JP2012254895A - 塩化カルボニルの製造方法 - Google Patents

塩化カルボニルの製造方法 Download PDF

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雅弘 倉垣
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Abstract

【課題】不純物が非常に少なく色相が良好な塩化カルボニルの製造方法、および触媒の劣化が抑制され長期連続運転が可能な塩化カルボニルの製造方法を提供する。
【解決手段】塩素と一酸化炭素とを、比表面積150〜350m/gの第1固体触媒に接触させて、反応率にして30モル%以上反応させた後、比表面積900〜1500m/gの第2固体触媒に接触させて塩化カルボニル化反応することを特徴とする塩化カルボニルの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、塩化カルボニルの製造方法に関する。また本発明は、得られた塩化カルボニルを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は光学的特性、機械的特性、電気的特性等各種特性に優れているため、従来から、食品分野、マルチメディア記録媒体等の光学分野、シリコンウエハー及びマルチメディア記録媒体等の収納容器分野、電気及び自動車分野等各種分野に幅広く使用されている。
ポリカーボネート樹脂は一般的に塩化カルボニルを原料として製造されるが、この塩化カルボニル中に含まれる副生成物、不純物がポリカーボネート樹脂の品質に影響することはよく知られている。
例えば、特許文献1には、硫黄化合物を低減した一酸化炭素を用いて塩化カルボニルを製造し、この塩化カルボニルを用いて色相の良いポリカーボネート樹脂を製造する方法が開示されている。
また、塩化カルボニルを製造する際に発生する副生成物として、四塩化炭素がある。四塩化炭素は通常の塩化カルボニル製造時には150〜300ppm程度発生し、生成塩化カルボニルに混入することが知られている。四塩化炭素はポリカーボネート樹脂の色相の悪化や、金型腐食性が低下することが知られており、ポリカーボネート樹脂への混入量は極力少なくする必要がある。
これらの問題点を解決する方法についていくつか提案されている。例えば、特許文献2には、塩化カルボニルを蒸留することにより四塩化炭素含有量を少なくした塩化カルボニルを用いて金型腐食の少ないポリカーボネート樹脂の製造方法が開示されている。
特許文献3には、塩化カルボニル化反応を多段の反応槽に分けて極力反応熱を除去し、さらに得られた液化塩化カルボニルを蒸留する方法により、硫黄化合物と四塩化炭素の両方を低減した塩化カルボニルを用い、より品質の向上したポリカーボネート樹脂を得る方法が開示されている。
特許文献4では、塩化カルボニル化反応を多段の反応槽に分けて極力反応熱を除去し、さらに得られた液化塩化カルボニルを蒸留する方法により、四塩化炭素含有量及び揮発性塩素含有量の少ない塩化カルボニルを用い、より品質の向上したポリカーボネート樹脂を得る方法が開示されている。
ただし、これらの方法を実施するには工程が大規模となり煩雑で、ガスの圧力損失が大きくなること等の問題もあり、コスト面においても好ましくない。
特許文献5では、液化塩化カルボニルを活性炭塔に通液し、塩化カルボニル中の塩素を活性炭に吸着させて、塩素濃度が1,000ppb以下の塩化カルボニルを製造し、その塩化カルボニルを用いて、溶融成形後の成形品から常温において揮発してくる塩素(揮発性塩素)が少ないポリカーボネート樹脂を得る方法が開示されている。
一方、四塩化炭素含有量などの不純物を低減した塩化カルボニルの製造方法について、いくつか提案されている。例えば、特許文献6には、比表面積1,200〜1,300m/gの活性炭を使用した四塩化炭素含有量および塩素分子含有量の少ない塩化カルボニルの製造方法が記載されている。しかしこの特許文献6の提案では四塩化炭素量の低減が十分でなく、さらに特許文献7において、特許文献6に記載された方法で得られた塩化カルボニルを蒸留処理し四塩化炭素量の低減を図っている。
また、特許文献8には、活性金属含有量の少ない活性炭を使用した、四塩化炭素含有量の低減された塩化カルボニルの製造方法が開示されている。活性炭の表面積については100m/gより大きいものを使用することが示され、具体的には350〜500m/gの活性炭が使用されている。
特許文献9には、少なくとも10m/gの表面積を有する活性炭を使用した、四塩化炭素含有量の低減された塩化カルボニルの製造方法が開示されている。具体的には約600〜1700m/gの活性炭が使用されている。
特許文献10には、塩化カルボニル生成反応において第一触媒と接触反応させた後に、ついで第一触媒よりも相対活性の高い第二触媒と接触することで副生四塩化炭素量を低減しつつ塩化カルボニルを製造する方法が示されている。
上記特許文献の何れの提案においても塩化カルボニルの品質の向上について短期的視点で記載されているものの、高品質の塩化カルボニルを長期間連続で工業的に生産する方法を開示するには至っていない。塩化カルボニルを工業的に生産する場合には、得られる塩化カルボニルの品質や生産コストも重要であるが、同時に塩化カルボニルが非常に有毒な物質であるという特性により、安全面にも十分注意する必要がある。特に、触媒の寿命による触媒更新入れ替え時には、塩化カルボニルの漏洩による被災リスクも大きくなるため、触媒寿命をできるだけ長くして、入れ替え頻度をできるだけ少なくすることが強く望まれていた。
特開平01−275630号公報 特公平06−076482号公報 特開2000−248059号公報 特開2000−154244号公報 特開平10−226724号公報 特開2000−264617号公報 特開2001−261321号公報 特表2000−505035号公報 特表2002−511045号公報 米国特許出願公開第2002/0188156号明細書
本発明の目的は、不純物が非常に少なく色相が良好な塩化カルボニルの製造方法を提供することにある。また本発明の目的は、触媒の劣化が抑制され長期連続運転が可能な塩化カルボニルの製造方法を提供することにある。
また本発明の目的は、金属腐蝕性物質が少なく、色相に優れ、成形熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、塩化カルボニル中に含有する四塩化炭素や塩素分子だけでなく、臭素分子が塩化カルボニルの色相や塩化カルボニルから得られるポリカーボネート樹脂の色相や金属腐食性に悪影響を与えていることを見出した。
さらに鋭意検討した結果、触媒として比表面積の異なる2種類の触媒を用い、その反応率を最適化することにより、四塩化炭素、塩素分子および臭素分子の含有量が著しく低減された塩化カルボニルを製造できることを見出した。
そしてさらなる鋭意検討の結果、第1触媒として全細孔容積を最適化し、さらに上記2種類の触媒について、その使用比率や粒度分布を最適化することにより、長期連続運転可能な塩化カルボニルの製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
1.塩素と一酸化炭素とを、比表面積150〜350m/gの第1固体触媒に接触させて、反応率にして30モル%以上反応させた後、比表面積900〜1500m/gの第2固体触媒に接触させて塩化カルボニル化反応することを特徴とする塩化カルボニルの製造方法。
2.第1固体触媒の全細孔容積が0.05〜0.40ml/gの範囲である前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
3.第1固体触媒の全細孔容積が0.10〜0.30ml/gの範囲である前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
4.各接触を0.05〜0.50MPa(ゲージ圧)の圧力で行う前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
5.第1固体触媒と第2固体触媒との充填体積比が4/6〜9/1の範囲である前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
6.第1固体触媒および第2固体触媒が活性炭である前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
7.第1固体触媒および第2固体触媒の平均粒径が0.5〜5.0mmの範囲である前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
8.第1固体触媒および第2固体触媒の平均粒径が1.0〜4.0mmの範囲である前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
9.触媒量1mに対する塩化カルボニル累積生産量が2.0×10kg/mおよび1.6×10kg/mのいずれの時点でも、得られる塩化カルボニル中の四塩化炭素含有量が7ppm以下、塩素分子含有量が20ppm以下、且つ臭素分子含有量が10ppm以下であることを特徴とする前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
10.触媒量1mに対する塩化カルボニル累積生産量が2.0×10kg/mおよび1.6×10kg/mのいずれの時点でも、得られる塩化カルボニル中の四塩化炭素含有量が6ppm以下、塩素分子含有量が10ppm以下、且つ臭素分子含有量が5ppm以下であることを特徴とする前項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
11.四塩化炭素含有量が7ppm以下、塩素分子含有量が20ppm以下、且つ臭素分子含有量が10ppm以下であることを特徴とする塩化カルボニル。
12.二価フェノールと請求項11記載の塩化カルボニルとを反応させるポリカーボネート樹脂の製造方法。
13.四塩化炭素含有量が0.7ppm以下、塩素原子含有量が1ppm以下、且つ臭素原子含有量が0.5ppm以下であるポリカーボネート樹脂。
14.請求項13に記載のポリカーボネート樹脂を溶融成形してなる成形品。
なお、本明細書において、塩素分子とは二つの塩素原子が結合した分子であり、塩化カルボニル中では、通常、気体で存在する。
ポリカーボネート樹脂中の塩素原子含有量とは塩素分子、臭化塩素分子、塩化カルボニル分子などの塩素原子を含む分子について、これら成分のうち塩素原子に相当する成分の総量を示す。
また、本明細書において、臭素分子とは二つの臭素原子が結合した分子であり、塩化カルボニル中では、通常、気体で存在する。
ポリカーボネート樹脂中の臭素原子含有量とは臭素分子、臭化塩素分子、臭化カルボニル分子などの臭素原子を含む分子について、これら成分のうち臭素原子に相当する成分の総量を示す。
本発明の塩化カルボニルの製造方法によれば、四塩化炭素含有量、塩素分子含有量および臭素分子含有量が少なく、色相が良好な塩化カルボニルが得られる。また、本発明の塩化カルボニルの製造方法は触媒の劣化が少なく長期連続運転が可能である。
また本発明によれば、金属腐蝕性物質が少なく、色相に優れ、成形熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂を提供することができる。
実施例において成形した自動車の素通し型ヘッドランプレンズの成形品を示す。図示されるとおり該レンズはドーム状の形状である。[1−A]は正面図(成形時のプラテン面に投影した図。したがってかかる面積が最大投影面積となる)を示し、[1−B]はA−A線断面図を示す。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<塩化カルボニルの製造方法>
本発明の塩化カルボニルの製造方法は、塩素(以下、Clと略称することがある)と一酸化炭素(以下、COと略称することがある)とを、第1反応槽で第1固体触媒、第2反応槽で第2固体触媒に接触させ、反応させる各工程を含む。
(塩素)
反応に用いる塩素の臭素原子含有量は、好ましくは150ppm以下、より好ましくは125ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。臭素原子含有量とは、臭素分子、臭化塩素などの中の臭素原子を含有する化合物中の臭素原子量のことである。
臭素原子含有量が150ppmを越えると塩化カルボニル中の臭素分子含有量が10ppmより多くなりやすく、この塩化カルボニルを用いて得られたポリカーボネート樹脂は臭素原子含有量が0.5ppmを越えやすくなり、ポリカーボネート樹脂の品質に問題が生じやすくなる。臭素原子含有量の少ない塩素は、電解ソーダ法、タウンズ法など各種の方法で製造することができる。なかでも電解ソーダ法を用いて製造する方法が最も経済的且つ一般的である。
(一酸化炭素)
また、反応に用いる一酸化炭素中の硫黄原子含有量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは0.5ppm以下である。一酸化炭素中の硫黄原子含有量が10ppmを越えると塩化カルボニル中の硫黄原子含有量が5ppmを超え、この塩化カルボニルを用いて得られたポリカーボネート樹脂は硫黄原子含有量が100ppbを超えやすくなり、ポリカーボネート樹脂の品質に問題が生じやすくなる。
硫黄原子含有量が10ppm以下の一酸化炭素は、コークスと酸素と反応させて得られた一酸化炭素を金属添加触媒、例えば、銅(Cu)、クロム(Cr)、バナジュウム(V)、モリブデン(Mo)などの金属酸化物および/または金属塩を添着した活性炭または活性アルミナなどに接触せしめ、次いで、苛性ソーダ水溶液に接触せしめる方法や苛性ソーダ水溶液に接触せしめた後に、活性アルミナに接触せしめる方法などによって得られる。
(触媒の比表面積)
第1反応槽で使用される第1固体触媒の比表面積は、150〜350m/g、好ましくは170〜330m/g、より好ましくは190〜310m/gの範囲である。
一方、第2反応槽で使用される第2固体触媒の比表面積は、900〜1,500m/g、好ましくは950〜1,400m/g、より好ましくは1,000〜1,300m/gの範囲である。
また、第1固体触媒の比表面積をXm/g、第2固体触媒の比表面積をYm/gとしたときに、その差(Y−X)m/gは、好ましくは600〜1,300m/g、より好ましくは650〜1,200m/g、さらに好ましくは700〜1,100m/gの範囲である。
本発明では、第1反応槽に用いる第1固体触媒の比表面積を制限することで、第1反応槽での反応時の温度を低減でき、その結果、より四塩化炭素の生成量を少なくすることが可能となる。
ただし、第1反応槽における反応時の温度が低くなると、触媒の反応性が小さくなり、未反応の塩素分子や臭素分子が残留し易くなる。このように、塩化カルボニル中に塩素分子、臭素分子が多量に残留すると、これらは最終的にポリカーボネート樹脂中に取り込まれ、ポリカーボネート樹脂製品の品質悪化の原因になるため、本発明においては、第1反応槽の後段に、比表面積900〜1,500m/gの第2固体触媒を充填した第2反応槽を設けることで、残留した塩素分子、臭素分子を低減する。
(触媒の種類)
第1固体触媒および第2固体触媒の種類には特に制限は無く、上記比表面積を持つ多孔質固体触媒であれば本反応の固体触媒として使用できる。第1固体触媒および第2固体触媒としては、工業的には活性炭触媒が多く用いられているが、ゼオライトなどの多孔質無機触媒を用いることもできる。
活性炭触媒はその種類の多さ、価格や廃棄コストが比較的安価であること、さらに取り扱いや廃棄方法も簡便であるなどのメリットから広く用いられているが、活性炭炭素と塩素分子の副反応により四塩化炭素を生じやすいという大きな問題がある。一方、ゼオライトなどの無機触媒を用いた場合には、反応系内に炭素が無いため四塩化炭素の生成は抑制できるものの、活性炭に比べて反応活性に劣るため単独で使用しても純度の高い塩化カルボニルを得ることは困難であり、活性炭触媒と組み合わせての使用が望ましい。
本発明は、四塩化炭素の副生をなるべく抑制し、且つ純度の高い塩化カルボニルを得るための条件として、上記のような第1固体触媒および第2固体触媒の比表面積の組み合わせ、且つ第1反応槽における反応率を制御することを見出したことを特徴とする。さらに、第1固体触媒および第2固体触媒の充填体積比、触媒粒径や触媒の全細孔容積を規定することにより工業的に長期連続して高純度の塩化カルボニルを得ることが可能となったため、その方法についても合わせて述べる。
(触媒の全細孔容積)
本発明において、第1反応槽で使用される第1固体触媒は、その全細孔容積が0.05〜0.40ml/gの範囲が好ましく、0.07〜0.35ml/gの範囲がより好ましく、0.10〜0.30ml/gの範囲がさらに好ましい。第1固体触媒の全細孔容積が、0.05ml/gよりも小さくなると、反応性が不十分となり充分な反応率が確保できない。また、0.40ml/gよりも大きくなると、反応性が大きすぎて副反応の割合が多くなり、生成した塩化カルボニル中の四塩化炭素量が多くなるため好ましくない。
なお、触媒の全細孔容積は、日本ベル(株)製高精度全自動ガス吸着装置「BELSORP36」を用いて、吸着ガスとしてN2ガスを用いて、等温での吸着、脱着操作を行い、半径0.3〜20nmの範囲にある細孔容積を測定することによって求められる。
(第1反応槽における反応率)
本発明者の検討によれば、塩化カルボニル生成反応を長期間連続で実施すると、触媒がガス流路の上流側から徐々に劣化し、反応ゾーンはその分徐々に下流側に移動することが分かった。また、このために反応開始当初は四塩化炭素副生量が少なくても、第2反応槽での反応割合が増えるにつれて四塩化炭素の副生量も増えることが判明し、工業化には大きな問題となることが予想された。そこで、この第1反応槽における反応率の変化と塩化カルボニルの品質についてその関係を検討したところ、適正な反応率にすることによって、品質の良い塩化カルボニルを得られることが分かった。
すなわち、第1反応槽における反応率は30モル%以上必要であり、40モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。第1反応槽における反応率が30モル%未満になると後段の反応槽での反応率が大きくなるため、反応温度が上昇しやすく四塩化炭素の副生量が多くなり好ましくない。
第1反応槽における反応率は、第1反応槽出口の塩化カルボニル中の塩素分子含有量を分析し、第1反応槽で反応に使用された塩素分子量を算出し、反応率(モル%)を求めた。
(第1固体触媒と第2固体触媒との充填体積比)
また、第1反応槽と第2反応槽における第1固体触媒と第2固体触媒との充填体積比を変更して検討してみたところ、適正な比率にすることで、より長期間に渡って品質の良い塩化カルボニルを得られることが分かった。
すなわち、高純度の塩化カルボニルを長期間連続で生成可能な条件としては、第1触媒と第2触媒との充填体積比を、4/6〜9/1の範囲にすることが好ましい。充填体積比は、5/5〜8/2の範囲がより好ましく、6/4〜7/3の範囲が特に好ましい。
(触媒の粒径)
第1固体触媒および第2固体触媒の平均粒径はそれぞれ、好ましくは0.5〜5.0mm、より好ましくは1.0〜4.0mm、さらに好ましくは1.5〜3.0mmの範囲である。平均粒径が0.5mmよりも小さいとハンドリング性の悪化や圧力損失の増大などの物理的悪影響だけでなく、反応性が良すぎて四塩化炭素副生量が増えたり、触媒寿命が短くなったりという化学的な悪影響が考えられる。一方、平均粒径が5.0mmよりも大きくなると、反応性が不十分となり得られる塩化カルボニル中の塩素分子や臭素分子が残留しやすくなるため好ましくない。
(反応温度)
第1反応槽における反応温度は、好ましくは300〜650℃、より好ましくは350〜600℃、さらに好ましくは400〜550℃の範囲である。また、第2反応槽における反応温度は、好ましくは35〜90℃、より好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは45〜70℃の範囲である。
第1反応槽と第2反応槽は、直列に接続した構成が好ましく、場合によっては一つの反応槽の上流側から下流側にかけて触媒を積層充填して第1反応槽、第2反応槽としても良い。また、各反応槽には反応熱を除去するための機能を有するものが好ましい。
第1反応槽の前段、第1反応槽と第2反応槽との間、第2反応槽の後段に、さらに反応槽を設けても構わない。反応槽としては全体として1〜5個の反応槽が好ましく、2〜4個の反応槽がより好ましく、2〜3個の反応槽がさらに好ましく、2個の反応槽が特に好ましい。
第1反応槽に導入するCOとClとのモル比は、CO/Clで表して1.015〜1.070の範囲が好ましく、1.020〜1.050の範囲がより好ましい。モル比が高過ぎると収率が低下することがある。
四塩化炭素を低減する方法として、COとClガスの通気量を少なくし、反応槽内での発熱量を少なくする方法が考えられるが、この方法では生産性に劣り、充分な塩化カルボニルを確保することが困難となる。さらに他の方法として、塩化カルボニルを蒸留分離する方法がある。しかし、蒸留分離する方法では塩素分子および臭素分子を低減する効果は殆どなく、これだけでは高品質の塩化カルボニルを得る事はできない。また、蒸留により回収した四塩化炭素の処理にも専用の設備が必要となりるため工業的には好ましい方法とは云えない。
(反応圧力)
本発明において、第1反応槽および第2反応槽における反応時の圧力は、好ましくは0.05〜0.50MPa(ゲージ圧を示す。以下同様)、より好ましくは0.06〜0.40MPa、さらに好ましくは0.07〜0.30MPaの範囲である。反応圧力が0.50MPaより大きくなると、反応速度が大きくなるため反応温度も高くなり、その結果、塩化カルボニル中の四塩化炭素含有量が多くなる場合がある。一方、反応圧力が0.05MPa未満になると、反応速度が小さくなりすぎるため、その結果、塩化カルボニル中に塩素分子および臭素分子が非常に多量に残留し、第2反応槽でも充分に反応できなくなり、塩化カルボニル中に多量に残存する場合がある。
上述した反応方法により得られた塩化カルボニルは、ブラインを通液したコンデンサーにより冷却し液化塩化カルボニル貯槽を設けて貯槽することができる。
(塩化カルボニルの品質)
塩化カルボニルの品質は、充分長期間にわたって維持されなければ工業的に使用するに値しない。すなわち、工業的に使用する為には、触媒を使用開始してから比較的新しい時期(例えば、触媒量1mに対して塩化カルボニル生産量が2.0×10kg/m)においても、長期間使用した後(例えば、触媒量1mに対して塩化カルボニル生産量が1.6×10kg/m)においても、どちらの時期でも安定して良好な品質の塩化カルボニルを得る必要がある。
本発明の塩化カルボニルの製造方法によれば、触媒量1mに対する塩化カルボニル累積生産量が2.0×10kg/mおよび1.6×10kg/mのいずれの時点でも、得られる塩化カルボニル中の四塩化炭素含有量を7ppm以下、塩素分子含有量を20ppm以下、且つ臭素分子含有量を10ppm以下にすることができる。
さらに、触媒量1mに対する塩化カルボニル累積生産量が2.0×10kg/mおよび1.6×10kg/mのいずれの時点でも、得られる塩化カルボニル中の四塩化炭素含有量を6ppm以下、塩素分子含有量を10ppm以下、且つ臭素分子含有量を5ppm以下にすることができる。
<塩化カルボニル>
本発明の塩化カルボニルの製造方法で得られる塩化カルボニルは、その四塩化炭素含有量が7ppm以下、塩素分子含有量が20ppm以下および臭素分子含有量が10ppm以下である。
四塩化炭素含有量は6ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましい。塩素分子含有量は15ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下が特に好ましい。臭素分子含有量は8ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、3ppm以下が特に好ましい。
塩化カルボニル中の四塩化炭素含有量が7ppm、塩素分子含有量が20ppmまたは臭素分子含有量が10ppmを越えた場合は、塩化カルボニルの色相が悪化し、また、四塩化炭素含有量0.7ppm以下、塩素含有量1ppm以下および臭素含有量0.5ppm以下であるポリカーボネート樹脂が得られず、かかるポリカーボネート樹脂は色相および金属腐食性に不十分であり広範囲の用途に適用し難い。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、二価フェノールと、四塩化炭素含有量が7ppm以下、塩素分子含有量が20ppm以下および臭素分子含有量が10ppm以下の塩化カルボニルとを反応させることにより製造することができる。
二価フェノールの例として、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上使用することができる。これらの中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が汎用されている。
このような二価フェノールと塩化カルボニルとから界面重合法によってポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。
また、ポリカーボネートは3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。ここで使用される3官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが挙げられる。分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、その量は、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。
ポリカーボネートの重合反応において、界面重縮合法による反応は、通常、二価フェノールと塩化カルボニルとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。
酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。
有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、例えば、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドなどの3級アミン、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
また、かかる重合反応においては、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類としては、例えば、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに、単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどの炭素数10以上の長鎖アルキル基で核置換された単官能フェノールを挙げることができ、該フェノールは流動性の向上および耐加水分解性の向上に効果がある。かかる末端停止剤は単独で使用しても2種以上併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は限定されない。しかしながら、粘度平均分子量は、1.0×10未満であると衝撃強度などの機械物性が低下し、5.0×10を超えると成形加工特性が低下するようになるので、1.0×10〜5.0×10の範囲が好ましく、1.2×10〜3.0×10の範囲がより好ましく、1.5×10〜2.8×10の範囲がさらに好ましい。この場合、成形性などが維持される範囲内で、粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネートを混合することも可能である。例えば、粘度平均分子量が5.0×10を超える高分子量のポリカーボネート成分を配合することも可能である。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
本発明によれば、上述した不純物の低減された塩化カルボニルを用いることにより、四塩化炭素含有量が0.7ppm以下、塩素原子含有量が1ppm以下、且つ臭素原子含有量が0.5ppm以下のポリカーボネート樹脂が得られる。該ポリカーボネート樹脂は色相および金属腐食性に優れる。四塩化炭素含有量、塩素原子含有量および臭素原子含有量のいずれかが上記範囲を外れると色相または金属腐食性に劣るポリカーボネート樹脂となる。
四塩化炭素含有量は0.6ppm以下が好ましく、0.5ppm以下がより好ましい。塩素原子含有量は0.8ppm以下が好ましく、0.6ppm以下がより好ましい。臭素原子含有量は0.4ppm以下が好ましく、0.3ppm以下がより好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂には、通常、ポリカーボネート樹脂に配合される各種の添加剤、例えばリン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、ブルーイング剤、光拡散剤、帯電防止剤、熱線吸収能を有する化合物、無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤、染料または顔料などを含むことができる。また、他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で少割合使用することもできる。
<成形品>
本発明のポリカーボネート樹脂は、溶融押出法により製造されたペレットを成形して各種成形品を製造することができる。かかる成形においては、通常は射出成形により効率的に成形品を得ることができる。射出成形には、目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などが含まれる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。
本発明のポリカーボネート樹脂は、色相、成形時の熱安定性、金属腐食性などに優れ、光学用途、自動車用途、シリコンウエハー、電気・電子機器収納容器および眼鏡レンズなどに適用できる。また、かかる用途以外にも、建設機械、ビル、家屋、温室などの窓ガラスなどに用いることができる。また、ガレージ、アーケードなどの屋根などに用いることができる。また、照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ、ミラー、眼鏡レンズ、ゴーグル、消音壁、バイクの風防、銘板、太陽電池カバー、太陽電池基材、ディスプレー装置用カバー、タッチパネルなどに用いることができる。また、パチンコ機などの遊技機、その回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなどの部品に用いることができる。
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常のポリカーボネート樹脂に用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。
以下、実施例に従って、本発明を具体的に説明するが本発明は要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、実施例中「部」とあるのは「重量部」を示し、また各種の評価および評価用成形は次の方法で行った。
(1)塩素中の臭素原子含有量:塩素ガス1Lを高純度の20%NaOH水溶液40mLで分解し、分解液を10倍希釈後、陽イオン除去フィルター処理したサンプル液を陰イオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス製DX−300)に注入し、臭素イオン定量分析を行った。
(2)第1反応槽における反応率:第1反応槽出口の塩化カルボニルガスについて、下記(4)の方法を用いて、塩化カルボニル中の塩素分子含有量を分析し、その反応率(モル%)を計算した。
(3)塩化カルボニル中の四塩化炭素量:塩化カルボニル1μlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ装置(日立製作所製263型)に注入し測定した。
(4)塩化カルボニル中の塩素分子含有量及び臭素分子含有量:塩化カルボニルガスをマルチウェーブ型プロセスフォトメーター(DKK電気化学計器株式会社製3401型)に注入し、塩素分子、臭素分子の各定量分析を行った。
(5)塩化カルボニル色相:生成した塩化カルボニルの液化貯槽タンクの内部点検窓より、塩化カルボニル色相を目視評価した。評価水準は1〜5の5段階で表し、数字が大きい程黄色味が強いものとする。
色相ランク1:ほとんど無色
色相ランク2:僅かに黄着色
色相ランク3:より黄着色度合いが強い
色相ランク4:さらに黄着色度合いが酷い
色相ランク5:激しく着色
このランク分けのうち、色相ランク1および2は塩化カルボニルの品質が正常で良好と判断した。色相ランク3は若干異常状態である。色相ランク4および5は品質異常と判断した。色相ランク4および5の塩化カルボニルを用いて重合されたポリカーボネート樹脂は金型腐食性が顕著に悪化する。
(6)ポリカーボネート樹脂中の四塩化炭素量:120mlのステンレス製容器にペレット5gを入れて密栓し、250℃で2時間加熱した後、ヘッドスペースガス1mlを電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ装置(日立製作所製263型)に注入し測定した。
(7)ポリカーボネート樹脂中の塩素原子含有量及び臭素原子含有量:ポリマーパウダーを190℃にて加温圧縮成形したプレートについて、蛍光X線(理学電気工業製RIX2000)にて塩素原子強度および臭素原子強度を測定した。
(8)ポリカーボネート樹脂成形品の色相:シリンダー温度310℃にて射出成形(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)した厚さ2.0mmの成形板を日本電色(株)製色差計Z−1001DP型を用いて透過光を測定したX,YおよびZ値からASTM−E1925に基づき、下記式を用いて算出した。YI値が大きいほど成形板の黄色味が強いことを示す。
YI=[100(1.28X−1.06Z)]/Y
(9)ポリカーボネート樹脂の成形熱安定性:上記評価(8)と同様の形状であって、10分間成形機シリンダー内に滞留させた樹脂より成形された成形板のYI値を、上記評価(8)と同様に測定した。滞留後の試験片のYI値から滞留前の試験片のYI値を差し引き、かかる差をΔYIとして示した。
(10)ポリカーボネート樹脂成形時の金型腐食性の評価:図1に示す素通し型のヘッドランプレンズを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)を用いてシリンダー温度310℃、金型温度80℃にて連続で200枚成形し、その後、金型表面部を相対湿度100%、温度120℃にて24時間湿熱処理した後、表面の腐食状況を観察した。腐食状況評価は1〜5までの5段階とし、数字の大きいほうが腐食度合いがより大きいものとする。
腐食ランク1:ほとんど腐食が発生せず
腐食ランク2:僅かに腐食が発生
腐食ランク3:より腐食が進行
腐食ランク4:さらに腐食度合いが悪化
腐食ランク5:激しく腐食
このランク分けのうち、腐食ランク1および2は塩化カルボニルの品質が良好で腐食度合いも良好と判断した。腐食ランク3は若干腐食が進行した状態である。腐食ランク4および5は激しく腐食が進行する異常状態と判断した。腐食ランク4および5のポリカーボネート樹脂を用いて成形加工した場合には、成形機スクリューや金型表面に腐食が発生し易く、品質不良を生じ易い。
[実施例1]
反応熱を除去する機能を有した多管式反応槽のシェル側に40℃の冷却水を通水し、チューブ側に比表面積300m/g、平均粒径2.5mm、全細孔容積0.20ml/gの三菱化学カルゴン(株)製の椰子殻活性炭(第1固体触媒)を充填した第1反応槽を設けた。
第1反応槽の下流側に、反応熱を除去する機能を有した多管式反応槽のシェル側に40℃の冷却水を通水し、チューブ側に比表面積1,000m/g、平均粒径3.5mmの日本エンバイロケミカルズ(株)製の椰子殻活性炭(第2固体触媒)を充填した第2反応槽を設けた。
第2反応槽の下流側に、次いで−25℃のブラインを通液したコンデンサーと液化塩化カルボニル貯槽を設けた。
これらの装置を直列に接続し、第1反応槽から、CO/Clのモル比1.030になるようにCOガス10.30Nm/HrとClガス10.00Nm/Hrを圧力0.15MPa(ゲージ圧)で通気して塩化カルボニルを得た。第1固体触媒と第2固体触媒との充填体積比率は6.7/3.3とし、第1反応槽の反応温度は490℃、第2反応槽の反応温度は45℃であった。
さらに、触媒の寿命を確認するため、通気開始間もない塩化カルボニル累積生産量(触媒量1mに対する)が2.0×10kg/m時点の品質(表1)とともに、長期運転後の塩化カルボニル累積生産量(触媒量1mに対する)が1.6×10kg/m時点の品質も確認し、表2に示した。
次に、得られた塩化カルボニルを用いてポリカーボネート樹脂を製造した。温度計、撹拌機および還流冷却器付き反応器にイオン交換水219.4部、48%水酸化ナトリウム水溶液40.2部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン57.5部(0.252モル)およびハイドロサルファイト0.12部を溶解した後、塩化メチレン181部を加え、撹拌下15〜25℃で上記塩化カルボニル28.3部を40分要して吹込んだ。塩化カルボニル吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液7.2部およびp−tert−ブチルフェノール2.42部を加え、撹拌を始め、乳化後トリエチルアミン0.06部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。
反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、この塩化メチレン溶液を軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けたニーダーの温水中に滴下して塩化メチレンを蒸発して、粘度平均分子量15,100のポリカーボネート樹脂パウダーを得た。
このパウダーを145℃、6時間乾燥し、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.004重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.06重量%加えた。次に、かかるパウダーをベント式二軸押出機[神戸製鋼(株)製KTX−46]によりシリンダー温度240℃で脱気しながら溶融混練し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られた塩化カルボニル及びポリカーボネート樹脂の評価結果を表1および表2に示した。
[実施例2]
第1反応槽に第1固体触媒として比表面積250m/g、平均粒径2.5mm、全細孔容積0.15ml/gの三菱化学カルゴン(株)製活性炭を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂を得た。得られた塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表1に示した。同様に長期運転後の塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表2に示した。
[実施例3]
第2反応槽に第2固体触媒として比表面積1300m/gの日本エンバイロケミカルズ(株)製活性炭を用いた以外は、実施例2と同様の方法で塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂を得た。得られた塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表1に示した。同様に長期運転後の塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表2に示した。
[実施例4]
第1反応槽に第1固体触媒として比表面積190m/g、平均粒径2.3mm、全細孔容積0.11ml/gの三菱化学カルゴン(株)製活性炭を用いた以外は、実施例3と同様の方法で塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂を得た。得られた塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表1に示した。同様に長期運転後の塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表2に示した。
[実施例5]
第1反応槽に第1固体触媒として比表面積330m/g、平均粒径2.5mm、全細孔容積0.22ml/gの三菱化学カルゴン(株)製活性炭を用いた以外は、実施例3と同様の方法で塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂を得た。得られた塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表1に示した。同様に長期運転後の塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表2に示した。
[比較例1]
第1反応槽に第1固体触媒として比表面積400m/g、平均粒径2.5mm、全細孔容積0.45ml/gの三菱化学カルゴン(株)製活性炭を用い、第2反応槽に第2固体触媒として比表面積900m/gの日本エンバイロケミカルズ(株)製活性炭を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂を得た。得られた塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表1に示した。同様に長期運転後の塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表2に示した。
[比較例2]
第1固体触媒と第2固体触媒の充填体積比率を9.1/0.9に変更した以外は、比較例1と同様の方法で塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂を得た。得られた塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表1に示した。同様に長期運転後の塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表2に示した。
[比較例3]
第1固体触媒と第2固体触媒の充填体積比率を3.3/6.7に変更した以外は、比較例1と同様の方法で塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂を得た。得られた塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表1に示した。同様に長期運転後の塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表2に示した。
[比較例4]
第1反応槽に第1固体触媒として比表面積150m/g、平均粒径2.5mm、全細孔容積0.04ml/gの三菱化学カルゴン(株)製活性炭を用いた以外は、実施例1と同様の方法で塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂を得た。得られた塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表1に示した。同様に長期運転後の塩化カルボニルおよびポリカーボネート樹脂の評価結果を表2に示した。
Figure 2012254895
Figure 2012254895
本発明のポリカーボネート樹脂は、成形時の熱安定性に優れ、金属腐食性も良好なことから、光学用途、自動車用途、シリコンウエハー、電気・電子機器収納容器および眼鏡レンズなどに利用できる。
1 ヘッドランプレンズ本体
2 レンズのドーム状部分(凸側が可動側金型に対応する)
3 レンズの外周部分
4 成形品のゲート(幅30mm、ゲート部の厚み4mm)
5 スプルー(ゲート部の直径7mmφ)
6 レンズの外周部分の直径(220mm)
7 レンズのドーム部分の直径(200mm)
8 レンズのドーム部分の高さ(20mm)
9 レンズ成形品の厚み(4mm)

Claims (14)

  1. 塩素と一酸化炭素とを、比表面積150〜350m/gの第1固体触媒に接触させて、反応率にして30モル%以上反応させた後、比表面積900〜1500m/gの第2固体触媒に接触させて塩化カルボニル化反応することを特徴とする塩化カルボニルの製造方法。
  2. 第1固体触媒の全細孔容積が0.05〜0.40ml/gの範囲である請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  3. 第1固体触媒の全細孔容積が0.10〜0.30ml/gの範囲である請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  4. 各接触を0.05〜0.50MPa(ゲージ圧)の圧力で行う請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  5. 第1固体触媒と第2固体触媒との充填体積比が4/6〜9/1の範囲である請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  6. 第1固体触媒および第2固体触媒が活性炭である請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  7. 第1固体触媒および第2固体触媒の平均粒径が0.5〜5.0mmの範囲である請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  8. 第1固体触媒および第2固体触媒の平均粒径が1.0〜4.0mmの範囲である請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  9. 触媒量1mに対する塩化カルボニル累積生産量が2.0×10kg/mおよび1.6×10kg/mのいずれの時点でも、得られる塩化カルボニル中の四塩化炭素含有量が7ppm以下、塩素分子含有量が20ppm以下、且つ臭素分子含有量が10ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  10. 触媒量1mに対する塩化カルボニル累積生産量が2.0×10kg/mおよび1.6×10kg/mのいずれの時点でも、得られる塩化カルボニル中の四塩化炭素含有量が6ppm以下、塩素分子含有量が10ppm以下、且つ臭素分子含有量が5ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の塩化カルボニルの製造方法。
  11. 四塩化炭素含有量が7ppm以下、塩素分子含有量が20ppm以下、且つ臭素分子含有量が10ppm以下であることを特徴とする塩化カルボニル。
  12. 二価フェノールと請求項11記載の塩化カルボニルとを反応させるポリカーボネート樹脂の製造方法。
  13. 四塩化炭素含有量が0.7ppm以下、塩素原子含有量が1ppm以下、且つ臭素原子含有量が0.5ppm以下であるポリカーボネート樹脂。
  14. 請求項13に記載のポリカーボネート樹脂を溶融成形してなる成形品。
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