次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2を参照して、部品実装装置1の構造を説明する。部品実装装置1は、部品供給部に並設されたテープフィーダからノズルによって部品を吸着保持して取り出して、基板位置決め部に位置決めされた基板に実装する機能を有している。本実施の形態では、複数の部品を複数のノズルで保持して基板に実装する形態となっている。
図1において、基台1aの中央には基板搬送機構2が基板搬送方向であるX方向に配列されている。基板搬送機構2は部品が実装される基板3をX方向に搬送する。基板搬送機構2による搬送経路には基板を実装位置に位置決めして保持する基板位置決め部が設けられている。この基板位置決め部によって位置決めされた基板3に対して、部品が実装される。基板搬送機構2を挟んだ両側方には部品供給部4が配置されている。部品供給部4には、それぞれ複数のテープフィーダ5が並設されている。テープフィーダ5は部品を収納したキャリアテープをピッチ送りして、以下に説明する部品実装機構に部品を供給する。
基台1aのX方向の一端部には、Y軸リニア駆動機構を備えたY軸移動テーブル7がY方向に水平に配設されている。Y軸移動テーブル7は水平方向に細長形状で設けられたビーム部材7aを主体としており、ビーム部材7aにはリニアレール8が水平方向に配設されている。リニアレール8には、垂直姿勢で配設された矩形状の2つの結合ブラケット10に結合されたリニアブロック9が、Y方向にスライド自在に嵌着している。2つの結合ブラケット10には、それぞれX軸リニア駆動機構を備えた第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bが結合されている。
第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11BはいずれもX方向に細長形状で設けられたビーム部材11aを主体としている。ビーム部材11aには、リニアレール12が水平方向に配設されている。リニアレール12には、垂直姿勢で配設された矩形状の結合ブラケット13が、リニアブロック(図示省略)を介してX方向にスライド自在に装着されている。第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bのそれぞれの結合ブラケット13には、第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bが装着されている。第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bは、結合ブラケット13に結合されたリニア駆動機構によってそれぞれX方向に移動する。
第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bはいずれも複数の単位搭載ヘッドであるノズルユニット15(図3参照)を備えた多連型ヘッドである。それぞれのノズルユニット15の下端部に設けられたノズル装着部20aには、部品を吸着して保持するノズル21が装着されている(図3参照)。ノズル21は、ノズルユニット15に内蔵されたノズル昇降機構によって昇降する。Y軸移動テーブル7、第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bを駆動することにより、第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bは、X方向、Y方向に移動する。これにより各ノズルユニット15は、それぞれの部品供給部のテープフィーダ5から部品を取り出して、基板搬送機構2によって位置決めされた基板3に移送搭載する。
Y軸移動テーブル7、第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bは、この搭載ヘッドを部品供給部4と基板位置決め部である基板搬送機構2との間で移動させるヘッド移動手段となっている。そしてこのヘッド移動手段および第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bは、部品実装機構17(図6参照)を構成する。
基板搬送機構2と部品供給部4との間には、それぞれ部品認識カメラ6が配設されている。それぞれの部品供給部4から部品を取り出した第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bが、部品認識カメラ6の上方へ移動することにより、当該搭載ヘッドに保持された部品の画像が取得される。そして取得された画像を認識処理することにより、搭載ヘッドに保持された状態における部品の位置ずれが検出される。
図2に示すように、第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bには、一体に移動する基板認識カメラ16が、第1のX軸移動テーブル11A、第2のX軸移動テーブル11Bの下方に位置して取り付けられている。基板認識カメラ16は撮像光軸を下向きにした姿勢で結合ブラケット13に取り付けられている。基板認識カメラ16は、第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bとともに基板3の上方に移動して基板3を撮像する。この撮像で取得された画像を認識処理することにより、基板3における実装点の位置ずれが検出される。部品を基板3に実装する際には、前述の部品の位置ずれの検出結果と、実装点の位置ずれの検出結果とに基づいて、部品搭載時の位置補正が行われる。この位置補正には、部品のθ軸廻りの回転位置を正しい方向に合わせる回転位置合わせが含まれる。
次に図3,図4を参照して第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bの構成を説明する。第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bは同一構造であり、いずれも複数(ここでは16個)のノズルユニット15を備えている。ノズルユニット15は、軸廻りの回転および昇降が自在な複数のノズル軸20を、結合ブラケット13の下端部に結合された軸受けブロック22に垂直姿勢で軸支させた構成となっている。各ノズル軸20の下端部にはノズル装着部20aが設けられている。ノズル装着部20aには、部品を吸着保持するノズル21が着脱自在に装着されている。
図3(b)は各ノズル軸20のノズル装着部20aにノズル21が装着された状態における軸受けブロック22の下面を示している。これらのノズル21は、部品供給部4におけるテープフィーダ5の配列に対応して設定された所定のノズル配列ピッチpでX方向に列状に配列されてノズル列を形成している。ここでは、1列に8個のノズル21が配列されたノズル列が2列(ノズル列L1,L2)形成されている。すなわち、第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bには、上下方向に昇降自在な複数のノズル軸20を所定のノズル配列ピッチで列状に配列して成る2列のノズル列L1,L2が設けられた構成となっている。さらにこれらの複数のノズル軸20は、2つのノズル列L1,L2のそれぞれの中央点を結ぶ区分線CLによって、2つのノズル群(ノズル群Aおよびノズル群B)に区分されている。
各ノズルユニット15の構造を説明する。ノズル軸20の上端部は、回転接手25を介して昇降軸部材24に結合されている。昇降軸部材24は、結合ブラケット13に固定されたZ軸リニアモータ23によって昇降駆動される。Z軸リニアモータ23を駆動することによりノズル軸20が昇降し、これによりノズル21が部品のピックアップや搭載動作のための上下動を行う。すなわち、Z軸リニアモータ23、昇降軸部材24は、ノズル軸20を個別に昇降させるノズル昇降機構となっている。回転接手25は、ノズル軸20と昇降軸部材24とをベアリングを介して結合しており、ノズル軸20の軸廻りの回転が許容されるようになっている。これにより部品を保持したノズル21をノズル軸廻りに回転させることが可能となり、部品のノズル軸廻りの回転位置合わせを行うことができる。
次に図4を参照して、ノズル軸20の軸支持構造および回転駆動形態について説明する。軸受けブロック22には垂直に貫通して設けられた軸孔22aが設けられている。ノズル軸20は、軸孔22a内を挿通するスリーブ部材32を介して、軸受けブロック22に保持されている。ノズル軸20の外面とスリーブ部材32の内面はスプライン溝によって嵌合する関係にあり、これにより、ノズル軸20はスリーブ部材32に対して上下のスライドが許容されるとともに、この状態でスリーブ部材32からノズル軸20への回転伝達が行えるようになっている。軸孔22aの上下両端部にはベアリング31が嵌着されており、ベアリング31はスリーブ部材32によって上下位置が保持されながらスリーブ部材32を軸支する。すなわちノズル軸20は、上下2つのベアリング31によってスリーブ部材32を介して回転自在に軸支されている。
スリーブ部材32が軸受けブロック22から上方に延出した部分には、軸受けブロック22の上方に位置して被駆動プーリ28が装着されている。被駆動プーリ28は以下に説明するθ軸モータ27の回転を伝導ベルト29を介してスリーブ部材32に伝達し、これによりノズル軸20はスリーブ部材32とともに回転する。このときノズル軸20の上下動を許容しながら回転伝達が行えるようになっている。
図3において軸受けブロック22の上面には、ノズル列L1,L2の列方向を両側に延長した位置に(図5参照)、θ軸モータ27が出力軸を下向きにした垂直姿勢で配設されている。θ軸モータ27の出力軸に装着された駆動プーリ27aには、無端の伝導ベルト29が調帯されている。伝導ベルト29はノズル群A、ノズル群Bのそれぞれに対応して装着されており、ノズル群A、ノズル群Bに属する複数のノズル軸20に装着された被駆動プーリ28に調帯されて、θ軸モータ27の回転を各被駆動プーリ28に伝達する。すなわち無端の伝導ベルト29は、複数のノズル21が装着される複数のノズル軸20に掛け回された構成となっている。
次に図5を参照して、第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bにおけるベルト調帯形態について説明する。図5は、軸受けブロック22の上面において、図3に示すノズル列L1,L2に対応して、各ノズル軸20に装着された被駆動プーリ28およびアイドラ30の配列を示している。アイドラ30は、伝導ベルト29を所望の形態で調帯するためのベルト掛け廻しに用いられるものである。ここでは、2列のノズル列L1,L2の中間に、複数のアイドラ30が配置されている。
なお、図5においては、複数の被駆動プーリ28およびアイドラ30を、符号に添字を付すことによって区別している。まず被駆動プーリ28については、ノズル群および配列位置と関連づけて区別する。すなわち、ノズル列L1に対応する被駆動プーリ28には、左側(ノズル群Aの側)から、被駆動プーリ28(11)~28(18)と表記し、ノズル列L2に対応する被駆動プーリ28には、左側(ノズル群Aの側)から、被駆動プーリ28(21)~28(28)と表記している。
またアイドラ30については、配列位置と関連づけて区別する。すなわち、左側から順にアイドラ30(1)~30(8)と表記する。アイドラ30(1)~30(8)の位置は、Y方向についてはいずれも2つのノズル列L1,L2の略中央に位置している。X方向については、アイドラ30(1)はθ軸モータ27の駆動プーリ27aと被駆動プーリ28(11)との中間に、ノズル群Aに対応した3つのアイドラ30(2)、30(3)、30(4)は、4つの被駆動プーリ28(11)、28(12)、28(13)、28(14)において相隣接する2つの被駆動プーリ28の中間にそれぞれ位置している。
ノズル群Bに対応した3つのアイドラ30(5)、30(6)、30(7)は、4つの被駆動プーリ28(15)、28(16)、28(17)、28(18)において相隣接する2つの被駆動プーリ28の中間に、またアイドラ30(8)は、被駆動プーリ28(18)とθ軸モータ27の駆動プーリ27aとの中間にそれぞれ位置している。なおこれらアイドラ30の位置については自由度があり、以下に説明するベルト掛け廻しに不都合がない範囲において、X方向、Y方向のいずれについても位置変更が可能である。
次にベルト調帯形態の詳細を説明する。なおノズル群Aの各ノズル軸20を回転駆動するための伝導ベルト29の調帯形態と、ノズル群Bの各ノズル軸20を回転駆動するための伝導ベルト29の調帯形態とは、区分線CLについて左右対称の関係にあることから、ここではノズル群Aについてのみ記述し、ノズル群Bについての記述を省略する。
まず伝導ベルト29において駆動歯が設けられた駆動面29aをθ軸モータ27の駆動プーリ27aに噛合させた伝導ベルト29は、ノズル列L1において最左端に位置する被駆動プーリ28(11)に駆動面29aを噛合させて掛け廻される。次いで伝導ベルト29は、内側に位置するアイドラ30(2)まで導かれて駆動面29aの反対面をアイドラ30(2)に当接させて周回した後、被駆動プーリ28(12)、被駆動プーリ28(13)に駆動面29aを順次噛合させて掛け廻される。次いで伝導ベルト29は、内側に位置するアイドラ30(4)まで導かれて駆動面29aの反対面をアイドラ30(4)に当接させて周回した後、被駆動プーリ28(14)に駆動面29aを噛合させて掛け廻される。
さらに伝導ベルト29は、ノズル列L2の被駆動プーリ28(24)、被駆動プーリ28(23)に駆動面29aを順次噛合させて掛け廻され、次いで内側に位置するアイドラ30(3)に駆動面29aの反対面を当接させて周回した後、被駆動プーリ28(22)および被駆動プーリ28(21)に駆動面29aを順次噛合させて掛け廻される。次いでアイドラ30(1)まで導かれて駆動面29aの反対面がアイドラ30(1)を周回し、θ軸モータ27の駆動プーリ27aに駆動面29aを噛合させて掛け廻される。これにより、全ての被駆動プーリ28が伝導ベルト29の駆動面29aと噛合し、θ軸モータ27によって回転駆動される。
上記構成において、出力軸に駆動プーリ27aが装着されたθ軸モータ27、各ノズル軸20に装着された被駆動プーリ28、2列のノズル列L1,L2の中間に配置された複数のアイドラ30および伝導ベルト29は、複数のノズル軸20を共通のθ軸モータによってノズル軸廻りに回転させるθ回転駆動機構26(図6参照)を構成する。さらに上記構成において、θ回転駆動機構26は、伝導ベルト29を駆動し、複数のノズル軸20を回転させて複数のノズル軸20の回転位置合わせをおこなう駆動手段となっている。
次に図6を参照して、部品実装装置1の制御系の構成を説明する。図6において、部品実装装置1は制御部40、記憶部44、機構駆動部43、画像認識部47を備えている。制御部40は内部処理機能として実装処理部41、回転位置合わせ処理部42を備えており、記憶部44は、実装データ45、回転位置合わせ処理データ46を記憶している。機構駆動部43は、制御部40に制御されて基板搬送機構2および部品実装機構17を駆動する。制御部40の実装処理部41が実装データ45を参照しながら基板搬送機構2、部品実装機構17を制御することにより、上流側装置から搬入された基板3に部品を実装する部品実装作業が実行される。
また制御部40の回転位置合わせ処理部42が回転位置合わせ処理データ46を参照しながらθ回転駆動機構26を制御することにより、第1の搭載ヘッド14A、第2の搭載ヘッド14Bにおいてノズル軸20をθ軸廻りに回転させることができる。これにより、ノズル21に保持された部品を実装データ45にて示される実装角度に合わせる回転位置合わせが行われる。
画像認識部47は、基板認識カメラ16、部品認識カメラ6によって撮像された画像を認識処理する。これにより、搬入された基板3の位置認識やノズル21に保持された状態の部品の位置認識が行われる。上述の回転位置合わせは、部品認識カメラ6による部品認識結果に基づいて行われる。
本実施の形態においては、この回転位置合わせを、記憶部44に記憶された回転位置合わせ処理データ46にて規定される第1処理モード46a、第2処理モード(1)46b、第2処理モード(2)46cの3つの方法のいずれかによって実行するようにしている。そしてこの回転位置合わせの実行に際しては、後述する駆動方向履歴データ46d、伸縮解消回転パターン46e(図8参照)が参照される。
この回転位置合わせ処理について、図7を参照して説明する。図7(a)は、ノズル21に保持された部品Pを部品認識カメラ6によって下面側から撮像した画像を示している。ここでは部品Pの中心は、部品認識カメラ6の光学座標系においてX、Y、θ方向にそれぞれ位置ずれ量Δx、Δy、Δθだけ位置ずれしている。部品Pの基板3への搭載に際しては、位置ずれ量Δx、Δyを補正して部品Pの中心を実装点に位置合わせするとともに、ノズル21を回転させて部品Pの回転位置を当該部品について指定された実装角度に合わせる。
この回転位置合わせは、図7(b)に示すように、ノズル21が装着されたノズル軸20に結合された被駆動プーリ28を、駆動プーリ27aに掛け回された伝導ベルト29によって正逆方向に回転させることにより行われる。伝導ベルト29を矢印a方向に駆動することによりノズル軸20は(+)方向に回転し、伝導ベルト29を矢印b方向に駆動することによりノズル軸20は(-)方向に回転する。なお、ここに示す(+)方向、(-)方向は、それぞれ反時計回り方向、時計回り方向に対応している。
伝導ベルト29によって回転を伝達する伝導機構においては、伝導ベルト29の伸縮に起因する回転伝達誤差が避け難い。このため、高い実装位置精度が求められる基板を対象とする部品実装においては、この伝導ベルト29の伸縮に起因する回転伝達誤差を極力抑制する方策が求められる。本実施の形態に示す部品実装装置においては、この回転位置合わせを前述の第1処理モード46a、第2処理モード(1)46b、第2処理モード(2)46cのいずれかによって実行するようにしている。
第1処理モード46aとは、伝導ベルト29の伸縮に起因する回転伝達誤差を解消するための伸縮解消回転パターンを実行することなく、ノズル軸20の回転位置合わせを実行する処理モードである。これに対し、第2処理モード(1)46b、第2処理モード(2)46cでは、いずれも上述の伸縮解消回転パターンを実行する。ここで第2処理モード(1)46bは、回転位置合わせのための回転角度、すなわち位置合わせ前の回転位置Pθ(1)から目標回転位置Pθtまでの位置合わせ回転角度(図10~図12参照)が、伸縮解消回転パターンに規定する最小Θ角度(最小の回転角度θ0)以上である場合に対応している。したがって第2処理モード(1)46bでは、この位置合わせ回転角度だけノズル軸20を回転させることにより伸縮解消回転パターンが実行されたことになる。
また第2処理モード(2)46cは、位置合わせ前の回転位置Pθ(1)から目標回転位置Pθtまでの位置合わせ回転角度が、伸縮解消回転パターンに規定する最小Θ角度(最小の回転角度θ0)よりも小さい場合に対応している。この場合には上述の位置合わせ回転角度だけノズル軸20を回転させても伸縮解消に必要な回転駆動角度に到達せず、所期の伸縮解消効果を達成できない。このため本実施の形態に規定する第2処理モード(2)46cでは、回転位置合わせ時の目標回転位置Pθtまでの位置合わせ回転角度が最小の回転角度θ0以上となるように、ノズル軸20を一旦逆方向に回転させるようにしている。
ここでこの回転位置合わせに際して参照される駆動方向履歴データ46d、伸縮解消回転パターン46eについて、図8を参照して説明する。駆動方向履歴データ46dは、θ回転駆動機構26による伝導ベルト29の駆動方向の履歴を示すデータである。図8(a)に示すように、駆動方向履歴データ46dには当該時点までに実行された回転位置合わせにおける伝導ベルト29の駆動方向が記憶されている。このデータには、前回の回転位置合わせについての前回駆動方向46fが含まれており、前回駆動方向における正逆方向46gが示されている。ここに示す例では、前回の回転位置合わせにおいて(+)方向に駆動されたことを示している。
すなわち記憶部44は、前回の回転位置合わせにおいて駆動手段であるθ回転駆動機構26が伝導ベルト29を駆動した方向を示す前回駆動方向を記憶する記憶手段となっている。そして図9に示す第1処理モード46aにおいて、θ回転駆動機構26は複数のノズル軸20の回転位置合わせを実行する際に、記憶部44によって記憶された前回駆動方向のみに伝導ベルト29を駆動する。
伸縮解消回転パターン46eは、伝導ベルト29の伸縮に起因する回転伝達誤差を解消するために実行される回転パターンを示している。伝導ベルト29による伝導動作においては、伝導ベルト29を駆動してノズル軸20を所定の駆動方向に所定の回転角度以上回転させることによって伝導ベルト29の伸縮が解消されて、ノズル軸20の回転位置精度が確保されることが知られている。図8(b)に示すように、伸縮解消回転パターン46e(A)には、このような伸縮解消作用を実現可能な駆動方向46hおよび最小Θ角度46iの組み合わせが規定されている。
すなわち記憶部44は、許容される複数のノズル軸20の回転位置精度を達成可能な伝導ベルト29の駆動方向と最小の回転角度θ0を記憶する記憶手段となっている。そして図11、図12に示す第2処理モード(1)46bにおいて、θ回転駆動機構26は複数のノズル軸20の回転位置合わせを実行する際に、最終的に記憶部44によって記憶された駆動方向46hに最小の回転角度である最小Θ角度46i以上複数のノズル軸20を回転させるように伝導ベルト29を駆動する。
なお上述の伸縮解消回転パターン46eにおいて、より精細な伸縮解消作用を実現するために、最小Θ角度46iの設定において、回転位置合わせにおける伝導ベルト29の駆動方向を考慮に入れるようにしてもよい。伝導ベルト29の伸縮は伝導ベルト29の駆動方向によって伸縮態様が左右されることから、対象とする当該回転位置合わせにおける伝導ベルト29の駆動方向と前回回転位置合わせにおける伝導ベルト29の駆動方向との組み合わせによって規定される回転駆動パターンに応じて、駆動方向46hおよび最小Θ角度46i(最小の回転角度θ0)を設定する。
図8(c)は、このようにして設定される伸縮解消回転パターン46e(B)を示している。すなわち伸縮解消回転パターン46e(B)では、前回回転位置合わせにおける駆動方向を示す前回駆動方向46jと当該回転位置合わせにおける駆動方向を示す今回駆動方向46kとの組み合わせによって規定される回転駆動パターン毎に、駆動方向46hおよび最小Θ角度46iを設定する。ここで、駆動方向46hについては、(+)方向、(-)方向が想定されており、それぞれの駆動方向毎に最小の回転角度θ0である最小Θ角度46iが設定される。
具体的には、前回駆動方向46jが(+)、(-)である場合、今回駆動方向46kが(+)、(-)である場合の4通りの組み合わせのそれぞれについて、伸縮解消回転パターンにおける駆動方向46hが(+)方向、(-)方向のいずれであるかによって2通りの異なる最小Θ角度46iが設定される。すなわち全体では、8通りの駆動方向46h((+)、(-))および最小Θ角度46i(θ1~θ8)の組み合わせが予め設定される。そして動作実行に際しては、より短い動作時間を与える駆動方向46hが選択される。なお、θ回転駆動機構26における各ノズル軸20のθ軸モータ27との相対位置関係の相違を考慮して、ノズル軸20毎に個別に駆動方向46hおよび最小Θ角度46iを設定するようにしてもよい。
次に、図9~図12を参照して、第1処理モード46a、第2処理モード(1)46b、第2処理モード(2)46cの具体例を説明する。図9に示す第1処理モード46aにおいて、図9(a)、(b)は前回回転位置合わせおよび今回回転位置合わせをそれぞれ示している。図9(a)に示す前回回転位置合わせでは、伝導ベルト29を(+)方向へ駆動する(矢印c)ことにより、ノズル軸20を位置合わせ前の回転位置Pθ(1)から目標回転位置Pθtまで回転させる(矢印d)。
そして図9(b)に示す今回回転位置合わせでは、図9(a)に示す目標回転位置Pθtを新たな位置合わせ前の回転位置Pθ(1)として、ノズル軸20を次の目標回転位置Pθtまで回転させる(矢印f)。この回転位置合わせにおいては、記憶部44に記憶された駆動方向履歴データ46dによって示される前回駆動方向46fが参照される。すなわちノズル軸20を位置合わせ前の回転位置Pθ(1)から目標回転位置Pθtまで回転させて回転位置合わせを実行するに際し、伝導ベルト29を前回駆動方向46f(ここに示す例では(+)方向)に駆動する(矢印e)。
すなわち第1処理モード46aでは、複数のノズル軸20の回転位置合わせを実行する際に、記憶部44に記憶された駆動方向のみに伝導ベルト29を駆動する。このように、回転位置合わせに際し、前回駆動方向と同じ方向にノズル軸20を回転させることにより、伝導ベルト29は伸縮の状態が変動しないまま駆動される。したがって伝導ベルト29の伸縮に起因する回転伝達誤差が生じることがなく、ノズル軸20の回転位置合わせにおける回転位置精度を確保することができる。
図10、図11は第2処理モード(1)46bを示している。図10は、ノズル軸20を位置合わせ前の回転位置Pθ(1)から目標回転位置Pθtまで回転させて回転位置合わせを実行するに際し、伝導ベルト29を(+)方向に駆動する場合の回転動作である。図10(a)は、回転位置合わせ前の状態を示している。この状態から回転位置合わせが開始されると、先ず図10(b)に示すように、伝導ベルト29を(+)方向に駆動して(矢印g)、ノズル軸20を(+)方向に回転させる(矢印h)。
このとき、目標回転位置Pθtから伸縮解消回転パターン46e(A)に示す最小Θ角度46i(θ0)以上に設定された所定角度αだけ手前で一旦回転動作を停止する。次いで図10(b)の状態から、図10(c)に示すように、伝導ベルト29を(+)方向に駆動して(矢印i)、ノズル軸20を(+)方向に前述の所定角度αだけ回転させ(矢印j)、目標回転位置Pθtに位置合わせする。
図11は、同様にノズル軸20を位置合わせ前の回転位置Pθ(1)から目標回転位置Pθtまで回転させて回転位置合わせを実行するに際し、伝導ベルト29を(-)方向に駆動する場合の回転動作である。図11(a)は、回転位置合わせ前の状態を示している。この状態から回転位置合わせが開始されると、先ず図11(b)に示すように、伝導ベルト29を(-)方向に駆動して(矢印k)、ノズル軸20を(-)方向に回転させる(矢印m)。
このとき、目標回転位置Pθtから伸縮解消回転パターン46e(A)に示す最小Θ角度46i(最小の回転角度θ0)以上に設定された所定角度αだけオーバーした位置で一旦回転動作を停止する。次いで図11(b)の状態から、図11(c)に示すように、伝導ベルト29を(+)方向に駆動して(矢印n)、ノズル軸20を(+)方向に前述の所定角度αだけ回転させ(矢印o)、目標回転位置Pθtに位置合わせする。
すなわち第2処理モード46bでは、複数のノズル軸20の回転位置合わせを実行する際に、最終的に記憶部44によって記憶された駆動方向に最小Θ角度46i(最小の回転角度θ0)以上複数のノズル軸20を回転させるように伝導ベルト29を駆動する。これにより、伝導ベルト29の伸縮に起因する回転伝達誤差を解消して、許容される複数のノズル軸20の回転位置精度を達成することができる。
図12は、第2処理モード(2)46cを示している。第2処理モード(2)46cは、複数のノズル軸20の回転位置合わせを行う位置合わせ回転角度θtが最小Θ角度46i(θ0)よりも小さい場合に実行される処理である。すなわち、図12(a)に示すように、位置合わせ前の回転位置Pθ(1)から目標回転位置Pθtまでの位置合わせ回転角度θtは、最小Θ角度46i(最小の回転角度θ0)よりも小さい。このため、ノズル軸20を位置合わせ回転角度θtだけ回転させた状態では、伝導ベルト29の伸縮に起因する回転伝達誤差は完全には解消されない可能性がある。
このような不都合を防止するため、第2処理モード(2)46cではまず伸縮に起因する回転伝達誤差を解消するのに十分な位置合わせ回転角度θtを確保するために逆駆動動作を実行する。すなわち図12(b)に示すように、記憶部44に記憶された駆動方向とは逆方向に複数のノズル軸20を回転させるように、伝導ベルト29を(-)方向に駆動する(矢印p)。これにより、実際の位置合わせ回転角度βは最小Θ角度46i(最小の回転角度θ0)よりも大きくなる。
次いで、図12(c)に示すように、最終的に回転位置合わせを行う最終位置合わせ動作を実行するように、伝導ベルト29を駆動する(矢印r)。すなわち、伸縮解消回転パターン46eに示す駆動方向46h((+)方向)に、最小Θ角度46i(最小の回転角度θ0)以上複数のノズル軸20を回転させる(矢印s)。これにより、伸縮に起因する回転伝達誤差を解消するのに十分な位置合わせ回転角度βが確保され、許容される複数のノズル軸20の回転位置精度を達成することができる。
このように、本実施の形態においては、ノズル軸20の回転位置合わせを実行するための動作処理モードとして、前述の第1処理モード46a、第2の処理モード(1)46b、第2の処理モード(2)46cを選択的に実行可能となっている。これらの処理モードを比較すると、以下のような長所、短所が挙げられる。
まず第1処理モード46aの長所としては、回転位置合わせ動作が単純であることから、制御ソフトの作成が容易になること、および最小Θ角度などのパラメータを予め準備する必要がないことなどが挙げられる。これに対し、短所としては、駆動方向が固定されて同一方向にしか回転しないため、位置合わせ前の回転位置Pθ(1)と目標回転位置Pθtとの関係によっては位置合わせ動作に時間を要する場合がある。たとえば駆動方向が(+)方向であって目標回転位置Pθtが(-1°)であるような場合には、回転位置合わせに359°の回転を要することとなる。また位置合わせ回転角度が微少角度である場合には、十分な伸縮解消効果が得られず、位置合わせ精度が低下するという難点がある。
次に第2の処理モード(1)46b、第2の処理モード(2)46cの長所としては、複数のノズル軸20を共通のθ軸モータ27で駆動する場合のように伝導ベルト29の引き回しが複雑で、伝導ベルト29伸縮に起因する回転伝達誤差が生じやすい場合にあっても、良好な回転位置精度を確保することができる。また位置合わせに要する動作時間についても、第1処理モード46aよりも早い場合がほとんどであり、位置合わせ回転角度が微少であるような場合についてのみ、第1処理モード46aの方が早い場合がある。これに対し、短所としては、回転位置合わせ動作が複雑であることから、制御ソフトの作成に手間を要すること、および最小Θ角度などのパラメータをノズル軸毎に予め準備する必要があることなどが挙げられる。
このように、上述の動作処理モードにはそれぞれ長所、短所があるため、使用する搭載ヘッドの特性や、要求される回転位置決め精度、動作時間の制限などに応じて、これらの動作処理モードを使い分けることとする。このとき、特性の異なる複数の搭載ヘッドを備えている場合には、搭載ヘッド毎に、もしくは各ノズル軸の回転動作毎にこれらの動作処理モードを使い分けるようにする。これにより、高い回転位置精度と良好な作業動作効率を実現することができる。
上記説明したように、本実施の形態に示す部品実装装置1では、記憶部44に記憶されたデータに基づいて複数のノズル軸に掛け廻された無端の伝導ベルトを駆動し複数のノズル軸を回転させて回転位置合わせを行う構成において、回転位置合わせを実行する際に記憶部44の駆動方向履歴データ46dに記憶された前回駆動方向のみに伝導ベルト29を駆動する第1処理モード46a、最終的に記憶部44によって記憶された駆動方向に最小の回転角度以上前記複数のノズル軸を回転させるように伝導ベルトを駆動する第2処理モード(1)46b、第2処理モード(2)46cなどを含む回転位置合わせ処理データ46に基づいて、回転位置合わせを行う。これにより、複数のノズル軸20を共通のθ軸モータ27で伝導ベルト29を介して回転駆動する構成において、伝導ベルト29の伸縮に起因する回転伝達誤差を抑制することができる。