JP3785180B2 - 精密部材用収納容器の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂を基材とした精密部材用収納容器の製造方法に関するもので、特に、被収納物が極微量の汚染をも敬遠する電気部材、電子機器部材等の精密部材(生ウェハー、ディスクリートウェハー、回路加工途中のウェハー、バータントウェハー、ダイシングウェハーなどの半導体用各種ウェハーや、ICチップ等の半導体材料など、フォトマスクなどの各種マスク類、リードフレーム、アルミディスクなどのディスク基板、液晶パネル、プラズマディスプレイ等の各種表示素子など)等の精密部材用収納(運搬、保管並びに各工程中の搬送を含む)容器の製造方法に関するものである。
ポリカーボネート樹脂製収納容器は、透明もしくは半透明で被収納物が透視可能であり耐衝撃性等に優れている点から従来より広く使用されてきた。ところが近年対象とされる被収納物の種類が広がり、汚染を極度に嫌う電気部材、電子機器部材等の精密部材の分野にも使用されるようになってきた。しかし、ウェハー、IC等の半導体材料等の精密部材に見られるように、その高性能化に伴い、被収納物を組み込み、もしくは加工したものに誤作動が生じることもあることが判明した。
この誤作動の原因を追及したところ、ポリカーボネート樹脂製の収納容器から精密部材収納中に揮発してくるCl(塩素)であることが判明した。ポリカーボネート樹脂として、成形時の金型腐食を防止するためにCl量を低減させるべく特許文献1や2には、ホスゲン中の不純物としてホスゲンより高沸点の四塩化炭素が含有していることが記載されており、成形時において加熱した場合に塩酸を発生させるため、ホスゲン中の四塩化炭素含有量を一定量以下とすることが報告されている。
しかし、これらの場合においては、成形中に加熱されている間に分解し発生する塩酸に関して議論しているものであり、成形後、収納中、特には常温に放置している間に徐々に揮発する現象に関して何等教えるところではない。本発明者らは、ポリカーボネート樹脂の成形品の常温における揮発性Clに関して鋭意検討した結果、この揮発性Clとポリカーボネート樹脂製造に原料として用いられたホスゲン中に不純物として含有される塩素との間に相関関係があることが判った。
すなわち、ホスゲン中に残存する不純物塩素は、ポリカーボネート樹脂製造工程における初期のジフェノールのアルカリ金属塩水溶液とホスゲンとの反応段階でジフェノール類の特定箇所を何らかの形で塩素化し、最終工程まで変化しないまま残存したもので、成形後、放置する間に徐々に揮発してくるような形態のものであることが判明した(検出はClイオンとして認められる)。
但し、前記したような四塩化炭素がポリカーボネート樹脂中に残留している場合や、二相界面法によるポリカーボネート樹脂製造工程途中で生成するクロロホーメート基が残留している場合は、これらから溶融成形時にHClの発生が認められ、このための生成と区別が付きにくい場合がある。
即ち、反応性の非常に高いCl基の場合、溶融成形の際の熱で直ぐにHClに変化するが、上記のCl化された部位の場合では溶融成形で外れるよりもむしろ、成形後、常温下で光分解等により徐々に生成してゆくものであることが判った。
従って、四塩化炭素がポリカーボネート樹脂中に残留している場合や、二相界面法によるポリカーボネート樹脂製造工程途中で生成するクロロホーメート基が残留している場合には、残存Cl2は溶融成形後、成形品を一旦純水で洗浄することにより除去される。
一方、上記の残存Cl2により塩素化された部位の場合、溶融成形時にポリカーボネート樹脂に熱がかかることにより一時的にClが発生するものもある。
しかし、一旦純水により洗浄してもなお完全に除去されず、成形後放置しておくと徐々に発生してくることが判った(検出はClイオンとして認められる)。この様なClを「揮発性Cl」と云う。
即ちポリカーボネート樹脂成型品を放置する際、一定の飽和吸水状態に移行しようと水分を吸水する時、あるいはその反対で一定の飽和吸水状態からドライ(DRY)な環境下に置かれ水分を吐き出す時にClイオンが成形品から揮発される(この様なClを揮発性Clと云う)。
被収納物に対する汚染性のうち、とりわけ塩素不純物は、腐食の要因とされており、汚染の重要な要因となっている。通常これらの収納容器は使用前に十分な洗浄が行なわれ容器表面の塩素不純物については除去可能であるが、いったん被収納物を収納した後、輸送、保管中などの環境下で放置されている間に容器を構成している樹脂から徐々に揮発してくる塩素については何ら有効な手段がなかった。
特開昭62−297320号公報 特開昭62−297321号公報
本発明は、収納された精密部材を組み込み,もしくは加工したものに誤作動することのない、精密部材用収納容器の製造方法を提供しようとするものである。
本発明は、ポリカーボネート樹脂を基材とし、該ポリカーボネート樹脂は、吸水率が0.05重量%以下になるまで乾燥したポリカーボネート樹脂をガラス管に入れ、1mmHg以下の圧力で封入した後、これを280℃で30分間加熱し、ついで23℃まで冷却後、3日間常温(23℃)放置する間に封入したガラス管の気相部に揮発してくるClイオン量が30ppb以下である、精密部材用収納容器を製造する方法であって、
ホスゲンを出発原料としてカーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂を製造し、次いで該ポリカーボネート樹脂を所望形状の精密部材用収納容器に成形するに当り、
上記原料ホスゲンは、該原料ホスゲン中の未反応塩素濃度が1000ppb以下のものを用いてなることを特徴とする精密部材用収納容器の製造方法にある。
本発明によれば、収納された精密部材を組み込み,もしくは加工したものに誤作動することのない、精密部材用収納容器の製造方法を提供することができる。
本発明の容器は、揮発性塩素イオン量が30ppb(パート パー ビリオン)以下、好ましくは20ppb以下、より好ましくは10ppb以下のポリカーボネート樹脂を基材とし、これを射出成形、押出成形、インフレーション成形、中空成形、差圧成形、真空成形、圧空成形等の成形方法で容器に成形したものである。図1にその容器の一例としてウェハーの収納容器を示す。図1において、1は収納容器、2はウェハーキャリア、2aはリブ、2bは溝、3は容器本体、4は蓋体、5はウェハー押え、6はパッキンであり、ウェハーはウェハーキャリア2の溝2b,2b間に各1枚づつ互いに離間して挿入され、5〜40枚程収納され、蓋体4と容器本体3とはそれぞれに設けられた係止部材4aと3aとによりパッキング6を介して係合される。
ポリカーボネート樹脂の製造:容器の基材の揮発性Clの少ないポリカーボネート樹脂の製造は、ホスゲンとして塩素濃度が1,000ppb、好ましくは500ppb、特に好ましくは100ppb以下のものを用いる他は従来のカーボネート結合を有する樹脂の製造方法と同等の方法で実施でき、特に制限はなく、ホスゲンを原料とする各種の製造方法を採用することができる。この場合、上記「ホスゲンを原料とする」とは、ホスゲンを上記樹脂の直接の原料とする場合だけでなく、ホスゲンを原料として上記樹脂の中間体を製造し、それを用いて上記樹脂を製造する等の場合をも含むものである。
上記従来のカーボネート結合を有する樹脂の製造方法としては、
1)ホスゲンとジフェノールとを界面重縮合条件下もしくは溶液重合条件下で反応させる方法、
2)ホスゲンとフェノールとを反応させてジフェニルカーボネートを製造し、これとジフェノールとを溶融縮合条件下で反応させる方法
等を挙げることができる。上記2)の方法における典型的な反応条件としては、精製されたジフェニルカーボネートとジフェノールとを溶融下(〜300℃)、高真空条件下(≦50mmHg)でフェノールを蒸留しながらエステル交換により分子量伸張させてゆく、この時、重縮合触媒として種々のタイプのものが使用されている。この時蒸留したフェノールは、回収して再利用する。
(1)原材料
(a)ホスゲン
揮発性Clの少ないポリカーボネート樹脂の製造において使用されるホスゲンは、液状またはガス状であり、原料ホスゲン中のCl2濃度が1,000ppb以下、好ましくは500ppb以下、より好ましくは100ppb以下、特に好ましくは0〜100ppbのものが使用されることが重要である。
原料ホスゲン中のCl2の除去方法としては、活性炭等によるCl2の吸着除去や沸点差を利用した蒸留による分離除去等があり、いずれの方法で除去してもかまわない。但し、蒸留除去の場合、除去オーダーが極めて低い数値である為、相当の蒸留段数を必要とし不利で、この観点から活性炭を用いる吸着除去の方が有利である。
用いる活性炭としては、酸性ガス用活性炭、塩基性ガス用活性炭、一般ガス用活性炭が使用できるが、中でも次の物性を示す酸性ガス用活性炭が好ましい。
粒度:2〜60メッシュ篩残、好ましくは4〜6メッシュ篩残
真密度:1.9〜2.2g/cc、好ましくは2.0〜2.1g/cc
空隙率:33〜55%、好ましくは40〜45%
比表面積:700〜1500m2/g、好ましくは1,150〜1,250m2/g
細孔容積:0.5〜1.1cc/g、好ましくは0.80〜0.90cc/g
平均粒径:12〜40オングストローム、好ましくは12〜20オングストローム
また、温度管理の観点からは、ホスゲンは液状であることが好ましく、特に吸着除去の場合には液状が有利である。液状のまま反応に持ち込む場合、各反応温度において液状を保ち得る反応圧力が選択される。吸着除去する方法には特に制限がなく、例えば、液化ホスゲンを液状のまま活性炭塔に、SVが5〜20、温度0〜5℃で通液する手法で吸着除去することができる。
ホスゲンの好ましい使用量は、反応条件、特に反応温度及び水相中のジフェノールアルカリ金属塩の濃度によっても影響は受けるが、ジフェノール1モルに対するホスゲンは、通常1〜2、好ましくは1.05〜1.5のモル数である。この比が大きすぎると、未反応ホスゲンが多くなり、原単位が極端に悪化する。一方、小さすぎると、CO基が不足し、適切な分子量伸長が行われなくなるので好ましくない。
(b)ジフェノール
揮発性Clの少ないポリカーボネート樹脂の製造方法において使用されるジフェノールとしては、好ましくは、一般式HO−Z−OHに対応するものである。ここで、Zは1個またはそれ以上の芳香核であり、核の炭素と結合する水素は、塩素、臭素、脂肪族の基または脂環式の基で置換することができる。複数の芳香核は、それぞれ異なった置換基を有することもできる。また、複数の芳香核は、架橋基で結合されていてもよい。この架橋基には、脂肪族の基、脂環式の基、ヘテロ原子またはそれらの組合せが含まれる。
具体的には、ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−フルフォン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルフォキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジアルキルベンゼン、及び、核にアルキルまたはハロゲン置換基を有するこれらの誘導体が挙げられる。もちろん、これらのジフェノールの2種以上を併用することも可能である。
これらのジフェノール及び他の適当なジフェノールとしては、例えば、米国特許第4,982,014号、同第3,028,365号、同第2,999,835号、同第3,148,172号、同第3,275,601号、同第2,991,273号、同第3,271,367号、同第3,062,781号、同第2,970,131号、及び同第2,999,846号の各明細書、ドイツ特許公開第1,570,703号、同第2,063,050号、同第2,063,052号及び同第2,211,956号の各明細書、並びに、フランス特許第1,561,518号明細書に記載されている。
特に好適なジフェノールとしては、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン及び1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが含まれる。
(c)その他
必要に応じて、任意の連鎖停止剤及び/または分岐剤を加えることができる。適当な連鎖停止剤としては、種々のモノフェノール、例えば、通常のフェノールのほか、p−t−ブチルフェノール及びp−クレゾールのようなC1〜C10のアルキルフェノール、並びにp−クロロフェノール及び2,4,6−トリブロモフェノールのようなハロゲン化フェノールが含まれる。これらの中でも、フェノール、クミルフェノール、イソオクチルフェノール及びp−t−ブチルフェノールが、好適な連鎖停止剤である。
連鎖停止剤の使用量は、目的とする縮合体の分子量によっても異なるが、通常、水相中のジフェノールの量に対して、0.5〜10重量%の量で使用される。使用される分岐剤は、3個またはそれ以上の官能基を有する種々の化合物から選ぶことができる。適当な分岐剤には、3個またはそれ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物である、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、2,6−ビス−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ヒドロキシフェニル)−プロパン及び1,4−ビス−(4,4′−ジヒドロキシトリフェニルメチル)−ベンゼンが含まれる。また、3個の官能基を有する化合物である、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロキシインドール及び3,3−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールも含まれる。中でも、3個またはそれ以上のフェノール性ヒドロキシ基を持つものが好適である。分岐剤の使用量は、目的とする分岐度によっても異なるが、通常、水相中のジフェノールの量に対し、0.05〜2モル%の量で使用される。
(2)重縮合反応
(a)反応条件
溶媒
使用されるべき有機相は、反応温度及び反応圧力において、ホスゲン及びカーボネート・オリゴマー、ポリカーボネート樹脂等の反応生成物は溶解するが、水を溶解しない(水と溶液をつくらないという意味で)任意の不活性有機溶媒を含むことが必要である。
代表的な不活性有機溶媒には、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素が含まれる。中でも、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。
これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として、使用することができる。もっとも、クロロベンゼンを単独で使用する場合、クロロベンゼン中におけるポリカーボネート樹脂の技術的に有用な濃度を得るためには、反応及び洗浄の際に高い操作温度を使用する必要がある。
また、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンをベースにした、工業的に重要なポリカーボネート樹脂に対する、好適な溶媒の組合せは、塩化メチレンとトルエンとの混合物であり、必要が有れば、本発明方法でも使用することができる。水相は、水、ジフェノール及びアルカリ金属水酸化物の少なくとも3成分を含むことが必要である。水相中で、ジフェノールは、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと反応して、水溶性のアルカリ金属塩を生じる。もちろん、有機相と接触させる以前に、前記の3成分を混合して、均一な水溶液を調製し、水相を準備しておくことが好ましいが、必要に応じて、それら3成分の一部または全部を、有機相との接触に際して、混合することも可能である。
量比
水相中のジフェノールとアルカリ金属水酸化物のモル比は、1:1.8〜1:3.5が好ましく、更には1:2.0〜1:3.2が好ましい。このような水溶液を調製する際には、温度を20℃以上、好ましくは30〜40℃にすることが好ましいが、余り高いとジフェノールの酸化が起きるので、必要最低温度とし、かつ、窒素雰囲気で行うか、あるいは、ハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加することが好ましい。
(b)触媒
ポリカーボネート樹脂の製造において、ホスゲンとの接触に先立って、水相と有機相の接触の際に縮合触媒を供給し、望むならば、縮合触媒の供給を、ホスゲンとの接触時に行ってもよい。縮合触媒としては、二相界面縮合法に使用されている多くの縮重合触媒の中から、任意に選択することができる。中でも、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン及びN−イソプロピルモルフォリンが特に適しており、特にトリエチルアミン及びN−エチルピペリジンが極めて適している。
(c)オリゴマーの製造
オリゴマーを得る段階での、有機相中のオリゴマーの濃度は、得られるオリゴマーが可溶な範囲であればよく、具体的には、10〜40重量%程度である。また、有機相の割合は、ジフェノールのアルカリ金属水酸化物水溶液、即ち水相に対して0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。このような縮合条件下で得られる、オリゴマーの平均分子量(Mv)は、通常500〜10,000程度、好ましくは1600〜4500であるが、この分子量に制限されない。
(d)重縮合反応
このようにして得られたオリゴマーは、常法の重縮合条件下で、高分子のポリカーボネート樹脂とする。好ましい実施態様においては、このオリゴマーの溶存する有機相を水相から分離し、必要に応じ、前述の不活性有機溶媒を追加し、該オリゴマーの濃度を調整する。
すなわち、重縮合によって得られる有機相中の、ポリカーボネート樹脂の濃度が、5〜30重量%となるように、溶媒の量が調整される。しかる後、新たに水及びアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、さらに重縮合条件を整えるために、好ましくは前述の縮合触媒を添加して、二相界面縮合法に従い、所期の重縮合を完結させる。重縮合時の有機相と水相の割合は、容積比で、有機相:水相=1:0.2〜1程度が好ましい。重縮合完結後は、残存するクロロホーメート基が0.01μeq/g以下になるまで、NaOHのようなアルカリで洗浄処理する。その後は、電解質が無くなるまで、有機相を洗浄し、最終的には有機相から適宜不活性有機溶媒を除去、ポリカーボネート樹脂を分離する。
ポリカーボネート樹脂
このようにして得られるポリカーボネート樹脂の平均分子量(Mv)は、通常10,000〜100,000程度である。なお、平均分子量(Mv)とは、オリゴマーまたはポリカーボネートの濃度(C)が0.6g/dl塩化メチレン溶液を用いて、温度20℃で測定した比粘度(ηsp)から、下記の式(1)及び(2)を用いて算出した値である。
Figure 0003785180
また、このようにして得られるポリカーボネート樹脂は、加熱発生Cl量(ポリマー当たりのCl発生量(ppb))を30ppb以下、好ましくは20ppb以下、特に好ましくは1〜20ppb程度にまで低下することができる。従って、容器への成形加工時においても変色し難い等の利点がある。この揮発性Clの少ないポリカーボネート樹脂の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂は、これを反応器から分離する途中、又は、これを加工する前に、或いは、その間において、種々の添加剤、例えば、安定剤、型抜き剤、燃焼遅延剤、帯電防止剤、充填剤、繊維、衝撃強度変性剤等の有効量を加えることができる。
ポリカーボネート樹脂が樹脂成分として50重量%を越える限りにおいて各種の樹脂とブレンドまたはアロイ化して用いることができる。ポリカーボネート樹脂にブレンドまたはアロイ化できる樹脂としてはABS系樹脂(成形性改良:流動性を良くして大形成形品の歪をとる)、ポリエステル系樹脂(耐溶剤性改良)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:光沢性改良)、ポリアミド樹脂(耐溶剤性向上)、フッ素系樹脂(耐摩耗性改良)、ポリエチレン系樹脂(耐衝撃性向上)、ポリエステルカーボネート(PEC:耐衝撃性向上、透明性向上)などが例示される。当然のことながらこれらも揮発性Clの少ないものを適宣選択して用いるべきである。
また、これらポリカーボネート樹脂単独、あるいはブレンド体もしくはアロイは容器の内層側の基材として用いられる限り、各種の熱可塑性樹脂との積層体として用いることも可能である。また、各種の添加剤(タルク、マイカ、クレー、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ガラス繊維等の強化材料;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモンなどの難燃性付与剤;フェライト、希コバルトなどの磁気改良剤;フェノール系、リン系または硫黄系の酸化防止剤(熱安定剤);紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系又はベンゾフェノン系);カルボン酸エステル、ポリシロキサン化合物等の離型剤;チタンホワイト、チタンイエロー、カーボンブラック、キナクリドン系等の無機または有機顔料;ペリレン系、ペリノン系の染料;グリセリン脂肪酸モノエステル、リン酸ジエステル、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩、グリセリン脂肪酸モノエステル、スルホン酸ホスホニウム塩とホウ酸またはホウ酸エステルの混合物等の帯電防止剤を揮発性Clの量を増大させないものである限り適宜選択して用いてもよい。これらのポリカーボネート樹脂を基材としたものは、射出成形、押出成形、差圧成形等によって種々の形状の容器に加工することができる。
以下、実施例に従って、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
ホスゲンの調製
この液化ホスゲンは直径が55mm、高さが500mmリットルの円筒型容器内に下記の物性の酸性ガス用活性炭(シラサギ GH2X4/6UG、タケダ製)を充填し、−5℃、7.2kg/時間、SV=4で通液処理した。
表−1に示す塩素含有量の液化ホスゲンは、活性炭塔出口の値で通過したホスゲンを何度も活性炭塔に導くことにより塩素含有量を0ppmまで低下することが判った。なお、表−1に示すCl2含有量の液化ホスゲンは、所定の液化ホスゲンに新たにCl2ガスをボンベより添加し、表−1の濃度に調整したものである。
酸性活性炭の物性
粒度:4〜6メッシュ篩
真空度:2.1g/cc
空隙率:40%
比表面積:1200m2/g
細孔容積:0.86cc/g
平均孔径:12オングストローム
実施例1〜5
ビスフェノールA(BPA)15.09kg/時、水酸化ナトリウム(NaOH)5.49kg/時及び水93.5kg/時を、ハイドロサルファイト0.017kg/時の存在下に、35℃で溶解した後、25℃まで冷却した水相並びに5℃に冷却した塩化メチレン61.9kg/時の有機相を、各々内径6mm、外径8mmのテフロン(登録商標)製配管に供給し、これに接続する内径6mm、長さ34mのテフロン(登録商標)製パイプリアクターにおいて、ここに別途導入される0℃に冷却した表−1に示すCl量の液化ホスゲン7.2kg/時と接触させた。
上記原料(ビスフェノールA・水酸化ナトリウム溶液)はホスゲンとパイプリアクター内を、1.7m/秒の線速にて20秒間流通する間に、ホスゲン化、オリゴマー化反応を行った。この時、反応温度は、断熱系で塔頂温度60℃に達した。反応温度は、調整しいずれも次のオリゴマー化槽に入る前に35℃迄外部冷却を行った。オリゴマー化に際し、触媒トリエチルアミン0.005kg/時及び分子量調節剤のp−t−ブチルフェノール0.39kg/時は、各々、オリゴマー化槽に導入した。
このようにしてパイプリアクターより得られるオリゴマー化された乳濁液を、さらに内容積50リットルの攪拌機付き反応槽に導き、N2雰囲気下30℃で撹拌し、オリゴマー化することで、水相中に存在する未反応のビスフェノールAのナトリウム塩(BPA−Na)を完全に消費させた後、水相と油相を静置分離し、オリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
上記オリゴマーの塩化メチレン溶液のうち、23kgを、内容積70リットルのファウドラー翼付き反応槽に仕込み、これに希釈用塩化メチレン10kgを追加し、さらに25重量%NaOH水溶液2.2kg、水6kg及びトリエチルアミン2.2gを加え、窒素ガス(N2)雰囲気下30℃で撹拌し、60分間重縮合反応を行って、ポリカーボネート樹脂を得た。この反応液に、塩化メチレン30kg及び水7kgを加え、20分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。分離した有機相に、0.1N塩酸20kgを加え15分間撹拌し、トリエチルアミン及び小量残存するアルカリ成分を抽出した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。更に、分離した有機相に、純水20kgを加え、15分間撹拌した後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離した。この操作を抽出排水中の塩素イオンが検出されなくなるまで(3回)繰り返した。
得られた精製ポリカーボネート樹脂溶液を、40℃温水中にフィードすることで粉化し、乾燥後粒状粉末(フレーク)を得た。このフレーク中の窒素含有量は1.5ppmであった。ホスゲン中の塩素含量の測定は、ホスゲンとして70g捕集し、気化、NaOH溶液に吸収、NaClOとして酸化還元滴定し、その絶対量を測定し、ホスゲン中のCl含有量とした。
各実施例で得られた、オリゴマーについて平均分子量を、フレークについて平均分子量及び分子量分布を、成形品について、色調をそれぞれ測定した。その結果を表−1に示す。なお、表−1中のポリカーボネート樹脂の物性評価は、次のようにして行った。(1)分子量分布(Mw/Mn):GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソ株式会社製、製品名HLC−8020)を使用し、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液とし、4種の高速GPC用充填材(東ソ株式会社製、製品名TSK 5000HLX、4000HLX、3000HLX及び2000HLX)を充填した4本のカラムで分離し、屈折率差により検出して得られたチャートより、Mw及びMnをポリスチレン換算で求め、Mw/Mnを算出した。
(2)色調(YI):
〔見本板の成形〕フレークを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、製品名FS80S−12ASE)を用い、280℃で可塑化後、シリンダー内で15秒滞留させ、厚さ3.2mm、60mm角の見本板を成形した。また、可塑化後、シリンダー内での滞留時間を5分とした、見本板も成形した。
〔色調の測定〕これらの見本板について、色差計(スガ試験機株式会社製、製品名SM−4−CH)を用いて、色調(YI値)を測定した。測定値のうち、15秒滞留のYI値が小さいのは、定常成型時の色調が良好であることを示し、15秒滞留と5分滞留のYI値の差(ΔYI)が小さいのは、高温における熱安定性が良好であることを示す。
(3)揮発性Cl測定:フレークを、30mm二軸押出機(池貝鉄鋼製)、樹脂温度290℃にて混練後、ペレット化した。このとき操作上Cl混入が懸念される点(人の手や汗及び冷却に使用するH20)に関し、十分の注意を払い処理した。得られたペレット10gを乾燥して吸水率を0.05重量%以下とし、これをイオンクロマト水で洗浄済みの内径10mmのガラス管に仕込み、真空(1mmHg以下)下、溶封した(封管の長さは20cmで一定とした)。このガラス管全体を280℃のオイルバス中に30分間立てた状態で保持後、冷却、外部に付着したオイル等を綺麗に洗浄した後、同ガラス管をそのままの状態で3日間室温保持した。ポリマーの浸析部の直上を切断(焼き玉)し上部ガラス内部を純水1mlで洗浄、捕集、イオンクロマト分析、ポリマー1g当たりの揮発性Cl量として求めた。
(4)収納容器:ペレットをシリンダー温度290℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒で射出成形し、図1に示すような、25枚の直径が6インチのウェハーを5mm間隔をおいて配列担持可能な溝2bを並列するようにリブ2aを26個突設して、V溝状のウェハー収納溝を形成したケース状のウェハーキャリア2、ウェハーを収納する容器本体3、および該本体3に開閉自在に設けられる蓋体4とからなる直径6インチの半導体ウェハー用収納容器の3点を得た。一方、シリンダー温度220℃、金型温度50℃、成形サイクル40秒の条件下で、その製造工程、原料、添加剤中に塩素成分を検出しえなかった熱可塑性ポリエステルエラストマーを用い蓋体4の内面に嵌装されるウェハー押え5と、シール用のパッキン6を射出成形した。
上記条件で構成された収納容器10個をクリーンルーム内に移し、イオンクロマトグラフィーで測定されるClイオン量が検出下限1ppb以下である純水を用い、その洗浄水のClイオン量が同様に検出下限1ppb以下に達するまで、各部品を洗浄後、同クリーンルーム内で室温にて十分乾燥した。その後、キャリア2に、酸、純水で十分洗浄し、後述する測定法で測定したClイオン量がそれぞれ検出下限1ppb以下の清浄な直径6インチ、厚さ400μmの半導体用シリコンウェハー1枚をキャリア2の中央位置の2′,2′のV溝に接触するよう挿入した。
次に、ウェハーを収納したキャリア2を図1に示す構成で組み立て後、さらに個々の収納容器をアルミラミネート袋に入れて開封部をヒートシールにより密閉し、この状態でクリーンルーム内に常温で120時間放置した。なお、これらのウェハーを挿入する操作はクリーンルーム内に設置したブース内の窒素ガス雰囲気下において行った。
120時間放置後、アルミラミネート袋、容器を開封、ウェハーを取り出し、純水20ml表面を洗浄、表面に付着しているClイオンを捕集した。こうして得られた液をイオンクロマトグラフィーで分析し、同水中に含有されるClイオン量を測定した。得られた数値の10個の平均値をポリカーボネート樹脂当りに換算し、表−1に記載した。なお、ブランクとして上記と同様のウェハーキャリア2、容器本体3、および蓋体4を石英で製作した容器に上記と同様の操作を行ったところ、Clイオン量はウェハーの洗浄直後と同様の検出下限1ppb以下であった。また容器に30日間保管されたウエハーを加工して得たICチップは誤作動を何ら生じなかった。
Figure 0003785180
Figure 0003785180
比較例1〜3実施例1において、ホスゲンを活性炭塔を通液処理しない以外は実施例1と同様の操作を行った。
本発明によれば、収納された精密部材を組み込み,もしくは加工したものに誤作動することのない、精密部材用収納容器の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施例を示すウェハー収納容器の組み立て工程を示す斜視図である。
符号の説明
1 収納容器
2 ウェハーキャリア
3 容器本体
4 蓋体
5 ウェハー押え

Claims (3)

  1. ポリカーボネート樹脂を基材とし、該ポリカーボネート樹脂は、吸水率が0.05重量%以下になるまで乾燥したポリカーボネート樹脂をガラス管に入れ、1mmHg以下の圧力で封入した後、これを280℃で30分間加熱し、ついで23℃まで冷却後、3日間常温(23℃)放置する間に封入したガラス管の気相部に揮発してくるClイオン量が30ppb以下である、精密部材用収納容器を製造する方法であって、
    ホスゲンを出発原料としてカーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂を製造し、次いで該ポリカーボネート樹脂を所望形状の精密部材用収納容器に成形するに当り、
    上記原料ホスゲンは、該原料ホスゲン中の未反応塩素濃度が1000ppb以下のものを用いてなることを特徴とする精密部材用収納容器の製造方法。
  2. 請求項1において、上記ポリカーボネート樹脂は、ホスゲンとジフェノールとを界面重縮合もしくは溶液重合により反応させることにより得ることを特徴とする精密部材用収納容器の製造方法。
  3. 請求項1において、上記ポリカーボネート樹脂は、ホスゲンとフェノールとを反応させてジフェニルカーボネートとなし、次いで該ジフェニルカーボネートとジフェノールとを溶融縮合反応させることにより得ることを特徴とする精密部材用収納容器の製造方法。
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