JP4048335B2 - 脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有する着色の少ない高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法に関する。
【0002】
本発明に係る脂肪族ポリエステルカーボネートは、流動性、成形性に優れ、射出成型品、押し出し成型品、真空圧空成型品、ブロー成型品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品その他の成形品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度を有すると共に、土中または活性汚泥処理により高い生分解性を示し、包装材料やその他の成形体に広く利用できる。たとえば、農業分野では土壌表面を被覆して土壌の保温を行うマルチフィルム、植木用の鉢や紐、または肥料のコーティング材料などに利用でき、あるいは漁業分野では釣糸、魚網に、さらには医療分野の医療用材料、生理用品などの衛生材料として利用できる。
【0003】
【従来の技術】
近年、地球的規模での環境問題に対して、自然環境の中で分解する高分子素材の開発が要望されるようになり、その中でも特に微生物によって分解されるプラスチックは、環境適合性材料や新しいタイプの機能性材料として業界で大きな期待が寄せられている。
【0004】
本発明者らは、鋭意検討の結果特開平7−53693号公報および特開平7−53695号公報に記載の高い熱安定性を有する、流動性、成型性に優れ、充分な機械的強度を有する生分解性ポリエステルカーボネートおよびその製造方法を開発した。
しかしながら、上記特許記載の製造法では、高分子量の脂肪族ポリエステルカーボネートを得る際に着色が大きくなるという問題点と、ジアリールカーボネート由来の芳香族ヒドロキシ化合物が残留する等の問題があった。この着色は、高分子量体がフィルム、シート、発泡体に成型された場合に著しく外観性を損ねる欠点を有していた。また、残留する芳香族ヒドロキシ化合物は各種法令で毒物、劇物に指定されており、製造工程で除去する行程が必要であり、製造コストの増加につながっていた。また、残留する芳香族ヒドロキシ化合物が著しく着色するため反応速度の速いチタン系の触媒が使用できないと言う問題も有していた。さらに、ジアリールカーボネートと脂肪族ヒドロキシル基との反応であるため、減圧の解除後にも分子量増加が進行し分子量制御が難しいという問題点も有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、実用上十分な高分子量および融点を有し、成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに機械的強度を有する、着色の少ない脂肪族ポリエステルカーボネートの安価で、容易に分子量制御可能な製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物と脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体とを反応し、ついでカーボネート化合物と反応するに際し、エステル交換触媒として特定の化合物を用い、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物と脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体とを反応して得られるオリゴマーの酸価、該オリゴマー中の残存ジヒドロキシ化合物成分を特定の範囲とし、カーボネート化合物として脂肪族カーボネート化合物と反応することにより、実用上の使用に十分な高分子量および融点を有し、成型性、耐熱性、耐溶剤性と機械的強度を有する着色の少ない芳香族ヒドロキシ化合物を含まない脂肪族ポリエステルカーボネートが得られることを見いだした。
【0007】
すなわち、本発明は、エステル交換触媒の存在下、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物と、脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体とを反応させて数平均分子量10,000以下の脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで該脂肪族ポリエステルオリゴマーと脂肪族カーボネート化合物とを反応させるカーボネート単位含有量が少なくとも5モル%以上であり、重量平均分子量が少なくとも100,000で、温度190℃、荷重60kgにおける溶融粘度が1,000〜50,000ポイズで、融点が70〜180℃である、着色が少なく、芳香族ヒドロキシ化合物を含まない脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法に関するものである。
【0008】
本発明による脂肪族ポリエステルカーボネートの製造は、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物と脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体とから脂肪族ポリエステルオリゴマーを得る第1工程、および脂肪族ポリエステルオリゴマーと脂肪族カーボネート化合物とを反応させ脂肪族ポリエステルカーボネートを得る第2工程より構成される。
【0009】
本発明における第1工程は、触媒の存在下、温度100〜250℃、好ましくは150〜220℃で、反応に伴って副生する水及び過剰のジヒドロキシ化合物を除去しながら、数平均分子量10,000以下、通常500〜10,000のポリエステルオリゴマーを製造する工程である。この第1工程において、ポリエステルオリゴマーの分子量を上記より高くした場合は、最終ポリマー中のカーボネート単位含有量が著しく低くなり生分解性が低下するので、上記の分子量を超えることは好ましくない。一方、ポリエステルオリゴマーの分子量が500以下の場合は、最終ポリマーの融点が低下し実用的な使用に耐えるポリマーが得られない。しかしながら、生分解性を特に考慮する必要のない場合には上記の分子量を超えるポリエステルオリゴマーであっても良い。
【0010】
第1工程は、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物と脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体との反応に伴って副生する水またはアルコールおよび過剰のジヒドロキシ化合物を除去する必要から、反応温度100〜250℃で最終的には減圧条件下で行われる。圧力は上記目的が達成される圧力が選ばれ、反応を促進する目的で300mmHg以下の減圧とすることが好ましい。この工程における脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物と脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体との反応は、脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体に対して脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物を理論量より過剰で行われる。具体的には、脂肪族2塩基酸1モルに対して、脂肪族ジヒドロキシ化合物を1.05〜2.00倍モルの範囲で使用される。
使用される反応器および材質は、上記目的が達成される装置であれば特にこだわらないが、反応時間を短縮するためには、マックスブレンド翼(住友重機械)またはフルゾーン(神鋼パンテック)等の大型翼の使用が好ましく、コンデンサーとしては通常の多管式熱交換方式の他に、エチレングリコール等をコンデンサー内に循環させる湿式コンデンサーも有効である。
【0011】
脂肪族ポリエステルオリゴマーの分子量、酸価、ジヒドロキシ化合物の残存量は、未反応のジヒドロキシ化合物の留去速度と反応速度を適当にバランスさせることにより制御可能であり、仕込モル比、触媒、温度、減圧度、反応時間の条件を適宜選択して組合せる方法や、不活性気体を適当な流量で吹き込む方法も現実的である。通常は、触媒の存在下、反応温度100〜250℃で段階的に減圧度を調節することにより行うことができる。たとえば、まず常圧でエステル化を行い縮合反応によって生じた水を除去し、次いで200〜80mmHg程度の減圧度でさらに脱水縮合反応を行わせ、酸価を低減させ、最終的に、5mmHg以下の真空度とする方法が用いられる。
【0012】
過剰のジヒドロキシ化合物の留去と減圧度の増加速度を早くすることにより、反応時間の短縮およびオリゴマー中のジヒドロキシ化合物の残存量の低減化が可能であるが、反応を完結させ未反応のカルボン酸量すなわち酸価を減少させることが好ましい。本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造においては、オリゴマーの酸価は2.50KOHmg/g以下が好ましく、1.50KOHmg/g以下が更に好ましい。酸価の増加は、脂肪族カーボネート化合物の副反応による分解および着色等の問題から好ましくない。
【0013】
脂肪族ポリエステルオリゴマーの分子量は、脱グリコール反応に伴うジヒドロキシ化合物の留出量によって調節可能であり、第2工程における反応制御のためには該オリゴマー中の遊離のジヒドロキシ化合物量が少ないことが望ましい。遊離のジヒドロキシ化合物量が多い場合は、脂肪族カーボネート化合物との反応により環状カーボネートを生成したり、1分子のジヒドロキシ化合物が自己反応し環状エーテルを生成したり、2分子のジヒドロキシ化合物の反応で鎖状エーテルを生成し、それに伴い生成した水による脂肪族カーボネート化合物の分解など好ましくない副反応が起こる。
【0014】
したがって、本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造のためには、第1工程で得られるポリエステルオリゴマー中の遊離のジヒドロキシ化合物の量は2.0%(wt/wt)以下が好ましく、末端水酸基価としては20〜200KOHmg/gの範囲が好ましい。
【0015】
第2工程は、第1工程で得られたポリエステルオリゴマーと脂肪族カーボネート化合物を反応させて高分子量体とする工程であり、触媒の存在下、通常150〜250℃、好ましくは200〜220℃で行われ、反応に伴って副成するヒドロキシ化合物が除去される。150℃以下の温度では、十分な反応速度が得られず、250℃以上の温度では、重合反応を速く進めることができるが重合体を着色させることがあり好ましくない。反応に使用する脂肪族カーボネート化合物の沸点によっては、反応初期の段階で加圧にて反応を行う必要が生じる。反応後期には、必要に応じて徐々に減圧度を調節して最終的には3mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
反応終了後の樹脂の取り出しに際しては、バッチ方式の場合は、着色上の問題から、出来るだけ速やかにペレタイズする方が好ましい。
装置としては、上記目的を達成できる装置が選ばれ、特に限定されるものではないが、通常使用されるストランド方式の水冷ペレタイズの他に、ストランド化せずにダイス口で直接カットする水中カット方式や、板状に樹脂をT型ダイスから取り出した後に、巻き取り方向に細く裁断した後に、カットするベルトフレーカー方式を採用しても良い。
低分子量で樹脂の結晶化が遅い場合は、特に板状の取り出しが推奨される。また、低分子量品のペレタイズ時の結晶化を促進する目的で、反応時に原料とともに結晶核剤の添加を行うことができ、核剤としては反応に影響を与えない核剤なら特に限定されるものではなく、タルク、マイカ、チッ化ホウ素等が利用できる。
【0016】
脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基量を制御することにより所望の割合とすることができる。カーボネート単位含有量が多すぎると、得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの融点が低くなり、実用的耐熱性を有するポリマーが得られない。一方、カーボネート単位含有量が多くなると微生物による分解性が高くなる。従って、カーボネート単位含有量は、適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る量とすることが好ましく、本発明においては脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量を、少なくとも5モル%以上、通常5〜30モル%とすることが好ましい。
【0017】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1,4−ブタンジオールが必須成分として使用され、それ以外に例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等を適宜併用することができる。
【0018】
また、本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族2塩基酸としては、コハク酸が必須成分として使用され、それ以外に例えば、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、アゼライン酸等を適宜併用するこてができる。なお上記の脂肪族2塩基酸はそれらのエステルあるいは酸無水物であってもよい。
【0019】
本発明で使用されるヒドロキシカルボン酸化合物としては、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸等が例示され、これらはエステル、環状エステル等の誘導体でも使用できる。
【0020】
これらの脂肪族2塩基酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物およびヒドロキシカルボン酸化合物は、それぞれ単独であるいは混合物として用いることができ所望の組合せが可能であるが、本発明においては適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る程度の高い融点のものが好ましい。従って、本発明においては、脂肪族ジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオール、脂肪族2塩基酸としてコハク酸を、それぞれ50モル%以上含むことが必要である。
【0021】
また、本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネートなどの脂肪族カーボネート化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、上記の同種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物の他に、異種のヒドロキシ化合物からなる非対象カーボネート化合物やエチレンカーボネートのような環状カーボネート化合物も使用できる。
脂肪族カーボネート化合物の使用量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基に対して0.40〜0.60倍モル量用いるが、より好ましくは0.45〜0.55倍モル量である。
【0022】
本発明で使用される触媒は、エステル交換触媒から選ばれるが、特に、チタン(Ti)化合物、ジルコニウム(Zr)化合物およびハフニウム(Hf)化合物の内少なくとも一種類と、Y,La,Zn,Snの何れかの化合物1種類以上との組み合わせからなる複合系からなり、原料混合物100重量部に対して、5×10-5〜1重量部の範囲で用いられる。触媒として好ましい化合物の形態としては、脂肪酸塩類、水酸化物、アルコラート、フェノラート、アセチルアセトナート等種々あげられる。高い反応速度を得るためにはチタン系化合物との組み合わせが好ましく、特に本発明では芳香族カーボネート化合物を使用しないことから、チタン系触媒を用いても着色が少ないという効果が見いだされている。
【0023】
チタン(Ti)化合物、ジルコニウム(Zr)化合物およびハフニウム(Hf)化合物としては、チタンアセチルアセトナート、テトライソプロポキシチタン、テトラブチルチタン、チタンテトラエトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセテートジルコニル、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラターシャリーブトキシド、ジルコニルクロライド、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムオキシアセテート、オクタン酸ジルコニウム、ジルコニウムオキシステアレート、ハフニウムアセチルアセトネート、ハフニウムテトラブトキシド、ハフニウムテトライソプロポキシドなどが例示されるが、テトライソプロポキシチタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、ハフニウムアセチルアセトネートがとくに好ましく用いられる。
【0024】
Y,La,Zn,Snの化合物としては酢酸イットリウム、ナフテン酸イットリウム、トリス(アセチルアセトナト)イットリウム、酢酸ランタン、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、安息香酸亜鉛、ステアリンサン亜鉛、酸化亜鉛、燐酸亜鉛、蓚酸錫、錫アセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、塩化錫などが例示されるが亜鉛アセチルアセトナート、酢酸亜鉛、ジブチル錫オキサイドが特に好ましく用いられる。
【0025】
エステル交換触媒として、Ti化合物、Zr化合物あるいはHf化合物とY,La,Zn,Snの化合物の複合系を選択することにより全体の触媒量が少量であっても十分な反応速度が得られる。特に、第2工程の重合反応をより短時間にすることができる利点がある。
触媒の添加時期はTi化合物、Zr化合物あるいはHf化合物とY,La,Zn,Snの化合物から選ばれる少なくとも1種を同時に反応の最初から、すなわち第1工程の反応時から使用してもよく、または第1工程の反応、すなわちオリゴマーの合成反応はTi化合物、Zr化合物あるいはHf化合物を使用し、第2工程の反応時にY,La,Zn,Snの化合物の少なくとも1種、たとえば亜鉛化合物、あるいは錫化合物を添加して反応してもよい。
【0026】
使用された触媒は重合反応終了後にポリマー中に残留するため、余りに過剰に用いるとポリマーの熱安定性を損ない、一方少なすぎればオリゴマーの生成および重合反応の終了までに長時間を要し好ましくない。また、例えば食品関係に用いられる包装材料には、触媒量は極力少ないことが望まれる。これらの点を考慮し、触媒の使用料は通常、原料混合物100重量部に対して、5×10-5〜1量部、好ましくは1×10-4〜2×10-2重量部が使用される。
【0027】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは、カーボネート単位を少なくとも5モル%以上含有し、重量平均分子量(Mw)100,000以上、通常100,000〜250,000であり、温度190℃、荷重60kgにおける溶融粘度が2,000〜50,000ポイズで、融点70〜180℃を有するものである。重量平均分子量(Mw)が、100,000以下では強度が十分得られず、Mw250,000以上では成形加工時の樹脂溶融粘度が高くなり好ましくない。
【0028】
このような本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは、流動性、成形性に優れ、射出成型品、押し出し成型品、真空圧空成型品、ブロー成型品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品その他の成型品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度と耐熱性を有すると共に、樹脂の着色が少なく芳香族ヒドロキシ化合物も含まない。また、土中、活性汚泥中、コンポスト中で容易に微生物により分解される。更に、成型条件を選ばず、射出成形、押出成形が容易であり、フィラメント、ブロー成形体あるいは発泡成形体等を成形することができる。インフレーション法、T−ダイス法等のそれ自体は従来公知の成形方法によって強靱なフィルムまたはシートを形成することもでき、得られた未延伸物を公知の方法により1軸延伸または2軸延伸して延伸フィルムとすることもできる。これらの成形加工に際して、必要に応じて、改質剤、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、等の各種添加剤を添加することができるのはもちろんであるがその他に、末端処理剤、その他の樹脂、木粉、でんぷん、等を加え変成することができる。
【0029】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートを用いて成形品を得る際、使用されるポリマーの分子量は成形加工条件、成形品の種類により、また成形温度などにより適宜選択される。射出成形用途では特別な場合を除いてMw120,000〜170,000の範囲のもので十分である。また、インフレーションフィルムの製造には、成形加工の安定化と十分なフィルム強度とのために比較的に高分子量のものが好ましく、Mw150,000〜230,000のものが好ましい。
【0030】
また、本発明に係る脂肪族ポリエステルカーボネートは、溶融粘度として、2,000〜50,000ポイズである。この溶融粘度はフローテスターにより温度190℃、60kg荷重の条件で測定した溶融粘度である。溶融粘度が2,000ポイズ以下では樹脂が流れ過ぎ安定な成形ができない。50,000ポイズ以上では充分な流動性が得られず成形が困難になる。一般的には、2,000ポイズ以上30,000ポイズ以下のものが好ましい。特に、フィルム成形において均質で良質なフィルムを得るには、5,000ポイズ以上30,000ポイズ以下が好ましい。
【0031】
さらにまた、適度の溶融粘度として安定な成形加工条件とするために成形温度の設定は重要である。押出機シリンダー温度およびダイス温度は120〜240℃が好ましく、130〜220℃がさらに好ましい。120℃以下では粘度が高すぎ、240℃以上では樹脂が劣化し良質な成形体が得られない。
【0032】
例えば、温度190℃、荷重60kgにおける溶融粘度が5,000〜30,000ポイズの脂肪族ポリエステルカーボネートを用いてT−ダイ法により、温度130〜200℃で作成した未延伸フィルムは、弾性率0.1ギガパスカル(GPa)以上、伸度400%以上の物性を有する。
【0033】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは融点が70〜180℃の高結晶性ポリマーであり、クロロホルム、メチレンクロライドなどには溶解するが、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン、トルエン、キシレン、等の大部分のアルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、脂肪族および芳香族炭化水素類には溶解しない優れた耐溶剤性を示す。
【0034】
また、生分解性は、分子量、カーボネート単位含有量により影響を受けるが、得られたフィルムの、25℃、60%RHの条件での土壌埋設試験を行った場合高い分子量を有するにもかかわらず、ポリマー中のカーボネート単位含有量が少なくとも5モル%以上である場合にカーボネート単位を有しない脂肪族ポリエステルに比べ、高い分解性を示す。ポリマー中のカーボネート単位含有量が7.0モル%以上である場合には、18週間で半分以上が分解し、さらに20.0モル%以上含有するものにあっては15週間で完全に消失する。これはカーボネート単位を有しない脂肪族ポリエステルに比べ5倍以上の分解性である。
【0035】
以上のごとく、本発明によれば、耐熱性、耐溶剤性と実用上の使用に十分な高分子量を有する脂肪族ポリエステルカーボネートが製造することができる。しかも、本発明者等の知見によれば、脂肪族ポリエステルカーボネートの生分解性は、カーボネート単位含有量によって高められるのであり、カーボネート単位含有量により土壌中など環境中の生分解速度を適宜選択することができる。
【0036】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0037】
本実施例において、融点は、DSC(セイコー電子(株)製SSC5000)を用いて測定した。また、分子量はクロロホルムを溶媒としてGPC(昭和電工(株)製GPC System−11使用)によりスチレン換算のMw(重量分子量)、Mn(数平均分子量)として測定した。
【0038】
また、カーボネート単位含有量はNMR(日本電子(株)製NMR EXー270)を使用し、13CNMRによりジカルボン酸エステル単位およびカーボネート単位の合計に対するカーボネート単位の割合(モル%)として測定した。
【0039】
脂肪族ポリエステルカーボネートの溶融粘度はフローテスター(島津製作所製CFT−500C)を用いて温度190℃、荷重60kgにて測定した。
ポリマーの色調は4gのポリマーを25ccのクロロホルムに溶解し、東京電色製の色差計にてYI値として測定した。
【0040】
ポリエステルオリゴマー中の残存1,4−ブタンジオール量はTCD検出器付きガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−14B)を用い定量した。ポリエステルオリゴマー中の水酸基価、酸価はJIS K−1557に準じて測定した。水酸基価の測定値から、単位重量あたりの末端水酸基モルが求められ、その1/2量程度を脂肪族カーボネート化合物の理論量とした。得られたフィルムの物性値はJIS Z−1707に準じて測定した。
【0041】
実施例1
攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に、コハク酸18,740g(158.7モル)、1,4−ブタンジオール21,430g(237.8モル)、チタニウムテトライソプロポキサイド745mgおよび酢酸亜鉛1.40gを仕込み、窒素雰囲気下で温度150〜220℃で2時間反応し水を留出させた。つづいて、減圧度150〜80mmHgの減圧度で3時間熟成し脱水反応を進行させ、更に最終的に減圧度2mmHg以下となるよう徐々に減圧度を増してさらに水と1、4−ブタンジオールを留出させ、総留出量が10,460gになったところで反応を停止した。得られたオリゴマーの数平均分子量は1,780、末端水酸基価は102KOHmg/gであり、酸価は0.51KOHmg/gであり、残存1,4−ブタンジオール量は0.50重量%であった。
【0042】
次に得られたオリゴマー24,000gを攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に仕込み、ジエチルカーボネート2,580gを添加した。反応は初期には加圧にて行い、生成するエチルアルコールを留去した。温度210〜220℃で最終的に1mmHgの減圧とし5時間反応した。得られた高分子量体(A−1)は、融点が104℃で、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が186,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として14.1%のカーボネート単位を有していた。色調は純白でありクロロホルム溶液でのYI値は0.5であった。ジエチルカーボネートの損失は2.4重量%であった。また、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。テトラヒドロフランには、まったく溶解しなかった。
【0043】
実施例2〜3
実施例1と同様の操作により触媒系を変えて同様の反応を行った結果を表1に示す。
【0044】
実施例4
実施例1と全く同様の反応を行いポリエステルオリゴマーを得た。得られたオリゴマーを実施例1と同様の50リットル反応容器に24,000gを仕込み、ジエチルカーボネートに変えてジメチルカーボネート1,970gを添加した。温度210〜220℃で加圧下にメタノールを留出させ、その後最終的に1mmHgの減圧とし4.5時間反応した。得られたポリマーの融点は105℃で、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が181,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として13.1%のカーボネート単位を有していた。色調は純白であっりクロロホルム溶液でのYI値は0.8であった。ジメチルカーボネートの損失は2.7重量%であった。また、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。
【0045】
実施例5
実施例1と全く同様の反応を行いポリエステルオリゴマーを得た。得られたオリゴマーを実施例1と同様の50リットル反応容器に24,000gを仕込み、ジエチルカーボネートに変えて、ジブチルカーボネート3,800gを添加した。温度210〜220℃で加圧下にブタノールを留出させ、その後最終的に1mmHgの減圧とし4.8時間反応した。得られたポリマーの融点は104℃で、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が187,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として13.3%のカーボネート単位を有していた。色調は純白であっりクロロホルム溶液でのYI値は0.7であった。ジブチルカーボネートの損失は3.1重量%であった。また、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。
【0046】
実施例6
実施例1と全く同様にジエチルカーボネートに変えてジアミルカーボネートを用いて反応を行った。結果を表−1に示す。
【0047】
比較例1〜2
実施例1と同様の操作により触媒添加総量を変えずに単一触媒で同様の反応を行った結果を表−1に示す。表−1より触媒1種類のみの使用では反応成績が充分に得られないことがわかる。
【0048】
比較例3
実施例1と同様の操作により、脂肪族カーボネート化合物に変えてジフェニルカーボネートを用いて反応を行った。重合度は充分に上がったが、色調はYI値は2.8と薄く茶色に着色しており、ポリマーからは0.03%のフェノールが検出された。結果を表−1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【本発明の効果】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは、着色が少なく、実用上十分な高分子量および融点を有し、流動性、射出成形性に優れ、フィルム、シートあるいは繊維などの成形品を得るのに好適であり、成形品は耐熱性、耐溶剤性ならびに機械的強度に優れており、土中また活性汚泥処理でも高い生分解性を示すものであり、包装材料や成形体などに広く利用できる。
Claims (5)
- Ti化合物、Zr化合物およびHf化合物から選ばれる少なくとも一種と、Y化合物、La化合物、Zn化合物およびSn化合物から選ばれる少なくとも一種との組み合わせからなるエステル交換触媒の存在下、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物と脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体とを反応させて、数平均分子量が10,000以下である脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで該脂肪族ポリエステルオリゴマーと脂肪族カーボネート化合物とを反応させるカーボネート単位含有量が少なくとも5モル%以上であり、重量平均分子量が少なくとも100,000で、温度190℃、荷重60kgにおける溶融粘度が1,000〜50,000ポイズで、融点が70〜180℃である、着色が少なく、芳香族ヒドロキシ化合物を含まない脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
- Ti化合物、Zr化合物およびHf化合物から選ばれる少なくとも一種と、Y化合物、La化合物、Zn化合物およびSn化合物から選ばれる少なくとも一種との組み合わせからなるエステル交換触媒の存在下、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物と脂肪族2塩基酸及び/またはその誘導体とを反応させて、数平均分子量が10,000以下であり、酸価が2.5KOHmg/g以下であり、未反応脂肪族ジヒドロキシ化合物の含有量が2.0%(wt/wt)以下である脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで該脂肪族ポリエステルオリゴマーと脂肪族カーボネート化合物とを反応させるカーボネート単位含有量が少なくとも5モル%以上であり、重量平均分子量が少なくとも100,000で、温度190℃、荷重60kgにおける溶融粘度が1,000〜50,000ポイズで、融点が70〜180℃である、着色が少なく、芳香族ヒドロキシ化合物を含まない脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
- 脂肪族ポリエステルオリゴマーの数平均分子量が500〜10,000である請求項1または2記載のポリエステルカーボネートの製造方法。
- 脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量が5〜25モル%である請求項1または2記載のポリエステルカーボネートの製造方法。
- 脂肪族ポリエステルカーボネートの重量平均分子量が100,000〜300,000である請求項1または2記載のポリエステルカーボネートの製造方法。
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