以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装装置、実装ヘッドの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図1における上下方向)が示される。図2、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図2における上下方向)が示される。図6では、Z方向の軸(Z軸)を回転軸とする回転の方向であるθ方向が示される。
まず図1、図2を参照して、部品実装装置1の構成を説明する。部品実装装置1は、部品供給部から供給された部品を基板に実装する部品実装作業を実行する機能を有する。本実施の形態では、複数の部品を複数のノズルで保持して基板に実装する形態となっている。図1において、基台1aの中央には、基板搬送機構2がX方向に配置されている。基板搬送機構2は、上流側から搬送された基板3を、実装作業位置に搬入して位置決め保持する。また、基板搬送機構2は、部品実装作業が完了した基板3を下流側に搬出する。
基板搬送機構2の両側方には、部品供給部4が配置されている。それぞれの部品供給部4には、複数のテープフィーダ5が並列に装着されている。テープフィーダ5は、部品を格納するポケットが形成された部品テープを部品供給部4の外側から基板搬送機構2に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、以下に説明する実装ヘッドによって部品が取り出される部品供給位置に部品を供給する。
図1において、基台1a上面においてX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸テーブル6がY方向に沿って配置されている。Y軸テーブル6には、同様にリニア駆動機構を備えたビーム7が、Y方向に移動自在に結合されている。ビーム7はX方向に沿って配置されている。ビーム7には、プレート7aがX方向に移動自在に装着されている。プレート7aには、実装ヘッド8が着脱自在に装着されている。図2において、実装ヘッド8は、部品を吸着保持して昇降可能なノズル昇降機構を有する複数のノズルユニット8aを備える。ノズルユニット8aのそれぞれの下端部には、部品を吸着保持するノズル8bが装着されている。
図1において、Y軸テーブル6、ビーム7を駆動することにより、実装ヘッド8はX方向、Y方向に移動させる実装ヘッド移動機構9である。実装ヘッド移動機構9により実装ヘッド8は、部品供給部4に配置されたテープフィーダ5の部品供給位置から部品をノズル8bによって吸着して取り出して、基板搬送機構2に位置決めされた基板3の実装位置に装着する実装ターンを実行する。
部品供給部4と基板搬送機構2との間には、部品認識カメラ10が配置されている。部品供給部4から部品を取り出した実装ヘッド8が部品認識カメラ10の上方を移動する際に、部品認識カメラ10は実装ヘッド8に保持された部品を撮像して部品の保持姿勢を認識する。実装ヘッド8が取り付けられたプレート7aにはヘッドカメラ11が取り付けられている。ヘッドカメラ11は、プレート7aに装着された実装ヘッド8と一体的に移動する。
実装ヘッド8が移動することにより、ヘッドカメラ11は基板搬送機構2に位置決めされた基板3の上方に移動し、基板3に設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板3の位置を認識する。実装ヘッド8による基板3への部品実装動作においては、部品認識カメラ10による部品Dの認識結果と、ヘッドカメラ11による部品Dの認識結果、基板位置の認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
図1において、部品実装装置1の前面で作業者が作業する位置には、作業者が操作するタッチパネル12が設置されている。タッチパネル12は、その表示部に各種情報を表示し、また表示部に表示される操作ボタンなどを使って作業者がデータ入力や部品実装装置1の操作を行う。
次に図2、図3を参照して実装ヘッド8の構成を説明する。実装ヘッド8は、複数(ここでは16個)のノズルユニット8aを備えている。ノズルユニット8aは、軸廻りの回転および昇降が自在な複数のノズル軸20を、プレート7aに装着される背面板21の下端部に結合された軸受けブロック22に垂直姿勢で軸支させた構成となっている。各ノズル軸20の下端部にはノズル装着部20aが設けられている。ノズル装着部20aには、部品を吸着保持するノズル8bが着脱自在に装着されている。
図2(b)は各ノズル軸20のノズル装着部20aにノズル8bが装着された状態における軸受けブロック22の下面を示している。これらのノズル8bは、所定のノズル配列ピッチp(例えば、部品供給部4におけるテープフィーダ5の配列に対応するピッチ)でX方向に列状に配列されてノズル列を形成している。ここでは、1列に8個のノズル8bが配列されたノズル列が2列(ノズル列L1,L2)形成されている。さらにこれらの複数のノズル軸20は、2つのノズル列L1,L2のそれぞれの中央点を結ぶ区分線CLによって、2つのノズル群(ノズル群Aおよびノズル群B)に区分されている。
次に図2(a)を参照して、各ノズルユニット8aの構造を説明する。ノズル軸20の上端部は、回転接手23を介して昇降軸部材24に結合されている。昇降軸部材24は、背面板21に固定されたZ軸リニアモータ25によって昇降駆動される。Z軸リニアモータ25を駆動することによりノズル軸20が昇降し、これによりノズル8bが部品のピックアップや実装動作のための上下動を行う。回転接手23は、ノズル軸20と昇降軸部材24とをベアリングを介して結合しており、ノズル軸20の軸廻りの回転が許容されるようになっている。これにより、部品を保持したノズル8bをノズル軸廻りに回転させることが可能となり、部品のノズル軸廻りの回転位置合わせ(補正)を行うことができる。
次に図3を参照して、ノズル軸20の軸支持構造および回転駆動形態について説明する。図3(b)は、図3(a)に点線の楕円aで示す軸受けブロック22付近の拡大断面図である。軸受けブロック22には垂直に貫通して設けられた軸孔22aが設けられている。ノズル軸20は、軸孔22a内を挿通するスリーブ部材30を介して、軸受けブロック22に保持されている。ノズル軸20の外面とスリーブ部材30の内面は、スプライン溝によって嵌合する関係にある。これにより、ノズル軸20はスリーブ部材30に対して上下のスライドが許容されるとともに、この状態でスリーブ部材30からノズル軸20への回転伝達が行えるようになっている。
図3(b)において、軸孔22aの上下両端部にはベアリング31が嵌着されており、ベアリング31はスリーブ部材30によって上下位置が保持されながらスリーブ部材30を軸支する。スリーブ部材30が軸受けブロック22から上方に延出した部分には、軸受けブロック22の上方に位置して被駆動プーリ26が装着されている。被駆動プーリ26は、以下に説明するθ軸モータ27の回転を伝動ベルト28を介してスリーブ部材30に伝達する。これにより、ノズル軸20はスリーブ部材30とともに回転する。
図2(a)において軸受けブロック22の上面には、ノズル列L1,L2の列方向を両側に延長した位置に(図4も参照)、θ軸モータ27が出力軸を下向きにした垂直姿勢でそれぞれ配置されている。2個のθ軸モータ27の出力軸に装着された駆動プーリ27aには、それぞれ無端の伝動ベルト28が調帯されている。伝動ベルト28は、ノズル群A、ノズル群Bのそれぞれに対応して装着されている。伝動ベルト28は、ノズル群A、ノズル群Bに属する複数のノズル軸20に装着された被駆動プーリ26に調帯されて、θ軸モータ27の回転を各被駆動プーリ26に伝達する。すなわち無端の伝動ベルト28は、複数のノズル8bが装着される複数のノズル軸20に掛け廻された構成となっている。
次に図4を参照して、実装ヘッド8におけるベルト調帯形態について説明する。図4(a)は、軸受けブロック22の上面において、図2(b)に示すノズル列L1,L2に対応して、各ノズル軸20に装着された被駆動プーリ26およびアイドラ32の配列を示している。図4(b)は、図4(a)に点線の円bで示す付近の伝動ベルト28の拡大断面図である。アイドラ32は、伝動ベルト28を所望の形態で調帯するためのベルト掛け廻しに用いられるものである。ここでは、2列のノズル列L1,L2の中間に、複数のアイドラ32が配置されている。
なお、図4(a)においては、複数の被駆動プーリ26およびアイドラ32を、符号に添字を付すことによって区別している。被駆動プーリ26は、ノズル群および配列位置と関連付けて区別する。すなわち、ノズル列L1に対応する被駆動プーリ26には、左側(ノズル群Aの側)から、被駆動プーリ26(11)~26(18)と表記し、ノズル列L2に対応する被駆動プーリ26には、左側(ノズル群Aの側)から、被駆動プーリ26(21)~26(28)と表記している。
またアイドラ32も、配列位置と関連付けて区別する。すなわち、左側から順にアイドラ32(1)~32(8)と表記する。アイドラ32(1)~32(8)の位置は、Y方向についてはいずれも2つのノズル列L1,L2の略中央に位置している。X方向については、アイドラ32(1)は左側のθ軸モータ27の駆動プーリ27aと被駆動プーリ26(11)との中間に、ノズル群Aに対応した3つのアイドラ32(2)、32(3)、32(4)は、4つの被駆動プーリ26(11)、26(12)、26(13)、26(14)において相隣接する2つの被駆動プーリ26の中間にそれぞれ位置している。
ノズル群Bに対応した3つのアイドラ32(5)、32(6)、32(7)は、4つの被駆動プーリ26(15)、26(16)、26(17)、26(18)において相隣接する2つの被駆動プーリ26の中間に、またアイドラ32(8)は、被駆動プーリ26(18)と右側のθ軸モータ27の駆動プーリ27aとの中間にそれぞれ位置している。なおこれらアイドラ32の位置については自由度があり、以下に説明するベルト掛け廻しに不都合がない範囲において、X方向、Y方向のいずれについても位置変更が可能である。
次にベルト調帯形態の詳細を説明する。なおノズル群Aの各ノズル軸20を回転駆動するための伝動ベルト28の調帯形態と、ノズル群Bの各ノズル軸20を回転駆動するための伝動ベルト28の調帯形態とは、区分線CLについて左右対称の関係にあることから、ここではノズル群Aについてのみ記述し、ノズル群Bについての記述を省略する。
まず伝動ベルト28は、駆動歯が設けられた駆動面28aを左側のθ軸モータ27の駆動プーリ27aに噛合させて、ノズル列L1において最左端に位置する被駆動プーリ26(11)に駆動面28aを噛合させて掛け廻される。次いで伝動ベルト28は、内側に位置するアイドラ32(2)まで導かれて駆動面28aの反対面をアイドラ32(2)に当接させて周回した後、被駆動プーリ26(12)、被駆動プーリ26(13)に駆動面28aを順次噛合させて掛け廻される。次いで伝動ベルト28は、内側に位置するアイドラ32(4)まで導かれて駆動面28aの反対面をアイドラ32(4)に当接させて周回した後、被駆動プーリ26(14)に駆動面28aを噛合させて掛け廻される。
さらに伝動ベルト28は、ノズル列L2の被駆動プーリ26(24)、被駆動プーリ26(23)に駆動面28aを順次噛合させて掛け廻され、次いで内側に位置するアイドラ32(3)に駆動面28aの反対面を当接させて周回した後、被駆動プーリ26(22)および被駆動プーリ26(21)に駆動面28aを順次噛合させて掛け廻される。次いでアイドラ32(1)まで導かれて駆動面28aの反対面がアイドラ32(1)を周回し、左側のθ軸モータ27の駆動プーリ27aに駆動面28aを噛合させて掛け廻される。これにより、全ての被駆動プーリ26が伝動ベルト28の駆動面28aと噛合し、左側のθ軸モータ27によって回転駆動される。
上記構成において、出力軸に駆動プーリ27aが装着されたθ軸モータ27、各ノズル軸20に装着された被駆動プーリ26、2列のノズル列L1,L2の中間に配置された複数のアイドラ32および伝動ベルト28は、複数のノズル軸20を共通のθ軸モータ27によってノズル軸廻りに回転させるθ回転駆動機構29(図2参照)を構成する。また、θ軸モータ27は、伝動ベルト28を駆動して複数のノズル軸20を一斉に回転させる駆動手段である。なお、上記は実装ヘッド8が有する複数のノズル軸20を2つのノズル群に分けて2組のθ回転駆動機構29を備えた例を示したが、ノズル群とθ回転駆動機構29はそれぞれ1つであっても、3つ以上であってもよい。
次に図5を参照して、部品実装装置1の制御系の構成について説明する。部品実装装置1は、制御部40、基板搬送機構2、テープフィーダ5、実装ヘッド8、実装ヘッド移動機構9、部品認識カメラ10、ヘッドカメラ11、タッチパネル12を備えている。制御部40は、認識処理部41、実装順決定部42、補正量算出部43、実装処理部44、実装記憶部45を備えている。実装記憶部45は記憶装置であり、実装データ記憶部46、補正量記憶部47を備えている。
実装データ記憶部46は、実装基板の機種名、基板3に装着される部品Dを特定する部品番号(部品の種類)、部品供給部4における部品Dの供給位置、実装位置(XY座標)、実装方向(回転角度)、実装順などが記憶されている。実装データ記憶部46に記憶された実装順は、実装基板の製造効率などを考慮して予め決定されている初期値である。認識処理部41は、部品認識カメラ10が撮像した複数のノズル8bが保持する部品Dの下面の撮像画像を認識処理して、ノズル8bに対する部品Dの中心の位置、回転角度などの部品Dの姿勢を認識する。認識結果は、実装ヘッド8におけるノズル8bの位置に関連付けた補正量データとして補正量記憶部47に記憶される。
ここで、図6を参照して、部品認識カメラ10による部品Dの認識動作について説明する。実装ヘッド8による部品実装動作では、図6(a)に示すように、複数のノズル8bによって部品Dを保持した実装ヘッド8が部品認識カメラ10の上方を所定方向に移動する際に(矢印c)、下側から順に複数の部品Dの下面Ddを撮像する。
図6(b)に、ノズル8bのノズル中心Cnが、撮像画像50の中心50cと一致するように実装ヘッド8を移動させて撮像した撮像画像50の一例を示す。撮像画像50には、X方向の中心線50xとY方向の中心線50yが重ねて表示されている。X方向の中心線50xとY方向の中心線50yの交点が撮像画像50の中心50cである。撮像結果は、制御部40に転送されて認識処理部41によって認識処理され、ノズル8bが保持する部品Dの姿勢が認識される。
具体的には、認識処理部41は撮像画像50を認識処理して、部品Dを吸着しているノズル8bのノズル中心Cn(撮像画像50の中心50c)からの部品Dの中心CdのX方向、Y方向、θ方向の位置を示す保持姿勢Ce(Xe,Ye,θe)を認識する。保持姿勢Ceのθ方向成分は、ノズル8bの回転基点(X方向の軸)からの角度である。
このように、部品認識カメラ10は実装ヘッド8が有する複数のノズル8bが保持する部品Dをそれぞれ撮像し、認識処理部41は各ノズル8bが保持する部品Dの保持姿勢Ceをそれぞれ認識する。すなわち、部品認識カメラ10、認識処理部41は、複数のノズル8bで保持された複数の部品Dを下方から撮像して、複数のノズル8bで保持された複数の部品Dの各々の姿勢(保持姿勢Ce)を認識する部品認識手段である。
次に図7を参照して、補正量記憶部47に記憶された補正量データの例について説明する。補正量データには、実装ヘッド8におけるノズル8bの位置を特定する位置番号51毎に、実装順52、保持ずれ量53、補正量54が含まれている。位置番号51は、図4に示す被駆動プーリ26(11)~26(18)、26(21)~26(28)に対応するノズル8b(11)~8b(18)、8b(21)~8b(28)の位置を示している。すなわち図7は、ノズル群Aの8本のノズル8b(11)~8b(14)、8b(21)~8b(24)の補正量データの例を示している。
実装順52は、実装ヘッド8の複数のノズル8bが保持する部品Dを基板3に実装する順番であり、初期的には実装データ記憶部46に記憶されている実装基板の製造に関して予め決められていた初期値が入力される。保持ずれ量53は、部品認識手段(部品認識カメラ10、認識処理部41)によって認識された各ノズル8bに保持された部品Dのノズル中心Cnからのずれ量である。すなわち、保持ずれ量53は、保持姿勢CeのX方向、Y方向、θ方向の各成分であるノズル8bのノズル中心Cnに対するX方向の保持ずれ量53x、Y方向の保持ずれ量53y、θ方向の保持ずれ量53θを含んでいる。以下、ノズル8bが保持した部品Dの保持ずれ量53を部品認識手段が認識した時を「認識時」と称する。
ここで、θ方向の保持ずれ量53θは、認識時の部品Dのθ方向のずれ量を示している。例えば、位置番号51が「11」のノズル8b(11)が保持している部品Dの認識時の姿勢はθ方向に「-4°」位置ずれしている。このθ方向の保持ずれ量53θを補正するには、ノズル8b(11)を認識時から「+4°」だけ回転させた後に基板3に装着する必要がある。補正量54は、部品Dを基板3に装着する際にノズル8bを直前の状態から回転させる回転量であり、後述する補正量算出部43によって決定される。
図5において、実装順決定部42(実装順決定手段)は、認識された部品Dの姿勢(保持姿勢Ce)に基づいて、複数の部品Dを基板3に実装する実装順52を決定する。本実施の形態では、実装順決定部42は、θ方向の保持ずれ量53θが大きい方から順に小さくなる順番(降順)で実装順52を決定している。なお、実装順52はθ方向の保持ずれ量53θが小さい方から順に大きくなる順番(降順)であってもよい。実装順決定部42は、決定した実装順52に従って補正量記憶部47に記憶される補正量データを変更(更新)する。
ここで図8を参照して、実装順決定部42がθ方向の保持ずれ量53θに基づいて、図7に示す補正量データの実装順52を変更した例を示す。図8の補正量データでは、θ方向の保持ずれ量53θが降順となるように実装順52が決定されている。すなわち、θ方向の保持ずれ量53θが「+4°」で一番大きな位置番号51が「13」のノズル8b(13)の実装順52が「1」で、θ方向の保持ずれ量53θが「+3°」で次に大きなノズル8b(23)の実装順52が「2」のように、実装順52が決定されている。
図5において、補正量算出部43(補正量算出手段)は、認識された部品Dの姿勢(保持姿勢Ce)と決定された実装順52に基づいて、複数のノズル8bを回転させる補正量54を算出する。ここで、図7、図8を参照して、補正量算出部43による補正量54の算出の具体例を説明する。図7の実装順52は、実装順決定部42によって変更される前の初期値である。まず、補正量算出部43は、実装順52が「1」のノズル8b(11)のθ方向の保持ずれ量53θである「-4°」を補正するための補正量54として「+4°」を算出する。この補正により、ノズル群Aの全てのノズル8bが認識時から「+4°」だけ回転する。
次に補正量算出部43は、実装順52が「2」のノズル8b(12)のθ方向の保持ずれ量53θである「-2°」を補正するため、ノズル8b(12)が認識時から「+2°」だけ回転するように、現在の状態「+4°」から「+2°」に戻す「-2°」を補正量54として算出する。以下同様に、補正量算出部43は、実装順52に従って全てのノズル8bの補正量54を算出する。補正量算出部43は、算出した補正量54に従って補正量記憶部47に記憶される補正量データを変更する。
図8に示す実装順52は、実装順決定部42によって降順に変更されている。この例では、補正量算出部43は、実装順52が「1」のノズル8b(13)のθ方向の保持ずれ量53θである「+4°」を補正するための補正量54として「+356°」を算出する。この補正により、ノズル群Aの全てのノズル8bが「+356°」だけ回転する。
次に補正量算出部43は、実装順52が「2」のノズル8b(23)のθ方向の保持ずれ量53θである「+3°」を補正するため、ノズル8b(23)が認識時から「-3°」だけ回転するように、現在の状態「+356°」から「+357°」にする「+1°」を補正量54として算出する。以下同様に、補正量算出部43は、実装順52に従って全てのノズル8bの補正量54を算出し、補正量記憶部47に記憶される補正量データを変更する。
図7に示す補正量54は、実装基板の生産前に決めた実装順52の初期値に基づくため、プラス方向とマイナス方向が混在している。そのため、ノズル軸20を回転させる伝動ベルト28は部品Dの姿勢を補正するために正方向と逆方向に混在して移動することになり、バックラッシュの影響で精度が低下する可能性がある。
一方、図8に示す補正量54は、認識時の部品Dのθ方向の保持ずれ量53θに基づいて実装順52を変更し、変更した順番に従って補正量54が算出されている。その結果、補正量54は、実装順52で単純減少している。すなわち、補正順決定部42(実装順決定手段)は、複数の部品Dを基板3に実装するにあたり、伝動ベルト28の駆動方向が一定となる順に複数の部品Dの実装順52を決定する。この実装順52と補正量54に従ってノズル8bが保持する部品Dを基板3に実装すると、伝動ベルト28の駆動方向は一定になる。そのため、バックラッシュの影響を受けずに高い精度で部品Dのθ方向のずれを補正することできる。
図5において、実装処理部44は、部品実装装置1の各部を制御して、実装ヘッド8の複数のノズル8bで部品供給部4より部品Dを取り出し、部品認識カメラ10でノズル8bが保持する部品Dの姿勢を認識させる。そして実装処理部44は、補正量記憶部47に記憶された補正量データに基づいて実装ヘッド移動機構9とθ軸モータ27を可動させ、保持姿勢Ceを補正して基板3に部品Dを実装させる。すなわち、部品Dを実装する際に、駆動手段(θ軸モータ27)は、補正量データに含まれる算出された補正量54に基づいて、伝動ベルト28を駆動する。
実装処理部44は、内部処理部として認識前処理部44aを備えている。認識前処理部44aは、実装ヘッド8の複数のノズル8bが部品Dを保持した後、部品認識カメラ10で姿勢を認識する前に、伝動ベルト28を所定の動作で駆動させる認識前処理を実行させる。
ここで図9を参照して、認識前処理部44aによる認識前処理について説明する。図9(a)において、認識前処理では、まず、認識前処理部44aは、複数のノズル8bがそれぞれ部品Dを保持した状態で、θ軸モータ27(駆動手段)を稼動させて(矢印d)、伝動ベルト28を所定の方向に所定量だけ駆動させる(矢印e)。これにより、被駆動プーリ26(11)~26(14)、26(21)~26(24)は同じ方向(ここでは時計回り方向)に同じ量(同じ角度)だけ回転する(矢印f)。
図9(b)において、次いで認識前処理部44aは、θ軸モータ27(駆動手段)を逆方向に稼動させて(矢印g)、伝動ベルト28を逆方向に所定量より少ない量だけ駆動させる(矢印h)。これにより、被駆動プーリ26(11)~26(14)、26(21)~26(24)は逆方向(ここでは反時計回り方向)に回転する(矢印i)。以下、伝動ベルト28を正方向に駆動させた後に逆方向に駆動させる動作を「引き戻し動作」と称する。
認識前処理部44aが被駆動プーリ26(11)~26(14)、26(21)~26(24)を正方向に回転させる量と引き戻し動作で逆方向に回転させる量は、認識時の部品Dのθ方向の保持ずれ量53θが全てのノズル8bで同じ方向(プラス方向またはマイナス方向)に収まる量となるように過去の実績や経験に基づいて決定される。そして、実装順52は、補正量54に基づく伝動ベルト28の駆動方向と引き戻し動作での駆動方向が同じ方向となるように決められる。これにより、部品Dの姿勢を認識した後に伝動ベルト28を駆動させる際のバックラッシュの影響を排除して、精度の高い補正ができる。
このように、複数のノズル8bがそれぞれ部品Dを保持した状態で、θ軸モータ27(駆動手段)が伝動ベルト28を所定の方向に所定量だけ駆動し、次に所定の方向とは逆の方向に駆動する(引き戻し動作)認識前処理の後に、部品認識手段(部品認識カメラ10、認識処理部41)が複数の部品Dの各々の姿勢を認識している。
ここで図10を参照して、認識前処理後に認識した部品Dの姿勢に基づく実装順52と補正量54について説明する。図10では、引き戻し後の回転量が認識時から「-10°」となるように認識前処理が行われている。これにより、θ方向の保持ずれ量53θが全てのノズル8bでマイナス方向となっている。実装順決定部42は、θ方向の保持ずれ量53θが降順となるように実装順52を決定している。また、補正量54は、全てプラス方向となっており、実装時の伝動ベルト28の駆動方向は一定(図9(b)の矢印hの方向)となる。認識前処理を行うことで、図8の認識前処理なしで算出された補正量54と比較して補正量54の最大値が「+6°」に縮小され、実装時間を短縮することができる。
次に図11のフローに沿って、部品実装装置1による実装基板の製造方法について説明する。ここでは、実装ヘッド8が部品供給部4から部品Dを取り出して基板3に装着するまでの1実装ターンについて説明する。まず、実装処理部44は、実装ヘッド8の複数のノズル8bで部品供給部4からそれぞれ部品Dを取り出させて保持させる(ST1)。次いで認識前処理部44aは、認識前処理を実行させる。すなわち、伝動ベルト28を一の方向(図9(a)の矢印e)に駆動させ(ST2)、次いで伝動ベルト28を逆の方向(図9(b)の矢印h)に駆動させる引き戻し動作を実行させる(ST3)。
次いで部品認識手段(部品認識カメラ10、認識処理部41)は、複数のノズル8bで保持された複数の部品Dの各々の姿勢(保持姿勢Ce)を認識する(ST4)。次いで実装順決定部42は、認識されたθ方向の保持ずれ量53θに基づいて実装順52を決定し(ST5)、補正量算出部43はθ方向の保持ずれ量53θと実装順52に基づいて補正量54を算出する(ST6)。次いで実装処理部44は、実装順52、補正量54に基づいて、各部品Dの姿勢を補正しながら部品Dを基板3に装着する(ST7)。これによって、複数のノズル8bで保持した複数の部品Dを精度良く基板3に実装することができる。
上記説明したように、本実施の形態の部品実装装置1は、複数のノズル8bが装着される複数のノズル軸20に掛け廻された無端の伝動ベルト28と、伝動ベルト28を駆動して複数のノズル軸20を一斉に回転させる駆動手段(θ軸モータ27)と、複数のノズル8bで保持された複数の部品Dの各々の姿勢を認識する部品認識手段(部品認識カメラ10、認識処理部41)と、認識された部品Dの姿勢に基づいて、複数の部品Dを基板3に実装する実装順52を決定する実装順決定手段(実装順決定部42)と、を備えて、複数の部品Dを複数のノズル8bで保持し基板3に実装している。これによって、複数のノズル8bで保持した複数の部品Dを精度良く基板3に実装することができる。