JP2005111413A - リン酸塩化成処理水洗排水の回収方法 - Google Patents

リン酸塩化成処理水洗排水の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
リン酸塩化成処理により生じる水洗排水の逆浸透膜を利用した回収方法において、逆浸透膜表面にリン酸鉄化合物が析出沈着することを防ぎ、作業性及び経済性に優れたリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法を提供する。
【解決手段】
リン酸塩化成処理液を用いて少なくとも一部が鉄系基材からなる金属基材を化成処理する際に発生する水洗排水中の化成処理液成分を回収するためのリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法であって、化成処理後の水洗工程から排出される水洗排水をリン酸、硝酸、フッ酸、ケイフッ酸、及び、ホウフッ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸でpH調整する工程、上記pH調整する工程により得られたpH調整した水洗排水にキレート剤を添加する工程、上記pH調整した水洗排水を逆浸透膜で処理する工程、及び、上記逆浸透膜で処理する工程により得られた濃縮液を化成処理浴に添加する工程からなるリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リン酸塩化成処理水洗排水の回収方法に関する。
自動車ボディ、その他の自動車部品、建材、家具等の分野で多くの金属素材が使用されている。このような金属素材に対して、空気中の酸素や硫黄酸化物、雨水、海水等の腐食を防ぐための塗装前処理としてリン酸塩化成処理が従来から行なわれている、このリン酸塩化成処理では、化成処理後の金属を洗浄する必要がある。この洗浄は、通常、多段からなる水洗工程により行なわれるものであり、最終段の水洗に新鮮な水洗水が給水され、順次前段にオーバーフローにより給水し、第1段目の水洗排水の一部を系外に排出することにより、水洗排水の各段の汚染濃度を管理し、正常な化成処理が維持されるようにコントロールされている。第1段目の水洗排水には、亜鉛、ニッケル、マンガン等の金属イオンやリン酸イオン、硝酸イオン、フッ素、ケイフッ素、ホウフッ酸等の化成処理液成分が含まれており、これをそのまま系外に放流すれば水質汚濁を招く。このため、凝集沈殿処理や生物処理排水処理を施した後に廃棄されていた。
このようなリン酸塩化成処理から生じる水洗排水に含まれる化成処理液成分の回収及び排水の低減化を目的とした水洗排水処理方法が検討されてきた。上述の目的を達成する方法として、例えば、逆浸透膜を使用して濃縮液及び透過液に分離することにより排水を低減化し、化成処理液成分を再利用する方法が報告されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、鉄系基材を被処理物として上述の水洗排水処理方法を行なった場合、化成処理工程でイオン化した鉄イオンが水洗排水中に溶出し、このような鉄イオンを含有する水洗排水を逆浸透膜を用いて濃縮することによって、鉄イオンがリン酸鉄化合物として膜表面に析出沈着し、逆浸透効率が著しく低下するという問題があった。リン酸鉄化合物を除去するためには、逆浸透膜を酸で洗浄する必要が生じるが、酸洗浄は人手と手間がかかるだけでなく、逆浸透膜の寿命を著しく短くするため作業性及び経済性の点で好ましくなかった。また、逆浸透処理により得られた濃縮液を化成処理浴に戻すと、濃縮された鉄イオンが混入するために化成性に悪影響を及ぼすおそれがあった。
特開2001−164389号公報
本発明は、上記に鑑み、リン酸塩化成処理により生じる水洗排水の逆浸透膜を利用した回収方法において、逆浸透膜表面にリン酸鉄化合物が析出沈着することを防ぎ、作業性及び経済性に優れたリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法を提供することを目的とする。
本発明は、リン酸塩化成処理液を用いて少なくとも一部が鉄系基材からなる金属基材を化成処理する際に発生する水洗排水中の化成処理液成分を回収するためのリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法であって、化成処理後の水洗工程から排出される水洗排水をリン酸、硝酸、フッ酸、ケイフッ酸、及び、ホウフッ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸でpH調整する工程、上記pH調整する工程により得られたpH調整した水洗排水にキレート剤を添加する工程、上記pH調整した水洗排水を逆浸透膜で処理する工程、及び、上記逆浸透膜で処理する工程により得られた濃縮液を化成処理浴に添加する工程からなる
ことを特徴とするリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法である。
上記キレート剤は、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、EDTA、コハク酸、タンニン酸及びリンゴ酸並びにそれらの塩及びチオ誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
上記キレート剤は、リン酸塩化成処理浴中の含有量が200ppm以下であることが好ましい。
上記キレート剤は、逆浸透膜で処理する直前の水洗排水中の含有量が20ppm以上であることが好ましい。
上記リン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、更に、pH調整する工程の後で、空気逆洗方式のメンブランフィルターでろ過する工程を含むことが好ましい。
上記リン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、更に、pH調整する工程の後で、活性炭吸着装置でろ過する工程を含むことが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、リン酸塩化成処理液を用いて少なくとも一部が鉄系基材からなる金属基材を化成処理する際に発生する水洗排水を、逆浸透膜を用いて逆浸透処理することにより、化成処理成分の回収及び排水の低減化を行なう方法である。更に、本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、逆浸透処理を行なう前に水洗排水に鉄イオンのキレート剤を添加する工程を含むことによって、鉄イオンがリン酸鉄化合物として逆浸透膜表面に析出することを抑制するものである。
以下、本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法で使用する装置を表わす図1を参照して詳細に説明する。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、金属基材の化成処理後の水洗工程において発生する水洗排水の処理方法である。上記化成処理は、例えば図1では、化成処理槽1内のリン酸塩化成処理液に金属基材を浸漬することにより行なわれる。本発明において使用されるリン酸塩化成処理液としては特に限定されず、例えば、リン酸亜鉛化成処理液等を挙げることができる。
化成処理された金属基材は、水洗工程で洗浄される。上記水洗工程は、通常、その後の各種塗装後の密着性、耐食性等に悪影響を及ぼさないように化成処理成分を除去するために行なうものである。ここでの水洗はフルディップ方法やスプレー方法又はそれらの組み合わせにより行なうことができる。最終の水洗工程は、必要によりミストスプレー等が併用されてよい。上記1段以上の洗浄からなる水洗工程においては、最終水洗槽3に所定量の新鮮な水洗水が供給され、オーバーフロー水が前段階水洗槽へと給水され、最終的に第1水洗槽2に給水が行なわれる。ここで、上記第1水洗槽2における化成処理液の濃度が通常の化成処理液濃度の10倍希釈状態になるように、新鮮な水洗水の供給量が設定されている。
本発明のリン酸化成処理水洗排水の回収方法は、第1水洗槽2よりオーバーフローした水洗排水を、酸を用いてpH調整する工程を有するものである。pH調整範囲としては、2.0〜3.0が好ましい。pHが2.0未満であると逆浸透膜にダメージを与えるおそれがあるため好ましくなく、pH3.0を超えると逆浸透膜上にリン酸塩等の結晶が生じるおそれがある。このように水洗排水を上記pH範囲内に調整することにより、後述する逆浸透膜装置により処理を行なって得られる透過液側への硝酸イオン、ナトリウムイオン等の透過率を適正にすることができ、化成処理液として再利用に適した透過液が得られる。上記酸は、化成処理液中に含まれても化成性に影響を与えないものであって、リン酸、硝酸、フッ酸、ケイフッ酸、及び、ホウフッ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、なかでも、リン酸の使用が好ましい。上記pH調整する工程は、例えば、図1において、pH調整槽4において行なうことができる。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、上述のように水洗排水のpH調整を行なった後、pH調整した水洗排水にキレート剤を添加するものである。上記キレート剤を水洗排水に添加することによって鉄イオンを水洗排水中に保持し、逆浸透膜を用いた逆浸透処理により水洗排水が濃縮されても、リン酸鉄化合物に由来するスラッジの析出を抑制するものである。逆浸透膜表面にリン酸鉄化合物が析出沈殿しないため、逆浸透膜の酸洗浄を必要とせず、また、酸ダメージを受けないため逆浸透膜の交換頻度を低減することができるものである。すなわち、本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、上述のように鉄イオンのキレート剤を添加する工程を含むことから、作業性及び経済性に優れた水洗排水の処理方法である。
更に、キレート剤を添加することにより、後述する逆浸透膜装置による処理を行なって得られる濃縮液を化成処理浴に戻しても、鉄イオンがキレート剤によって化成処理剤中に保持されるために、スラッジの発生が抑制される。これによって、良好な化成性が維持され、化成処理を効率的に行なうことができる。上記キレート剤は、例えば、図1において、キレート剤添加槽7で添加することができる。
上記キレート剤としては、鉄イオンをキレート結合により捕捉して水洗排水中に安定に保持することができるものであれば特に限定されないが、逆浸透膜の処理により得られる濃縮液を再度化成処理に使用するため、化成阻害性の低いものが好ましい。上記キレート剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、EDTA、コハク酸、タンニン酸及びリンゴ酸並びにそれらの塩及びチオ誘導体等を挙げることができる。上記チオ誘導体としては特に限定されず、例えば、メルカプトコハク酸、ジメチルカプトコハク酸等を挙げることができる。
上記キレート剤の添加方法としては特に限定されないが、例えば、それぞれのキレート剤を含有する水溶液を調製し、適宜添加する方法が好ましい。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法において、上記キレート剤を添加した水洗排水は、逆浸透膜で処理され透過液と濃縮液とに分離される。上記濃縮液は、化成処理浴に添加して、化成処理液として回収、再利用することができる。また、上記透過液は、排水として系外に排出するものであっても、水洗槽に戻すことによって再利用するものであってもよい。例えば、図1において、上記逆浸透膜による処理は逆浸透膜装置6で行なうことができる。この逆浸透膜装置6で水洗排水は逆浸透処理され、濃縮液は濃縮液取り出し管8を通って化成処理槽1に送液することができる。また、上記透過液は、透過液取り出し管9を通って最終水洗槽3に送液してもよく、また、廃棄管10を通って系外に排出してもよい。
上記逆浸透膜は、圧力1.47MPa、塩化ナトリウム1500ppm水溶液、pH6.5の条件下で塩化ナトリウム阻止率が50%以上あるものである。50%未満であると重金属が透過側に抜ける。上限は設けるとすれば、99.5%以下とし、それを超えると硝酸イオン、ナトリウムイオンが透過液側に抜けにくくなる。上記逆浸透膜としては特に限定されず、例えば、LF10膜モジュール(日東電工社製)等の市販の製品を挙げることができる。また、逆浸透膜装置としては特に限定されず、メンブランマスターRUW−5A(日東電工社製)等を挙げることができる。
上記逆浸透処理における水洗排水の処理温度としては特に限定されないが、膜保護の観点から、5〜40℃が好ましい。上記逆浸透処理における濃縮液循環流量は、4〜8L/minが好ましく、透過液流量は、0.2〜1.2L/minが好ましい。上記濃縮液循環流量及び透過液流量が上記範囲外であると、所定の膜性能が発揮できないおそれがある。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、上述のように、化成処理工程、水洗工程、pH調整工程、キレート剤添加工程及び逆浸透処理工程を連続して行ない、化成処理浴に化成処理液を、最終水洗槽に新鮮な水洗水をそれぞれ供給していく方法であることから、各工程における水洗排水及び化成処理液に含まれる亜鉛イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン等の金属イオンやリン酸イオン、硝酸イオン、フッ素、ケイフッ素、ホウフッ酸、及び、鉄イオンの濃度は平衡状態に達するものである。
上記キレート剤の添加量は、上述のように化成処理浴が平衡に達した状態で、化成処理浴における濃度が200ppm以下となるような範囲であることが好ましい。上記濃度が200ppmを超えると、化成性に悪影響を及ぼすおそれがあるため好ましくない。また、上記キレート剤の添加量は、上述のように水洗排水が平衡に達した状態で、逆浸透膜で処理する直前の水洗排水における濃度が20ppm以上となることが好ましい。上記濃度が20ppm未満であると、キレート効果が不充分となるおそれがある。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、更に、水洗排水をろ過装置でろ過する工程を含むものであってもよい。上記ろ過装置としては特に限定されず、例えば、メンブランフィルター、活性炭吸着装置、UFフィルター等を挙げることができる。これらのろ過装置を用いて水洗排水をろ過することにより、水洗排水に含まれる粒子成分を除去することができ、更に逆浸透膜に対する負荷を低減することができるため好ましい。上記ろ過装置を用いて水洗排水をろ過する工程は、例えば、図1においてpH調整槽4で水洗排水のpHを調整した後で行なうことができる。
上記メンブランフィルターとしては特に限定されず、例えば、フィルター材が目詰まりを起こしてろ過能力が低下した場合に、能力回復のための逆洗を空気のみで行なう空気逆洗方式のものを挙げることができる。上記空気逆洗方式のメンブランフィルターとしては特に限定されないが、例えば、中空糸を使用したものが好ましく、具体的には市販のFEX400(三菱レイヨン社製)等を挙げることができる。なお、メンブランフィルターが目詰まりによりろ過能力が低下した場合は、空気を供給し逆洗を実施する。この時生ずる逆洗排水は、廃棄する。
上記活性炭吸着装置としては特に限定されないが、通常、粒状活性炭を用いた重力式吸着装置等を用いることができる。上記重力式吸着装置としては特に限定されず、例えば、CR−700C(日本電工製)等を挙げることができる。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法における被処理物は、少なくとも一部が鉄系基材からなる金属基材である。ここでいう鉄系基材とは、鉄及び/又はその合金からなるものを意味する。上記鉄系基材としては特に限定されず、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板等を挙げることができる。
本発明の被処理物である金属基材は、上記鉄系基材と、例えば、アルミニウム及び/又はその合金からなるアルミニウム基材、亜鉛及び/又はその合金からなる亜鉛系基材等とからなるものであってもよい。上記アルミニウム系基材としては特に限定されず、例えば、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金等を挙げることができる。上記亜鉛系基材としては特に限定されず、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板等の亜鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板等を挙げることができる。
上記金属基材は、上記化成処理液によって化成処理される前に脱脂処理及び脱脂後水洗処理を行うことが好ましい。
上記脱脂処理は、基材表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常30〜55℃において数分間程度の浸漬処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。
上記金属基材は、上記脱脂処理及び脱脂後水洗処理を行なった後、表面調整を行なってもよい。上記表面調整の方法としては特に限定されず、例えば、サーフファイン5N−8M(日本ペイント社製)等の市販の製品を用いて処理することにより行なうことができる。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法により処理された金属基材は、良好な耐食性、塗装後密着性等を有するため、種々の分野に利用することができる。利用される分野としては特に限定されず、例えば、自動車ボディ、自動車部品、建材、OA用機器、家電製品、一般の金属製品等を挙げることができる。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、リン酸塩処理後の洗浄により生じる水洗排水を逆浸透処理することにより、排水の低減化、化成処理液成分の回収を行なうものである。更に、本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法は、鉄イオンのキレート剤を使用することによって逆浸透膜表面にリン酸鉄化合物が析出沈殿することを抑制するため、逆浸透膜の交換頻度及び酸洗浄頻度を低減することができる。したがって、本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法を用いることによって、経済性及び作業性の点で有利に水洗排水の回収、再利用を行なうことができる。
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
サーフダインSD5350(日本ペイント社製リン酸亜鉛化成処理剤)に鉄イオン50ppmを添加した後、24時間放置し、エアー逆洗方式の中空糸メンブランフィルターFEX−400(三菱レイヨン社製)を用いてろ過したものに対して表1に示したキレート剤を所定量添加し、硝酸を用いてpHを2.8に調整した溶液を試験溶液とした。キレート剤濃度は、TOC−5000(島津製作所製)を用いて全炭素量を測定することにより決定した。
化成液の化成性
得られた試験溶液を用いて液温35℃、接触120秒にて遊離酸0.5ポイント、トーナー値3ポイントに調整し、SPC鋼板(日本テストパネル社製)を化成処理し、化成性を評価した。評価基準は以下の通りである。
OK:化成皮膜の皮膜量が2g/m以上であり、かつ、皮膜外観にスケなし。
△:化成皮膜の皮膜量が2g/m未満であり、かつ、皮膜外観にスケなし。
NG:化成皮膜の皮膜量が2g/m未満であり、かつ、皮膜外観にスケあり。
結果を表1に示す。
逆浸透膜の詰まり
得られた試験溶液を市販の逆浸透装置であるメンブランマスターRUW−5A(日東電工社製)を使用して濃縮した。取り付けた逆浸透膜はLF10膜モジュール(日東電工社製)である。処理条件は、処理温度25〜30℃、圧力1.0〜1.1MPa、濃縮液循環流量6.2〜6.3L/min、透過液流量0.3〜0.6L/minであった。濃縮(濃縮液50L、ろ過液450L)した後の膜表面に析出した鉄量を蛍光X線分析装置(XRF−1700、島津製作所製)で測定し、目詰まりを評価した。評価は、処理開始時の逆浸透膜に加わる圧力に対して、処理終了時の逆浸透膜に加わる圧力の増加分を測定して行なった。
OK:増加分は開始時の圧力の10%以下である。
△:増加分は開始時の圧力の30%以下である。
NG:増加分は開始時の圧力の30%より大である。
結果を表1に示す。
比較例1
キレート剤を使用しなかったこと以外は、実施例と同様にして化成性及び逆浸透膜の目詰まりを評価した。
Figure 2005111413
実施例2
メンブランフィルターとしてエアー逆洗方式の中空糸メンブランフィルターFEX−400(三菱レイヨン社製)、逆浸透膜装置としてLF10膜モジュール(日東電工社製)を取り付けたメンブランマスターRUW−5A(日東電工社製)を使用し、図1と同様の装置を用いてSPC鋼板(日本テストパネル社製)の化成処理を行なった。使用した化成処理液は、サーフダインSD5350(日本ペイント社製)である。化成処理条件及び逆浸透処理条件は実施例1と同様に行い、最終水洗槽に新鮮な水洗水を供給した。逆浸透膜装置6で処理する直前の水洗排水に硝酸を添加してpHを2.8に調整し、キレート剤としてクエン酸を20ppm添加した。240時間連続処理を行ったが、逆浸透膜の目詰まりはみられなかった。この時、逆浸透膜処理直前の水洗排水に含まれる鉄濃度を蛍光X線分析装置(XRF−1700、島津製作所製)を用いて測定すると2ppmであった。
比較例2
キレート剤を配合しなかったこと以外は実施例2と同様にして処理を行なった。240時間連続処理を行なった時点で、逆浸透膜の目詰まりが生じた。この時、逆浸透膜処理直前の水洗排水に含まれる鉄濃度は0.1ppmであった。
表1より、本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法を用いることによって、良好な化成性を維持しつつ、逆浸透膜の目詰まりを抑制できることがわかった。また、実施例2においては、逆浸透膜で処理する直前の水洗排水に含まれる鉄濃度が2ppmに達しても逆浸透膜の目詰まりが起こらないのに対し、比較例2においては0.1ppmであっても目詰まりが生じており、効率的に化成処理液成分の回収を行なうことができない。
本発明により、効率的に、かつ、経済的にリン酸塩化成処理により生じる水洗排水に含まれる化成処理液成分の回収及び排水の低減化を行なうことができる。
本発明のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法で使用する装置を表わす模式図の一例
符号の説明
1 化成処理槽
2 第1水洗槽
3 最終水洗槽
4 pH調整槽
5 メンブランフィルター又は活性炭吸着装置
6 逆浸透膜装置
7 キレート剤添加槽
8 濃縮液取り出し管
9 透過液取り出し管
10 廃棄管

Claims (6)

  1. リン酸塩化成処理液を用いて少なくとも一部が鉄系基材からなる金属基材を化成処理する際に発生する水洗排水中の化成処理液成分を回収するためのリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法であって、
    化成処理後の水洗工程から排出される水洗排水をリン酸、硝酸、フッ酸、ケイフッ酸、及び、ホウフッ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸でpH調整する工程、前記pH調整する工程により得られたpH調整した水洗排水にキレート剤を添加する工程、前記pH調整した水洗排水を逆浸透膜で処理する工程、及び、前記逆浸透膜で処理する工程により得られた濃縮液を化成処理浴に添加する工程からなる
    ことを特徴とするリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法。
  2. キレート剤は、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、EDTA、コハク酸、タンニン酸及びリンゴ酸並びにそれらの塩及びチオ誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法。
  3. キレート剤は、リン酸塩化成処理浴中の含有量が200ppm以下である請求項1又は2記載のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法。
  4. キレート剤は、逆浸透膜で処理する直前の水洗排水中の含有量が20ppm以上である請求項1、2又は3記載のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法。
  5. 更に、pH調整する工程の後で、空気逆洗方式のメンブランフィルターでろ過する工程を含む請求項1、2、3又は4記載のリン酸塩化成処理水洗排水の回収方法。
  6. 更に、pH調整する工程の後で、活性炭吸着装置でろ過する工程を含む請求項1、2、3又は4記載のリン酸塩化成処理水洗水の回収方法。
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