JP4055412B2 - 乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫の除去方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水分を含むガスから水分を除去して乾燥ガスを得る方法としては、ガスを濃硫酸と接触させる方法が挙げられ、具体的には、例えば図3に示すような乾燥塔(5)を用い、その塔底(51)からガス(6)を供給して乾燥塔(5)内の塔底(51)から塔頂(52)に向けて流通させると共に、塔頂(52)側から塔底(51)に向けて濃硫酸(7)を流通させて、塔内でガス(6)と濃硫酸(7)とを接触させる方法が挙げられる。かかる方法によれば、ガス(6)に含まれる水分は濃硫酸(71)に吸収されるので、塔頂(52)からは水分を含まない乾燥ガス(1)を得ることができる。
【0003】
かかる方法において、ガスに含まれる水分を十分に吸収させるには、濃硫酸を大量に供給することが好ましく、また、例えば泡鐘トレイ、充填物などを乾燥塔内に配置してガスが濃硫酸と十分な面積で接触するようにすることが好ましい。ところが、塔内で濃硫酸とガスとが接触すると、硫酸の微細な飛沫が発生し、乾燥ガスに同伴される。このため、塔頂(52)から乾燥ガス(1)を得るための配管(8)は、内面が硫酸に対して不活性な材質、例えばポリ塩化ビニルなどで構成されている(図3)。
【0004】
かかる方法により得られる乾燥ガス(1)に含まれる硫酸の飛沫を除去する方法としては、図3に示すように、乾燥ガスを塔頂(52)からの配管(8)で硫酸飛沫除去フィルター(9)に導き、このフィルター(9)を通過させる方法が挙げられる。かかる方法によれば、硫酸飛沫は、この硫酸飛沫除去フィルター(9)で捕集されて除去される。硫酸飛沫除去フィルターとしては、例えば繊維からなる孔径0.5〜10μm程度のフィルターが用いられる。
【0005】
しかし、かかる方法では、乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫を十分に除去することができないという問題があった。例えば塔頂から得た乾燥ガスに物質量比(モル比)で50ppm(乾燥ガス1モルあたり0.000050モル)程度の硫酸が飛沫となって含まれていた場合、孔径1μm程度の硫酸ミスト除去フィルターを通過させても、乾燥ガスには1ppm以上の硫酸飛沫が含まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者は、乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫を十分に除去し得る方法を開発するべく鋭意検討した結果、硫酸と反応して塩を形成し得る基材と接触させたのちにフィルターを通過させた乾燥ガスには、硫酸飛沫が殆んど含まれていないことを見出し、本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、硫酸飛沫を含む乾燥ガス(1)を、硫酸と反応して硫酸塩を形成しうる基材(2)と接触させて硫酸塩を形成させ、形成された硫酸塩をフィルター(3)で捕集することを特徴とする前記乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫の除去方法を提供するものである。図1に本発明の方法で硫酸飛沫を除去するための硫酸飛沫の除去装置(4)の一例を示す。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図1を用いて本発明の方法を説明する。図1に示す硫酸飛沫の除去装置(4)は、硫酸と反応して塩を形成しうる基材(2)とフィルター(3)とを備えている。かかる装置(4)は、乾燥ガス(1)が前記基材(2)に接触したのち前記フィルター(3)を通過するように構成されている。
【0009】
硫酸飛沫を含む乾燥ガスは、水分含有量が物質量比(モル比)で通常100ppm(乾燥ガス1モルあたり水0.000100モル)以下、好ましくは50ppm(乾燥ガス1モルあたり水0.00050モル)以下、理想的には実質的に0であり、通常は硫酸に対して不活性なガスである。かかる乾燥ガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガスなどのいわゆる不活性ガスのほか、酸素ガス、二酸化炭素ガス、塩素ガス、塩化水素ガスなどが挙げられ、これらの混合ガスであってもよい。
【0010】
かかる乾燥ガス(1)は、例えば図2に示すような乾燥塔(5)にその塔底(51)からガス(6)を供給し、乾燥塔(5)の内部を塔底(51)から塔頂(52)に向けてガス(6)を流通させると共に、塔頂(52)側から濃硫酸(7)を供給し、塔底(51)に向けて流通させて、乾燥塔(5)の内部でガス(6)を濃硫酸(7)と接触させる方法により、塔頂(52)から得ることができる。かかる乾燥塔(5)において、塔頂(51)側の供給口(101)からは濃硫酸(7)が塔底(52)に向けて供給される。濃硫酸(7)は、供給口(101)からそのまま流下させて供給してもよいし、噴霧して供給してもよい。供給された濃硫酸(7)は供給口(101)の下方の泡鐘トレイ(53)を通過し、さらにその下方の充填物(54)を通過して、塔底(52)に到達する。塔底(51)から塔頂(52)に向けて流通するガス(6)は、充填物(54)および泡鍾トレイ(53)において濃硫酸(7)と接触し、ガスに含まれる水分が濃硫酸に吸収され、乾燥ガス(1)となる。乾燥ガス(1)は、塔頂(52)から配管(8)を通じて乾燥塔(5)の外部に取り出される。かくして取り出された乾燥ガス(1)には、硫酸飛沫が含まれている。
【0011】
なお、図2に示す乾燥塔において、供給口(101)から供給された濃硫酸(7)はガスと接触して水分を吸収し、硫酸となって塔底(51)に到達し、ここに貯留されるが、塔底に貯留される硫酸(73)は通常、水分を更に吸収しうるので、これをポンプ(11)により回収し、必要により熱交換器(12)で温度調節されたのち第二供給口(102)から乾燥塔内部に供給されてもよく、乾燥塔内部に供給された硫酸(72)は、塔内を流通するガスと接触して再び水を吸収する。第二供給口(102)は通常、先の供給口(101)よりも下方側に配置され、図2に示す乾燥塔では、供給口(101)の下側の泡鐘トレイ(53)の更に下側であって、充填物(54)の上側に第二供給口が配置されている。第二供給口(102)から供給される硫酸(72)は、噴霧して供給してもよいし、流下または滴下して供給してもよいが、図2に示す乾燥塔(5)では、第二供給口(102)の下側の充填物(54)に均一に硫酸を供給できるように、噴霧して供給している。塔底から回収された硫酸の一部(74)は系外に排出される。
【0012】
本発明の除去方法に適用される乾燥ガス(1)はこのようにして得られるものであるが、かかる乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫は、乾燥ガスに対して物質量比(モル比)で50ppm(乾燥ガス1モルあたり0.000050モル)以下、更には30ppm(乾燥ガス1モルあたり0.000030モル)以下であることが好ましい。このため、乾燥塔の塔頂(52)から得られる乾燥ガスのように、硫酸飛沫の含有量がしばしば50ppmを超える場合、硫酸飛沫除去装置(4)は、硫酸飛沫除去フィルター(9)を備えていることが好ましい。硫酸飛沫除去フィルター(9)を備えている場合には、除去装置(4)は、乾燥ガスが硫酸飛沫除去フィルター(9)を通過したのち、前記基材(2)と接触するように構成される。かかる硫酸飛沫除去フィルター(9)を備えていることにより、乾燥ガス(1)は硫酸飛沫除去フィルター(9)を通過したのちに前記基材(2)と接触するので、乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫が物質量比で50ppmを超える場合にも、硫酸飛沫除去フィルターによって硫酸飛沫含有量を50ppm以下とした後に、前記基材(2)と接触させることができる。
【0013】
かかる硫酸飛沫除去フィルター(9)としては、通常の飛沫除去フィルター、例えばブリンク式フィルター、バケット式フィルター、カートリッジ式フィルターなどが用いられ、ブリンク式フィルターが好ましい。硫酸飛沫除去フィルターの材質としては、硫酸や乾燥ガスに対して不活性な材質、例えばフッ素化樹脂、ポリプロピレンなどの合成繊維、ガラスファイバー、カーボンファイバーなどの無機繊維などが用いられ、その孔径は通常0.5μm以上10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0014】
本発明の除去方法では、かかる乾燥ガスを、硫酸と接触して硫酸塩を形成しうる基材(2)と接触させる。かかる基材としては、例えば鉄鋼、ステンレス鋼(鉄のほかクロムなどを含む鋼)などの鉄製基材、銅などの銅製基材などが挙げられる。鉄製基材は、硫酸と接触することにより、硫酸鉄などを生ずる。また、銅製基材は、硫酸と接触することにより、硫酸銅を生ずる。
【0015】
乾燥ガスが基材と接触する面積は、乾燥ガスが基材と接触して、該乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫が基材と反応し硫酸塩を形成することができる面積であればよく、乾燥ガス1m3(大気圧(101.3kPa)、0℃の体積)あたり1時間あたり通常0.05m2以上、好ましくは0.1m2以上である。0.05m2未満であると、硫酸飛沫を十分に除去できない傾向にある。また、かかる面積は大きいほど好ましいが、通常は実用的な観点から、1m2以下程度である。
【0016】
かかる基材の形状は、乾燥ガスと十分に接触し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば平面状であってもよいし、球形であってもよい。
【0017】
また、内面が硫酸と接触して硫酸塩を形成しうる材質からなる配管を用い、該配管の内部を乾燥ガスが流通するようにして接触させてもよい。前記基材(2)としてこのような配管を用いることは、特別な装置を用いる必要がなく、装置(4)を簡便なものとし得る点で、好ましい。かかる配管を用いる場合、乾燥ガスの流量、流速に応じて、その内径、長さを適宜選択することで、乾燥ガスとの接触面積を調節することができる。
【0018】
かくして基材と接触することにより、乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫が基材の表面で反応して硫酸塩が形成される。
【0019】
本発明の方法において、かくして形成された硫酸塩は、フィルター(3)で捕集される。図1に示す装置(4)は、乾燥ガスが前記基材(2)に接触したのち、フィルター(3)を通過するように構成されているので、硫酸塩は乾燥ガスに同伴されてフィルターに導かれ、ここで捕集される。
【0020】
フィルター(3)としては概ね0.1mm程度の異物を捕集し得るものであればよく、例えば目開が0.05mm以上0.2mm以下のメッシュなどを用いることもできる。フィルターの材質は、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成樹脂、鉄、ステンレス鋼などであってもよい。フィルターは、前記したと同様のブリンク式フィルター、バケット式フィルター、カートリッジ式フィルターなどであってもよい。かかるフィルターは、硫酸と反応して塩を形成しうる基材(2)として配管を用いる場合には、該配管に直接、接続されていてもよい。
【0021】
本発明の方法によれば、硫酸飛沫を含む乾燥ガス(1)は、硫酸と反応して硫酸塩を形成しうる基材(2)と接触するが、該基材(2)の表面では乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫が基材と反応して硫酸塩が生成する。乾燥ガスには水分が含まれていないので、形成された硫酸塩は固形物となる。かかる硫酸塩はその大きさが概ね0.1mmを超えるので、基材と接触したのちの乾燥ガスがフィルター(3)を通過することによって、硫酸塩はフィルターで捕集され、乾燥ガスから除去される。
【0022】
かくしてフィルターを通過した後の乾燥ガスは、硫酸飛沫が殆んど含まれていないので、不純物として硫酸を実質的に含まない乾燥ガス(1)を得ることができ、例えばこの乾燥ガス(1)を圧縮機などで圧縮しても、圧縮機が硫酸で侵されることがない。
【0023】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、硫酸飛沫を含む乾燥ガスから硫酸飛沫を十分に除去することができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。
【0025】
比較例1
塩素ガス(Cl2、純度はモル分率で約99%、水分(H2O)をモル分率で約1%含む)を図3に示す乾燥塔(5)の塔底(51)から供給し、塔頂(52)から乾燥ガス(1)を得た。得られた乾燥ガス(1)は、水分の含有量が検出下限(乾燥ガス1モルあたり0.00005モル(5ppm))未満であった。この乾燥ガスには、50〜60ppm(乾燥ガス1モルあたり0.00050〜0.00060モル)程度の硫酸が飛沫として含まれている。次いで、この乾燥ガスをブリンク式フィルター(孔径1μm、ガラスファイバー製)(9)を通過させたところ、硫酸飛沫の含有量は約2ppmであった。
【0026】
実施例1
比較例1で用いたと同じ塩素ガスを図2に示す乾燥塔(5)の塔底(51)から供給し、塔頂(52)から乾燥ガスを得、ブリンク式フィルター(孔径1μm、ガラスファイバー製)(9)を通過させて硫酸飛沫を除去した後、鉄製配管(2)を通じて、目開き約0.1mmのメッシュ(ポリプロピレン繊維製)(3)に導き、通過させた。乾燥ガスは、圧力102.3kPa(ゲージ読み圧力1kPa)、温度20℃で流通させた。塩素ガス1m3(圧力101.3kPa、温度0℃での体積)あたり1時間あたりの鉄製配管の内表面積は、0.199m2であった。メッシュを通過したのちの乾燥ガス(1)の硫酸飛沫の含有量は検出下限(物質量比(モル比)で1ppm(乾燥ガス1モルあたり0.000001モル))未満であった。乾燥ガスが通過した後のメッシュには、硫酸塩〔粒径は概ね0.2mm〜1mm程度、白色の固形物〕が捕集されていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫を除去するための硫酸飛沫除去装置の一例を示す模式図である。
【図2】水分を含むガスから水分を除去して乾燥ガスを得るための乾燥塔と、該乾燥塔から得られた乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫を本発明の方法で除去するための装置の一例を示す模式図である。
【図3】水分を含むガスから水分を除去して乾燥ガスを得るための乾燥塔と、該乾燥塔から得られた乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫を従来の方法で除去するための装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
Figure 0004055412

Claims (7)

  1. 硫酸飛沫を含む乾燥ガスを、硫酸と反応して硫酸塩を形成しうる基材と接触させて硫酸塩を形成させ、形成された硫酸塩をフィルターで捕集することを特徴とする前記乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫の除去方法。
  2. 乾燥ガスが、水分を含むガスを濃硫酸と接触させて得た乾燥ガスである請求項1に記載の除去方法。
  3. 乾燥ガスを、硫酸飛沫除去フィルターを通過させたのちに前記基材と接触させる請求項1に記載の除去方法。
  4. フィルターの孔径が0.2mm以下である請求項1に記載の除去方法。
  5. 硫酸と反応して硫酸塩を形成しうる基材およびフィルターを備え、乾燥ガスが前記基材に接触したのち前記フィルターを通過するように構成されていることを特徴とする乾燥ガスに含まれる硫酸飛沫の除去装置。
  6. 硫酸飛沫除去フィルターを備え、前記乾燥ガスが硫酸ミスト除去フィルターを通過したのち前記基材と接触するように構成されている請求項5に記載の除去装置。
  7. フィルターの孔径が0.2mm以下である請求項5に記載の除去装置。
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