JP2004359777A - 脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させる際、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/または自己反応した環状エーテルなどの生成留出を抑制し、実用上十分な高分子量および成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに機械的強度を有する生分解性脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法を提供する事。
【解決手段】脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させる際、触媒としてGa,Mn,Co,Mg,In,及びTi化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を使用する。
【選択図】 なし
【解決手段】脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させる際、触媒としてGa,Mn,Co,Mg,In,及びTi化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を使用する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートに関し、詳しくは、成形加工時の熱安定性に優れ、フィルム、シート、フィラメント、発泡体など各種の成形に適する生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法に関する。
【0002】
本発明に係る脂肪族ポリエステルカーボネートは、流動性、射出成形性に優れ、フィルム、シート、フィラメント、ブロー成形、発泡体、接着剤、エマルジョンあるいは繊維などの成形品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度を有すると共に、海水中、土中、コンポストまたは活性汚泥処理等により高い生分解性を示し、包装材料やその他の成形体に広く利用できる。たとえば、生ゴミと一緒に堆肥化可能なコンポストバック、農業分野では土壌表面を被覆して土壌の保温を行うマルチフィルム、植木用の鉢や紐、または肥料のコーティング材料などに利用でき、あるいは漁業分野では釣糸、魚網に、さらには医療分野の医療用材料、生理用品などの衛生材料として利用できる。
【0003】
【従来の技術】
近年、地球的規模での環境問題に対して、自然環境の中で分解する高分子素材の開発が要望されるようになり、その中でも特に微生物によって分解されるプラスチックは、環境適合性材料や新しいタイプの機能性材料として業界で大きな期待が寄せられている。
【0004】
従来、脂肪族ポリエステルに生分解性があることはよく知られており、その中でも特に微生物によって生産されるポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(PHB)、合成高分子であるポリカプロラクトン(PCL)、コハク酸およびブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエステルカーボネート(PEC)、発酵により生産されるL乳酸を原料としたポリ乳酸(PLLA)等が代表的なものである。しかし、PHB及びPLLAは硬くて脆く、PCLはフィルムに成形可能であるが、融点が60℃と耐熱性に乏しく、広い用途には適用できない。
【0005】
一方、PBSなどの脂肪族2塩基酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物から得られる脂肪族ポリエステルが生分解性を有することが、知られている(非特許文献1参照。)。しかし、これらのポリマーは、熱安定性に乏しく、重縮合時に分解反応も併発するので、通常は数平均分子量で10000程度のものしか得られない。そこで、脂肪族ポリエステルの分子量を上げるために、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類で処理することが報告されている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)。これらは、分子中にジイソシアネートによるウレタン結合と架橋構造を含むポリエステルウレタンであり、これらポリエステルウレタンは生分解性が不十分であり、またフィルムに成形した場合、ゲル、フィッシュアイ等による外観性に問題があり、いまだ十分なものでない。
【0006】
以上の問題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、実用上十分な高分子量および成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに機械的強度を有する、生分解性の脂肪族ポリエステルカーボネート及びその製造方法の発明に至った(特許文献4参照。)。しかし、脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させる際、未反応の脂肪族ジヒドロキシ化合物もしくは脂肪族ポリエステルオリゴマーの熱分解により、脂肪族ジヒドロキシ化合物とその自己反応した環状エーテルなどが生成留出し、原料モノマーの無駄な消費による原単位の悪化、また留出液中に環状エーテル等の低引火点成分が増加する問題があった。
【0007】
【非特許文献1】
ポリマーサイエンステクノロジー3巻、61頁(1973)
【特許文献1】
特開平4−189822号公報
【特許文献2】
米国特許第5310782号明細書
【特許文献3】
欧州特許出願公開第572256号明細書
【特許文献4】
特開平8−193125号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させる際、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/または自己反応した環状エーテルなどの生成留出を抑制し、実用上十分な高分子量および成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに機械的強度を有する生分解性脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法を提供する事にある。
【0009】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させる際、触媒としてGa,Mn,Co,Mg,In,及びTi化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を使用する事で、触媒活性が高く脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物との初期反応を促進し、脂肪族ジヒドロキシ化合物及びその自己反応した環状エーテルなどの生成留出を抑制した脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法を見いだした。
【0010】
すなわち、本発明は脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物を反応させて脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで触媒存在下で、得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させる際に、触媒としてGa、Mn、Co、Mg、In、及びTi化合物から選ばれる少なくとも一種を用いる事を特徴とする脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法に関する。
【発明の実施の形態】
【0011】
本発明による脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法は、脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物とから脂肪族ポリエステルオリゴマーを得る第1工程、および脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させ脂肪族ポリエステルカーボネートを得る第2工程より構成される。
【0012】
第1工程は、通常触媒の存在下、温度100〜250℃、好ましくは150〜220℃で、反応に伴って副生する水及び過剰のジヒドロキシ化合物を除去しながら、数平均分子量10,000以下、通常300〜10,000のポリエステルオリゴマーを製造する工程である。この第1工程において、ポリエステルオリゴマーの分子量が上記より高くした場合は、最終ポリマー中のカーボネート単位含有量が著しく低くなり生分解性が低下するので、上記の分子量を超えることは好ましくない。一方、ポリエステルオリゴマーの分子量が300以下の場合は、最終ポリマーの融点が低下し実用的な使用に耐えるポリマーが得られない。しかしながら、生分解性を特に考慮する必要のない場合には上記の分子量を超えるポリエステルオリゴマーであっても良い。
【0013】
第1工程は、脂肪族2塩基酸と脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応に伴って副生する水もしくはアルコールおよび過剰のジヒドロキシ化合物を除去する必要から、反応温度100〜250℃で最終的には減圧条件下で行われる。圧力は上記目的が達成される圧力が選ばれ、反応を促進する目的で300mmHg以下の減圧とすることが好ましい。この工程における脂肪族2塩基酸と脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応は、脂肪族2塩基酸に対して脂肪族ジヒドロキシ化合物を理論量より過剰で行われる。具体的には、脂肪族2塩基酸1モルに対して、脂肪族ジヒドロキシ化合物を1.05〜2.00倍モルの範囲で使用される。
【0014】
脂肪族ポリエステルオリゴマーの分子量、酸価、ジヒドロキシ化合物の残存量は、未反応のジヒドロキシ化合物の留去速度と反応速度を適当にバランスさせることにより制御可能であり、仕込モル比、触媒、温度、減圧度、反応時間の条件を適宜選択して組合せる方法や、不活性気体を適当な流量で吹き込む方法も現実的である。通常は、触媒の存在下、反応温度100〜250℃で段階的に減圧度を調節することにより行うことができる。たとえば、まず常圧でエステル化を行い縮合反応によって生じた水を除去し、次いで200〜80mmHg程度の減圧度でさらに脱水縮合反応を行わせ、酸価を低減させ、目標の水酸基化にするため、必要に応じ最終的に、40mmHg以下の真空度とする方法が用いられる。
【0015】
過剰のジヒドロキシ化合物の留去と減圧度の増加速度を早くすることにより、反応時間の短縮およびオリゴマー中のジヒドロキシ化合物残存量の低減化が可能であるが、反応を完結させ未反応のカルボン酸量すなわち酸価を減少させることが好ましい。本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造においては、オリゴマーの酸価は5.00KOHmg/g以下が好ましく、より好ましくは3.00KOHmg/g以下である。酸価の増加は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの熱安定性低下、及びカーボネート化合物の副反応による分解および着色等の問題から好ましくない。
【0016】
第2工程は、第1工程で得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させて高分子量体とする工程であり、触媒の存在下、通常150〜250℃で行われ、反応に伴って副成するヒドロキシ化合物が除去される。150℃以下の温度では、十分な反応速度が得られず、250℃以上の温度では、重合反応を速く進めることができるが重合体を着色させることがあり好ましくない。カーボネート化合物の沸点によっては反応初期には加圧とする。減圧度は、調節して最終的には3mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0017】
脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基量を制御することにより所望の割合とすることができる。カーボネート単位含有量が多すぎると、得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの融点が低くなり、実用的な耐熱性を有するポリマーが得られない。しかし一方で、カーボネート単位含有量が多くなると微生物による分解性が高くなる。従って、カーボネート単位含有量は、適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る量とすることが好ましく、本発明においては脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量を、少なくとも3モル%以上、通常5〜30モル%とすることが好ましい。
【0018】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族2塩基酸としては、コハク酸が主に使用され、それ以外に例えば、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、アゼライン酸等を適宜併用することができる。またテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸も、生分解性を損なわない範囲で使用可能である。なお上記の2塩基酸はそれらのエステルあるいは酸無水物であってもよい。さらに、トリメリット酸、無水ピロメリット酸、プロパントリカルボン酸など分子内にカルボキシル基を3個以上含有する多価カルボン酸も適宜使用できる。
【0019】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1,4−ブタンジオールが主に使用され、それ以外に例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等を適宜併用することができる。さらに、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど分子内に水酸基を3個以上含有する多価アルコールも適宜使用できる。
【0020】
本発明で使用されるヒドロキシカルボン酸化合物としては、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸等が例示され、これらはエステル、環状エステル等の誘導体でも使用できる。
【0021】
これらの脂肪族2塩基酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物およびヒドロキシカルボン酸化合物は、それぞれ単独であるいは混合物として用いることができ所望の組合せが可能であるが、本発明においては適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る程度の高い融点のものが好ましい。従って、本発明においては、脂肪族ジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオール、脂肪族2塩基酸としてコハク酸を、それぞれ50モル%以上含むことが好ましい。
【0022】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられるカーボネート化合物の具体的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネートなどのジアリールカーボネート、また、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、フェノール、アルコール類の様なヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物や環状カーボネート化合物も使用できる。
【0023】
カーボネート化合物としては、好ましくはジアリールカーボネートであり、特にジフェニルカーボネートが好ましい。使用量は脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基に対して0.40〜0.60倍モル量用いるが、より好ましくは0.45〜0.55倍モル量である。
【0024】
第2工程において、カーボネート化合物を添加する際、グリコール成分を添加することにより、ブロック共重合化が可能である。添加するグリコールは第1工程で使用したグリコールと同一でも異なっても良い。
【0025】
脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂の分子量は、スチレン換算のGPCによる重量平均分子量で10万以上、40万以下が望ましい。10万以下では所望の強度が達成されず、40万以上では成形加工時の溶融粘度が高く成形性が低下する。
【0026】
本発明で脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物との反応時に使用する触媒は、エステル交換触媒から選ばれるが、特にGa,Mn,Co,Mg,In,およびTiの何れかの化合物が少なくとも1種類からなり、原料混合物100重量部に対して、5×10−5〜1重量部の範囲で用いられる。触媒として好ましい化合物の形態としては、脂肪酸塩類、水酸化物、アルコラート、フェノラート、アセチルアセトナート、ベンゾイルアセトナート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物等種々あげられる。
【0027】
エステル交換触媒であるGa,Mn,Co,Mg,In,Ti化合物の具体例としては、酢酸ガリウム、ガリウムアセチルアセトナート、酸化ガリウム、マンガンアセチルアセトナート、酢酸マンガン、酸化マンガン、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナート、酸化コバルト、水酸化コバルト、コバルトベンゾイルアセトナート、酢酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトナート、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムメトキシド、酢酸インジウム、インジウムアセチルアセトナート、水酸化インジウム、酸化インジウム、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、酢酸チタン、チタンオキシアセチルアセトナートなどが例示される。
【0028】
触媒の添加時期は、Ga、Mn、Co、Mg、In、及びTi化合物から選ばれる少なくとも1種の触媒を第2工程だけではなく、第1工程の反応時から使用しても良い。また、第1工程の脂肪族ポリエステルオリゴマー合成時に酸価を低下させるため、必要に応じ第1工程ではジルコニウム(Zr)化合物、ハフニウム(Hf)化合物、亜鉛(Zn)化合物もしくはチタン化合物(Ti)などの使用が好ましい。これらの触媒として好ましい化合物の形態は、脂肪酸塩類、水酸化物、アルコラート、フェノラート、アセチルアセトナート、ベンゾイルアセトナート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物等種々あげられる。
【0029】
使用された触媒は重合反応終了後にポリマー中に残留するため、余りに過剰に用いるとポリマーの熱安定性を損ない、一方少なすぎればオリゴマーの生成および重合反応の終了までに長時間を要し好ましくない。また、例えば食品関係に用いられる包装材料には、触媒量は極力少ないことが望まれる。これらの点を考慮し、触媒の使用料は通常、原料混合物100重量部に対して、5×10−5〜1重量部、好ましくは1×10−4〜2×10−2重量部が使用される。
【0030】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂には、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、等の各種添加剤、及び生分解性樹脂、その他熱可塑性樹脂、木粉、でんぷん等も同様に加えることができる。これらの添加剤等は、脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂が有する物性を大きく損なわれない範囲で、単独又は二種以上を任意の割合で混合できる。
添加剤の混合に際しては、少なくとも脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂の溶融する温度以上で、機械的に混合する。混合装置に関しては特に制限はなく、単軸、二軸押出機等の常法を用いて混合する方法が短時間で連続的に処理できる点で工業的に推奨される。
【0031】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂を用いて成型された物品として、具体的な成型形態、成型方法としては、射出成型品、押出し成型品、インフレーション成型法、真空圧空成型品、ブロー成型品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品その他の成型品が例示されるがそれらに限定されるものではない。また接着剤、エマルジョン等の使用法も可能である。
【0032】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
本実施例において、融点は、DSC(パーキンエルマー社製DSC Pyris−1)を用いて測定した。また、分子量はクロロホルムを溶媒としてGPC(昭和電工(株)製GPC System−21H使用)によりスチレン換算のMw、Mnとして測定した。また、カーボネート単位含有量はNMR(日本電子(株)製NMR EXー270)を使用し、13CNMRによりジカルボン酸エステル単位およびカーボネート単位の合計に対するカーボネート単位の割合(モル%)として測定した。留出液の組成は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所GC14)により分析した。
【0033】
溶融粘度はフローテスター(島津製作所製CFT−500C)を用いて温度190℃、荷重60kgにて測定した。脂肪族ポリエステルカーボネートのオリゴマーの水酸基価、酸価は、JIS K−1557に準じて測定した。
【0034】
実施例1
攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に、コハク酸9,686g(82.02モル)、1,4−ブタンジオール10,275g(114.01モル)およびジルコニウムアセチルアセトネート396mgを仕込み、窒素雰囲気下、温度150〜220℃で2時間30分反応し水を留出させた。つづいて、減圧度150mmHgの減圧度で1時間30分反応し脱水反応を進行させ、更に減圧度40mmHgで20分間反応し、水と1,4−ブタンジオールを留出させ反応を停止した。総留出量は4,089g、総反応時間は約5時間であった。得られた脂肪族ポリエステルオリゴマー(A−1)の数平均分子量は957、末端水酸基価は133KOHmg/gであり、酸価は1.08KOHmg/gであり、残存1,4−ブタンジオール量は0.68重量%であった。
【0035】
次に得られた脂肪族ポリエステルオリゴマー(A−1)25gを攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた200mlの反応容器に仕込み、ジフェニルカーボネート(DPC)6.564gおよびガリウムアセチルアセトナートを4.556×10−6モル添加した。反応温度は225℃とし、減圧度は100mmHgにて1時間、15mmHgにて1時間、その後フル真空下2時間反応した。反応開始から10分後、フェノールの留出を開始した。最終的に得られたポリマーは白色で、融点が96℃、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が295,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として19.8%のカーボネート単位を有していた。また、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。フェノール留出液の組成を分析した結果、THF(テトラヒドロフラン)濃度が1.51重量%(84mg)、1,4BD(ブタンジオール)濃度が0.72重量%(40mg)であった。なお捕集されたフェノール量は、理論留出量の97%であった。
【0036】
実施例2〜6
実施例1と同様の操作により、第2工程で脂肪族ポリエステルオリゴマー(A−1)とDPCを反応させる際の触媒種を変更し、反応を行った結果を表1に示す。結果として実施例1〜6の触媒種は、十分な分子量の脂肪族ポリエステルカーボネートを合成できるだけではなく、比較例1に比べフェノール留出開始時間が早く、初期活性の高い事がわかる。さらに、フェノール留出液中のTHF,1,4BD濃度も比較例1に比べ大きく低減された。
【0037】
比較例1
実施例1と同様の操作により、第2工程での触媒種を酢酸亜鉛二水和物に変更して、同様の反応を行った結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
触媒添加量:4.556×10−6モル
Ga(acac)3 :ガリムアセチルアセトナート
BuO(Ti(OBu)2O)4Bu:オルトチタン酸テトラ−n−ブチル四量体
【0039】
【本発明の効果】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは、流動性、成形性に優れ、射出成型品、押し出し成型品、真空圧空成型品、ブロー成型品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品、接着剤、エマルジョン用途、その他の成型品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度と耐熱性を有すると共に、海水中、土中、活性汚泥中、コンポスト中で容易に微生物により分解される。このため、包装材料、漁業、農業、食品分野その他のリサイクルが困難な用途に広く利用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートに関し、詳しくは、成形加工時の熱安定性に優れ、フィルム、シート、フィラメント、発泡体など各種の成形に適する生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法に関する。
【0002】
本発明に係る脂肪族ポリエステルカーボネートは、流動性、射出成形性に優れ、フィルム、シート、フィラメント、ブロー成形、発泡体、接着剤、エマルジョンあるいは繊維などの成形品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度を有すると共に、海水中、土中、コンポストまたは活性汚泥処理等により高い生分解性を示し、包装材料やその他の成形体に広く利用できる。たとえば、生ゴミと一緒に堆肥化可能なコンポストバック、農業分野では土壌表面を被覆して土壌の保温を行うマルチフィルム、植木用の鉢や紐、または肥料のコーティング材料などに利用でき、あるいは漁業分野では釣糸、魚網に、さらには医療分野の医療用材料、生理用品などの衛生材料として利用できる。
【0003】
【従来の技術】
近年、地球的規模での環境問題に対して、自然環境の中で分解する高分子素材の開発が要望されるようになり、その中でも特に微生物によって分解されるプラスチックは、環境適合性材料や新しいタイプの機能性材料として業界で大きな期待が寄せられている。
【0004】
従来、脂肪族ポリエステルに生分解性があることはよく知られており、その中でも特に微生物によって生産されるポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(PHB)、合成高分子であるポリカプロラクトン(PCL)、コハク酸およびブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエステルカーボネート(PEC)、発酵により生産されるL乳酸を原料としたポリ乳酸(PLLA)等が代表的なものである。しかし、PHB及びPLLAは硬くて脆く、PCLはフィルムに成形可能であるが、融点が60℃と耐熱性に乏しく、広い用途には適用できない。
【0005】
一方、PBSなどの脂肪族2塩基酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物から得られる脂肪族ポリエステルが生分解性を有することが、知られている(非特許文献1参照。)。しかし、これらのポリマーは、熱安定性に乏しく、重縮合時に分解反応も併発するので、通常は数平均分子量で10000程度のものしか得られない。そこで、脂肪族ポリエステルの分子量を上げるために、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類で処理することが報告されている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)。これらは、分子中にジイソシアネートによるウレタン結合と架橋構造を含むポリエステルウレタンであり、これらポリエステルウレタンは生分解性が不十分であり、またフィルムに成形した場合、ゲル、フィッシュアイ等による外観性に問題があり、いまだ十分なものでない。
【0006】
以上の問題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、実用上十分な高分子量および成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに機械的強度を有する、生分解性の脂肪族ポリエステルカーボネート及びその製造方法の発明に至った(特許文献4参照。)。しかし、脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させる際、未反応の脂肪族ジヒドロキシ化合物もしくは脂肪族ポリエステルオリゴマーの熱分解により、脂肪族ジヒドロキシ化合物とその自己反応した環状エーテルなどが生成留出し、原料モノマーの無駄な消費による原単位の悪化、また留出液中に環状エーテル等の低引火点成分が増加する問題があった。
【0007】
【非特許文献1】
ポリマーサイエンステクノロジー3巻、61頁(1973)
【特許文献1】
特開平4−189822号公報
【特許文献2】
米国特許第5310782号明細書
【特許文献3】
欧州特許出願公開第572256号明細書
【特許文献4】
特開平8−193125号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させる際、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/または自己反応した環状エーテルなどの生成留出を抑制し、実用上十分な高分子量および成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに機械的強度を有する生分解性脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法を提供する事にある。
【0009】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させる際、触媒としてGa,Mn,Co,Mg,In,及びTi化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を使用する事で、触媒活性が高く脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物との初期反応を促進し、脂肪族ジヒドロキシ化合物及びその自己反応した環状エーテルなどの生成留出を抑制した脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法を見いだした。
【0010】
すなわち、本発明は脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物を反応させて脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで触媒存在下で、得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させる際に、触媒としてGa、Mn、Co、Mg、In、及びTi化合物から選ばれる少なくとも一種を用いる事を特徴とする脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法に関する。
【発明の実施の形態】
【0011】
本発明による脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法は、脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物とから脂肪族ポリエステルオリゴマーを得る第1工程、および脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させ脂肪族ポリエステルカーボネートを得る第2工程より構成される。
【0012】
第1工程は、通常触媒の存在下、温度100〜250℃、好ましくは150〜220℃で、反応に伴って副生する水及び過剰のジヒドロキシ化合物を除去しながら、数平均分子量10,000以下、通常300〜10,000のポリエステルオリゴマーを製造する工程である。この第1工程において、ポリエステルオリゴマーの分子量が上記より高くした場合は、最終ポリマー中のカーボネート単位含有量が著しく低くなり生分解性が低下するので、上記の分子量を超えることは好ましくない。一方、ポリエステルオリゴマーの分子量が300以下の場合は、最終ポリマーの融点が低下し実用的な使用に耐えるポリマーが得られない。しかしながら、生分解性を特に考慮する必要のない場合には上記の分子量を超えるポリエステルオリゴマーであっても良い。
【0013】
第1工程は、脂肪族2塩基酸と脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応に伴って副生する水もしくはアルコールおよび過剰のジヒドロキシ化合物を除去する必要から、反応温度100〜250℃で最終的には減圧条件下で行われる。圧力は上記目的が達成される圧力が選ばれ、反応を促進する目的で300mmHg以下の減圧とすることが好ましい。この工程における脂肪族2塩基酸と脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応は、脂肪族2塩基酸に対して脂肪族ジヒドロキシ化合物を理論量より過剰で行われる。具体的には、脂肪族2塩基酸1モルに対して、脂肪族ジヒドロキシ化合物を1.05〜2.00倍モルの範囲で使用される。
【0014】
脂肪族ポリエステルオリゴマーの分子量、酸価、ジヒドロキシ化合物の残存量は、未反応のジヒドロキシ化合物の留去速度と反応速度を適当にバランスさせることにより制御可能であり、仕込モル比、触媒、温度、減圧度、反応時間の条件を適宜選択して組合せる方法や、不活性気体を適当な流量で吹き込む方法も現実的である。通常は、触媒の存在下、反応温度100〜250℃で段階的に減圧度を調節することにより行うことができる。たとえば、まず常圧でエステル化を行い縮合反応によって生じた水を除去し、次いで200〜80mmHg程度の減圧度でさらに脱水縮合反応を行わせ、酸価を低減させ、目標の水酸基化にするため、必要に応じ最終的に、40mmHg以下の真空度とする方法が用いられる。
【0015】
過剰のジヒドロキシ化合物の留去と減圧度の増加速度を早くすることにより、反応時間の短縮およびオリゴマー中のジヒドロキシ化合物残存量の低減化が可能であるが、反応を完結させ未反応のカルボン酸量すなわち酸価を減少させることが好ましい。本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造においては、オリゴマーの酸価は5.00KOHmg/g以下が好ましく、より好ましくは3.00KOHmg/g以下である。酸価の増加は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの熱安定性低下、及びカーボネート化合物の副反応による分解および着色等の問題から好ましくない。
【0016】
第2工程は、第1工程で得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させて高分子量体とする工程であり、触媒の存在下、通常150〜250℃で行われ、反応に伴って副成するヒドロキシ化合物が除去される。150℃以下の温度では、十分な反応速度が得られず、250℃以上の温度では、重合反応を速く進めることができるが重合体を着色させることがあり好ましくない。カーボネート化合物の沸点によっては反応初期には加圧とする。減圧度は、調節して最終的には3mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0017】
脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基量を制御することにより所望の割合とすることができる。カーボネート単位含有量が多すぎると、得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの融点が低くなり、実用的な耐熱性を有するポリマーが得られない。しかし一方で、カーボネート単位含有量が多くなると微生物による分解性が高くなる。従って、カーボネート単位含有量は、適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る量とすることが好ましく、本発明においては脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量を、少なくとも3モル%以上、通常5〜30モル%とすることが好ましい。
【0018】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族2塩基酸としては、コハク酸が主に使用され、それ以外に例えば、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、アゼライン酸等を適宜併用することができる。またテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸も、生分解性を損なわない範囲で使用可能である。なお上記の2塩基酸はそれらのエステルあるいは酸無水物であってもよい。さらに、トリメリット酸、無水ピロメリット酸、プロパントリカルボン酸など分子内にカルボキシル基を3個以上含有する多価カルボン酸も適宜使用できる。
【0019】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1,4−ブタンジオールが主に使用され、それ以外に例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等を適宜併用することができる。さらに、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど分子内に水酸基を3個以上含有する多価アルコールも適宜使用できる。
【0020】
本発明で使用されるヒドロキシカルボン酸化合物としては、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸等が例示され、これらはエステル、環状エステル等の誘導体でも使用できる。
【0021】
これらの脂肪族2塩基酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物およびヒドロキシカルボン酸化合物は、それぞれ単独であるいは混合物として用いることができ所望の組合せが可能であるが、本発明においては適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る程度の高い融点のものが好ましい。従って、本発明においては、脂肪族ジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオール、脂肪族2塩基酸としてコハク酸を、それぞれ50モル%以上含むことが好ましい。
【0022】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられるカーボネート化合物の具体的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネートなどのジアリールカーボネート、また、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、フェノール、アルコール類の様なヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物や環状カーボネート化合物も使用できる。
【0023】
カーボネート化合物としては、好ましくはジアリールカーボネートであり、特にジフェニルカーボネートが好ましい。使用量は脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基に対して0.40〜0.60倍モル量用いるが、より好ましくは0.45〜0.55倍モル量である。
【0024】
第2工程において、カーボネート化合物を添加する際、グリコール成分を添加することにより、ブロック共重合化が可能である。添加するグリコールは第1工程で使用したグリコールと同一でも異なっても良い。
【0025】
脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂の分子量は、スチレン換算のGPCによる重量平均分子量で10万以上、40万以下が望ましい。10万以下では所望の強度が達成されず、40万以上では成形加工時の溶融粘度が高く成形性が低下する。
【0026】
本発明で脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物との反応時に使用する触媒は、エステル交換触媒から選ばれるが、特にGa,Mn,Co,Mg,In,およびTiの何れかの化合物が少なくとも1種類からなり、原料混合物100重量部に対して、5×10−5〜1重量部の範囲で用いられる。触媒として好ましい化合物の形態としては、脂肪酸塩類、水酸化物、アルコラート、フェノラート、アセチルアセトナート、ベンゾイルアセトナート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物等種々あげられる。
【0027】
エステル交換触媒であるGa,Mn,Co,Mg,In,Ti化合物の具体例としては、酢酸ガリウム、ガリウムアセチルアセトナート、酸化ガリウム、マンガンアセチルアセトナート、酢酸マンガン、酸化マンガン、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナート、酸化コバルト、水酸化コバルト、コバルトベンゾイルアセトナート、酢酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトナート、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムメトキシド、酢酸インジウム、インジウムアセチルアセトナート、水酸化インジウム、酸化インジウム、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、酢酸チタン、チタンオキシアセチルアセトナートなどが例示される。
【0028】
触媒の添加時期は、Ga、Mn、Co、Mg、In、及びTi化合物から選ばれる少なくとも1種の触媒を第2工程だけではなく、第1工程の反応時から使用しても良い。また、第1工程の脂肪族ポリエステルオリゴマー合成時に酸価を低下させるため、必要に応じ第1工程ではジルコニウム(Zr)化合物、ハフニウム(Hf)化合物、亜鉛(Zn)化合物もしくはチタン化合物(Ti)などの使用が好ましい。これらの触媒として好ましい化合物の形態は、脂肪酸塩類、水酸化物、アルコラート、フェノラート、アセチルアセトナート、ベンゾイルアセトナート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物等種々あげられる。
【0029】
使用された触媒は重合反応終了後にポリマー中に残留するため、余りに過剰に用いるとポリマーの熱安定性を損ない、一方少なすぎればオリゴマーの生成および重合反応の終了までに長時間を要し好ましくない。また、例えば食品関係に用いられる包装材料には、触媒量は極力少ないことが望まれる。これらの点を考慮し、触媒の使用料は通常、原料混合物100重量部に対して、5×10−5〜1重量部、好ましくは1×10−4〜2×10−2重量部が使用される。
【0030】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂には、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、等の各種添加剤、及び生分解性樹脂、その他熱可塑性樹脂、木粉、でんぷん等も同様に加えることができる。これらの添加剤等は、脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂が有する物性を大きく損なわれない範囲で、単独又は二種以上を任意の割合で混合できる。
添加剤の混合に際しては、少なくとも脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂の溶融する温度以上で、機械的に混合する。混合装置に関しては特に制限はなく、単軸、二軸押出機等の常法を用いて混合する方法が短時間で連続的に処理できる点で工業的に推奨される。
【0031】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂を用いて成型された物品として、具体的な成型形態、成型方法としては、射出成型品、押出し成型品、インフレーション成型法、真空圧空成型品、ブロー成型品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品その他の成型品が例示されるがそれらに限定されるものではない。また接着剤、エマルジョン等の使用法も可能である。
【0032】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
本実施例において、融点は、DSC(パーキンエルマー社製DSC Pyris−1)を用いて測定した。また、分子量はクロロホルムを溶媒としてGPC(昭和電工(株)製GPC System−21H使用)によりスチレン換算のMw、Mnとして測定した。また、カーボネート単位含有量はNMR(日本電子(株)製NMR EXー270)を使用し、13CNMRによりジカルボン酸エステル単位およびカーボネート単位の合計に対するカーボネート単位の割合(モル%)として測定した。留出液の組成は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所GC14)により分析した。
【0033】
溶融粘度はフローテスター(島津製作所製CFT−500C)を用いて温度190℃、荷重60kgにて測定した。脂肪族ポリエステルカーボネートのオリゴマーの水酸基価、酸価は、JIS K−1557に準じて測定した。
【0034】
実施例1
攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に、コハク酸9,686g(82.02モル)、1,4−ブタンジオール10,275g(114.01モル)およびジルコニウムアセチルアセトネート396mgを仕込み、窒素雰囲気下、温度150〜220℃で2時間30分反応し水を留出させた。つづいて、減圧度150mmHgの減圧度で1時間30分反応し脱水反応を進行させ、更に減圧度40mmHgで20分間反応し、水と1,4−ブタンジオールを留出させ反応を停止した。総留出量は4,089g、総反応時間は約5時間であった。得られた脂肪族ポリエステルオリゴマー(A−1)の数平均分子量は957、末端水酸基価は133KOHmg/gであり、酸価は1.08KOHmg/gであり、残存1,4−ブタンジオール量は0.68重量%であった。
【0035】
次に得られた脂肪族ポリエステルオリゴマー(A−1)25gを攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた200mlの反応容器に仕込み、ジフェニルカーボネート(DPC)6.564gおよびガリウムアセチルアセトナートを4.556×10−6モル添加した。反応温度は225℃とし、減圧度は100mmHgにて1時間、15mmHgにて1時間、その後フル真空下2時間反応した。反応開始から10分後、フェノールの留出を開始した。最終的に得られたポリマーは白色で、融点が96℃、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が295,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として19.8%のカーボネート単位を有していた。また、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。フェノール留出液の組成を分析した結果、THF(テトラヒドロフラン)濃度が1.51重量%(84mg)、1,4BD(ブタンジオール)濃度が0.72重量%(40mg)であった。なお捕集されたフェノール量は、理論留出量の97%であった。
【0036】
実施例2〜6
実施例1と同様の操作により、第2工程で脂肪族ポリエステルオリゴマー(A−1)とDPCを反応させる際の触媒種を変更し、反応を行った結果を表1に示す。結果として実施例1〜6の触媒種は、十分な分子量の脂肪族ポリエステルカーボネートを合成できるだけではなく、比較例1に比べフェノール留出開始時間が早く、初期活性の高い事がわかる。さらに、フェノール留出液中のTHF,1,4BD濃度も比較例1に比べ大きく低減された。
【0037】
比較例1
実施例1と同様の操作により、第2工程での触媒種を酢酸亜鉛二水和物に変更して、同様の反応を行った結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
触媒添加量:4.556×10−6モル
Ga(acac)3 :ガリムアセチルアセトナート
BuO(Ti(OBu)2O)4Bu:オルトチタン酸テトラ−n−ブチル四量体
【0039】
【本発明の効果】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートは、流動性、成形性に優れ、射出成型品、押し出し成型品、真空圧空成型品、ブロー成型品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品、接着剤、エマルジョン用途、その他の成型品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度と耐熱性を有すると共に、海水中、土中、活性汚泥中、コンポスト中で容易に微生物により分解される。このため、包装材料、漁業、農業、食品分野その他のリサイクルが困難な用途に広く利用できる。
Claims (2)
- 脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物を反応させて脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで触媒存在下で、得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させる際に、該触媒としてGa、Mn、Co、Mg、In、及びTi化合物から選ばれる少なくとも一種を用いる事を特徴とする脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
- カーボネート化合物としてジフェニルカーボネートを使用し、脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させる際、フェノール留出液中のテトラヒドロフラン濃度が1.8重量%以下、1,4―ブタンジオール濃度が0.8重量%以下である事を特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
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