JP4290793B2 - ホスゲンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含有不純物(四塩化炭素、塩素分子等)の少ないホスゲンを効率良く製造する方法に関する。更に詳しくは活性炭の総比表面積の異なる多段反応槽の総比表面積の一番小さい槽から一酸化炭素(以下、COと略称することがある。)と塩素(以下、Cl2と略称することがある。)を通気させる方法によって、含有不純物の少ないホスゲンを製造する方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ホスゲンは医薬分野、染料分野、ポリカーボネート樹脂・ウレタン樹脂・エポキシ樹脂等プラスチック分野等各種分野の原料として多用されている。このホスゲンの製造は反応熱を除去するための機能を有し、活性炭触媒を充填した反応槽に一酸化炭素/塩素(以下、CO/Cl2と略称することがある。)のモル比を1.000〜1.018で通気して反応せしめて、得られたホスゲンを凝縮器で凝縮せしめて液化ホスゲンを得る。凝縮器を出た残余のCO及び未凝縮のホスゲンガスはホスゲン中和塔(吸収塔)を経て放出される。この中和塔(吸収塔)には活性炭またはラシヒリングを充填した塔が使用され、これにか性ソーダ水溶液を通してホスゲンを分解する方法が一般的に採用されている。この方法によって得られたホスゲンは不純物として四塩化炭素100〜250ppm、塩素分子数千〜数万pppmと多量に含有し色相も悪い。また、このホスゲンを原料として製造された製品は良品質のものが得られない等のことから、このホスゲン中の四塩化炭素や塩素分子を少なくする方法が提案されている。
【0003】
例えば、特公昭55−14044号公報においてはCO/Cl2のモル比を1.000程度で反応せしめて、四塩化炭素含有量250ppm程度のホスゲンを製造する方法、特開昭62−297320号公報において四塩化炭素500ppm含有するホスゲンを蒸留してホスゲン中の四塩化炭素5ppmにする方法や特開平10−226724号公報においては塩素分子含有量500〜10000ppmのホスゲンを活性炭吸着する方法によってにホスゲン中の塩素分子が除去する方法が開示されている。しかし、何れの方法においても四塩化炭素と塩素分子含有量を各々単独で低減する方法であって、両者を同時に効率よく低減することはできなかった。また、蒸留で残った四塩化炭素の処理や塩素分子を吸着した活性炭を処理することが必須になり経済的にも負担が多く、地球環境への負荷も大きい。即ち、この様な不純物(四塩化炭素や塩素分子)の発生の少ない新しいホスゲンの製造方法が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに、COとCl2を反応せしめてホスゲンを製造する方法において、活性炭の総比表面積の異なる多段反応槽を用い、総比表面積の小さい反応槽から順に通気して反応せしめることによって含有不純物が少なくなることを見出した。また、未凝縮ガス中に含まれる余剰COをホスゲンの原料としてリサイクルすることによってCOの原単位が向上すると共に未凝縮ホスゲンの中和設備を極小化でき、また、か性アルカリの使用量も少なくでき、しかもCOリサイクルなしと同等の品質のホスゲンが得られる。更に、金属アンチモンや活性炭を充填した槽を通気または通液する方法で塩素分子10ppb以下まで効率的に少なくせしめることができることを究明し、本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、四塩化炭素、塩素分子含有量の少ないホスゲンを効率良く製造する方法を提供するものである。即ち、本発明は、一酸化炭素と塩素を反応させてホスゲンを製造する方法において、下記(i)〜(iv)の条件を満足することを特徴とするホスゲンの製造方法によって達成される。
(i)一酸化炭素と塩素とのモル比(CO/Cl 2 )を1.020〜1.150の範囲とすること、
(ii)活性炭の総比表面積の異なる多段反応槽を用いること、
(iii)活性炭の総比表面積は、活性炭とビーズやラシヒリングとの混合比を変える方法で調整すること、
(iv)前段の反応槽の活性炭の総比表面積は、最終反応槽の活性炭の総比表面積より小さくすること、
【0006】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のホスゲンの製造に用いるCOは露点−5℃以下、好ましくは−30℃以下、且つ硫黄成分が少なく、純度が高い程好ましい。露点−5℃以下、硫黄成分5ppm以下のCOを得る方法は1例として、コークスと酸素を反応させて得られたCOをか性アルカリ水溶液と向流接触せしめ後、このCOを熱交換器を用いて5℃程度に冷却せしめ、次に活性アルミナ充填槽を通気せしめる方法によって効率的に得られる。また、この方法によればCO中の炭酸ガスの含有量も極めて少なくすることができる。
【0007】
本発明のホスゲンはCOとCl2とを反応させる方法において、活性炭の総比表面積の異なる多段反応槽と、多段反応槽の最終反応槽の後に−5〜−25℃のブラインを通液したコンデンサーと液化ホスゲン貯槽及び未凝縮ホスゲン中和装置を直列に接続した構成が挙げられ、多段反応槽の第1槽からCOとCl2を通気、反応させて得られる。
【0008】
この多段反応槽は反応熱を除去する機能を有した装置であり、2〜10段が好ましく、2〜6段がより好ましく、3〜5段が更に好ましい。第1反応槽の活性炭の総比表面積は反応槽1槽のみでホスゲンを製造する方法の活性炭の最低必要総比表面積に対し10〜60%に、第2反応槽以降の活性炭の総比表面積は総比表面積は反応槽1槽のみでホスゲンを製造する方法の活性炭の最低必要総比表面積に対し、10〜100%がよいが、各反応槽の活性炭の総比表面積は最終反応槽より総比表面積を小さくすることが望ましく、その反応槽4段の1例として、第1反応槽の活性炭の総比表面積は第4反応槽の総比表面積に対し10〜60%程度、第2反応槽のは第4反応槽の総比表面積に対し20〜70%程度、第3反応槽の活性炭の総比表面積は第4反応槽の総比表面積に対し20〜80%程度とし、全反応槽の活性炭の総比表面積合計は反応槽1槽のみでホスゲンを製造する方法の活性炭の最低必要総比表面積に対し1.1〜5倍程度が好ましく、1.1〜3倍程度がより好ましい。全反応槽の活性炭の総比表面積合計が1倍以下の場合はホスゲン中の塩素分子が多くなり、5倍以上になると品質的には問題ないが、装置が極大化するので好ましくない。
【0009】
反応槽内の活性炭の総比表面積は一例として活性炭と陶磁器製、ガラス製、金属製等のビーズやラシヒリングとの混合比を変える方法や比表面積の異なる活性炭を用いる方法で調整できる。
【0010】
COとCl2はCO/Cl2のモル比が1.020以上になるように第1反応槽から通気することが好ましい。CO/Cl2のモル比は高い方が塩素分子含有量少なくできるがCO/Cl2のモル比が高過ぎると収率が低下すると共にホスゲン中和塔が極大化する。また、余剰のCOをリサイクルする方法において余剰のCOリサイクル量が多くなるので好ましくない。また、CO/Cl2のモル比が1.020未満では塩素分子含有量が多くなりホスゲンの色相が悪くなるので、CO/Cl2のモル比は1.020〜1.150の範囲が好ましく、1.020〜1.080の範囲がより好ましく、1.030〜1.060の範囲が更に好ましく、1.030〜1.045の範囲が最も好ましい。
【0011】
本発明の余剰のCOをリサイクルする方法は、上述した装置の構成において、液化ホスゲン貯槽の出口のガスを直接第1反応槽入口から最終反応槽の何れかに投入する方法またはホスゲン中和塔出口のガスを冷却したり、シリカゲル、塩化カルシュウム、活性アルミナ等で除湿して第1反応槽入口から最終反応槽の何れかに投入する方法によって行える。
【0012】
更に塩素分子含有量を10ppb以下まで効率良く低くする方法は反応熱を除去する機能を有した金属アンチモン充填槽をホスゲンの最終反応槽の後に、または液化ホスゲン貯槽の後に付設しする。この金属アンチモン槽に本発明で得られたホスゲンを通気または通液することによって塩素を低減することができる。また、活性炭充填槽を液化ホスゲン貯槽の後に付設し、この活性炭充填槽に液化ホスゲンを通液する方法等によって達成できるが、金属アンチモン槽が最も好ましい。また、更に四塩化炭素含有量を5ppm以下まで低くする方法は本発明で得られたホスゲンを多段蒸留装置や充填塔蒸留装置を用いて蒸留することによって得られる。
【0013】
本発明の方法で得られたホスゲンは、品質に優れているので、ポリカーボネート樹脂やイソシアネート及び染料・医薬品等の原料に用いると極めて品質の良い製品が得られる。特にポリカーボネート樹脂の製造に好適に用いることができる。特に本発明のホスゲンを用いて製造したポリカーボネート樹脂は色相等品質に優れているので広範囲の分野、特に光学分野に用いれば効果も顕著に表れる。
【0014】
かかるポリカーボネート樹脂は通常二価フェノールとホスゲンとを溶液法で反応させて得られるものである。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等があげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0015】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種の二価フェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0016】
上記二価フェノールとホスゲンを溶液法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用する。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂にすることもできる。
【0017】
二価フェノールとホスゲンとの反応には、酸結合剤および有機溶媒の存在させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0018】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノール又は低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0019】
【化1】
【0020】
[式中、Aは水素原子、炭素数1〜9の直鎖又は分岐のアルキル基、或いはフェニル基置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。]
【0021】
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノール等1ケの水酸基を有するフェノール化合物がが挙げられる。
【0022】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いてポリカーボネート共重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、基板としての物性、特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、また、基板の複屈折が低減される効果もあり好ましく使用される。なかでも、下記一般式(2)および(3)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
[式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。]
【0026】
かかる式(2)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0027】
このようにして縮重合反応によって得られるポリカーボネート溶液は電解物質が無くなるまで有機相を洗浄し、最終的には有機相から溶媒を除去して、粒状体、フレーク等の固形物とし、この固形物を乾燥してポリカーボネート樹脂が得られるが一般的には乾燥した固形物を溶融押出しし、ペレット化した物を成形用に好ましく供される。
【0028】
成形用に供されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000〜100,000程度であり、好ましくは11,000〜45,000程度であり、光ディスク用のポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で10,000〜22,000が好ましく、12,000〜20,000がより好ましく、13,000〜18,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、光学用材料として十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。
【0029】
シリコンウエハー等の精密機材収納容器に用いられるポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で14,000〜30,000が好ましく、14,500〜25,000がより好ましく、15,000〜24,000がさらに好ましい。かかる粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、一定の機械的強度を有し成形時の流動性も良好であり好ましい。
【0030】
上記ポリカーボネート樹脂に離型剤、帯電防止剤、増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤(耐候剤)、抗菌剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。
【0031】
【実施例】
以下実施例に従って、本発明を具体的に説明するが本発明の要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
(1)CO中の硫黄含有量
ガスクロマトグラフ装置(日立製作所製)にCOを注入し測定した。
【0033】
(2)露点の測定
露点計(桜測器(株)製WTY180)を用いて測定した。
【0034】
(3)ホスゲン中の四塩化炭素含有量の測定
得られた液化ホスゲン1μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ装置(日立製作所製263型)に注入し測定した。
【0035】
(4)ホスゲン中の塩素分子含有量の測定
得られた液化ホスゲンを100gサンプリングし、これを気化させて、NaOH溶液に吸収させて、NaClOとして酸化還元滴定しその絶対量を測定して、ホスゲン中の塩素分子含有量とした。
【0036】
(5)ホスゲンの色相
得られた液化ホスゲンをサンプリングし、JISK6901のハーゼン色数法で評価した。
【0037】
(6)CO中の硫黄含有量
ガスクロマトグラフ装置(日立製作所製)にCOを注入し測定した。
【0038】
(7)腐蝕評価
100mlのねじ口透明ビンに得られた液化ホスゲン100gをサンプリングし、鏡面仕上げしたSUS304のテストピースを浸積させて密栓し、その容器を−15℃の冷凍庫に保管し、10日毎に腐蝕の有無を確認し100日で終了した。
【0039】
[比較例1]
反応熱を除去する機能を有した多管式反応槽のシェル側に10℃の冷水を通水し、チューブ側に活性炭50kgを充填した反応槽の後に−25℃のブラインを通液したコンデンサーと重量測定装置を付設した液化ホスゲン貯槽を設け、これらの装置を直列に接続し、反応槽から、CO/Cl2のモル比1.018になるようにCOを10.18Nm3/HrとCl2を10.00Nm3/Hr通気して液化ホスゲン100kg得た。このホスゲン中の四塩化炭素含有量150ppm、塩素分子含有量5000ppbであった。
【0040】
[実施例1]
コークスと酸素を反応させて得られたCOをか性ソーダ水溶液と向流接触せしめた後、熱交換器を用いて5℃に冷却せしめ、次に活性アルミナ充填槽を通気させて、硫黄化合物0.5ppm、露点−30℃のCOを得た。このCOを用いて次の方法でホスゲンを製造した。
【0041】
ホスゲンの製造は、反応熱を除去する機能を有した多管式反応槽のシェル側に10℃の冷水を通水し、チューブ側に活性炭15kgと直径3mmのガラス玉の混合物を充填した第1反応槽、多管式反応槽のシェル側に10℃の冷水を通水し、チューブ側に活性炭25kgと直径3mmのガラス玉の混合物を充填した第2反応槽、多管式反応槽のシェル側に10℃の冷水を通水し、チューブ側に活性炭35kgと直径3mmのガラス玉の混合物を充填した第3反応槽、多管式反応槽のシェル側に10℃の冷水を通水し、チューブ側に活性炭50kg充填した第4反応槽、(4基とも同じ容積)と第4反応槽の後に−20℃のブラインを通液したコンデンサーと液化ホスゲン貯槽及び未凝縮ホスゲン中和装置を設け、これらの装置を直列に接続し第1反応槽下部からCO/Cl2のモル比が1.040になるようにCOを10.40Nm3/HrとCl2を10.00Nm3/Hr通気して液化ホスゲンを得た。該ホスゲン中の四塩化炭素35ppm、塩素分子85ppbであり、色相は無色透明であった。
【0042】
次に、かかるホスゲンを用いてポリカーボネート樹脂を製造した。温度計、撹拌機及び還流冷却器付き反応器にイオン交換水219.4部、48%水酸化ナトリウム水溶液40.2部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン57.5部(0.252モル)およびハイドロサルファイト0.12部を溶解した後、塩化メチレン181部を加え、撹拌下15〜25℃で上記ホスゲン28.3部を40分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液7.2部およびp−tert−ブチルフェノール2.42部を加え、撹拌を始め、乳化後トリエチルアミン0.06部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けたニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、粘度平均分子量15,100のポリカーボネート樹脂パウダーを得た。このパウダーを145℃、6時間乾燥し、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.004重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.06重量%加えた。次に、かかるパウダーをベント式二軸押出機[神戸製鋼(株)製KTX−46]によりシリンダー温度240℃、ベントガス吸引度−5mmHgで脱気しながら溶融混練し、ペレットを得た。このペレットはASTM−E1925に準じて測定したYI値が0.92で、比較例1のホスゲンを用いて実施例1と同様に製造したポリカーボネート樹脂よりもYIが約1低く、色相に優れていた。
【0043】
[実施例2]
ホスゲンを製造するにおいて、COとCl2を第2反応槽から投入する方法に変更した以外は実施例1と同じ方法で行った。該ホスゲン中の四塩化炭素50ppm、塩素分子90ppbであり、色相は無色透明であった。
【0044】
[実施例3]
ホスゲンを製造するにおいて、CO10.40Nm3/HrとCl2ガス10.00Nm3/Hr第1反応槽下部から通気し、液化ホスゲン貯槽の出口から余剰ガス0.3Nm3/Hr抜き取り第1反応槽下部から投入しながら、第1反応槽下部から通気しているCOを10.10Nm3/Hrに変更した以外は実施例1と同じ方法で行った。該ホスゲン中の四塩化炭素40ppm、塩素分子80ppbであり、色相は無色透明であった。
【0045】
[実施例4]
第4反応槽の後に内部冷却管を有し10℃の冷水を通水した金属アンチモン槽を設けた以外は実施例1と同じ方法で行った。該ホスゲン中の四塩化炭素35ppm、塩素分子は検出できなかった。また、ホスゲンの色相は無色透明であった。
【0046】
[実施例5]
第4反応槽の後に内部冷却管を有し10℃の冷水を通水した金属アンチモン槽を設けた以外は実施例3と同じ方法で行った。該ホスゲン中の四塩化炭素35ppm、塩素分子は検出できなかった。また、ホスゲンの色相は無色透明であった。
【0047】
[実施例6]
実施例1で得られたホスゲンを連続式多段蒸留塔で精留した以外は実施例1と同じ方法で行った。該ホスゲン中の四塩化炭素0.3ppm、塩素分子75ppbであり、色相は無色透明であった。
【0048】
[実施例7]
実施例4で得られたホスゲンを連続式多段蒸留塔で精留した以外は実施例1と同じ方法で行った。該ホスゲン中の四塩化炭素0.4ppm、塩素分子は検出できなかった。また、ホスゲンの色相は無色透明であった。
【0049】
[実施例8]
実施例5で得られたホスゲンを連続式多段蒸留塔で精留した以外は実施例1と同じ方法で行った。該ホスゲン中の四塩化炭素0.3ppm、塩素分子は検出できなかった。また、ホスゲンの色相は無色透明であった。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
本発明は含有不純物(四塩化炭素、塩素分子等)が少なく色相等品質に優れたホスゲンを効率良く製造できるので、ポリカーボネート樹脂、イソシアネート、医薬及び染料等広範囲の分野の原料として好適である。特に、このホスゲンを原料として得られたポリカーボネート樹脂を光学分野に用いれば効果も顕著に表れる。
Claims (3)
- 一酸化炭素と塩素を反応させてホスゲンを製造する方法において、下記(i)〜(iv)の条件を満足することを特徴とするホスゲンの製造方法。
(i)一酸化炭素と塩素とのモル比(CO/Cl 2 )を1.020〜1.150の範囲とすること、
(ii)活性炭の総比表面積の異なる多段反応槽を用いること、
(iii)活性炭の総比表面積は、活性炭とビーズやラシヒリングとの混合比を変える方法で調整すること、
(iv)前段の反応槽の活性炭の総比表面積は、最終反応槽の活性炭の総比表面積より小さくすること、 - 余剰の一酸化炭素をリサイクルする請求項1記載のホスゲンの製造方法。
- ホスゲン中の塩素分子を除去する装置として金属アンチモン槽を付設した請求項1記載のホスゲンの製造方法。
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