JP4785515B2 - 塩素の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ホスゲンと一級アミンとを反応させてイソシアネート類を合成する際に副生する塩化水素を原料とし、触媒の存在下、接触気相反応により塩化水素を酸化して塩素を製造する塩素の製造方法に関する。
塩素は、塩化ビニル、ホスゲンなどの原料として有用であり、塩化水素の酸化によって得られることもよく知られている。この塩化水素として、ホスゲンと一級アミンとを反応させてイソシアネート類を合成する際に副生物として得られる塩化水素を利用することが知られている。このようにして得られた塩化水素を、触媒の存在下、接触気相反応により塩化水素を酸化することで、塩素が製造される。
ここで、塩素の製造の原料となる塩化水素に硫黄成分が含まれていると、塩化水素の酸化の際に触媒に悪影響を及ぼす。このため、塩化水素中に含まれる硫黄成分は極力少なくすべきである。イソシアネート類の合成の際の副生物である塩化水素に含まれる硫黄成分の由来としては、ホスゲン合成時に用いる一酸化炭素中の硫化カルボニル・硫化水素・二酸化炭素・亜硫酸ガスや、同じくホスゲン合成原料である塩素中の亜硫酸ガスや硫酸ミスト、イソシアネート化に用いるアミン中の硫黄成分などが挙げられる。これら硫黄成分の大部分はイソシアネート類の合成の際に、イソシアネート類に混入したり、高沸点残渣とともに系外に排出されるものと考えられるが、その一部は副生物である塩化水素に混入するため、上述のような塩化水素の酸化の際における触媒活性に影響する。
この塩素の製造の原料として用いる塩化水素を精製する方法としては、たとえば、塩化水素を予め水吸収し、その後放散することで、硫黄成分などの不純物を除去する方法が知られている(たとえば、特許文献1(特開2000−34105号公報)を参照。)。また、塩化水素を水吸収させる際に酸化剤を添加することにより、硫黄成分を硫酸イオンとし、塩化水素ガス放散時に硫黄成分を混合させにくくする方法も知られている(たとえば、特許文献2(特開2004−345883号公報)を参照。)。しかしながら、これらの方法は複雑であるだけでなく、塩化水素を放散するエネルギが大きく、不経済であるという問題を有していた。
特開2000−34105号公報 特開2004−345883号公報 国際公開93/13184号パンフレット 米国公開公報2004/0141901号 Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry. Sixth, Completely Revised Edition, vol.26, p.71-81
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、塩化水素の水吸収および放散を行なわなくとも、塩素の製造に供される塩化水素中の硫黄成分を実用上反応に支障のないレベルにまで低減し得る方法を提供することである。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、塩化水素ガスに含まれる硫黄成分は、主としてイソシアネート類の合成の際に原料として使用されるホスゲンの合成時に用いる一酸化炭素中の硫黄成分に由来するものであり、一酸化炭素中の硫黄成分を2000volppb以下に制限することによって、イソシアネート類の合成の際の副生物である塩化水素中の硫黄成分を著しく低減でき、これによって塩化水素の酸化による塩素の製造を長期にわたって安定的に行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明の塩素の製造方法は、硫黄成分を含む一酸化炭素と塩素とを反応させて合成されたホスゲンと一級アミンとを反応させてイソシアネート類を合成する際に副生し、硫黄成分を含む塩化水素を原料とし、塩化水素の水吸収および放散を行なうことなく、触媒の存在下、接触気相反応により塩化水素を酸化して塩素を製造する方法において、ホスゲンの原料となる一酸化炭素中の硫黄成分を2000volppb以下とすることを特徴とする。
ここにおいて、塩化水素の酸化の際の未反応酸素を、水洗後、塩化水素の酸化のための反応原料の一部として再使用することが、好ましい。
本発明の塩素の製造方法においては、塩化水素の酸化により製造される塩素中の硫黄成分を1000volppb以下とし、これをホスゲンの原料の一部および/または全部として用いることが好ましい。
本発明の塩素の製造方法では、塩化水素の水吸収および放散を行なわなくとも、イソシアネート類の合成の際の副生物である塩化水素中の硫黄成分を著しく低減でき、これによって塩化水素の酸化による塩素の製造を長期にわたって安定的に行うことができる
図1は、本発明の塩素の製造方法を模式的に示す図である。本発明では、触媒の存在下、接触気相反応により塩化水素を酸化して塩素を製造するが、この酸化に供する塩化水素として、ホスゲンと一級アミンとを反応させてイソシアネート類を合成する際の副生物である塩化水素を用いる。そして、このイソシアネート類の原料となるホスゲンの合成方法は、特に制限されるものではない。たとえば、非特許文献1(Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry. Sixth, Completely Revised Edition, vol.26, p.71-81)に記載されたように、塩素と一酸化炭素とを反応させて合成することができる。図1に示す例では、電解塩素に当該塩素の製造方法で得られた塩素を再利用して混合し、これに一酸化炭素を反応させることで、ホスゲンを合成する。本発明の塩素の製造方法では、このホスゲンの原料となる一酸化炭素に含まれる硫黄成分を2000volppb以下(好ましくは1000volppb以下)とすることを特徴とする。
ここで、一酸化炭素から効率的に硫黄成分を除去する方法としては、従来公知の適宜の方法を用いることができる。たとえば、特許文献3(国際公開93/13184号パンフレット)に記載されているように、酸化鉄を含む活性炭を用いることによって、一酸化炭素ガス中の硫化水素を2000ppbにすることができる。また、たとえば特許文献4(US2004/014190)に記載されているように、一酸化炭素ガスに水蒸気を加え、活性アルミナ共存下にて有機性硫黄化合物を硫化水素に転化し、その後得られた硫化水素を吸収除去することによって、一酸化炭素中の硫黄成分を除去するようにしてもよい。この特許文献4に開示された方法によれば、一酸化炭素中の硫黄成分を2mg/m3(≒750volppb)にまで低減することが可能である。
一級アミンを合成する方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の方法にて合成することができる。たとえば、トルエンおよび硝酸を原料とし、水素と反応させることでニトロ化、アミン化して一級アミンを合成することができる。このようにして得られたホスゲンと一級アミンとを反応させることでイソシアネート類が合成される。
本発明の塩素の製造方法では、ホスゲンの原料となる一酸化炭素中に含まれる硫黄成分を低減することで、結果として、このホスゲンを用いてイソシアネート類を合成する際の副生物である塩化水素を酸化することにより塩素を製造する際における塩化水素中の硫黄成分を低減できる。上記方法で処理後の一酸化炭素中に含有される硫黄成分の濃度は2000volppb以下、好ましくは1000volppb以下である。なお、この硫黄成分の濃度は、たとえばガスクロマトグラフにより測定された値を指す。
図2は、本発明の塩素の製造方法における接触気相反応による塩化水素の酸化プロセスの好ましい一例を示す概念図である。本発明における接触気相反応による塩化水素の酸化は、通常、〔1〕反応工程、〔2〕吸収工程、〔3〕乾燥工程、〔4〕精製工程、の4つの工程を基本的に含む。
〔1〕反応工程
触媒下、塩化水素を含むガスを酸素で酸化し、塩素、水、未反応塩化水素および未反応酸素を主成分とするガスを得る工程である。ここで、塩化水素を含むガスとしては、図1に示すように、ホスゲンと一級アミンとを用いたイソシアネート類の合成の際の副生物である塩化水素が用いられる。該ガス中の塩化水素の濃度は10体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上のものが用いられる。塩化水素の濃度が10体積%よりも低い場合には、後述する精製工程で得られる未反応酸素を主成分とするガス中の酸素の濃度が低くなり、後述する循環工程で反応工程へ供給する該ガスの量を少なくしなければならないことがある。
塩化水素を含むガス中の塩化水素以外の成分としては、オルトジクロロベンゼン、モノクロロベンゼンなどの塩素化芳香族炭化水素、およびトルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、および塩化ビニル、1,2−ジクロロエタン、塩化メチル、四塩化塩素、塩化エチルなどの塩素化炭化水素、およびメタン、アセチレン、エチレン、プロピレンなどの炭化水素、および窒素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、ホスゲン、水素、硫化カルボニル、硫化水素、二酸化硫黄などの無機ガスが挙げられる。塩化水素と酸素の反応において、塩素化芳香族炭化水素および塩素化炭化水素は、二酸化炭素と水に酸化され、一酸化炭素は二酸化炭素に酸化され、ホスゲンは、二酸化炭素と塩素に酸化される。
酸素を含むガスとしては、酸素または空気が使用されるが、好ましくは酸素の濃度が80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上のものが用いられる。酸素の濃度が80体積%よりも小さい場合には、精製工程で得られる未反応酸素を主成分とするガス中の酸素濃度が低くなり、循環工程で反応工程へ供給する該ガスの量を少なくしなければならないことがある。酸素濃度が80体積%以上の酸素を含むガスは、空気の圧力スイング法や深冷分離などの通常の工業的な方法によって得ることができる。酸素を含むガス中の塩化水素以外の成分としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)などが挙げられる。
塩化水素1モルに対する酸素の理論モル量は0.25モルであるが、理論量以上供給することが好ましく、塩化水素1モルに対し酸素0.25〜2モルがさらに好ましい。酸素の量が過少であると、塩化水素の転化率が低くなる場合があり、一方酸素の量が過多であると生成した塩素と未反応酸素の分離が困難になる場合がある。
塩化水素を酸素で酸化するに際しては、金属酸化物担体上に酸化ルテニウムが担持された触媒を用いることが好ましい。金属酸化物担体上に酸化ルテニウムが担持された触媒を固定床反応器に充填して用いることで、触媒毒の影響を少なくすることができる。また、酸化ルテニウムを用いることで、触媒成分の揮発や飛散による配管などの閉塞トラブルを伴わず、かつ揮発や飛散した触媒成分の処理工程を必要とせず、また平衡的に有利な温度で塩素を製造できるために、未反応塩化水素と水を回収する工程、塩素と未反応酸素を分離する工程および未反応酸素を反応工程に供給する工程を簡略化し、よって設備コストおよび運転コストを低く抑制し得る。
触媒中の酸化ルテニウムの含有量は、0.1〜20重量%が好ましい。触媒中の酸化ルテニウムの含有量が0.1重量%未満であると、触媒活性が低く塩化水素の転化率が低くなる傾向にあるためであり、また、触媒中の酸化ルテニウムの含有量が20重量%を超えると、触媒価格が高くなる傾向にあるからである。
酸化ルテニウムの粒径は、特に制限されるものではないが、1〜10nmの範囲内であるのが好ましい。なお、前記酸化ルテニウムの粒径は、たとえば、電子顕微鏡による観察により測定された値を指す。
本発明における触媒中の金属酸化物担体としては、たとえば、γ−アルミナ、α−アルミナ、ルチル型チタニア、アナターゼ型チタニア、シリカ、ジルコニアなどの金属酸化物で形成された担体が挙げられる。中でも、反応活性が高く、また低下しにくいことから、アルミナ、チタニアで形成された金属酸化物担体を用いるのが好ましい。
本発明において特に好適な触媒として、具体的には、特開平10−338502号公報に記載された、酸化ルテニウムの含有量が、1〜20重量%であり、酸化ルテニウムの中心径が1.0〜10.0nmである担持酸化ルテニウム触媒または酸化ルテニウム複合酸化物型触媒を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
触媒の形状は、球形粒状、円柱形ペレット状、押出形状、リング形状、ハニカム状または成型後に粉砕分級した適度の大きさの顆粒状などで用いられる。この際、触媒直径としては5mm以下が好ましい。触媒直径が5mmを超えると、活性が低下する場合があるためである。触媒直径の下限は特に制限はないが、過度に小さくなると、触媒充填層での圧力損失が大きくなるため、通常は0.5mm以上のものが用いられる。なお、ここでいう触媒直径とは、球形粒状では球の直径、円柱形ペレット状では断面の直径、その他の形状では断面の最大直径を意味する。
反応方式としては、固定床反応器を用いた固定床気相流通方式が適用される。本発明における固定床式反応器には、たとえば特開2000−272907号公報に記載の方法によって、反応域のうち少なくとも二の反応域の温度制御を熱交換方式で行うものを用いてもよい。このような反応領域を2つ以上に分けた反応器では、第1段目の反応域を2つ準備し、2段目以降が被毒される前に、第1段目を交互に切り替えて使用すれば実質的に問題を回避できる。しかし、高価な反応器を2基準備することはコストの観点から不利であるという面もある。
固定床式反応器としては、単一または直列に連結された複数の固定床反応管で、反応管の外側にジャケット部を有するものが挙げられる。反応管内の温度は、ジャケット部の熱媒体によって制御される。反応で生成した反応熱は、熱媒体を通じて、スチームを発生させて回収することができる。熱媒体としては、溶融塩、有機熱媒体および溶融金属などを挙げることができるが、熱安定性や取り扱いの容易さなどの点から溶融塩が好ましい。溶融塩の組成としては、硝酸カリウム50重量%と亜硝酸ナトリウム50重量%の混合物、硝酸カリウム53重量%と亜硝酸ナトリウム40重量%と硝酸ナトリウム7重量%の混合物を挙げることができる。反応管に使用される材質としては、金属、ガラス、セラミックなどが挙げられる。金属材料としては、Ni、SUS316L、SUS310、SUS304、ハステロイB、ハステロイCおよびインコネルなどが挙げられるが、中でもNiが好ましく、炭素含有量が0.02重量%以下のNiが特に好ましい。
本発明の塩素の製造方法において、反応器の入口部における硫黄成分は、1000volppb以下であるのが好ましく、500volppb以下であるのがより好ましい。反応器の入口部における硫黄成分濃度が1000volppbを超えると、触媒の全部でなく被毒された触媒のみを交換すれば、硫黄の被毒を回避することができるが、交換の間プラントの運転を停止しなければならず、また非常に煩雑な作業が必要となる虞があるためである。本発明では、イソシアネート類の合成に用いられるホスゲンの原料となる一酸化炭素中に含有される硫黄成分を2000volppbに低減することで、上述した程度に低減された反応器の入口部における硫黄成分濃度を達成することができる。本発明においては、反応器の入口部における硫黄成分濃度が1000volppb以下であれば、実質的に問題なく運転可能であり、従来と比較して格段に高い硫黄成分濃度を許容することができるので、大掛かりな装置や煩雑な操作を伴って硫黄成分を完全に除去する必要がない。したがって、触媒を充填しなおすことなく、長期にわたって運転を継続することができる。なお、この反応器の入口部における硫黄成分濃度は、たとえばガスクロマトグラフ法により測定することができる。
〔2〕吸収工程
反応工程で得た塩素、水、未反応塩化水素および未反応酸素を主成分とするガスを、水および/または塩酸水と接触させることにより、および/または、冷却することにより、塩化水素と水を主成分とする溶液を回収し、塩素と未反応酸素を主成分とするガスを得る工程である。接触温度は0〜100℃、圧力は0.05〜1MPaで行われる。接触させる塩酸水の濃度は、25重量%以下が好ましい。また、塩素水和物析出防止のために、特開2003−261306号公報に記載の方法を採用するのが好ましい。
得られた溶液は、そのまま、あるいは溶液中に含まれる塩素を加熱、および/または窒素などの不活性なガスのバブリングにより除去した後、電解槽のpH調整、ボイラーフィールド水の中和、アニリンとホルマリンの縮合転移反応および塩酸水電解の原料、食品添加用などに用いることができる。また、ソーダハンドブック1998、p315の図3.173に記載されているように塩酸の全部および一部を放散させてHClガスを得、反応原料として塩素収率を高めることも、さらには特開2001−139305号公報に記載の方法で、前記放散後の残塩酸から水を除去することで、塩素の収率をほぼ100%にすることも可能である。
〔3〕乾燥工程
吸収工程で得たガス中の水分を除去することにより、乾燥したガスを得る工程である。乾燥工程後のガス中の水分は0.5mg/l以下、好ましくは0.1mg/l以下である。ガス中の水分を除去する化合物としては、硫酸、塩化カルシウム、過塩素酸マグネシウム、ゼオライトなどが挙げられるが、中でも使用後の排出が容易であることから、硫酸が好ましい。ガス中の水分を除去する方法としては、吸収工程で得た塩素と未反応酸素を主成分とするガスを硫酸と接触させる方法が挙げられる。
工程に加える硫酸の濃度は、90重量%以上が好ましい。硫酸濃度が90重量%よりも小さいと、ガス中の水分が十分に除去されないことがある。接触温度は0〜80℃、圧力は0.05〜1MPaで行われる。乾燥剤として硫酸を使用した場合は、乾燥工程の直後で硫酸ミストを除去するのが好ましい。たとえば、ブリンクエリミネーターや特開2003−181235号公報記載の方法を適用することができる。
〔4〕精製工程
乾燥工程で得た乾燥したガスを、塩素を主成分とする液体またはガスと未反応酸素を主成分とするガスとに分離することにより塩素を得る工程である。塩素を主成分とする液体またはガスと未反応酸素を主成分とするガスとに分離する方法としては、圧縮および/または冷却する方法、および/または公知の方法(特開平3−262514号公報、特表平11−500954号公報)が挙げられる。たとえば、乾燥工程で得たガスを圧縮および/または冷却することによって、塩素を主成分とする液体が未反応酸素を主成分とするガスと分離される。塩素の液化は、圧力と温度で規定される塩素が液体状態で存在し得る範囲で実施される。その範囲で低温にすればするほど、圧縮圧力が低くなるために圧縮動力は小さくできるが、工業的には設備などの問題から、圧縮圧力と冷却温度はこの範囲内の最適な経済条件を考慮して決められる。通常の運転においては、塩素液化の圧縮圧力は0.5〜5MPa、冷却温度は−70〜40℃で行われる。
得られた塩素を主成分とする液体は、そのまま、あるいは一部または全部を気化させた後、塩化ビニル、ホスゲンなどの原料として用いることができる。一部または全部を気化させた後に用いる場合は、乾燥工程で得られるガスの熱交換を行うことにより、気化に必要な熱の一部を得ると同時に、乾燥工程で得られるガス中の塩素の液化に必要な外部冷媒による冷却負荷を削減することが可能である。同様に、液体フロンの予備冷却や、塩素蒸留塔などの還流液の冷却や凝縮に用いることもできる。
本発明の塩素の製造方法においては、塩化水素の酸化の際の未反応酸素を、水洗後、塩化水素の酸化のための反応原料の一部として再利用することが好ましい。すなわち、図2に示す例では、上記精製工程にて塩素を主成分とする液体またはガスと分離後の未反応酸素を主成分とするガスの一部または全部を反応工程へ供給する。このようにすることにより、酸素原単位を低減できるという利点がある。この未反応酸素の水洗は特に制限されることなく、従来公知のように洗浄塔を用いて適宜行うことができる。
本発明の方法で製造された塩素中の硫黄成分は、好ましくは1000volppb以下であり、より好ましくは500volppb以下である。塩素中の硫黄成分が1000volppbを超える場合には、硫黄成分がイソシアネート類の合成プロセスに混入し、再び塩化水素の酸化のプロセスにリサイクルされる虞がある。この塩素中の硫黄成分は、たとえば水に捕集後、捕集液をイオンクロマト法で分析することで測定された値を指す。このような本発明で得られた塩素は、上述したイソシアネート類の合成に用いられるホスゲンの原料の一部および/または全部として用いられることが好ましい。これにより、塩化水素の酸化プロセスにおける触媒の寿命を伸ばすことができるという利点がある。
本発明の塩素の製造方法を模式的に示す図である。 本発明の塩素の製造方法における接触気相反応による塩化水素の酸化プロセスの好ましい一例を示す概念図である。

Claims (3)

  1. 硫黄成分を含む一酸化炭素と塩素とを反応させて合成されたホスゲンと一級アミンとを反応させてイソシアネート類を合成する際に副生し、硫黄成分を含む塩化水素を原料とし、塩化水素の水吸収および放散を行なうことなく、触媒の存在下、接触気相反応により塩化水素を酸化して塩素を製造する方法において、ホスゲンの原料となる一酸化炭素中の硫黄成分を2000volppb以下とすることを特徴とする塩素の製造方法。
  2. 塩化水素の酸化の際の未反応酸素を、水洗後、塩化水素の酸化のための反応原料の一部として再使用することを特徴とする請求項1に記載の塩素の製造方法。
  3. 塩化水素の酸化により製造される塩素中の硫黄成分を1000volppb以下とし、これをホスゲンの原料の一部および/または全部として用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の塩素の製造方法。
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