JP4098669B2 - りん酸塩化成処理液の回収再利用方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装下地及び塑性加工に工業的に広く用いられているりん酸塩化成処理工程に関するもので、詳しくはりん酸塩化成処理後の水洗排水中の有効成分を系外に排出せず、りん酸塩化成処理液として回収再利用する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気製品、自動車ボディー、自動車パーツなどは塗装下地の前処理としてりん酸塩化成処理が行われている。この処理は、化成処理槽中でりん酸塩化成処理液を自動車ボディー、自動車パーツなどの被処理物に接液させて化成処理するりん酸塩化成処理工程と、りん酸塩化成処理された被処理物を多段の水洗槽に移行して水洗する水洗工程とで行なっている。
【0003】
りん酸亜鉛を用いて鋼部品を処理した場合のりん酸塩化成処理反応式を(1)式、(2)式に示す。この(1)式の反応を進行させるためには(2)式のように鋼部品をりん酸にてエッチングさせる。ここでエッチングした鉄分を除去するために(3)式に示すように酸化促進剤として、一般的な表面処理ラインでは常時亜硝酸ナトリウム水溶液が添加される。亜硝酸ナトリウムは、空気酸化して硝酸イオン((4)式)となったり、Feと反応して一部アンモニウムとなる((5)式)。更に、亜硝酸ナトリウムからはナトリウムが生じ、化成処理液中に蓄積してくる。
3Zn(H2PO4)2 → 4H3PO4 + Zn3(PO4)2 (1)
Fe+2H3PO4 → Fe(H2PO4)2 + H2 (2)
酸性下でNaNO2を添加するとHNO2とナトリウムイオンとなる。
Fe(H2PO4)2 + HNO2 → FePO4 + NO + H3PO4 + H2O (3)
HNO2 + O → HNO3 (4)
3Fe + HNO2 + 7H3PO4 → 3Fe(H2PO4)2 + NH4H2PO4 (5)
これら不要成分(硝酸、アンモニウム、ナトリウム)が化成処理液中に蓄積すると化成処理後に、黄錆、スケが発生するなどの悪影響を及ぼす。
【0004】
また、化成処理槽中でりん酸塩化成処理した被処理物を水洗槽に移行させて水洗するとき、被処理物には化成処理槽中の化成処理液が付着している。そのため、水洗槽から排出される水洗排水中には、有効なりん酸塩化成処理成分と上記不要成分が混在する。そこで、省資源、公害防止の観点から、水洗槽から排出される水洗排水を廃棄することなく、逆浸透膜を使用して濃縮し、濃縮液は化成処理槽に戻し、透過水は水洗槽に戻して再利用するに方法が知られている。水洗排水中に含まれる亜鉛成分などの有効成分を充分に回収し再利用するには成分阻止率の高い逆浸透膜を使用する必要がある。最近市販されている成分阻止率の高い逆浸透膜は、NaCl阻止率が99%以上と高い値を示しており、このような逆浸透膜を使用した場合、有効成分の回収には有利であるが、反面不要成分も濃縮されて化成処理槽へ戻るため、化成処理槽中に上記の不要成分が蓄積していき悪影響を及ぼす問題点がある。そのため、不要成分透過性の高い逆浸透膜を使用する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)が、これには最近市販されている逆浸透膜が使用できない不便がある。また、逆浸透膜の耐用pH及び処理液の沈殿性を考慮して、水洗槽から排出される水洗排水に酸を添加しpH制御して逆浸透膜に供給する手法があるが(特許文献3)、不要成分の阻止性には変化がない。
【0005】
また、化成処理槽中では常に促進剤の分解によって不要成分が発生している。しかも、化成処理槽へは皮膜として析出した成分やスラッジとして沈殿した成分及び被処理物に付着して持ち出された成分を化成処理槽補給剤として化成処理槽へ供給し、化成処理槽の濃度を一定に保持しているが、この補給剤には液安定性を保持するために硝酸が添加され、このような成分も不要成分として化成浴中に蓄積していく。このようにして発生した不要成分は、被処理物に付着して次工程の水洗工程に持ち出されている。そのため、化成処理槽から水洗槽に持ち出される不要成分の量は、ラインの被処理物の処理量(生産量)に左右される。したがって、化成処理槽中の不要成分濃度はラインの被処理物の処理量(生産量)に左右される。設計時より生産量が低くなったラインでは化成処理槽中の不要成分の濃度が高くなる不都合があり、市販の逆浸透膜を使用して化成処理液を回収再利用する場合、通常のライン以上に不要成分が蓄積し、化成処理に悪影響を及ぼす。
【0006】
【特許文献1】
特開昭52−127444号公報
【特許文献2】
特公昭59−10430号公報
【特許文献3】
特開2001−164389号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、化成処理槽中で被処理物を化成処理するりん酸塩化成処理工程と、りん酸塩化成処理された被処理物を水洗する水洗工程と、水洗槽から排出する水洗排水を逆浸透膜を使用して濃縮する濃縮工程と、濃縮工程で得られた濃縮液を化成処理槽に戻す工程とからなるりん酸塩化成処理液の回収再利用方法において、化成処理槽中の不要成分の蓄積を防ぎ、且つ濃縮工程を円滑に行う方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、化成処理槽中で、酸化促進剤として常時亜硝酸ナトリウム水溶液が添加されるりん酸塩化成処理液を被処理物に接液させて化成処理するりん酸塩化成処理工程と、りん酸塩化成処理された被処理物を多段の水洗槽を通して水洗する水洗工程と、水洗槽から排出する水洗排水を逆浸透膜を使用して濃縮する濃縮工程と、濃縮工程で得られた濃縮液を化成処理槽に戻す工程とからなるりん酸塩化成処理液の回収再利用方法おける上記の濃縮工程において、水洗槽から排出した水洗排水に亜鉛化合物水溶液を添加してから逆浸透膜で濃縮することを特徴とするりん酸塩化成処理液の回収再利用方法である。上記の亜鉛化合物水溶液は、硝酸亜鉛、塩化亜鉛及び硫酸亜鉛のうち少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0009】
また、本発明は、化成処理槽中で、酸化促進剤として常時亜硝酸ナトリウム水溶液が添加されるりん酸塩化成処理液を被処理物に接液させて化成処理するりん酸塩化成処理工程と、りん酸塩化成処理された被処理物を多段の水洗槽を通して水洗する水洗工程と、水洗槽から排出する水洗排水を逆浸透膜を使用して濃縮する濃縮工程と、濃縮工程で得られた濃縮液を化成処理槽に戻す工程とからなるりん酸塩化成処理液の回収再利用方法における上記の濃縮工程において、前記水洗槽から排出する水洗排水に、(1)化成処理槽中に供給する被処理物の処理量の減少に応じて減少する持ち出し量(持ち出し量とは、被処理物に付着して水洗槽に移行するりん酸塩化成処理液の量をいう)のりん酸塩化成処理液を化成処理槽から強制的に抜き出して混合し、更に(2)被処理物の処理量の減少に応じて減少させた水洗水量分の水を混合し、この混合液を逆浸透膜を使用して濃縮することを特徴とするりん酸塩化成処理液の回収再利用方法である。このとき水洗排水に、更に(3)亜鉛水溶液を混合してもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の鉄系材料或はアルミニウム系材料などを素材とした電気製品、自動車ボデー、自動車パーツ、建材などのりん酸塩化成処理に適用できる。また、使用するりん酸塩化成処理液としては、リン酸亜鉛系の他、りん酸亜鉛カルシウム系の化成処理液など従来既知の処理剤が挙げられる。中でも、りん酸亜鉛系化成処理液は、耐食性や塗装密着性が良好な皮膜を形成することから、自動車ボディーライン、建材ライン、電機部品ライン等において好ましく使用される。このりん酸亜鉛系化成処理液は、りん酸及び亜鉛を主成分とし、副成分としてニッケル、マンガンなどの重金属やフッ素、硝酸等を含んでもよい。更に酸化促進剤として亜硝酸ナトリウムを含有する
【0011】
図1は、本発明(請求項1発明)のりん酸塩化成処理液の回収再利用方法の一例を示した工程図である。1は化成処理槽である。2は第1水洗槽、3は第2水洗槽、4は第3水洗槽、5は脱イオン水洗槽である。6は脱イオン水給水管、7は水洗排水管である。電気製品、自動車ボデー、自動車パーツなどの被処理物は脱脂、表面調整後、化成処理槽1でりん酸塩化成処理される。化成処理された被処理物は化成処理液を付着した状態で水洗槽に移行され、水洗槽で被処理物に付着した化成処理液が除去される。水洗はディップ又はスプレーによる接液で行われる。この化成処理液を除去するための水洗工程は、第1水洗槽2、第2水洗槽3、第3水洗槽4で順次水洗され、最後に脱イオン水洗槽5で水洗する。水洗水は給水管6及び透過水配管12より脱イオン水洗槽5に給水され、その水は順次各水洗槽をオーバーフローし、最終的に第1水洗槽2から水洗排水として水洗排水管7を通して排出される。この排出された水洗排水は、化成処理液の1/5〜1/50の濃度である。
【0012】
本発明では、最終的に水洗排水管7より排出される水洗排水をそのまま逆浸透膜を備えた濃縮装置に供給することなく、この水洗排水に亜鉛化合物水溶液を添加配合した後に濃縮装置に供給する。図1において、8は亜鉛化合物水溶液供給管、9は混合槽、10は逆浸透膜を備えた濃縮装置である。第1水洗槽2より排水された水洗排水は水洗排水管7から混合槽9に送られ、ここで亜鉛化合物水溶液供給管8から供給する亜鉛化合物水溶液と混合され、次いで濃縮装置10に送られる。濃縮装置10の逆浸透膜で濃縮された濃縮液は適宜調整して濃縮液配管11を通して化成処理槽1に戻し化成処理に再利用する。また逆浸透膜を透過した透過水は、透過水配管12を通して脱イオン水洗槽5に戻して再利用する。この透過水は、電気伝導度の低い清浄な水であるので、そのまま水洗水として、あるいは更に高度処理を施して脱イオン水洗工程の脱イオン水として利用することができる。ここで高度処理とは、逆浸透膜による分離処理やイオン交換樹脂による吸着処理などを言う。
【0013】
上記の亜鉛化合物水溶液としては、硝酸亜鉛、塩化亜鉛及び硫酸亜鉛のうちの少なくとも1種を含有する水溶液を用いるのが好ましい。特に好ましくは硝酸亜鉛である。これらの亜鉛化合物水溶液は液の安定性を高めるため酸性水溶液の状態で用いるのが好ましい。亜鉛化合物水溶液の使用可能なpH範囲は、pH0〜7、好ましくはpH1〜3である。例えば、硝酸亜鉛水溶液には液の安定性を高めるため少量の硝酸を添加するのが好ましい。また、酸化亜鉛なども酸性水溶液に溶解して用いることができる。亜鉛化合物水溶液を酸性にすることによって、後述する効果も生じる。
【0014】
本発明では、水洗排水を濃縮するとき、水洗排水に亜鉛化合物水溶液を添加する。この亜鉛化合物水溶液を添加することによって、水洗排水中の不要成分の一つであるナトリウムイオンの逆浸透膜での阻止率を低下させる、すなわちナトリウムイオンを透過させ易くすることができる。例えば硝酸亜鉛を添加することによって、硝酸亜鉛が水洗排水中の成分と、2NaH2PO4 + Zn(NO3)2 → Zn(H2PO4)2+ 2NaNO3 の反応を生じ、ここで生成した NaNO3 は逆浸透膜を透過しやすい。そして、この NaNO3 を透過させることによって、濃縮液中の不要成分であるナトリウム及び硝酸等の不要な酸を減少できるので、化成処理槽中の不要成分の蓄積を防ぐことができる。透過水中のナトリウムや硝酸等の不要成分は、前記した逆浸透膜による分離処理やイオン交換樹脂による吸着処理などで除去され系外に排出される。この透過水は水洗水として再利用できる。添加する亜鉛化合物水溶液の濃度は任意でよいが、亜鉛化合物の水洗排水への添加量は水洗排水に対してZn濃度として1〜500mg/L好ましくは5〜100mg/Lである。
【0015】
また、従来、化成処理槽には、化成処理で消費された成分、すなわち被処理物に付着して水洗槽に持ち出された化成処理液成分、被処理物の表面に皮膜として析出した成分及びスラッジとして沈殿した成分を、化成処理槽液給剤として供給して補っている。本発明の回収再利用方法を適用した場合、被処理物に付着して水洗槽に持ち出された化成処理液成分は濃縮して化成処理槽へ回収されるが、皮膜析出成分及びスラッジ成分は補給する必要がある。ここで、皮膜析出成分及びスラッジ成分はりん酸及び亜鉛が主成分であり、これらの成分を含む化成処理槽補給剤では、その液安定性を高めるため硝酸等の過剰の酸を添加する必要がある。本発明においては、水洗排水を濃縮するとき、水洗排水に亜鉛化合物水溶液を添加することによって、再利用する濃縮液中に亜鉛が存在するので、化成処理槽補給剤中の亜鉛を減少させることができ、これに伴って該補給剤中の硝酸を大幅に減少させることができる。その結果として、不要成分の一つである硝酸イオンの化成処理槽中ひいては系中での蓄積を抑制することができる。
【0016】
更に、酸を添加して安定化した亜鉛化合物水溶液を用いるときは、該水溶液はpHが低くなっている。そのため、この亜鉛化合物水溶液を、水洗排水を濃縮するとき水洗排水に添加することによって、逆浸透膜の手前での水洗排水のpH上昇を抑制することができる。このpH上昇を抑制することによって、逆浸透膜の手前での沈殿を防いで、運転性に悪影響が及ぶのを防ぐことができる。亜鉛化合物水溶液を添加して、水洗排水のpHを1〜4、特に2〜3.5に調整するのが好ましい。
【0017】
次に、本発明の請求項3に係る発明について説明する。特に、水洗排水を回収再利用するりん酸塩化成処理ラインにおいては、化成処理槽中のりん酸塩化成処理成分及び不要成分の量、また水洗槽に供給する水量、更には水洗排水の濃縮条件が事前に設計されており、その設計とおりに実施できるように管理されている。例えば、化成処理槽中のりん酸塩化成処理成分は消耗に応じて補充されている。ところで、被処理物例えば自動車ボディーのラインへの供給量が設計時より減少することがしばしば生じる。この被処理物の供給量が減少すると、被処理物に付着して化成処理槽から水洗槽に持ち出される化成処理液の量(持ち出し量)が減少する。化成処理液には不要成分も含まれており、その持出し量が減少することによって、化成処理槽中には不要成分が徐々に蓄積される不都合が生じる。
【0018】
そこで、本発明の請求項3に係る発明は、化成処理槽から強制的に化成処理液を抜き出すことによってこの不都合をなくしたものである。更に、被処理物の供給量が減少すると、時間あたりに供給する水洗水の水量(給水量)も減少していき、不要成分が系外に出される排出される量(不要成分が逆浸透膜を透過する量)も減少する。本発明の請求項3に係る発明は、設計時と比較して不足した水洗水量分の水を、濃縮工程前に水洗排水に加えることによって、不要成分が透過側に抜ける量を設計とおりにし、化成処理槽中の不要成分の量を設計とおりにするものである。更に、本発明の請求項3に係る発明では、強制的に抜き出した化成処理液中の有効成分も水洗排水中の有効成分と一緒に濃縮され、濃縮液として化成処理槽に戻すことができる。
【0019】
図2は、請求項3に係る発明のりん酸塩化成処理液の回収再利用方法の一例を示した工程図である。図2において、21は化成処理槽である。22は第1水洗槽、23は第2水洗槽、24は第3水洗槽、25は脱イオン水洗槽である。6は脱イオン水給水管、7は水洗排水管である。電気製品、自動車ボデー、自動車パーツなどの被処理物は脱脂、表面調整後、化成処理槽21でりん酸塩化成処理される。化成処理された被処理物は化成処理液を付着した状態で水洗槽に移行され、水洗槽で化成処理液が除去される。この化成処理液を除去するための水洗工程は、第1水洗槽22、第2水洗槽23、第3水洗槽24で順次水洗され、最後に脱イオン水洗槽25で水洗する。水洗水は給水管26及び透過水配管34より脱イオン水洗槽25に脱イオン水が給水され、その水は順次各水洗槽をオーバーフローし、最終的に第1水洗槽22から水洗排水として水洗排水管27を通して排出される。一般的に、脱イオン水洗工程では被処理物を検知し、一定量スプレーするシステムとなっている。したがって、水洗水量は被処理物の流れる量すなわち生産量によって随時変化する。
【0020】
排水管27から排出した水洗排水は混合槽31に送られる。一方、りん酸塩化成処理ラインの被処理物の処理量(生産量)が設計時より減少したとき、その処理量の減少に応じて減少する持ち出し量(被処理物に付着して水洗槽に移行するりん酸塩化成処理液の量)28を、化成処理槽21からポンプ又は自動弁等を利用して、強制的に抜き出す(すなわち、処理量(生産量)が減少したときに処理物に付着して持ち出される液量と強制的に抜き出す液量の和を、設計時の処理物に付着して持ち出される液量と等しくする)。この抜き出した化成処理液を混合槽31に送る。また、りん酸塩化成処理ラインの被処理物の処理量(生産量)が設計時より減少したときには、それに応じて水洗水の水量も減少するが、その減少させた水洗水量を給水管29より混合槽31に入れ混合する。なお、減少させた水洗水量の給水(給水管29の位置)は、濃縮装置33へ供給する前であればいつでもよい。
【0021】
次いで、この混合液を必要に応じて通常の濾過器32で濾過して塵埃を除去した後、逆浸透膜を備えた濃縮装置33に供給する。濾過器32を設けることによって逆浸透膜の負担を軽減できる。濃縮装置33の逆浸透膜で濃縮された濃縮液は適宜調整して濃縮液配管34を通して化成処理槽21に戻し化成処理に再利用する。また逆浸透膜を透過した透過水はそのまま或は適宜処理後に透過水配管35を通して水洗槽25に戻して水洗水として再利用する。更に、上記の三者混合のとき、混合槽31に亜鉛化合物水溶液30を添加して、上記した不要成分の蓄積を防いでもよい。
【0022】
本発明では、給水量を一定とした場合、生産量が低下して水洗水の希釈倍率が上昇し、化成液相当まで濃縮するには濃縮水と透過水の液量比を変えなければいけないところを、強制的に化成処理槽中の化成処理液を抜き出し、実際の持ち出し液量と上記抜き出し量の和が設計時の持ち出し液量となるようにし、混合槽31の希釈倍率を一定にする。送液する化成処理液量は生産量によって随時変化するので、混合槽中に電気伝導度計を設置し排出ポンプや自動弁を制御するか、定期的に遊離酸度及び全酸度を測定又は成分濃度を測定して排出ポンプの流量や自動弁を調整する方法等がある。なお、処理液の遊離酸度は処理液を10mL採取し、ブロムフェノールブルーを指示薬として、0.1N苛性ソーダで滴定することにより求める。処理液の全酸度は処理液を10mL採取し、フェノールフタレインを指示薬として、0.1N苛性ソーダで滴定することにより求める。この場合は、生産量によらず濃縮装置33に送液される液量及び濃度はほぼ一定となるので、常に安定した透過性能、分離性能が得られる。
【0023】
りん酸塩化成処理工程の一つである自動車ボディーラインを例に挙げて、更にこの容量収支について具体的に説明する。例えば、自動車ラインにおける持ち出し液量は生産量により変化し、設計時(高生産量時)の持ち出し量が300L/hr程度で、生産量が半分に低下した場合(低生産量時)の持ち出し量は150L/hrと仮定する。本発明では、低生産量時は高生産量時の持ち出し量と等しくなるよう排出ポンプ等で強制的に150L/hrを抜き出す。また、通常のラインでは生産量が半分に低下した場合は、水洗水の給水量も減少し2850L/hrとなるが、本発明では減少分の2850L/hr給水し、合計5700L/hr給水する。本発明では上記のようなシステムを適用することによって、生産量の変動によらず常に6000L/hr、化成処理液の20倍希釈相当の液を分離処理することとなる。かつ、化成処理槽での不要成分濃度は設計通りの状態での運転が可能である。
【0024】
この方法によると、化成処理槽から、化成処理槽中に供給する被処理物の処理量の減少に応じて減少する持ち出し量(被処理物に付着して水洗槽に移行するりん酸塩化成処理液の量)を強制的に抜き出すとき、化成処理槽中の不要成分も一緒に抜き出されるから、化成処理槽中に不要成分が蓄積するのを防ぐことができる。また、水洗槽から排出する水洗排水に、(1)化成処理槽から強制的に抜き出した化成処理液と、(2)被処理物の処理量の減少に応じて減少させた水洗水量分の水とを混合した混合液は、設計時の水洗排水とほぼ同じ組成及び液量になるから、濃縮条件を設計時と変えることなく濃縮処理を行うことができ、設計時と同じ組成及び量の濃縮液及び透過水を得ることができる。したがって、本発明方法によれば、たとえ生産量が減少した場合でも、不要成分の蓄積を設計時の値と同じにすることができる。
【0025】
【実施例】
以下に、参考例、実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
参考例
りん酸亜鉛化成処理液中の硝酸の濃度が、りん酸塩皮膜の特性に及ぼす影響を調べるために、次の実験をした。
表面調整剤としてプレパレンZN(登録商標:日本パーカライジング(株)製表面調整剤)を1g/L濃度に水道水で希釈したものを使用し、また、リン酸亜鉛処理液としてパルボンドWL35(登録商標:日本パーカライジング(株)製りん酸亜鉛化成処理液)を4.8%に水道水で希釈し、Zn:1.8g/L、Ni:1g/L、Mn:0.5g/L、PO4:14g/L、F:1g/L、Si:0.3g/Lに調製しものを使用して、下記の処理工程でSPC鋼板(冷延鋼板)及びアルミ材(A1100材)を化成処理した。そして、化成処理液中の硝酸イオン濃度を変化させて化成処理し、得られた各濃度におけるりん酸塩皮膜について下記の評価を行なった。その結果を、表1、表2に示す。表1はSPC鋼板(冷延鋼板)、表2はアルミ材(A1100材)についての評価結果である。
【0027】
〔処理工程〕
(1)アルカリ脱脂 : 42℃、120秒スプレー
(2)水洗 : 室温、30秒スプレー
(3)表面調整 : 室温、20秒浸漬
(4)リン酸亜鉛処理 : 35℃、120秒スプレー
(5)水洗 : 室温、30秒スプレー
(6)脱イオン水洗 : 室温、30秒スプレー
【0028】
〔りん酸塩皮膜の評価方法〕
(1)外観
目視観察により、リン酸亜鉛皮膜のスケ、ムラの有無を確認した。評価は以下の通りとした。
○ 均一良好な外観
△ ムラ、スケあり
× スケ多し
【0029】
(2)皮膜重量
化成処理後の処理板の重量を測定し、次いで化成処理板に下記に示す剥離液、剥離条件にて皮膜剥離処理を施し、その重量を測定し、剥離前後の重量差から単位面積当たりの皮膜重量を算出した。
剥離液:5%クロム酸水溶液
剥離条件:75℃、15分、浸漬剥離
【0030】
【表1】
Figure 0004098669
【0031】
【表2】
Figure 0004098669
【0032】
表1、表2からわかるように、SPC鋼板については硝酸濃度が20g/L以下の時は良好なりん酸塩皮膜が得られるが、30g/Lを越えると一部ムラ・スケが発生し、良好なりん酸塩皮膜が得られなくなっている。また、アルミ材についても20g/L以下の時は良好なりん酸塩皮膜が得られるが、30g/Lを越えるとスケが多く、良好なりん酸塩皮膜が得られなくなっている。したがって、各種材料で良好なりん酸塩皮膜を形成させるには硝酸イオン濃度を20g/L以下に保つことが好ましい。
【0033】
実施例1
参考例に示す処理条件において、更に皮膜やスラッジとして消費される成分を補給しながらSPC鋼板(70×150mm)の化成処理を行った。実験条件は以下のとおりである。
化成処理槽容量 : 5L
1台当り化成処理液持ち出し量 : 2mL/枚
処理タクト : 5枚/hr
時間当たり持ち出し液量 : 10mL/hr
促進剤 : 4.5ポイントとなるように常時補給
更に、化成処理液濃度及び液量が一定となるように各種成分を補給した。
なお、促進剤濃度は、キューネ管に類似の器具(通称:サッカロメーター)に50mLのサンプルを入れた後に、G205(登録商標、日本パーカライジング(株)製)を5g添加し、発生したガス量を測定し、発生ガス量1mLにつき1ポイントとした。
【0034】
SPC鋼板を化成処理槽中で上記の条件のもとで2500枚化成処理した。このとき、化成処理液の化成処理槽中から持ち出れる液量の合計は5L(2500枚×2mL)である。この持ち出し液5Lを水道水95Lで希釈して、模擬水洗排水とした。この模擬水洗排水(化成処理液の20倍希釈相当)に対して硝酸亜鉛水溶液を亜鉛濃度で5mg/L添加した。次いでこの硝酸亜鉛水溶液を添加した模擬水洗排水を化成処理液相当まで濃縮運転実験を行った。濃縮実験には、逆浸透膜であるSULG10膜(東レ株式会社製、NaCl阻止率:99.5%)を濃縮分離膜として利用し、処理温度25℃、圧力1.5MPa、濃縮液循環流量を12〜14L/分、pH2〜3.5で行った。得られた濃縮液(5L)及び透過液(95L)のイオン濃度を表3に示す。
【0035】
更に、この濃縮液5Lは化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度及び各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。このような工程を繰り返すことにより不要成分であるナトリウム及び硝酸イオン濃度は蓄積していく。4ターンオーバー後の化成処理槽の化成処理液中の不要成分濃度を表3に示した。表3から、実施例1では、化成処理槽の硝酸イオン濃度は22.7g/Lとなるので、参考例の結果よりみて、材料によっては良好なりん酸塩皮膜が得られないことがわかる。
【0036】
【表3】
Figure 0004098669
【0037】
実施例2
実施例1と同様な処理を行った。但し、模擬水洗水に対して硝酸亜鉛水溶液を亜鉛濃度で50mg/L添加して、実施例1と同様な濃縮実験を行った。得られた濃縮液(5L)及び透過液(95L)のイオン濃度を表4に示す。更に、この回収液5Lは化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度及び各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽の化成処理液中の不要成分濃度を表4に示した。この表4から、実施例2では、不要成分である硝酸イオンの蓄積濃度は19.4g/Lまで減少し、参考例の結果よりみて、材料によらず、良好なりん酸塩皮膜が得られる。
【0038】
【表4】
Figure 0004098669
【0039】
比較例1
実施例1と同様な処理を行った。但し、模擬水洗排水に対して硝酸亜鉛水溶液を添加することなく、実施例1と同様な濃縮実験を行った。得られた濃縮液(5L)及び透過液(95L)のイオン濃度を表5に示す。更に、この回収液5Lは化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度及び各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽の化成処理液中の不要成分濃度を表5に示した。表5から、この比較例1では、化成処理槽の硝酸イオン濃度は30g/Lまで蓄積するので、参考例の結果よりみて、良好なりん酸塩皮膜が得られないことがわかる。
【0040】
【表5】
Figure 0004098669
【0041】
実施例3
実施例2の設計条件で実施するとき、その生産量を設計時の50%に低下させた。すなわち、被処理物の処理タクトを5枚/hrの50%の2.5枚/hrにした。この生産量低下で被処理物に付着して持ち出される化成処理液量も10mL/hr50%、すなわち5mL/hrになった。
【0042】
本実施例では、化成処理槽から化成処理液を5mL/hrの流量で強制的に抜き出して混合槽に流入させた。この混合槽に模擬水洗排水を流入させ、更に混合液の化成処理液濃度がその20倍希釈相当の濃度になる量の水を流入させた。すなわち、混合槽中の混合液が設計時の水洗排水の組成及び液量と同等になるようにした。更に、混合槽に硝酸亜鉛水溶液を亜鉛濃度で50mg/L添加した。このようにして調製した混合液を、実施例1と同様な濃縮実験を行った。得られた濃縮液は化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度及び各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽中の不要成分濃度は、硝酸イオン濃度が19.4g/L、ナトリウム濃度が8.2g/Lであった。この実施例では、化成処理槽の硝酸イオン濃度は19.4g/Lまで減少するので、参考例の結果よりみて、材料によらず良好なりん酸塩皮膜が得られることがわかる。
【0043】
この方法によれば、生産量の低下によって被処理物に付着して化成処理槽中から持ち出される不要成分の量が減少しても、その分が化成処理槽中から強制的に抜き出するため、不要成分である硝酸イオン、ナトリウムの化成処理槽中の蓄積量が少なく、また生産量を設計時の50%に低下させても、濃縮工程を設計時と同じ条件でそのまま遂行できる。
【0044】
比較例2
実施例2の設計条件で実施するとき、その生産量を設計時の50%に低下させた。すなわち、被処理物の処理タクトを5枚/hrの50%の2.5枚/hrにした。この生産量低下で被処理物に付着して持ち出される化成処理液量も10mL/hr50%、すなわち5mL/hrになった。この条件のもとで実施例2と同様な濃縮実験を行った。得られた濃縮液は化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度及び各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽中の不要成分濃度は、硝酸イオン濃度が45.4g/L、ナトリウム濃度が17.8g/Lであった。この方法では、生産量の低下によって被処理物に付着して化成処理槽中から持ち出される不要成分の量が減少するため、不要成分である硝酸イオン、ナトリウムの蓄積量が多くなっている。実施例3と比較すると、不要成分である硝酸イオンが45g/Lまで蓄積し、参考例の結果よりみて、良好なりん酸塩皮膜が得られないことがわかる。
【0045】
比較例3
(1)実施例1の被処理物の処理タクトを6枚/hrに増加する(時間当りの持出し量も12mL/hrに増加する)以外は、実施例1の条件にしたがって、SPC鋼板を化成処理槽中で3000枚化成処理した。この時に化成処理槽から持ち出される化成処理液の合計量は6L(3000枚×2mL)である。その持ち出し液6Lを水道水114Lで希釈して模擬水洗排水(化成処理液の20倍希釈相当)とした。この模擬水洗排水に対して硝酸亜鉛を添加することなく、実施例1と同様に化成液相当までの濃縮実験を行った。実験の結果濃縮液(6L)及び透過水(114L)得られ、得られた濃縮液は化成処理槽に戻し、全酸度、有利酸度及び各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽の化成処理液中の不要成分濃度は、硝酸イオン濃度が19.2g/L、ナトリウム濃度が8.1g/Lであった。この例では化成処理槽の硝酸イオン濃度が19.2g/Lとなるので、参考例の結果よりみて、材料によらず良好なリン酸塩皮膜が得られることがわかる。
【0046】
(2)ところが、上記(1)例において、被処理物の数量が減少すると、不要成分化成処理液中の濃度が高くなり、良好なリン酸塩皮膜が得られなくなる。その例を以下に示す。
すなわち、上記(1)例の設計条件で実施するとき、その生産量(処理タクト)を50%に低下させ、処理タクト3枚/hrにし時間当りの持出し量を6mL/hrにした。この生産量を低下させた条件のもとで、実施例1の条件にしたがって、SPC鋼板を化成処理槽中で1500枚化成処理した。この時に化成処理槽から持ち出される化成処理液の合計量は3L(1500枚×2mL)である。その持ち出し液3Lを水道水57Lで希釈して模擬水洗排水(化成処理液の20倍希釈相当)とした。この模擬水洗排水に対して、上記(1)例と同様の濃縮実験を行い、化成処理液相当まで濃縮した。得られた濃縮液3Lは化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度および各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽の化成処理液中の不要成分濃度は、硝酸イオン濃度が41.3g/L、ナトリウム濃度が16.3g/Lであった。
【0047】
この方法では、生産量の低下によって被処理物に付着して化成処理槽から持ち出される不要成分の量が減少し、更に、水洗水量が減少した分透過する不要成分の量も少なくなるため、不要成分でなる硝酸イオン、ナトリウムイオンの蓄積量が多くなっている。この硝酸イオン濃度では、参考例の結果よりみて、良好なりん酸塩皮膜が得られないことがわかる。
【0048】
実施例3
比較例3の(2)例の条件で実施した。但し、持ち出し液3Lを水道水57Lで希釈した模擬水洗排水60L(化成処理液の20倍希釈相当)をそのまま濃縮実験に掛けることなく、この模擬水洗排水60Lを混合槽に入れ、▲1▼ 化成処理槽から強制的に抜き出した化成処理液3L(比較例3の(1)例について、その(2)例にように50%生産量低下した時に減少する持出し量=6L−3L=3L)、及び ▲2▼ 混合槽中の化成処理液の濃度を20倍稀釈濃度にする量の水量(すなわち、生産量の減少に伴って減少する水洗水量)57Lを混合槽に入れて混合してから、比較例3の(2)例と同様の濃縮実験を行い、化成処理液相当まで濃縮した。得られた濃縮液6Lは化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度及び各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽の不要成分濃度は、硝酸イオン濃度が19.1g/L、ナトリウム濃度が8.0g/Lであった。参考例の結果よりみて、良好なリン酸塩皮膜が得られることがわかる。
【0049】
この方法によれば、生産量の低下によって被処理物に付着して化成処理槽中から持ち出される不要成分の量が減少しても、その減少分を化成処理槽から強制的に抜き出すため、化成処理槽から排出される不要成分の量は比較例3の(1)例と同じ値となる。さらに、化成処理液の持ち出し分と抜き出し分を20倍希釈となるように給水をすることによって、不要成分が透過側に抜ける量も比較例3の(1)例と同じ量になる。その結果、生産量が設計時の50%に低下させても、濃縮工程を設計時と同じ条件でそのまま遂行できる。
【0050】
比較例4
比較例3の(2)例の条件で実施した。但し、持ち出し液3Lを水道水57Lで希釈した模擬水洗排水60L(化成処理液の20倍希釈相当)をそのまま濃縮実験に掛けることなく、この模擬水洗排水60Lを混合槽に入れ、更に混合槽に化成処理槽から強制的に抜き出した化成処理液3L〔比較例3の(1)例において、その(2)例にように50%生産量低下した時に減少する持出し量=6L−3L=3L〕を入れて混合してから、この混合液を比較例3の(2)例と同様の濃縮実験を行い、化成処理液相当まで濃縮した。得られた濃縮液6Lは化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度および各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽の不要成分濃度は、硝酸イオン濃度が31.3g/L、ナトリウム濃度が12.6g/Lであった。
【0051】
この方法では、生産量の低下に伴って被処理物に付着して化成処理槽から持ち出される不要成分の量が減少するが、その減少分を化成処理槽から強制的に抜き出すので、化成処理槽から排出される不要成分の量は変わらない。しかし、生産量の減少に伴って減少する水洗水量の減少分は混合槽に補充されない。そのため、濃縮工程にかける液の量が少なくなって濃縮効率が悪くなり、逆浸透膜を透過する不要成分の量が少なくなり、従って不要成分である硝酸イオン、ナトリウムイオンの蓄積量が多くなっている。不要成分である硝酸イオンが31.3g/Lまで蓄積し、参考例の結果よりみて、良好なりん酸塩皮膜が得られないことがわかる。
【0052】
比較例5
比較例3の(2)例の条件で実施した。但し、比較例3の(2)例では持ち出し液3Lを水道水57Lで希釈して模擬水洗排水60L(化成処理液の20倍希釈相当)を調製しているが、本比較例では持ち出し液3Lを水道水114Lで希釈して模擬水洗排水117L(化成処理液の40倍希釈相当)を調製した。この模擬水洗排水に対して比較例3の(2)例と同様の濃縮実験を行い、化成処理液相当まで濃縮した。得られた濃縮液3Lは化成処理槽に戻し、全酸度、遊離酸度および各成分濃度を調整した。この工程を1ターンオーバーとして、計4ターンオーバー実施した。4ターンオーバー後の化成処理槽の不要成分濃度は、硝酸イオン濃度が28.9g/L、ナトリウム濃度が11.7g/Lであった。
【0053】
この方法では、比較例3の(2)例と同じく、生産量の低下に伴い被処理物に付着して化成処理槽から持ち出される不要成分の量が減少するので、化成処理液中の不要成分の蓄積を防ぐことができない。化成処理槽からの持出し液を、比較例3の(2)例の倍に希釈してから濃縮しても、不要成分である硝酸イオン、ナトリウムイオンの蓄積を防ぐことはできなく、その結果、不要成分である硝酸イオンが28.9g/Lまで蓄積し、参考例の結果よりみて、良好なりん酸塩皮膜が得られないことがわかる。
【0054】
【発明の効果】
従来、りん酸塩化成処理工程で排出される水洗排水を再利用することが知られているが、化成処理液中に不要成分が蓄積するためその実施は困難であった。本発明によれば、化成処理剤中の不要成分の蓄積を少なくすることができ、効率良く再利用できる。そのため、化成処理液成分を回収し再利用することで、りん酸塩化成処理工程の廃棄物の最少化を可能とすることができる。また、りん酸塩化成処理工程ラインで、その処理量(生産量)が変動しても、常に同条件でりん酸塩化成処理液の成分回収再利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理工程の一例を示した工程図
【図2】本発明の処理工程の一例を示した工程図
【符号の説明】
1,21 化成処理槽、2,22 第1水洗槽、3,23 第2水洗槽、
4,24 第3水洗槽、5,25 脱イオン水洗槽、6,26 給水管、
7,27 水洗排水管、8,30 亜鉛化合物水溶液供給管、
9,31 混合槽、10,33 濃縮装置、11,34濃縮水配管
12,35 透過水配管 28 化成処理液抜き出し管、29 給水管、
32 濾過器

Claims (7)

  1. 化成処理槽中で、酸化促進剤として常時亜硝酸ナトリウム水溶液が添加されるりん酸塩化成処理液を被処理物に接液させて化成処理するりん酸塩化成処理工程と、りん酸塩化成処理された被処理物を多段の水洗槽を通して水洗する水洗工程と、水洗槽から排出する水洗排水を逆浸透膜を使用して濃縮する濃縮工程と、濃縮工程で得られた濃縮液を化成処理槽に戻す工程とからなるりん酸塩化成処理液の回収再利用方法おける上記の濃縮工程において、水洗槽から排出した水洗排水に亜鉛化合物水溶液を添加してから逆浸透膜で濃縮することを特徴とするりん酸塩化成処理液の回収再利用方法。
  2. 亜鉛化合物水溶液が、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛のうちの少なくとも1種を含有する請求項1記載のりん酸塩化成処理液の回収再利用方法。
  3. 化成処理槽中で、酸化促進剤として常時亜硝酸ナトリウム水溶液が添加されるりん酸塩化成処理液を被処理物に接液させて化成処理するりん酸塩化成処理工程と、りん酸塩化成処理された被処理物を多段の水洗槽を通して水洗する水洗工程と、水洗槽から排出する水洗排水を逆浸透膜を使用して濃縮する濃縮工程と、濃縮工程で得られた濃縮液を化成処理槽に戻す工程とからなるりん酸塩化成処理液の回収再利用方法における上記の濃縮工程において、前記水洗槽から排出する水洗排水に、(1)化成処理槽中に供給する被処理物の処理量の減少に応じて減少する持ち出し量(持ち出し量とは、被処理物に付着して水洗槽に移行するりん酸塩化成処理液の量をいう)のりん酸塩化成処理液を化成処理槽から強制的に抜き出して混合し、更に(2)被処理物の処理量の減少に応じて減少させた水洗水量分の水を混合し、この混合液を逆浸透膜を使用して濃縮することを特徴とするりん酸塩化成処理液の回収再利用方法。
  4. 請求項1記載のりん酸塩化成処理液の回収再利用方法における濃縮工程において、水洗槽から排出する水洗排水に、亜鉛化合物水溶液の他に更に、(1)化成処理槽中に供給する被処理物の処理量の減少に応じて減少する持ち出し量(持ち出し量とは、被処理物に付着して水洗槽に移行するりん酸塩化成処理液の量をいう)のりん酸塩化成処理液を化成処理槽から強制的に抜き出して混合し、更に(2)被処理物の処理量の減少に応じて減少させた水洗水量分の水を混合し、この混合液を逆浸透膜を使用して濃縮することを特徴とするりん酸塩化成処理液の回収再利用方法。
  5. 亜鉛化合物水溶液が、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛のうちの少なくとも1種を含有する請求項4記載のりん酸塩化成処理液の回収再利用方法。
  6. りん酸塩化成処理液が、りん酸亜鉛系又はリン酸亜鉛カルシウム系である請求項1〜5のいずれかに記載のりん酸塩化成処理液の回収再利用方法。
  7. 濃縮工程で逆浸透膜を透過した透過水を水洗水に利用する請求項1〜6のいずれかに記載のりん酸塩化成処理液の回収再利用方法。
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