JP4821149B2 - フィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法 - Google Patents

フィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法 Download PDF

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本発明は、ポリブチレンテレフタレートフィルムに関し、詳しくはフィルムのネックインを抑制したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法に関するものである。
熱可塑性ポリエステル樹脂、中でもポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、必要により「PBT」と略す。)は、優れた耐熱性、成形性、耐薬品性及び電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種自動車部品、電気部品、機械部品及び建設部品などの用途に使用されている。
また、近年ではPBTの有するバリア性・耐熱性・形状保持性能などを活かしたフィルム用途分野での応用が注目されている。しかしながら、PBT樹脂をTダイからフィルム状に溶融樹脂を押し出す際など、溶融樹脂フィルムの幅がリップ幅比、非常に小さくなるというネックイン現象を起こし、例えば、紙とPBTとの押出ラミネーションを行う場合、PBTのネックインが大きく、紙幅に対して、PBTの幅が狭くなり、製品としての有効幅が非常に小さくなり、経済的に満足できなかった。
上記問題を解決するために、例えば、特許文献1および2に記載されているように三官能以上の多塩基酸または多価アルコール成分を共重合させたポリエステルを配合してなるポリエステルを使用することによりネックインを小さくする方法が開示されているが、フィルムの横揺れが発生し、製膜性の安定が認められなかった。
また、特許文献3に記載されているようにポリブチレンテレフタレート樹脂に直鎖状低密度ポリエチレンおよび/または低密度ポリエチレンを配合してなるインフレーション成形して得られる押出成形フィルムが開示されているが、低密度ポリエチレンの配合量が多く、PBTの特性を保持できなかった。
特開平10−86308号公報 特開2000−71388号公報 特開平5−177703号公報
本発明は前記従来技術を更に改良することを目的とするものである。即ち、溶融押出時のネックインが小さいフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法を提供するものである。
本発明者等はかかる従来技術の有する問題点を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成したものであって、その目的とするところはポリブチレンテレフタレートで溶融押出する際に、ネックインが小さいフィルムを提供するための樹脂組成物、およびネックインが小さいポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法である。すなわち、
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、低密度ポリエチレンを脂(B)0.1〜5重量部、ケイ酸金属塩充填材(C)0.008〜0.3重量部を含有することで構成されるフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、
(2)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が0.7〜1.9である(1)に記載のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、
(3)ケイ酸金属塩充填材(C)がタルクである(1)または(2)のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
(4)(1)〜()のいずれかのフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をTダイで押し出すことを特徴とする、ポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法、
)(1)〜()のいずれかのポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフィルム、
を提供するものである。
本発明のフィルム用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、フィルム作成時にネックインが低減できるので、紙等の異種のフィルムとPBTとの押出ラミネーションを行う場合に異種のフィルムと同等のPBTフィルムを製造することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明で使用するポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とし重縮合反応させる等の通常の重合方法によって得られる重合体であって、特性を損なわない範囲、例えば20重量%程度以下、他の共重合成分を含んでも良い。これら(共)重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられ、単独で用いても2種以上混合しても良い。
ポリブチレンテレフタレートの固有粘度は0.7〜1.9が好ましく、より好ましくは0.8〜1.85、さらに好ましくは1.2〜1.8である。固有粘度が0.7未満であるとフィルムの耳揺れが大きく、また1.9より大きいと押出機の負荷が大きくなるため好ましくない。
本発明の低密度ポリエチレン(B)とは、高圧重合法でラジカル重合させて、得られる比重が0.910〜0.930の範囲にあるポリエチレンである。低密度ポリエチレンの添加配合量は(A)を100重量部とした場合、0.1〜5重量部、特に1〜3重量部が好ましい。0.1重量部未満ではネックインの効果が乏しく、5重量部を越えるとPBT本来が持つ特性(バリア性、耐熱性、形状保持性)が損なわれるため好ましくない。
本発明においては、低密度ポリエチレン(B)とケイ酸金属塩充填材(C)を併用することにより、さらにネックイン改良の効果が認められる。ケイ酸金属塩充填材(C)の添加配合量は (A)を100重量部とした場合0.008〜1.2重量部、特に0.03〜0.3重量部が好ましい。0.008重量部未満ではネックインの改良効果が認められず、1.0重量部を超えるとPBTの持っている靭性が損なわれるため、好ましくない。
ケイ酸金属塩系充填材(C)としては、例えばタルクなどのケイ酸マグネシウム系充填材、カオリン等のケイ酸アルミニウム系充填材、マイカ等のケイ酸アルミニウム−カリウム系充填材、ワラステナイト等のケイ酸カルシウム系充填材などが挙げられる。なかでもケイ酸マグネシウム系充填材が好ましい。形状としては板状のものが好ましく、なかでも板状のケイ酸マグネシウム系充填材が特に好ましく用いられる。
ケイ酸金属塩充填材の平均粒子径は、0.3μm〜12.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.3〜3.0μmが良い。0.3μm未満であるとタルクが凝集し、十分樹脂に分散せず、ネックイン低減効果が認められず、12μmより大きいと、フィルムの異物となり、好ましくない。
またケイ酸金属塩系充填材(C)には必要に応じてシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等による表面処理を施すことができる。
本発明のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、強化材、充填剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤、難燃剤などの通常の添加剤および少量の他種ポリマーを添加することができる。
安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを含むベンゾトリアゾール系化合物、ならびに2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系化合物、モノまたはジステアリルホスフェート、トリメチルホスフェートなどのリン酸エステルなどを挙げることができる。
これらの各種添加剤は、2種以上を組み合わせることによって相乗的な効果が得られることがあるので、併用して使用してもよい。
なお、例えば酸化防止剤として例示した添加剤は、安定剤や紫外線吸収剤として作用することもある。また、安定剤として例示したものについても酸化防止作用や紫外線吸収作用のあるものがある。すなわち前記分類は便宜的なものであり、作用を限定したものではない。
離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、蜜ろう、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の石油系ワックス、ひまし油及びその誘導体、脂肪酸及びその誘導体等の油脂系ワックスが挙げられ、高級脂肪酸誘導体としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸と1価または2価以上のアルコールとのエステル、これら高級脂肪酸エステルを部分的に金属酸化物、例えばCa(OH)、NaOH、Mg(OH)、Zn(OH)、LiOH、Al(OH)を用いてケン化した部分ケン化エステル、高級脂肪酸と金属酸化物または金属水酸化物とから得られる完全ケン化物、高級脂肪酸、多価アルコールのエステルにつなぎ剤としてアジピン酸等のジカルボン酸を用いて縮合させた複合エステル、高級脂肪酸とモノアミンまたはジアミンから得られるモノまたはジアミドなどが挙げられる。
難燃剤の中で臭素系難燃剤としては、難燃性を付与するために、必要不可欠なものである。その臭素系難燃剤の具体例としては、ハロゲン化ポリカーボネート(例えばテトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー)、ハロゲン化アクリル樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂、ハロゲン化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールA・エチルエーテルオリゴマー、ハロゲン化ポリフェニレンエーテル(例えば、ポリジブロモフェニレンオキサイド)などの高分子量有機ハロゲン化合物;デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモフェノール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのエポキシ化物、テトラブロモビスフェノールA・ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA・ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA・2−ヒドロキシエチルエーテル等の臭素化ビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモ無水フタル酸、トリブロモフェノール、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化スチレン、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールSのビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などの低分子量有機ハロゲン化合物などを挙げることができ、これらの有機ハロゲン系難燃剤は単独で使用しても、2種以上併用してもよい。また、リン系、無機系などの難燃剤を使用することもできる。 多種ポリマとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、PPS樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどを添加することができる。
本発明のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法については通常知られている方法で実施すればよく、特に限定する必要はない。代表例として、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロールなど、公知の溶融混合機を用いて、200〜350℃の温度で溶融混練する方法を挙げることができる。各成分は、予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい。あるいは(A)〜(C)の合計量100重量部に対し、例えば1重量部以下であるような少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することもできる。なお、各成分に付着している水分は少ない方がよく、予め事前乾燥しておくことが望ましいが、必ずしも全ての成分を乾燥させる必要がある訳ではない。
本発明の樹脂組成物は、Tダイまたはインフレーションによる押出によるフィルムの製造に使用される。中でも、Tダイによる押出はダイリップから出たフィルムの両端を固定することが困難であり、ネックインのしやすい樹脂は有効フィルム幅の低減が顕著に現れるフィルムの製造方法であるため、ネックインが小さい本発明のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、Tダイによる押出によるフィルムの製造において好ましく使用される。
本発明のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、PBT樹脂の特性を維持し、かつフィルム作成時の溶融押出時のネックインが小さいフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供するものであり、かかる特性を活かして、紙、鋼板、異樹脂とのラミネーションフィルムに使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例および比較例に使用した配合組成物を以下に示す。
(A−a)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度1.74 東レ(株)社製PBT樹脂“トレコン”1400S
(A−b)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度1.26 東レ(株)社製PBT樹脂“トレコン”1200S
(A−c)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度0.85 東レ(株)社製PBT樹脂“トレコン”1100S
(B−a)低密度ポリエチレン 宇部興産製 Z322
(C−a)ケイ酸金属塩充填材 タルク ハイトロン 平均粒子径4.0μm (竹原化学工業製)
(C−b)ケイ酸金属塩充填材 タルク 平均粒子径1.0μm
(C−C)ケイ酸金属塩充填材 タルク 平均粒子径9.0μm
(C−d)ケイ酸金属塩充填材 タルク 平均粒子径0.4μm
(C−e)ケイ酸金属塩充填材 タルク 平均粒子径11.0μm
実施例及び比較例の評価は以下の方法により行った。
(i)ネックイン量の測定は40mmのTダイの単軸押出機を使用し、あらかじめ130℃×3h乾燥したPBTに低密度ポリエチレンおよび(または)ケイ酸金属塩充填材を添加し、シリンダ温度を260℃、ダイスの温度を260℃に設定し、スクリュウ回転数を100rpmとして製膜速度5m/minでフィルムを押出し、ダイのリップ幅400mmに対しての、実際のフィルム幅を23℃50%RH環境下で24h後に測定した。フィルムは20m採取し、1mおきに20点測定し、その平均値を400mmから引いた値をネックイン量と定義した。
(ii)ヒートサグは上記方法で作成したフィルムのMD方向を長軸(50mm)に取り、TD方向を10mmに取った短冊状の試験片を作成し、23℃50%RH環境下で24h放置後、治具で片側を固定した。試験片のもう一方を30mm出した状態で固定し、120℃×1minオーブンに固定治具と共に入れ、その後、23℃の雰囲気に出し、フィルムのたわんだ量を測定した。試験数は5回とし、その平均でヒートサグを求めた。
(iii)引張特性は、予め作成した上記と同様の50mm×10mmの試験片を用い、フィルム作成後、23℃、50%RH環境下で24時間放置後、測定した。試験機は島津製作所製 オートグラフUTM−5Tを用い、引張速度は、50mm/minである。試験を5回実施し、個々の値を平均することにより、引張伸びを求めた。
(iv)デッドホールド性の測定についてはMD方向を長軸(40mm)に取り、TD方向を20mmに取った短冊状の試験片を作成し、23℃50%RH環境下で24h放置後、MD方向に半分に折り、折り目に200gの重りを5秒間のせ、さらに5秒後にフィルムの立ち上がり角度を測定した。試験は5回実施し、個々の値を平均することによりデッドホールド性を求めた。
[実施例1〜4、比較例1〜6
(A)から(C)を表1に示す組合せで配合した。
各実施例の製造方法は(A)〜(C)をブレンドして、上記方法により、単軸の押出機でフィルムを作成した。
また、(B)低密度ポリエチレンおよび(C)ケイ酸金属塩充填材は予め、PBTとのマスターバッチを作成した後、ブレンドすることも可能であり、その作成方法は以下の通りである。(A)〜(C)の原料を押出機元込め部から供給して溶融混練を行い、ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化し、そのペレットと(A)とをブレンドし、所定の配合比率にした。押出条件はシリンダ温度250℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機を用いて製造した。得られた各材料は、130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、前記評価方法記載の方法を用いてフィルムを作成し、評価を行なった。その結果を表1に併記した。得られた組成物は何れも、ネックイン量低減を実現し、更にPBTの特性を維持していた。実施例1〜4、比較例1〜6の配合処方並びに評価結果を、表1に示す。
本発明のポリエステル樹脂組成物である実施例1〜はいずれもネックイン量、ヒートサグ、引張伸び、デッドホールド性で優れた結果を得た。
[比較例
比較例の配合処方並びに評価結果を、表1に示す。
比較例
(A)にポリブチレンテレフタレートのみを使用した。ネックイン量低減効果が認められなかった。
Figure 0004821149

Claims (5)

  1. ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、低密度ポリエチレン(B)0.1〜5重量部、ケイ酸金属塩充填材(C)0.008〜0.3重量部を含有することで構成されるフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が0.7〜1.9である請求項1に記載のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. ケイ酸金属塩充填材(C)がタルクである請求項1または2に記載のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をTダイで押し出すことを特徴とする、ポリブチレンテレフタレートフィルムの製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフィルム。
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