JP4728503B2 - リン酸塩皮膜化成処理の水洗水の処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属表面処理工程におけるリン酸塩皮膜化成処理の水洗水の処理方法、及び、処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属成型物の塗装前処理には、リン酸塩皮膜化成処理が従来から多く用いられており、このリン酸塩皮膜化成処理が行われた後は、水洗水による洗浄が行われている。この洗浄は、通常、多段からなる水洗工程により行われるものであり、最終段の水洗に新鮮な水洗水が給水され、順次前段にオーバーフローにより給水し、第1段目の水洗水の一部を系外に排出することにより、水洗水の各段の汚染濃度を管理し、正常な皮膜化成処理が維持されるようにコントロールされている。第1段目の水洗水には、亜鉛、ニッケル、マンガン等の金属イオンやリン酸イオン、硝酸イオン、フッ酸、ケイフッ酸、ホウフッ酸等のリン酸塩皮膜化成剤成分が含まれており、これをそのまま系外に放流すれば水質汚濁を招く。よって、他の工場排水等と併せて凝集沈殿処理や生物処理等の廃水処理を施した後に廃棄されていた。
【0003】
このようなリン酸塩皮膜化成処理から生じる水洗水について、逆浸透膜を用いた有効成分の回収各種方法及び排水の低減化が報告されている。リン酸塩皮膜化成処理から生じる水洗水を逆浸透膜によって処理した後は、通常、有効成分を含む濃縮液をリン酸塩皮膜化成処理における化成処理槽に戻すことが行われているが、化成処理槽に多量の濃縮液を戻すと、化成処理液の量が増加し、液面が上昇する。
【0004】
化成処理液の増加を防止するための手段としては、化成処理槽に蒸発装置を設置することにより対応が可能であるが、実際には、蒸発装置を大型化する必要等があり、効率的ではない。
また、逆浸透膜装置で発生する濃縮液に化成処理槽中の化成処理液を混合して、更に逆浸透膜処理を行うことも物理的には可能であるが、逆浸透膜装置において、成分を高濃度で含む溶液の濃縮・分離は、逆浸透膜の処理能力の低下や処理精度の低下が起こって、透過水量が減少したり阻止率が低下するため、著しく効率的ではなかった。
【0005】
逆浸透膜処理法における有効成分の回収率を向上させるためには、2台の逆浸透膜装置を前段と後段との2段に連設し、前段逆浸透膜装置で発生する濃縮水を後段逆浸透膜装置によって更に処理する方法も知られている。この方法は、逆浸透膜装置を1段で用いる上記の方法よりは効率的ではあるが、成分を高濃度で含む液を処理する場合には、依然として、逆浸透膜の処理能力の低下や処理精度の低下が起こるという問題があった。
【0006】
リン酸塩皮膜化成処理から生じる水洗水から有効成分を回収する方法としては、水洗水自体を蒸発させる方法もあるが、多量の水洗水を蒸発させる必要があるため蒸発コストが大きく、また、不要成分の蓄積も起こり、実用的ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、金属成型物に対してリン酸塩皮膜化成処理を行う場合に、ここで生じる水洗水に対し、化成処理槽の化成処理液液面を上昇させることなく、効率よく有効成分を回収する方法及び処理装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、被処理物に対し、化成処理液によるリン酸塩皮膜化成処理を行い、次いで、洗浄を行う方法において、上記洗浄は、1段以上からなる水洗工程によって行われるものであって、上記水洗工程における水洗水を逆浸透膜で処理を行い、透過液と濃縮液とに分離する工程(1)、上記工程(1)で得られる濃縮液を蒸発する工程(2)からなることを特徴とするリン酸塩皮膜化成処理の水洗水の処理方法である。上記工程(2)は、工程(1)で得られる濃縮液に、更に化成処理液を混合したものを蒸発させるものである。また、上記工程(2)で得られる濃縮液は、リン酸塩皮膜化成処理に使用されるものであることが好ましい。更に、逆浸透膜での処理は、水洗工程における第1段目の水洗水を用いて行われることが好ましい。
【0009】
本発明は、また、被処理物にリン酸塩皮膜化成処理を行うための処理装置であって、上記処理装置が、化成処理液を用いて行うリン酸塩皮膜化成処理手段、1段以上からなる水洗手段、上記水洗手段における水洗水を処理するための逆浸透膜装置、及び、上記逆浸透膜装置から得られる濃縮液を蒸発するための蒸発手段を備えることを特徴とする処理装置でもある。上記蒸発手段は、逆浸透膜装置から得られる濃縮液と更に化成処理液とを混合して蒸発するものである。また、更に、蒸発手段により得られる濃縮液をリン酸塩皮膜化成処理手段に送液するための送液手段を備えていることが好ましい。逆浸透膜装置においては、水洗手段における第1段目の水洗水が処理されるものであることが好ましい。以下、本発明を詳述する。
【0010】
【発明の実施の形態】
一般的に、金属表面処理は、金属成型物、例えば、自動車車体、その部品等をコンベヤにより搬送し、脱脂工程、脱脂後の水洗工程、表面調整工程、化成処理工程、化成処理後の水洗工程を順次通過することにより行われる。本発明の水洗水の処理方法及び処理装置は、化成処理工程及び化成処理後の水洗工程に関するものである。
【0011】
以下、本発明の処理装置の一例を示す図1を参照して説明する。
通常の脱脂工程、脱脂後の水洗工程及び表面調整工程を経てきた被処理物は、通常、舟形の化成処理槽1内の化成処理液に浸漬されることにより、上記化成処理工程が行われる。ここで使用される化成処理液はリン酸塩を含むものであれば特に限定されず、例えば、リン酸亜鉛処理液等を挙げることができる。
【0012】
化成処理された被処理物は、次いで、コンベアによって移動され、第1水洗漕2〜最終水洗漕4を備えた1段以上からなる水洗工程で洗浄される。ここでの水洗手段は、フルディップ方法やスプレー方法またはそれらの組み合わせにより行うことができる。最終の水洗工程は必要によりミストスプレー等が併用されてよい。上記水洗工程は、1段以上であればよいが、化成処理後の洗浄が不充分であるとその後に行われる塗装において悪影響を与えることから、充分に洗浄することが好ましく、2段以上であることが好ましい。より好ましくは、図1に示すように3段又はそれ以上で行われることである。
【0013】
上記1段以上からなる水洗工程においては、最終水洗槽4に所定量の新鮮な水洗水が管5を通じて供給され、逐次オーバーフローすることにより前段の水洗漕に水洗水が供給され、最終的に第1水洗槽2に給水が行われる(図中、点線で表示)。ここで、第1水洗槽2における化成処理液の濃度が通常の化成処理液濃度の約2〜20%になるように、新鮮な水洗水の供給量が設定されている。2%未満であると、処理しなければならない水洗水の量が多量になる。20%を超えると、化成処理後の洗浄が不充分となり、その後に行われる塗装に悪影響を与えるおそれがある。
【0014】
上記第1水洗槽2よりオーバーフローした水洗水は、導管6によりpH調整槽7に供給され、酸でpH調整されることが好ましい。図1では、水洗槽のなかで最も薬液成分濃度が高い第1水洗槽2から水洗水を送液する場合を示したが、第2水洗槽3や最終水洗槽4の水洗水でも適用することができ、これらを混合することも可能である。第1水洗槽2から水洗水を送液する場合が効率的であるため好ましい。
【0015】
上記pH調整槽7では、pH調整剤槽8に貯留されている酸を用いて、pHを好ましくは2〜3.5の範囲内に調整する。pH2未満であると、その後に行われる逆浸透膜装置10の逆浸透膜にダメージを与えるため好ましくなく、pH3.5を超えると、逆浸透膜上にリン酸亜鉛等の結晶が生じるために好ましくない。このように水洗水を上記pH範囲内に調整することにより、後述する逆浸透膜装置10により処理を行って得られる透過液側への硝酸イオン、ナトリウムイオン等の不要成分の透過率を適正にすることができ、化成処理液として再利用に適した濃縮液を得ることができる。上記酸としては、リン酸、硝酸、フッ酸、ケイフッ酸及びホウフッ酸からなる群より選択される1種以上の酸の水溶液が好ましく、リン酸水溶液の使用がより好ましい。
【0016】
このようにpH調整された水洗水は、導管9により逆浸透膜装置10に送液される。上記逆浸透膜装置10では、水洗水は逆浸透膜処理され、透過液と濃縮液とに分離される。上記逆浸透膜装置10としては、所望の濃縮率、阻止率に応じて、逆浸透膜の膜面積、流速、性能等を選択することができる。逆浸透膜は、圧力1.47MPa、塩化ナトリウム1500ppm水溶液、pH6.5の条件下で塩化ナトリウム阻止率が50%以上あるものである。50%未満であると重金属が透過側に抜ける。上限を設けるとすれば、99.5%以下とし、それを超えると硫酸イオン、ナトリウムイオンが透過側に抜けにくくなる。
本発明においては、上記逆浸透膜装置10における濃縮率は、化成処理液の濃度が通常の化成処理液濃度の30〜100%になるまで濃縮することが好ましい。30%未満であると、濃縮率が低いので、その後の蒸発する工程(2)における蒸発量が多くなり効率的でなく、また、硝酸イオン等の不要成分が残存しすぎる場合がある。100%を超えると、逆浸透膜の必要膜面積が多く必要であるか、又は、濃縮に時間がかかりすぎたりし、また、有効成分の回収率が低い場合がある。
【0017】
上記透過液は、上記逆浸透膜装置10の透過液取り出し部にその一端が連結された透過液取り出し管11を通って、硝酸イオン、ナトリウムイオン等の不要成分を含む水を分離・排出する。
上記逆浸透膜装置10の透過液は、系外に排出して、所望により廃水処理を行った後廃棄するか、又は、脱脂処理後の水洗工程や化成処理後の水洗工程等の補給水に使用することができる。
【0018】
一方、上記濃縮液は、逆浸透膜装置10の濃縮液取り出し部に一端が連結されている濃縮液取り出し管12を通って、蒸発装置13に送液される。
上記蒸発装置13としては、40〜70℃程度の加熱下、及び/又は、減圧下において行うことができるものが好ましく、例えば、小型蒸発濃縮装置(VVC方式;ササクラ社製等)、ドラムドライヤー、ディスクドライヤー等を挙げることができる。
【0019】
上記蒸発装置13による濃縮においては、化成処理液の濃度によらず濃縮が可能であるため、化成処理液濃度以上に濃縮が可能である。濃縮率は、化成処理液の濃度が通常の化成処理液濃度の101〜200%になるまで濃縮することが好ましい。101%未満であると、濃縮効果がなくなり、結果的に化成処理槽1の化成処理液の液量の増加となる場合がある。200%を超えると、リン酸亜鉛等の化成処理液の成分が析出する。化成処理液の成分が析出した場合は、酸等を添加することにより析出抑制が可能であるが、200%を超えると、添加する酸の量が増加し、化成処理槽1中の化成処理液の酸濃度が上昇するため、良好なリン酸塩皮膜を得ることができない場合がある。より好ましくは、120〜160%である。
【0020】
上記蒸発装置13による濃縮においては、工程(1)で得られる濃縮液に、更に、化成処理液取り出し部に一端が連結されている化成処理液取り出し管14を通って化成処理槽1から化成処理液を送液し、混合したものを蒸発させることが好ましい。化成処理槽1の化成処理液を混合することによって、化成処理槽1中の化成処理液を増加させずに、水洗水中の化成処理液の有効成分を効率的に回収することができる。
【0021】
上記蒸発装置13によって濃縮された処理液は、濃縮液取り出し管15を通って化成処理槽1に送液される。一方、上記蒸発装置13による蒸発液は、蒸発管16を通って分離される。
上記蒸発装置13による蒸発液は、系外に排気するか、又は、脱脂処理後の水洗工程や化成処理後の水洗工程等の補給水に使用することができる。
【0022】
上記化成処理槽1においては、前工程からの持ち込み、化成処理薬液補給及び上記蒸発装置13による濃縮液による液量の増加があり、一方、後工程への持ち出し及び化成処理槽1の表面からの蒸発による液量の減少がある。本発明においては、工程(1)における逆浸透膜処理により、表面処理水洗水中の有効成分と不要成分とを分離して不要成分は排出し、有効成分は低濃度域で効率的・経済的に回収し、更に、工程(2)において、高濃度域での濃縮を行うことで、化成処理槽1の化成処理液を増加することなく、効率的に表面処理水洗水中の有効成分を回収することができる。また、上記工程(2)において、化成処理槽1からの化成処理液も併せて濃縮を行うことにより、一層効率的に有効成分の回収を行うことができる。
【0023】
図2には、被処理物が自動車車体である場合における本発明の処理方法の一例を示したものである。一般的には自動車車体1台当たり、前工程から化成処理槽への持ち込み5l、薬液補給0.5l及び蒸発装置からの濃縮液11.5lの合計17lが液量の増加分であり、化成処理槽から後工程への持ち出し5l、化成処理槽表面からの蒸発2l及び蒸発装置への抜き取り10lの合計17lが液量の減少分である。従って、化成処理槽の化成処理液の液量の増加が起こることがない。なお、図2において、ROは逆浸透膜装置を表す。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
実施例1 化成処理液中の硝酸イオン濃度の影響
下記イオン組成のリン酸亜鉛化成処理液において、硝酸を添加することにより、硝酸イオン濃度を6000〜25000ppmまで変化させ、鉄板(SPC冷延鋼板:70×150mm)について評価を行った。結果を表1に示した。
1.リン酸亜鉛化成処理液組成
Zn 1000ppm
Ni 1000ppm
Mn 600ppm
SiF6 1000ppm
PO4 26000ppm
【0026】
2.処理条件
処理槽容量:50l
遊離酸:0.7±0.2
全酸 :32〜36
処理温度:43±2℃
トーナー値:2.5〜3.0
上記遊離酸値は、化成処理液を10ml採取し、ブロムフェノールブルーを指示薬として、0.1N苛性ソーダで滴定することにより求めた。上記処理液の全酸は、処理液をピペットにて10ml採取しフェノールフタレインを指示薬として、0.1N水酸化ナトリウムで滴定しピンク色に着色する変化点まで要した0.1N水酸化ナトリウムの量(ml)を全酸とした。上記トーナー値は、発酵工業分野で使用されるアインホルン発酵管又はその類似構造器具で、固形のスルファミン酸を使用することにより、窒素を発生させ且つ捕集し、捕集した窒素量(ml)をトーナー値とした。
【0027】
3.評価項目
イオン濃度:イオンクロマトグラフ SERIES4000(DIONEX社製) 又は原子吸光 ATOMIC ABSORPTION SPECTROMETER 3300(PERKIN ELMER社製)
外観:目視にて評価
皮膜重量(g/m2):蛍光X線 システム3070E(リガク社製)
結晶サイズ:SEM(×1500倍) JSM−5310(JOEL社製)
【0028】
【表1】
【0029】
実施例2 処理液中の遊離酸値の影響
実施例1で使用したリン酸亜鉛化成処理液において、硝酸イオンを15000ppmとしたものを用いて、温度50℃において200%まで濃縮していき、リン酸亜鉛が析出する遊離酸値の限界値を測定した。遊離酸値は、実施例1と同様にして測定し、リン酸を添加することにより増加させた。濃縮は、ヒーターの加温下で、攪拌しながら行った。
結果を表2に示した。表2において示した値よりも、低い遊離酸値の場合にリン酸亜鉛が析出した。
【0030】
【表2】
【0031】
実施例3
実施例1で使用したリン酸亜鉛化成処理液において硝酸イオンを15000ppmとしたものを用いて、実施例1と同様の処理条件下において、更に皮膜として消費される成分(リン酸:NP pHコントロール剤 3(日本ペイント社製)、亜鉛:スターター 1(日本ペイント社製)、Ni・Mn等:サーフダイン SD 5000R−5(日本ペイント社製)、亜硝酸:トーナー30H(日本ペイント社製))を補給しながら、SPC鋼板(70×150mm)の処理を行った(鋼板1枚当たりの持ち出し量:2ml×2500枚)。トーナー値を維持するために、亜硝酸として、2500枚処理当たり20gを添加した。処理により持ち出された液5lを、pH6.8、電導度234μS/cmの工業用水75lで希釈し、オーバーフロー水洗水モデルとした。これをリン酸でpH3に調整し逆浸透装置として市販のLF10膜モジュールを用いたメンブレンマスターRUW−5A(日東電工社製)を用いて、処理温度25〜30度、圧力2.9〜3.1Mpa、濃縮液循環流量5.9〜6.1l/分、透過液流量0.5〜2.5l/分の処理条件で逆浸透膜処理を実施し、濃縮液10lと透過液70lを得た。濃縮液中のNiイオン濃度は493ppm、透過液中のNiイオン濃度は1.0ppmであり、回収率〔濃縮液中Niイオン量/(濃縮液中Niイオン量+透過液中Niイオン量)〕は98.6%であった。
【0032】
その後、得られた濃縮液10l(濃度50%)に、処理槽内の処理液10lと併せて20lとした後、リン酸にて遊離酸の調整を行いながら、ラボ蒸発装置にて45〜50℃に加温しながら攪拌することにより、10lまで濃縮を行い処理槽に戻した。濃縮した10lについては、濃縮濃度150%、遊離酸1.0であったが、処理槽にもどすことにより、濃縮濃度110%、遊離酸0.76となり充分管理範囲内であった。濃縮は、ヒーターの加温下で、攪拌しながら行った。
【0033】
この工程を、30回繰り返し(3ターンオーバー)計75000枚について処理した。この時の硝酸の回収率は、72%であり初期の硝酸濃度15000ppmから、ほぼ変動なく処理槽内の硝酸濃度は14000〜15000ppmとなった。硝酸濃度14000〜15000ppmは実施例1の結果より良好な化成皮膜が得られることがわかる。
【0034】
比較例1 逆浸透膜装置のみによる化成処理液の回収
実施例1で使用したリン酸亜鉛化成処理液において硝酸イオンを15000ppmとしたものを用いて、実施例1と同様の処理条件下において、更に皮膜として消費される成分(リン酸・亜鉛等実施例2と同じ)を補給しながら、SPC鋼板(70×150mm)の処理を行った(鋼板1枚当たりの持ち出し量:2ml×2500枚)。トーナー値を維持するために、亜硝酸として、2500枚処理当たり20gを添加した。処理により持ち出された液5lを、pH6.8、電導度234μS/cmの工業用水75lで希釈し、オーバーフロー水洗水モデルとした。これをリン酸でpH3に調整し逆浸透装置として市販のLF10膜モジュールを用いたメンブレンマスターRUW−5A(日東電工社製)を用いて、処理温度25〜30度、圧力2.9〜3.1Mpa、濃縮液循環流量5.9〜6.1l/分、透過液流量0.5〜2.5l/分の処理条件で逆浸透膜処理を実施し、濃縮液5lと透過液75lを得た。濃縮液中のNiイオン濃度は964ppm、透過液中のNiイオン濃度は2.4ppmであり、回収率〔濃縮液中Niイオン量/(濃縮液中Niイオン量+透過液中Niイオン量)〕は96.4%であった。
【0035】
その後、回収した濃縮液を処理槽に戻した。この工程を30度繰り返し(3ターンオーバー)計75000枚について処理した。処理槽内の処理液は、回収した濃縮液を戻すことによりオーバーフロー(液面上昇)し、液面の増加が発生した。この時の硝酸の回収率は、53%であり初期の硝酸濃度15000ppmから、少しずつ減少し処理槽内の硝酸濃度は11000〜12000ppmとなった。硝酸濃度11000〜12000ppmは実施例1の結果より良好な化成皮膜が得られることがわかった。
【0036】
比較例2 蒸発のみによる化成処理液の回収
実施例1で使用したリン酸亜鉛化成処理液において硝酸イオンを15000ppmとしたものを用いて、実施例1と同様の処理条件下において、更に皮膜として消費される成分(リン酸・亜鉛等実施例2と同じ)を補給しながら、SPC鋼板(70×150mm)の処理を行った。(鋼板1枚当たりの持ち出し量:2ml×2500枚)トーナー値を維持するために、亜硝酸として2500枚処理当たり20gを添加した。処理により持ち出された液5lを、pH6.8、電導度234μS/cmの工業用水75lで希釈し、オーバーフロー水洗水モデルとした。ラボ蒸発試験装置にて45〜50℃に加温しながら攪拌し、5lにした後、更に処理槽から10l抜き取り、併せて15lとした後、リン酸にて遊離酸の調整を行いながら、再度ラボ蒸発試験装置にて45〜50℃に加温しながら攪拌することにより、10lまで濃縮を行い本槽に戻した。濃縮した10lについては、濃縮濃度150%、遊離酸1.0であったが、処理槽にもどすことにより、濃縮濃度110%、遊離酸0.76となり充分管理範囲内であった。濃縮は、ヒーターの加温下で、攪拌しながら行った。
この工程を、30回繰り返し(3ターンオーバー)計75000枚について処理した。処理槽内の硝酸濃度は、亜硝酸の酸化により発生する硝酸(一部の亜硝酸は分解)により上昇し、初期の硝酸濃度15000ppmから少しずつ上昇し処理槽内の硝酸濃度は25000〜26000ppmとなった。硝酸濃度25000〜26000ppmは実施例1の結果より良好な化成皮膜が得られないことがわかる。
【0037】
上記結果から、化成処理を行った後に生じる生成水を逆浸透膜処理及び蒸発した実施例3においては、Ni回収率(98.6%)から見られるように、効率よく有効成分を回収することができ、化成処理槽に戻した場合にも、液面の増加が起こらず、良好なリン酸塩皮膜を得ることができた。一方、逆浸透膜処理のみを行った比較例1においては、Ni回収率が96.4%と実施例3よりも低く、化成処理槽に戻した場合に液面の増加が生じた。蒸発のみを行った比較例2においては、Ni回収率は100%であるが、化成処理槽に戻した場合に、硝酸濃度が高かったために、良好なリン酸塩皮膜を得ることができなかった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の水洗水の処理方法によれば、被処理物に対してリン酸塩皮膜化成処理を行う場合に生じる水洗水に対して、逆浸透膜処理及び蒸発させるため、効率よく有効成分を回収することができ、これを化成処理槽に送液した場合も化成処理液を増量させることがなく、良好なリン酸塩皮膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理装置の一実施態様を示すフロー図である。
【図2】被処理物が自動車車体である場合における本発明の処理方法の一例を示したフロー図である。
【符号の説明】
1 リン酸塩化成処理槽
2 第1水洗漕
3 第2水洗漕
4 最終水洗漕
7 pH調整槽
8 pH調整剤槽
10 逆浸透膜装置
13 蒸発装置
Claims (6)
- 被処理物に対し、化成処理液によるリン酸塩皮膜化成処理を行い、次いで、洗浄を行う方法において、前記洗浄は、1段以上からなる水洗工程によって行われるものであって、前記水洗工程における水洗水を逆浸透膜で処理を行い、透過液と濃縮液とに分離する工程(1)、前記工程(1)で得られる濃縮液を蒸発する工程(2)からなり、
前記工程(2)は、前記工程(1)で得られる濃縮液に、更に化成処理液を混合したものを蒸発させるものであるリン酸塩皮膜化成処理の水洗水の処理方法。 - 工程(2)で得られる濃縮液は、リン酸塩皮膜化成処理に使用されるものである請求項1記載のリン酸塩皮膜化成処理の水洗水の処理方法。
- 逆浸透膜での処理は、水洗工程における第1段目の水洗水を用いて行われるものである請求項1又は2記載のリン酸塩皮膜化成処理の水洗水の処理方法。
- 被処理物にリン酸塩皮膜化成処理を行うための処理装置であって、前記処理装置が、化成処理液を用いて行うリン酸塩皮膜化成処理手段、1段以上からなる水洗手段、前記水洗手段における水洗水を処理するための逆浸透膜装置、及び、前記逆浸透膜装置から得られる濃縮液を蒸発するための蒸発手段を備えており、
蒸発手段においては、逆浸透膜装置から得られる濃縮液と更に化成処理液とを混合して蒸発するものである処理装置。 - 更に、蒸発手段により得られる濃縮液をリン酸塩皮膜化成処理手段に送液するための送液手段を備えている請求項4記載の処理装置。
- 逆浸透膜装置においては、水洗手段における第1段目の水洗水が処理されるものである請求項4又は5記載の処理装置。
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