JP4773636B2 - リチウムコバルト複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウムコバルト複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池の正極活物質として優れた特性を有する、改良されたリチウム二次電池用リチウムコバルト複合酸化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、機器のポータブル化、コードレス化が進むにつれ、小型、軽量でかつ高エネルギー密度を有する非水電解液二次電池に対する期待が高まっている。非水電解液二次電池用の活物質には、LiCoO2、LiNiO2、LiNi0.8Co0.22、LiMn24、LiMnO2などのリチウムと遷移金属との複合酸化物が知られている。
【0003】
なかでも、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を正極活物質として用い、リチウム合金や、グラファイト、カーボンファイバーなどのカーボンを負極として用いたリチウム二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として広く使用されている。
【0004】
しかしながら、充放電サイクルの繰り返しによりその電池放電容量が徐々に減少するというサイクル特性の劣化の問題、あるいは安全性が不十分である等の問題があった。また、重量容量密度及び体積容量密度の点でもさらなる高密度化が求められている。
【0005】
これらの電池特性を改良するために、特開平10−1316号公報には、サイクル特性等の向上のため、コバルトの原子価が3価である水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト等を水酸化リチウム水溶液中に分散させた後、加熱処理する製造方法が提案されている。
【0006】
また、特開平10−279315号公報には、コバルトの原子価が3価である三酸化二コバルト、オキシ水酸化コバルト等を酸化リチウム等と250〜1000℃で焼成することにより、高容量かつサイクル特性のよい活物質とすることが提案されている。
【0007】
また、特開2001-110419号公報には、四三酸化コバルトを出発原料とし、六方晶系であり、格子定数のC軸長が、14.045〜14.060オングストロームであり、結晶子の(110)方向の回折ピーク半値幅の値が0.070〜0.180度であるLiCoO2を正極活物質とすることにより、二次電池の過充電安全性を向上させることが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、LiCoO2を正極活物質に用いたリチウム二次電池において、これら従来の技術では、高温貯蔵安定性、サイクル特性、重量容量密度、体積容量密度、安全性、及び量産が容易性の点で、今なお十分に満足するものがいまだ得られていないのが実情であり、本発明はこれらを更に改善し、優れた特性を有するリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の2種類のコバルト原料を用い、これらを好ましくは特定の条件下に混合、焼成して製造される特定の物性を有する六方晶系リチウムコバルト複合酸化物は、リチウム二次電池の正極活物質として用いた場合に、大きな容量密度を有するとともに、特段に優れた高温保存安定性、サイクル特性、重量容量密度、体積容量密度及び安全性が得られることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は以下を要旨とするものである。
(1)重量平均粒径が1〜20μm及び比表面積が2〜200m2/gであるオキシ水酸化コバルト粉末と、重量平均粒径が1〜10μm及び比表面積が0.1〜10m2/gの四三酸化コバルト粉末と、重量平均粒径が1〜50μm及び比表面積が0.1〜10m2/gである炭酸リチウム粉末とを、オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末のコバルト重量比を1/4〜4/1の割合にて混合し、酸素含有雰囲気で焼成してなる、重量平均粒径が5〜15μm及び比表面積が0.15〜0.60m2/gであることを特徴とするリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
(2)上記オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末のコバルト重量比が1/2〜2/1である上記(1)に記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
(3)前記リチウムコバルト複合酸化物に含まれるコバルトが、原子比でその1%以下が周期表4族または5族の元素で置換されている上記(1)又は(2)に記載のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
(4)アルカリ含有量が0.03質量%未満であることを特徴とする上記(1)、(2)又は(3)に記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
(5)前記アルカリ含有量のうち、水酸化リチウム含有量は0.005質量%未満である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
(6)前記リチウムコバルト複合酸化物が、CuKαを線源とするX線回折によって測定される2θ=66.5±1°の(110)面回折ピーク半値幅が0.070〜0.120°である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
(7)前記混合物の酸素含有雰囲気下での焼成を850〜1070℃で4〜60時間で行う上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法で得られる六方晶系リチウムコバルト複合酸化物は、酸化コバルトとオキシ水酸化コバルトの両者の混合物をコバルト原料にすることを特徴とし、かつ重量平均粒径が5〜15μm、比表面積が0.15〜0.60m2/g、アルカリ含有量が0.03質量%未満である特徴を有する。特に、本発明では、六方晶系リチウムコバルト複合酸化物が重量平均粒径が特定の範囲であり、かつ該複合酸化物中の残存アルカリ量と比表面積がいずれも低い組み合わせが、該複合酸化物をリチウム電池の正極にした場合における高温貯蔵後の容量維持率の低下に効果に寄与することを見出した。その作用機構は明らかではないが、六方晶系リチウムコバルト複合酸化物中の残存アルカリ量の増大により、正極のコバルト原子が部分的に高酸化状態になるとともに、比表面積の増大によっても反応面積が増加し、充電状態での正極の表面がより活性となり、正極上で電解液中の溶媒の分解が起こり、炭酸ガス等の発生が起こることが容量維持率低下の原因と考えられる。
【0012】
本発明において、重量平均粒径は質量基準で粒度分布を求め、全質量を100%とした累積カーブにおいて、その累積カーブが50%となる点の粒径である。これを質量基準累積50%径ともいう(例えば、化学工学便覧「改定5版」(化学工学会編)p220〜221の記載参照)。粒径の測定は、水等の媒体に超音波処理等で充分分散させて粒度分布測定する(例えば、日機装株式会社製マイクロトラックHRAX−100等を用いる)ことにより行う。
【0013】
本発明における六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の重量平均粒径は、上記のように5〜15μmを有する。重量平均粒径が5μm未満であると、緻密かつ強固な電極層を形成することが困難となり、一方、15μmを超えると、電極表面の平滑性を保ちにくくなるので好ましくない。特に好ましい重量平均粒径は、7〜12μmである。
【0014】
本発明において、比表面積は正極粉末を窒素吸着によるBET法で求めた数値を意味する。本発明における六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の比表面積は上記のように0.15〜0.60m2/gをゆうする。比表面積はが0.15m2/g未満であると充放電サイクル耐久性が低下したり、大電流充放電特性が低下するので好ましくない。比表面積が0.6m2/gを超えると安全性や高温貯蔵安定性が低下するので好ましくない。特に好ましい比表面積は0.2〜0.4m2/gである。
【0015】
本発明における六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の残存アルカリ量は、該複合酸化物活物質粉末を純水に投入し、抽出されたアルカリ分を塩酸で中和滴定して得られる当量数から求められるもので、複合酸化物単位重量当りの水酸化リチウムと炭酸リチウムの合計の質量基準の含有量を意味する。なお、ここでいう水酸化リチウムには、酸化リチウムとして存在するアルカリも含まれる。それぞれの含有率は所謂Warder法として知られるところの逐次滴定法により定量できる。これを具体的に記述すると、乾燥した試料約10gを精秤し、100mlのビーカーにいれ、50mlの純水を加え、ビーカー内を窒素ガスで置換した後、約1時間マグネチックスタラーで攪拌し、30分放置後、3500回転で遠心沈降せしめ、上澄み液30mlをサンプリングし、1/10規定塩酸でpH8.0までに中和するのに要した酸当量と、さらにpH4.0まで中和するのに要した酸当量から、炭酸リチウム当量と水酸化リチウム当量を求め、両者のアルカリ当量数から水酸化リチウムと炭酸リチウムの合計を重量含有率として求める。
【0016】
本発明において、上記残存アルカリ量は、リチウムコバルト複合酸化物の製造方法で使用されるオキシ水酸化コバルト粉末、四三酸化コバルト及び炭酸リチウム粉末の有する重量平均粒径や比表面積の大きさ、その混合比率、混合物の焼成温度、時間などにより制御される。上記残存アルカリ量が0.03質量%以上であると、高温貯蔵後の容量維持率が低下したり、高温下での充放電サイクル耐久性が乏しくなるので好ましくない。pH8.0までの中和では残存水酸化リチウムと炭酸リチウムを分別して定量できないので電池性能との相関が乏しいので好ましくない。本発明において、好ましい残存アルカリ量は0.02質量%未満であり、特に好ましい残存アルカリ量は0.01質量%未満である。本発明においては、高温貯蔵後の容量維持率と高温下での充放電サイクル耐久性には、残存アルカリ量でも、水酸化リチウムの残存量の影響が大きいことがわかった。水酸化リチウムの残存量は0.005質量%以下、なかでも0.001質量%以下が好ましい。また、炭酸リチウム量は0.02質量%以下、なかでも炭酸リチウム量は0.01質量%以下が好ましい。
【0017】
本発明で製造される六方晶系リチウムコバルト複合酸化物は、CuKαを線源とするX線回折によって測定される2θ=66.5±1°の(110)面回折ピーク半値幅が0.070〜0.120°である場合、リチウム電池の正極活物質として優れた特性を示すため特に好ましい。かかる(110)面回折ピーク半値幅は、リチウム含有複合酸化物の特定方向の結晶子径を反映し、結晶子径は小さいほど、半値幅が大きくなる関係にあると思われる。本発明において、半値幅とはピーク高さの2分の1におけるピーク幅を意味する。
【0018】
六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の上記(110)面回折ピーク半値幅は、リチウムコバルト複合酸化物の製造方法で使用されるオキシ水酸化コバルト粉末及び炭酸リチウム粉末の有する重量平均粒径や比表面積の大きさ、その混合比率、混合物の焼成温度、時間などにより制御される。上記(110)面回折ピーク半値幅が0.070°未満であると、正極活物質として用いた二次電池の充放電サイクル耐久性、初期容量、平均放電電圧、あるいは安全性が低下するので好ましくない。また、(110)面の回折ピーク半値幅が0.120°を超えると二次電池の初期容量、安全性が低下するので好ましくない。特に好ましい回折ピーク半値幅は0.080〜0.110°である。
【0019】
上記した特性を有する本発明における六方晶系リチウムコバルト複合酸化物は特定の大きさの重量平均粒径及び比表面積を有するオキシ水酸化コバルト粉末及び四三酸化コバルト粉末と、炭酸リチウム粉末とを、オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末のコバルト重量比を特定の割合にて混合し、該混合物を酸素含有雰囲気で焼成することにより製造される。
【0020】
本発明においては、コバルト原料として、特定の性状のオキシ水酸化コバルトと特定の性状の四三酸化コバルトからなる2種類のものを用いることにより、単独のコバルト原料を用いた場合からは想定できない、特段に電池特性のバランスに優れた正極活物質が製造できることが見出された。即ち、本発明で得られる正極活物質はそれぞれ単独のコバルト原料を用いた場合の相加的に得られる特性値よりも相乗的な特性値である優れた電池性能が得られる。ここで、電池性能とは高い充放電サイクル耐久性、過充電時の緩慢な発熱性及び高い電極密度達成を発現する高い充填プレス密度を同時に満足することを意味する。
【0021】
本発明において、上記2種類のコバルト原料を併用することにより何故に上記の優れた効果が得られるかについてメカニズムは必ずしも明らかでない。しかし、オキシ水酸化コバルトと四三酸化コバルトと炭酸リチウムとの反応を熱重量分析法及びDSC分析法により調べたところ、オキシ水酸化コバルトのリチウム化反応は、化学量論上約250℃から始まり約500℃でリチウム化反応がほぼは終了するのに対し、四三酸化コバルトのリチウム化反応は約600℃で反応が始まり、約750℃で反応が終了するという顕著な反応温度域の差があることが判明した。従って、かかる2種類のコバルト原料を混合してリチウム化を行うと単独の原料を用いた場合に較べて正極粒子構造が特異な微構造をとることが予想される。その結果、例えばX線回折上同じ半値幅であっても、実際は結晶径に分布が発生するため等により、電池特性に相乗的優れた効果が発現されるものと思われる。
【0022】
本発明において、コバルト原料として使用される、オキシ水酸化コバルト粉末は、重量平均粒径が1〜20μm、比表面積が2〜200m2/gを有し、四三酸化コバルト粉末は、重量平均粒径が1〜10μm、比表面積が0.1〜10m2/g、かつ炭酸リチウム粉末は重量平均粒径1〜50μm、比表面積が0.1〜10m2/gを有する。
【0023】
本発明において、オキシ水酸化コバルトの重量平均粒径が1μm未満であると、電池の安全性が低下したり、正極電極層の充填密度が低下する結果、体積当たりの容量が低下するので好ましくない。また、オキシ水酸化コバルトの重量平均粒径が20μmを超えると、初期容量が低下したり、二次電池の大電流での放電特性が低下するので好ましくない。オキシ水酸化コバルトの特に好ましい重量平均粒径は4〜15μmである。
【0024】
本発明において、オキシ水酸化コバルトの比表面積が2m2/g未満であると、大電流での放電容量が低下するので好ましくない。また、オキシ水酸化コバルトの比表面積が200m2/gを超えると、正極電極層の充填密度が低下する結果、体積当たりの容量が低下するので好ましくない。オキシ水酸化コバルトの特に好ましい比表面積は20〜100m2/gである。
【0025】
なお、オキシ水酸化コバルトは、含水状態で入手される場合があるが、かかる場合は比表面積の測定が困難である。そのため、本発明におけるオキシ水酸化コバルトの比表面積は、含水オキシ水酸化コバルトの場合は含水物を120℃にて16時間乾燥脱水した後の粉末についての比表面積を意味する。また、本発明において、含水オキシ水酸化コバルトを用いる場合は、あらかじめ乾燥して用いることが好ましく、例えば120℃で16時間乾燥した後、その粉体を用いるのが好ましい。
【0026】
本発明において、四三酸化コバルト粉末の重量平均粒径が1μm未満であると、電池の安全性が低下したり、正極電極層の充填密度が低下する結果、体積当たりの容量が低下するので好ましくない。また、四三酸化コバルト粉末の重量平均粒径が10μmを超えると、初期容量が低下したり、二次電池の大電流での放電特性が低下するので好ましくない。四三酸化コバルト粉末の特に好ましい重量平均粒径は3〜8μmである。
【0027】
本発明において、四三酸化コバルト粉末の比表面積が0.1m2/g未満であると、大電流での放電容量が低下するので好ましくない。また、四三酸化コバルト粉末の比表面積が10m2/gを超えると、正極電極層の充填密度が低下する結果、体積当たりの容量が低下するので好ましくない。四三酸化コバルト粉末の特に好ましい比表面積は1〜5m2/gである。
【0028】
本発明において、炭酸リチウムの重量平均粒径が1μm未満であると粉体の嵩密度が低下し、量産時の生産性が低下するので好ましくない。また、炭酸リチウムの重量平均粒径が50μmを超えると、初期容量が低下するので好ましくない。炭酸リチウムの特に好ましい重量平均粒径は5〜30μmである。また、炭酸リチウムの比表面積が0.1m2/g未満であると、単位重量当たりの初期放電容量が低下するので好ましくない。また、炭酸リチウムの比表面積が10m2/gを超えると、正極電極層の充填密度が低下する結果、体積当たりの容量が低下するので好ましくない。炭酸リチウムの特に好ましい比表面積は0.3〜3m2/gである。
【0029】
本発明において、上記オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末のコバルト質量比は、1/4〜4/1の割合にて混合することが必要である。かかる割合が、1/4未満であると電極層の密度が低下し体積容量密度が低下したり、充放電サイクル耐久性が低下するので好ましくない。一方、かかる割合が4/1を超える場合、過充電安全性及び充放電サイクル耐久性が低下するので好ましくない。オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末のコバルト質量比は、1/2〜2/1が特に好ましい。
【0030】
本発明においては、オキシ水酸化コバルト粉末と、四三酸化コバルト粉末と、炭酸リチウム粉末とを乾式混合後、好ましくは、850〜1070℃で4〜60時間、酸素含有雰囲気で焼成する。この場合、湿式混合は生産性が低いので好ましくない。焼成温度が850℃未満であると、安全性が低下したり、充放電サイクル耐久性が低下するので好ましくない。焼成温度が1070℃を超えると、初期容量が低下したり、安全性が低下するので好ましくない。特に好ましい焼成温度は950〜1050℃である。また、焼成時間が4時間未満であると、量産時に焼成状態が不均一になり特性にバラツキを生じ易いので好ましくない。一方、60時間以上であると生産性が低下するので好ましくない。特に好ましくは8〜20時間の焼成時間が採用される。
この焼成は酸素含有雰囲気下で行なうことが必要である。酸素濃度は10〜100体積%であり、特に好ましくは19〜50体積%である。酸素濃度が低いと活物質の電池性能が低下するので好ましくない。
【0031】
本発明の製造リチウム二次電池は、初期容量を維持しつつ、従来の活物質より高い安全性、充放電サイクル耐久性が優れている。本発明によるリチウムコバルト複合酸化物のなかでも、リチウム複合酸化物の充填プレス密度が2.90〜3.35g/cm3である活物質が、正極の電極層における単位体積当たりの容量密度を高くできるので好ましい。本発明において、充填プレス密度とは、リチウム複合酸化物粉末を0.3t/cm2の荷重でプレスしたときのプレス成形体の見掛け密度を意味する。
【0032】
上記充填プレス密度が2.90g/cm3未満であると、塗工・プレス時の正極電極層の密度が低下する結果、体積当たりの容量が低下するので好ましくない。充填プレス密度が3.35g/cm3を超えると、電池の高電流密度での容量発現性が低下するので好ましくない。リチウム複合酸化物の充填プレス密度は3.05〜3.25g/cm3が特に好ましい。
【0033】
また、本発明における六方晶系リチウムコバルト複合酸化物では、そこに含まれるコバルトの原子比の1モル%以下、好ましくは、0.05〜0.5モル%を周期表4族又は5族の元素で置換することもできる。かかる場合には、得られる六方晶系リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質とするリチウム電池の内部抵抗が低下し、大電流での充放電特性を向上できるので大電流放電用途の電池には好ましい。周期表4族又は5族の元素としては、Ti、Nb、Ta又はZrが特に好ましい。上記の置換が1モル%以上であると電池の初期容量が低下するので好ましくない。
【0034】
本発明において、上記周期表4族又は5族の元素化合物を添加する場合に使用される原料化合物の例としては、水酸化物、酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。化合物が、水溶性の塩である場合は、金属塩水溶液を上記して製造の過程において、オキシ水酸化コバルトと四三酸化コバルト粉末と炭酸リチウムの粉末混合物に、スプレー噴霧することにより混合添加できる。水酸化物や酸化物のような難水溶性化合物である場合は、周期表4族又は5族の元素の水酸化物や酸化物の微粉末を混合すればよい。
【0035】
上記のように得られる本発明の六方晶系リチウムコバルト複合酸化物からリチウム電極の正極を製造する場合、該複合酸化物の粉末に、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチエンブラック等のカーボン系導電材と結合材を混合することにより正極合剤を形成する。結合材には、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂等が用いられる。上記正極合剤及び該合剤中の結合材の溶媒または分散媒からなる、スラリーまたは混練物をアルミニウム箔、ステンレス箔等の正極集電体に塗布/担持させて正極板とする。セパレータには多孔質ポリエチレンフィルム、多孔質ポリプロピレンフィルム等が使用される。
【0036】
本発明の六方晶系リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として用いるリチウム電池において、電解質溶液の溶媒としては炭酸エステルが好ましい。炭酸エステルは環状、鎖状いずれも使用できる。環状炭酸エステルとしてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)等が例示される。鎖状炭酸エステルとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等が例示される。
【0037】
本発明では、上記炭酸エステルを単独でまたは2種以上を混合して使用できる。また、他の溶媒と混合して使用してもよい。また、負極活物質の材料によっては、鎖状炭酸エステルと環状炭酸エステルを併用すると、放電特性、サイクル耐久性、充放電効率が改良できる場合がある。
【0038】
また、これらの溶媒にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えばアトケム社カイナー)、あるいはフッ化ビニリデン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体を添加し、下記の溶質を加えることによりゲルポリマー電解質としても良い。
【0039】
電解質溶液またはポリマー電解質の溶質としては、ClO4−、CF3SO3−、BF4−、PF6−、AsF6−、SbF6−、CF3CO2−、(CF3SO22N−等をアニオンとするリチウム塩のいずれか1種以上を使用することが好ましい。上記の電解質溶液またはポリマー電解質中の溶質(例えば上記のリチウム塩)は0.2〜2.0mol/l(リットル)の濃度とするのが好ましい。この範囲を逸脱すると、イオン伝導度が低下し、電解質の電気伝導度が低下する。より好ましくは0.5〜1.5mol/lが選定される。また、いわゆるリチウムイオン導電性の常温溶融塩を電解液として用いても良い。常温溶融塩としては、トリメチルプロピルアンモニウムービス(トリフルオロメタンースルフォニル)イミド−リチウム塩や、1−エチルー3−イミダゾリウム−BF4塩等が例示される。
【0040】
本発明の正極活物質を用いる二次電池において、負極活物質には、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料が用いられる。この負極活物質を形成する材料は、この性質を有するものであれば特に限定されないが、例えばリチウム金属、リチウム合金、炭素材料、周期表14、15族の金属を主体とした酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等が挙げられる。
【0041】
炭素材料としては、様々な熱分解条件で有機物を熱分解したものや人造黒鉛、天然黒鉛、土壌黒鉛、膨張黒鉛、鱗片状黒鉛等を使用できる。また、酸化物としては、酸化スズを主体とする化合物が使用できる。負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔等が用いられる。
【0042】
本発明における正極活物質を用いる二次電池における正極及び負極は、活物質を有機溶媒と混練してスラリーとし、該スラリーを金属箔集電体に塗布、乾燥、プレスして得ることが好ましい。本発明のリチウム電池の形状には特に制約はない。シート状(いわゆるフイルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒形、ボタン形等が好ましく挙げられ、用途に応じて選択される。
【0043】
本発明において、過充電に対する正極の反応性は次のようにして評価した。即ち、評価すべき正極粉末を用いて正極板を製作し、リチウムを負極として平行板単極セルを組み立て、4.9Vまで過充電を行い、不活性ガス雰囲気内で解体し、充電後の正極体シートを取り出し、その正極体シートを溶媒で洗滌後、その一定重量を、ECとともにアルミカプセルに密閉し、走査型差動熱量計にて5℃/分の速度で昇温して発熱の開始する温度と発熱の終了する温度を測定し、過充電時の発熱所要時間を求めた。発熱所要時間が短いことは急激に発熱が起こることを意味し、現実の積層型あるいは円筒型リチウムイオン電池においては反応熱が電池内部に蓄積され、外部に熱放出する速度に制約があるため、正極上での電解液の酸化分解にともない発生する急激な発熱により、安全弁の作動を待たずに電池が破裂するおそれがあるので発熱所要時間は長い方が過充電安全性が高いことを意味する。
【0044】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
重量平均粒径14μmかつ比表面積が45m2/gのオキシ水酸化コバルト粉末と、重量平均粒径3.5μmかつ比表面積が1.0m2/gの四三酸化コバルト粉末と重量平均粒径15μmかつ比表面積が1.1m2/gの炭酸リチウム粉末とを混合した。オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末の混合比はコバルト質量比で1:1とした。これら3種の粉末を乾式混合した後、空気に酸素ガスを添加することにより酸素濃度を28体積%とした雰囲気にて、1000℃で16時間焼成し、粉砕した。
【0045】
焼成・粉砕後の粉末について、理学電機製RINT 2100型X線回折装置を用いてX線回折スペクトルを得た。CuKα線を使用したこの粉末X線回折において、2θ=66.5±1°付近の(110)面の回折ピーク半値幅は0.103°であった。このリチウムコバルト複合酸化物粉末を0.3t/cm2でプレスし、その体積と重量から充填プレス密度を求めたところ、3.12g/cm3であった。また、重量平均粒径は、9.5μm、BET法で求めた比表面積は0.45m2/gであった。
【0046】
残存アルカリ量は乾燥した試料約10を精秤し、100mlのビーカーにいれ、50mlの純水を加え、ビーカー内を窒素ガスで置換した後、約1時間マグネチックスタラーで攪拌し、30分放置後、3500回転で遠心沈降せしめ、上澄み液30mlをサンプリングし、1/10規定塩酸でpH8.0までに中和するのに要した酸当量と、さらにpH4.0まで中和するのに要した酸当量から、残存炭酸リチウム含量と、残存水酸化リチウム含量をもとめ、残存アルカリ重量含有率として求めた。その結果、活物質中のアルカリ含量は0.028質量%であり残存水酸化リチウム含量は0.002質量%、残存炭酸チリウム含量は0.026質量%であった。
【0047】
このようにして得たLiCoO2粉末と、アセチレンブラックと、ポリテトラフルオロエチレン粉末とを80/16/4の重量比で混合し、トルエンを添加しつつ混練、乾燥し、厚さ150μmの正極板を作製した。
そして、厚さ20μmのアルミニウム箔を正極集電体とし、セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用いた。厚さ500μmの金属リチウム箔を負極に用い、負極集電体にニッケル箔20μmを使用し、電解液には1M LiPF6/EC+DEC(1:1)を用いてステンレス製簡易密閉セル型電池をアルゴングローブボックス内で2個組み立てた。
【0048】
その内の1個の電池については、25℃にて正極活物質1gにつき75mAの負荷電流で4.3Vまで充電し、正極活物質1gにつき75mAの負荷電流にて2.5Vまで放電して初期放電容量を求めた。さらに、この電池について、引き続き充放電サイクル試験を30回行なった。その結果、25℃、2.5〜4.3Vにおける初期放電容量は150mAh/gであり、30回充放電サイクル後の容量維持率は96.7%であった。
【0049】
また、他方の電池については、25℃にて正極活物質1gにつき37.5mAの負荷電流で4.9Vまで過充電を行い、アルゴングローブボックス内で解体し、充電後の正極体シートを取り出し、その正極体シートを溶媒で洗滌後、径3mmに打ち抜き、ECとともにアルミカプセルに密閉し、走査型差動熱量計にて5℃/分の速度で昇温して発熱の開始する温度と発熱の終了する温度を測定し、過充電時の発熱所要時間を求めた。その結果、その発熱所要時間は12.6分であった。
【0050】
また一方で、LiCoO2粉末と、アセチレンブラックと、PVDFバインダとを90/5/5の重量比で混合し、NMPを媒体として混合して塗工スラリーを調製し、これをドクターブレードにより20μのアルミニウム箔上に塗工したのち熱風乾燥してNMPを除去し、ロールプレス圧延を行い正極電極シートを作製した。また、セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用いた。厚さ500μmの金属リチウム箔を負極に用い、負極集電体にニッケル箔20μmを使用し、電解液には1M LiPF6/EC+DEC(1:1)を用いてステンレス製簡易密閉セル型電池をアルゴングローブボックス内で組み立てた。この電池を用い、25℃にて正極活物質1gにつき75mAの負荷電流で4.3Vまで充電し、正極活物質1gにつき75mAの負荷電流にて2.5Vまで放電し、再度75mAの負荷電流で4.3Vまで充電し、25℃における10mHz〜100KHzにおける交流インピーダンスを測定した。その結果セルの交流インピーダンスは12.5Ωであった。
【0051】
[実施例2]
オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末の混合比はコバルト質量比で2:1とした他は実施例1と同様な条件でLiCoO2粉末を合成した。実施例1と同様にして求めた(110)面の回折ピーク半値幅は0.101°であった。また、また、重量平均粒径は、9.6μm、BET法で求めた比表面積は0.48m2/gであった。
【0052】
実施例1と同様にして、充填プレス密度を求めたところ、3.16g/cm3であった。また、実施例1と同様にして求めた活物質中のアルカリ含量は0.030質量%であった。残存水酸化リチウム含量は0.002質量%、残存炭酸チリウム含量は0.028質量%であった。実施例1と同様にして初期容量と容量維持率を求めた結果、初期放電容量は150mAh/gであり、30回充放電サイクル後の容量維持率は96.8%であった。実施例1と同様にして求めた過充電時の発熱所要時間は12.0分であった。
【0053】
[実施例3]
オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末の混合比はコバルト質量比で1:2とした他は実施例1と同様な条件でLiCoO2粉末を合成した。また、量平均粒径は、9.5μm、BET法で求めた比表面積は0.42m2/gであった。実施例1と同様にして求めた(110)面の回折ピーク半値幅は0.104°であった。実施例1と同様にして、充填プレス密度を求めたところ、3.08g/cm3であった。
【0054】
また、実施例1と同様にして求めた活物質中のアルカリ含量は0.024質量%であった。残存水酸化リチウム含量は0.001質量%、残存炭酸チリウム含量は0.023質量%であった。実施例1と同様にして初期容量と容量維持率を求めた結果、初期放電容量は149mAh/gであり、30回充放電サイクル後の容量維持率は96.2%であった。実施例1と同様にして求めた過充電時の発熱所要時間は13.3分であった。
【0055】
[実施例4]
重量平均粒径14μmかつ比表面積が45m2/gのオキシ水酸化コバルト粉末と、重量平均粒径3.5μmかつ比表面積が1.0m2/gの四三酸化コバルト粉末と、重量平均粒径15μmかつ比表面積が1.1m2/gの炭酸リチウム粉末と平均粒径0.15μmかつ比表面積が5.3m2/gの酸化ニオブNb25粉末とを混合した。オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末の混合比はコバルト重量比で1:1とした。これら4種の粉末を乾式混合した後、空気に酸素ガスを添加することにより酸素濃度を28体積%とした雰囲気下、1010℃にて16時間焼成、粉砕した。
【0056】
実施例1と同様にして求めた(110)面の回折ピーク半値幅は0.110°であった。また、重量平均粒径は、9.7μm、BET法で求めた比表面積は0.47m2/gであった。実施例1と同様にして、充填プレス密度を求めたところ、3.15g/cm3であった。
また、実施例1と同様にして求めた活物質中のアルカリ含量は0.028質量%であった。残存水酸化リチウム含量は0.001質量%、残存炭酸チリウム含量は0.025質量%であった。実施例1と同様にして初期容量と容量維持率を求めた結果、初期放電容量は150mAh/gであり、30回充放電サイクル後の容量維持率は97.0%であった。実施例1と同様にして求めた交流インピーダンスは9.5Ωであった。
【0057】
[実施例5]
重量平均粒計14μmかつ比表面積が45m2/gのオキシ水酸化コバルト粉末と、重量平均粒径3.5μmかつ比表面積が1.0m2/gの四三酸化コバルト粉末と、重量平均粒径15μmかつ比表面積が1.1m2/gの炭酸リチウム粉末と、平均粒径0.22μmかつ比表面積が9m2/gのアナターゼ型二酸化チタン粉末とを混合した。オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末の混合比はコバルト重量比で1:1とした。これら4種の粉末を乾式混合した後、空気に酸素ガスを添加することにより酸素濃度を28体積%とした雰囲気下、1000℃にて16時間焼成し、粉砕した。
【0058】
発光分光分析とICP法によりもとめた組成はLiCo0.998Ti0.0022であった。また、重量平均粒径は、9.7μm、BET法で求めた比表面積は0.47m2/gであった。実施例1と同様にして求めた(110)面の回折ピーク半値幅は0.108°であった。実施例1と同様にして、充填プレス密度を求めたところ、3.14g/cm3であった。
【0059】
また、実施例1と同様にして求めた活物質中のアルカリ含量は0.020質量%であった。残存水酸化リチウム含量は0.001質量%、残存炭酸チリウム含量は0.019質量%であった。実施例1と同様にして初期容量と容量維持率を求めた結果、初期放電容量は150mAh/gであり、30回充放電サイクル後の容量維持率は97.3%であった。実施例1と同様にして求めた交流インピーダンスは9.8Ωであった。
【0060】
[比較例1]
実施例1において、オキシ水酸化コバルトを用いずに、重量平均粒径3.5μmかつ比表面積が1.0m2/gの四三酸化コバルト粉末のみと重量平均粒径15μmかつ比表面積が1.1m2/gの炭酸リチウム粉末とを混合し実施例1と同様な条件でLiCoO2粉末を合成した。
このようにして得たLiCoO2粉末を用いた他は、実施例1と同様にして求めた(110)面の回折ピーク半値幅は0.109°であった。実施例1と同様にして、充填プレス密度を求めたところ、2.84g/cm3であった。また、重量平均粒径は、9.5μm、BET法で求めた比表面積は0.40m2/gであった。
【0061】
また、実施例1と同様にして求めた活物質中のアルカリ含量は0.024質量%であった。残存水酸化リチウム含量は0.001質量%、残存炭酸チリウム含量は0.023質量%であった。実施例1と同様にして初期容量と容量維持率を求めた結果、初期放電容量は147mAh/gであり、30回充放電サイクル後の容量維持率は94.1%であった。実施例1と同様にして求めた過充電時の発熱所要時間は13.5分であった。
【0062】
[比較例2]
実施例1において、四三酸化コバルト粉末を用いずに、重量平均粒計14μmかつ比表面積が45m2/gのオキシ水酸化コバルト粉末のみと重量平均粒径15μmかつ比表面積が1.1m2/gの炭酸リチウム粉末とを混合し実施例1と同様な条件でLiCoO2粉末を合成した。このようにして得たLiCoO2粉末を用いた他は、実施例1と同様にして求めた(110)面の回折ピーク半値幅は0.110°であった。実施例1と同様にして、充填プレス密度を求めたところ、3.19g/cm3であった。また、重量平均粒径は、9.6μm、BET法で求めた比表面積は0.49m2/gであった。
【0063】
また、実施例1と同様にして求めた活物質中のアルカリ含量は0.030質量%であった。残存水酸化リチウム含量は0.002質量%、残存炭酸リチウム含量は0.028質量%であった。実施例1と同様にして初期容量と容量維持率を求めた結果、初期放電容量は150mAh/gであり、30回充放電サイクル後の容量維持率は96.0%であった。実施例1と同様にして求めた過充電時の発熱所要時間は9.0分であった。
【0064】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られるリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質に用いることにより、広い電圧範囲での使用を可能とし、大きな電気容量と優れた過充電安全性を有する充放電サイクル耐久性に優れた安全性の高い非水電解液二次電池が得られる。

Claims (7)

  1. 重量平均粒径が1〜20μm及び比表面積が2〜200m2/gであるオキシ水酸化コバルト粉末と、重量平均粒径が1〜10μm及び比表面積が0.1〜10m2/gの四三酸化コバルト粉末と、重量平均粒径が1〜50μm及び比表面積が0.1〜10m2/gである炭酸リチウム粉末とを、オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末のコバルトとの重量比を1/4〜4/1の割合にて混合し、酸素含有雰囲気で焼成してなる、重量平均粒径が5〜15μm及び比表面積が0.15〜0.60m2/gであることを特徴とするリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  2. 上記オキシ水酸化コバルト粉末と四三酸化コバルト粉末のコバルト重量比が1/2〜2/1である請求項1に記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  3. 前記リチウムコバルト複合酸化物に含まれるコバルトが、原子比でその1%以下が周期表4族または5族の元素で置換されている請求項1又は2に記載のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  4. アルカリ含有量が0.03質量%未満であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  5. 前記アルカリ含有量のうち、水酸化リチウム含有量は0.005質量%未満である請求項1〜4のいずれか一つに記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  6. 前記リチウムコバルト複合酸化物が、CuKαを線源とするX線回折によって測定される2θ=66.5±1°の(110)面回折ピーク半値幅が0.070〜0.120°である請求項1〜5のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  7. 前記混合物の酸素含有雰囲気下での焼成を850〜1070℃で4〜60時間で行う請求項1〜6のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用六方晶系リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
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