JP2004346168A - 脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法 - Google Patents

脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法 Download PDF

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Hiroshi Kurata
浩志 倉田
Kunitoshi Mimura
邦年 三村
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Abstract

【課題】生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートとその製造方法を提供する。
【解決手段】エステル交換触媒の存在下に脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物から誘導される両末端にOH基を有する脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルとを反応させて得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートとその製造方法に関する。詳しくは、優れた柔軟性、透明性、成形加工時の熱安定性を持ち、フィルム、シート、繊維、各種容器、各種部品等の成形に適した生分解性を有する高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、成形材料としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等プラスチックス材料が大量に使用され消費されてきた。これらのプラスチックス材料の一部はリサイクルされる物もあるが、一般に回収された後、消却処理や土中埋設処理等の処理を受ける。しかし回収に多大な労力及び費用を要するため、あるいは回収が困難なため回収されずに放置される場合がある。
【0003】
近年、これらの環境問題に対して、自然環境の中で分解する高分子素材の開発が要望されるようになり、その中でも特に微生物によって分解されるプラスチックは、環境適合性材料や新しいタイプの機能性材料として大きな期待が寄せられており脂肪族ポリエステルなどの自然分解性樹脂による研究が活発に行われている。その一例としてポリ乳酸がある。
【0004】
ポリ乳酸は透明性を有する熱可塑性樹脂であるが、物性面では伸び、柔軟性が低いという欠点を有している。さらに、環境中での生分解速度も遅く、また、加水分解に対しては不安定でありその改良が望まれていた。
【0005】
ポリ乳酸の製造方法は、乳酸を直接脱水縮合して高分子量体を得る方法と(特許文献1、2参照)、乳酸の無水環状二量体を合成し、精製の後開環重合によって高分子量体を得る方法がある(特許文献3参照)。乳酸を直接重合する方法では高分子量体を得るには長時間を必要とする。また、無水環状二量体を開環重合する方法では乳酸から無水環状二量体を合成し、無水環状二量体を精製、続いて開環重合を行う等作業が煩雑となる。更に、高分子量体を得るには無水環状二量体の精製を十分に行う必要がある。
【0006】
また、ポリグリコール酸の製造法がある(特許文献4参照)。ここで示されているポリグリコール酸の製造方法では、高分子量体を得るために固相重合を行っており反応時間は長時間を必要とする。
【0007】
このようにポリヒドロキシカルボン酸は融点が高いが硬くて、脆いという性質を持つため柔軟性を付与する事が求められていた。また、高分子量のポリヒドロキシカルボン酸を得るためには作業が煩雑となる、反応時間が長い等の問題点が存在していた。
【0008】
一方、1,4ブタンジオール及びコハク酸を主成分とする脂肪族ポリエステルカーボネート(PEC)は、カーボネート結合を導入する事でポリエチレン類似の物性を有する成形性・生分解性の良好なポリマーである事を本発明者らは見いだした。しかしポリ乳酸に比べ融点が60〜110℃と低く、ガラス転移温度も室温以下で結晶性も高い為不透明であり、剛性も低いという欠点を持っていた。
【0009】
【特許文献1】
特開平07−33861号公報
【特許文献2】
特開平07−2984号公報
【特許文献3】
特公昭56−14688号公報
【特許文献4】
特開平11−116666号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
柔軟性、透明性、生分解性に優れた脂肪族ポリエステルカーボネートの提供、およびその高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートを容易に製造する方法を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エステル交換触媒の存在下に脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物から誘導される両末端にOH基を有する脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルとを反応させることによって上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における脂肪族ポリエステルカーボネートとは、ヒドロキシカルボン酸化合物を反応させて得られる数平均分子量50,000以下の脂肪族ポリエステルオリゴマーと、炭酸ジエステルとを反応させて得られるカーボネート単位含有量が少なくとも0.1モル%以上であり、重量平均分子量が少なくとも100,000で、融点が70〜230℃であることを特徴とする。
【0013】
本発明による脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法は、ヒドロキシカルボン酸化合物から脂肪族ポリエステルオリゴマーを得る第1工程、および脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルを反応させ脂肪族ポリエステルカーボネートを得る第2工程より構成される。
【0014】
第1工程は、公知のヒドロキシカルボン酸化合物の直接脱水縮重合やヒドロキシカルボン酸化合物の無水環状二量体の開環重合によって脂肪族ポリエステルオリゴマーを製造する工程である。
【0015】
脂肪族ポリエステルオリゴマーの合成例としては、直接脱水縮重合法では脂肪族ポリエステルオリゴマーを得た後、ジヒドロキシ化合物との反応によって両末端をOH末端とする。また、無水環状二量体の開環重合法では、開始剤として用いられるヒドロキシ化合物にジヒドロキシ化合物を用いることによって両末端がOH基となる脂肪族ポリエステルオリゴマーの合成も可能である。両末端がOH基となった脂肪族ポリエステルオリゴマーの分子量としては、数平均分子量で500〜50,000の範囲が好ましい。
【0016】
第2工程は、第1工程で得られた脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルを反応させて高分子量体とする工程であり、触媒の存在下、通常150〜250℃で行われ、反応に伴って副成するヒドロキシ化合物が除去される。炭酸ジエステルの沸点によっては反応初期には加圧とする。減圧度を調節して最終的には133Pa以下の減圧とする事が良い。
【0017】
脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基量を制御することにより所望の割合とすることができる。カーボネート単位含有量が多すぎると、得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの融点が低くなり、実用的耐熱性を有するポリマーが得られない。一方、カーボネート単位含有量が多くなると微生物による分解性が高くなる。従って、カーボネート単位含有量は、適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る量とすることが好ましく、本発明においては脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量を少なくとも0.1モル%以上、通常0.2〜15モル%とすることが好ましい。
【0018】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられるヒドロキシカルボン酸化合物としては、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸等が例示され、これらはエステル、環状エステル等の誘導体でも使用できる。これらのヒドロキシカルボン酸化合物は、それぞれ単独であるいは混合物として用いることができ所望の組合せが可能である。
【0019】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる炭酸ジエステルの具体的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネートなどのジアリールカーボネートを、また、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、フェノール、アルコール類の様なヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物や環状カーボネート化合物も使用できる。
【0020】
第2工程において炭酸ジエステルを添加する際、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪族2塩基酸と脂肪族ジヒドロキシ化合物とから作られるポリエステルオリゴマー等のジヒドロキシ化合物を添加することによりブロック共重合化が可能である。
【0021】
脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂の分子量はスチレン換算のGPCによる重量平均分子量で100,000以上が望ましい。100,000以下では所望の強度が達成されない。
【0022】
本発明で使用する触媒としては錫、チタン、ゲルマニウム、亜鉛、鉛、コバルト、イットリウム、ランタン、マグネシウム、インジウム、ジルコニウム、マンガン、アンチモン、カリウム等の金属及びその誘導体があげられる。触媒として好ましい誘導体の形態としては、脂肪酸塩類、水酸化物、アルコラート、フェノラート、アセチルアセトナート、ベンゾイルアセトナート、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物等種々あげられる。
【0023】
本発明における触媒の添加量としては、通常、原料混合物100重量部に対して、5×10−5〜1重量部、好ましくは1×10−4〜2×10−2重量部が使用される。触媒が多くなると解重合が進みやすくなり、また得られる重合体の着色などが起き易くなる。一方触媒が少ない場合は、反応が進みにくくなる。
【0024】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートには滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、等の各種添加剤、及び熱可塑性樹脂、木粉、でんぷん等を必要に応じて加え改質することができる。これらの添加剤等は、脂肪族ポリエステルカーボネートが有する物性を大きく損なわれない範囲で、単独又は二種以上を任意の割合で重合反応前後に添加できる。
【0025】
本発明の成型品は、本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートを用いて成形された物品であり、具体的な成型形態、成型方法としては、射出成型品、押し出し成型品、インフレーション成型品、真空圧空成型品、ブロー成型品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品その他の成型品が例示されるがそれらに限定されるものではない。また接着剤、エマルジョン等の使用法も可能である。
【0026】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)はGPC分析(昭和電工(株)製GPC System−21H)によるポリスチレン換算値である。カーボネート単位含有量はNMR(日本電子(株)製NMR EXー270)を使用し、13CNMRによりジカルボン酸エステル単位およびカーボネート単位の合計に対するカーボネート単位の割合(モル%)として測定した。融点は、DSC(パーキンエルマー社製DSC Pyris−1)を用いて測定した。柔軟性については引張試験(JIS−K7127に準じた)による引張伸び%測定により求めた。透明性についてはJIS−K7105に準じたヘイズ測定によって求めた。生分解性試験については、30℃、90%RHの条件で、厚さ100ミクロンのフィルムを20×50mmに切り出し土壌埋設試験を行い、3ヶ月後の重量減少率(%)を測定した。
【0027】
(合成例1)
L−乳酸 144g(1.60mol)、塩化第一スズ2水和物 1.24g、ジフェニルエーテル 300gを撹拌機、留出器を備えた四つ口フラスコに仕込み、系内を13.3kPaに減圧し1時間かけて室温から130℃に昇温した。続いて130℃/6.7kPa50mmHgで3時間、130℃/4kPaで3時間系外に水を留出させながら加熱撹拌した。次に140℃/2.7kPaで8時間共沸脱水を行いジフェニルエーテルと共沸する水分を除去した。反応終了後、この反応溶液にクロロホルム290gを加えた後メタノール2000ml中に排出し、析出した結晶を吸引ろ過し、メタノール、ヘキサンにて洗浄した。続けて40℃で6時間減圧乾燥した。これによって73gの白色粉体を得た。得られたポリエステルオリゴマー(A1)はGPCによって分子量を確認したところMw=7000(Mn=4000)であった。
【0028】
次にA1の片末端のCOOHをOH化するため、1,4−ブタンジオールとの反応を行った。A1を60.0g、1,4−ブタンジオール3.68g、ジルコニウムアセチルアセトナート1.5mgを撹拌機、留出器を備えた四つ口フラスコに仕込み185℃にて系内を窒素雰囲気下1時間加熱撹拌した。次に185℃/20kPaで1時間、185℃/13kPaで1時間、185℃/5.3kPa〜266Paで15分間、185℃/266Paで25分間反応を続けた。これによって薄い黄色透明な固体を得た。得られたポリエステルオリゴマー(B1)はGPCによって分子量を確認したところMw=3300(Mn=2100)であった。
【0029】
(合成例2)
L−ラクチド 125.1g(0.87mol)、1,4−ブタンジオール0.43g(4.77mmol)、オクチル酸第一スズ12.5mgを撹拌機、留出器を備えた四つ口フラスコに仕込み、系内を窒素雰囲気として185℃の油浴につけて30分間反応を行った。反応器を油浴から外し、反応液が十分に冷えるまで放冷した。次にクロロホルム355gを加え撹拌して均一な溶液(無色透明)とした。この溶液を撹拌しているメタノール2000mlに徐々に加え、ポリエステルオリゴマーを沈殿させた。次に吸引ろ過によって沈殿物を得た。沈殿物はメタノール、ヘキサンにて洗浄後40℃で10時間減圧乾燥し78gの白色粉末を得た。得られたポリエステルオリゴマー(B2)はGPC分析の結果Mw=29000(Mn=23000)であった。
【0030】
実施例1
B1を25g、ジフェニルカーボネート 5.33g、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル四量体 4mgを撹拌機、留出器を備えた四つ口フラスコに仕込み、185℃/8kPaで3時間、185℃/2kPaで2時間、185℃/266Paで4時間加熱撹拌した。この反応によって薄く黄色透明な脂肪族ポリエステルカーボネートを得た。この脂肪族ポリエステルカーボネートはGPC分析の結果、Mw=190,000であった。またNMR分析の結果、ポリカーボネート成分として5.0モル%のカーボネート単位を有していた。次に100μm厚のプレスフィルムを作成し柔軟性、透明性、融点、生分解性を調べた。結果は表1に示す。
【0031】
実施例2
B2を25g、ジフェニルカーボネート 0.3g、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル四量体 4mgを撹拌機、留出器を備えた四つ口フラスコに仕込み、185℃/8kPaで3時間、185℃/2kPaで2時間、185℃/266Paで4時間加熱撹拌した。この反応によって薄く黄色透明な脂肪族ポリエステルカーボネートを得た。この脂肪族ポリエステルカーボネートはGPC分析の結果、Mw=200,000であった。またNMR分析の結果、ポリカーボネート成分として0.5モル%のカーボネート単位を有していた。次に100μm厚のプレスフィルムを作成し各種物性を測定した。結果は表1に示す。
【0032】
比較例1
ポリ乳酸として、島津製作所製 ラクティー #9000(Mw=220000)を使用し、柔軟性、透明性、融点、生分解性を調べた。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 2004346168
引張試験 引張速度:10mm/分
【0034】
【発明の効果】
本発明により、柔軟性、透明性、成形性、耐熱性に優れた生分解性の高分子量脂肪族ポリエステルカーボネートが容易に得られる。

Claims (3)

  1. エステル交換触媒の存在下に脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物から誘導される両末端にOH基を有する脂肪族ポリエステルオリゴマーと炭酸ジエステルとを反応させて得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
  2. 脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物がグリコール酸および/または乳酸である請求項1記載の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造方法。
  3. 請求項1及び2記載の脂肪族ポリエステルカーボネートからなる成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012001608A (ja) * 2010-06-15 2012-01-05 Fuji Xerox Co Ltd 化合物、樹脂組成物および樹脂成形体
JP2012031379A (ja) * 2010-06-28 2012-02-16 Fuji Xerox Co Ltd ポリ乳酸樹脂、樹脂組成物および樹脂成形体
CN102702698A (zh) * 2012-06-26 2012-10-03 上海冠旗电子新材料股份有限公司 透明薄膜级pc/聚酯合金材料及其制备方法

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