JP4755100B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
1.PDPの構造
面放電AC型PDPの構成について図11を用いて説明すると、面放電AC型PDPでは、前面板702と背面板703とが、放電空間を挟んで対峙する構成となっている。
誘電体層707は、鉛系ガラス材料を主成分とする低融点ガラスペーストが印刷法によって塗布された後焼成される厚膜プロセスを経て形成されたものであり、その膜厚が約40[μm]に設定されている。
保護膜708は、その膜厚が数百[nm]に設定され、電気絶縁性の高いMgOを主成分とする。
上記の一つの表示電極対704と、背面板703を構成する一本のデータ電極712とが立体交差する領域を放電セルと呼び、図11に示した領域が放電セルに該当する。
画像表示単位である放電セルが複数個マトリクス状に配されてPDPとなる。PDPに、公知の駆動回路や制御回路などが備えられてPDP装置となる。
2.PDPの駆動方法
上記のPDPを、3つの動作期間、すなわち(1)全表示セルを初期化状態にする初期化期間、(2)各放電セルをアドレスし、各セルへ入力データに対応した表示状態を選択・入力していくデータ書き込み期間、(3)表示状態にある放電セルを表示発光させる維持放電期間、から構成されるアドレス・表示分離駆動方式により駆動表示させる。
しかしながら、従来のPDPでは、既述したようにバス電極709および誘電体層707が焼成工程を含む厚膜プロセスを経て形成されたものであり、当該焼成工程は500〜600[℃]の高温プロセスであり、焼成後のバス電極709に、ペースト中に含まれるバインダー焼成物が残留することがある。
かかる問題に対し、Cr、Cuを真空蒸着で2重に積層した電極上に直接被覆したAl2O3からなる第1層とSiO2を80%含むガラスからなる第2層とAl2O3からなる第3層とが順に真空蒸着法あるいはスパッタリング法によって積層されてなる多層膜構造の誘電体層が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、電極の上にCVD法、スパッタ,蒸着の真空プロセスによって形成された金属酸化物からなる下層と、その下層の上に形成された誘電体ガラスからなる上層とからなる誘電体層が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
例えば、特許文献3には、走査電極と維持電極とで挟まれた間隙に補助電極(トリガ電極)対を配置し、各補助電極が、各放電セルにおいて、放電セル端部より中央部で広い面積を有するように、その中央部にて翼部を設けたものが開示されている。このように翼部を設けると、翼部どうしに挟まれた間隙にてまず放電が開始されるので、低い維持放電電圧、放電開始電圧でも確実に維持放電が開始され、維持放電時の放電効率を改善することができる。
即ち、保護膜を構成するMgOなどの金属酸化物は、水(H2O)や二酸化炭素(CO2)などの不純物ガスを吸着して、容易に水酸化化合物や炭酸化合物に変質するという性質があるため、水酸化化合物や炭酸化合物に変質したMgOを主成分とする保護膜を備えたPDPは、本来のMgOを主成分とする保護膜を備えたPDPに比べると、2次電子放出効率が低く、したがって、放電開始電圧が高くなり、かつ耐スパッタ特性が低下してしまうという問題がある。
また、放電遅れが低減できれば、放電開始電圧を下げても確実に維持放電を開始させることができるはずであるが、上記特許文献4に記載の発明では、放電遅れを低減できる一方で、副表示電極対801で放電が起きるときに同時に主表示電極対802で放電が起きるように電圧値を設定しているので、結果として、維持放電を発生させるための電圧値を高く設定する必要があり、放電開始電圧が、約180[V]と、高くなり、PDPに要求される消費電力低減要求に対して不十分である。
すなわち、本発明のプラズマディスプレイパネルでは、放電空間を挟んで一対の基板を対向配置させ、一方の基板において上記放電空間側主面に複数の表示電極対を延伸配設させ、上記表示電極対は第1電極および第2電極からなり、上記第1電極および上記第2電極のそれぞれが、帯状の透明電極と、上記透明電極の放電空間側主面に設けられ、かつ上記透明電極の短手方向幅よりも狭い幅を有するバス電極とからなり、上記表示電極対を覆うように上記一方の基板の上記放電空間側主面に誘電体層を積層させ、上記誘電体層の上記放電空間側主面に保護膜を積層させたプラズマディスプレイパネルに対し、上記誘電体層に、1.0×106[V/cm]以上1.0×107[V/cm]以下の絶縁耐圧を備えさせた。
また、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法では、基板主面に誘電体層を積層するステップと、上記誘電体層の主面に保護膜を積層するステップと、上記保護膜が積層された上記基板を搬送または保管するステップとを含むプラズマディスプレイパネルの製造方法に対し、保護膜積層ステップから保護膜積層基板搬送・保管ステップまで、減圧状態を維持させた。
また、本発明のPDPでは、第1電極または第2電極の少なくとも一方において、同電極にて隣り合う突出部を、上記基部からの突出長さを同寸法とし、かつ一対として、一対の突出部を構成する各突出部の先端部分を、基部の主面に平行な面において、多角形状または曲線状の輪郭で形成させたうえで、上記各突出部に以下<1>から<3>のいずれかの特徴を与えた。
<2> 一対の突出部を構成する各突出部どうしの間隙を、上記基部側よりも突出部先端側で狭くなるようにした。
<3> 一対の突出部を構成する各突出部の先端部分を、互いに接近するように屈曲させた。
よって、本発明に係るプラズマディスプレイパネルでは、放電開始電圧、維持放電電圧を低減させ、発光効率を向上させることができる。
本発明のPDPにおいて、誘電体層が誘導結合プラズマ−化学気相成長法(ICP−CVD法)により形成された履歴を有していれば、従来のPDPに比べて、高速形成可能な誘電体層とすることができ、量産性が高くなって好ましい。
また、誘電体層の比誘電率εと誘電体層の膜厚dとの比(ε/d)が0.1以上0.3以下に設定されれば、静電容量の増大を抑制することができ、維持放電の発生に必要十分な放電電流を超えて過剰な放電電流が流れることを抑制することができるので、発光効率の向上が確実となって好ましい。
したがって、かかる場合には、放電の開始しやすい箇所を複数設けることができ、放電セル内において突出部が一対のみのものに比べると、放電空間における電界強度がより向上し、放電を開始させやすくなり、放電開始電圧を下げても、確実に維持放電を開始させることができ、上記効果がさらに大きくなる。
よってかかる場合には、従来のPDPならびに放電セル内において突出部が一対のみ設けられたPDPに比べて、維持放電を確実に開始させる放電開始電圧、維持放電電圧を低減でき、PDPの消費電力を低減できるので好ましい。
異電極の突出部に臨む突出部辺を、帯状基部の主面に平行な面において、多角形状または曲線状の輪郭で形成させた場合には、上記第1電極と第2電極とに給電して維持放電させるときに、上記突出部にて電位が集中するとともに上記突出部辺において電位がさらに集中するようになり、放電空間における電界強度がさらに強められ、低い電圧でも確実に放電を開始させることができるとともに、確実に放電を開始させることのできる箇所が複数あることから、上記効果が大きい。
また、バス電極が、アルミニウム(Al)およびネオジム(Nd)を主成分に含んで真空中あるいは減圧下で形成された履歴を有している場合、従来のPDPに比べて、低抵抗かつ膜厚を薄くすることができ、従来のPDPに比べて、バス電極を覆うように薄い誘電体層が積層されても誘電体層において厚み差が生じることを抑制することができ、したがって誘電体層を薄くすることができ、かつ駆動中にマイグレーションが発生することを抑制でき、好ましい。
さらに、上記第1電極および上記第2電極のそれぞれを、帯状の基部と、当該基部から他方の基部に向けて突出形成された突出部とで構成させ、当該基部を、バス電極と透明電極とで構成し、当該第1電極の突出部と、第2電極の突出部とを、その先端が、基部の主面と平行な面において、鋭角形状の輪郭となるように、かつ当該バス電極から分岐して、当該バス電極と同種の材料で形成させた場合には、突出部にて電位が集中するとともにその先端にて電位がさらに集中するので、放電空間においてより電解強度が強められ、低い電圧であっても維持放電を確実に開始させることができ、上記効果が大きい。
上記保護膜が、MgOを主成分に含んでおり、真空中あるいは減圧下で上記誘電体層の上記放電空間側主面に積層され、かつ上記一対の基板が張り合わされるまで真空あるいは減圧状態が維持されて保管された履歴を有する場合、従来のPDPに比べて、保護膜中の不純物が抑制されるので、保護膜の二次電子放出係数、および耐スパッタ性が向上し、保護膜として放電開始電圧を低下させ耐スパッタ特性をさらに向上させることができ、発光効率と信頼性をさらに向上させることができ、好ましい。
また、本発明のPDPの製造方法では、誘電体層積層ステップから誘電体層積層基板搬送・保管ステップまで、減圧状態を維持するため、あるいは、保護膜積層ステップから保護膜積層基板搬送・保管ステップまで、減圧状態を維持するため、形成された誘電体層または保護膜が、大気に接触することがなく、すなわち、従来のPDPの製造方法に比べて不純物ガスを吸着することを抑制することができる。
したがって、従来のPDPに比べて、寿命の長いPDPを作製することができ、信頼性の高い、品質の安定したPDPを製造することができる。
上記基板が、前面用基板であれば、前面用基板に形成された誘電体層または保護膜に不純物ガスを吸着させず、特に前面板にPDPの寿命を縮める要因が多いことから、上記効果が大きい。
上記保護膜積層ステップにおいて、Mg原子およびO原子を主成分に含む材料を用い、真空成膜プロセス法により上記保護膜を積層する場合、真空成膜プロセス方法が低温プロセスであることから、保護膜積層ステップにおいて、高温プロセスによって生じる基板等の反りや割れの発生を抑制することができ、上記効果が大きい。
上記ステップを、室温以上300[℃]以下の雰囲気中で行う場合、上記パネルの反りおよび割れの発生を抑制することが確実となって好ましく、また、従来のPDPの製造方法に比べると、上記ステップにおいて、加工時間の短縮、加工に要する電力の消費低減、配線材料の選択範囲の拡大を図ることができる。
したがって、かかる場合では、従来のPDPの製造方法に比べて、誘電体層を薄く積層することができ、駆動時において放電空間の電界強度が従来のPDPに比べて強いPDPを製造することができ、よって、放電維持電圧、放電開始電圧を低減可能な、放電効率の高いPDPを製造することができ、好ましい。
本発明のPDPでは、上記第1電極および第2電極のそれぞれを、帯状の基部と、当該基部から上記放電セルごとに他方の基部に向けて突出形成された複数の突出部とで構成したことにより、第1電極および第2電極に給電したときに、放電セル内において、複数の突出部にて電位が集中し、従来のPDPに比べて、放電空間にて電解強度が向上する。
その結果、本発明のPDPでは、従来のPDPに比べて、放電開始電圧を下げても、確実に維持放電を開始させることができ、放電開始電圧、維持放電電圧を低下させることができる。
よって、本発明のPDPでは、従来のPDPならびに放電セル内において突出部が一対のみ設けられたPDPに比べて、維持放電を確実に開始させる放電開始電圧、維持放電電圧を低減でき、PDPの消費電力を低減できる。
異電極の突出部に臨む突出部辺を、帯状基部の主面に平行な面において、多角形状または曲線状の輪郭で形成させた場合には、上記第1電極と第2電極とに給電して維持放電させるときに、上記突出部にて電位が集中するとともに上記突出部辺において電位がさらに集中するようになり、低い電圧でも確実に放電を開始させることができるとともに、確実に放電を開始させることのできる箇所が複数あることから、上記効果が大きい。
上記基部の少なくとも一方を、バス電極と透明電極とで構成し、上記突出部を、当該バス電極から分岐させ、当該バス電極と同種の材料で形成した場合には、バス電極を形成する際に、同時に突出部も形成することができ、かつ、バス電極の形成において用いられる微細加工工程を突出部形成においても用いることができ、また、バス電極から突出部までの電気抵抗を低くすることができる。
さらに、本発明のPDPでは、上記第1電極および上記第2電極のそれぞれを、帯状の基部と、当該基部から他方の基部に向けて突出形成された突出部とで構成させ、当該基部を、バス電極と透明電極とで構成し、当該第1電極の突出部と、第2電極の突出部とを、その先端が、基部の主面と平行な面において、鋭角形状の輪郭となるように、かつ当該バス電極から分岐して、当該バス電極と同種の材料で形成されたことにより、突出部にて電位が集中するとともにその先端にて電位がさらに集中するので、放電空間においてより電解強度が強められ、低い電圧であっても維持放電を確実に開始させることができ、突出部をバス電極と同時に形成することができ、また、バス電極から突出部先端までの電気抵抗を低減できる。
なお、以上に述べた本発明の各構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1におけるPDP101の単位放電セルを隔壁114に垂直な面で切断した断面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるX−Yで示した面で切断した断面図である。なお、図1では、便宜上、PDPの単位放電セルだけ表示しているが、実施の形態1におけるPDPでは、赤,緑,青の各色を発光する放電セルが複数マトリクス状に配列されている。
図1(a)に示すように、PDP101は、前面板102と背面板103とが対向配置されてなる。PDP101における前面板102では、薄い基板110の一方の主面に、表示電極対104が形成され、表示電極対104が形成された基板110主面を覆うように、誘電体層107と保護膜108とが順に積層されている。基板110は、例えば、ガラス材料からなり、厚みt1が約1.1[mm]である。
走査電極105および維持電極106の各々では、基板110の主面上に、ITO(酸化インジウムスズ)からなる比較的抵抗が高い透明電極151、161が、その膜厚が例えば約100[nm]に設定されて、それぞれ幅広の帯状にパターンニングされてなる。
走査電極105および維持電極106では、透明電極151、161の電気抵抗を下げるために、透明電極151、161主面に、例えばAl−Nd(アルミニウム−ネオジム)を主成分とするバス電極159,169が配されている。
バス電極159,169は、これに限定されず、少なくともAlおよび希土類金属を主成分に含んでいても良い。
バス電極159,169は、その厚みが約1[μm]に設定されている。
本実施の形態では、バス電極159,169を、Al系金属合金薄膜をスパッタリング法により成膜し、ドライエッチング法によりパターニングして積層したため、バス電極159,169の厚みを容易に上記数値に設定することができる。
上記において、真空成膜プロセス法とは、真空状態の中で薄膜を形成するプロセスによる方法を指し、真空成膜プロセス法には、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、プラズマビーム蒸着法、各化学気相成長法(CVD法)、スパッタリング法などが含まれる。
バス電極159,169は、従来のPDPに比べて、厚みが小さいが、Al−Ndを主成分とする金属体は、Agを主成分に含む金属体に比べて、均質で、優れた電気特性(低抵抗)を有しており、バス電極159,169では、Al−Ndが主成分として含まれていることから、その厚みを小さくしても、従来のPDPのAgを主成分に含むバス電極と同等の性能(例えば、抵抗特性)を維持することができる。
誘電体層107は、AC型PDP特有の電流制限機能であるメモリ性を備えており、比誘電率εが約4に設定され、例えばSiO2を95%含む材料からなり、その膜厚dが約5[μm]に設定されている。
一般にSiO2を主成分とする誘電体層107をCVD法で積層すれば、その比誘電率εが4以上5以下の範囲内に収まり、所謂low−k材料を用いて誘電体層107を積層するとその比誘電率εが2以上3以下の範囲内に収まるからである。
比誘電率εが2以上3以下の範囲に設定された誘電体層107を積層するためには、所謂low−k材料として、例えば、SiOCやSiOFなどを用いればよい。
誘電体層107の厚みdは、これに限定されず、1[μm]以上10[μm]以下の範囲に設定されていれば良い。
誘電体層107の厚みdが1[μm]未満だと、絶縁耐圧強度が不足して歩留まりが低下し、また、10[μm]より大きいと、放電開始電圧、放電維持電圧の低減降下が十分に得られないからである。
誘電体層107の積層過程において、テトラエトキシシラン(TEOS)と、Si原子およびO原子を含む誘電体層原料とを使用して、誘導結合プラズマCVD法(ICP−CVD法)などの各種CVD方法によって誘電体層107を積層したので、誘電体層107では、従来のPDPに比べて、絶縁耐圧が高くなり、層構造が緻密である。
ガラスのバルク材料の絶縁耐圧が1.0×107[V/cm]程度で、これより大きい絶縁耐圧が望めないからであり、また、絶縁耐圧が1.0×106[V/cm]未満であると、誘電体層107の厚みdは、その上限が10[μm]で、従来の誘電体層の厚み(d=40[μm])と比べて1/4となることから、絶縁耐圧が従来の誘電体層の絶縁耐圧(2.5×105[V/cm])の4倍(1.0×106[V/cm])に満たなくなり、絶縁破壊を生じる恐れがあるからである。
誘電体層107では、絶縁耐圧が高く、層構造が緻密であるため、誘電体層107の比誘電率εが2以上5以下の範囲内にある場合、従来のPDPに比べて、誘電体層107の厚みdを、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内で小さくしても、十分な耐電圧を維持することができる。
しかしながら、誘電体層107の厚みdをあまりに小さくすると、静電容量cが大きくなるため、維持放電の発生に必要十分な放電電流を超えて過剰な放電電流が流れ、かえって、発光効率を低下させてしまう。
(ε/d)が0.3より大きいと、従来のPDPの(ε/d)が0.3より大きいことから、発光効率の向上が期待できないからであり、また、CVD法で成膜すると、厚みdを20[μm]より大きく成膜することが困難となり、比誘電率εの下限が2であることに鑑みれば、(ε/d)を0.1未満とすることが困難だからである。
さらに、本実施の形態では、従来のPDPに比べて、誘電体層107の厚みdが小さいので、パネル組立工程における熱プロセスで、ガラス基板110とその主面に積層された誘電体層107との熱膨張差によって基板に反りが生じることを低減させることができ、寿命が長く、品質が高い。
また、本実施の形態では、誘電体層107が、バス電極159,169を含む表示電極対104を覆ってCVD法で形成されているので、表示電極対104の凹凸に沿って誘電体層107が形成されているという点で従来のPDPに比べて優れており、かつ誘電体層107の厚みdが均一となって、従来の圧膜法によって形成された誘電体層を備えるPDPと比べ、電極エッジに対応する誘電体層107の領域において、誘電体層107の厚みdが小さくなることを抑制でき、したがって、誘電体層107の耐電圧も向上する。
MgO(酸化マグネシウム)は、2次電子放出係数γの大きい材料であるとともに、耐スパッタ性も高く、光学的に透明な材料であるので、保護膜108の材料として広く用いられている。
誘電体層107および保護膜108は、放電によって発生した高エネルギーのイオンによって上記表示電極対104の表面がスパッタリングされ劣化するのを防止する働きをする。
保護膜108の厚みが0.4[μm]未満だと、耐スパッタ性が低下し、逆に1.0[μm]より大きいと、二次電子を効率よく放出することができなくなるからである。
保護膜108は、従来のPDPに比べて、二次電子放出係数が高く、耐スパッタ性が高い。
ここで、減圧状態とは、真空中や真空減圧状態あるいは不活性ガスで置換された減圧状態を言う。
前面板102と背面板103との封着が完了するまで、前面板102が、減圧が維持された雰囲気に置かれていれば、保護膜108が不純物ガスを吸着することをさらに抑制することができ、従来のPDPに比べて、保護膜108の二次電子放出係数および耐スパッタ性が高くなるので、好ましく、また、前面板102の主面に形成された各構成部分、たとえば、隔壁や蛍光体層が不純物ガスを吸着せず、誘電体層107、保護膜108が不純物を吸着する可能性をさらに抑制することができるので、好ましい。
データ電極112は、少なくともAl−Ndを含み、上記前面板102における表示電極対104の形成と同様に、真空成膜プロセス法によって形成されている。
誘電体層113は、上述した前面板102の誘電体層107と同様に、CVD法やICP−CVD法による各種CVD方法により、SiO2を80%含んで形成されている。
さらに、図1(b)には表れないが、誘電体層113主面には、ほぼ一定の高さを有する隔壁114が形成配置(立設)されている。
そして、誘電体層113主面から隔壁114の壁面にかけて、赤、緑、青発光の各蛍光体層115が形成されている。
蛍光体層115は、隔壁114が形成された基板111に対して、上記蛍光体色毎に印刷塗布、焼成されたものであり、隔壁114の側面および誘電体層113の主面に形成されている。
上記蛍光体材料や放電ガスの成分、その圧力は、既述したものに限定されるものではなく、AC型PDPで通常使用できる材料、条件であればよい。
図1に示した単位放電セルが複数配されたPDPの走査電極105、維持電極106、データ電極112のそれぞれに駆動回路(ドライバIC等)が接続され、当該駆動回路に、これを制御する制御回路が接続されてPDP装置がなる。
PDP101の駆動には、3つの動作期間(図示省略)、つまり(1)全表示セルを初期化状態にする初期化期間、(2)各放電セルをアドレスし、各セルへ入力データに対応した表示状態を選択・入力していくデータ書き込み期間、(3)表示状態にある放電セルを表示発光させる維持放電期間、とから構成したアドレス・表示分離駆動方式を用いる。
そして、各サブフィールド期間における上記(2)のデータ書き込み期間において、背面板103のデータ電極112を使って書き込みデータを入力し、背面板103と対向する前面板102の誘電体層107、保護膜108の放電空間側主面に壁電荷を形成させる。
本実施の形態におけるPDP101では、CVD法によってSiO2を含む誘電体層107が形成されているので、誘電体層107の密度が従来の圧膜プロセスによって形成された誘電体層に比べて向上し、したがって、従来の誘電体層に比べると、誘電体層107が1.0×106[V/cm]以上の高い絶縁耐圧を備えることとなる。
本実施の形態におけるPDPでは、従来のPDPに比べて、誘電体層107がCVD法で形成されているので、容易に誘電体層を緻密にかつ薄く積層することができる。
よって、本実施の形態におけるPDPでは、低い維持放電電圧で駆動させることができ、放電開始電圧を低減させ、従って発光効率を向上させることができる。
したがって、本実施の形態におけるPDPでは、従来のPDPに比べて二次電子放出係数の低下を招くことがないので、放電開始電圧、放電維持電圧の上昇を招くことがなく、また、従来のPDPに比べて耐スパッタ性の低下を招くことなく長寿命化を図ることができ、かつ信頼性を向上させることができる。
また、上記において、基板110、111の厚みt1、t2を約1.1[mm]として説明したが、本実施の形態におけるPDP101では、従来のPDPのバス電極や誘電体層に比べて、バス電極159,169や誘電体層107、113の膜厚が薄いので、基板110,111の厚みを0.5もしくは0.7[mm]程度に設定した場合にも、基板110,111の反りを抑制することができる。これにより、基板110,111をさらに薄くすることができるので、本実施の形態におけるPDP101では、さらなる薄型・軽量化を実現することができる。
また、上記において、基板110、111として、ガラス基板を採用したが、プラスチック基板を採用しても同様に実施可能である。耐熱性のプラスチック基板には、例えば、住友ベークライト社製の高耐熱性プラスチック基板スミライトFST(ポリエーテルサルフォン(PES);住友ベークライト株式会社の登録商標)があり、Tgは約223[℃]であり、この温度を加熱上限とすることで、本発明の低温プロセスに十分使用できる。
また、データ電極112は、Al−Ndを含み、真空中で形成されてなるものとして説明したが、従来の背面板と同じように、印刷焼成されてなるAgを主成分とする電極や真空中で形成されてなるCr−Cu−Crを主成分とする電極であっても構わない。
<評価試験>
以下、本実施の形態におけるPDP101に基づいて実施例1のPDPを、従来のPDPに基づいて比較例1のPDPを準備し、既述した効果の検証を試みた。
実施例1のPDPは、上記実施の形態1で示したものと同様であるので、説明を省略する。
(実施例2)
実施例2のPDPでは、誘電体層107の比誘電率εが2.3に、その厚みdが10[μm]に設定されている以外は、実施例1のPDPと同様であるので説明を省略する。
比較例1のPDPでは、実施例1のPDPと比べると、前面板102において、基板110の厚みが約2.8[mm]に設定され、Agペーストを積層塗布し、焼成する圧膜プロセスによって、細幅のバス電極159,169が膜厚約5〜6[μm]に形成され、低融点ガラス材料を塗布し、焼成する印刷法によって、誘電体層107が、比誘電率εが約13、膜厚が約40[μm]、絶縁耐圧が約2.5×105[V/cm]となるように形成され、保護膜108の厚みが、数百[nm]に設定されている点、背面板103において、ガラス基板111の厚みが約2.8[mm]に設定され、低融点ガラス材料を塗布し、焼成する印刷法によって、誘電体層113が、比誘電率εが約13、膜厚が約40[μm]、絶縁耐圧が約2.5×105[V/cm]となるように形成されている点が異なるのみであるので、上記以外の構成については説明を省略する。
(試験1)
比較例1のPDPおよび実施例1のPDPのそれぞれに駆動回路などを接続し、走査電極105と維持電極106との間に印加する放電維持電圧を変化させながら、検証した結果、比較例1のPDPでは、放電維持電圧を180[V]以下にすると安定して駆動できなかったのに対し、実施例1のPDPでは、維持放電電圧を約140[V]まで低減しても安定して駆動することが確認できた。
(試験2)
また、比較例1のPDPおよび実施例1のPDPのそれぞれについて、15インチのテストパネルを準備し、それぞれに駆動回路などを接続し、(試験1)で得られた安定駆動域にて、それぞれを駆動させ、入江株式会社製BM−8型輝度計でそれぞれのPDPの輝度を測定したところ、比較例1のPDPでは、800[cd/m2]の輝度を観測したのに対し、実施例1のPDPでは、960[cd/m2]の輝度を観測した。
上記輝度測定とともに公知の電力計を用いてそれぞれの電力を測定し、公知の式に代入したところ、比較例1のPDPでは、発光効率が1.5[lm/w]であるのに対し、実施例1のPDPでは、それが2.3[lm/w]となり、実施例1のPDPでは、比較例1のPDPに比べて発光効率が約1.5倍に向上したことを確認することができた。
実施例1のPDPでは、比較例1のPDPと比べて厚みを約1/3とした薄い基板110が使用されているが、基板110の反りが確認されなかったので、実施例1のPDPでは、比較例1のPDPに比べて薄型・軽量可能であることが確認できた。
さらに、比較例1のPDPおよび実施例1のPDPのそれぞれにおいて、放電ガスのXe分圧を100%とし、実施例1の誘電体層の厚みを10[μm]に設定して、(試験1)と同様、それぞれに駆動回路などを接続し、放電維持電圧を変化させながら安定して駆動するか否か検証したところ、比較例1のPDPでは、340[V]で安定駆動したのに対し、実施例1のPDPでは、220[V]で安定駆動することを確認した。
(試験4)
(ε/d)が0.32(比誘電率ε=12、厚みd=38[μm])に設定された比較例1のPDP及び(ε/d)が0.23(比誘電率ε=2.3、厚みd=10[μm])に設定された実施例2のPDPに対し、(試験2)と同様に駆動回路などを接続し、上記安定駆動域にて駆動させ、上記輝度計、電力計を用い、公知の式に代入したところ、比較例1のPDPでは、発光効率が2.3[lm/w]であるのに対し、実施例2のPDPでは、それが3.0[lm/w]であり、実施例2のPDPでは、比較例1のPDPに対して発光効率が約30%向上することを確認することができた。
実施の形態2では、上記実施の形態1に係るPDP101を製造する方法について、図2〜図4を参照しながら説明する。
図2は、本発明の実施の形態2に係るPDP101の製造工程を示す流れ図である。図3は、PDP101の前面板102の作製工程を示す概略工程図であり、また、図4は、PDP101の背面板103の作製工程示す概略工程図である。なお、図3に示す前面板102は、図1(b)の前面板102と上下を逆にして示している。また、図3では、上記図1と同じものには同じ参照番号を付与していて、簡略のために一部省略している。さらに、図3における装置内において基板の配置が上下逆になっている場合もある。
図3のS1に示すように、ガラス基板110主面にITO、SnO2、ZnOなどからなる透明電極用の膜を約100[nm]の膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により、放電ギャップを挟んで互いに対向するようにかつ平行になるように幅広にパターンニングし、対の透明電極151、161を形成する(図2におけるS1)。
ここで、ドライエッチングプロセスを使用することにより、電極エッジに凸凹や傾斜がほとんどないバス電極159,169を形成することができる。
このようにして、透明電極151とバス電極159との組み合わせをもって走査電極105を、透明電極161とバス電極169との組み合わせをもって維持電極106を形成し、走査電極105と維持電極106とで一対をなす表示電極対104を構成する。
そして、図3のS3に示すように、透明電極151、161主面にバス電極159,169が形成された基板110を、CVD法、プラズマCVD法あるいはICP−CVD法などを実施可能なCVD装置31に挿入し、上記いずれかの方法によって当該基板110にSiO2を少なくとも含む緻密な誘電体層107を形成する(図2におけるS3)。
ここでは、誘電体層107を、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを含む誘電体層原料を使って、ICP−CVD法(誘導結合プラズマCVD法:Inductively Coupled Plasma CVD)を用いた高速CVD法によって形成する。
ICP−CVD法では、CVD装置31内を、図示しないターボ分子ポンプとロータリーポンプで高速に排気し、真空にした後、真空排気されたICP−CVD反応炉31内に酸素ガスを供給し、所定の圧力下で、アンテナにRF電力を供給するとICP−CVD装置31内に電波が導入されて誘導電界が形成される。
その結果、イオンと電子を多量に含む比較的均一なプラズマが形成される。プラズマ中で高温に加熱され活性化された酸素ガスは、拡散により基板近傍まで到達する。
ここで活性化された酸素ガスとTEOS気化ガスとを反応させることにより、基板110主面にSiO2が主成分として含まれた膜を生成する。
誘電体層107を形成する際の基板温度は室温〜300[℃]であり、誘電体層107を低温プロセスにより形成することができる。
通路33内は、あらかじめ真空または減圧状態あるいはN2やAr不活性ガスで置換した減圧状態になっている。
また、ある場合には減圧状態の通路33内にて基板110を一時保管する。
次に、図3のS4に示すように、移動させた基板110の誘電体層107を覆って、金属酸化物であるMgOを含む保護膜108を、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法などの低温プロセスによる真空成膜プロセス法により、真空成膜装置32内において、真空下あるいはArなどのスパッタリングガスを含む減圧下で所定の膜厚に積層し形成する(図2におけるS4)。
これにより、誘電体層107の形成に引き続いて真空成膜プロセス法により減圧中で保護膜108を形成するので、品質が高い保護膜を安定に維持して形成することができる。また、低温プロセスによる真空成膜プロセス法により、従来のような高温プロセスに基づくパネルの反りや割れの発生を抑制することができる。
上記作製工程では、少なくとも膜形成工程(S1からS4)からパネル封着工程(S9)に至るまで、すなわち図2で示したステップS1からステップS9に至るまで、大気に接触させずに基板110主面に誘電体層107および保護膜108を形成し、誘電体層107および保護膜108が形成された基板110を減圧下で保管・維持することにより、不純物ガスが誘電体層107および保護膜108に吸着されず、誘電体層107および保護膜108において不純物ガスによる水酸化反応や炭酸化反応も起きないので、誘電体層107および保護膜108は、真空中で形成された性能をPDP完成時までそのまま維持することができる。
2.背面板103の作製工程
図4のS5に示すように、ガラス基板111の主面に、少なくともAl−Ndを含む金属電極材料を用いて上記と同様に真空成膜プロセス法、ドライエッチング法により、Al−Nd合金薄膜を低温プロセスで成膜し、これを低温プロセスでパターン化してデータ電極112を形成する(図2におけるS5)。
そして、誘電体層113の形成工程から隔壁114、蛍光体層115の形成工程に至るまででは、減圧状態が維持されていることが望ましい。
そして、図4のS7に示すように、誘電体層113の主面にほぼ一定の高さを有する隔壁114を形成配置する(図2におけるS7)。
次に、図4のS8に示すように、隔壁114に仕切られてなる各溝部分に対し、(Y、Gd)BO3:Eu、Zn2SiO4:MnおよびBaMg2Al14O24:Euなどの蛍光体を使用して、蛍光体層115を形成する(図2におけるS8)。
これにより、当該背面板103作製工程では、少なくとも誘電体層113を形成する工程(S6)と、次の工程である隔壁114形成工程(S7)へ移行させるその工程の途中とで減圧状態が破られないことから、上記工程にて少なくとも誘電体層113が大気に接触することがなく、不純物ガスが誘電体層113に吸着されることがないまま背面板103を隔壁114の形成工程(S7)へ移行させることができるので、信頼性を向上させ安定して背面板103を製造することができる。
《実施の形態2におけるPDPの効果》
本実施の形態におけるPDPの製造方法では、バス電極159,169を真空成膜プロセスで形成しているので、従来のようにバス電極を厚膜法で形成するのに比べると、バス電極中にバインダー焼成物が残留せず、以後の誘電体層107形成工程において、気泡の発生をなくすことができるので、絶縁破壊を起こしにくい誘電体層107を形成することができる。したがって、従来のPDPの製造方法に比べて、誘電体層107を薄く形成することができる。
本実施の形態におけるPDPの製造方法では、誘電体層107の積層工程が、特許文献1のPDPの製造方法に比べて、単純であり、したがって、品質の高い、信頼性の高いPDPを製造することができる。
なお、上記において誘電体層原料としてはTEOSガスを使用して説明したが、他の有機シラン系材料を使用しても構わない。
また、上記において、背面板103における誘電体層113をCVD法で形成するとして説明したが、従来の背面板と同じように、低融点ガラスである誘電体層を印刷焼成し形成しても構わない。
また、上記において、前面板102として少なくともバス電極109、誘電体層107および保護膜108を形成し、背面板103として少なくともデータ電極112および誘電体層113を形成するとして説明したが、反射型PDPのように、これらの層や膜の配置が逆になっていても同様に実施可能であり、対向する基板のいずれかにこれらの層や膜が形成されていてよい。
本実施の形態では、基板主面と平行な面において、一対の表示電極における表示電極間の間隙に設けられたバス電極形状のバリエーションについて示す。
図5(a)は、表示電極に沿って切断した断面に相当する要部断面図、図5(b)は、図5(a)のX−Y面で切断した断面に相当する要部断面図である。
図5(b)に示すように、走査電極105および維持電極106のそれぞれは、透明電極151,161とバス電極159,169とで構成される基部と、突出部118,119とを有しており、走査電極105の基部と維持電極106の基部とが、第1の間隙を挟んで対向し、走査電極105の突出部118と、維持電極106の突出部119とが、第1の間隙より狭い第2の間隙を挟んで、放電セル内において、基部どうしの対向辺に複数配置されている。
バリエーション1におけるPDP放電セルの表示電極の構成について説明する。
図6(a)は、PDPの表示電極対の一部を背面板側から見た図であり、二点鎖線で囲った範囲が放電セルに相当する範囲である。図6(b)はその一部を拡大した要部平面図である。
なお、バリエーション1において、異電極にて対向する2本及び同電極にて隣り合う2本の計4本の突出部118,119を一組とし、かかる一組の突出部118,119先端どうしが等間隔を成し、かつ、突出部118,119先端を直結した仮想線が正方形をなすように、突出部118,119が配置されていてもよい。
図7(a)は、PDPの表示電極対の一部を背面板側から見た図であり、二点鎖線で囲った範囲が放電セルに相当する範囲である。図7(b)はその一部を拡大した要部平面図である。
図7が、図6と異なる点は、走査電極105の複数の突出部118と維持電極106の複数の突出部119とで挟まれた間隙が、放電セル内にて走査電極105もしくは維持電極106の延伸方向に沿って変化する点と、突出部118,119先端辺の形状が、異なる電極間において対向関係にある突出部118,119どうしで異なる点であるので、図6を用いてすでに説明した構成については説明を省略する。
図8(a)は、バリエーション3におけるPDPの放電セルの一部を示す要部平面図であり、PDPの表示電極対の一部を背面板側から見た図であって、二点鎖線で囲った範囲が放電セルに相当する範囲である。
図8(a)が、図6(a)、図7(a)と異なる点は、第1電極の突出部と第2電極の突出部とが、互いに一定間隙をおいて櫛歯状に入り組んだ状態となっている点であるので、図6(a)、図7(a)において、すでに説明した構成については説明を省略する。
図8(b)に示すように、バリエーション3において、走査電極105または維持電極106の少なくとも一方において、櫛歯状に配された突出部118,119が、バス電極159,169の少なくとも一方から延伸され、かつこれと併走するように配された細幅の電極加工部172から突出するように形成されていてもよい。図8(b)は、図8(a)と同様、PDPの表示電極対の一部を背面板側から見た図であって、二点鎖線で囲った範囲が放電セルに相当する。
なお、図8(c)に示すように、走査電極105の突出部118の辺および維持電極106の突出部119の辺のうち、互いに向かい合う辺において、複数の突起部120を配してもよい。図8(c)は、図8(a),(b)に示した突出部118,119の一部を拡大した要部平面図である。
上記のように、放電セル内において走査電極105および維持電極106の各対向辺に複数の突出部118,119を設けると、走査電極105および維持電極106に給電したときに、複数の突出部118,119にて電位が集中し、突出部118と突出部119との間で電界強度が強められ、放電の開始しやすい箇所が、放電セル内に複数存在することとなるので、放電セル内において突出部が一対のみのものに比べて放電を開始させやすい。その結果、放電開始電圧を下げても確実に維持放電を開始させることができる。また、放電セル内において突出部が一対しかない場合、パターニング精度のいかんによって表示電極対104の延伸方向に突出部118,119の配設位置にずれが生じたときに、放電セルごとに放電遅れ時間がばらつく恐れがあるのに対して、放電セル内に突出部を複数設けておけば、放電遅れ時間がパターニング精度に左右されにくくなる。したがって、放電遅れ時間のばらつき幅を狭めることができるので、放電開始電圧を下げても、維持放電を確実に開始させることができ、PDPの消費電力を低減させることができる。また、放電遅れ時間を制御できるので、高精細なPDPを実現できる。
バリエーション1およびバリエーション3に基づいてPDPを作製して、それぞれに駆動回路等を接続し、走査電極105と維持電極106との間に印加する放電開始電圧を変化させながら、安定駆動するか否かについて検証した。その結果、いずれも約120[V]という従来の放電開始電圧より低い電圧であっても、安定して駆動できることを確認した。
図9(a)は、PDPの表示電極対の一部を背面板側から見たものであり、二点鎖線で囲った範囲が放電セルに相当する範囲である。図9(b)は、その一部を拡大した要部平面図である。
図9(a)に示すように、放電セルにおいて、走査電極105および維持電極106で構成された表示電極対104が複数の放電セルにまたがるように、延伸して配設され、複数の突出部118,119が、走査電極105および維持電極106を構成する透明電極151,161が互いに対向する辺から突き出すように対向配置され、対向する複数の突出部118、119のそれぞれが、透明電極151,161に挟まれた間隙Gより狭い間隙gで相対するように配されている。
《実施の形態4におけるPDPの効果》
本実施の形態では、実施の形態1と同様に、放電セル内に複数の突出部118,119を設け、かつそれら突出部の先端辺を、走査電極105の主面と平行な面において、鋭角状の輪郭となるように形成したため、突出部118,119にて電位が集中するとともに突出部先端にてさらに電位が集中し、放電開始しやすい箇所を、放電セル内に複数設けることができ、放電セル内にて突出部が一対のみのものに比べて放電を開始させやすい。さらに、本実施の形態では、走査電極105もしくは維持電極106の対向辺からの突出量を同寸法とし、同電極にて隣り合う突出部で一対とし、一対を構成する突出部118,119の各先端どうしが、互いに接近するよう屈曲しているため、走査電極105および維持電極106に給電したときに、それら電位集中の起きる先端どうしで等電位線が結ばれ、かつ他方の電極に向かって張り出すような状態となる。等電位線が他方の電極に向かって張り出すことにより、走査電極105および維持電極106に給電したとき、異なる電極間における突出部118,119先端どうしにおいて、実施の形態3の突出部118,119先端同士における放電間隙より狭い放電間隙にて放電が開始されるので、低い電圧を印加しても確実に放電を開始させることができ、複数の放電セルにおいて生じる放電遅れ時間のばらつき幅も狭めることができる。したがって、PDPの画質を維持しながら、消費電力を低減させることができる。
さらに、突出部118,119を、バス電極159,169から延伸して形成していることから、バス電極159,169の形成に用いられる微細加工工程と同時に、突出部118,119を形成することができ、また、バス電極159,169から突出部118,119までの電気抵抗を低減できることから、突出部118,119を製造容易にし、かつ、放電セル寸法の縮小を可能にするとともに、応答性を向上させることができる。
また、本実施の形態において、4本の爪形に屈曲した突出部118,119の各先端を結んだ形状が正方形となるように突出部118,119を配したが、そのほかに長方形、平行四辺形および台形などの他の四角形状に配してもかまわない。
本実施の形態では、走査電極105および維持電極106の双方において、突出部118,119が対を成しているが、いずれか一方の電極においてのみ、対をなしていてもよい。
上記実施の形態に基づいてPDPを作製し、それぞれに駆動回路等を接続し、走査電極105と維持電極106との間に印加する放電開始電圧を変化させながら、安定駆動するか否かについて検証した。その結果、約100[V]という従来の放電開始電圧より低い電圧であっても、安定して駆動できることを確認した。
図10は、実施の形態5におけるPDPの放電セルにおける表示電極対の構成を示す概略平面図であり、PDPの背面板側から見た図である。図10は、図6(a)〜9(a)に相当する要部平面図であり、二点鎖線で囲った範囲が放電セルに相当する範囲である。
図10に示すように、走査電極105および維持電極106を一対とする表示電極対104が、複数の放電セルにまたがるように、延伸して配設されており、走査電極105および維持電極106が透明電極151,161およびバス電極159,169で構成され、先端辺を鋭角形状とする突出部118,119が、透明電極151,161が互いに対向する辺から突き出すように対向配置されている。
《実施の形態5におけるPDPの効果》
上記のような構成とすることで、突出部118,119にて電位が集中するのみならず、突出部118,119の各先端辺が、走査電極105の主面に平行な面において先鋭な鋭角形状の輪郭で形成されたことによって、先鋭な突出部118,119先端にてさらなる電位の集中が起き、走査電極105および維持電極106に給電したときに、低い電圧であっても放電をより確実に開始させることができ、複数の放電セルにおいて生じる放電遅れ時間のばらつき幅も狭めることができる。したがって、PDPの画質を維持しながら、消費電力を低減させることができる。
また、上記各実施の形態において、CVD法やICP−CVD法により形成された、SiO2を主成分とする緻密な薄膜の誘電体層を用いると説明したが、SiO2よりやや高い比誘電率を有する鉛ガラス系材料や非鉛ガラス系材料を厚く塗布し、これを焼成して形成される誘電体層を用いても同様に実施可能である。
102 前面板
103 背面板
104 表示電極対
105 走査(スキャン)電極
106 維持(サステイン)電極
107,113 誘電体層
108 保護膜
109 バス電極
110,111 基板
112 データ(アドレス)電極
114 隔壁
115 蛍光体層
118,119 突出部
120 突起部
151,161 透明電極
159,169 バス電極
171,172 電極加工部
220 正方形
221 先端
Claims (9)
- 表面に延伸された表示電極対が複数対形成され、当該表示電極対を覆う誘電体層が積層された一方の基板と、表面に複数のデータ電極が形成され、当該データ電極を覆う誘電体層が積層された他方の基板とを有し、互いの電極が放電空間をおいて対向するように両基板が配置され、表示電極の前記延伸方向に沿って複数の放電セルが配設されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記両基板の少なくとも一方の誘電体層は、1.0×10 6 [V/cm]以上1.0×10 7 [V/cm]以下の絶縁耐圧を備え、
対をなす各々の表示電極は、前記延伸方向に伸びた帯状の基部と、一方の電極の基部の辺から他方の電極の辺へ突出するように形成された複数の突出部を有し、当該複数の突出部は、放電セル内で互いに3組以上対向する組をなすように配設され、
放電セル中央部に位置する突出部の組の突出部長さが最も短く、前記延伸方向に沿った放電セル両端に近い組ほど突出部長さが長い
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 表面に延伸された表示電極対が複数対形成され、当該表示電極対を覆う誘電体層が積層された一方の基板と、表面に複数のデータ電極が形成され、当該データ電極を覆う誘電体層が積層された他方の基板とを有し、互いの電極が放電空間をおいて対向するように両基板が配置され、表示電極の前記延伸方向に沿って複数の放電セルが配設されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記両基板の少なくとも一方の誘電体層は、1.0×106[V/cm]以上1.0×107[V/cm]以下の絶縁耐圧を備え、
対をなす各々の表示電極は、前記延伸方向に伸びた帯状の基部と、一方の電極の基部の辺から他方の電極の辺へ突出するように形成された複数の突出部を有し、当該複数の突出部は、放電セル内で互いに3組以上対向する組をなすように配設され、
放電セル中央部に位置する突出部の組の突出部長さが最も長く、前記延伸方向に沿った放電セル両端に近い組ほど突出部長さが短い
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 表面に延伸された表示電極対が複数対形成され、当該表示電極対を覆う誘電体層が積層された一方の基板と、表面に複数のデータ電極が形成され、当該データ電極を覆う誘電体層が積層された他方の基板とを有し、互いの電極が放電空間をおいて対向するように両基板が配置され、表示電極の前記延伸方向に沿って複数の放電セルが配設されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記両基板の少なくとも一方の誘電体層は、1.0×106[V/cm]以上1.0×107[V/cm]以下の絶縁耐圧を備え、
対をなす各々の表示電極は、前記延伸方向に伸びた帯状の基部と、一方の電極の基部の辺から他方の電極の辺へ突出するように形成された複数の突出部を有し、
前記対をなす各々の表示電極の少なくとも一方において、
同電極上で隣り合う突出部は、その突出長さが同寸法であり、且つ、前記隣り合う突出部の各先端部分は前記表面と平行な面における輪郭が多角形状または曲線状に形成され、前記各先端部分が前記平行な面に沿って互いに近接した爪形をなすように屈折して形成されている
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 表面に延伸された表示電極対が複数対形成され、当該表示電極対を覆う誘電体層が積層された一方の基板と、表面に複数のデータ電極が形成され、当該データ電極を覆う誘電体層が積層された他方の基板とを有し、互いの電極が放電空間をおいて対向するように両基板が配置され、表示電極の前記延伸方向に沿って複数の放電セルが配設されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記両基板の少なくとも一方の誘電体層は、1.0×106[V/cm]以上1.0×107[V/cm]以下の絶縁耐圧を備え、
対をなす各々の表示電極は、前記延伸方向に伸びた帯状の基部と、一方の電極の基部の辺から他方の電極の辺へ突出するように形成された複数の突出部を有し、
前記対をなす各々の表示電極の少なくとも一方において、
同電極上で隣り合う突出部は、その突出長さが同寸法であり、且つ、前記隣り合う突出部の各先端部分は前記表面と平行な面における輪郭が多角形状または曲線状に形成され、前記隣り合う突出部同士の間隙が、前記基部側よりも前記先端部分側で狭い
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 表面に延伸された表示電極対が複数対形成され、当該表示電極対を覆う誘電体層が積層された一方の基板と、表面に複数のデータ電極が形成され、当該データ電極を覆う誘電体層が積層された他方の基板とを有し、互いの電極が放電空間をおいて対向するように両基板が配置され、表示電極の前記延伸方向に沿って複数の放電セルが配設されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記両基板の少なくとも一方の誘電体層は、1.0×106[V/cm]以上1.0×107[V/cm]以下の絶縁耐圧を備え、
対をなす各々の表示電極は、前記延伸方向に伸びた帯状の基部と、一方の電極の基部の辺から他方の電極の辺へ突出するように形成された複数の突出部を有し、
前記対をなす各々の表示電極の少なくとも一方において、
同電極上で隣り合う突出部は、その突出長さが同寸法であり、且つ、前記隣り合う突出部の各先端部分は前記表面と平行な面における輪郭が多角形状または曲線状に形成され、互いに接近するように屈曲している
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 前記対をなす各々の表示電極において、前記隣り合う突出部の組4つの先端部分を頂点とする閉鎖領域を想定するとき、前記表面と平行な面における当該領域が正方形状となるように配されている
ことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。 - 表面に延伸された表示電極対が複数対形成され、当該表示電極対を覆う誘電体層が積層された一方の基板と、表面に複数のデータ電極が形成され、当該データ電極を覆う誘電体層が積層された他方の基板とを有し、互いの電極が放電空間をおいて対向するように両基板が配置され、表示電極の前記延伸方向に沿って複数の放電セルが配設されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記両基板の少なくとも一方の誘電体層は、1.0×10 6 [V/cm]以上1.0×10 7 [V/cm]以下の絶縁耐圧を備え、
各々の表示電極は、前記延伸方向に伸びた透明電極からなる帯状の基部と、透明電極の主面に形成されたバス電極で構成され、
前記バス電極はアルミニウムおよびネオジムを主成分として真空中あるいは減圧下で形成された薄膜からなる
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 前記対をなす各々の表示電極は、一方の電極の基部の辺から他方の電極の辺へ突出するように、前記バス電極の電極材料を分岐させてなる複数の突出部を有している
ことを特徴とする請求項7に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 表面に延伸された表示電極対が複数対形成され、当該表示電極対を覆う誘電体層が積層された一方の基板と、表面に複数のデータ電極が形成され、当該データ電極を覆う誘電体層が積層された他方の基板とを有し、互いの電極が放電空間をおいて対向するように両基板が配置され、表示電極の前記延伸方向に沿って複数の放電セルが配設されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記両基板の少なくとも一方の誘電体層は、1.0×10 6 [V/cm]以上1.0×10 7 [V/cm]以下の絶縁耐圧を備え、
対をなす各々の表示電極は、前記延伸方向に伸びた透明電極からなる帯状の基部と、透明電極の主面に形成されたバス電極で構成され、
前記対をなす各々の表示電極は、一方の電極の基部の辺から他方の電極の辺へ突出するように、前記バス電極をなす電極材料を分岐させてなる複数の突出部を有し、
前記複数の突出部は、前記表面と平行な面における先端部分の輪郭が鋭角形状である
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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