JP2020125467A - ポリカーボネートジオールの製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリカーボネートジオールの色調や透明性、熱安定性を損なうことなく、ポリウレタンとした際に求められる様々な物性を満足するポリカーボネートジオールを、従来法よりも温和な反応条件で工業的に有利に製造する方法の提供。【解決手段】ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、エステル交換触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて数平均分子量が250以上10000以下のポリカーボネートジオールを製造する。エステル交換触媒として、亜鉛および長周期型周期表第2族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属(M)とのアセチルアセトン塩からなる化合物を含む組成物を用いる。【選択図】なし

Description

本発明はポリカーボネートジオールの製造法に関する。詳しくは、物性バランスに優れた弾性繊維、合成または人工皮革、高機能エラストマー用途に好適に用いられるポリカーボネート系ポリウレタンの原料として有用なポリカーボネートジオールの製造法に関する。
従来、工業規模で生産されているポリウレタン樹脂の主たるソフトセグメント部の原料
は、ポリテトラメチレングリコールに代表されるエーテルタイプ、アジペート系エステル
に代表されるポリエステルポリオールタイプ、ポリカプロラクトンに代表されるポリラク
トンタイプおよびポリカーボネートジオールに代表されるポリカーボネートタイプに分け
られる(非特許文献1)。
このうち、エーテルタイプは、耐加水分解性、柔軟性および伸縮性には優れるものの、耐熱性および耐光性が劣るとされている。
ポリエステルポリオールタイプは、耐熱性および耐候性は改善されるものの、エステル部の耐加水分解性が低く、用途によっては使用することができない。
ポリラクトンタイプは、ポリエステルポリオールタイプと比較すると耐加水分解性に優れるグレードとされているが、同様にエステル基があるために加水分解を完全に抑制することはできない。
また、これらポリエステルポリオールタイプ、エーテルタイプおよびポリラクトンタイプを混合して使用することも提案されているが、それぞれの欠点を完全に補うことは出来ていない。
これらに対して、ポリカーボネートジオールを用いるポリカーボネートタイプは、耐熱性および耐加水分解性において最良な耐久グレードとされており、耐久性フィルムや自動車用人工皮革、(水系)塗料、接着剤として広く利用されている。
しかしながら、現在広く市販されているポリカーボネートジオールは、1,6−ヘキサンジオールから合成されるポリカーボネートジオールが中心であり、このものが結晶性であるため常温ではワックス状で流動性がなく、取り扱いがしにくいという問題があった。
また、1,6−ヘキサンジオールから合成されるポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンは、ソフトセグメントの凝集性が高く、特に低温における柔軟性、伸びおよび曲げ並びに弾性回復性が悪いという問題があり用途が制限されていた。さらに、得られるポリウレタン溶液の溶液粘度も高く、成型またはコートする際の操作性が悪かった。さらには、このポリウレタンを原料として製造した人工皮革は、硬い質感があり、天然皮革に比べて“風合い”が悪いということも指摘されている。
そこでこれらの問題を解決するために様々な構造のポリカーボネートジオールが提案されている。
例えば、1,6−ヘキサンジオールと別のジヒドロキシ化合物とを混合して共重合ポリカーボネートとする方法があり、具体的には1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールを共重合する方法(特許文献1)、1,5−ペンタンジオールを共重合する方法(特許文献2)が提案されている。
また、1,6−ヘキサンジオール以外の他のジヒドロキシ化合物を組み合わせる方法も提案されており、例えば、1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールまたは1、5−ペンタンジオールを組み合わせる方法(特許文献3)、平均炭素数が6以上となる2種以上の直鎖ジヒドロキシ化合物を組み合わせる方法(特許文献4)などがある。
さらには、ジヒドロキシ化合物由来部位の結晶性を阻害する有力な方法として、主鎖に置換基を有するジヒドロキシ化合物を用いる方法が提案されており、例えば、2−メチル−1,3−プロパンジオールと他のアルキレングリコールの組み合わせ(特許文献5)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと他のアルキレンジオールの組み合わせ(特許文献6)などがある。
従来、ポリカーボネートジオールの製造に用いられる触媒は、原料として用いる炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との組み合わせにより種々検討されている。
例えば、ジエチルカーボネートと1,6−ヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールとの共重合ポリカーボネートジオールの製造においては、金属ナトリウムが触媒として用いられており(特許文献2)、ジエチルカーボネートと1,3−プロパンジオールや2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールのようなジオールとの組み合わせにおいては、ナトリウムエトキシドや酢酸マグネシウムが触媒として用いられている(特許文献7)。
また、エチレンカーボネートと1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび2-メチル−1,3−プロパンジオール等のジオール類との共重合ポリカーボネートジオールの製造においては酢酸鉛やテトラ−n−ブチルチタネートが触媒として用いられており(特許文献5)、エチレンカーボネートと各種アルキレンジオール類およびジエチレングルコールやジブチレングリコールのようなオキシアルキレンジオール類とのポリカーボネートジオールの製造においてはテトラ−n−ブチルチタネートが触媒として用いられている(特許文献5)。
古くは、エチレンカーボネートと1,6−ヘキサンジオールとの組み合わせにおいては、テトラ−n−ブチルチタネートの他、ジブチルスズジラウレートや酢酸ナトリウム、水酸化リチウム、スズ粉末等が触媒として用いられている(特許文献8)。
更に、ジフェニルカーボネートと1,6−ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールとの共重合ポリカーボネートジオールの製造においては酢酸マグネシウムが触媒として良好に用いられている(特許文献9)。
特開平5−51428号公報 特開平2−289616号公報 国際公開第2002/070584号 特開2000−95852号公報 国際公開第2006/088152号 特開昭60−195117号公報 特開2012−46659号公報 特開昭51−144492号公報 特開2013−010950号公報
"ポリウレタンの基礎と応用"96頁〜106頁 松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
従前知られた技術では、種々の反応性の異なるジヒドロキシ化合物を重縮合反応させるためには反応温度を高く設定したり、触媒を多く加えたりする必要があり、芳香族ポリカーボネートに比べ熱劣化しやすい脂肪族ポリカーボネートの着色や熱劣化を招くという問題があった。そのため、当該分野で公知のエステル交換触媒は、種々のポリカーボネートジオールの製造にあたり、十分ではなかった。
例えば、触媒としてアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属またはそれらのアルコキシドなどの強塩基を使用すると、製造したポリカーボネートジオールを次工程に用いる際に中和する必要がある。
また、チタン化合物を触媒として使用する場合、ポリカーボネートジオール製造中および得られたポリカーボネートジオールの貯蔵中に着色が生じるという問題がある。
一方、鉛化合物や有機スズ化合物は、近年、人体への有害性や生態系への悪影響が明らかにされてきている。そのためこれらの化合物は、触媒として使用され、ポリカーボネートジオール中に残存する成分として望ましくない。
更に、従来使用されているすべての触媒において、反応温度を高く設定する必要があるという課題があった。反応温度が高いと、望ましくないエーテル基やビニル基の形成が促進される。これらの末端基は、ポリカーボネートジオールをポリウレタン原料として使用する場合、ポリウレタン化のための重合反応において連鎖停止剤として作用するため、ポリウレタン原料として望ましくない。
触媒として酢酸マグネシウムやマグネシウムアルコキシドを用いた場合には、重合活性が低く、原料として反応性の低いジヒドロキシ化合物や反応性の低い炭酸ジエステルを用いた場合には重合活性が足りず、高い反応温度や高い触媒濃度および長い反応時間が必要であり、上記のような副反応を併発したり、工業的な生産性を低下させたりする。また、触媒濃度が高いことにより、得られるポリカーボネートジオールが着色したり濁りが生じたりするという問題もある。
本発明は、ポリカーボネートジオールの色調や透明性、熱安定性を損なうことなく、ポリウレタンとした際に求められる様々な物性を満足するポリカーボネートジオールを、従来法よりも温和な反応条件で工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とする。さらには、ポリカーボネートジオールの設計自由度を向上させることを目的とする。
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、原料モノマーとしてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用いてエステル交換反応により重縮合させてポリカーボネートジオールを製造する際に、特定のエステル交換触媒を用いて特定分子量のポリカーボネートジオールを効率よく製造することができ、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、以下である。
[1] 原料モノマーとしてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用いて、エステル交換触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて数平均分子量が250以上10000以下のポリカーボネートジオールを製造する方法であって、
該エステル交換触媒が、亜鉛および長周期型周期表第2族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属(M)と下記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む組成物、或いは下記式(2)で表される少なくとも1種の塩およびそれらを前駆体とする組成物であるポリカーボネートジオールの製造法。
Figure 2020125467
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表し、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい。
は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基またはハロゲン原子を表し、該炭化水素基はハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい。
Mは亜鉛または長周期型周期表第2族の金属を表し、n=2である。)
[2] 前記金属(M)が、亜鉛、マグネシウム、カルシウムおよびバリウムから選ばれる少なくとも1種の金属である[1]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[3] 前記金属(M)が、亜鉛および/またはマグネシウムである[2]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[4] 前記金属(M)が、マグネシウムである[3]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[5] 前記式(1)および式(2)において、RおよびRがそれぞれ独立に、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜12の1価の炭化水素基であり、Rがハロゲン原子が置換していてもよく酸素原子を有していてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基またはハロゲン原子である[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[6] 前記式(1)および式(2)において、RおよびRがそれぞれ独立に、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜7の1価の炭化水素基であり、Rがハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜7の1価の炭化水素基またはハロゲン原子である[5]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[7] 前記金属(M)を、その合計量として、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、1μmol以上、500μmol以下存在させる[1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[8] 前記金属(M)を、その合計量として、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、5μmol以上、200μmol以下存在させる[7]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[9] 前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(3)で表される構造の脂肪族ジヒドロキシ化合物、および脂環式ジヒドロキシ化合物と数平均分子量100以上1000以下のポリ(オキシアルキレン)ジオールから選ばれる少なくとも1種を含む[1]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造法。
HO−R−OH (3)
(式中、Rは、炭素数2〜60の直鎖または分岐の2価の炭化水素基を表し、環状構造および/またはエーテル性酸素原子を有していてもよい。)
[10] 前記ジヒドロキシ化合物が、前記式(3)で表される構造の脂肪族ジヒドロキシ化合物および/または脂環式ジヒドロキシ化合物を含み、式(3)中のRの炭素数が2〜20である[9]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[11] 前記式(3)中のRの炭素数が2〜12である[10]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[12] 前記ジヒドロキシ化合物が、数平均分子量100以上1000以下のポリ(オキシアルキレン)ジオールを含む[9]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[13] 前記ジヒドロキシ化合物が、数平均分子量100以上1000以下のポリオキシテトラメチレングリコールを含む[12]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[14] 前記ジヒドロキシ化合物が、数平均分子量150以上700以下のポリオキシテトラメチレングリコールを含む[13]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[15] 前記炭酸ジエステルが、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネートおよびジアリールカーボネートから選ばれる少なくとも1種である[1]〜[14]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[16] 前記炭酸ジエステルが、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネートおよびジフェニルカーボネートから選ばれる少なくとも1種である[15]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[17] 前記炭酸ジエステルが、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジフェニルカーボネートから選ばれる少なくとも1種である[16]に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
[18] [1]〜[17]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造法で製造したポリカーボネートジオールを用いるポリウレタンの製造法。
本発明のポリカーボネートジオールの製造法によれば、従前知られた技術に対してより温和な条件で、色調、透明性等に優れたポリカーボネートジオールを効率的に製造することができる。さらには、様々な原料モノマーの組み合わせにおいて高い重合活性を得ることができることから、ポリカーボネートジオールの設計の自由度が高く、ポリウレタンの各種要求物性に合わせたポリカーボネートジオールを、原料モノマーであるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの組み合わせを自由に変えた上で合成できるという特長をも有する。
以下、本発明の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1.ポリカーボネートジオールの製造法]
本発明のポリカーボネートジオールの製造法は、原料モノマーとしてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用い、特定のエステル交換触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて数平均分子量が250以上10000以下のポリカーボネートジオール(以下、「本発明のポリカーボネートジオール」と称す場合がある。)を製造する方法である。
<1−1.原料モノマー>
本発明のポリカーボネートジオールは、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料とする。
<1−1−1.ジヒドロキシ化合物>
本発明のポリカーボネートジオールの原料となるジヒドロキシ化合物としては、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールおよび1,20−エイコサンジオール等の直鎖状の末端ジヒドロキシ化合物類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのエーテル基を有するジヒドロキシ化合物類、ビスヒドロキシエチルチオエーテルなどのチオエーテルジオール類、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールおよび2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(以下ネオペンチルグリコールと略記することがある)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールおよび2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールなどの2,2−ジアルキル置換1,3−プロパンジオール類(以下、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール類と記載することがある。ただし、アルキル基は炭素数15以下のアルキル基である)、2,2,4,4−テトラメチル−1,5−ペンタンジオールおよび2,2,9,9−テトラメチル−1,10−デカンジオールなどのテトラアルキル置換アルキレンジオール類、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の環状基を含むジヒドロキシ化合物類、2,2−ジフェニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジビニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチニル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジオール、ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)チオエーテル並びに2,2,4,4−テトラメチル−3−シアノ−1,5−ペンタンジオール、等の分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物類、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、イソソルビド、スピログリコール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノールおよび4,4’−イソプロピリデンビス(2,2’−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)等の環状基が分子内にあるジヒドロキシ化合物類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、等の芳香環を有するジヒドロキシ化合物、ジエタノールアミンおよびN−メチルージエタノールアミン等の含窒素ジヒドロキシ化合物類並びにビス(ヒドロキシエチル)スルヒド等の含硫黄ジヒドロキシ化合物類、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類、等を挙げることができる。
中でも、本発明のポリカーボネートジオールを用いて得られるポリウレタンの耐光性の観点からは、下記式(3)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物および脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
HO−R−OH (3)
(式中、Rは、炭素数2〜60の直鎖または分岐の2価の炭化水素基を表し、環状構造および/またはエーテル性酸素原子を有していてもよい)
上記式(3)中のRの炭素数は得られるポリカーボネートジオールの融点、ガラス転移温度、耐溶剤性の観点から2〜20であることが好ましく、特に工業的な入手の容易さから2〜12、さらには3〜10であることが好ましい。
このようなジヒドロキシ化合物のうち、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましく、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましいが、色調および取扱の容易さ、ポリカーボネートジオールの合成の容易さの観点からは、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
エーテル性酸素原子を有するジヒドロキシ化合物としては、ポリ(オキシアルキレン)ジオールが好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびポリオキシテトラメチレングリコールが好ましく、中でも工業原料として容易にかつ安価に入手可能なジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシテトラエチレングリコールが特に好ましい。
ポリオキシテトラメチレングリコールとしては、取扱の容易さ、ポリカーボネートジオールの合成の容易さの観点からは数平均分子量100以上1000以下のポリオキシテトラメチレングリコールが好ましく、中でも数平均分子量150以上700以下のポリオキシテトラメチレングリコールが特に好ましい。
ここで、数平均分子量とはポリ(オキシアルキレン)ジオールにおいては末端基濃度から算出される分子量を意味し、ポリ(オキシアルキレン)ジオールの水酸基価([OHV])から算出することができる。
これらのジヒドロキシ化合物は、得られるポリカーボネートジオールの要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、複数組み合わせて共重合ポリカーボネートジオールとすることが好ましい。共重合ポリカーボネートジオールは一般的に結晶化が阻害されており、ホモのポリカーボネートジオールに比べて流動性が高く、ポリウレタンに加工する場合の操作性に優れるだけでなく、ポリウレタンに柔軟性や風合いを付与することができる。
共重合の組成比は、例えば2種のジヒドロキシ化合物を使用する場合、全ジヒドロキシ化合物に対して、各々のジヒドロキシ化合物を5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上使用することが望ましい。
通常、分子構造の異なったジヒドロキシ化合物を共重合すると反応性の違いにより重合反応が不均一になったり、重合を阻害したりする場合があるが、後述の特定のエステル交換触媒を用いる本発明によれば、容易に共重合ポリカーボネートジオールを得ることができる。特に、水酸基のαまたはβ位に置換基を有するジヒドロキシ化合物を用いる場合には、従来の方法では立体障害により重合が阻害される傾向があったが、後述の特定のエステル交換触媒を用いる本発明によれば容易に共重合ポリカーボネートジオールが得られることから、本発明の効果を有効に得ることができる。
<1−1−2.炭酸ジエステル>
本発明のポリカーボネートジオールの製造原料として使用可能な炭酸ジエステルとしては、本発明の効果を失わない限り限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。このうちジアリールカーボネートを使用すると速やかに反応が進行するという利点がある。しかし、その一方で、ジアリールカーボネートを原料とすると沸点の高いフェノール類が副生し、副生したフェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタン化の際の重合阻害因子となり得る上、刺激性物質でもあり、着色原因物質ともなるという不具合が生じるおそれもある。この観点から、本発明のポリカーボネートジオール中のフェノール類の残留量は、より少ない方が好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールの製造に用いることができる炭酸ジエステルのうち、ジアルキルカーボネートの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等が挙げられる。
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジm−クレジルカーボネート等が挙げられる。
アルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、2,4−ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でもジアリールカーボネートは、前述の通りジアルキルカーボネートに比較して反応性に優れるため、カーボネート源として用いると、反応性の低いジヒドロキシ化合物でも温和な条件で反応が進行するようになるため好ましい。中でも工業原料として容易にかつ安価に入手可能なジフェニルカーボネートがより好ましい。
ジアルキルカーボネートとしては、工業原料として容易にかつ安価に入手可能であり、かつ副生するアルコールが低沸点で除去しやすいジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが好ましい。
一方、アルキレンカーボネートは、ジアルキルカーボネートやジアリールカーボネートのようにポリカーボネートジオール分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基となることはなく、ポリカーボネートジオール分子鎖の両末端が水酸基であるヒドロキシアルキレン基となり好ましい。中でも工業原料として容易にかつ安価に入手可能なエチレンカーボネートがより好ましい。
特定のエステル交換触媒を用いる本発明によれば、比較的反応性が低いジアルキルカーボネートやアルキレンカーボネートをカーボネート源として用いる場合にも、反応温度を過度に上げることなく良好に重合反応が進行することから、本発明の発明の効果を有効に得ることができる。
<1−1−3.原料モノマーの使用割合>
本発明のポリカーボネートジオールの製造法において、炭酸ジエステルの使用量は、ポリカーボネートジオールの目的分子量により適宜変更する必要があり、特に限定されないが、通常ジヒドロキシ化合物類の合計1モルに対するモル比で下限が好ましくは0.50、より好ましくは0.70、さらに好ましくは0.80であり、上限は通常1.20、好ましくは1.15、より好ましくは1.10である。炭酸ジエステルの使用量が上記上限超過では得られるポリカーボネートジオールの末端基が水酸基でないものの割合が増加する、または、分子量が所定の範囲とならず本発明のポリカーボネートジオールを製造できない場合があり、前記下限未満では所定の分子量まで重合が進行しない場合がある。
<1−1−4.原料モノマーの精製等>
ポリカーボネートジオールの製造原料として用いるジヒドロキシ化合物および/または炭酸ジエステル中に塩化物イオンや臭化物イオンなどのハロゲン成分が含有されると、ポリカーボネート化反応の際、さらには得られたポリカーボネートジオールをポリウレタン化する際の反応に影響を与えたり、着色の原因となる場合があるため、その含有量は少ないほうが好ましい。通常、本発明で用いるジヒドロキシ化合物および/または炭酸ジエステル中のハロゲン成分の含有量の上限は、これらの重量に対してハロゲン重量として10ppm、好ましくは5ppm、より好ましくは1ppmである。
酸化等により劣化したり、あるいは上記不純物を含むジヒドロキシ化合物および/または炭酸ジエステルは、蒸留等により精製することができる。
また、蒸留後再び酸化劣化するのを防ぐためには安定剤を添加することも有効である。具体的な安定剤としては通常一般に有機化合物の酸化防止剤として使用されているものであれば制限なく使用することが可能であり、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(住友化学製、商品名:Smiizer(登録商標)GS)などのフェノール系安定化剤、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(住友化学製、商品名Smi1izer(登録商標)GP)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系安定化剤が例として挙げられる。
<1−2.エステル交換触媒>
<1−2−1.触媒組成物(1),(2)>
本発明の方法でポリカーボネートジオールを製造する場合には、亜鉛および長周期型周期表における第2族(以下、単に「2族」と表記することがある。)の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(M)と下記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む組成物(以下「触媒組成物(1)」と称することがある。)或いは下記式(2)で表される少なくとも1種の塩およびそれらを前駆体とする組成物(以下「触媒組成物(2)」と称し、触媒組成物(1)と触媒組成物(2)を「本発明の触媒」と称することがある。)をエステル交換触媒(以下、単に「触媒」と称することがある。)として存在させる。
Figure 2020125467
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表し、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい。
は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基またはハロゲン原子を表し、該炭化水素基はハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい。
Mは亜鉛または長周期型周期表第2族の金属を表し、n=2である。)
亜鉛または2族金属化合物の安定に存在する形態としては、通常、前記式(2)で表される塩の形態が挙げられ、従って、触媒組成物(2)を用いることが有効であるが、塩での入手が困難な場合や亜鉛または2族金属と前記式(1)で表される化合物との組成比を任意に調節したい場合には、当該金属化合物と式(1)で表される構造を有する化合物との触媒組成物(1)を用いてもよい。
また、触媒組成物(1)と触媒組成物(2)とを併用してもよい。
触媒組成物(2)を調製する方法としては、例えば下式(4)に示すように、金属のアセチルアセトン塩の合成法と同様の手法を用いて、塩基の存在下で金属のハロゲン化塩とアセチルアセトン類縁体とを作用させることにより触媒組成物(2)を調製する方法や、下式(5)に示すように、金属のアルコキシドとアセチルアセトン類縁体との交換により触媒組成物(2)を調製する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 2020125467
(上記式(4),(5)中、R、R、R、Mおよびnは、前記式(2)におけると定義であり、Rは任意の炭化水素基である。)
触媒組成物(1),(2)は、予め調製したものを原料モノマーとしてのジヒドロキシ化合物および炭酸ジエスエルと混合してもよく、各成分をそれぞれ任意の順序で原料モノマーと混合してもよい。
また、これらの触媒組成物(1),(2)と共に、補助的に遷移金属化合物や、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。
上記式(1)および式(2)において、RおよびRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜12の1価の炭化水素基であることが好ましく、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜7の1価の炭化水素基であることが、触媒組成物中の金属(M)との相互作用のしやすさや触媒組成物としての溶解性、熱安定性および低着色性の観点からより好ましい。Rはハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜12の1価の炭化水素基またはハロゲン原子であることが好ましく、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜7の1価の炭化水素基またはハロゲン原子であることが、触媒組成物中の金属(M)との相互作用のしやすさや有機溶媒および原料モノマーに対する溶解性、酸塩基の強度および低着色性等の観点からより好ましい。また、R〜Rが上記好適な官能基であると、得られるポリカーボネートへの溶解性も高く、低着色であることから、濁りがなく、低着色なポリカーボネートジオールが得られる。
,Rとしては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基等が挙げられ、これらのうち、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基が好ましい。なお、RとRとは同一でも異なるものであってもよいが、合成の容易さ、入手の容易さからは、同一であることが好ましい。
また、Rとしては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、これらのうち、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
亜鉛および2族金属から選ばれる金属(M)としては、特に亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウムが反応性の観点から好ましく、亜鉛、マグネシウムがより好ましく、マグネシウムが最も好ましい。
触媒組成物(1)で表される化合物と金属(M)との組成比は、モル比で、通常下限は0.1以上であり、0.25以上が好ましく、より好ましくは0.5以上である。一方、通常上限は50以下であり、10以下が好ましく、より好ましくは5以下である。
触媒組成物(1)および/または触媒組成物(2)の使用量は、通常、原料モノマーとして用いる全ジヒドロキシ化合物1mol当たりの金属(M)の量として、1〜500μmolであることが好ましく、より好ましくは5〜200μmol、更に好ましくは10〜100μmol、特に好ましくは15〜50μmolである。
触媒の使用量が少なすぎると、十分な重合活性が得られず重合反応の進行が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネートジオールが得られにくく、生産効率が低下するだけでなく、原料モノマーが重合反応の間、未反応のまま系中に存在する時間が長くなるため、色調の悪化を招く場合がある。また、副生するモノヒドロキシ化合物とともに留出するモノマー量が増加し、結果的に原料原単位の悪化や、その回収のため余分なエネルギーが必要となる可能性があり、更には、複数のジヒドロキシ化合物を用いた共重合の場合には、原料として用いたモノマーの組成比と製品ポリカーボネートジオール中の構成モノマー単位の組成比が変わってしまう原因となることがある。
一方、触媒の使用量が多すぎると、上記のような未反応モノマーの留出は改善される方向にはなるが、その一方で得られるポリカーボネートジオールの色調や透明性、耐光性、熱安定性等の悪化を招く可能性があるだけでなく、ポリウレタン化反応の際に異常反応を引き起こすことがある。
触媒は、重合反応槽に直接添加してもよいし、予めジヒドロキシ化合物に添加したり、炭酸ジエステルに添加したりすることもできる。また、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを予め混合する原料調整槽に添加し、その後、重合反応槽に存在させる方法を取ってもよいし、原料反応槽に原料が供給される配管内で添加しても良い。何れにしても、ジヒドロキシ化合物が固体である場合には、50℃以上の温度で溶融状態にした後、添加することが、触媒とジヒドロキシ化合物の均一性が増して重合反応が安定するため好ましい。
触媒は、通常揮発せずポリカーボネートジオール中に残存するが、過度に多くの触媒が残存するとポリウレタン化反応の際に反応の制御が困難となり、ポリウレタン化反応を想定以上に促進したり、異常反応を引き起こしたり、色調や透明性を悪化させたりする場合があるため、その残存量は、ポリカーボネートジオールに対する金属(M)の重量割合として、200ppm以下であることが必要で、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。一方、触媒が少ないと上記のような不具合を招くことがあるため、その残存量は1ppm以上であることが必要で、好ましくは2ppm以上、特に好ましくは3ppm以上である。
<1−2−2.他のエステル交換触媒>
本発明のおいては、上記の触媒組成物(1)および/または触媒組成物(2)と共に、補助的に遷移金属化合物や、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を補助触媒として併用することも可能である。
遷移金属化合物としては、例えばテトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどのチタンアルコキシド;四塩化チタンなどのチタンのハロゲン化物;塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシドなどのスズ化合物;ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシドなどのジルコニウム化合物;酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、塩化鉛(IV)等の鉛化合物等が挙げられる。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(エチルヘキシル)ホスフィン等の三級ホスフィン類、ジエチルホスフィン、ジ−n−プロピルホスフィン、ジイソプロピルホスフィン、ジ−n−ブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、ジブチルホスフィン、ジ(エチルヘキシル)ホスフィン等の二級ホスフィン類および四級ホスホニウム塩、リン酸、亜リン酸などの無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジ(エチルヘキシル)、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン酸エステル等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
これらの補助触媒は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの補助触媒を用いる場合、その使用量は触媒組成物中の金属(M)に対して上限としてはモル比で100倍以下、特に10倍以下とすることが好ましい。下限としては0.01倍以上、特に0.1倍以上とすることが好ましい。これらの補助触媒を併用することで触媒活性および選択性を向上させるあるいは原料中の不純物や反応副生物による触媒活性の低下を抑制するといった効果が奏される場合があるが、その使用量が多過ぎると得られるポリカーボネートジオールの色調や透明性、耐光性、熱安定性等の悪化を招く可能性があるだけでなく、ポリウレタン化反応の際に異常反応を引き起こすことがであり、好ましくない。少なすぎると、その効果が十分に得られないことがある。
<1−3.ポリカーボネートジオールの製造方法>
本発明においては、前述のジヒドロキシ化合物の1種または複数種と前述の炭酸ジエステルの1種または2種以上を、前述のエステル交換触媒の存在下にエステル交換させることによりポリカーボネートジオールを製造する。
<1−3−1.反応条件等>
反応原料の仕込み方法は、特に制限はなく、1種または複数種のジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと触媒の全量を同時に仕込み反応に供する方法や、炭酸ジエステルが固体の場合まず炭酸ジエステルを仕込んで加温、溶融させておき後からジヒドロキシ化合物触媒を添加する方法、逆にジヒドロキシ化合物を先に仕込んでおいて溶融させ、ここへ炭酸ジエステルと触媒を投入する方法、など自由にその方法は選択できる。得られるポリカーボネートジオールの分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合を低減するために、使用するジヒドロキシ化合物の一部を反応の最後に添加する方法を採用することも可能である。
エステル交換反応の際の反応温度は、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用することができる。その温度は特に限定されないが、下限は通常70℃、好ましくは100℃、より好ましくは130℃である。また反応温度の上限は、通常250℃、好ましくは200℃、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは170℃である。反応温度が前記下限を下回るとエステル交換反応が実用的な速度では進行しない場合がある。また、反応温度が前記上限超過では得られるポリカーボネートジオールが着色したり、エーテル構造が生成したり、濁度が悪化するなどの品質上の問題が生じる場合がある。
反応は常圧で行なうこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であり、生成するモノヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物を系外に留去することで反応を生成系に偏らせることができる。従って、通常、反応後半には減圧条件を採用してモノヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物を留去しながら反応することが好ましい。あるいは反応の途中から徐々に圧力を下げて生成するモノヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物を留去しながら反応させていくことも可能である。反応初期に圧力を下げすぎると、低沸点未反応モノマーの揮発を助長して、所定の分子量のポリカーボネートジオールが得られなかったり、共重合の場合には所定の共重合組成比のポリカーボネートジオールが得られなかったりすることがある。
一方、反応の終期において減圧度を高めて反応を行うと、副生したフェノール類、アルコール類およびジオール類等のモノヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル等の残存モノマー、さらには濁りの原因となる可能性のある環状カーボネート(環状オリゴマー)などを留去することができるので好ましい。
この際の反応終了時の反応圧力は、特に限定はされないが、通常上限が10kPa、好ましくは5kPa、より好ましくは1kPaである。これら軽沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを少量通じながら該反応を行うこともできる。
エステル交換反応の際に沸点が低い炭酸ジエステルやジヒドロキシ化合物を使用する場合は、反応初期は炭酸ジエステルやジヒドロキシ化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させる、という方法も採用可能である。この場合、反応初期に未反応の炭酸ジエステルやジヒドロキシ化合物の留去を防ぐことができるので好ましい。さらにこれら反応初期における原料の留去を防ぐ意味で反応器に還流管をつけて、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物を還流させながら、副生したモノヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物を留去させエステル交換反応を行うことも可能である。この場合、仕込んだ原料モノマーが失われず試剤の量比を正確に合わせることができるので好ましい。
<1−3−2.重合反応器>
重合反応(重縮合反応)は、バッチ式でも連続式でも行うことができるが、製品の分子量等の品質の安定性からは連続式が優れている。使用する装置は、槽型、管型および塔型のいずれの形式であってもよく、各種の撹拌翼を具備した公知の重合槽等を使用することができる。装置昇温中の雰囲気は特に制限はないが、製品の品質の観点から、窒素ガス等の不活性ガス中、常圧または減圧下で行われるのが好ましい。
<1−3−3.反応時間>
本発明の方法でポリカーボネートジオールを得るためのエステル交換反応(重合反応または重縮合反応)に必要な時間は、使用するジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル、触媒の種類や使用量により大きく異なるので一概に規定することは出来ないが、通常所定の分子量に達するのに必要な反応時間は50時間以下、好ましくは20時間以下、さらに好ましくは10時間以下である。
前述の如く、エステル交換反応の際に触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートジオールには触媒が残存し、金属触媒の残存で、ポリウレタン化反応を行う際に反応の制御が出来なくなる場合がある。この残存触媒の影響を抑制するために、使用された触媒とほぼ等モルの触媒失活剤、例えば酸性あるいは分解して酸性化合物になるリン系、イオウ系等の化合物を添加してもよい。さらには添加後、後述のように加熱処理すると、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。また触媒失活剤の添加により、得られたポリカーボネートジオール組成物の高温、長時間の貯蔵時や取り扱い時に、ポリカーボネートジオールおよび残存触媒の末端構造や骨格が変化することによっておこる着色や物性変化を抑制することができる。
エステル交換触媒の不活性化に使用される化合物(以下、触媒失活剤と称することがある)としては、例えば、リン酸、亜リン酸などの無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記触媒失活剤の使用量は、特に限定はされないが、前述したように、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルであればよく、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.8モル、より好ましくは1.0モルである。これより少ない量の触媒失活剤を使用した場合は、前記反応生成物中のエステル交換触媒の失活が十分でなく、得られたポリカーボネートジオールを例えばポリウレタン製造用原料として使用する時、該ポリカーボネートジオールのイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができない場合がある。また、この範囲を超える触媒失活剤を使用すると得られるポリカーボネートジオールが着色してしまう可能性がある。
触媒失活剤を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行うことができるが、加温処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、特に限定はされないが、上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃、さらに好ましくは100℃であり、下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは70℃である。これより低い温度の場合は、エステル交換触媒の失活に時間がかかり効率的でなく、また失活の程度も不十分な場合がある。一方、150℃を超える温度では、得られたポリカーボネートジオールが着色することがある。
触媒失活剤と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常1〜5時間である。
<1−3−4.精製>
重合反応後は、ポリカーボネートジオール中の末端構造がアルキルオキシ基である不純物、アリールオキシ基である不純物、フェノール類、アルコール類およびジオール類等のモノヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物、ジヒドロキシ化合物や炭酸ジエステル、副生する軽沸の環状カーボネート、さらには添加した触媒などを除去する目的で精製を行うことができる。その際の精製は軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用できる。蒸留の具体的な方法としては減圧蒸留、水蒸気蒸留、薄膜蒸留など特にその形態に制限はないが、中でも薄膜蒸留が効果的である。また、水溶性の不純物を除くために水、アルカリ性水、酸性水、キレート剤溶解溶液などで洗浄してもよい。その場合、水に溶解させる化合物は任意に選択できる。
薄膜蒸留条件としては特に制限はないが、薄膜蒸留時の温度は、上限が250℃であることが好ましく、200℃であることが好ましい。また、下限が120℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。
薄膜蒸留時の温度の下限を上記の値とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分となる。また、上限を250℃とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
薄膜蒸留時の圧力は、上限が500Paであることが好ましく、150Paであることがより好ましく、50Paであることが更に好ましい。薄膜蒸留時の圧力を上記上限値以下とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分に得られる。
また、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度は、上限が250℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。また、下限が80℃であることが好ましく、120℃であることがより好ましい。
薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度を上記下限以上とすることにより、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの流動性が低下するのを防ぐことができる。一方、上記上限以下とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
<1−4.ポリカーボネートジオールの物性>
本発明のポリカーボネートジオールの製造法により製造される本発明のポリカーボネートジオールの好適物性について以下に説明する。
<1−4−1.分子量・分子量分布>
本発明のポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)の下限は250であり、好ましくは500、より好ましくは700、さらに好ましくは900である。一方、上限は10000であり、好ましくは5000、さらに好ましくは3000、特に好ましくは2000である。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が上記下限未満では、ポリウレタンとした際に柔軟性等が損なわれる場合がある。一方上記上限超過ではポリカーボネートジオールの粘度が上がり、ポリウレタン化の際のハンドリングに支障が出る可能性がある。
ここで、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、後掲の実施例に示される通り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。
本発明のポリカーボネートジオールの分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、下限は通常1.5であり、好ましくは1.7であり、より好ましくは2.0である。上限は通常3.5であり、好ましくは3.0である。
分子量分布が上記範囲を超える場合、このポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンの物性が、低温で硬くなる、伸びが悪くなる等、悪化する傾向があり、分子量分布が上記範囲未満のポリカーボネートジオールを製造しようとすると、オリゴマーを除くなどの高度な精製操作が必要になる場合がある。
ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量であり、通常、GPCの測定で求めることができる。
<1−4−2.分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合・水酸基価>
本発明のポリカーボネートジオールは基本的にポリマーの末端構造は水酸基である。しかしながら、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応で得られるポリカーボネートジオール生成物中には、不純物として一部ポリマー末端が水酸基ではない構造のものが存在する場合がある。その構造の具体例としては、分子鎖末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基のものであり、多くは炭酸ジエステル由来の構造である。
例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用した場合はアリールオキシ基としてフェノキシ基(PhO−)、ジメチルカーボネートを使用した場合はアルキルオキシ基としてメトキシ基(MeO−)、ジエチルカーボネートを使用した場合はエトキシ基(EtO−)、エチレンカーボネートを使用した場合はヒドロキシエトキシ基(HOCHCHO−)が末端基として残存する場合がある(ここで、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す)。
本発明において製造されたポリカーボネートジオール中に含まれる分子鎖末端がアルキルオキシ基ないしアリールオキシ基となっている構造の割合は、その末端基の数として全末端数の5モル%以下、特に3モル%以下、とりわけ1モル%以下であることが好ましい。この分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合の下限は特に制限はなく、通常0.01モル%、好ましくは0.001モル%、最も好ましくは0モル%である。アルキルオキシないしアリールオキシ末端基の割合が大きいとポリウレタン化反応を行なう際に重合度が上がらないなどの問題が生じる場合がある。
本発明のポリカーボネートジオールは、上述のように分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合が5%以下で、分子鎖の両末端基は基本的には水酸基であり、ポリウレタン化反応の際はこの水酸基がイソシアネートと反応できる構造となっていることが好ましい。特にイソシアネートとの反応性の観点から、分子鎖の末端が1級または2級の水酸基である数の割合が95%以上であることが好ましく、より分子量が大きく強度が高いポリウレタンを合成するためには1級の水酸基である割合が95%以上であることが好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールの水酸基価は、特に限定されないが下限は通常10mg−KOH/g、好ましくは20mg−KOH/g、より好ましくは35mg−KOH/g、更に好ましくは80mg−KOH/gである。また、上限は通常230mg−KOH/g、好ましくは160mg−KOH/g、より好ましくは140mg−KOH/gである。水酸基価が上記下限未満では、粘度が高くなりすぎポリウレタン化の際のハンドリングが困難となる場合があり、上記上限超過ではポリウレタンとした時に強度や硬度が不足する場合がある。
ポリカーボネートジオールの水酸基価の測定方法は後掲の実施例の項に記載の通りである。
<1−4−3.エーテル構造>
本発明のポリカーボネートジオールは、カーボネート基によりジヒドロキシ化合物が重合した構造が基本となっている。しかしながら、製造方法によっては、一部ジヒドロキシ化合物の脱水反応によりエーテル構造となったものが混入する場合があり、その存在量が多くなると耐候性や耐熱性が低下することがあるので、エーテル構造の割合が過度に多くならないように製造することが望ましい。ポリカーボネートジオール中のエーテル構造を低減して、耐候性、耐熱性等の特性を確保する点において、本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖中に含まれるエーテル結合とカーボネート結合の比は、特に限定されないが、通常モル比で2/98以下、好ましくは1/99以下、より好ましくは0.5/99.5以下である。これらの値は、アルカリ加水分解して液体クロマトグラフィーを測定したり、H−NMRを測定したりすることで求めることができる。ただし、ポリカーボネートジオールおよびポリウレタンの要求特性に応じてジヒドロキシ化合物としてエーテル結合を含むポリ(オキシアルキレン)ジオールを用いる場合はこの限りではない。
<1−4−4.粘度>
本発明のポリカーボネートジオールの40℃における粘度の下限は0.1Pa・sであることが好ましく、1Pa・sであることがより好ましく、5Pa・sであることが更に好ましい。また、上限は500Pa・sであることが好ましく、200Pa・sであることがより好ましく、150Pa・sであることが更に好ましく、120Pa・sであることが特に好ましく、100Pa・sであることが最も好ましい。ポリカーボネートジオールの粘度を当該範囲内とすることにより、取扱いが容易になる。
<1−4−5.APHA値>
本発明のポリカーボネートジオールの色は、ハーゼン色数(JIS K0071−1:1998に準拠)で表した場合の値(以下「APHA値」と表記する。)で50以下であることが好ましく、40以下がより好ましく、更に好ましくは30以下、特に好ましくは20以下である。APHA値が50を超えると、ポリカーボネートジオールを原料として得られるポリウレタンの色調が悪化し、商品価値を低下させたり、熱安定性が悪くなったりするおそれがある。
APHA値を50以下にするためには、ポリカーボネートジオール製造時の触媒の種類や量の選択、熱履歴、重合中および重合終了後のモノヒドロキシ化合物の濃度や未反応モノマーの濃度を総合的に制御する必要がある。また、重合中および重合終了後の遮光も効果的である。また、ポリカーボネートジオールの分子量の設定やモノマーであるジヒドロキシ化合物種の選定も重要である。特にアルコール性水酸基を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物を原料とするポリカーボネートジオールは、ポリウレタンに加工した場合に、柔軟性や耐水性、耐光性等の種々の優れた性能を示すが、芳香族ジヒドロキシ化合物を原料とした場合より熱履歴や触媒による着色が著しくなる傾向にあり、APHA値を60以下にするのは容易ではない。
<1−4−6.濁度>
本発明のポリカーボネートジオールの濁度は、三菱ケミカル株式会社製積分球式濁度計PT−200にて、10mmのセルにポリカーボネートジオールの50%塩化メチレン溶液を入れ、予め装置に設定されているポリスチレン検量線を使用して測定された値として、2.0ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0ppm以下、特に好ましくは0.5ppm以下である。濁度が2.0ppmより大きいと、ポリカーボネートジオールを原料として得られるポリウレタンの透明性悪化を招いて商品価値を低下させたり、機械的物性を低下させたりすることがある。また濁度が2.0ppmより大きいとポリカーボネートジオールを目視で観察した際に濁りが見られる。
この濁りは主に、触媒成分の失活・析出、溶解度の低い環状オリゴマー等の生成が原因と考えられ、濁度を2.0ppm以下にするためには、ポリカーボネートジオール製造時の触媒の種類や量の選択、熱履歴、重合中および重合終了後のモノヒドロキシ化合物の濃度や未反応モノマーの濃度を総合的に制御する必要がある。例えば、触媒自体のポリカーボネートジオールへの溶解度が低いと触媒の析出が起こり易くなり、濃度が高いと析出を助長する。一方、溶解度に劣る環状オリゴマーの生成を抑制するためには、モノマーであるジヒドロキシ化合物の選択や組合せも重要である。例えば、ホモポリマーの場合、環状オリゴマーが生成しやすい傾向にあるが、共重合にすることにより、安定な環状構造を取り難くなり、濁度が下がる傾向にある。また、ポリカーボネートジオール製造時の温度が高いと、熱力学的に環状オリゴマーが生成し易くなるため、重合温度を低下させることは有効である。但し、低下させすぎると生産性に支障が出たり、過度に時間がかかって、色調の悪化を招いたり、濁度の悪化を招いたりするので好ましくない。
<1−4−7.フェノール類>
原料としてジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸ジエステルを使用した場合、ポリカーボネートジオール製造中にフェノール類が副生する。フェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタン化の際の重合阻害因子となり得る上、フェノール類によって形成されたウレタン結合は、その結合力が弱いために、その後の工程等で熱によって解離してしまい、イソシアネートやフェノール類を再生して不具合を起こすことがあり、また、刺激性物質でもあるため、本発明のポリカーボネートジオール中のフェノール類の残留量は、より少ない方が好ましい。具体的にはポリカーボネートジオールに対する重量比として通常1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、中でも100ppm以下であることが好ましい。ポリカーボネートジオール中のフェノール類を低減するためには、前述の通りポリカーボネートジオールの重合反応時に絶対圧力として1kPa以下の高真空にしたり、ポリカーボネートジオールの合成後に薄膜蒸留を行ったりすることが有効である。
<1−4−8.炭酸ジエステル>
本発明のポリカーボネートジオール中には、製造時の原料として使用した炭酸ジエステルが残存することがある。本発明のポリカーボネートジオール中の炭酸ジエステルの残存量は限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、通常上限が5重量%、好ましくは3重量%、さらに好ましくは1重量%である。ポリカーボネートジオールの炭酸ジエステル含有量が多すぎるとポリウレタン化の際の反応を阻害する場合がある。一方、その下限は特に制限はなく0.1重量%、好ましくは0.01重量%、さらに好ましくは0重量%である。
<1−4−9.ジヒドロキシ化合物>
本発明のポリカーボネートジオールには、製造時に使用したジヒドロキシ化合物が残存する場合がある。本発明のポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量は、限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、通常1重量%以下であり、好ましくは0.1重量%以下であり、より好ましくは0.05重量%以下である。ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量が多いと、ポリウレタンとした際のソフトセグメント部位の分子長が不足し、所望の物性が得られない場合がある。
<1−4−10.環状カーボネート>
ポリカーボネートジオール中には、製造の際に副生した環状のカーボネート(環状オリゴマー)が含まれることがある。例えばジヒドロキシ化合物として1,3−プロパンジオールを用いた場合、1,3−ジオキサン−2−オンもしくはさらにこれらが2分子ないしそれ以上で環状カーボネートとなったものなどが生成してポリカーボネートジオール中に含まれる場合がある。また、ジヒドロキシ化合物として、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)を用いた場合は、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン(以下、これをネオペンチルカーボネートと略記することがある)、またはさらにこれらが2分子ないしそれ以上で環状となったものなどが環状化合物として生成する場合がある。これらの化合物は、ポリウレタン化反応においては副反応をもたらす可能性があり、また前述のように濁りの原因となるため、ポリカーボネートジオールの重合反応時に絶対圧力として1kPa以下の高真空にしたり、ポリカーボネートジオールの合成後に薄膜蒸留を行ったりして出来る限り除去しておくことが望ましい。本発明のポリカーボネートジオール中に含まれるこれら環状カーボネートの含有量は、限定されるものではないが、通常3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。
[2.ポリウレタン]
上述の本発明の一形態であるポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造することができる。また、上述の本発明の一形態であるポリカーボネートジオール含有組成物を用いてポリウレタンを製造することができる。本発明により製造されたポリカーボネートジオール又はポリカーボネートジオール含有組成物を用いて製造されたポリウレタンポリウレタンは、本発明の別の形態である。
ポリカーボネートジオール又はポリカーボネートジオール組成物を用いてポリウレタンを製造する方法は、通常ポリウレタンを製造する公知のポリウレタン化反応条件が用いられる。
例えば、ポリカーボネートジオールとポリイソシアネート及び鎖延長剤を常温から200℃の範囲で反応させることにより、ポリウレタンを製造することができる。
また、ポリカーボネートジオールと過剰のポリイソシアネートとをまず反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤を用いて重合度を挙げて、ポリウレタンを製造することができる。
<2−1.ポリイソシアネート>
ポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造する際に使用されるポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及びダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、及びm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが好ましい。
<2−2.鎖延長剤>
ポリウレタンを製造する際に用いられる鎖延長剤は、後述するイソシアネート基を有するプレポリマーを製造する場合において、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、通常、ポリオール及びポリアミン等を挙げることができる。
その具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、1,4−ジメチロールヘキサン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、1,4−ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’−メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等のヒドロキシアミン類;エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’−ジアミノピペラジン等のポリアミン類;及び水等を挙げることができる。
これらの鎖延長剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンが好ましい。
また、後述する水酸基を有するプレポリマーを製造する場合の鎖延長剤とは、イソシアネート基を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、具体的には<2−1.ポリイソシアネート>で記載したような化合物が挙げられる。
<2−3.鎖停止剤>
ポリウレタンを製造する際には、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。
これらの鎖停止剤としては、一個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類、一個のアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルフォリン等の脂肪族モノアミン類が例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<2−4.触媒>
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応において、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒又は酢酸、リン酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の酸系触媒、トリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジオクチルチンジネオデカネートなどのスズ系の化合物、さらにはチタン系化合物などの有機金属塩などに代表される公知のウレタン重合触媒を用いる事もできる。ウレタン重合触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<2−5.本発明の一形態であるポリカーボネートジオール以外のポリオール>
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールと、必要に応じてそれ以外のポリオール(以下、その他のポリオールとも称する)を併用してもよい。
ここで、その他のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、本発明の一形態であるポリカーボネートジオール以外のポリカーボネートポリオールが挙げられる。例えば、ポリエーテルポリオールとの併用では、ポリカーボネートジオールの特徴である柔軟性を更に向上させたポリウレタンとすることができる。
本発明の一形態であるポリカーボネートジオールと、その他のポリオールとを合わせた重量に対する、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールの重量割合は70%以上が好ましく、90%以上が更に好ましい。本発明の一形態であるポリカーボネートジオールの重量割合が少ないと、本発明の特徴であるポリウレタンの強度やハンドリング性が失われる可能性がある。
<2−6.ポリカーボネートジオールの変性>
本発明において、ポリウレタンの製造には、上述の本発明の一形態であるポリカーボネートジオールを変性して使用することも出来る。ポリカーボネートジオールの変性方法としては、ポリカーボネートジオールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させてエーテル基を導入する方法や、ポリカーボネートジオールをε−カプロラクトン等の環状ラクトンやアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物並びにそれらのエステル化合物と反応させてエステル基を導入する方法がある。エーテル変性ではエチレンオキシド、プロピレンオキシド等による変性でポリカーボネートジオールの粘度が低下し、取扱い性等の理由で好ましい。特に、本発明のポリカーボネートジオールでは、エチレンオキシドやプロピレンオキシド変性することによって、ポリカーボネートジオールの結晶性が低下し、低温での柔軟性が改善すると共に、エチレンオキシド変性の場合は、エチレンオキシド変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの吸水性や透湿性が増加する為に人工皮革・合成皮革等としての性能が向上することがある。しかし、エチレンオキシドやプロピレンオキシドの付加量が多くなると、変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの機械強度、耐熱性、耐薬品性等の諸物性が低下するので、ポリカーボネートジオールに対する付加量としては、ポリカーボネートジオールの重量に対して、5〜50重量%が好適であり、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。また、エステル基を導入する方法では、ε−カプロラクトンによる変性でポリカーボネートジオールの粘度が低下し、取扱い性等の理由で好ましい。ポリカーボネートジオールに対するε−カプロラクトンの付加量としては、ポリカーボネートジオールの重量に対して、5〜50重量%が好適であり、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。ε−カプロラクトンの付加量が50重量%を超えると、変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの耐加水分解性、耐薬品性等が低下する。
<2−7.溶剤>
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応は溶剤を用いてもよい。
好ましい溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
これらの中で好ましい有機溶剤は、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、酢酸エチル、及びトルエン等である。
また、本発明の一形態であるポリカーボネートジオール、ポリジイソシアネート、及び前記の鎖延長剤が配合されたポリウレタン組成物から、水分散液のポリウレタンを製造することもできる。
<2−8.ポリウレタン製造方法>
上述の反応試剤を用いてポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる製造方法が使用できる。
その例としては、本発明の一形態であるポリカーボネートジオール、それ以外のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に混合して反応させる方法(以下、「一段法」と称する場合がある)や、まず本発明の一形態であるポリカーボネートジオール、それ以外のポリオール及びポリイソシアネートを反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、「二段法」と称する場合がある)等がある。
二段法は、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとを、予め1当量以上のポリイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する部分の両末端イソシアネート中間体を調製する工程を経るものである。このように、プレポリマーを一旦調製した後に鎖延長剤と反応させると、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすい場合があり、ソフトセグメントとハードセグメントとの相分離を確実に行う必要がある場合には有用である。
<2−9.一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、本発明の一形態であるポリカーボネートジオール、それ以外のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に仕込むことで反応を行う方法である。
一段法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとの総水酸基数と、鎖延長剤の水酸基数とアミノ基数との総計を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は、好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、更に好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。
ポリイソシアネートの使用量が多すぎると、未反応のイソシアネート基が副反応を起こし、得られるポリウレタンの粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となったり、柔軟性が損なわれたりする傾向があり、少なすぎると、ポリウレタンの分子量が十分に大きくならず、十分なポリウレタン強度が得られなくなる傾向がある。
また、鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールとその他のポリオールとの総水酸基数から、ポリイソシアネートのイソシアネート基数を引いた数を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、更に好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。鎖延長剤の使用量が多すぎると、得られるポリウレタンが溶媒に溶けにくく加工が困難になる傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンが軟らかすぎて十分な強度や硬度、弾性回復性能や弾性保持性能が得られない場合や、耐熱性が悪くなる場合がある。
<2−10.二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、主に以下の方法がある。
(a)予め本発明の一形態であるポリカーボネートジオール及びその他のポリオールと、過剰のポリイソシアネートとを、ポリイソシアネート/(本発明の一形態であるポリカーボネートジオール及びその他のポリオール)の反応当量比が1を超える量から10.0以下で反応させて、分子鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤を加えることによりポリウレタンを製造する方法。
(b)予めポリイソシアネートと、過剰のポリカーボネートジオール及びその他のポリオールとを、ポリイソシアネート/(本発明の一形態であるポリカーボネートジオール及びその他のポリオール)の反応当量比が0.1以上から1.0未満で反応させて分子鎖末端が水酸基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤として末端がイソシアネート基のポリイソシアネートを反応させてポリウレタンを製造する方法。
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
二段法によるポリウレタン製造は以下に記載の(1)〜(3)のいずれかの方法によって行うことができる。
(1) 溶媒を使用せず、まず直接ポリイソシアネートとポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま鎖延長反応に使用する。
(2) (1)の方法でプレポリマーを合成し、その後溶媒に溶解し、以降の鎖延長反応に使用する。
(3) 初めから溶媒を使用し、ポリイソシアネートとポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとを反応させ、その後鎖延長反応を行う。
(1)の方法の場合には、鎖延長反応にあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を溶解したりするなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが重要である。
二段法(a)の方法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、ポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは1.0当量を超える量、より好ましくは1.2当量、更に好ましくは1.5当量であり、上限が好ましくは10.0当量、より好ましくは5.0当量、更に好ましくは3.0当量の範囲である。
このイソシアネート使用量が多すぎると、過剰のイソシアネート基が副反応を起こして所望のポリウレタンの物性まで到達しにくい、例えば、粘度が高くなりすぎて得られるポリウレタンの柔軟性が低下したり、取扱いが悪く生産性が劣ったりする傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がらず強度や熱安定性が低くなる場合がある。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネート基の数1当量に対して、下限が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、更に好ましくは0.8当量であり、上限が好ましくは5.0当量、より好ましくは3.0当量、更に好ましくは2.0当量の範囲である。
上記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
また、二段法(b)の方法における末端が水酸基であるプレポリマーを作成する際のポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、ポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、更に好ましくは0.7当量であり、上限が好ましくは0.99当量、より好ましくは0.98当量、更に好ましくは0.97当量である。
このイソシアネート使用量が少なすぎると、続く鎖延長反応で所望の分子量を得るまでの工程が長くなり生産効率が落ちる傾向にあり、多すぎると、粘度が高くなりすぎて得られるポリウレタンの柔軟性が低下したり、取扱いが悪く生産性が劣ったりする場合がある。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに使用したポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとの総水酸基の数を1当量とした場合、プレポリマーに使用したイソシアネート基の当量を加えた総当量として、下限が好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、更に好ましくは0.9当量であり、上限が好ましくは1.0当量未満、より好ましくは0.99当量、更に好ましくは0.98当量の範囲である。
上記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
鎖延長反応は通常、0℃〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なり、特に制限はない。温度が低すぎると反応の進行が遅くなったり、原料や重合物の溶解性が低い為に製造時間が長くなることがあり、また高すぎると副反応や得られるポリウレタンの分解が起こることがある。鎖延長反応は、減圧下で脱泡しながら行ってもよい。
また、鎖延長反応には必要に応じて、触媒や安定剤等を添加することもできる。
触媒としては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
安定剤としては、例えば2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネート、N,N′−ジ−2−ナフチル−1,4−フェニレンジアミン、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施してもよい。
<2−11.水系ポリウレタンエマルション>
本発明の一形態であるポリカーボネートジオールを用いて、水系ポリウレタンエマルションを製造する事も可能である。
その場合、ポリカーボネートジオールを含むポリオールと過剰のポリイソシアネートを反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物とを混合してプレポリマーを形成し、親水性官能基の中和塩化工程、水添加による乳化工程、鎖延長反応工程を経て水系ポリウレタンエマルションとする。
ここで使用する少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物との親水性官能基とは、例えばカルボキシル基やスルホン酸基であって、アルカリ性基で中和可能な基である。また、イソシアネート反応性基とは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等の一般的にイソシアネートと反応してウレタン結合、ウレア結合を形成する基であり、これらが同一分子内に混在していてもかまわない。
少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基とを有する化合物としては、具体的には、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2−メチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、ジアミノカルボン酸類、例えば、リジン、シスチン、3,5−ジアミノカルボン酸等も挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらを実際に用いる場合には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ性化合物で中和して用いることができる。
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基とを有する化合物の使用量は、水に対する分散性能を上げるために、その下限は、ポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールとの総重量に対して、好ましくは1重量%、より好ましくは5重量%、更に好ましくは10重量%である。一方、これを多く添加しすぎるとポリカーボネートジオールの特性が維持されなくなってしまうことがあるために、その上限は好ましくは50重量%、より好ましくは40重量%、更に好ましくは30重量%である。
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、プレポリマー工程においてメチルエチルケトンやアセトン、あるいはNーメチル−2−ピロリドン等の溶媒の共存下に反応させてもよいし、無溶媒で反応させてもよい。また、溶媒を使用する場合は、水性エマルションを製造した後に蒸留によって溶媒を留去させるのが好ましい。
ポリカーボネートジオールを原料として、無溶媒で水系ポリウレタンエマルションを製造する際には、ポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量の上限は好ましくは5000、より好ましくは4500、更に好ましくは4000である。また、数平均分子量の下限は好ましくは300、より好ましくは500、更に好ましくは800である。水酸基価から求めた数平均分子量が上記上限を超える、または上記下限より小さくなると、エマルション化が困難となる場合がある。
また、水系ポリウレタンエマルションの合成、あるいは保存にあたり、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルホン酸高級アルキル、スルホン酸アルキルアリール、スルホン化ひまし油、スルホコハク酸エステルなどに代表されるアニオン性界面活性剤、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコール又はフェノール類との公知の反応生成物に代表される非イオン性界面活性剤等を併用して、乳化安定性を保持してもよい。
また、水系ポリウレタンエマルションとする際に、プレポリマーの有機溶媒溶液に、必要に応じて中和塩化工程なしに、乳化剤の存在下、水を機械的に高せん断で混合して、エマルションを製造することも出来る。
このようにして製造された水系ポリウレタンエマルションは、様々な用途に使用する事が可能である。特に、最近は環境負荷の小さな化学品原料が求められており、有機溶剤を使用しない目的としての従来品からの代替が可能である。
水系ポリウレタンエマルションの具体的な用途としては、例えば、コーティング剤、水系塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革への利用が好適である。特に本発明の一形態であるポリカーボネートジオールを用いて製造される水系ポリウレタンエマルションは、ポリカーボネートジオール中に前記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を有していることから、柔軟性がありコーティング剤等として従来のポリカーボネートジオールを使用した水系ポリウレタンエマルションに比べて有効に利用する事が可能である。
<2−12.ポリウレタン溶液、水系ポリウレタンエマルションの保存安定性>
有機溶剤および/又は水を使用し、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタン溶液および水系ポリウレタンエマルションの保存安定性は、該溶液もしくは該エマルション中のポリウレタンの濃度(以下、「固形分濃度」と称する場合がある)を1〜80重量%に調整し、特定の温度条件で保管した上で、該溶液もしくは該エマルションの変化の有無を目視などで測ることができる。例えば、前述の二段法により、本発明の一形態であるポリカーボネートジオール、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソホロンジアミンを用いて製造されるポリウレタン溶液(N,N−ジメチルホルムアミド/トルエン混合液、固形分濃度 30重量%)の場合、10℃で保管した際に、目視でポリウレタン溶液に変化が見られない期間が好ましくは1か月、よりに好ましくは3か月以上、さらに好ましくは6か月以上である。
<2−13.添加剤>
本発明の一形態であるポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンには、熱安定剤、光安定剤、着色剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着防止剤、難燃剤、老化防止剤、無機フィラー等の各種の添加剤を、ポリウレタンの特性を損なわない範囲で、添加、混合することができる。
熱安定剤として使用可能な化合物としては、燐酸、亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルぺンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体、特にヒンダードフェノール化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル系等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物等を使用することができる。
ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、「Irganox1010」(商品名:BASFジャパン株式会社製)、「Irganox1520」(商品名:BASFジャパン株式会社製)、「Irganox245」(商品名:BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
リン化合物としては、「PEP−36」、「PEP−24G」、「HP−10」(いずれも商品名:株式会社ADEKA社製)、「Irgafos 168」(商品名:BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
イオウを含む化合物の具体例としては、ジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)などのチオエーテル化合物が挙げられる。
光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられ、具体的には「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、「SANOL LS−2626」、「SANOL LS−765」(以上、三共株式会社製)等が使用可能である。
紫外線吸収剤の例としては、「TINUVIN328」、「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料などの染料;カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカなどの無機顔料;及びカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系等の有機顔料等が挙げられる。
無機フィラーの例としては、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等が挙げられる。
難燃剤の例としては、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素あるいは塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの添加剤の添加量は、ポリウレタンに対する重量比として、下限が、好ましくは0.01重量%、より好ましくは0.05重量%、更に好ましくは0.1重量%、上限は、好ましくは10重量%、より好ましくは5重量%、更に好ましくは1重量%である。添加剤の添加量が少な過ぎるとその添加効果を十分に得ることができず、多過ぎるとポリウレタン中で析出したり、濁りを発生したりする場合がある。
<2−14.ポリウレタンフィルム・ポリウレタン板>
ポリウレタンを使用してフィルムを製造する場合、そのフィルムの厚さは、下限が好ましくは10μm、より好ましくは20μm、更に好ましくは30μm、上限は好ましくは1000μm、より好ましくは500μm、更に好ましくは100μmである。
フィルムの厚さが厚すぎると、十分な透湿性が得られない傾向があり、また、薄過ぎるとピンホールを生じたり、フィルムがブロッキングしやすく取り扱いにくくなる傾向がある。
<2−15.分子量>
ポリウレタンの分子量は、その用途に応じて適宜調整され、特に制限はないが、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として5万〜50万であることが好ましく、10万〜30万であることがより好ましい。Mwが上記下限よりも小さいと十分な強度や硬度が得られない場合があり、上記上限よりも大きいと加工性などハンドリング性を損なう傾向がある。
<2−16.室温引張試験>
<2−16−1.室温引張試験における引張破断伸度・強度>
ポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度50%で測定した引張破断伸度及び破断強度が以下の範囲であることが好ましい。
破断伸度の下限は好ましくは200%、より好ましくは300%、更に好ましくは350%であり、上限は好ましくは1000%、より好ましくは800%、更に好ましくは600%である。破断伸度が上記下限未満では加工性などハンドリング性を損なう傾向があり、上記上限を超えると十分な耐溶剤性が得られない場合がある。
また、破断強度の下限は好ましくは30MPa、より好ましくは40MPa、更に好ましくは50MPaであり、上限は好ましくは200MPa、より好ましくは100MPa、更に好ましくは80MPaである。破断強度が上記下限未満では加工性などハンドリング性を損なう傾向があり、上記上限を超えると柔軟性が損なわれる場合がある。
<2−16−2.室温引張試験における100%モジュラス、300%モジュラス>
ポリウレタンは、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールに対して、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを2当量反応させ、さらにイソホロンジアミンで鎖延長反応を行い二段法でポリウレタンを得た場合、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度60%で測定した100%モジュラスの下限が好ましくは3.0MPa、より好ましくは4.0MPa、更に好ましくは5.0MPaであり、上限は好ましくは20MPa、より好ましくは10MPa、更に好ましくは8MPaである。100%モジュラスが上記下限未満では硬度が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。更に、ポリウレタンの300%モジュラスの下限は好ましくは10MPa、より好ましくは15MPa、更に好ましくは20MPaである。上限は好ましくは100MPa、より好ましくは50MPa、更に好ましくは40MPaである。300%モジュラスが上記下限未満では硬度が不足する場合がある。300%モジュラスが上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などのハンドリング性を損なったりする場合がある。
<2−17.低温引張試験における100%モジュラス、300%モジュラス>
ポリウレタンは、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールに対して4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを2当量反応させ、さらにイソホロンジアミンで鎖延長反応を行い二段法でポリウレタンを得た場合、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度−10℃で測定した100%モジュラスの下限が好ましくは5MPa、より好ましくは10MPa、更に好ましくは15MPaであり、上限は好ましくは20MPa、より好ましくは19MPa、更に好ましくは18MPaである。100%モジュラスが上記下限未満では硬度が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。
<2−18.耐溶剤性>
<2−18−1.耐オレイン性>
ポリウレタンは、例えば後述の実施例の項に記載される方法での評価において、オレイン酸に浸漬前のポリウレタン試験片の重量に対する、オレイン酸に浸漬後のポリウレタン試験片の重量の変化率(%)が、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下が更に好ましく、20%以下が特に好ましく、18%以下が最も好ましい。
この重量変化率が上記上限超過では、十分な耐オレイン酸性が得られない場合がある。
<2−18−2.耐エタノール性>
ポリウレタンは、例えば後述の実施例の項に記載される方法での評価において、エタノールに浸漬前のポリウレタン試験片の重量に対する、エタノールに浸漬後のポリウレタン試験片の重量の変化率(%)が、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下が更に好ましく、20%以下が特に好ましく、18%以下が最も好ましい。
この重量変化率が上記上限超過では、十分な耐エタノール性が得られない場合がある。
<2−18−3.耐酢酸エチル性>
ポリウレタンは、例えば後述の実施例の項に記載される方法での評価において、酢酸エチルに浸漬前のポリウレタン試験片の重量に対する、薬品に浸漬後のポリウレタン試験片の重量の変化率(%)が、150%以下が好ましく、100%以下がより好ましく、90%以下が更に好ましい。
この重量変化率が上記上限超過では、十分な耐酢酸エチル性が得られない場合がある。
<2−19.用途>
ポリウレタンは、耐溶剤性に優れ、良好な柔軟性、機械強度を有することから、フォーム、エラストマー、弾性繊維、塗料、繊維、粘着剤、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、合成皮革、コーティング剤、水系ポリウレタン塗料、活性エネルギー線硬化性重合体組成物等に広く用いることができる。
特に、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン、接着剤、弾性繊維、医療用材料、床材、塗料、コーティング剤等の用途に、本発明の一形態であるポリウレタンを用いると、耐溶剤性、柔軟性、機械強度の良好なバランスを有するため、人の皮膚に触れたり、コスメティック用薬剤や消毒用のアルコールが使われたりする部分において耐久性が高く、また柔軟性も十分で、かつ物理的な衝撃などにも強いという良好な特性を付与することができる。また、耐熱性が必要とされる自動車部材等の自動車用途や、耐候性が必要とされる屋外用途に好適に使用できる。
ポリウレタンは、熱硬化性エラストマー、注型ポリウレタンエラストマーに使用できる。その具体的用途として、圧延ロール、製紙ロール、事務機器、プレテンションロール等のロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車、運搬車等のソリッドタイヤ、キャスター等、工業製品として、コンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン、サイクロンライナー等がある。また、OA機器のベルト、紙送りロール、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラー等にも使用できる。
ポリウレタンは、また、熱可塑性エラストマーとしての用途にも適用される。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器、産業用ロボット等におけるチューブやホース類、スパイラルチューブ、消防ホース等に使用できる。また、丸ベルト、Vべルト、平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器、印刷機械等に用いられる。また、履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルト等に使用できる。さらに自動車部品としては、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品、タイヤチェーン代替品等が挙げられる。また、キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品、接着剤等に使用できる。
ポリウレタンは、溶剤系二液型塗料としての用途にも適用可能であり、楽器、仏壇、家具、化粧合板、スポーツ用品等の木材製品に適用できる。また、タールエポキシウレタンとして自動車補修用にも使用できる。
ポリウレタンは、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料、水系ウレタン塗料等の成分として使用可能であり、例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコート等に適用できる。
ポリウレタンは、また、粘着剤や接着剤として、食品包装、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材、構造部材等に適用でき、また、低温用接着剤、ホットメルトの成分としても用いることができる。
ポリウレタンは、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム、ガラス繊維サイジング等に使用可能である。
ポリウレタンは、繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工、撥水加工等に使用できる。
ポリウレタンを弾性繊維として使用する場合のその繊維化の方法は、紡糸できる方法であれば特に制限なく実施できる。例えば、一旦ペレット化した後、溶融させ、直接紡糸口金を通して紡糸する溶融紡糸方法が採用できる。ポリウレタンから弾性繊維を溶融紡糸により得る場合、紡糸温度は好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以上235℃以下である。
ポリウレタン弾性繊維はそのまま裸糸として使用したり、また、他繊維で被覆して被覆糸として使用したりすることができる。他繊維としては、ポリアミド繊維、ウール、綿、ポリエステル繊維など従来公知の繊維を挙げることができるが、なかでも本発明ではポリエステル繊維が好ましく用いられる。また、ポリウレタンを用いた弾性繊維は、染着タイプの分散染料を含有していてもよい。
ポリウレタンは、シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り、壁式PC(Precast Concrete)目地、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete)目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラント、自動車用シーラント等に使用できる。
ポリウレタンは、医療用材料としての使用が可能であり、血液適合材料として、チューブ、カテーテル、人工心臓、人工血管、人工弁等、また、使い捨て素材としてカテーテル、チューブ、バッグ、手術用手袋、人工腎臓ポッティング材料等に使用できる。
ポリウレタンは、末端を変性させることによりUV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物、光硬化型の光ファイバー被覆材組成物等の原料として用いることができる。
<2−20.ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー>
ポリカーボネートジオールを用いて、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加反応させることによりウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造することができる。その他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等を併用する場合は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリイソシアネートに、更にこれらのその他の原料化合物も付加反応させることにより製造することができる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸のように「(メタ)アクリル」と表示した場合には、アクリル及び/またはメタクリルを意味する。
また、その際の各原料化合物の仕込み比は、目的とするウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの組成と実質的に同等、ないしは同一とする。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーにおける全イソシアネート基の量と水酸基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の量は、通常、理論的に当モルである。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造する際は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオール、並びに必要に応じて用いられるその他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等のイソシアネートと反応する官能基を含む化合物の総使用量に対して、通常10モル%以上、好ましくは15モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、また、通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下とする。この割合に応じて、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量を制御することができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合が多いと、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量は小さくなる傾向となり、割合が少ないと、分子量は大きくなる傾向となる。
本発明の一形態であるポリカーボネートジオールと、その他のポリオールとの総使用量に対して、ポリカーボネートジオールの使用量を25モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。ポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値以上であると、得られる硬化物の伸度、硬度及び耐候性、耐汚染性が良好となる傾向があり好ましい。
また、本発明の一形態であるポリカーボネートジオールと、その他のポリオールとの総使用量に対して、ポリカーボネートジオールの使用量は、10重量%以上とすることが好ましく、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。ポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値以上であると、得られる組成物の粘度が低下し作業性が向上し、また得られる硬化物の機械的強度及び硬度や耐摩耗性が向上する傾向になり好ましい。
更に、鎖延長剤を用いる場合には、本発明の一形態であるポリカーボネートジオール、その他のポリオールと鎖延長剤とを合わせた化合物の総使用量に対して、ポリカーボネートポリオール及びその他のポリオールの使用量を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。前記下限値超過であると、液安定性が向上する傾向になり好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、粘度の調整を目的に溶剤を使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、反応系内の固形分100重量部に対して、300重量部未満で使用可能である。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量は、反応系の総量に対して20重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。なお、この総含有量の上限は100重量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量が20重量%以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造に際しては付加反応触媒を用いることができる。この付加反応触媒としては、例えばジブチルスズラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、及びジオクチルスズジオクトエート等が挙げられる。付加反応触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。付加反応触媒は、これらのうち、ジオクチルスズジラウレートであることが、環境適応性及び触媒活性、保存安定性の観点から好ましい。
付加反応触媒は、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常1000重量ppm、好ましくは500重量ppmであり、下限が通常10重量ppm、好ましくは30重量ppmで用いられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時に、反応系に(メタ)アクリロイル基を含む場合には、重合禁止剤を併用することができる。このような重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
重合禁止剤は、生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常3000ppm、好ましくは1000重量ppmであり、特に好ましくは500重量ppmであり、下限が通常50重量ppm、好ましくは100重量ppmで用いられる。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、反応温度は通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。また、反応温度は通常120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。反応温度が120℃以下であると、アロハナート化反応等の副反応が起き難くなるために好ましい。また、反応系に溶剤を含む場合には、反応温度はその溶剤の沸点以下であることが好ましく、(メタ)アクリレートが入っている場合には(メタ)アクリロイル基の反応防止の観点から70℃以下であることが好ましい。反応時間は通常5〜20時間程度である。
このようにして得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量は500以上が好ましく、特に1000以上であることが好ましく、10000以下が好ましく、特に5000以下、とりわけ3000以下であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記下限以上であると、得られる硬化膜の三次元加工適性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記上限以下であると該組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。これは、三次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり三次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
<2−21.ポリエステル系エラストマー>
本発明の一形態であるポリカーボネートジオールは、ポリエステル系エラストマーとして使用することができる。ポリエステル系エラストマーとは、主として芳香族ポリエステルからなるハードセグメントと、主として脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリカーボネートからなるソフトセグメントとから構成される共重合体である。ポリカーボネートジオールをソフトセグメントの構成成分として使用すると、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルを用いた場合に比べて、耐熱性、耐水性等の物性が優れる。また、公知のポリカーボネートジオールと比較しても、溶融時の流動性、つまりブロー成形、押出成形に適したメルトフローレートを有し、且つ機械強度その他の物性とのバランスに優れたポリカーボネートエステルエラストマーとなり、繊維、フィルム、シートをはじめとする各種成形材料、例えば、弾性糸及びブーツ、ギヤ、チューブ、パッキンなどの成形材料に好適に用いることができる。具体的には、耐熱性、耐久性を要求される自動車、家電部品等などのジョイントブーツや、電線被覆材等の用途に有効に適用することが可能である。
<2−22.活性エネルギー線硬化性重合体組成物>
上述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性重合体組成物(以下、単に「活性エネルギー線硬化性重合体組成物」と称する場合がある。)について説明する。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、該組成物の計算網目架橋点間分子量が500〜10,000であることが好ましい。
本明細書において、組成物の計算網目架橋点間分子量は、全組成物中の網目構造を形成する活性エネルギー線反応基(以下、「架橋点」と称する場合がある)の間の分子量の平均値を表す。この計算網目架橋点間分子量は、網目構造形成時の網目面積と相関があり、計算網目架橋点間分子量が大きいほど架橋密度が小さくなる。活性エネルギー線硬化による反応では、活性エネルギー線反応基を1個のみ有する化合物(以下、「単官能化合物」と称する場合がある)が反応した場合には線状高分子になり、一方で活性エネルギー線反応基を2個以上有する化合物(以下、「多官能化合物」と称する場合がある)が反応した場合に網目構造を形成する。
よって、ここで多官能化合物が有する活性エネルギー線反応基が架橋点であって、計算網目架橋点間分子量の算出は架橋点を有する多官能化合物が中心となり、単官能化合物は多官能化合物が有する架橋点間の分子量を伸長する効果があるものとして扱い、計算網目架橋点間分子量の算出を行う。また、計算網目架橋点間分子量の算出は、全ての活性エネルギー線反応基が同じ反応性を有し、且つ活性エネルギー線照射により全ての活性エネルギー線反応基が反応するものと仮定した上で行う。
1種の多官能化合物のみが反応するような多官能化合物単一系組成物では、多官能化合物が有する活性エネルギー線反応基1個当りの平均分子量の2倍が計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物では(1000/2)×2=1000、分子量300の3官能性化合物では(300/3)×2=200となる。
複数種の多官能化合物が反応するような多官能化合物混合系組成物では、組成物中に含まれる全活性エネルギー線反応基数に対する上記単一系の各々の計算網目架橋点間分子量の平均値が組成物の計算網目架橋点間分子量となる。例えば、分子量1,000の2官能性化合物4モルと分子量300の3官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、組成物中の全活性エネルギー線反応基数は2×4+3×4=20個となり、組成物の計算網目架橋点間分子量は{(1000/2)×8+(300/3)×12}×2/20=520となる。
組成物中に単官能化合物を含む場合は、計算上、多官能化合物の活性エネルギー線反応基(つまり架橋点)にそれぞれ当モルずつ、且つ架橋点に単官能化合物が連結して形成された分子鎖の中央に位置するように反応すると仮定すると、1個の架橋点における単官能化合物による分子鎖の伸長分は、単官能化合物の総分子量を組成物中の多官能化合物の全活性エネルギー線反応基数で除した値の半分となる。ここで、計算網目架橋点間分子量は架橋点1個当り平均分子量の2倍であると考える為、多官能化合物において算出した計算網目架橋点間分子量に対して単官能化合物により伸長された分は、単官能化合物の総分子量を組成物中の多官能化合物の全活性エネルギー線反応基数で除した値となる。
例えば、分子量100の単官能化合物40モルと分子量1,000の2官能性化合物4モルとの混合物からなる組成物では、多官能化合物の活性エネルギー線反応基数は2×4=8個となるので、計算網目架橋点間分子量中の単官能化合物による伸長分は100×40/8=500となる。すなわち組成物の計算網目架橋点間分子量は1000+500=1500となる。
上記のことから、分子量Wの単官能性化合物Mモルと、分子量Wのf官能性化合物Mモルと、分子量Wのf官能性化合物Mモルとの混合物では、組成物の計算網目架橋点間分子量は下記式で表せる。
Figure 2020125467
このようにして算出される活性エネルギー線硬化性重合体組成物の計算網目架橋点間分子量は、500以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、1,000以上であることが更に好ましく、また10,000以下であることが好ましく、8,000以下であることがより好ましく、6,000以下であることが更に好ましく、4,000以下であることが更に一層好ましく、3,000以下であることが特に好ましい。
計算網目架橋点間分子量が10,000以下であると、該組成物から得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、3次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。また、計算網目架橋点間分子量が500以上であると、得られる硬化膜の3次元加工適性が良好となり、3次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。これは、3次元加工適性と耐汚染性とが網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり、3次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、活性エネルギー線反応性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、重合開始剤、光増感剤、添加剤、及び溶剤が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線反応性成分の総量に対して、40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。なお、この含有量の上限は100重量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量が40重量%以上であると、硬化性が良好となり、硬化物とした際の機械的強度が高くなりすぎることなく、3次元加工適性が向上する傾向にあるため好ましい。
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、伸度及び造膜性の点では多い方が好ましく、また、一方、低粘度化の点では、少ない方が好ましい。このような観点から、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量は、前記活性エネルギー線反応性成分に加えて他の成分を含む全成分の総量に対して、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。なお、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量の上限値は100重量%であり、この含有量はそれ以下であることが好ましい。
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む前記活性エネルギー線反応性成分の総量の含有量は、組成物としての硬化速度及び表面硬化性に優れ、タックが残らない等の面から、該組成物全量に対して、60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが更に好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。なお、この含有量の上限は100重量%である。
前記活性エネルギー線反応性モノマーとしては、公知のいずれの活性エネルギー線反応性モノマーも用いることができる。これらの活性エネルギー線反応性モノマーは、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの親疎水性や、得られる組成物を硬化物とした際の硬化物の硬度、伸度等の物性を調整する目的等で使用される。活性エネルギー線反応性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
このような活性エネルギー線反応性モノマーとしては、例えばビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド類、及び(メタ)アクリレート類が挙げられ、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等の単官能(メタ)アクリレート;及び、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(n=5〜14)、ジ(メタ)アクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(n=3〜16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1−メチルブチレングリコール)(n=5〜20)、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエポキシジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;が挙げられる。
これらの中で、特に、塗布性を要求される用途では、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリルアミド等の、分子内に環構造を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、また、一方、得られる硬化物の機械的強度が求められる用途では、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,9−ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性モノマーの含有量は、組成物の粘度調整及び得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記活性エネルギー線硬化性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びアクリル(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記活性エネルギー線反応性オリゴマーの含有量は、得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、該組成物全量に対して、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
前記重合開始剤は、主に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射で進行する重合反応の開始効率を向上させる等の目的で用いられる。重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物である光ラジカル重合開始剤が一般的であり、公知の何れの光ラジカル重合開始剤でも使用可能である。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。更に、光ラジカル重合開始剤と光増感剤とを併用してもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
これらの中で、硬化速度が速く架橋密度を十分に上昇できる点から、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、及び、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンがより好ましい。
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、ラジカル重合性基と共にエポキシ基等のカチオン重合性基を有する化合物が含まれる場合は、重合開始剤として、上記の光ラジカル重合開始剤と共に光カチオン重合開始剤が含まれていてもよい。光カチオン重合開始剤も、公知の何れのものも使用可能である。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物におけるこれらの重合開始剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。重合開始剤の含有量が10重量部以下であると、開始剤分解物による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記光増感剤は、重合開始剤と同じ目的で用いることができる。光増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。光増感剤としては、本発明の効果が得られる範囲で公知の光増感剤のいずれをも使用することができる。このような光増感剤としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、及び4−ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記光増感剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。光増感剤の含有量が10重量部以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記添加剤は、任意であり、同様の用途に用いられる組成物に添加される種々の材料を添加剤として用いることができる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。このような添加剤としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、雲母、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、カオリン、金属酸化物、金属繊維、鉄、鉛、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料類(以下、フィラー類、炭素材料類を総称して「無機成分」と称する場合がある);酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)、耐指紋剤、表面親水化剤、帯電防止剤、滑り性付与剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類;及び、モノマー又は/及びそのオリゴマー、又は無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類;等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物において、前記添加剤の含有量は、前記の活性エネルギー線反応性成分の合計100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が10重量部以下であると、架橋密度低下による機械的強度の低下が起こり難いため好ましい。
前記溶剤は、例えば活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗膜を形成するためのコーティング方式に応じて、活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度の調整を目的に使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、本発明の効果が得られる範囲において公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、イソブタノール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、活性エネルギー線硬化性重合体組成物の固形分100重量部に対して200重量部未満で使用可能である。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物に、前述の添加剤等の任意成分を含有させる方法としては、特に限定はなく、従来公知の混合、分散方法等が挙げられる。尚、前記任意成分をより確実に分散させるためには、分散機を用いて分散処理を行うことが好ましい。具体的には、例えば、二本ロール、三本ロール、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、遊星式撹拌機、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機等で処理する方法が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度は、該組成物の用途や使用態様等に応じて適宜調節し得るが、取り扱い性、塗工性、成形性、立体造形性等の観点から、E型粘度計(ローター1°34’×R24)における25℃での粘度が、10mPa・s以上であることが好ましく、100mPa・s以上であることがより好ましく、また、一方、100,000mPa・s以下であることが好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましい。活性エネルギー線硬化性重合体組成物の粘度は、例えば前述のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの含有量や、前記の任意成分の種類や、その配合割合等によって調整することができる。
活性エネルギー線硬化性重合体組成物の塗工方法としては、バーコーター法、アプリケーター法、カーテンフローコーター法、ロールコーター法、スプレー法、グラビアコーター法、コンマコーター法、リバースロールコーター法、リップコーター法、ダイコーター法、スロットダイコーター法、エアーナイフコーター法、ディップコーター法等の公知の方法を適用可能であるが、その中でもバーコーター法及びグラビアコーター法が好ましい。
<2−23.硬化膜及び積層体>
活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、これに活性エネルギー線を照射することにより硬化膜とすることができる。
上記組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等が使用可能である。装置コストや生産性の観点から電子線又は紫外線を利用することが好ましく、光源としては、電子線照射装置、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He−Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波誘導水銀ランプ、太陽光等が適している。
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線の種類に応じて適宜に選ぶことができ、例えば、電子線照射で硬化する場合には、その照射量は1〜10Mradであることが好ましい。また、紫外線照射の場合は50〜1,000mJ/cmであることが好ましい。硬化時の雰囲気は、空気、窒素やアルゴン等の不活性ガスでもよい。また、フィルムやガラスと金属金型との間の密閉空間で照射してもよい。
硬化膜の膜厚は、目的とされる用途に応じて適宜決められるが、下限は好ましくは1μm、更に好ましくは3μm、特に好ましくは5μmである。また、上限は好ましくは200μm、更に好ましくは100μm、特に好ましくは50μmである。膜厚が1μm以上であると3次元加工後の意匠性や機能性の発現が良好となり、また、一方、200μm以下であると内部硬化性、3次元加工適性が良好であるため好ましい。また、工業上での使用の際には、硬化膜の膜厚の下限は好ましくは1μmであり、上限は好ましくは100μm、更に好ましくは50μm、特に好ましくは20μm、最も好ましくは10μmである。
基材上に、上記の硬化膜からなる層を有する積層体を得ることができる。この積層体は、硬化膜からなる層を有していれば特に限定されず、基材及び硬化膜以外の層を基材と硬化膜との間に有していてもよいし、その外側に有していてもよい。また、前記積層体は、基材や硬化膜を複数層有していてもよい。
複数層の硬化膜を有する積層体を得る方法としては、全ての層を未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法、下層を活性エネルギー線にて硬化、あるいは半硬化させた後に上層を塗布し、再度活性エネルギー線で硬化する方法、及びそれぞれの層を離型フィルムやベースフィルムに塗布した後、未硬化あるいは半硬化の状態で層同士を貼り合わせる方法等の公知の方法を適用可能であるが、層間の密着性を高める観点から、未硬化の状態で積層した後に活性エネルギー線で硬化する方法が好ましい。未硬化の状態で積層する方法としては、下層を塗布した後に上層を重ねて塗布する逐次塗布や、多重スリットから同時に2層以上の層を重ねて塗布する同時多層塗布等の公知の方法を適用可能であるが、この限りではない。
基材としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂等の種々のプラスチック、ガラス又は金属で形成された板等の種々の形状の物品が挙げられる。
硬化膜は、インキ、エタノール等の一般家庭汚染物に対する耐汚染性及び硬度に優れる膜とすることが可能であり、硬化膜を各種基材への被膜として用いた積層体は、意匠性及び表面保護性に優れたものとすることができる。
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、計算網目架橋点間分子量を考慮すれば、3次元加工時の変形に追従可能な柔軟性、破断伸度、機械的強度、耐汚染性、及び硬度を同時に兼ね備える硬化膜を与えることができる。
また、活性エネルギー線硬化性重合体組成物は、1層塗布により簡便に薄膜状の樹脂シートを製造することが可能となることが期待される。
硬化膜の破断伸度は、硬化膜を10mm幅に切断し、テンシロン引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM−III−100)を用いて、温度23℃、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張試験を行って測定した値が、50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましく、120%以上であることが特に好ましい。
上記の硬化膜及び積層体は、塗装代替用フィルムとして用いることができ、例えば内装・外装用の建装材や自動車、家電等の各種部材等に有効に適用することが可能である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
〔評価結果〕
以下の実施例および比較例における各種物性や性能等の評価方法は下記の通りである。
[触媒性能の評価]
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルからのポリカーボネートジオールの製造において、下式(A)に示すように、エステル化工程でモノマー原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルが減少し、エステル交換工程で炭酸ジエステル由来のモノヒドロキシ化合物(アルキレンカーボネートにおいてはジヒドロキシ化合物)が副生する。ポリカーボネートジオールの製造触媒としての性能の指標としては、ジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステルの減少率(転化率)と併せて、副生するモノヒドロキシ化合物(アルキレンカーボネートにおいてはジヒドロキシ化合物)の生成率が重要である。より具体的には、例えば下記式(B)に示すように、1,4−ブタンジオール(BG)とエチレンカーボネート(EC)からのポリカーボネートジオールの製造においては、BGおよびECの転化率が高いことと併せて副生するエチレングリコール(EG)の生成率が高いことがポリカーボネートジオールの生成率が高いことを表し、ポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒として優れていることの指標となる。更に、1,4−ブタンジオールを用いたポリカーボネートジオールの製造においては、望ましくないエーテル化によりテトラヒドロフラン(THF)が副生するため、THFの生成率が低いことが経済的にも効率的にポリカーボネートジオールを製造できる触媒であることの指標となる。
よって、モノマー原料であるジヒドロキシ化合物(ジオール類)および炭酸ジエステル(カーボネート類)の転化率、副生するモノヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物の生成率、更には望ましくないエーテル副生物の生成率を測定し、ポリカーボネートジオール製造用エステル交換触媒性能を評価した。
Figure 2020125467
<フェノキシド末端量、エーテル結合量、ジフェニルカーボネート量、ネオペンチルグリコール量、フェノール量、ネオペンチルカーボネート量>
生成物をCDClに溶解して400MHz H−NMR(日本電子株式会社製ECZ−400)を測定し、各成分のシグナルの積分値より算出した。またポリカーボネートジオールにおける各構造単位の比を求める際にも同様の手法を使用した。
<APHA値>
JIS K0071−1に準拠して、比色管に入れた標準液と比較して測定した。
<水酸基価>
JIS K1557−1に準拠して、アセチル化試薬を用いた滴定法、またはASTM E1899−16に準拠して、ウレタン化試薬を用いた滴定法にてポリカーボネートジオールの水酸基価を測定した。
<数平均分子量>
測定法1:アセチル化試薬を用いた滴定法、またはウレタン化試薬を用いた滴定法にて得られた水酸基価から、下記式(II)により数平均分子量を求めた。
数平均分子量=2×56.1/(水酸基価×10−3) ・・・・(II)
測定法2:ポリカーボネートジオールをCDCl3(テトラメチルシラン内部標準)に溶解し、400MHz H−NMR(日本電子株式会社製ECZ−400)を測定した。各成分のシグナル位置より、水酸基に由来するポリカーボネートジオール末端の構造単位(シグナル位置:3.5〜3.8ppm)ならびに、カーボネート基に由来するポリカーボネートジオールの繰り返しの構造単位(シグナル位置:3.5〜3.8ppm)のモル比率をそれぞれ求めた。末端の構造単位に対する繰り返し構造単位の割合からポリカーボネートジオールの数平均分子量を算出した。なお、測定法1と測定法2において、数平均分子量の値に差は見られなかった。
<触媒金属含有濃度>
ポリカーボネートジオールの反応条件で揮発や分解がない金属触媒を用いた場合、触媒金属含有濃度(ppm)は、ポリカーボネートジオールの収量(g)に対する、仕込みに用いた金属触媒量(g)の比に相当する。
また、分析手法としては、例えば下記の手法(ICP−MS)を用いることができる。
ポリカーボネートジオール0.2gをケルダールフラスコに精秤し、濃硫酸と濃硝酸を用いて湿式分解した。室温まで冷却後、純水を用いて定容した溶液をICP−MSELEMENT2(Thermo Fisher Scientific社製)で測定し、ポリカーボネートジオール中の触媒金属含有濃度(ppm)を算出した。
[ポリウレタンの評価]
<イソシアネート基濃度>
ジ−n−ブチルアミン/トルエン(重量比:2/25)混合溶液20mLをアセトン90mLで希釈した後に0.5規定の塩酸水溶液で滴定を行い、中和に要する塩酸水溶液量を測定し、ブランク値とした。その後、反応溶液を1〜2g抜出し、ジ−n−ブチルアミン/トルエンの混合溶液20mLを加えて室温で30分間撹拌した後、ブランク測定と同様にアセトン90mLで希釈し、0.5規定の塩酸水溶液で滴定して中和に要する塩酸水溶液量を測定し、残存するアミンの量を定量した。中和に要する塩酸水溶液の容量から下記の式でイソシアネート基の濃度を求めた。
イソシアネート基濃度(重量%)=A×42.02/D
A:本測定に用いた試料に含有するイソシアネート基(モル)
A=(B−C)×0.5/1000×f
B:ブランク測定に要した0.5規定の塩酸水溶液の量(mL)
C:本測定に要した0.5規定の塩酸水溶液の量(mL)
f:塩酸水溶液の力価
D:本測定に用いた試料(g)
<ポリウレタンの分子量>
ポリウレタンの分子量は、ポリウレタンの濃度が0.14重量%になるようにジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」(カラム:TskgelGMH−XL・2本)〕を用い、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定した。
<室温引張試験>
JIS K6301に準じ、幅10mm、長さ100mm、厚み約50μmの短冊状としたポリウレタン試験片を、引張試験機〔オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM−III−100」〕を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて
、温度23℃(相対湿度60%)で引張試験を実施し、試験片が100%および300%伸長した時点の応力(モジュラス、それぞれ「100%M」、「300%M」と記載する。)、並びに破断した時点の伸度(破断伸度)および応力(破断強度)を測定した。
<耐溶剤性>
ポリウレタン溶液を9.5milのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、50℃で5時間、100℃で0.5時間、真空条件100℃で0.5時間、80℃で15時間の順で乾燥させた。得られたポリウレタンフィルムから3cm×3cmの試験片を切り出し、試験溶剤をそれぞれ50mL入れた内径10cmφのガラス製シャーレに投入して、各々の試験溶剤毎、下記温度で下記時間浸漬した後の重量を測定し、浸漬前の試験片の重量と浸漬後の試験片の重量との重量変化率(%)(=(浸漬後の試験片の重量−浸漬前の試験片の重量)/浸漬前の試験片の重量×100)を算出した。ここで、重量変化率が0%に近いほうが耐溶剤性が良好であることを示す。
耐オレイン酸性:試験片をオレイン酸中に80℃で16時間浸漬した。
耐酢酸エチル性:試験片を酢酸エチル中に室温で20分間浸漬した。
耐エタノール性:試験片をエタノール中に室温で1時間浸漬した。
〔化合物略号〕
以下の実施例および比較例における化合物の略号は以下の通りである。
EC:エチレンカーボネート
BG:1,4−ブタンジオール
EG:エチレングリコール
THF:テトラヒドロフラン
DEC:ジエチルカーボネート
EtOH:エタノール
DPC:ジフェニルカーボネート
PHL:フェノール
15PD:1,5−ペンタンジオール
16HD:1,6−ヘキサンジオール
110DD:1,10−デカンジオール
NPG:ネオペンチルグリコール
DEG:ジエチレングリコール
PTMG#250:ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量250)
PTMG#650:ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量650)
PTMG#2000:ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)
Mg(acac):マグネシウム(II)アセチルアセトナート
Mg(tBuCOCHCOtBu)・2HO:2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトマグネシウム(II)二水和物
Zn(acac):亜鉛(II)アセチルアセトナート
Zn(tBuCOCHCOtBu):2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト亜鉛(II)
Zn(CFCOCHCOCF・2HO:ヘキサフルオロアセチルアセトナト亜鉛二水和物
Ca(acac)・xHO:カルシウムアセチルアセトン水和物
Ba(acac)・xHO:バリウムアセチルアセトン水和物
Ti(OBu):テトラ−n−ブチルチタネート
Ti(acac)(OiPr):チタン(IV)ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシド
Mg(OAc)・4HO:酢酸マグネシウム四水和物
Mg(OTf):トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム
Mg(OEt):マグネシウムエトキシド
Zn(OAc)・2HO:酢酸亜鉛二水和物
〔ポリカーボネートジオールの製造と評価〕
[実施例1−1]
直径30mmのガラス製試験管反応器に1,4−ブタンジオール(三菱ケミカル株式会社)14.1gとエチレンカーボネート(東京化成工業株式会社)15.9gを仕込み、窒素雰囲気下、アルミブロックヒーターにて加熱し、磁気撹拌子にて300rpmで撹拌した。内温が140℃に達した後、触媒としてマグネシウム(II)アセチルアセトナート(東京化成工業株式会社)1.42mgを含むトルエン希釈液を加えて反応を開始し、加熱撹拌した。
反応開始から1時間と3時間においてサンプリングを行い、以下の方法でガスクロマトグラフィにて反応器内のモノマー組成物である1,4−ブタンジオール(BG)、エチレンカーボネート(EC)、エチレングリコール(EG)およびテトラヒドロフラン(THF)の重量を定量し、それぞれの反応器内モル数を求めた。
<ガスクロマトグラフィ分析>
反応液約100mgと内部標準としてN−メチル−2−ピロリドン約50mgをそれぞれ精秤し、約5mLのアセトニトリルにて希釈した。この液をそのまま分析するか、またはこの液を1mL採取し、N−トリメチルシリルイミダゾール(和光純薬工業、ガスクロマトグラフィ用)0.2mLを加えよく振り混ぜ、10分間以上静置した後シリンジフィルターを通したものを分析した。
(ガスクロマトグラフィ分析条件)
カラム:DB−WAX 30m×0.250mm×0.25μm、I.D.(アジレントテクノロジー)または同等品
キャリアガス:ヘリウム、1.23mL/分
カラム温度:50℃(5分間保持)→10℃/分で昇温→250℃(5分間保持)
注入口温度:250℃、注入量:1μL、スプリット比:1:50
検出器温度:250℃、検出器:FID
(転化率・生成率の算出式)
BG転化率=(仕込みBGモル数−反応器内BGモル数)/仕込みBGモル数×100(mol%)
EC転化率=(仕込みECモル数−反応器内ECモル数)/理論仕込みECモル数(*)×100(mol%)
EG生成率=反応器内EGモル数/理論生成EGモル数(**)×100(mol%)
THF生成率=反応器内THFモル数/反応器内EGモル数×100(mol%)
*理論仕込みECモル数=理論生成EGモル数(**)とは、数平均分子量2000であるポリカーボネートジオールを得るためにBGに対して理論的に必要なECのモル数を示し、量論的に反応したときに生成するEGのモル数に相当する。
THF生成率は、生成したカーボネート結合即ち生成したEGモル数(=ポリカーボネートジオール中に導入されたECモル数)に対するTHFモル数の百分率(mol%)とした。
各種ジオールの転化率はBG転化率と同様に算出する。
[実施例1−2〜7、比較例1−1〜5]
触媒と触媒量を表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1−1と同様に実験を行った。
それぞれの値を表1に示す。
Figure 2020125467
実施例1−1〜5と比較例1−1〜5では、各触媒について原料モノマーに対する金属の重量濃度を同程度に調製しているため、得られるポリカーボネートジオール中の含有金属重量は概ね一定である。
実施例1−1〜5に示すように、マグネシウムおよび亜鉛のアセチルアセトン類縁体塩を触媒として1,4−ブタンジオールとエチレンカーボネートのエステル交換反応を実施したところ、比較例1−1に示す従来エステル交換触媒として頻繁に使用されるテトラ−n−ブチルチタネートを用いた場合と比較して、BG転化率、EC転化率およびEG生成率が高く、エステル交換活性が高いことが見出された。
しかも、エステル交換活性即ち重合活性が高いにも拘らず、望ましくないエーテル化により副生するTHFの生成率はテトラ−n−ブチルチタネートを用いたときより低く、ポリカーボネートジオール製造触媒として高い選択性を発現することが見出された。
比較例1−2に示すように、チタンのアセチルアセトン化合物であるチタン(IV)ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシドは高い重合活性は示さず、THFの副生率も高かった。
一方、実施例1−1〜2および比較例1−3〜4に示すように、マグネシウムのアセチルアセトン類縁体塩を触媒としてエステル交換反応を実施したところ(実施例1−1〜2)、酢酸マグネシウムやトリフルオロメタンスルホン酸マグネシウムを同じマグネシウム濃度で触媒とした場合(比較例1−3〜4)と比較して、BG転化率、EC転化率およびEG生成率は高く、副生するTHFの生成率は低かった。
また、実施例1−3〜5および比較例1−5に示すように、亜鉛のアセチルアセトン類縁体塩を触媒としてエステル交換反応を実施したところ(実施例1−3〜5)、酢酸亜鉛を同じ亜鉛濃度で触媒とした場合(比較例1−5)と比較して、BG転化率、EC転化率およびEG生成率は高く、副生するTHFの生成率は低かった。
これらの結果から、マグネシウムおよび亜鉛のアセチルアセトン類縁体塩は、従来使用されている触媒と同じ金属重量濃度で使用したとき、あるいはマグネシウムや亜鉛のその他の塩を触媒として使用したときと比較して、モノマー原料であるジヒドロキシ化合物および炭酸ジエステル(表1においてはBGおよびEC)の転化率が高く、副生するヒドロキシ化合物(表1においてはEG)の生成率が高く、更には望ましくないエーテル副生物(表1においてはTHF)の生成率が低く、ポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒として優れていることが明らかである。
なお、マグネシウムと同じく2族金属のアセチルアセトン塩であるカルシウムアセチルアセトン水和物およびバリウムアセチルアセトン水和物でも、実施例1−6および7に示すようにマグネシウムアセチルアセトン塩と同程度のモル濃度でポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒として良好に作用する。
[実施例2−1〜2、比較例2−1〜3]
触媒をマグネシウム(II)アセチルアセトナートまたはオルトチタン酸テトラブチルとし、触媒量と反応温度を表2に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1−1と同様に実験を行った。
それぞれの値を実施例1−1および比較例1−1の結果と共に表2に示す。
Figure 2020125467
実施例1−1および2−1と比較例1−1および2−1に示すように、1,4−ブタンジオールとエチレンカーボネートのエステル交換反応を140℃で実施したとき、マグネシウム(II)アセチルアセトナートと従来エステル交換触媒として使用されるテトラ−n−ブチルチタネートでは、触媒濃度を金属重量濃度で合わせた場合(実施例1−1と比較例1−1)でも金属モル濃度で合わせた場合(実施例1−1と比較例2−1および実施例2−1と比較例1−1)でも、マグネシウム(II)アセチルアセトナートを触媒とした方がBG転化率、EC転化率およびEG生成率が高く、THF生成率が低かった。
また、実施例1−1の反応開始1時間後と比較例2−1の反応開始3時間後を比較すると、BG転化率、EC転化率およびEG生成率が同等のとき即ちエステル交換が同程度進行したとき、マグネシウム(II)アセチルアセトナート触媒でTHF生成率が低かった。即ちマグネシウム(II)アセチルアセトナート触媒は高いエステル交換活性を発現しつつ、望ましくないエーテル化が少ないことが示された。
一方、実施例2−2と比較例2−2に示すように、触媒金属重量濃度を合わせて反応温度を120℃に下げたとき、マグネシウム(II)アセチルアセトナートとテトラ−n−ブチルチタネートともにTHF生成は抑制されたが、テトラ−n−ブチルチタネートではBG転化率、EC転化率およびEG生成率の低下が顕著であった。マグネシウム(II)アセチルアセトナート触媒での反応温度120℃(実施例2−2)のBG転化率、EC転化率およびEG生成率は、テトラ−n−ブチルチタネート触媒での140℃(比較例1−2および2−1)より高く、150℃(比較例2−3)と同程度であるが、THF生成率はマグネシウム(II)アセチルアセトナート触媒で120℃のとき劇的に低下した。
望ましくない副反応であるエーテル化は反応温度に大きく依存し、反応温度が高いほどエーテル副生物の生成率は高くなることが明らかであり、マグネシウム(II)アセチルアセトナートは従来エステル交換触媒として頻繁に使用されるテトラ−n−ブチルチタネートと比較して、より低い反応温度で高いエステル交換活性を発現するため低い反応温度で実施することができ、エーテル副生物を劇的に低減することができる。
これらの結果から、本発明で用いる触媒はポリカーボネートジオールの製造において高活性かつ副生物が低減されるため、本発明の触媒を使用することにより効率的にポリカーボネートジオールを製造できることが明らかである。
[実施例3−1〜9、比較例3−1]
触媒として、マグネシウムエトキシドと表3に示すアセチルアセトン類縁体とを、アセチルアセトン類縁体をマグネシウムに対して所定のモル比で含むトルエン希釈液を用いたこと以外は、それぞれ実施例1−1と同様に実験を行った(ただし、比較例3−1ではマグネシウムエトキシドのみを触媒とした)。
それぞれの値を実施例1−1の結果と共に表3に示す。
Figure 2020125467
実施例3−1〜9では金属のアルコキシドとしてのマグネシウムエトキシドとアセチルアセトン類縁体とで触媒組成物を調製し、1,4−ブタンジオールとエチレンカーボネートのエステル交換反応を実施した。
実施例3−1〜5および比較例3−1に示すように、アセチルアセトンとマグネシウムエトキシドを表3に示すモル比で混合し、エステル交換触媒組成物として用いたとき、マグネシウムエトキシドのみを触媒として用いたときよりBG転化率、EC転化率およびEG生成率が高くTHF生成率が低かった。アセチルアセトンとマグネシウムのモル比が高くなるに従い、BG転化率、EC転化率およびEG生成率はより高くTHF生成率はより低くなり、アセチルアセトンとマグネシウムのモル比が2以上のとき、マグネシウム(II)アセチルアセトナートと同等の触媒性能を示した。
実施例3−6〜9に示すように、各種アセチルアセトン類縁体とマグネシウムエトキシドとの組成物についてもエステル交換反応を実施したところ、マグネシウムエトキシドのみを触媒として用いたときよりBG転化率、EC転化率およびEG生成率が高くTHF生成率が低かった。
これらの結果より、本発明の触媒は、金属化合物とアセチルアセトン類縁体とから調製した組成物であっても、ポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒として良好に作用することが示された。
[実施例4−1、比較例4−1]
直径30mmのガラス製試験管反応器に1,4−ブタンジオール(三菱ケミカル株式会社)12.0gとジエチルカーボネート(和光純薬工業)18.0gを仕込み、それぞれ触媒と触媒量を表4に示すように変更し、アルミブロックヒータを140℃に設定して実施例1−1と同様に実験を行った。サンプリングは反応開始から3時間と5時間において行った。
(転化率・生成率の算出式)
BG転化率=(仕込みBGモル数−反応器内BGモル数)/仕込みBGモル数×100(mol%)
DEC転化率=(仕込みDECモル数−反応器内DECモル数)/理論仕込みDECモル数(*)×100(mol%)
EtOH生成率=反応器内EtOHモル数/理論生成EtOHモル数(**)×100(mol%)
THF生成率=反応器内THFモル数/(反応器内EtOHモル数/2)×100(mol%)
*理論仕込みDECモル数=理論生成EtOHモル数(**)/2・・・数平均分子量2000であるポリカーボネートジオールを得るためにBGに対して理論的に必要なDECのモル数を示し、量論的に反応したときに生成するEtOHのモル数はその2倍に相当する。
THF生成率は、生成したカーボネート結合即ち生成したEtOHモル数の2分の1(=ポリカーボネートジオール中に導入されたDECモル数)に対するTHFモル数の百分率(mol%)とした。
それぞれの値を表4に示す。
Figure 2020125467
表4から明らかなように、1,4−ブタンジオールとジエチルカーボネートのエステル交換反応において、従来エステル交換触媒として頻繁に使用されるテトラ−n−ブチルチタネートを用いた場合(比較例4−1)と比較して、マグネシウム(II)アセチルアセトナートを触媒とした場合(実施例4−1)は、副生するTHF生成率を大きく増大させることなく、BG転化率、DEC転化率およびEG生成率が高いことが示された。
この結果から、本発明の触媒は、ジアルキルカーボネートをカーボネート源としたポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒としても良好に作用することが示された。
[実施例5−1、比較例5−1]
直径30mmのガラス製試験管反応器に1,4−ブタンジオール(三菱ケミカル株式会社)9.3gとジフェニルカーボネート(三菱ケミカル株式会社)20.7gを仕込み、触媒と触媒量を表5に示すように変更した以外は、アルミブロックヒータを140℃に設定してそれぞれ実施例1−1と同様に実験を行った。
(転化率・生成率の算出式)
BG転化率=(仕込みBGモル数−反応器内BGモル数)/仕込みBGモル数×100(mol%)
DPC転化率=(仕込みDPCモル数−反応器内DPCモル数)/理論仕込みDPCモル数(*)×100(mol%)
PHL生成率=反応器内PHLモル数/理論生成PHLモル数(**)×100(mol%)
THF生成率=反応器内THFモル数/(反応器内PHLモル数/2)×100(mol%)
*理論仕込みDPCモル数=理論生成PHLモル数(**)/2・・・数平均分子量2000であるポリカーボネートジオールを得るためにBGに対して理論的に必要なDPCのモル数を示し、量論的に反応したときに生成するPHLのモル数はその2倍に相当する。
THF生成率は、生成したカーボネート結合即ち生成したPHLモル数の2分の1(=ポリカーボネートジオール中に導入されたDPCモル数)に対するTHFモル数の百分率(mol%)とした。
それぞれの値を表5に示す。
Figure 2020125467
表5から明らかなように、1,4−ブタンジオールとジフェニルカーボネートのエステル交換反応において、既存の触媒である酢酸マグネシウムを用いた場合(比較例5−1)と比較して、マグネシウム(II)アセチルアセトナートを触媒とした場合(実施例5−1)、BG転化率、DPC転化率およびEG生成率が高く、副生するTHF生成率を低減させることが示された。
この結果から、本発明の触媒は、ジアリールカーボネートをカーボネート源としたポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒としても良好に作用することが示された。
以上より、本発明の触媒は、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネートおよびジアリールカーボネート等、いかなる炭酸ジエステルを原料モノマーとしても、ポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒として良好に作用することが明らかとなった。
[実施例6−1〜19、比較例6−1〜7]
直径30mmのガラス製試験管反応器に表6に示すように1種以上のジオール類とエチレンカーボネートを仕込み、触媒と触媒量を表6に示すように変更した以外は、実施例1−1と同様に実験を行った。
(転化率・生成率の算出式)
ジオール転化率=(仕込みジオールモル数−反応器内ジオールモル数)/仕込みジオールモル数×100(mol%)
EC転化率=(仕込みECモル数−反応器内ECモル数)/理論仕込みECモル数(*)×100(mol%)
EG生成率=反応器内EGモル数/理論生成EGモル数(**)×100(mol%)
THF生成率=反応器内THFモル数/反応器内EGモル数×100(mol%)
*理論仕込みECモル数=理論生成EGモル数(**)とは、数平均分子量2000であるポリカーボネートジオールを得るためにジオール総量に対して理論的に必要なECのモル数を示し、量論的に反応したときに生成するEGのモル数に相当する。
THF生成率は、生成したカーボネート結合即ち生成したEGモル数に対するTHFモル数の百分率(mol%)とした。
2種以上のジオールを原料モノマーとして用いた場合の全ジオール転化率は、
全ジオール転化率=(仕込み総ジオールモル数−反応器内総ジオールモル数)/仕込み総ジオールモル数×100(mol%)
として算出した。
それぞれの値を表6に示す。
Figure 2020125467
表6より明らかなように、マグネシウム(II)アセチルアセトナートを触媒として各種ジオール類とエチレンカーボネートのエステル交換反応を実施した。実施例6−1〜12に示すように、直鎖および分岐の脂肪族ジオール1種類または2種類の混合いずれの場合も良好にエステル交換反応が進行した。1,5−ペンタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールおよびそれらと1,4−ブタンジオールとの混合物を原料モノマーとしたとき、マグネシウム(II)アセチルアセトナートを触媒とした場合(実施例6−1〜4)、従来エステル交換触媒として頻繁に使用されるテトラ−n−ブチルチタネートを用いた場合(比較例6−1〜4)と比較して、ジオール転化率、EC転化率およびEG生成率が高くTHF生成率が低かった。
また、実施例6−5〜7および9〜11に示すように、2種類以上のジオールは広範な混合比で用いることができる。
実施例6−13〜16に示すように、エーテル性酸素原子を有するジヒドロキシ化合物であるジエチレングリコールまたはジエチレングルコールと1,4−ブタンジオールとの混合物を原料モノマーとしたとき、テトラ−n−ブチルチタネートを触媒とした場合(比較例6−5〜6)と比較して、同等の触媒金属重量濃度のマグネシウム(II)アセチルアセトナートを触媒とした場合(実施例6−15〜16)にはジオール転化率、EC転化率およびEG生成率が高く、より低濃度のマグネシウム(II)アセチルアセトナートを触媒とした場合(実施例6−13〜14)でも、同等以上のジオール転化率、EC転化率およびEG生成率であり、既存のエステル交換触媒より反応は良好に進行した。
また、実施例6−17〜19に示すように、ジヒドロキシ化合物としてポリ(オキシアルキレン)グリコールである数平均分子量250のポリオキシテトラメチレングルコール(PTMG#250)、或いはポリ(オキシアルキレン)グリコールと1,4−ブタンジオールとの混合物を原料モノマーとしたときもエステル交換反応は進行し、原料モノマーに対して同等モル濃度のテトラ−n−ブチルチタネートを触媒とした場合(実施例6−17と比較例6−7)と比較して、EC転化率、EG生成率ともに高いことが示された。
これらの結果から、本発明の触媒は、ジオール類、ポリアルキレングルコールおよびポリ(オキシアルキレン)グリコール等、広範なジヒドロキシ化合物およびそれらの混合物を原料モノマーとしても、ポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒として良好に作用することが明らかとなった。
以上の通り、本発明の触媒は、モノマー原料であるジヒドロキシ化合物(ジオール類)および炭酸ジエステル(カーボネート類)の転化率が高く、副生するヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物の生成率が高く、更には望ましくないエーテル副生物の生成率が低いポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒である。
また、本発明の触媒は従来の触媒より低い反応温度においても高い活性を発現するため、反応温度を低く設定することができる。望ましくない副反応であるエーテル化は反応温度に大きく依存し、高温で副生量が増大するため、低い反応温度で高い活性を発現する本発明の触媒はエーテル副生物を劇的に低減することができる。
本発明の触媒はポリカーボネートジオールの製造において高活性かつ副生物が低減されるため、本発明の触媒を使用することにより、効率的かつ経済的にも有利にポリカーボネートジオールを製造できる。
即ち、本発明の触媒は、モノマー原料であるジヒドロキシ化合物(ジオール類)および炭酸ジエステル(カーボネート類)の転化率が高く、副生するヒドロキシ化合物またはジヒドロキシ化合物の生成率が高く、更には望ましくないエーテル副生物の生成率が低いポリカーボネートジオール製造用のエステル交換触媒である。
[実施例7−1]
撹拌機、留出液トラップ、圧力調整装置、30mmφ不規則充填物入り蒸留塔、分留器を備えた2Lガラス製セパラブルフラスコに1,4−ブタンジオール(14BD):471g(5.2モル)、エチレンカーボネート(EC):529g(6.0モル)、Mg(acac)2:47mg(0.21ミリモル、触媒金属濃度40μmol/mol、5ppm)を入れ、窒素ガス置換した。撹拌下、内温を130℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、3h常圧で反応した後、圧力を6kPaまで下げて、エチレングリコールとエチレンカーボネートを系外へ除去しながら12時間反応させた。次いで、圧力を1kPaまで12時間かけて下げて、130℃〜160℃で反応した。前記工程の途中でエチレンカーボネート(EC):69g(0.78モル)を加えた。さらに0.5kPaまで減圧し、8h反応を続けた後にH−NMR(測定法2)にて数平均分子量が1900相当であることを確認し、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た(合計反応時間32時間)。
その後、ポリカーボネートジオール含有組成物に8.5%リン酸水溶液:0.2mL(0.2ミリモル)を加えて触媒を失活させた。その後、蒸留塔を取り外し、0.5kPa、170℃で残存モノマーを除去することで、ポリカーボネートジオール含有組成物を488g得た。留出液トラップを確認したところ、BGから副生したテトラヒドロフランが仕込んだBGに対して3.2モル%生成していた。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留装置に送液し、薄膜蒸留(温度:210℃、圧力:53Pa)を行ってポリカーボネートジオールを得た。薄膜蒸留装置としては、直径50mm、高さ200mm、面積0.0314m2の内部コンデンサー、ジャケット付きの柴田科学株式会社製、分子蒸留装置MS−300特型を使用した。得られたポリカーボネートジオールの分析値を表7に示した。得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量は滴定(測定法1)において1873(水酸基価59.9mgKOH/g)、H−NMR(測定法2)において1900であり、大きな差はなかった。
[比較例7−1]
Mg(acac)2の代わりにTi(OBu)4を用いた以外は、実施例7−1と同様の方法で反応を実施し、H−NMRにて分子量が2000相当であることを確認し、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た(合計反応時間44時間)。留出液トラップを確認したところ、BGから副生したテトラヒドロフランが仕込んだBGに対して12モル%生成していた。得られたポリカーボネートジオールの分析値を表7に示した。
[実施例7−2〜7、比較例7−2]
基質のジオールとカーボネートを変更し、また、触媒金属濃度が20〜42ppmとなるように変更した以外はそれぞれ実施例7−1または比較例7−1と同様の操作を行って、ポリカーボネートジオールを得た。基質の種類と仕込み量および得られたポリカーボネートジオールの分析値を表7に示す。数平均分子量と水酸基価はそれぞれ滴定(測定法1)またはH−NMR(測定法2)で算出した。
[実施例7−7]
撹拌機、留出液トラップ、圧力調整装置、30mmφ不規則充填物入り蒸留塔、分留器を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコにポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG#250):3633g(16.5モル)、エチレンカーボネート(EC):1672g(19.0モル)を入れ、窒素ガス置換した。撹拌下、内温を130℃まで昇温して内容物を加熱溶解した後、予めガラス容器内でMg(OEt)2:0.755g(6.6ミリモル)とアセチルアセトン:1.32g(13.2ミリモル)をトルエン30mLに溶解した触媒調製液(触媒金属濃度400μmol/mol対ジオール、30ppm対基質)を加え、ガラス容器をトルエン20mLで洗い込んだ。その後、内温150℃〜158℃で1時間常圧で反応した後、圧力を徐々に3.5kPaまで下げて、エチレングリコールとエチレンカーボネートを系外へ除去しながら5.5時間反応させた。次いで、エチレンカーボネート(EC):436g(4.95モル)を加え、圧力を4〜3.5kPaまで徐々に下げて、9.5時間かけて152℃〜154℃で反応した。さらにエチレンカーボネート(EC):218g(2.48モル)を加えて、圧力を3kPaまで徐々に下げて、24時間反応を続けた後にH−NMR(測定法2)にて数平均分子量が1824相当であることを確認し、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た(合計反応時間40時間)。
その後、ポリカーボネートジオール含有組成物に8.5%リン酸のBG溶液:5.7mL(5.6ミリモル)を加えて触媒を失活させた。その後、蒸留塔を取り外し、0.7〜0.1kPa、内温160℃〜170℃で残存モノマーを除去することで、ポリカーボネートジオール含有組成物を3749g得た。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物を、実施例7−1と同様に薄膜蒸留を行ってポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析値を表7に示した。得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量は滴定(測定法1)において2033(水酸基価55.2mgKOH/g)、H−NMR(測定法2)において2016であり、大きな差はなかった。
Figure 2020125467
実施例7−1では、触媒としてMg(acac)2を用いた結果、反応時間が短く、テトラヒドロフランの副生が少なく、低着色の分子量約2000のポリカーボネートジオールが得られた。
一方、比較例7−1では同様の条件で触媒としてTi(OBu)4を用いた結果、反応時間が長く、テトラヒドロフランの副生が多く、得られた分子量約2000のポリカーボネートジオールは高着色であった。また実施例7−2〜3と比較例7−2との対比からも同様の結果が認められた。
実施例7−4〜5に示すように、本発明は、種々の分子量のポリオキシテトラメチレングリコールを原料としたポリカーボネートジオールの製造に良好に適用できることが分かった。
また、実施例7−6〜7に示すように、マグネシウム(II)アセチルアセトナートに代わり、工業的に入手が容易なマグネシウムエトキシドとアセチルアセトンを混合してエステル交換触媒組成物として用いた場合も、マグネシウム(II)アセチルアセトナートと同等の触媒性能を発現することが認められた。
〔ポリウレタンの製造と評価〕
[実施例8]
熱電対と冷却管を設置したセパラブルフラスコに、あらかじめ80℃に加熱した実施例7−1で製造したポリポリカーボネートジオール:65.3gを入れ、60℃のオイルバスにそのフラスコを浸した後、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート東京化成工業株式会社製):17.5gおよび、トリイソオクチルフォスファイト(東京化成工業株式会社製):0.4gを添加し、フラスコ内を窒素雰囲気下、60rpmで撹拌しながら1時間程度で80℃に昇温した。80℃まで昇温した後、ウレタン化触媒としてネオスタンU−830(日東化成株式会社製):9.4mgを添加し、発熱がおさまってからオイルバスを100℃まで昇温し、さらに4時間程度撹拌した。イソシアネート基の濃度を分析し、イソシアネート基が理論量消費されたことを確認し、プレポリマー(以下、PPと略することがある)を得た。
続いて、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製):256.6gを加え、55℃のオイルバスにフラスコを浸漬して約200rpmで撹拌しながらPPを溶解した。プレポリマー溶液のイソシアネート基の濃度を分析後、フラスコを35℃に設定したオイルバスに浸漬し、150rpmで撹拌しながら、残存イソシアネートより算出した必要量のイソホロンジアミン(東京化成工業株式会社製)4.4gを添加した。約1時間撹拌後、モルフォリン(東京化成工業株式会社製):0.5gを添加し、さらに1時間撹拌してポリウレタン溶液を得た。得られたポリウレタン溶液のGPC分析を行ったところ、重量平均分子量(Mw)は15.9万であった。このポリウレタン溶液をドクターブレードにてポリエチレンフィルム上に均一膜厚に塗布し、乾燥機で乾燥しポリウレタンフィルムを得た。このポリウレタンフィルムの物性の評価結果を表8に示す。
Figure 2020125467
表8より明らかなように、実施例7−1で製造されたポリカーボネートジオールを用いることで、耐溶剤性および機械強度、柔軟性に優れたポリウレタンを製造することができる。

Claims (18)

  1. 原料モノマーとしてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用いて、エステル交換触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて数平均分子量が250以上10000以下のポリカーボネートジオールを製造する方法であって、
    該エステル交換触媒が、亜鉛および長周期型周期表第2族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属(M)と下記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む組成物、或いは下記式(2)で表される少なくとも1種の塩およびそれらを前駆体とする組成物であるポリカーボネートジオールの製造法。
    Figure 2020125467
    (式中、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表し、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい。
    は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基またはハロゲン原子を表し、該炭化水素基はハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい。
    Mは亜鉛または長周期型周期表第2族の金属を表し、n=2である。)
  2. 前記金属(M)が、亜鉛、マグネシウム、カルシウムおよびバリウムから選ばれる少なくとも1種の金属である請求項1に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  3. 前記金属(M)が、亜鉛および/またはマグネシウムである請求項2に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  4. 前記金属(M)が、マグネシウムである請求項3に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  5. 前記式(1)および式(2)において、RおよびRがそれぞれ独立に、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜12の1価の炭化水素基であり、Rがハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜12の1価の炭化水素基またはハロゲン原子である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  6. 前記式(1)および式(2)において、RおよびRがそれぞれ独立に、ハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜7の1価の炭化水素基であり、Rがハロゲン原子が置換していてもよく、酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜7の1価の炭化水素基またはハロゲン原子である請求項5に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  7. 前記金属(M)を、その合計量として、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、1μmol以上、500μmol以下存在させる請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  8. 前記金属(M)を、その合計量として、全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、5μmol以上、200μmol以下存在させる請求項7に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  9. 前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(3)で表される構造の脂肪族ジヒドロキシ化合物、および脂環式ジヒドロキシ化合物と数平均分子量100以上1000以下のポリ(オキシアルキレン)ジオールから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
    HO−R−OH (3)
    (式中、Rは、炭素数2〜60の直鎖または分岐の2価の炭化水素基を表し、環状構造および/またはエーテル性酸素原子を有していてもよい。)
  10. 前記ジヒドロキシ化合物が、前記式(3)で表される構造の脂肪族ジヒドロキシ化合物および/または脂環式ジヒドロキシ化合物を含み、式(3)中のRの炭素数が2〜20である請求項9に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  11. 前記式(3)中のRの炭素数が2〜12である請求項10に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  12. 前記ジヒドロキシ化合物が、数平均分子量100以上1000以下のポリ(オキシアルキレン)ジオールを含む請求項9に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  13. 前記ジヒドロキシ化合物が、数平均分子量100以上1000以下のポリオキシテトラメチレングリコールを含む請求項12に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  14. 前記ジヒドロキシ化合物が、数平均分子量150以上700以下のポリオキシテトラメチレングリコールを含む請求項13に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  15. 前記炭酸ジエステルが、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネートおよびジアリールカーボネートから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  16. 前記炭酸ジエステルが、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネートおよびジフェニルカーボネートから選ばれる少なくとも1種である請求項15に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  17. 前記炭酸ジエステルが、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジフェニルカーボネートから選ばれる少なくとも1種である請求項16に記載のポリカーボネートジオールの製造法。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールの製造法で製造したポリカーボネートジオールを用いるポリウレタンの製造法。
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