JP4828974B2 - ねじ測定方法、ねじ測定用プローブ及びそれを用いたねじ測定装置 - Google Patents

ねじ測定方法、ねじ測定用プローブ及びそれを用いたねじ測定装置 Download PDF

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Description

本発明はねじ測定方法、ねじ測定用プローブ及びそれを用いたねじ測定装置、特にめねじの有効径測定の自動化手法(機構)の改良に関する。
従来より、様々な部品の締結にねじが用いられている。
ねじは製品全体の品質や寿命に大きく左右するため、ねじを高精度で加工する製造工程では、品質の保持のためのねじ検査を取り入れることが非常に重要である。
ねじ検査では、ねじ形状の特性値、例えば有効深さ、ピッチ、有効径、ねじ山角度、ねじ切り長さ等が測定される。
例えばおねじの有効径を測定するため、三針法がよく知られている。
三針法では、おねじのねじ溝に三針ゲージをあてがい、その外側寸法をマイクロメータで測定し、得られた外側寸法等から、おねじの有効径を求める。
ところで、三針法は手動計測であり、三針ゲージの取り扱いに熟練を要する。また三針法では、マイクロメータの読みに個人差があり、測定作業の効率、測定精度の確保が困難である。
このため、ねじ測定の分野では、測定の容易化が求められている。このような要望に応
えるため、ねじ形状の各種寸法測定に三次元測定機の使用が考えられる(例えば特許文献
1参照)。
特許文献1は、三次元測定機のプローブでねじの倣い測定を行って得られた倣い測定結果のデータ処理でねじ形状の各種寸法を測定するものである。
特にめねじの有効径に関しては、データ処理で、倣い測定結果から求めた形状データに仮想円を当てて、三針法により有効径を求めるものである。
特開2001−82952号公報
ところで、特許文献1にあっても、有効径の自動測定の正確さは、さらなる改善が求められており、特にめねじ有効径の自動測定は困難を極める。
しかしながら、従来は、これを解決することのできる適切な技術が存在せず、三次元測定機でめねじの有効径を測定するにとどまり、めねじ有効径の自動測定に適切なものは開発されていなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、めねじの有効径の自動測定を正確に行うことのできるねじ測定方法、ねじ測定用プローブ及びそれを用いたねじ測定装置を提供することにある。
本発明者らがめねじ有効径の自動測定について検討の結果、測定対象となるめねじのピッチに応じて最適な直径を持つスタイラス先端球で実際に内側寸法測定を行うこと、及び前記有効径演算式による有効径演算との組み合わせにより、めねじ有効径の自動測定の正確さが大幅に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかるねじ測定方法は、内側寸法測定工程と、有効径演算工程と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記内側寸法測定工程は、測定対象となるめねじのピッチPと、該めねじのねじ山角αとで表される2r=P/(2cos(α/2))の数式を満たした直径2rのスタイラス先端球を持つねじ測定用プローブを選択し、該ねじ測定用プローブを備えた座標測定機を用い、前記スタイラス先端球を前記めねじのねじ溝に当て測定された座標値情報から、該めねじの軸線と一致する中心軸線を有し、かつ該めねじのねじ溝に該スタイラス先端球を当てたときの該スタイラス先端球中心を通る円筒の直径に等しい内側寸法情報Dを測定する。
また、前記有効径演算工程は、前記内側寸法測定工程で測定された内側寸法情報D、前記スタイラス先端球の直径情報2r、測定対象となるめねじのねじ山角情報α及びピッチ情報Pから、該めねじの有効径情報DをD=D+2r・cosec(α/2)−(P/2)・cot (α/2)の有効径演算式で求める。
なお、本発明にかかるねじ測定方法においては、内側寸法測定工程が、ねじ溝検出工程と、内側寸法演算工程と、を備えることが好適である。
ここで、前記ねじ溝検出工程は、前記めねじの壁面に前記スタイラス先端球を這わせて、該スタイラス先端球のめねじ径方向外側への最大変位点を、該スタイラス先端球が該めねじのねじ溝に完全に入った時として検出するねじ溝検出を、該めねじの壁面上において周方向に所定の角度だけずれた二以上の測定箇所で行う。
また、前記内側寸法演算工程は、前記ねじ溝検出工程で検出された各ねじ溝の座標値情報から、前記内側寸法情報Dを求める。
また前記目的を達成するために本発明にかかるねじ測定用プローブは、座標測定機本体に設けられ、めねじの有効径の測定に用いられるねじ測定用プローブにおいて、
プローブ本体と、スタイラスと、検出器と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記プローブ本体は、前記座標測定機本体上の測定対象となるめねじに対し相対移動自在に設けられたものとする。
また、前記スタイラスは、前記プローブ本体に設けられたスタイラス軸、及び該スタイラス軸の先端に設けられ、測定対象となるめねじのピッチに応じて選択された直径を有する球状のスタイラス先端球を含む。
前記検出器は、前記プローブ本体ないし前記スタイラスに設けられ、測定対象となるめねじに関する座標値情報を検出するためのものとする。
本発明にかかるねじ測定用プローブにおいて、前記スタイラス先端球は、その直径2rが、2r=P/(2cosα/2)の数式で表せることが好適である。
すなわち、本発明者らによれば、実際のスタイラスによるめねじ有効径測定では、スタイラスの先端球が、ねじ山のリード角の方向に傾いて、ねじの軸断面中でねじ山の斜面と接触せずに、該ねじの断面上からずれたところに接触することがあり、またスタイラス先端球とねじ山および測定面間の弾性変形が生じることがあり、実際にスタイラス先端球を接触させて得られた測定結果に誤差を生じ得ることが確認された。まためねじ有効径の演算式に含まれるパラメータにも誤差が生じ得ることが確認された。そして、本発明者らによれば、めねじ有効径の自動測定の正確さを飛躍的に向上するためには、前記めねじ有効径の測定結果に悪影響を及ぼすであろう誤差の影響をできるだけ小さくすることが非常に重要であり、このためには最適なスタイラス先端球直径を選択することにより、特に直径2rが、2r=P/(2cosα/2)の数式で表せるスタイラス先端球を用いることにより、実際にめねじにスタイラス先端球を接触させて得られた測定結果に対する、前記誤差の影響が大幅に低減されることがわかったからである。
本発明にかかるねじ測定用プローブにおいて、前記スタイラスが、本体側スタイラス軸部と、先端側スタイラス軸部と、を含むことが好適である。
ここで、前記本体側スタイラス軸部は、前記スタイラス軸が、測定対象となるめねじの軸線と一致するスタイラス軸線を有する。
また前記先端側スタイラス軸部は、前記本体側スタイラス軸部に直交し、かつ前記座標値情報の検出方向に平行なスタイラス軸線を有し、先端に前記スタイラス先端球を持つ。
本発明にかかるねじ測定用プローブにおいては、前記検出器が、歪ゲージ又はスケールを含むことが好適である。
ここで、前記歪ゲージ又は前記スケールは、前記プローブ本体ないし前記スタイラス軸に設けられ、測定対象となるめねじに関する座標値情報を検出するためのものとする。
また前記目的を達成するために本発明にかかるねじ測定装置は、前記ねじ測定用プローブと、測定対象となるめねじがセットされ、該めねじと該ねじ測定用プローブとの間を相対移動自在とする座標測定機本体と、を備えたねじ測定装置であって、
内側寸法測定機構と、有効径演算手段と、を備えたことを特徴とする。
ここで、前記内側寸法測定機構は、測定対象となるめねじのピッチに応じて選択された直径を有するスタイラス先端球をめねじのねじ溝に当て測定された座標値情報から、該めねじの軸線と一致する中心軸線を有し、かつ該めねじのねじ溝に該スタイラス先端球を当てたときの該スタイラス先端球中心を通る円筒の直径に等しい内側寸法情報Dを測定する。
また、前記有効径演算手段は、前記内側寸法測定機構で測定された内側寸法情報D、前記スタイラス先端球の直径情報2r、該めねじのねじ山角情報α及びピッチ情報Pから、該めねじの有効径情報Dを、D=D+2r・cosec(α/2)−(P/2)・cot (α/2)の有効径演算式で求める。
ここにいうめねじの有効径とは、おねじとめねじとが接触している部分の平均直径、つまりめねじ山の幅と谷の幅とが等しい点を通る円筒の直径をいう。
また本発明においては、ピッチPに代えて、ねじ山数を用いることもできる。
本発明にかかるねじ測定方法によれば、測定対象となるめねじのピッチに応じた直径を有するスタイラス先端球を実際にめねじのねじ溝に当て内側寸法を測定する内側寸法測定工程と、前記有効径演算式からめねじの有効径を求める有効径演算工程と、を備えることとしたので、めねじ有効径の自動測定を正確に行うことができる。
また本発明にかかるねじ測定用プローブによれば、測定対象となるめねじのピッチに応じた直径を有するスタイラス先端球を備えることとしたので、めねじ有効径の自動測定を正確に行うことができる。
なお、本発明にかかるねじ測定用プローブにおいて、前記スタイラス先端球は、その直径2rが、2r=P/(2cosα/2)の数式で表せるものを用いることにより、めねじ有効径の自動測定を、より正確に行うことができる。
また本発明にかかるねじ測定用プローブにおいては、L字スタイラス又は十字スタイラスを含むことにより、前記めねじの自動測定を、より容易に行うことができる。
本発明にかかるねじ測定装置によれば、本発明にかかるねじ測定用プローブと、座標測定機本体と、本発明にかかるねじ測定用プローブをめねじのねじ溝に実際に当て内側寸法を測定する内側寸法測定機構と、前記有効径演算式からめねじの有効径を求める有効径演算手段と、を備えることとしたので、めねじ有効径の自動測定を正確に行うことができる。
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかるねじ測定方法を行うためのねじ測定装置の概略構成が示されている。
同図に示すねじ測定装置10は、座標測定機本体12と、ねじ測定用プローブ14と、を備える。
ここで、座標測定機本体12は、CNC式三次元測定機本体等よりなり、測定対象となるめねじ16がセットされ、めねじ16とねじ測定用プローブ14との間を相対移動自在とする。
また、ねじ測定用プローブ14は、座標測定機本体12に設けられ、プローブ本体18と、スタイラス20と、を備える。
プローブ本体18は、座標測定機本体12にセットされためねじ16に対し相対移動自在に設けられ、めねじ16に関する座標値情報を検出する。
スタイラス20は、プローブ本体18に設けられ、スタイラス20の先端に、測定対象となるめねじ16のピッチに応じて選択された最適な径を有するスタイラス先端球22を含む。
本実施形態においては、ねじ測定用プローブが、スタイラス20を含む倣いプローブであり、めねじの壁面に、プローブのスタイラス先端球22を倣って軸方向に移動させながら、一定時間間隔で座標値情報を取得し、めねじ壁面の座標値情報(めねじ形状情報)を測定する。
ねじ測定装置10は、内側寸法測定機構30と、有効径演算手段32と、を備える。
ここで、前記内側寸法測定機構30は、測定対象となるめねじ16のピッチに応じて選択された直径を有するスタイラス先端球22をめねじ16のねじ溝に当て測定された座標値情報から、めねじ16の軸線と一致する中心軸線を有し、かつめねじ16のねじ溝にスタイラス先端球22を当てたときのスタイラス先端球22中心を通る円筒の直径に等しい内側寸法情報Dを測定する内側寸法測定工程を行う。
また、有効径演算手段32は、内側寸法測定機構30で測定された内側寸法情報D、スタイラス先端球22の直径情報2r、めねじ16のねじ山角情報α及びピッチ情報Pから、めねじ16の有効径情報Dを、D=D+2r・cosec(α/2)−(P/2)・cot (α/2)の有効径演算式で求める有効径演算工程を行う。
本実施形態においては、内側寸法測定機構30が、測定制御手段34と、ねじ溝検出手段36と、内側寸法演算手段38と、を備える。
ここで、測定制御手段34は、座標測定機本体12の各軸の移動、及び測定の操作を行わせる。本実施形態においては、測定制御手段34が、めねじ16の壁面にスタイラス先端球22をねじ軸方向に這わせて、スタイラス先端球22のめねじ径方向外側への最大変位点が検出されるように、座標測定機本体12の動作を制御する。
また、ねじ溝検出手段36は、めねじ16の壁面上でスタイラス先端球22をめねじ軸方向に這わせて測定された座標値情報に基づく、スタイラス先端球22のめねじ径方向外側への最大変位点を、スタイラス先端球22がめねじ16のねじ溝に完全に入った時として検出する。これを、めねじの壁面上において周方向に所定の角度だけずれた二以上の測定箇所、例えば三の測定箇所で行うねじ溝検出工程を行う。
内側寸法演算手段38は、ねじ溝検出手段36で検出された各ねじ溝の座標値情報から、前記円筒の直径に等しい内側寸法情報Dを求める内側寸法演算工程を行う。
なお、本実施形態においては、ねじ測定用プローブ14とめねじ16との相対移動を、めねじ16の軸線方向(Z軸方向)、めねじ16の軸線直交方向(XY軸方向)に行うため、ねじ測定用プローブ14が、座標測定機本体12のZ軸スピンドル40に設けられおり、座標測定機本体12に対し、XYZ軸方向に相対移動自在とし、また座標測定機本体12のZ軸方向とめねじ16の軸線方向とが平行となるように、めねじ16が座標測定機本体12のテーブル42上にセットされている。
本実施形態においては、前記各工程をねじ測定装置10に自動実行させるため、コンピュータ44と、コントローラ46と、を備える。
ここで、コンピュータ44は、座標測定機本体12の動作制御、及びデータ処理を行うために用いられる。
また、コントローラ46は、コンピュータ44と座標測定機本体12との間に設けられ、コンピュータ44からの指示に基づいて、座標測定機本体12を動作させる。
本実施形態にかかるねじ測定装置10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
本実施形態においては、スタイラス軸の先端に、めねじのピッチに応じて選択された直径のスタイラス先端球22の付いているねじ測定用プローブで、図2に示されるようなめねじ16の軸線を含む断面図における、めねじ16の内側寸法Dを測定し、前記有効径演算式からめねじ16の有効径Dを求める。
ここで、めねじ16の内側寸法Dは、めねじ16の軸線50と一致する中心軸線52を有し、かつめねじ16のねじ溝に直径2rのスタイラス先端球22を当てたときのスタイラス先端球22の中心を通る円筒54の直径に等しい。
また、めねじ16の有効径Dは、めねじ16のねじ山の幅と谷の幅とが等しい点を通る円筒56の直径Dをいう。
このために本実施形態においては、図3に示されるような、内側寸法測定工程(S10)と、有効径演算工程(S12)と、を備える。
ここで、内側寸法測定工程(S10)は、めねじ16にスタイラス先端球22を当て測定された座標値情報から、めねじの軸線と一致する中心軸線を有し、かつめねじ16のねじ溝にスタイラス先端球22を当てたときのスタイラス先端球22の中心を通る円筒の直径に等しい内側寸法情報Dを測定する。
また有効径演算工程(S12)は、内側寸法測定工程(S10)で測定された内側寸法情報D、スタイラス先端球22の直径情報2r、めねじ16のねじ山角情報α、及びめねじ16のピッチ情報Pから、めねじ16の有効径情報Dを、D=D+2r・cosec(α/2)−(P/2)・cot (α/2)の有効径演算式で求める。
なお、本実施形態において、内側寸法測定工程(S10)は、ねじ溝検出工程(S14)と、内側寸法演算工程(S16)と、を備える。
ここで、内側寸法測定工程(S10)は、めねじ16のねじ穴の壁面にスタイラス先端球22を接触させた状態で、めねじ16の軸線方向に這わせて、スタイラス先端球22のめねじ径方向外側(X方向又はY方向)への最大変位点を、スタイラス先端球22がめねじ16のねじ溝(谷)に完全に入った時として検出する。
すなわち、本実施形態において、ねじ溝検出工程(S14)では、スタイラス20を、めねじ16のねじ穴に挿入する(同図(A))。
めねじ16の完全ねじ部、例えばねじ穴の上部から4谷目当たりに、スタイラス先端球22を押し込む(同図(B))。
スタイラス先端球22を、ねじ穴壁面に押付けながら、めねじの軸線方向(Z軸方向)に移動させる、スタイラス先端球22によるねじ穴壁面のトレースを行う(同図(C))。
このとき、ねじ穴の半径方向外側への最大変位点で、スタイラス先端球22がめねじのねじ溝(谷)に完全に入ったと推測される。
これを、ねじ穴の壁面上において周方向に離隔する3箇所以上、つまり同図(D)に示されるようなねじ穴を上方より見た図において、ねじ溝の周方向に離隔している三の測定箇所60,62,64で行う。
内側寸法演算工程(S16)は、ねじ溝検出工程(S14)で検出された各測定箇所60,62,64のねじ溝66,68,70の座標値情報から、円筒の直径を求めることにより、内側寸法情報Dを求める。
このように本実施形態においては、実際にスタイラス先端球22をめねじ16に当てることで測定された内側寸法D、前記有効径演算式等から、有効径Dを求めている。
この結果、本実施形態においては、これらの組み合わせが考慮されていないものに比較し、めねじ有効径の自動測定を、より正確に行うことができる。
例えば、本実施形態においては、CNC式三次元測定機上で、めねじの有効径を正確に測定することができる。
また本実施形態においては、自動測定のため、めねじゲージによる手動測定よりも測定効率が高い。
本実施形態においては、これを、めねじを高精度で加工する製造工程に取り入れることにより、めねじ有効径の定量的な管理を正確に及び容易に行うことができる。
<測定の正確さ>
ところで、めねじ有効径の自動測定を、より正確に行うため、ねじ測定用プローブ14は、スタイラス先端球22の直径2rが、2r=P/(2cosα/2)の数式で表せることが好適である。
以下に、本実施形態において好適なスタイラス先端球22の直径2rとめねじ16のメートルピッチP(ユニファイねじ山数)との関係について、具体例を示す。
Figure 0004828974
このようにして本発明によれば、測定対象となるめねじ16の形状に応じてスタイラス先端球22の直径2rを最適化し、また前記有効径演算式による有効径演算との組み合わせを採用することによりはじめて、めねじ16の有効径を自動測定する際に、従来方式、つまりスタイラス先端球22の直径2rに関し考慮のなされていないものに比較し、正確さを大幅に向上することができる。
すなわち、従来においても、特許文献1に示されるような三次元測定機によるねじ形状測定が考えられる。
しかしながら、特許文献1に示されるようような三次元測定機にあっても、特にめねじの有効径測定は正確さの点で改善の余地が残されていた。従来は、これを解決することのできる適切な技術も存在しなかった。
これに対し、本発明者らが、めねじ有効径の自動測定について検討の結果、以下の点に気付いた。
すなわち、従来の三次元測定機によるねじ形状測定では、基本的に画像処理上での測定、つまり倣い測定結果から求めたねじ形状から仮想上のねじ形状を作る。画像処理上において、仮想上のねじ形状に対し、やはり仮想上の三針ゲージを当て有効径を求めることが技術常識であった。
ここで、実際のねじ測定から、画像処理上での仮想上のねじ測定への変換時に、測定誤差を生じる要因が潜んでいることがわかった。
具体的には、実際のめねじ形状から、仮想上のめねじ形状への変換(近似)の際に誤差を生じることがある。また実際のスタイラス先端球形状から仮想上のスタイラス先端球形状への近似の際に誤差が生じることがある。このため実際のめねじ上でのスタイラス先端球の接触による実測定と、仮想上のめねじ形状に対する仮想上のスタイラス先端球形状との接触によるシミュレーションとは異なる。
このような実際のねじ測定と仮想上でのねじ測定との間には誤差があるにもかかわらず、従来は、これらの間の補正は考慮されておらず、またこれらの補正は非常に困難である。このような誤差が、三次元測定機によるめねじの有効径測定を行う際に正確さの向上を妨げる原因となり得ることがわかった。
これに対し、本発明者らは、三次元測定機によるめねじ有効径の自動測定において正確さを向上するためには、仮想上でねじ測定を行うのでなく、実際に三次元測定機のねじ測定用プローブをめねじに当て内側寸法の測定を行うことが非常に重要である点、前記有効径演算式による有効径演算との組み合わせを行うことが非常に有効である点を発見した。
しかも、本発明者らは、単に内側寸法を直接測定しただけでは、満足のゆく正確さの向上を図るのが困難であり、特に前記めねじ有効径の測定結果に対して悪影響を及ぼすであろう誤差の影響が最も少なくなるように選択された最適なスタイラス先端球直径を持つねじ測定用プローブを用いることが非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
この機能について未だ不明な点もあるが、前記めねじ有効径の測定結果に対して悪影響を及ぼすであろう誤差の影響が最も少なくなるように選択された最適なスタイラス先端球直径を持つねじ測定用プローブで実際に内側寸法測定を行うことで、特にめねじのねじ溝(谷)に対するスタイラス先端球の適切な接触位置の再現性(正確さ)が向上するため等が考えられる。
測定の容易化
まためねじ有効径の測定を、より容易に行うため、スタイラス形状の工夫も非常に重要である。
すなわち、めねじの有効径測定では、スタイラス軸先端のスタイラス先端球をめねじのねじ溝(谷)に接触させるため、スタイラス軸がねじ山と干渉しない工夫が重要である。
<L字スタイラス>
このために本実施形態においては、図4に示されるようなL字スタイラスを採用することも非常に重要である。
同図(A)はL字スタイラスの全体図、同図(B)はL字スタイラスの拡大図、同図(C)は該L字スタイラスによる測定の手順の説明図である。
同図においては、スタイラス20が、ねじ軸線と一致するスタイラス軸線を有する本体側スタイラス軸部70と、本体側スタイラス軸部70aに直交し、先端にスタイラス先端球22の付いている先端側スタイラス軸部72と、を含むL字状であることが好適である。
また同図においては、めねじ有効径の自動測定を、より適正に行うため、検出器が、歪みゲージ74a,74bを含むことが好適である。
ここで、歪みゲージ74a,74bは、本体側スタイラス軸部70に設けられ、めねじの座標値情報を得るための、先端側スタイラス軸部72方向の歪情報(方向、変位量)を検出する。
本実施形態においては、歪ゲージ74a,74bで検出された歪情報に基づき、スタイラス先端球22のめねじ径方向(X軸方向又はY軸方向)の座標値情報(例えば位置情報又は変位情報)を検出する。
この結果、本実施形態においては、同図に示されるようなL字スタイラスを用いて、各測定箇所の測定が終了する毎に、ねじ測定用プローブを回転させることで、同様の測定を3ヶ所以上において容易に行うことができる。
例えば同図(C)に示されるような三の測定箇所60,62,64の測定を行うことにより、極めて正確な内側寸法測定を容易に行うことができるので、極めて正確な有効径測定を、より容易に行うことができる。
<十字スタイラス>
また本実施形態においては、L字スタイラスに代えて、図5に示されるような十字スタイラスを採用することも非常に重要である。
同図(A)は十字スタイラスの全体図、同図(B)は十字スタイラスの拡大図、同図(C)は十字スタイラスによる測定手順の説明図である。
同図においては、スタイラス先端球をめねじのねじ溝(谷)に接触させて測定を行う際に、スタイラス先端球がねじ山と干渉しないように、スタイラス軸が、めねじの軸線方向に伸びる本体側スタイラス軸部70と、本体側スタイラス軸部に直交し、めねじの軸線直交方向において、互いに90度だけずれた四の先端側スタイラス軸部72a,72b,72c,72dと、を含む十字状とすることも好適である。
同図に示されるような十字スタイラスを備えたねじ測定用プローブにおいても、めねじ有効径の自動測定を、より適正に行うため、検出器として歪みゲージを含むことが好適である。
同図においては、歪みゲージが、例えばX軸方向の歪み情報を検出する歪みゲージ74a,74bと、Y軸方向の歪み情報を検出する歪みゲージ74c,74dと、を含む。
本実施形態においては、同図に示されるような十字スタイラスを用いることにより、ねじ測定用プローブを回転させることなく、四の測定箇所の測定が容易に行える。
例えば、同図(C)に示されるように、ねじ測定用プローブを回転させることなく、スタイラス先端球22aによる測定箇所60の測定、スタイラス先端球22bによる測定箇所62の測定、スタイラス先端球22cによる測定箇所64の測定を順次、行うことができる。
同図に示されるような十字スタイラスは、前記L字スタイラスと同様、極めて正確な内側寸法測定を容易に行うことができるので、正確な有効径測定も、より容易に行うことができる。
さらに、十字スタイラスは、スタイラスの回転を行うことなく、より多くの測定箇所の測定が迅速に行えるので、前記L字スタイラスに比較し、より効率的に測定を行うことができる。
ここで、前記検出器として前記歪みゲージに代えてスケールを採用することも好適である。
なお、本実施形態においては、倣いプローブによる倣い測定工程を用いた例について説明したが、タッチプローブによるポイント測定も好ましい。
また前記構成では、めねじに関する座標値情報から仮想上の円筒を求め、その直径から内側寸法を求めた例について説明したが、内側寸法を直接、求めることも好適である。
すなわち、めねじの軸線を中心に180度ずれためねじの相対向するねじ溝(谷)上の二の測定点に順次、スタイラス先端球を当接したときのスタイラス先端球中心位置の離隔距離を求めることにより、内側寸法を直接、求めることができる。
この結果、本実施形態は、測定対象となるめねじのピッチに応じて最適なスタイラス先端球直径を選択しているねじ測定用プローブで直接測定を行うので、大量の形状データを取得することなく、めねじ有効径を直接的に算出することもできる。これにより、本実施形態は、三次元測定機によるめねじ有効径の自動測定を採用した際の測定の正確さを、より大幅に向上することもできる。
本実施形態にかかる、めねじのピッチに応じて直径の選択されたスタイラス先端球を含むねじ測定用プローブ及び前記有効径演算式による有効径演算を、特許文献1に記載の技術に適用し、めねじ有効径以外のねじ形状特性値、例えばおねじの有効径、有効深さ等の測定に用いることもできる。
本実施形態にかかるねじ測定装置の概略構成の説明図である。 本実施形態における内側寸法、有効径の説明図である。 本実施形態にかかるねじ測定方法の処理手順を示すフローチャートである。 本実施形態にかかるL字スタイラスを用いたねじ測定用プローブの説明図である。 本実施形態にかかる十字スタイラスを用いたねじ測定用プローブの説明図である。
符号の説明
10 ねじ測定装置
12 座標測定機本体
14 ねじ測定用プローブ
18 プローブ本体
20 スタイラス
22 スタイラス先端球
30 内側寸法測定機構
32 有効径演算手段

Claims (6)

  1. 測定対象となるめねじのピッチPと、該めねじのねじ山角αとで表される2r=P/(2cos(α/2))の数式を満たした直径2rのスタイラス先端球を持つねじ測定用プローブを選択し、該ねじ測定用プローブを備えた座標測定機を用い、前記スタイラス先端球を前記めねじのねじ溝に当て測定された座標値情報から、該めねじの軸線と一致する中心軸線を有し、かつ該めねじのねじ溝に該スタイラス先端球を当てたときの該先端球中心を通る円筒の直径に等しい内側寸法情報Dを測定する内側寸法測定工程と、
    前記内側寸法測定工程で測定された内側寸法情報D、前記スタイラス先端球の直径情報2r、測定対象となるめねじのねじ山角情報α及びピッチ情報Pから、該めねじの有効径情報Dを、D=D+2r・cosec(α/2)−(P/2)・cot (α/2)の有効径演算式で求める有効径演算工程と、
    を備えたことを特徴とするねじ測定方法。
  2. 請求項1記載のねじ測定方法において、
    前記内側寸法測定工程は、前記めねじの壁面に前記スタイラス先端球を接触させた状態でねじ軸方向に這わせて、該スタイラス先端球の該めねじ径方向外側への最大変位点を、該スタイラス先端球が該めねじのねじ溝に完全に入った時として検出するねじ溝検出を、該めねじの壁面において周方向に所定の角度だけずれた二以上の測定箇所で行うねじ溝検出工程と、
    前記ねじ溝検出工程で検出された各ねじ溝の座標値情報から、前記内側寸法情報Dを求める内側寸法演算工程と、
    を備えたことを特徴とするねじ測定方法。
  3. 座標測定機本体に設けられ、めねじの有効径の測定に用いられるねじ測定用プローブにおいて、
    前記座標測定機本体上の測定対象となるめねじに対し相対移動自在に設けられたプローブ本体と、
    前記プローブ本体に設けられたスタイラス軸、及び該スタイラス軸の先端に設けられ、
    測定対象となるめねじのピッチに応じて選択された直径を有するスタイラス先端球を含むスタイラスと、
    前記プローブ本体ないし前記スタイラスに設けられ、測定対象となるめねじに関する座標値情報を検出するための検出器と、を備え、
    前記スタイラス先端球が、前記めねじのピッチPと、該めねじのねじ山角αとで表される2r=P/(2cos(α/2))の数式を満たした直径2rを有することを特徴とするねじ測定用プローブ。
  4. 請求項3記載のねじ測定用プローブにおいて、
    前記スタイラスは、前記スタイラス軸が、測定対象となるめねじの軸線と一致するスタイラス軸線を有する本体側スタイラス軸部と、
    前記本体側スタイラス軸部に直交し、かつ前記座標値情報の検出方向に平行なスタイラス軸線を有し、先端に前記スタイラス先端球を持つ先端側スタイラス軸部と、
    を含むことを特徴とするねじ測定用プローブ。
  5. 請求項3又は4記載のねじ測定用プローブにおいて、
    前記検出器が、前記プローブ本体ないし前記スタイラス軸に設けられ、測定対象となるめねじに関する座標値情報を検出するための歪ゲージ又はスケールを含むことを特徴とするねじ測定用プローブ。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載のねじ測定用プローブと、
    測定対象となるめねじがセットされ、該めねじと前記ねじ測定用プローブとの間を相対移動自在とする座標測定機本体と、
    を備え、前記めねじの有効径を測定するねじ測定装置であって、
    前記スタイラス先端球を測定対象となるめねじのねじ溝に当て測定された座標値情報から、該めねじの軸線と一致する中心軸線を有し、かつ該めねじのねじ溝に該スタイラス先端球を当てたときの該スタイラス先端球中心を通る円筒の内側寸法情報Dを測定する内側寸法測定機構と、
    前記内側寸法測定機構で測定された内側寸法情報D、前記スタイラス先端球の直径情報2r、測定対象となるめねじのねじ山角情報α及びピッチ情報Pから、該めねじの有効径情報Dを、D=D+2r・cosec(α/2)−(P/2)・cot (α/2)の有効径演算式で求める有効径演算手段と、を備えたことを特徴とするねじ測定装置。
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