JP2012046363A - 塩化水素の製造方法および塩素の製造方法 - Google Patents

塩化水素の製造方法および塩素の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大気圧下における沸点が−50〜120℃である有機不純物を含有する塩化水素から、塩酸酸化プロセスの原料塩化水素ガスとしても十分使用可能な、有機不純物が除去された高純度の精製塩化水素を製造する方法を提供する。
【解決手段】大気圧下での沸点が−50〜120℃である有機不純物を含有する塩化水素を、大気圧下での沸点が130℃以上である有機溶媒と接触させることにより、該有機溶媒に有機不純物を吸収させて、塩化水素から有機不純物を除去する第一工程と、有機不純物が除去された塩化水素から、活性炭を用いて有機溶媒を除去することにより、精製塩化水素を得る第二工程とを備える塩化水素の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、塩化水素の製造方法に関し、より詳しくは、有機不純物を含有する塩化水素から、該有機不純物を含まない高純度の塩化水素を製造する方法に関する。また本発明は、当該高純度の塩化水素を原料とする塩素の製造方法に関する。
触媒の存在下、塩化水素を酸素により酸化して塩素を得る塩酸酸化プロセスでは、原料の塩化水素ガスとして、各種有機化合物の合成プロセスから副生する塩化水素が主に用いられる。当該原料塩化水素ガスは、有機化合物合成プロセスに応じて、微量ではあるが、種々の有機不純物を含有する。これら有機不純物は、塩酸酸化プロセスに用いられる触媒の活性を阻害したり、あるいは該触媒により酸化されて、多塩素化化合物などの他の不純物を生成させたりするおそれがあるため、できる限り除去されることが好ましい。
たとえば、原料塩化水素ガスとしては、アミンとホスゲンとの反応によりイソシアネートを得るプロセスにおいて副生する塩化水素ガスを用いることができる。当該イソシアネートプロセスで副生する塩化水素ガスは、主にモノクロロベンゼン(bp=131℃)、ジクロロベンゼン(bp=180℃)等の、比較的沸点の高い有機不純物を含むが、これらの不純物は、活性炭吸着により除去することができる(特許文献1)。
また、原料塩化水素ガスとして、塩化ビニルモノマー合成プロセスにおいて副生する塩化水素ガスを挙げることができる。塩化ビニルモノマー合成プロセスで副生する塩化水素ガスは、主にエチレン(bp=−103℃)、エタン(bp=−88℃)等の、比較的沸点の低い有機不純物を含むが、原料塩化水素ガスを一旦水に吸収させてこれらの不純物を廃ガスとして除去し、ついで該吸収液を放散させることにより、これら低沸点不純物が除去された塩化水素ガスを得ることができる(特許文献2)。
さらに、原料塩化水素ガスとしては、下記式:
36 + Cl2 → C35Cl +HCl
で示される反応によりプロピレンおよび塩素ガスからアリルクロライドを製造する際に副生する塩化水素ガスを使用し得るが、この場合にも、該副生塩化水素に含まれる有機不純物を除去する必要がある。当該アリルクロライドプロセスから副生される塩化水素ガスは、2−クロロプロパン(2CP、bp=36℃)、アリルクロライド(bp=23℃)、イソプロピルアルコール(bp=82℃)等の、沸点が中程度の有機不純物を含む。
前述したイソシアネートプロセスや塩化ビニルモノマー合成プロセスにおいても、副生する塩化水素ガス中に、沸点が中程度の有機不純物が含まれる場合がある。かかる有機不純物としては、たとえば、四塩化炭素(bp=77℃)、ジクロロメタン(bp=40℃)、クロロメタン(bp=−24℃)、ジクロロエタン(bp=57℃)、塩化ビニルモノマー(bp=−14℃)などを挙げることができる。
特開2003−112907号公報 特許第3606051号公報
有機不純物が中程度の沸点を有する場合、活性炭には十分に吸着しないため、活性炭吸着法では高純度の塩化水素を得ることができない。また、中程度の沸点を有する有機不純物は塩酸水に溶解することが多いため、上記吸収・放散による方法によっても除去は困難である。
本発明の目的は、大気圧下における沸点が中程度、具体的には−50〜120℃である有機不純物を含有する塩化水素から、塩酸酸化プロセスの原料塩化水素ガスとしても十分使用可能な、有機不純物が除去された高純度の精製塩化水素を製造する方法を提供することである。
すなわち本発明は、大気圧下での沸点が−50〜120℃である有機不純物を含有する塩化水素を、大気圧下での沸点が130℃以上である有機溶媒と接触させることにより、該有機溶媒に有機不純物を吸収させて、塩化水素から有機不純物を除去する第一工程と、有機不純物が除去された塩化水素から、活性炭を用いて有機溶媒を除去することにより、精製塩化水素を得る第二工程とを備える塩化水素の製造方法を提供する。
本発明の塩化水素の製造方法は、上記第一工程で得られる有機不純物を含有する有機溶媒から該有機不純物を除去し、回収された有機溶媒を上記第一工程に再利用する第三工程をさらに備えることが好ましい。第三工程における有機溶媒からの有機不純物の除去は、たとえば不活性ガス通気による放散により行なうことができる。
本発明の塩化水素の製造方法は、上記第一工程と第二工程との間に、有機不純物が除去された塩化水素を冷却することにより、有機溶媒の少なくとも一部を凝縮させて、これを除去する第四工程をさらに備えることが好ましい。
上記有機溶媒は、モノクロロベンゼンおよびジクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。また、上記有機不純物は、2−クロロプロパン、イソプロピルアルコールおよびアリルクロライドからなる群から選択される1種以上を含むものであってよい。
また本発明は、上記いずれかの方法により得られる精製塩化水素を、触媒の存在下に酸素と反応させる塩素の製造方法を提供する。
本発明の塩化水素の製造方法によれば、たとえばアリルクロライドプロセスから副生される塩化水素ガスのように、原料塩化水素ガスが沸点−50〜120℃の有機不純物を含有する場合であっても、当該有機不純物を効果的に除去することができ、高純度の精製塩化水素を得ることができる。
得られた高純度の精製塩化水素ガスは、塩酸酸化プロセスの原料として好適に用いることができる。すなわち、当該精製塩化水素ガスは、有機不純物が十分に除去されているため、塩酸酸化プロセスにおける触媒活性の阻害や、有機不純物の酸化による新たな不純物の副生などの問題を回避することができる。
本発明に係る塩化水素の製造方法の好ましい一例を模式的に示すフロー図である。 本発明に係る塩素の製造方法の好ましい一例を模式的に示すフロー図である。 本発明に従い、2−クロロプロパン(2CP)を含有する粗塩化水素から、有機溶媒としてモノクロロベンゼン(MCB)を用いて、精製塩化水素を得るプロセスの一例を模式的に示すフロー図である。
<塩化水素の製造方法>
図1は、本発明に係る塩化水素の製造方法の好ましい一例を模式的に示すフロー図である。以下、図1を参照して、本発明に従う塩化水素の製造方法の各工程について詳細に説明する。
(1)第一工程
本発明における第一工程は、大気圧(0MPaG、ゲージ圧)下での沸点が−50〜120℃である有機不純物を含有する塩化水素(以下、粗塩化水素ともいう)を、大気圧下での沸点が130℃以上である有機溶媒と接触させる工程である。有機溶媒との接触により、該有機溶媒に有機不純物を吸収させ、粗塩化水素から有機不純物を除去する。粗塩化水素としては、前述したアリルクロライドプロセス、イソシアネートプロセスまたは塩化ビニルモノマー合成プロセスから副生する塩化水素ガスを好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
アリルクロライドプロセスから副生する塩化水素ガスは、主に2−クロロプロパン〔2CP、bp(大気圧下における沸点、以下同様)=36℃〕、アリルクロライド〔bp=23℃〕、イソプロピルアルコール〔bp=82℃〕等の沸点が中程度の有機不純物を含む。また、イソシアネートプロセスや塩化ビニルモノマー合成プロセスにおいて副生する塩化水素ガスは、たとえば、四塩化炭素〔bp=77℃〕、ジクロロメタン〔bp=40℃〕、クロロメタン〔bp=−24℃〕、ジクロロエタン〔bp=57℃〕、塩化ビニルモノマー〔bp=−14℃〕等の沸点が中程度の有機不純物を含み得る。本発明の方法によれば、これら例示した有機不純物を代表例として、大気圧下での沸点が−50〜120℃である有機不純物を効果的に除去することができ、高純度の精製塩化水素を得ることができる。とりわけ、本発明の塩化水素の製造方法は、イソプロピルアルコール等の、塩酸水に対する溶解性が比較的高く、吸収・放散による方法では除去が極めて困難である有機不純物であっても効果的に除去することができる点で有利である。粗塩化水素は、1種または2種以上の有機不純物を含むものであってもよい。
粗塩化水素中の有機不純物含有量は特に制限されず、たとえば50〜5000質量ppm程度であることができる。
粗塩化水素と接触させる有機溶媒としては、大気圧下において130℃以上の沸点を有するものが選択される。このような有機溶媒を用いることにより、吸収(抽出)による有機不純物の除去が可能になるとともに、後述する第二工程(活性炭吸着処理)によって、塩化水素に含まれる有機溶媒を除去することが可能になる。
本発明で用いることができる有機溶媒は、大気圧下における沸点が130℃以上であることにより、沸点が−50〜120℃である有機不純物(たとえば、上で例示した有機不純物の少なくとも1種)に対して吸収(抽出)能を示すとともに、活性炭処理により除去可能であり、かつ、塩化水素に対して不活性な溶媒である限り特に限定されない。かかる有機溶媒の具体例は、たとえば、モノクロロベンゼン〔bp(大気圧下における沸点、以下同様)=131℃〕、オルトジクロロベンゼン〔bp=180℃〕、パラジクロロベンゼン〔bp=174℃〕、オルトキシレン〔bp=144℃〕、パラキシレン〔bp=138℃〕、ノルマルデカン〔bp=174℃〕等を含む。有機溶媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、当該混合有機溶媒が130℃以上の沸点を有するとは、沸点が最も低い溶媒が130℃以上の沸点を有するか、または共沸点が130℃以上であることを意味する。
有機溶媒の大気圧下での沸点の上限は特に限定されないが、あまり高いと活性炭からの脱着が困難であることから、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下である。
使用する有機溶媒は、有機溶媒への溶解による塩化水素のロスを抑制する観点から、塩化水素に対する親和性が低い溶媒であることが好ましく、より具体的には、低極性溶媒または非極性溶媒であることが好ましい。このような観点からも、モノクロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、オルトキシレン、パラキシレン、ノルマルデカン等から選択される1種以上を用いることが好ましい。
また、使用する有機溶媒は、粗塩化水素に含まれる有機不純物の沸点を考慮して選択することが好ましい。すなわち、後述する第三工程(有機溶媒のリサイクル工程)を備える場合、有機溶媒と有機不純物との間にある程度の沸点差がないと、有機溶媒と有機不純物との分離が困難となるため、この点を考慮して有機溶媒を選択することが好ましい。有機溶媒と有機不純物との沸点差は、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは30℃以上である。
粗塩化水素を有機溶媒と接触させる方法としては、接触面積を大きくできることから、図1に示されるような、配管102を通してスプレー塔である有機不純物吸収塔101の塔底から粗塩化水素を吹き込みつつ、配管103を通して塔上部から有機溶媒をシャワー状に噴霧する方法が好適である。スプレー塔の代わりに、充填物塔や棚段塔などの他の一般的な気液接触装置を用いてもよい。この他、有機溶媒浴に粗塩化水素をバブリングさせる方法などを採用することもできる。なお、図1では、後述する第三工程(有機溶媒のリサイクル工程)を含む方法を例示しており、配管103から有機不純物吸収塔101に導入される有機溶媒は、再生された有機溶媒と新有機溶媒との混合溶媒となっているが、これに限定されるものではなく、有機不純物吸収塔101に導入される有機溶媒は、新有機溶媒のみまたは再生有機溶媒のみであってもよい。
有機不純物吸収塔101に導入される粗塩化水素の供給量に対する有機溶媒の供給量は、粗塩化水素中の有機不純物の含有量や有機溶媒の有機不純物吸収(抽出)能などに応じて調整されるが、通常、有機溶媒の供給量は、粗塩化水素の供給量に対して0.1〜10質量倍程度である。また、有機不純物吸収処理時の有機不純物吸収塔内の温度は通常、−20〜50℃程度であり、圧力は通常、0〜1.0MPaGである。
粗塩化水素との接触により有機不純物を吸収した有機溶媒は、有機不純物吸収塔101の塔底から配管104を通して取り出される。この有機不純物を含有する有機溶媒は、後述する第三工程に供されてもよく、これによって得られる有機不純物が除去された有機溶媒(再生有機溶媒)は、本工程に再利用することができる。一方、有機溶媒との接触により有機不純物が除去された塩化水素は、有機不純物吸収塔101の塔頂から配管105を通して取り出される。この塩化水素は、次の第二工程(有機溶媒除去工程)に供される。
(2)第二工程
第二工程は、第一工程により得られた有機不純物が除去された塩化水素に含まれる有機溶媒を、活性炭を用いて除去する工程である。当該活性炭吸着処理は、図1に示されるように、配管105に接続された活性炭充填塔106に塩化水素を供給することにより行なうことができる。充填塔を用いた活性炭処理は、簡易な設備および運転方法で効率的に有機溶媒を除去できる点で有利である。活性炭充填塔106は、塔底部に設けられた有機溶媒を含有する塩化水素を導入するための供給口と、塔頂部に設けられた精製塩化水素を取り出すための排出口とを備えており、該供給口と有機不純物吸収塔101とが配管105によって接続される。
活性炭充填塔106に充填される活性炭としては、造粒活性炭(成型炭とも呼ばれる)を好ましく用いることができる。造粒活性炭を用いると、活性炭充填塔106での圧力損失(充填塔の供給口と排出口との間の差圧)を小さくすることができ、これにより、活性炭充填塔106に供給する塩化水素ガスの線速度を大きくすることができる。したがって、活性炭吸着処理の効率化を図ることができ、また、圧力損失を小さくできることにより、活性炭充填塔106を高く(細長く)することができるため、製造プラントにおける活性炭充填塔106の占有面積を低減することができる。
活性炭充填塔106に供給する塩化水素ガスの線速度は、通常、0.05〜1m/s程度であり、好ましくは0.1〜0.5m/sであり、さらに好ましくは0.1〜0.3m/sである。
造粒活性炭は、従来公知のいかなる形状のものを用いてもよく、たとえば円柱状、球状の造粒活性炭を用いることができる。なかでも、圧力損失低減等の観点からは、円柱状の造粒活性炭を用いることが好ましい。円柱状造粒活性炭の大きさは、圧力損失低減等の観点から、直径3〜10mm程度、長さ3〜20mm程度であることが好ましい。また、造粒活性炭中の硫黄成分濃度は、500質量ppm以下であることが好ましい。硫黄成分濃度を500質量ppm以下にすることにより、精製塩化水素中の硫黄分を少なくすることができ、たとえば該精製塩化水素を塩化水素酸化プロセスに使用した場合においても、長期にわたって酸化触媒の活性を維持することができる。
JIS K1474に準拠して測定される造粒活性炭の充填密度は、0.3〜0.6g/mlであることが好ましく、0.4〜0.5g/mlであることがより好ましい。充填密度が0.3g/ml未満であると、有機溶媒を十分に除去するために、より多量の活性炭を要し、活性炭充填塔のサイズが大きくなるという問題が生じ得る。また、充填密度が0.6g/mlを超えると、活性炭充填塔に充填したときに圧力損失が大きくなる傾向にある。
JIS K1474に準拠して測定される造粒活性炭の硬度は、95%以上であることが好ましい。硬度が95%以上の造粒活性炭を用いることにより、長期間塩化水素ガスに曝されても、造粒形状がより崩壊しにくくなるため、長期にわたって安定した品質の精製塩化水素を得ることができる。
また、造粒活性炭は、下記(a)〜(e)の条件のうち、少なくともいずれか1つを満たすことが好ましく、これらすべての条件を満たすことがより好ましい。なお、下記物性は、いずれもJIS K1474に準拠して測定される。
(a)乾燥重量減が5質量%以下である。
(b)強熱残分が5質量%以下である。
(c)pHが5.0〜8.5である。
(d)ヨウ素吸着能が1000mg/g以上である。
(e)アセトン吸着能が20mg/g以上である。
上記(c)〜(e)の条件(pH、ヨウ素吸着能、アセトン吸着能に関する条件)のうち、いずれか1つ以上、好ましくはすべてを具備する造粒活性炭を用いることにより、活性炭に十分な有機溶媒吸着能を付与することができる。また、乾燥重量減および/または強熱残分を5質量%以下とすることによっても有機溶媒吸着能を向上させ得る。
造粒活性炭としては、市販品を好適に用いることができる。かかる市販品としては、たとえば、日本エンバイロケミカルズ(株)製の「WH2X」、「G2X」、「GH2X」、「S2X」などを挙げることができる。これらはいずれも円柱状の造粒活性炭である。他の形状の造粒活性炭の市販品としては、球状である、日本エンバイロケミカルズ(株)製の「DX7−3」などがある。
有機溶媒を含有する塩化水素を活性炭充填塔に供給して、該塩化水素を造粒活性炭に接触させる際の活性炭充填塔内の温度は、通常、0〜150℃、好ましくは0〜80℃、より好ましくは0〜50℃である。温度が低すぎると、低温操作のため、冷凍機で冷凍する必要が生じ、経済的に不利になることがある。また、温度が高すぎる場合には、造粒活性炭への有機溶媒の吸着量が低下する場合があり、また、加熱エネルギー面からも経済的に不利になることがある。
なお、本工程での活性炭吸着処理により、有機溶媒含有量が十分に低い精製塩化水素が得られるように、本工程を実施する前に、第一工程で得られる有機不純物が除去された塩化水素に対して前処理(第四工程)を行ない、塩化水素中の有機溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。前処理としては、塩化水素を冷却することにより有機溶媒を凝縮させ、該凝縮溶媒を除去する操作が好適である。凝縮させた有機溶媒は、有機不純物吸収塔101にその塔頂から戻せばよい。
上記第一および第二工程を経て得られる精製塩化水素の有機不純物含有量および有機溶媒含有量は、それぞれ通常、10質量ppm以下であり、好ましくは5質量ppm以下である。精製塩化水素は、触媒の存在下、塩化水素を酸素で酸化し、塩素を得る塩化水素酸化プロセスの原料として好適に用いることができる。
(3)第三工程
本発明の塩化水素の製造方法は、上記第一工程で得られる有機不純物を含有する有機溶媒から該有機不純物を除去し、回収された有機溶媒を上記第一工程に再利用する第三工程(有機溶媒のリサイクル工程)をさらに備えることができる。有機溶媒から有機不純物を除去する方法としては、図1に示されるような不活性ガスを用いた放散による方法、すなわち、配管108を通してスプレー塔である分離塔107の塔底(もしくはその近傍)から不活性ガスを吹き込みつつ、配管104を通して塔上部から有機不純物を含む有機溶媒をシャワー状に噴霧する方法が好適である。スプレー塔の代わりに、充填物塔や棚段塔などの他の一般的な気液接触装置を用いてもよい。この他、リボイラー等による加熱によって有機不純物を放散させる方法を採用することもできる。不活性ガスの通気と加熱とを組み合わせて放散を行なってもよい。
不活性ガスを用いた放散を行なう場合、放散時の圧力は、通常、大気圧程度とされる。また、放散時の分離塔内の温度は、通常、20〜50℃程度である。不活性ガスとしては、特に限定されず、たとえば、窒素ガス、空気、ヘリウムガス、アルゴンガス等を挙げることができる。不活性ガスの供給量は、分離塔107に供給される有機溶媒量に対して、0.1〜10質量倍程度とすることができる。
放散により、有機溶媒中の有機不純物は、分離塔107の塔頂側に選択的に分配され、配管109より排出される。この塔頂から排出される留分は、若干量の有機溶媒および塩化水素ガスを含み得る。一方、有機不純物が除去された有機溶媒は、分離塔107の塔底から取り出され、再生有機溶媒として、配管110および配管103を通って有機不純物吸収塔101に導入される。
本工程(有機溶媒のリサイクル工程)を設ける場合において、有機不純物吸収塔101に供給される有機溶媒は、再生有機溶媒とともに、新有機溶媒を含むことができる。新有機溶媒は、図1に示されるように、配管103に接続された配管111より供給することもできるし、有機不純物吸収塔101に直接供給することもできる。
<塩素の製造方法>
図2は、本発明に係る塩素の製造方法の好ましい一例を模式的に示すフロー図である。本発明の塩素の製造方法は、原料の塩化水素ガスとして、上述の精製塩化水素を用いるものである。好ましくは、本発明の塩素の製造方法は、(1)触媒の存在下、精製塩化水素を酸素で酸化することにより塩素を含むガスを得る酸化工程、(2)酸化工程で得られた塩素を含むガスを水または塩酸水と接触させ、塩化水素および水を主成分とする溶液として未反応塩化水素を回収するとともに、塩素および酸素を主成分とするガスを得る吸収工程、(3)吸収工程で得られたガスを乾燥する乾燥工程、および(4)乾燥工程で得られたガスを、塩素を主成分とする液体またはガスと、未反応酸素を主成分とするガスとに分離する精製工程を含む。以下、各工程について説明する。
(1)酸化工程
酸化工程は、本発明の方法により得られる精製塩化水素を原料として、これを酸素で酸化することにより、塩素を含むガスを得る工程である。原料の塩化水素としては、精製塩化水素の他、後述する放散工程で得られる塩化水素を主成分とするガスを併用してもよい。また、他の方法で得られる塩化水素ガスを併用してもよい。
酸化工程における塩化水素ガスの酸化には、酸素を含むガスが用いられる。酸素を含むガスの酸素濃度は、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上である。また、酸素を含むガスとして空気を用いることも可能である。酸素濃度が80体積%以上のガスは、空気の圧力スイング法や深冷分離などの通常の工業的な方法によって得ることができる。酸素を含むガス中の酸素以外の成分としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)などが挙げられる。
塩化水素の酸化に際し、塩化水素1モルに対する酸素の理論モル量は0.25モルであるが、酸素を塩化水素に対し量論比より過剰に加えた方が、反応が効率的に進行することが知られている。したがって、酸素を含むガスは、理論量以上供給することが好ましく、具体的には、塩化水素1モルに対し酸素が0.25〜2モル程度となるように供給することが好ましい。酸素の量が過少であると、塩化水素の転化率が低くなる場合があり、一方、酸素の量が過多であると生成した塩素と未反応酸素との分離が困難となる場合がある。
酸化工程においては、精製塩化水素および/または後述する放散工程で得られる塩化水素を主成分とするガスを、そのまま酸素で酸化して塩素を製造することもできるが、これらのガスを冷却し、ガス中の水および塩化水素の一部を凝縮させてガス中の水の濃度を低減した後、未凝縮ガスを酸素で酸化して塩素を製造することもできる。また、精製塩化水素および/または放散工程で得られたガス、または当該ガスを冷却した未凝縮ガスをさらに濃硫酸などと接触させて水分を除去させた後、酸素で酸化して塩素を製造することもできる。
酸化工程における酸化反応の触媒としては、塩化銅と塩化カリウムに第三成分として種々の化合物を添加した触媒、酸化クロムを主成分とする触媒、酸化ルテニウムを主成分とする触媒などの従来公知の触媒を挙げることができるが、なかでも、金属酸化物担体上に酸化ルテニウムが担持された触媒を用いることが好ましい。金属酸化物担体上に酸化ルテニウムが担持された触媒を固定床反応器に充填して用いることにより、触媒毒の影響を少なくすることができる。また、酸化ルテニウムが担持された触媒の使用は、触媒成分の揮発や飛散による配管などの閉塞トラブルを伴わず、かつ、揮発や飛散した触媒成分の処理工程を必要とせず、また平衡的に有利な温度で塩素を製造できるために、未反応塩化水素と水を回収する工程、塩素と未反応酸素を分離する工程および未反応酸素を反応工程に供給する工程を簡略化することができ、もって設備コストおよび運転コストを低減できる点において有利である。
触媒中の酸化ルテニウムの含有量は、0.1〜20質量%が好ましい。触媒中の酸化ルテニウムの含有量が0.1質量%未満であると、触媒活性が低く塩化水素の転化率が低くなる傾向にある。また、触媒中の酸化ルテニウムの含有量が20質量%を超えると、触媒価格が高くなる傾向にある。
酸化ルテニウムの粒径は、特に制限されるものではないが、1〜10nmの範囲内であるのが好ましい。なお、酸化ルテニウムの粒径は、たとえば、電子顕微鏡による観察により測定された値を指す。触媒中の金属酸化物担体としては、たとえば、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ、ルチル型チタニア、アナターゼ型チタニア等のチタニア、シリカ、ジルコニアなどの金属酸化物で形成された担体が挙げられる。なかでも、反応活性が高く、また低下しにくいことから、アルミナまたはチタニアで形成された金属酸化物担体を用いることが好ましい。酸化工程に特に好適な触媒として、具体的には、特開平10−338502号公報に記載された、酸化ルテニウムの含有量が1〜20質量%であり、酸化ルテニウムの中心径が1.0〜10.0nmである担持酸化ルテニウム触媒または酸化ルテニウム複合酸化物型触媒を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
触媒の形状は、球形形状、円柱状ペレット状、押出形状、リング形状、ハニカム状または成型後に粉砕分級した程度の大きさの顆粒状などであることができる。触媒直径は、5mm以下であることが好ましい。触媒直径が5mmを超えると、活性が低下する場合がある。触媒直径の下限は特に制限はないが、過度に小さくなると、触媒充填層での圧力損失が大きくなるため、通常は0.5mm以上のものが用いられる。なお、ここでいう触媒直径とは、球形形状では球の直径、円柱形ペレット状では断面の直径、その他の形状では断面の最大直径を意味する。
反応方式としては、固定床反応器を用いた固定床気相流通方式が適用される。固定床式反応器には、たとえば特開2000−272907号公報に記載の方法によって、反応域のうち少なくとも2つの反応域の温度制御を熱交換方式で行なうものを用いることができる。
また、固定床式反応器としては、単一または直列に連結された複数の固定床反応管を有し、該反応管の外側にジャケット部を有するものが挙げられる。反応管内の温度は、ジャケット部の熱媒体によって制御される。反応で生成した反応熱は、熱媒体を通じて、スチームを発生させて回収することができる。熱媒体としては、溶融塩、有機熱媒体および溶融金属などを挙げることができるが、熱安定性や取り扱いの容易さなどの点から溶融塩が好ましい。溶融塩の組成としては、硝酸カリウム50質量%と亜硝酸ナトリウム50質量%の混合物、硝酸カリウム53質量%と亜硝酸ナトリウム40質量%と硝酸ナトリウム7質量%の混合物を挙げることができる。反応管の材質は、金属、ガラスまたはセラミックなどであることができる。金属としては、Ni、SUS316L、SUS310、SUS304、ハステロイB、ハステロイCおよびインコネルなどが挙げられるが、なかでもNiが好ましく、炭素含有量が0.02質量%以下のNiが特に好ましい。
酸化工程における酸化反応の反応温度は、塩化水素の酸化反応において通常選択される温度範囲内であれば特に制限されるものではないが、100〜500℃の範囲内であることが好ましく、200〜400℃の範囲内であることがより好ましい。反応温度が100℃未満である場合には、必要な反応速度が得られず、反応率が非常に低くなる虞があり、また、反応温度が500℃を超える場合には、触媒のシンタリングおよび揮発により活性が低下しやすくなる傾向にある。また、反応速度を適度なものとし、また設備コストが過大になり過ぎないようにするために、酸化反応の反応圧力は0.1〜1MPaGの範囲内であることが好ましく、0.1〜0.7MPaGがより好ましい。
(2)吸収工程
吸収工程は、酸化工程で得られた塩素を含むガスから、未反応塩化水素を回収するとともに、塩素および酸素を主成分とするガスを得る工程である。酸化工程で得られた塩素を含むガスは、塩素以外に、水、未反応塩化水素、未反応酸素、二酸化炭素、窒素およびアルゴン等を含む。吸収工程では、この塩素を含むガスを、水または塩酸水と接触させ、場合によってはさらに冷却することにより、未反応塩化水素を水または塩酸水に吸収させて塩化水素および水を主成分とする溶液とし、塩素および酸素を主成分とするガスを分離する。吸収工程で得られた塩化水素および水を主成分とする溶液は、後述する放散工程に供することができる。
吸収工程において、塩素を含むガスと水または塩酸とを接触させる際の温度は、特に制限されるものではないが、塩化水素の水への吸収性を損なわず、かつ、塩酸水溶液へのガス成分の溶存を極力避ける観点から、好ましくは0〜100℃である。また、当該接触の際の圧力は、同様の観点から、0.05〜1.0MPaGである。なお、吸収工程では、塩素水和物析出防止のために、特開2003−261306号公報に記載の方法を採用するのが好ましい。
(3)乾燥工程
乾燥工程は、吸収工程で得られた塩素および未反応の酸素を主成分とするガス中の水分を除去することにより、乾燥したガスを得る工程である。乾燥工程後のガス中の水分は、通常0.5mg/l以下、好ましくは0.1mg/l以下である。ガス中の水分を除去するために用いられる乾燥剤としては、硫酸、塩化カルシウム、過塩素酸マグネシウム、ゼオライトなどが挙げられるが、なかでも使用後の排出が容易であることから、硫酸が好ましい。ガス中の水分を除去する方法としては、吸収工程で得られた塩素と未反応の酸素を主成分とするガスを硫酸と接触させる方法が挙げられる。
乾燥工程において用いられる硫酸の濃度は、90質量%以上が好ましい。硫酸濃度が90質量%よりも小さいと、ガス中の水分が十分に除去されないことがある。接触温度は通常0〜80℃、接触時の圧力は通常0.05〜1MPaGである。乾燥剤として硫酸を使用した場合は、乾燥工程の直後に硫酸ミストを除去するのが好ましい。硫酸ミストの除去には、たとえば、ブリンクエリミネーターや特開2003−181235号公報記載の方法を適用することができる。
(4)精製工程
精製工程は、上述した乾燥工程で得られた乾燥したガスを、塩素を主成分とする液体またはガスと未反応酸素を主成分とするガスとに分離することにより塩素を得る工程である。塩素を主成分とする液体またはガスと未反応酸素を主成分とするガスとに分離する方法としては、圧縮および/または冷却する方法、および/または公知の方法(特開平3−262514号公報、特表平11−500954号公報)が挙げられる。たとえば、乾燥工程で得たガスを圧縮および/または冷却することによって、塩素を主成分とする液体が未反応酸素を主成分とするガスから分離される。塩素の液化は、圧力と温度で規定される塩素が液体状態で存在し得る範囲で実施される。その範囲で低温にすればするほど、圧縮圧力が低くなるために圧縮動力は小さくできるが、工業的には設備などの問題から、圧縮圧力と冷却温度はこの範囲内の最適な経済条件を考慮して決められる。通常の運転においては、塩素液化の圧縮圧力は0.5〜5MPaG、冷却温度は−70〜40℃である。
得られた塩素を主成分とする液体は、そのまま、あるいは一部または全部を気化させた後、たとえば塩化ビニル、ホスゲンなどの原料として用いることができる。一部または全部を気化させた後に用いる場合は、乾燥工程で得られるガスの熱交換を行なうことにより、気化に必要な熱の一部を得ると同時に、乾燥工程で得られるガス中の塩素の液化に必要な外部冷媒による冷却負荷を削減することが可能である。同様に、液体フロンの予備冷却や、塩素蒸留塔などの還流液の冷却に用いることもできる。
本発明の塩素の製造方法は、上記各工程以外に、(5)放散工程、(6)循環工程、(7)除害工程など、塩素の製造方法において通常含まれる公知の適宜の工程を任意に含んでいてもよい。以下、これらの各工程について説明する。
(5)放散工程
放散工程は、吸収工程で得られた塩化水素および水を含む溶液を放散させて塩化水素を主成分とするガスを得る工程であり、必要に応じて適用される。放散工程に供される塩化水素および水を含む溶液は、通常、当該放散工程の際の圧力下での塩化水素と水の共沸組成よりも多い塩化水素を含有する。このような塩化水素および水を含む溶液の組成は、通常、塩化水素25〜40質量%、水60〜75質量%である。
放散工程の際の圧力(放散塔の塔頂における圧力)は、当該放散工程に続いて後述する脱水工程を行なう場合には、脱水工程の際の圧力より高い圧力を選択するのが好ましく、通常、0.05〜1.0MPaGである。また、放散工程における温度(放散塔の塔底における温度)は、上記圧力と放散工程に供される塩化水素および水を含む溶液の組成により決まるが、通常、100〜180℃である。
放散工程において、放散塔の塔頂からは高濃度の塩化水素を主成分とするガスが得られる。このようにして得られた塩化水素を主成分とするガスは、上述したように、精製塩化水素と混合され、酸化工程に供することができる。なお、放散工程で得られた塩化水素を主成分とするガスは、若干の水を含んでいるが、これを冷却し、凝縮した塩化水素水溶液を放散塔に戻す分縮操作を加えることで、ガス中に含まれる水分を低減させることができる。塩化水素を主成分とするガスを分離後の塩酸水は、脱水工程に供し、塩酸と廃水とに分離し、回収された塩酸を吸収工程にリサイクルすることが好ましい。
脱水工程では、放散工程で用いた放散塔とは別個の放散塔を用い、放散工程よりも低い圧力下で、放散工程で得られた塩酸水を放散させる。当該塩酸水は、脱水工程における圧力での塩化水素と水の共沸組成よりも多く水を含む。この脱水工程では、上記塩酸水を放散し、放散塔の塔頂から水を回収し、放散塔の塔底から水と分離された塩酸を回収する。
脱水工程の際の圧力は、上述した放散工程の際の圧力よりも低く設定すればよく、特に制限されるものではないが、−0.090〜0.05MPaGであるのが好ましい。また、脱水工程の際の温度は、上記圧力と放散に供される塩酸水の組成により適宜決定されるが、通常50〜90℃である。この温度は、硫酸などの強電解質を第三成分として添加する場合の脱水工程の温度より低いため、使用する加熱源をより広い範囲から選択することができ、また機器の装置材料についても選択範囲が広くグラスライニングやグラスファイバー含有樹脂など、比較的安価なものが使用できる。
吸収工程および放散工程を含むことにより、分離回収が困難である酸化工程後の塩化水素水溶液を、第三成分を添加することなく、効率的に塩化水素と水とに分離回収することができ、こうして得られた塩化水素を主成分とするガスを再び酸化工程に供することで、結果としてさらに効率的に塩素を製造することが可能となる。
(6)循環工程
循環工程は、精製工程で得られた未反応酸素を主成分とするガスの一部または全部を酸化工程へ供給する工程である。未反応酸素を主成分とするガスを酸化工程に循環させるにあたっては、このガスを水で洗浄するなどして硫酸ミストを除去しておくことが好ましく、このような操作により、反応器の入口部における硫黄成分濃度は、1000体積ppb以下とされることが好ましい。
(7)除害工程
除害工程とは、精製工程で得られた未反応酸素を主成分とするガス、または上述した循環工程で酸化工程へ供給されなかったガスについて、該ガス中に含まれる塩素を除去した後、系外に排出する工程である。塩素を除害する方法としては、ガスをアルカリ金属水酸化物の水溶液、またはアルカリ金属チオ硫酸塩の水溶液、またはアルカリ金属亜硫酸塩とアルカリ金属炭酸塩を溶解させた水溶液、またはアルカリ金属亜硫酸塩とアルカリ金属炭酸塩を溶解させた水溶液、またはアルカリ金属水酸化物とアルカリ金属亜硫酸塩を溶解させた水溶液と接触させて除害する方法、ガス中の塩素を分離回収する公知の方法(特開平3−262514号公報、特開平10−25102号公報、特表平11−500954号公報)が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図3は、本発明に従い、2−クロロプロパン(2CP)を含有する粗塩化水素から、有機溶媒としてモノクロロベンゼン(MCB)を用いて、精製塩化水素を得るプロセスの一例を模式的に示すフロー図である。図3には、各工程の条件ならびに、塩化水素(HCl)、MCBおよび2CPの物質収支を示している。以下、図3を参照して、本実施例を説明する。
〔1〕第一工程(MCBによる2CPの除去)
2CPを1150体積ppmの濃度で含有する粗塩化水素ガス(1)(流量:1000kg/h、温度:20℃)を有機不純物吸収塔101の塔底から吹き込みながら、有機溶媒MCB(流量1000kg/h)を有機不純物吸収塔101の塔頂近傍からシャワー状に噴霧することにより、MCBに2CPを吸収させ、粗塩化水素ガスから2CPを除去する。有機不純物吸収塔101に導入されるMCBは、後述する第三工程によって回収される再生MCB(5)(流量999kg/h)と新MCB(8)(流量1kg/h)とからなる。塔内圧力(操作圧力)は、0.42MPaGである。
有機不純物吸収塔101の塔底からは、2CPを含有するMCB(4)(流量:1056kg/h、2CP濃度:0.23質量%、HCl濃度:5質量%)が連続的に取り出され、後述する第三工程に供される。一方、塔頂からは、2CPが除去された塩化水素ガス(2)(流量:965kg/h、2CP濃度:<1質量ppm、MCB濃度:1.2質量%)が連続的に取り出される。
〔2〕第三工程(MCBのリサイクル)
2ガス(7)(流量:1000kg/h、温度:40℃)を分離塔107の塔底から吹き込みながら、2CPを含有するMCB(4)(流量:1056kg/h、2CP濃度:0.23質量%、HCl濃度:5質量%)を分離塔107の塔頂近傍からシャワー状に噴霧することにより、2CPを放散、除去する。塔内圧力(操作圧力)は大気圧である。放散操作中、分離塔107の塔頂から留出する留分を冷却器にて冷却し、その一部を凝縮させ、凝縮液を分離塔107の塔頂に戻す。これによりMCBと2CPとの分離性能が向上する。凝縮液の冷却器出口における温度は−40℃である。
分離塔107の塔頂から回収されるガス(6)は、HCl、2CPおよびMCBを含む(HCl流量:53kg/h、2CP流量:2.5kg/h、MCB流量:1kg/h)。一方、分離塔107の塔底からは、再生MCB(5)(流量:999kg/h、2CP濃度:<1質量ppm、HCl濃度:<1質量ppm)が回収され、上記第一工程に再利用される。
〔3〕第四工程(塩化水素ガス中のMCBの凝縮、除去)
有機不純物吸収塔101の塔頂から取り出された、2CPが除去された塩化水素ガス(2)を冷却器にて冷却し、塩化水素ガス(2)に含まれるMCBを凝縮させる。凝縮液の冷却器出口における温度は−40℃である。凝縮されたMCBは、有機不純物吸収塔101の塔頂に戻される。MCBの一部が凝縮除去された塩化水素ガス(2)’(温度:−40℃、流量944kg/h、2CP濃度:<1質量ppm、MCB濃度:35質量ppm)が次の第二工程に供される。
〔4〕第二工程(活性炭吸着処理によるMCBの除去)
MCBの一部が凝縮除去された塩化水素ガス(2)’を活性炭充填塔106(造粒活性炭の充填体積:0.6m3)に、その塔底から供給し、活性炭吸着処理を行ない、MCBを除去する。塔内圧力(操作圧力)は、0.4MPaGである。活性炭充填塔106の塔頂から、高純度の精製塩化水素ガス(3)(流量944kg/h、2CP濃度:<1質量ppm、MCB濃度:<1質量ppm)を得る。
101 有機不純物吸収塔、102,103,104,105,108,109,110,111 配管、106 活性炭充填塔、107 分離塔。

Claims (7)

  1. 大気圧下での沸点が−50〜120℃である有機不純物を含有する塩化水素を、大気圧下での沸点が130℃以上である有機溶媒と接触させることにより、前記有機溶媒に前記有機不純物を吸収させて、前記塩化水素から前記有機不純物を除去する第一工程と、
    前記有機不純物が除去された塩化水素から、活性炭を用いて前記有機溶媒を除去することにより、精製塩化水素を得る第二工程と、
    を備える塩化水素の製造方法。
  2. 前記第一工程で得られる前記有機不純物を含有する有機溶媒から前記有機不純物を除去し、回収された有機溶媒を前記第一工程に再利用する第三工程をさらに備える請求項1に記載の塩化水素の製造方法。
  3. 前記有機不純物は、不活性ガス通気による放散により前記有機溶媒から除去される請求項2に記載の塩化水素の製造方法。
  4. 前記第一工程と第二工程との間に、前記有機不純物が除去された塩化水素を冷却することにより、前記有機溶媒の少なくとも一部を凝縮させて、これを除去する第四工程をさらに備える請求項1〜3のいずれかに記載の塩化水素の製造方法。
  5. 前記有機溶媒は、モノクロロベンゼンおよびジクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜4のいずれかに記載の塩化水素の製造方法。
  6. 前記有機不純物は、2−クロロプロパン、イソプロピルアルコールおよびアリルクロライドからなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜5のいずれかに記載の塩化水素の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法により得られる精製塩化水素を、触媒の存在下に酸素と反応させる塩素の製造方法。
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