルの次のサイクルから、新たに設定した実装条件に従って電子部品150の実装を行う。
一方、実装順序変更要求を受信した実装順序設定装置300では、実装順序選択部330により、ステップS05において算出され実装条件データ355に予め登録されている実装条件の候補パターンのうち、変更後の各電子部品150の実装条件に最も類似するものを所定の方法により選択するとともに、これに対応する実装順序を実装順序データ358から抽出する(S08)。抽出した実装順序のデータは電子部品実装装置100に送信して設定する。新たな実装順序の情報を設定した電子部品実装装置100では、例えば、実行中の電子部品実装サイクルの次のサイクルから、新たに設定した実装順序に従って電子部品150の実装を行う。すなわち、電子部品実装中に実装条件の変更に対応して効率的な実装順序に動的に切り替えることができる。
なお、変更された実装条件について元々不確実な状態ではなかった場合はこれを不確実な状態とする。すなわち、当該実装条件について、後述するステップS09以降の処理において実装条件の候補値を算出する対象とする。なお、不確実な状態であった実装条件にについて、所定の期間以上実装条件が変更されなかった場合は、不確実な状態を自動もしくは手動により解除するようにしてもよい。
その後、電子部品実装と並行して、実装順序設定装置300の実装条件候補生成部320により、変更された実装条件の値を新たな初期値と取り扱って、ステップS04と同様の処理によってこれらの各電子部品150についての実装条件の候補値とその組み合わせに基づく候補パターンを再計算する(S09)。さらに、実装順序算出部310により、算出した候補パターン毎にステップS05と同様の処理によって実装順序を算出しておく(S10)。
実装開始後は、このような実装条件の変更・チューニングと、変更後の各電子部品150の実装条件に類似する実装条件の候補パターンの選択、および対応する実装順序からの選択、さらに実装条件の候補パターン(および対応する実装順序)の再計算という一連の処理を繰り返し行う。これにより、実装条件が変更された際に選択される実装順序の精度を漸次向上させることができる。
[データ構成]
図3は、実装順序設定装置300の電子部品実装ラインデータ351のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。電子部品実装ラインデータ351は、1つ以上並べて配置された電子部品実装装置100からなる電子部品実装ラインを構成する各電子部品実装装置100についての情報を保持するテーブルであり、例えば、装置順序、装置種類、およびIPアドレスなどの各項目を有する。
装置順序の項目は、対象の電子部品実装装置100のライン上における順序の情報を保持する。例えば、プリント基板搬送路130の搬送方向に沿って昇順に設定した順序番号の値を設定する。装置種類の項目は、対象の電子部品実装装置100の種類・タイプを識別可能なモデルや型番等の情報を保持する。IPアドレスの項目は、対象の電子部品実装装置100に割り当てられているIPアドレスの情報を保持する。
図4は、実装順序設定装置300の電子部品実装装置データ352のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。電子部品実装装置データ352は、電子部品実装装置100の種類毎にその仕様や特性等の情報を保持するテーブルであり、例えば、装置種類、装置種別、装着ヘッド数、パレット幅、およびパレット数などの各項目を有する。
装置種類の項目は、電子部品実装装置100の種類を識別可能な情報を保持するものであり、上述の図3に示した電子部品実装ラインデータ351における装置種類の項目と同内容である。装置種別の項目は、対象の種類の電子部品実装装置100の種別やタイプ、方式等を識別可能な情報(例えば“ガントリ型”など)を保持する。装着ヘッド数の項目は、対象の種類の電子部品実装装置100が有する電子部品装着ヘッド120の数の情報を保持する。パレット幅およびパレット数の項目は、それぞれ、対象の種類の電子部品実装装置100が装着可能な電子部品パレット110の幅(例えばcm)および電子部品パレット110の数の情報を保持する。
図5は、実装順序設定装置300のプリント基板データ353のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。プリント基板データ353は、プリント基板140の種類毎に実装される各電子部品150についての情報を保持するテーブルであり、例えば、基板種類、装置座標XとY、角度、および電子部品種類などの各項目を有する。
基板種類の項目は、実装対象のプリント基板140の種類を識別可能なID等の情報を保持する。装置座標XとYの項目は、対象のプリント基板140上に実装される各電子部品150についての、所定の位置を原点とした実装位置のX座標とY座標の情報を保持する。角度の項目は、対象のプリント基板140上に実装される各電子部品150についての、所定の方向を基準とした実装時の角度の情報を保持する。電子部品種類の項目は、対象のプリント基板140上に実装される各電子部品150の種類を識別可能な型番や電子部品名等の情報を保持する。
図6は、実装順序設定装置300の実装電子部品データ354のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。実装電子部品データ354は、プリント基板140に実装される対象となり得る電子部品150の種類毎にその属性情報等を保持するテーブルであり、例えば、電子部品種類、電子部品サイズXとYとh、および重量などの各項目を有する。なお、実装電子部品データ354のデータ構成は、実装条件設定装置200の実装電子部品データ231のデータ構成と同様である。
電子部品種類の項目は、実装の対象となり得る電子部品150の種類を識別可能な型番や電子部品名等の情報を保持するものであり、上述の図5に示したプリント基板データ353における電子部品種類の項目と同内容である。電子部品サイズXとYとhの項目は、対象の電子部品150のサイズの情報としてX方向の長さとY方向の長さと高さの情報(例えばmm)を保持する。重量の項目は、対象の電子部品150の重量(例えばmg)の情報を保持する。
図7は、実装順序設定装置300の実装条件データ355のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。実装条件データ355は、実装条件設定装置200の実装条件算出部210によって算出し、もしくはユーザにより設定された実装条件(初期値)、および実装順序設定装置300の実装条件候補生成部320によって算出された実装条件の候補パターンのそれぞれについて、実装対象となる各電子部品150についての実装条件の情報を保持するテーブルであり、例えば、条件候補、電子部品種類、および条件項目としての速度率や静止時間などの各項目を有する。なお、実装条件データ355のデータ構成は、実装条件設定装置200の実装条件データ233のデータ構成と同様である。
条件候補の項目は、実装条件の候補パターンを識別するIDや名称、シーケンス番号などの情報を保持する。この値には、実装条件設定装置200の実装条件算出部210によって算出し、もしくはユーザにより設定された実装条件のパターン(図中の“初期値”)の他に、実装順序設定装置300の実装条件候補生成部320によって算出された実装条件の候補パターン(図中の“候補1”、“候補2”、…)が含まれる。電子部品種類の項目は、対象の実装条件のパターンにおける実装対象の電子部品150の種類を識別可能な型番や電子部品名等の情報を保持するものであり、上述の図6に示した実装電子部品データ354の電子部品種類の項目と同内容である。
条件項目の速度率や静止時間などの項目は、対象の実装条件のパターンにおける対象の電子部品150について、実装条件の種類毎にその値をそれぞれ保持する。この値には、実装条件設定装置200の実装条件算出部210によって算出し、もしくはユーザにより設定された値(初期値)の他に、実装順序設定装置300の実装条件候補生成部320によって算出された候補値が含まれる。
図8は、実装順序設定装置300の実装配置データ356のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。実装配置データ356は、電子部品パレット110が搭載する電子部品フィーダ111により供給される電子部品150の種類の情報を保持するテーブルであり、例えば、パレット、フィーダ位置、および電子部品種類などの各項目を有する。
パレットの項目は、対象の電子部品パレット110を識別可能なIDやシーケンス番号等の情報を保持する。フィーダ位置の項目は、対象の電子部品パレット110における電子部品フィーダ111の位置を特定可能な情報を保持する。例えば、電子部品パレット110の端からの位置に応じた昇順の番号により設定する。電子部品種類の項目は、対象の電子部品フィーダ111により供給される電子部品150の種類を識別可能な型番や電子部品名等の情報を保持するものであり、上述の図6に示した実装電子部品データ354の電子部品種類の項目と同内容である。
図9は、実装順序設定装置300の不確実項目データ357のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。不確実項目データ357は、実装条件設定装置200の実装条件算出部210によって算出し、もしくはユーザにより設定され、実装条件データ355に保持されている実装条件の初期値のうち、不確実な状態のものに係る情報を保持するテーブルである。特に、過去に実装実績がなく適切な実装条件の値が不明である新規の電子部品150等に対してユーザによって設定された実装条件の初期値などが対象となる。この不確実項目データ357は、例えば、電子部品種類、条件項目、上限値、下限値、および候補数などの各項目を有する。
電子部品種類の項目は、実装条件の初期値が不確実な条件項目を含む電子部品150の種類を識別可能な型番や電子部品名等の情報を保持するものであり、上述の図6に示した実装電子部品データ354の電子部品種類の項目と同内容である。条件項目の項目は、対象の電子部品150の実装条件のうち、初期値が不確実な状態である条件の情報を保持するものである。この値は、上述の図7に示した実装条件データ355の条件項目に含まれる各項目(速度率、静止時間等)のいずれかとなる。
上限値および下限値の各項目は、それぞれ、対象の電子部品150における対象の(不確実な)実装条件の値が取り得ると想定される範囲の上限および下限の値を保持する。ここでは、対象の実装条件の初期値は当該範囲内において設定されているが、当該範囲内の他の値が実装条件としてより適切である可能性があるという点で不確実であることを示している。候補数の項目は、対象の電子部品150の対象の(不確実な)実装条件の値が取り得る範囲から他の候補値を選択する際の数の情報を保持する。実装順序設定装置300の実装条件候補生成部320は、上述の上限値、下限値の項目で特定される範囲から、後述するような所定の方法によって実装条件の候補値を候補数の項目で指定された値の数だけ選択する。
図10は、実装順序設定装置300の実装順序データ358のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。実装順序データ358は、上述の図7に示した実装条件データ355に登録されている実装条件の各パターンに対応して、プリント基板140の種類毎に、実装される各電子部品150についての実装方法と実装順序の情報を保持するテーブルであり、例えば、基板種類、条件候補、装置座標XとY、角度、フィーダ位置、装着ヘッド番号、および装着順序などの各項目を有する。
基板種類の項目は、実装対象のプリント基板140の種類を識別可能なID等の情報を保持するものであり、上述の図5に示したプリント基板データ353の基板種類の項目と同内容である。条件候補の項目は、対象のプリント基板140に電子部品150を実装する際の実装条件の値の組み合わせのパターンを識別するIDや名称、シーケンス番号などの情報を保持するものであり、上述の図7に示した実装条件データ355の条件候補の項目と同内容である。
装置座標XとYおよび角度の各項目は、それぞれ、対象のプリント基板140上に実装される電子部品150の、プリント基板140上での実装位置のX座標とY座標の情報、および実装時の角度の情報を保持するものであり、上述の図5に示したプリント基板データ353の装置座標XとYおよび角度の項目と同内容である。
フィーダ位置の項目は、対象の電子部品150を供給する電子部品フィーダ111の電子部品パレット110上での位置の情報を保持するものであり、上述の図8に示した実装配置データ356のフィーダ位置の項目と同内容である。装着ヘッド番号の項目は、対象の電子部品150を電子部品フィーダ111から取り出してプリント基板140上に実装する電子部品装着ヘッド120を識別する番号の情報を保持する。装着順序の項目は、対象の電子部品150をプリント基板140上に装着する際の順序の情報を保持する。これらの情報に基づいて、電子部品実装時の電子部品装着ヘッド120の移動経路や実装手順を表すことができる。
なお、上述の図3〜図10で示した各テーブルのデータ構成(項目)はあくまで一例であり、同様のデータを保持・管理することが可能な構成であれば、他のテーブル構成やデータ構成であってもよい。
[実装条件候補生成処理および実装順序算出処理]
上述の図2に示した処理フローでは、ステップS04やS09で、電子部品実装装置100による電子部品実装と並行して、実装順序設定装置300の実装条件候補生成部320により、実装条件が不確実な状態の電子部品150について複数の候補値を算出し、各電子部品150の候補値毎の組み合わせにもとづいて実装条件の候補パターンを算出する処理を行う。さらに、算出した候補パターン毎に、ステップS05やS10でこれらの実装条件を所与のものとして実装順序算出部310により実装順序をそれぞれ算出して実装順序データ358に記録しておく。以下では、当該処理の詳細な内容について説明する。
予め、実装条件設定装置200の実装条件算出部210により算出された各電子部品150の実装条件の初期値について、不確実な状態であるものの指定を、入出力部340が提供するユーザインタフェースを介してユーザから受け付ける。図11は、ユーザから実装条件の初期値が不確実なものの指定を受け付ける際の画面例について概要を示した図である。図11の画面では、例えば、上述の図9に示した不確実項目データ357の内容を取得してリスト表示するとともに、さらに画面での操作を介して不確実項目データ357のエントリを追加・削除したり、修正したりすることができることを示している。なお、当該画面を提供する機能を実装条件設定装置200の入出力部220が有し、例えば、各電子部品150の実装条件の初期値をユーザが設定する際に合わせて当該初期値が不確実か否かを指定可能なようにしてもよい。
図12は、実装順序設定装置300による実装条件候補生成処理(図2のステップS04、S09)および実装条件の各候補パターンについての実装順序算出処理(図2のステップS05、S10)の流れの例について概要を示したフローチャートである。まず、実装条件の初期値が不確実な項目の全てについて、それぞれ候補値を生成する(S21)。
具体的には、実装条件の初期値が不確実であるとして不確実項目データ357に登録されている全てのエントリについて、上限値と下限値の項目で特定される値の範囲から、以下の数1式に従って候補数の数だけ候補値を算出する。
図13は、上記の数1式によって実装条件の初期値が不確実な項目について候補値を生成する例について概要を示した図である。ここでは、“電子部品タイプ1”の速度率および“電子部品タイプ3”の静止時間の項目について、それぞれの値の範囲から候補数=5個の候補値を生成した状態を示している。
なお、上記の数1式では、上限値と下限値により特定される値の範囲から、候補数の数に応じた均等な間隔で候補値を取得しているが、候補値の生成手法はこれに限られない。例えば、同じ候補数であっても、実装条件の初期値(上限値と下限値の間に設定される)の周辺では間隔を狭くし(候補値を多く生成し)、初期値から離れたところでは間隔を広くする(候補値を少なく生成する)ように、候補値の間隔に重み付け等を行ってもよい。
図12に戻り、ステップS21で実装条件の初期値が不確実な項目の全てについてそれぞれ候補値を生成すると、各電子部品150について候補値毎に総当りで組み合わせた候補パターンを生成する(S22)。さらに、生成された候補パターンにおいて、実装条件の候補値が設定されていない部分について、当該項目についての初期値と同等の値を設定する(S23)。
図14は、実装条件の候補パターンを生成する例について概要を示した図である。上段の図では、図13の例において生成した“電子部品タイプ1”の速度率、および“電子部品タイプ3”の静止時間の項目についての候補値をそれぞれ示している。また、これらの候補値について総当りで組み合わせた候補パターンを実装条件データ355に登録した状態を中段の図に示している。この場合、それぞれの項目の候補値がいずれも5個であることから、総当りでは5×5=25個の候補パターン(“候補1”〜“候補25”)が生成される。なお、この時点では、各電子部品種類において候補値が算出されている部分にしか各条件項目の値(候補値)は設定されていない。
下段の図では、中段の図の各候補パターンに対して、実装条件の候補値が設定されていない部分(例えば、“電子部品タイプ1”の静止時間など)についてそれぞれ初期値と同等の値を設定した状態を示している。ここでは、実装条件データ355に既にエントリが登録されている電子部品種類、すなわち実装条件の候補値を有する電子部品種類(“電子部品タイプ1”および“電子部品タイプ2”)に加えて、対象のプリント基板140に実装する必要がある他の電子部品種類で、実装条件の初期値が不確実でないもの(例えば、“電子部品タイプ2”)についても初期値と同等の値を設定してエントリを追加する。以上の処理により、実装条件データ355に、実装条件の候補値の組み合わせに基づく候補パターンを設定することができる。
図12に戻り、実装条件の候補パターンを設定すると、これら全ての候補パターンについて、初期値もしくは候補値を所与のものとして、実装順序算出部310により公知の計算手法等を用いて効率的な実装順序をそれぞれ算出しておく(S24)。
[実装順序選択処理]
上述の図2に示した本実施の形態における処理フローでは、ステップS06で電子部品実装装置100による電子部品実装を行なっている際に、実装エラー等により、ステップS07で実装条件設定装置200により実装条件が変更されると、ステップS08で実装順序設定装置300の実装順序選択部330により変更後の実装条件に基づいて新たな実装順序を選択して電子部品実装装置100に反映させる処理を行う。以下では、実装順序設定装置300の実装順序選択部330による新たな実装順序の選択処理の詳細な内容について説明する。
図15は、実装順序設定装置300による実装順序選択処理(図2のステップS08)の流れの例について概要を示したフローチャートである。まず、実装条件設定装置200により変更された実装条件の情報として、例えば、対象の電子部品150の種類と、変更対象の実装条件の項目およびその変更後の値の情報を取得する(S31)。その後、変更対象ではない他の電子部品150や実装条件の項目も含む、変更後の各電子部品150の実装条件の全体に対して、実装条件データ355に予め登録されている実装条件の候補パターンの全てについて、例えば、以下の数2式によって乖離度(もしくは類似度)をそれぞれ算出する(S32)。
図16は、上記の数2式によって変更後の各電子部品150の実装条件と実装条件の各候補パターンとの乖離度を算出する例について概要を示した図である。上段の左側の図では、実装条件設定装置200により変更された実装条件を反映させた変更後の実装条件の例を示しており、右側の図では、予め算出されて実装条件データ355に登録されている実装条件のパターン(図の例では“候補1”)の内容の例を示している。図16の例に示される各実装条件の値に基づいて上記の数2式により計算された乖離度は、図示するように0.125となる。なお、乖離度(もしくは類似度)の算出手法は上記の式に限られず、他の手法を適宜採用することができる。
このような乖離度の計算を、実装条件データ355に登録されている実装条件の候補パターン全てに対して行い、乖離度が最小の候補パターン(最も類似している候補パターン)を特定する。なお、実装条件の全ての候補パターンについて乖離度を算出して比較する対象とせずに、例えば、変更後の実装条件の各項目の値から所定の割合以上乖離した値を候補値として有する候補パターンについては計算対象および比較対象から除外するなどして処理を簡略化してもよい。
その後、特定した実装条件の候補パターンに対応する実装順序の情報を実装順序データ358から取得し(S33)、これを電子部品実装装置100に送信して動的に反映させる(S34)。以上の処理により、変更後の実装条件に対して最適とは限らないものの、より効率的な実装順序を短時間で選択・決定して、電子部品実装装置100での電子部品実装に動的に反映させることが可能となり、電子部品実装の生産性を大きく向上させることができる。
以上に説明したように、本発明の実施の形態1である実装順序設定システムによれば、新規の電子部品150など、適切な実装条件が不明な電子部品について、実装条件の初期値を設定した上で、これを所与として効率的な実装順序を計算して設定するとともに、予め、初期値以外の他の複数の候補値を算出しておき、これらの候補値の組み合わせに基づく各候補パターンについても、それぞれ効率的な実装順序の候補を計算しておく。
これにより、電子部品実装中に電子部品150の実装条件を調整・変更する場合、調整後の各電子部品の実装条件との乖離が最も小さい(類似する)実装条件の候補パターンを選択して、これに対応する実装順序に動的に切り替えることができ、電子部品実装を継続しつつ、短時間でより効率的な実装順序に切り替えることが可能となる。
また、新規の電子部品など、適切な実装条件が不明な電子部品を含む複数の電子部品を予め計算した実装順序に従ってプリント基板に実装する際に、当該電子部品についての実装条件を調整する場合、電子部品実装を継続しつつ、効率的な実装順序に短時間で切り替えることが可能となる。
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2である、図18記載の電子部品実装装置を含むシステムについて説明する。電子部品実装システム1aは、複数の電子部品実装装置(100a〜c)を有し、実装条件設定装置200と、実装順序設定装置300とから構成される。本実施例では、電子部品実装装置を3台としたが、3台に限定する必要はなく、適宜必要な台数を用いてもよい。特に説明のない部分については、実施の形態1において説明したのと同様の処理を行うものとする。
処理の流れは、図19を用いて説明する。実装条件設定装置200は、実装条件をユーザによる入力あるいは過去の実績に応じた電子部品(指定された電子部品)の第一の実装条件である実装条件(初期値)を設定する(S41)。
次に、実装順序設定装置300は、各電子部品実装装置(100a〜c)のテープフィーダやトレイ型の電子部品供給部に搭載された電子部品配置を算出し(S42)、実装順序を算出する(S43)。ステップS43にて算出された第一の実装順序(初期値)は実装開始前に、電子部品実装装置(100a〜c)に送信される。
次に、実装条件候補算出ステップでは、S41において実装条件が不確定とされた所定の電子部品の実装条件候補(第二の実装条件)を算出し(S44)、さらにその結果を用いて第二の実装順序(候補a)を算出する(S45)。第二の実装条件は第一の実装条件とは異なる実装条件であることは明らかである。ここで、所定の電子部品はユーザによって指定されてもよい。また、ユーザに限らず、実装中に実装装置によって指定されてもよい。この第二の実装順序は、実装開始前に送信してもよいし、実装開始後に送信してもよい。実装を継続して行うために、指定された電子部品の実装が行われる前に電子部品実装装置(100a〜c)に送信されるのが望ましい。
なお、電子部品実装装置(100a〜c)では、プリント基板A1とA2を実装するものとする。すなわち、ステップS46aで、電子部品実装装置100aが初期値の実装順序を用いて基板A1を実装し、次にステップS46bで電子部品実装装置100bが初期値の実装順序を用いて基板A1を実装するのと並行して、ステップS47aで、電子部品実装装置100aが初期値の実装順序を用いて基板A2を実装することを示す。すなわち、電子部品実装装置100a〜cがどの基板をどの実装順序でいつ実装しているかを示すものである。
基板A1の実装処理について説明する。S46aでは、電子部品実装装置100aがS43で特定した初期値の実装順序を用いて電子部品の実装を行う。次に基板A1は電子部品実装装置100bに搬送され、S46bに示すように、初期値の実装順序を用いて電子部品の実装を行う。
ここで、実装中にエラーや保持した電子部品の状態が異常が検出される等が発生した場合(S48)について述べる。実装のエラー等に対して、実装条件の変更が必要となる。そこで、ステップS45によって取得した、変更された第二の実装条件に対応する実装順序(候補a)を選択し、選択された実装順序(候補a)を用いることで、電子部品の保持状態が安定した状態で、電子部品実装装置100bは実装を継続することができる(S46b’)。
ここで、実装中のエラーとは、例えば、電子部品の吸着が適切に行われず、電子部品を端部や角で保持した場合に、吸着時の負圧が通常と異なる場合等である。保持した電子部品の状態が異常である場合とは、例えば、保持した電子部品の移動に対して速度や加速度が適切ではない場合に保持された電子部品と保持手段の位置関係が変わるような状態を指す。すなわち、電子部品が標準の位置からずれることとなり、認識カメラ(図示せず)あるいは電子部品を認識した際に適切な実装条件ではないと特定される場合のことである。また、電子部品の保持から実装までが通常とは異なる状態であることを示す。
次に、S46b’で実装された基板A1は、電子部品実装装置100cに搬送される。搬送された基板A1は電子部品実装装置100cによって実装される。このとき、ステップS48により、実装順序として第二の実装条件を用いることが分かっているので、第二の実装条件に対応する実装順序(候補a)を選択し、実装を行う。
このように、予め変更が予想される実装条件に対応する実装順序(候補)を用意しておくことによって、実装中に実装条件を変更する場合であっても実装順序を随時変更・選択することが可能となる。
ここで、S48によって実装条件の変更が実装順序設定装置300に送信されることによって実装条件候補の算出要求を受け、次の実装条件候補を算出する(S49)。さらに、算出された実装条件候補を用いて、実装順序候補を算出し(S50)、算出が終わり次第、算出された実装順序(候補b)は電子部品実装装置100a〜cに送信される。これによって、次に実装中にエラー等が発生した場合の実装条件、実装順序の変更に事前に準備することが可能となる。
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3の電子部品装着システムについて、図20、21を用いて処理の流れを説明する。特に説明のない部分については、実施の形態1において説明したのと同様の処理を行うものとする。
図20に示す実装順序データ358aには、例えば、図7に示した実装条件データ355のデータ構成をベースとして、電子部品実装装置100aが実装する電子部品それぞれの実装条件と、実装条件(初期値)に対応する第一の実装順序が示されている。実装は、電子部品実装装置100aに基板A1が流れ、1番目にタイプaの電子部品を実装し、最後に300番目のタイプgの電子部品を実装して、次に電子部品実装装置100bに流す。実装条件は、速度率、静止時間、加速度率、保持時における保持手段の高さ、装着時における保持手段の高さ等を有する。実装順序データ358b、cについても同様に、電子部品実装装置100b、cがそれぞれ実装する電子部品の実装条件と実装順序が示されているが、実装条件の項目については一部のみ示し他を省略した。
実装順序データ358bに示される、第一の実装順序(初期値)の実装条件とは異なる実装条件を用いて特定された第二の実装順序(候補a’、b’)について説明する。これらの実装順序で共通しているのは1番目に実装するのがタイプbの電子部品であり、270番目に実装するのがタイプdの電子部品であり、実装の最初と最後の電子部品が同一なことである。
この実装順序データ358bは、実装順序100番から105番をひとつの実装サイクルで実装する場合を想定した場合の例であり、100番から105番はタイプa、b、c、eの電子部品を含む実装順序である。すなわち、所定の電子部品タイプcを含む100番から105番の実装において、タイプcの電子部品の実装条件を考慮して設定された実装順序である。ここで、所定の電子部品タイプcの特定方法は、ユーザによる入力や選択あるいは、実装中の装置が指定したり、電子部品実装システムの内部または外部機器に保存された電子部品ライブラリから受信し、実装条件が変更される可能性がある所定の電子部品であると指定してもよい。
次に候補c’と候補b’の違いを説明する。それぞれ電子部品タイプcが異なる実装条件にて特定された実装順序である。候補c’は1番目にタイプdの電子部品を実装し、最後にタイプeの電子部品を実装する。すなわち、候補c’は候補b’と同じ実装条件を用いて、電子部品実装装置100bで実装する1番目から270番目の電子部品全ての実装順序を考慮したものとなる。
ここで、電子部品タイプcを実装条件が確定していない所定の電子部品として指定した場合について説明する。例えば、実装条件(初期値)を用いた実装において、実装中の電子部品の状態に異常が検出された場合に、実装順序を切り換える。実装の途中であるため、実装対象の複数の電子部品のうち一部が既に実装済みであることから、実装済みのものと未実装のものの特定が必要となる。すなわち、実装するすべての電子部品に対して特定された実装順序では、実装中に切り換えができない場合がある。なお、所定の電子部品はライブラリやユーザによって指定されるものであってもよい。
[実装順序の切り替え1]
本実施の形態ではこのような場合であっても本発明を適用する方法を説明する。
図21において、電子部品タイプcを含む実装サイクル(電子部品装着ヘッド120が複数の電子部品150を保持し、これらをプリント基板140上に実装する工程)に対して、実装順序を変更する際の候補(候補a’、b’、c’)をステップS54、S55で作成する。このとき、実装条件は初期値に近い部分や、予想される実装条件に近い値に対して、多くの実装条件の候補を特定するようにしてもよい。また、図21の例では、ステップS54,S55は実装開始前に事前に行うものとしているが、電子部品タイプcの実装が開始される前であればいつ実装順序の候補を特定してもよく、また、複数の候補を特定していてもよい。
ここで、電子部品タイプcを含むサイクルの実装順序を特定するための計算にかかるコスト(時間)は、電子部品実装装置100bが実装する全ての電子部品に対して実装順序を特定するものと比べて、非常に少ない。従って、電子部品実装装置100bでの実装が開始される前には実装順序(初期値、候補c’)の計算を優先し、実装順序(候補a’、b’)は実装開始後に特定してもよい。
ステップS56bにて基板A1に対して、図20の実装順序データ358bにおける実装順序(初期値)を用いた実装中に、例えば、実装順序が50番目である電子部品タイプcを実装中に、当該電子部品タイプcの状態が異常であると検出された場合、あるいは、実装にエラー等が発生した場合には、以降の電子部品タイプcの実装を含むサイクル(例えば100番目から105番目に実装するグループ)の実装順序を他の実装順序の候補に切り換える。異常であると検出された場合やエラー等が発生した電子部品は実装条件(候補a’、b’、c’)等を用いて実装してもよい。また、一度保持した部品を破棄または供給部に戻し、異常等が起こったときに用いる所定の実装条件を設定し、再度実装してもよい。
具体的には、50番目の電子部品タイプcを含むサイクルの実装に用いていた実装順序(初期値)を、104番の電子部品タイプcを含むサイクルの実装の際に、実装条件(初期値)の次に異常が起こりにくいと特定された実装条件(例えば、候補a’)を用いて算出された実装順序(候補a’)に切り換えて実装を継続する。50番目の電子部品タイプcを含むサイクルで検出された異常等の情報を用いて、104番目の電子部品タイプcを実装するサイクルでは、異なる実装条件(例えば、候補a’)で電子部品タイプcを搬送するため、異常やエラー等の状態となることを未然に防ぎ、実装を止めずに効率のよい実装順序を用いた実装が可能となる。
[実装順序の切り替え2]
実装順序(候補a’)を用いた実装(ステップS56b’)の途中で再度指定された電子部品タイプcの状態に異常が検出された場合や、実装エラー等が発生した場合について説明する。
現在の実装を継続している実装順序(候補a’)を実装条件(候補a’)よりもさらに異常が発生しにくいと特定された実装条件(候補b’)に切り換える(S56b’’)。このように、実装中の電子部品の状態として異常が繰り返し検出される場合であっても、複数の候補を用意することで、実装を止めずに適切な実装順序を用いて実装を継続することが可能となる。
このように、実装サイクル内の実装順序を随時切り替える手段を有することによって、実装中の異常の検出やエラーに対して、実装順序を適宜切り換えることが可能となる。また、変更された実装順序を用いて、電子部品実装装置100bで実装する全ての電子部品の実装順序を特定することによって、実装中の電子部品の状態の異常を検出した場合や、エラーに対して、次に実装する基板からより効率のよい実装順序に切り換えることが可能となる。
[実装順序の切り替え3]
基板A1に対しては、実装順序を初期値から候補a’に変更し、さらに候補b’へ変更する手段を説明した。次に、電子部品実装装置100bにおいて基板A1の実装が終了し、次に生産する基板A2が搬送されてきた場合について説明する。
基板A2が搬送されてきたときには、電子部品実装装置100a〜cは、ステップS56b’’にて実装が継続されたことによって実装条件(候補b’)であれば実装を継続する情報を持っている。この実装条件(候補b’)に関して、基板A1の実装中の実装順序の特定方法について説明する。
上記のステップS55では、実装順序(候補a’、b’、c’)が電子部品実装装置100a〜cに送信されている。この段階では、まだ実装順序(候補d’)は特定されず、送信もされていない。次に、基板A1の実装が開始され、ステップS58にて一度目の異常を検出した場合には、基板A1に対しては、実装順序(候補b’)が残っており、基板A2に対しては、実装順序(候補c’)が残っているため、次の実装順序候補を特定しなくてもよい。
しかし、次の異常の検出(S58’)によって、実装順序(候補b’)を用いることとなり、基板A1に対する次の実装順序候補がなくなる。また、基板A2に対する次の実装順序候補がなくなるため、実装条件(候補b’)を用いた実装順序(候補d’)の特定を開始する。すなわち、実装順序(候補b’)を用いた電子部品の実装と並行して、基板A2の実装順序(d’)を特定する。この間基板A2は電子部品実装装置100aでの実装が行われており、電子部品実装装置100aでの実装(S57a)が終了し次第、電子部品実装装置100bに基板A2が搬送される。
ステップS56b’’にて、電子部品実装装置100bでの基板A1の実装が終了したため、実装条件(候補b’)を用いて指定された電子部品タイプcの実装には異常が検出されないことが分かる。
電子部品実装装置100bに基板A2が搬送され、実装する際には(S57b)、実装順序(候補b’)あるいは実装順序(候補d’)であれば実装可能である。ここで、ステップS57bで利用できる実装順序のうち実装順序(候補d’)を用いることで、より効率のよい実装を行うことが可能となる。また、実装条件はステップS56b’,S56b’’にて電子部品タイプcの状態に異常が検出されないことが分かっているため、安定かつ効率のよい実装となる。
異常が発生したタイミング(ステップS58)で、実装順序(候補d’)の特定を開始してもよく、実装の状態と計算量に合わせて、適宜次の実装条件と順序を特定してもよい。また、基板を複数枚生産することによって、実装条件のうち特に速度率と加速度率の値を大きくしてもよい。その場合に、電子部品の状態に異常が発生するようであれば、本実施の形態のように、実装サイクル内の順序を切り換え、さらに、次の基板で電子部品の状態に異常が検出されない実装順序を用いて実装をしてもよい。電子部品の状態に異常が検出されないとは、例えば、装着時に装着位置にばらつきが出るような保持状態や、保持された電子部品の姿勢が予定された保持状態とは異なる場合や、それらの兆候が表れないような実装状態である。すなわち、基板の量産において、安定した実装状態で判断できる実装であればよい。
このような実施の形態における実装例によって、立ち上げ時には異常が検出されにくいように徐々に実装条件(特に速度率と加速度率、静止時間)を遅くしていく設定も可能となり、また、量産時には、徐々に実装条件を早くしていく設定が可能となる。
本実施の形態において、実装サイクル内の実装順序切り換え(上記の[実装順序の切り替え1]、および[実装順序の切り替え2])と、電子部品実装装置100bで実装する全ての電子部品の実装順序の切り替え(上記の[実装順序の切り替え3])は、必ずしも一緒に行う必要はなく、それぞれ別に行っても効率のよい実装順序の切り替えを実現することができる。
また、ステップS58、S58’では実装条件の候補を2つで説明しているが、2つに限定されることはなく複数個用意してもよい。また、指定された電子部品を保持手段が保持した状態で、認識カメラ(図示せず)の周辺で複数の実装条件で動作、電子部品の姿勢を認識し、仮の実装条件を特定し、特定された値を中心として複数の実装条件の候補を特定してもよい。また、ステップS58にて、例えば、実装条件のうち速度率が20であれば実装できると判定された場合には、切り換える実装順序のうち、判定された実装条件(速度率:20)に近い実装条件(候補b’(速度率:15))から特定された実装順序(候補b’)を最初から選択してもよい。
ここで、電子部品タイプcについて、必ずしも実装開始前に所定の電子部品であると特定する必要はなく、実装中に実装条件の変更の必要がある場合は所定の電子部品とすることも可能である。上記の[実装順序の切り換え1]および[実装順序の切り替え2]のように、実装中にサイクル内の実装順序を変更する場合であれば、本発明を利用可能である。また、上記の[実装順序の切り替え3]であれば、基板A1で第一の実装順序による実装で異常の兆候を検出した際には、基板A2から第一と異なる第二の実装順序による実装を行うことができる。上記の変形例であっても、効率のよい実装順序の切り替えによって実装を中断することなく、継続した効率のよい実装を実現することが可能となる。
本発明を実現する各実施例にて説明した方法は、コンピュータを動作させるプログラムおよび電子部品実装装置100と実装順序を特定する演算装置(実装順序設定装置300)とを有する電子部品実装システム1であっても実現可能であり、本発明が実現される構成であれば装置構成の一部が変更されていてもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、本発明で、電子部品または部品と称するものは、一般的に電子部品と呼ぶもの以外も含み、電子部品実装装置によってプリント基板等に装着可能なものを含む。例えば、抵抗やコンデンサ、コイル等、スイッチやスペーサ、アンテナ用の治具等の機械部品も含む。また、プリント基板は樹脂基板やガラス基板、半導体基板等も含み、電子部品実装装置で扱えるものであればよい。
また、本願の実施例の多くで吸着ノズルを用いて説明したが、保持手段は吸着ノズルに限らず、例えば粘着式や樹脂製のノズル等、チャックを用いた機械式等の保持手段であっても、部品を保持あるいは装着することが可能な電子部品を保持するものであれば保持手段として利用可能である。