JP4784004B2 - 脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、生分解性を有する高分子量の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法に関し、詳しくは、成形加工時の熱安定性に優れ、フィルム、シート、フィラメント、射出、発泡など各種の成形に適する生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートの簡便な製造法に関する。
【0002】
本発明に係る脂肪族ポリエステルカーボネートは、流動性、射出成形性に優れ、フィルム、シート、フィラメントあるいは繊維などの成形品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度を有すると共に、土中、水中または活性汚泥処理及び堆肥処理により高い生分解性を示し、包装材料やその他の成形体に広く利用できる。たとえば、農業分野では土壌表面を被覆して土壌の保温を行うマルチフィルム、植木用の鉢や紐、または肥料のコーティング材料などに利用でき、あるいは漁業分野では釣糸、魚網に、さらには医療分野の医療用材料、生理用品などの衛生材料、として利用できる。
【0003】
【従来の技術】
近年、地球的規模での環境問題に対して、自然環境の中で分解する高分子素材の開発が要望されるようになり、その中でも特に微生物によって分解されるプラスチックは、環境適合性材料や新しいタイプの機能性材料として大きな期待が寄せられている。
【0004】
従来より、脂肪族ポリエステルカーボネートに生分解性があることはよく知られており、その中でも特に、コハク酸を主原料とする脂肪族2塩基酸と脂肪族ジヒドロキシ化合物から得られる脂肪族ポリエステカーボネートが成形性および物性が良好であることから注目されている。
【0005】
しかし、コハク酸を主原料とした脂肪族ポリエステルカーボネートはコハク酸の製造プロセスが煩雑であり、製造コストが高く普及の妨げとなっている。通常コハク酸は、工業的には無水マレイン酸を水溶媒中で水素添加し、次いで触媒ろ別、結晶化、濾過、洗浄、乾燥という工程を経て製造する。
【0006】
この問題を解決すべく本発明者らは、無水マレイン酸とグリコールを混合し特定条件下で水素添加反応を行うことにより、副反応を低く制御し、水素添加反応後の精製プロセスを省略することが可能な方法を見いだし出願した(特願2000−121523号)。
【0007】
しかしながら上記発明においては、実用上、水素添加反応時の反応時間、バッチ式反応での触媒ろ過性、反応熱の除熱等に問題があり、さらなる製造法の改良が求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、無水マレイン酸とグリコールを原料として、反応時間が短縮され、水素添加触媒のろ過性能が向上し、且つ、反応熱の除熱も効率良く出来る、実用上十分な成型性および物性を有する脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法を提供することにある。
【0009】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、無水マレイン酸とグリコールと希釈剤を混合し、特定条件で水素添加反応を行うことにより、副反応を低く制御し、水素添加反応後の精製プロセスの省略が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、水素添加触媒存在下、無水マレイン酸と炭素数2〜20のグリコール、希釈剤、及び水素とを反応して得られた反応生成物をエステル交換触媒存在下に重縮合させて数平均分子量200〜5,000の脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで該脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルを反応させることを特徴とする重量平均分子量100,000以上の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法に関する。
【0011】
本発明による脂肪族ポリエステルカーボネートの製造は、無水マレイン酸とグリコール化合物及び希釈剤との混合物を水素添加する第1工程、得られた反応生成物を重縮合し脂肪族ポリエステルオリゴマーとする第2工程、および脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルとを反応させる第3工程より構成される。
【0012】
1 第1工程
【0013】
本発明の、第1工程はバッチ式でも流通式でも実施が可能である。
【0014】
バッチ式で行う場合は、水素添加触媒存在下に無水マレイン酸1モルに対して、炭素数2から20のグリコール0.1〜4モルと希釈剤希釈剤0.5〜20モルとの混合物を、60〜250℃、1〜100kg/cm2 の水素圧力下で撹拌して、水素添加と初期重合を行い、反応生成物を得る。
【0015】
流通式で行う場合は、固定床水素添加触媒存在下に無水マレイン酸1モルに対して、炭素数2から20のグリコール0.1〜4モルと希釈剤0.5〜20モルとの混合物を、60〜250℃、1〜100kg/cm2 の水素圧力下に流通させて、水素添加を行い、反応生成物を得る。
【0016】
以下、バッチ式について詳細を説明する。
【0017】
第1工程は、無水マレイン酸1モルに対して0.1〜4モルのグリコールと0.5〜20モルの希釈剤とを混合し、水素添加触媒の存在下、温度60〜250℃、好ましくは80〜170℃、水素圧力1〜100kg/cm2 、好ましくは5〜50kg/cm2 にて攪拌し、水素添加を行い、反応生成物を得る工程である。
【0018】
必要により副生する水およびグリコールの環化物等を系外に除去する。この第1工程の反応生成物中の、グリコールの脱水環化反応による副生成物の含有量は、仕込みグリコールに対してモル比で10%未満である。反応温度が250℃以上の場合は、3官能以上の副成物の生成量が多くなり、最終ポリマー中のゲルの含有量が著しく増加する。また、ここで用いるグリコールは、無水マレイン酸1モルに対し好ましくは0.5〜2倍モル程度であるが、発熱量が大きいときには、グリコール及び/または希釈剤を増加することができる。
【0019】
さらに、活性炭、イオン交換樹脂等を使用して、水素添加反応前に無水マレイン酸とグリコールと希釈剤の混合物から不純物を除去する事で、第1工程における触媒寿命を延ばす事も可能である。
【0020】
第1工程で、使用する水素添加触媒は、Pd、Pd化合物、白金、白金化合物、ルテニウムおよびルテニウム化合物が挙げられる。具体的には、Pdの単体(Pd黒)、Pd炭素、Pdアルミナ、Pdシリカアルミナ、Pdシリカ、Pd硫酸バリウム、Pdゼオライト、酸化Pd、白金の単体(白金黒)、白金炭素、白金アルミナ、酸化白金、ルテニウムの単体(ルテニウム黒)、ルテニウム炭素、ルテニウムアルミナ、酸化ルテニウム等が例示される。
担体中の金属触媒の濃度については、特に限定されるものではないが、その取扱い上、10%未満のものが推奨される。触媒の添加量についても特に限定されるものではないが反応液に対し、0.1%から10%程度の範囲が推奨される。
【0021】
本工程で使用されるグリコールは炭素数が2から20の直鎖、分岐、脂環式構造を有する脂肪族グリコールが使用される。具体的には、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカジメタノール、ペンタシクロデカジメタノール等が例示されるが、脂肪族ポリエステルカーボネートの微生物分解性及び融点の観点から好ましくはブタンジオールである。
【0022】
本工程で使用される希釈剤は、反応を阻害せず、液粘度の低下をもたらし、水素添加反応後、蒸留等の方法により、容易に反応生成物から分離できるグリコール以外の溶媒である。具体的には、水、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン等が例示されるが、より好ましくは水である。水は、通常、脱イオン水、蒸留水、または水道水であるが、不純物の少ない脱イオン水が好ましい。また、2種類以上の希釈剤を組み合わせて使用する事も可能である。希釈剤の添加量に関しては、特に限定されるものではないが、無水マレイン酸1モルに対し0.5モルから20モル程度の範囲が推奨される。
【0023】
第1工程をバッチ式で行った場合、触媒は、水分、外気に触れない状況下で、濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーション等の手法で分離でき、分離した触媒は再度使用可能である。反応器にフィルターを装着して行うことも可能であるし、外部に濾過槽を設けて濾過し、触媒ケーキを次の反応液と混合しながら反応器に戻すプロセスも推奨される。また、ペレット状の触媒を反応器内に設置した籠等に入れて反応することにより、濾過等のプロセスを省略することもできる。
【0024】
第1工程を流通式で行う場合、ペレット状の触媒を充填したトリクルベット形式が推奨される。反応による発熱量が問題となる場合があるが、その場合は、希釈剤及び/またはグリコール成分を増加させることと、反応液による希釈が推奨される。また、反応器内に熱交換機を設置し除熱する事も可能である。
【0025】
2 第2工程
【0026】
第2工程は、第1工程で得られた反応生成物をエステル交換触媒の存在下、100〜280℃で重縮合を行い、脂肪族ポリエステルオリゴマーを製造する工程である。さらに第2工程では、重縮合反応に伴って副生する水もしくはアルコールおよび過剰のグリコールを除去される。圧力は上記目的が達成される圧力が選ばれ、反応を促進する目的で300mmHg以下の減圧とすることが好ましい。この工程で別途グリコール、ジカルボン酸化合物およびヒドロキシカルボン酸化合物を添加し、共重合化することができる。
【0027】
脂肪族ポリエステルオリゴマーの分子量、酸価、グリコールの残存量は、未反応のグリコールの留去速度と反応速度を適当にバランスさせることにより制御可能であり、仕込モル比、触媒、温度、減圧度、反応時間の条件を適宜選択して組合せる方法や、不活性気体を適当な流量で吹き込む方法も現実的である。通常は、エステル交換触媒の存在下、反応温度100〜280℃で段階的に減圧度を調節することにより行うことができる。たとえば、まず常圧でエステル化を行い縮合反応によって生じた水を除去し、次いで200〜80mmHg程度の減圧度でさらに脱水縮合反応を行わせ、酸価を低減させ、最終的に、5mmHg以下の真空度とする方法が用いられる。
【0028】
過剰のジヒドロキシ化合物の留去と減圧度の増加速度を早くすることにより、反応時間の短縮およびオリゴマー中のジヒドロキシ化合物残存量の低減化が可能である。
【0029】
エステル交換触媒としては、公知のエステル交換触媒が使用できるが、特に、ジルコニウム(Zr)化合物もしくはハフニウム(Hf)化合物と、Y化合物,La化合物,Zn化合物およびSn化合物から選ばれる1種以上との組み合わせからなる複合系が、好ましい。この複合系の触媒を使用することにより、脂肪族ポリエステルカーボネートの色調を向上させ、カルボン酸末端の量を減らし、さらに反応時間を短縮することができる。エステル交換触媒の使用量は、原料混合物100重量部に対して、5×10-5〜1重量部の範囲で用いられる。触媒として好ましい化合物の形態としては、脂肪酸塩類、水酸化物、アルコラート、フェノラート、アセチルアセトナート等種々あげられる。
【0030】
3 第3工程
【0031】
第3工程は、第2工程で得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルとを反応させ、GPCで測定し、標準スチレン換算による重量平均分子量(Mw)が少なくとも100,000で、融点が60〜200℃である脂肪族ポリエステルカーボネートを製造する工程である。通常150〜280℃、好ましくは200〜220℃で行われ、反応に伴って副成するグリコールまたは水が除去される。150℃以下の温度では、十分な反応速度が得られず、280℃以上の温度では、重合反応を速く進めることができるが重合体を着色させることがあり好ましくない。反応は、必要に応じて徐々に減圧度を調節して最終的には3mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0032】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる炭酸ジエステルの具体的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネートジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジオクチルカーボネートなどを挙げることができる。上記炭酸ジエステルの他に、2種のヒドロキシ化合物からなる炭酸ジエステルも含まれる。これらの炭酸ジエステルの中で特にジフェニルカーボネートが好ましい。炭酸ジエステルの使用量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基に対して0.40〜0.60倍モル量用いるが、より好ましくは0.45〜0.55倍モル量であり、0.47〜0.52倍モル量が特に好ましい。
【0033】
第3工程で炭酸ジエステルを添加する際、グリコール成分を添加することにより、ブロック共重合化が可能である。添加するグリコールは第1工程で使用したグリコールと同一でも異なっても良い。
【0034】
第3工程で炭酸ジエステルと併用してジカルボン酸化合物を併用することも出来る。ジカルボン酸化合物の具体的な例としては、コハク酸、蓚酸、マロン酸、アジピン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸およびそれらの無水物、モノエステル、ジエステル類、また、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、等の芳香族カルボン酸化合物およびそれらの無水物、モノエステル、ジエステル類などを挙げることができる。特にジエステル化合物が好ましい。添加量としては、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基に対して0.40〜0.60倍モル量用いるが、より好ましくは0.45〜0.55倍モル量であり、0.47〜0.52倍モル量が特に好ましい。
【0035】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは、射出成形、押出成形、インフレーション法、T−ダイス法、紡糸、フィラメント成形、ブロー成形、真空圧空成形あるいは発泡成形等の通常の成形手法による成形が可能である。また、必要に応じて通常ポリマーに添加される充填材、酸化防止剤、安定剤、核剤、紫外線吸収剤、滑材、ワックス類、色剤、着色剤、含量、フィラー等の添加剤を添加することができる。
【0036】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートを用いて成形品を得る際、使用されるポリマーの分子量は成形加工条件、成形品の種類により、また成形温度などにより適宜選択される。射出成形用途では、特別な場合を除いてGPCで測定される標準スチレン換算重量平均分子量Mw120,000〜350,000の範囲のものが用いられる。
【0037】
また、本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは、溶融粘度として、2,000〜50,000ポイズである。この溶融粘度はフローテスターにより温度190℃、60kg荷重の条件で測定した溶融粘度である。溶融粘度が2,000ポイズ以下では樹脂が流れ過ぎ安定な成形ができない。50,000ポイズ以上では充分な流動性が得られず成形が困難になる。一般的には、2,000〜30,000のものが好ましい。特に、フィルム成形において均質で良質なフィルムを得るには、5,000〜30,000ポイズが好ましい。
【0038】
本発明での脂肪族ポリエステルカーボネート中の3官能以上の化合物の含有量は、仕込み無水マレイン酸に対してモル比で3%未満である。
【0039】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは融点が70〜200℃の高結晶性ポリマーであり、クロロホルム、メチレンクロライドなどには溶解するが、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン、トルエン、キシレン、等の大部分のアルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、脂肪族および芳香族炭化水素類には溶解しない優れた耐溶解性を示す。
【0040】
また、生分解性は、分子量、カーボネート単位含有量により影響を受けるが、得られたフィルムの、25℃、60%RHの条件での土壌埋設試験を行った場合高い分子量を有するにもかかわらず、ポリマー中のカーボネート単位含有量が少なくとも5モル%以上である場合にカーボネート単位を有しない脂肪族ポリエステルに比べ、高い分解性を示す。ポリマー中のカーボネート単位含有量が7.0モル%以上である場合には、18週間で半分以上が分解し、さらに20.0モル%以上含有するものにあっては15週間で完全に消失する。これはカーボネート単位を有しない脂肪族ポリエステルに比べ5倍以上の分解性である。
【0041】
以上のごとく、本発明によれば、耐熱性、耐溶剤性と実用上の使用に十分な高分子量を有する脂肪族ポリエステルカーボネートを製造することができる。しかも、本発明者等の知見によれば、脂肪族ポリエステルカーボネートの生分解性は、カーボネート単位含有量によって高められるのであり、カーボネート単位含有量により土壌中など環境中の生分解速度を適宜選択することができる。
【0042】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ここでは、グリコール成分として1,4−ブタンジオールを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネート、希釈剤として水を使用した場合について主に例示する。
【0043】
本実施例において、分子量はクロロホルムを溶媒としてGPC(昭和電工(株)製GPC System−11使用)により標準スチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)として測定した。また、不飽和結合残存量はNMR(日本電子(株)製NMR EXー270)を使用し測定した。
【0044】
脂肪族ポリエステルカーボネートのメルトフローレートはメルトインデクサー(東洋精機)を用いて温度190℃、荷重2.16kgにて測定した。
3官能以上の化合物の含有量については、事前にトリメチロールプロパンの添加量を変えて製造した脂肪族ポリエステルカーボネートの分子量と、メルトフローレートの関係より検量線を作成し、トリメチロールプロパン換算の値とした。
【0045】
脂肪族ポリエステルオリゴマーの水酸基価、酸価はJIS K−1557に準じて測定した。水酸基価の測定値から、単位重量あたりの末端水酸基モルが求められ、その1/2量を 炭酸ジエステルおよび/またはジカルボン酸化合物の理論量とした。
【0046】
実施例1
第1工程
攪拌機、圧力測定装置を装着した、耐圧反応器に無水マレイン酸39.2g(0.4モル)1,4−ブタンジオール54.1g(0.6モル)、水14.4g(0.8モル)および5%パラジウム/カーボン触媒を0.4g仕込み、水素により圧力20kg/cm2 にて3回置換を行った。圧力20kg/cm2 とした後、毎分1080回転の攪拌下に反応器を昇温し、90℃にて圧力を20kg/cm2 として、1時間43分反応を行った。
圧力低下が無くなったのを確認した後、反応液を窒素加圧下(0.3kg/cm2)に濾過し103gの反応生成物を得た。ろ過時間は1分20秒であった。得られた濾液は、NMR測定より不飽和結合が無いことが確認された。また、1,4−ブタンジオールの環化により副成したテトラヒドロフラン(THF)は添加した1,4−ブタンジオールに対して2モル%であった。
【0047】
第2工程
第1工程で得られた103gの反応生成物を、攪拌機、留出コンデンサー、および温度計を装着した300mlの反応器に仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛10mg、ジルコニウムアセチルアセトナート5mgを添加して攪拌下に加熱した。温度は100℃から225℃まで45分で昇温した後225℃一定で保持した。圧力は常圧で1時間保持した後150mmHgにて1時間、その後1時間で5mmHgまで減圧し5mmHg15分保持後に反応を停止し65gの脂肪族ポリエステルオリゴマーを得た。得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーの数平均分子量は3800であり末端OH基濃度は69.0KOHmg/gであった。
【0048】
第3工程
第2工程で有られた脂肪族ポリエステルオリゴマー25.0gを攪拌機、留出コンデンサー、温度計を装着した、100mlの反応器に仕込み、ジフェニルカーボネート(DPC)3.33gを添加し減圧下に加熱攪拌した。
反応温度は225℃とし、減圧度は、150mmHgにて30分、100mmHgにて1時間20分その後1時間かけてフル真空とし、フル真空下(1mmHg以下)1時間40分反応し、標準スチレン換算の重量平均分子量(Mw)240,000の脂肪族ポリエステルカーボネートを得た。得られた脂肪族ポリエステルカーボネート中の3官能成分はMwとメルトフローレイトの関係から、0.16%と推定された。
【0049】
実施例2
第1工程
攪拌機、圧力測定装置を装着した、耐圧反応器に無水マレイン酸39.2g(0.4モル)1,4−ブタンジオール54.1g(0.6モル)、水7.2g(0.4モル)および4%パラジウム/シリカ触媒を0.4g仕込み、水素により圧力9kg/cm2 にて3回置換を行った。圧力9kg/cm2 とした後、毎分1080回転の攪拌下に反応器を昇温し、90℃にて圧力を9kg/cm2 として、2時間20分反応を行った。
圧力低下が無くなったのを確認した後、反応液を窒素加圧下(0.3kg/cm2)に濾過し96gの反応生成物を得た。ろ過時間は2分46秒であった。得られた濾液は、NMR測定により不飽和結合が無いことが確認された。また、1,4−ブタンジオールの環化により副成したテトラヒドロフラン(THF)は添加した1,4−ブタンジオールに対して2モル%であった。
【0050】
第2工程
第1工程で得られた96gの反応生成物を、攪拌機、留出コンデンサー、および温度計を装着した300mlの反応器に仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛10mg、ジルコニウムアセチルアセトナート5mgを添加して攪拌下に加熱した。温度は100℃から225℃まで45分で昇温した後225℃一定で保持した。圧力は常圧で1時間保持した後150mmHgにて1時間、その後1時間で5mmHgまで減圧し5mmHg15分保持後に反応を停止し65gの脂肪族ポリエステルオリゴマーを得た。得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーの数平均分子量は3600であり末端OH基濃度は75.6KOHmg/gであった。
【0051】
第3工程
第2工程で有られた脂肪族ポリエステルオリゴマー25.0gを攪拌機、留出コンデンサー、および温度計を装着した100mlの反応器に仕込み、ジフェニルカーボネート(DPC)3.65gを添加し減圧下に加熱攪拌した。
反応温度は225℃とし、減圧度は、150mmHgにて30分、100mmHgにて1時間20分その後1時間かけてフル真空とし、フル真空下1時間40分反応し、標準スチレン換算の重量平均分子量(Mw)270,000の脂肪族ポリエステルカーボネートを得た。得られた脂肪族ポリエステルカーボネート中の3官能成分はMwとメルトフローレイトの関係から、0.25%と推定された。
【0052】
比較例1
第1工程
攪拌機、圧力測定装置を装着した、耐圧反応器に無水マレイン酸39.2g(0.4モル)、1,4−ブタンジオール54.1g(0.6モル)および5%パラジウム/カーボン触媒を0.4g仕込み、水素により圧力20kg/cm2 にて3回置換を行った。圧力20kg/cm2 とした後、毎分1080回転の攪拌下に反応器を昇温し、90℃にて圧力を20kg/cm2 として、6時間40分反応を行った。
圧力低下が無くなったのを確認した後、反応液を窒素加圧下(0.3kg/cm2)に濾過し90gの反応生成物を得た。ろ過に5分10秒の時間がかかった。得られた濾液は、NMR測定により不飽和結合が無いことが確認された。また、1,4−ブタンジオールの環化により副成したテトラヒドロフラン(THF)は添加した1,4−ブタンジオールに対して2モル%であった。
【0053】
第2工程
第1工程で得られた90gの反応生成物を攪拌機、留出コンデンサー、温度計を装着した、300mlの反応器に仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛10mg、ジルコニウムアセチルアセトナート5mgを添加して攪拌下に加熱した。温度は100℃から225℃まで45分で昇温した後225℃一定で保持した。圧力は常圧で1時間保持した後150mmHgにて1時間、その後1時間で5mmHgまで減圧し5mmHg15分保持後に反応を停止し65gの脂肪族ポリエステルオリゴマーを得た。得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーの数平均分子量は3600であり末端OH基濃度は75.2KOHmg/gであった。
【0054】
第3工程
第2工程で有られた脂肪族ポリエステルオリゴマー25.1gを攪拌機、留出コンデンサー、温度計を装着した、100mlの反応器に仕込み、ジフェニルカーボネート(DPC)3.73gを添加し減圧下に加熱攪拌した。
反応温度は225℃とし、減圧度は、150mmHgにて30分、100mmHgにて1時間20分その後1時間かけてフル真空とし、フル真空下1時間40分反応し、スチレン換算の重量平均分子量(Mw)250,000の脂肪族ポリエステルカーボネートを得た。得られた脂肪族ポリエステルカーボネート中の3官能成分はMwとメルトフローレイトの関係から、0.16%と推定された。
【0055】
比較例2
第1工程
攪拌機、圧力測定装置を装着した、耐圧反応器に無水マレイン酸39.2g(0.4モル)1,4−ブタンジオール54.1g(0.6モル)および4%パラジウム/シリカ触媒を0.4g仕込み、水素により圧力9kg/cm2 にて3回置換を行った。圧力9kg/cm2 とした後、毎分1080回転の攪拌下に反応器を昇温し90℃にて圧力を9kg/cm2 として、13時間10分反応を行った。
圧力低下が無くなったのを確認した後、反応液を窒素加圧下(0.3kg/cm2)に濾過し90gの反応生成物を得た。ろ過に32分の時間がかかった。得られた濾液は、NMR測定により不飽和結合が無いことが確認された。また、1,4−ブタンジオールの環化により副成したテトラヒドロフラン(THF)は添加した1,4−ブタンジオールに対して2モル%であった。
【0056】
第2工程
第1工程で得られた90gの反応生成物を、攪拌機、留出コンデンサー、および温度計を装着した300mlの反応器に仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛10mg、ジルコニウムアセチルアセトナート5mgを添加して攪拌下に加熱した。温度は100℃から225℃まで45分で昇温した後225℃一定で保持した。圧力は常圧で1時間保持した後150mmHgにて1時間、その後1時間で5mmHgまで減圧し5mmHg15分保持後に反応を停止し65gの脂肪族ポリエステルオリゴマーを得た。得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーの数平均分子量は4000であり末端OH基濃度は61.1KOHmg/gであった。
【0057】
第3工程
第2工程で有られた脂肪族ポリエステルオリゴマー25.1gを攪拌機、留出コンデンサー、温度計を装着した、100mlの反応器に仕込み、ジフェニルカーボネート(DPC)2.96gを添加し減圧下に加熱攪拌した。
反応温度は225℃とし、減圧度は、150mmHgにて30分、100mmHgにて1時間20分その後1時間かけてフル真空とし、フル真空下1時間40分反応し、スチレン換算の重量平均分子量(Mw)240,000の脂肪族ポリエステルカーボネートを得た。得られた脂肪族ポリエステルカーボネート中の3官能成分はMwとメルトフローレイトの関係から、0.25%と推定された。
【本発明の効果】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法は、簡便かつ高収率で単時間のうちに有用なポリマーを製造することが可能であり、得られたポリマーは、実用上充分な成型性、物性を有し、射出成形品、フィルム、シート、ボトル、発泡体あるいは繊維などの成形品を得るのに好適であり、成形品は耐熱性、耐溶剤性ならびに機械的強度に優れており、土中また活性汚泥処理でも高い生分解性を示すものである。
Claims (4)
- 水素添加触媒存在下、無水マレイン酸と炭素数2〜20のグリコール、希釈剤、及び水素とを反応して得られ反応生成物を、エステル交換触媒存在下に重縮合させて数平均分子量200〜5,000の脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで該脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルを反応させることを特徴とする重量平均分子量100,000以上の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
- 脂肪族ポリエステルカーボネート中の3官能以上の化合物含有量が、仕込み無水マレイン酸に対してモル比で3%未満である請求項1記載の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
- 水素添加触媒が、Pd、Pd化合物、白金、白金化合物、ルテニウムおよびルテニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
- エステル交換触媒が、Zr化合物またはHf化合物と、Y化合物、La化合物、Zn化合物およびSn化合物から選ばれる少なくとも1種からなる請求項1記載の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
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