JP5135749B2 - リン酸含有水からリン酸を回収する方法および装置 - Google Patents

リン酸含有水からリン酸を回収する方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は、リン酸含有水からリン酸を回収する方法および装置に関し、特に液晶基板やウエハーその他の電子機器をエッチングした後のリン酸を含有する洗浄排水からリン酸などの有価物と処理水である純水の回収に適したリン酸を回収する方法および装置に関するものである。
液晶基板やウエハーその他の電子機器のエッチングには、リン酸を含むエッチング液が用いられている。エッチング工程で発生する高濃度の廃エッチング液は回収して再生利用されているが、エッチング後の電子機器は純水により洗浄され、低濃度の洗浄排水が大量に生成する。このような洗浄排水はエッチング液の成分であるリン酸、硝酸、酢酸、その他の酸成分等のほか、エッチングによって溶出した金属イオンその他の不純物が含まれているが、大部分は純水である。
このようなエッチング洗浄排水は、従来は他の排水と混合して処理されている。一般的なリン酸やフッ酸を含む排水の処理技術としては、凝集沈殿処理が挙げられる。しかしリン酸やフッ酸凝集沈澱処理を行う場合、多量の薬剤使用と多量の汚泥発生による処理コストの上昇、環境への負荷の増大などが問題となる。加えて、凝集沈殿処理で多量に添加する薬剤による水溶性イオンの増加が、水回収するに当たり、逆浸透膜プロセスの操作圧力上昇による動コストの増大、処理水質の悪化、スケールの発生、また、イオン交換法では再生剤使用量の増加につながっている。
特許文献1(特開2006−75820号)には、イオン交換樹脂でリン酸、硝酸などのイオンを除去し、純水およびリン酸塩の回収が行われている。しかし、この方法ではリン酸塩(リン酸二水素ナトリウムなど)として回収しているが、リン酸塩の販路が殆どなく、リン酸のナトリウム塩は溶解度が小さいため、液状ではリン酸の含有率が低く、運搬は困難であり、カリウム塩とするには苛性カリが高価である。またリン酸二水素ナトリウムにするためにH形カチオン樹脂に通液する方法が示されているが、カチオン樹脂の再生で塩酸などの酸が消費され、アニオン樹脂の再生で使用した水酸化ナトリウムも無駄に排出されるなどの欠点があった。
特開2006−75820号
本発明の課題は、簡単な構成と操作により、高濃度の液状で運搬可能であり、回収物として有用な高純度のリン酸を、リン酸含有水から低コストで、かつ効率よく回収できるリン酸を回収する方法および装置を提案することである。
本発明は、次のリン酸イオン含有水からリン酸を回収する方法および装置である。
(1) カチオンを除去したリン酸含有水からリン酸を回収する方法であって、
カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透装置に供給して逆浸透処理を行い、リン酸以外の酸を水とともに透過液室側に透過させて、リン酸を濃縮液室側に濃縮し、リン酸濃縮液を回収することを特徴とするリン酸の回収方法。
(2) カチオンを除去したリン酸含有水を逆浸透膜装置に供給する前に、前処理としてカチオンを含む不純物の除去を行う上記(1)記載の方法。
(3) 逆浸透膜装置の透過水からリン酸以外の酸を除去して純水を回収する上記(1)または(2)記載の方法。
(4) リン酸濃縮液からアニオン交換によりリン酸以外の酸を除去して精製する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5) リン酸濃縮液を蒸発濃縮して、水とともに揮発性成分を除去して濃縮する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法。
(6) カチオンを除去したリン酸含有水からリン酸を回収する装置であって、
カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で膜分離処理して、リン酸以外の酸を水とともに透過液室側に透過させ、リン酸を濃縮液室側に濃縮する逆浸透装置と、
カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透膜装置の濃縮液室側に供給する原水供給部と、
逆浸透装置の透過液室側から透過液を取出す透過液取出部と、
逆浸透装置の濃縮液室側から濃縮リン酸液を取出す濃縮リン酸液取出部と
を有することを特徴とするリン酸回収装置。
(7) カチオンを含む不純物の除去を行う前処理装置を原水供給部に有する上記(6)記載の装置。
(8) 逆浸透膜装置の透過水からリン酸以外の酸を含む不純物を除去する不純物除去装置を有する上記(6)または(7)記載の装置。
(9) リン酸濃縮液からアニオン交換によりリン酸以外の酸を除去する精製装置を有する上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の装置。
(10) リン酸濃縮液を蒸発濃縮して、水とともに揮発性成分を除去して濃縮する蒸発濃縮装置を有する上記(6)ないし(9)のいずれかに記載の装置。
本発明において、処理の対象となるカチオンを除去したリン酸含有水は、リン酸を含有する水であれば制限なく対象とすることができるが、リン酸イオン50〜10000mg/L、特に50〜2000mg/L含有し、pHは3以下、特に2.8以下であって、いずれの場合も1以上、特に1.8以上である酸性水が処理対象として好ましく、リン酸イオンのほかに、硝酸イオン、酢酸イオン等の酸成分、その他のアニオン、ならびにその他の不純物が含まれていてもよいが、金属イオン等のカチオンを除去したリン酸含有水を処理の対象とする
特に処理対象として好ましいリン酸含有水は、液晶基板やウエハーその他の電子機器のリン酸含有エッチング液によるエッチング後に、純水洗浄を行う際に発生する低濃度の洗浄排水がある。このようなエッチング後の洗浄排水の例としては、リン酸イオン50〜2000mg/L、硝酸イオン10〜500mg/L、酢酸イオン5〜300mg/Lを含有し、pH1.8〜2.8の酸性水がある。
本発明では、カチオンを除去したリン酸含有水からリン酸を回収するために、カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透膜装置に供給して膜分離処理を行うが、カチオンを除去したリン酸含有水を逆浸透膜装置に供給する前に、前処理としてカチオンを含む不純物の除去を行うのが好ましい。この場合、沈殿分離、濾過等による固形物の除去、ならびにカチオン交換樹脂による金属イオン等のカチオンの除去などを行うことができる。このような前処理工程に用いる前処理装置としては、上記目的に採用されている一般的な装置が用いられる。
エッチング後の洗浄排水に含まれるインジウム、鉄、アルミニウム等の金属イオンは膜分離工程における逆浸透(RO)膜の目詰まりの原因となるので、これらの金属イオンを含むカチオンを除去することにより、膜の目詰まりが防止できるので好ましい。カチオン交換樹脂としては、強酸性または弱酸性カチオン交換樹脂を用いることができるが、H形の強酸性カチオン交換樹脂を用いてこれらのカチオンを交換除去すると、処理液は酸成分が増加してpH3以下に調整することが容易になるので好ましい。カチオン交換樹脂としてはキレート樹脂でもよい。
本発明で膜分離工程における逆浸透装置は、RO装置とも呼ばれ、逆浸透(RO)膜により透過液室と濃縮液室とに区画され、リン酸含有水を濃縮液室側に供給して逆浸透膜処理を行い、リン酸以外の酸を水とともに透過液室側に透過させるとともに、リン酸を濃縮液室側に濃縮させるように構成される。逆浸透膜装置の透過液室側には、透過液を取出す透過液取出部が形成され、逆浸透膜装置の濃縮液室側には、濃縮リン酸液を取出す濃縮リン酸液取出部が形成される。逆浸透膜は、浸透圧により水を透過させ、あるいは逆に浸透圧よりも高圧に加圧して被処理液を供給して逆浸透により水を透過させ、一方塩分、その他の溶質を透過させないで阻止する半透膜である。
逆浸透膜の材質としては、上記の特性を有する限り特に制限されず、例えばポリアミド系透過膜、ポリイミド系透過膜、セルロース系透過膜などが挙げられる。逆浸透装置はこのような逆浸透膜を備えるものであればよいが、逆浸透膜と支持機構、集水機構等が一体化した膜モジュールを備えるものが好ましい。膜モジュールとしては特に制限はなく、例えば管状膜モジュール、平面膜モジュール、スパイラル膜モジュール、中空糸膜モジュールなどを挙げることができる。これらを備える逆浸透装置としては公知のものが使用できる。
本発明では膜分離工程において、カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透膜装置に供給して膜分離処理を行う。リン酸含有水がpH3以下の状態で得られる場合には、そのままpH調整することなく逆浸透膜装置に供給することができるが、必要により塩酸、硝酸等のpH調整剤の添加によりpH調整してもよい。前処理においてカチオン交換樹脂により金属イオン等のカチオンの除去を行うことによりpH3以下に調整される場合も同様である。液晶基板やウエハー等のエッチング後の洗浄排水は、通常pH3以下の状態で得られるので、pH調整することなく逆浸透膜装置に供給することができ、pH調整する場合でもpH調整剤の添加量は少なくなる。
カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透装置に供給して膜分離処理を行うと、硝酸、酢酸等のリン酸以外の酸は、水とともに逆浸透膜を透過して透過液室側に移行し、透過液室側から取出される。リン酸は逆浸透膜の透過を阻止され、濃縮液室側に残留して濃縮されるので、濃縮液室側からリン酸濃縮液として回収することができる。濃縮液室側の濃縮液は一過式に通過させてもよく、また循環させて濃縮率を上げてもよい。逆浸透装置に供給するリン酸含有水の圧力は0.3〜3MPa、好ましくは0.5〜1.5MPaとすることができる。
逆浸透膜の透過においてイオン性物質と非イオン性物質の透過を比較すると、逆浸透膜阻止率は、同じ程度の分子量であっても、非イオン性物質に比べてイオン性物質の方が圧倒的に阻止されやすいと言われている。しかし本発明者等が研究を重ねた結果、このような常識とは異なり、リン酸が解離しにくいpH3以下の条件下で逆浸透膜処理すると、リン酸の阻止率は硝酸や酢酸よりも圧倒的に高くなり、硝酸や酢酸等のリン酸以外の酸とリン酸とを分別して回収できることが分かった。低pH下でリン酸が逆浸透膜に強く阻止される理由は、リン酸が重リン酸の形態となって分子量が大きくなり、阻止率がアップしたためであると推測されるが、詳細は不明である。
透過液室側から取出される逆浸透膜装置の透過水は、硝酸や酢酸等の酸を含んでいるので、逆浸透膜装置の透過水からこれらの酸を除去することにより、純水を回収することができる。この場合、透過水をアニオン交換樹脂層に通水することにより、これら酸、その他のアニオンを除去し、またカチオン交換樹脂層およびアニオン交換樹脂層、またはこれらの混床に通水することにより、酢酸や硝酸等のリン酸以外の酸、その他のアニオン、ならびに残留するカチオンを除去し、純水を回収することができる。ここで用いるアニオン交換樹脂としては、OH形強塩基性あるいは弱塩基性アニオン交換樹脂が好ましく、またカチオン交換樹脂としては、H形強酸性カチオン交換樹脂が好ましい。なお、逆浸透膜装置の透過水中には、逆浸透膜を透過したリン酸がわずかに存在するが、この透過水中に含まれるリン酸も、アニオン交換樹脂層に通水することで除去することができる。
一方、濃縮液室側から取出されるリン酸濃縮液は、硝酸や酢酸等のリン酸以外の酸の大部分は除去されているが、さらにこれらを除去して回収リン酸液の純度、濃度を高めるために後処理による精製を行うことができる。後処理による精製として、リン酸濃縮液からアニオン交換によりリン酸以外の酸を除去して精製することができる。この場合、精製装置としてアニオン交換装置を設けて、濃縮液をアニオン交換樹脂層に通水し、濃縮液から硝酸などの強酸イオンを除去し、硝酸などの強酸イオンを殆ど含まない高濃度のリン酸を回収することができる。逆浸透装置が濃縮液を循環して濃縮を行う場合、精製装置は逆浸透装置の濃縮液循環ラインに設けることができる。アニオン交換樹脂は、OH形またはPO形の強塩基性アニオン交換樹脂が好ましい。
リン酸濃縮液中に酢酸が残留している場合、酢酸はアニオン交換樹脂によっても完全に除去できないので、酢酸等の揮発性成分を除去して回収リン酸液の純度、濃度を高めるためには、リン酸濃縮液を蒸発濃縮装置で蒸発濃縮して、水とともに揮発性成分を除去して濃縮し、酢酸などの揮発性成分を殆ど含まない高濃度のリン酸を回収することができる。蒸発濃縮装置としては、ロータリエバポレータ等の公知の装置が使用できる。
上記により回収されるリン酸は、回収物として有用であり、かつ高濃度の液状で運搬可能であり、しかも高純度の濃縮リン酸として回収できる。この場合、pH3以下の条件下で逆浸透処理するが、原水としてのカチオンを除去したリン酸含有水は通常pH3以下の酸性の状態で得られ、またpHが高い場合でも前処理としてのカチオン交換によりpH3以下の状態になるので、pH3以下の条件で処理するには、そのまま供給すればよい。pHが高い原水をpH調整する場合でも、カチオンを除去したリン酸含有水はpH3に近い状態で得られるので、塩酸等のpH調整剤を注入することにより容易に調整することができる。また回収のための方法および装置は、簡単な構成と操作により、pH3以下の条件下で逆浸透処理することにより、リン酸濃縮液として回収することが可能である。これにより再生剤の使用量、廃棄物の生成量を少なくし、処理コストを低くして、高純度の濃縮リン酸および純水を回収することができる。
以上の通り本発明によれば、カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透装置に供給して逆浸透処理を行い、リン酸以外の酸を水とともに透過液室側に透過させて、リン酸を濃縮液室側に濃縮し、リン酸濃縮液を回収するようにしたので、簡単な構成と操作により、高濃度の液状で運搬可能であり、回収物として有用な高純度のリン酸を、リン酸含有水から低コストで、かつ効率よく回収することができる。
本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は実施形態におけるリン酸回収装置のフロー図である。1は原水槽で、原水1aを貯留する。2はカチオン交換塔で、カチオン交換樹脂層2aを有する。3は脱カチオン水槽で、脱カチオン水3aを貯留する。4は逆浸透装置で、逆浸透膜4aにより、透過液室4bと濃縮液室4cに区画されている。5はアニオン交換塔で、アニオン交換樹脂層5aを有する。6は回収水槽で、回収水6aを貯留する。7は第2アニオン交換塔で、アニオン交換樹脂層7aを有する。8は蒸発濃縮装置で、蒸留により揮発性成分を水とともに蒸発させて分離し、リン酸液を濃縮する。9は回収リン酸槽で、回収リン酸液9aを貯留する。
図1において、Pは加圧ポンプであり、原水槽1、カチオン交換塔2および脱カチオン水槽3とともに原水供給部を構成し、このうちカチオン交換塔2が前処理装置を構成する。アニオン交換塔5および回収水槽6は透過液取出部を構成し、このうちアニオン交換塔5は不純物除去装置を構成する。また第2アニオン交換塔7、蒸発濃縮装置8および回収リン酸槽9は濃縮リン酸液取出部を構成し、このうち第2アニオン交換塔7および蒸発濃縮装置8は精製装置を構成する。
上記のリン酸回収装置では、前処理工程として沈殿分離、濾過等による不純物の除去を行った原水1a(リン酸イオン含有水)をラインL1から原水槽1に導入する。原水槽1の原水1aはラインL2からカチオン交換塔2に導入して通水し、カチオン交換樹脂層2aでカチオン交換して、原水に含まれるインジウム、その他の金属イオン等のカチオンを交換吸着して除去する。カチオン交換樹脂層2aにはH形の強酸性カチオン交換樹脂を用いるのが好ましい。カチオン交換樹脂層2aが飽和したときは、ラインL3から塩酸等の酸を含む再生剤を通液して再生し、溶離したカチオンをラインL4から回収する。
カチオン交換塔2の処理水である脱カチオン水3aをラインL5から脱カチオン水槽3に導入して貯留する。原水としてのリン酸含有水は通常pH3以下の酸性の状態で得られ、またpHが高い場合でも前処理としてのカチオン交換により酸が生成してpH3以下の状態になるので、pH3以下の条件で逆浸透処理するには、そのまま逆浸透装置4に供給すればよい。pHが高い原水をpH調整する場合は、リン酸含有水はpH3に近い状態で得られるので、ラインL5または脱カチオン水槽3に塩酸等のpH調整剤を注入することにより容易に調整することができる。
脱カチオン水槽3の脱カチオン水は加圧ポンプPで加圧してラインL6から逆浸透装置4の濃縮液室4cに導入し、逆浸透膜4aにより逆浸透処理を行って、硝酸、酢酸等のリン酸以外の酸を水とともに透過液室4b側に透過させて、リン酸を濃縮液室4c側に濃縮する。リン酸含有水を中和して中性の状態で逆浸透処理すると、硝酸、酢酸等のリン酸以外の酸の塩と、リン酸の塩のいずれも逆浸透膜4aを透過せず、濃縮液室4c側に濃縮される。これに対してカチオンを除去したリン酸含有水を中和することなく、pH3以下の条件下で逆浸透装置4に導入して逆浸透処理を行うと、リン酸は逆浸透膜4aにより透過を阻止されて濃縮液室4c側に濃縮されるが、硝酸、酢酸等のリン酸以外の酸は水とともに透過液室4b側に透過して分離される。逆浸透装置4に導入するリン酸含有水は脱カチオンされているため、逆浸透膜4aの目詰まりがなく、逆浸透処理の効率は高く維持される。
逆浸透装置4の透過液室4bに透過した透過液はラインL7からアニオン交換塔5へ導入し、アニオン交換樹脂層5aに通水してアニオン交換する。これにより透過液に含まれる硝酸、酢酸等のリン酸イオン以外のアニオンを交換吸着により除去して精製を行い、処理水はラインL8から回収水槽6へ取り出し、回収水6aとして貯留する。アニオン交換塔5はOH形の強塩基性アニオン交換樹脂を充填したアニオン交換樹脂層5aを用いるが、H形カチオン交換樹脂との複層または混床式を採用し、アニオン以外の不純物を除去してもよい。アニオン交換樹脂層5aがリン酸イオン以外のアニオンで飽和したときは、ラインL9から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の2〜10重量%のアルカリ水溶液のようなアルカリを含む再生剤を通液して再生し、溶離した塩をラインL10から排出する。カチオン交換樹脂を用いる場合は、酸を含む再生剤を通液して再生する。
逆浸透装置4の濃縮液室4cで濃縮された濃縮液はラインL11から第2アニオン交換塔7へ導入して通水し、アニオン交換樹脂層7aでアニオン交換して、濃縮液に残留する硝酸、酢酸等のリン酸イオン以外のアニオンを交換吸着して除去し、精製を行う。この場合、アニオン交換樹脂層7aはOH形またはPO形の強塩基性アニオン交換樹脂を用いる。硝酸等のリン酸イオン以外のアニオンのアニオン交換樹脂に対する選択性は低pH域でリン酸イオンよりも高いので、リン酸イオンとの分離は容易である。アニオン交換樹脂層7aがリン酸イオン以外のアニオンで飽和したときは、ラインL12からアルカリを含む再生剤を通液して再生し、溶離した塩をラインL13から排出する。
第2アニオン交換塔7でリン酸イオン以外のアニオンを除去したリン酸溶液が酢酸等の揮発性成分をなお含む場合は、ラインL14から蒸発濃縮装置8に導入して蒸留し、水とともに揮発性成分を蒸発させて分離し、ラインL15から排出する。蒸発濃縮装置8で揮発性成分を除去し濃縮したリン酸濃縮液は、ラインL16から回収リン酸槽9に導入し、回収リン酸液9aとして貯留する。蒸発濃縮装置8としてはロータリエバポレータ等の公知の蒸発濃縮装置を用いることができる。逆浸透装置4の濃縮液室4cの濃縮液はラインL17またはL18から脱カチオン水槽3へ循環し、濃縮率を高めることができる。
上記の方法で回収されるリン酸液9aは、回収物として有用であり、かつ高濃度の液状で回収されるため実用上運搬可能であり、しかも高純度の濃縮リン酸として回収できる。この場合、pH3以下の条件下で逆浸透処理するが、原水としてのリン酸含有水は通常pH3以下の酸性の状態で得られ、またpHが高い場合でも前処理としてのカチオン交換によりpH3以下の状態になるので、pH3以下の条件で処理するには、そのまま供給すればよく、特にpH調整する必要がない。酸、アルカリ等の薬剤はカチオン交換塔2におけるカチオン用の再生剤、ならびにアニオン交換塔5および第2アニオン交換塔7におけるアニオン用の再生剤に限られ、リン酸回収用としては必要でない。また回収のための方法および装置は、簡単な構成と操作により、pH3以下の条件下で逆浸透処理することにより、リン酸濃縮液として回収することが可能である。これにより再生剤の使用量、廃棄物の生成量を少なくし、処理コストを低くして、高純度の濃縮リン酸および純水を回収することができる。
以上の通り、カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透装置4に供給して逆浸透膜4aにより逆浸透処理を行い、リン酸以外の酸を水とともに透過液室4b側に透過させて、リン酸を濃縮液室4c側に濃縮し、純水およびリン酸濃縮液を回収することにより、簡単な構成と操作により、高濃度の液状で運搬可能であり、回収物として有用な高純度のリン酸および純水を、リン酸含有水から低コストで、かつ効率よく回収することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。各例において、%は重量%を示す。
〔実施例1、比較例1〕:
<逆浸透処理>:
リン酸550mg/L、硝酸50mg/L、酢酸50mg/Lを含む伝導率122mS/m、pH2.4の原水を、日東電工(株)製の逆浸透膜ES−20に0.7MPaで通液して逆浸透処理し、6倍濃縮の濃縮液(ブライン)を得た(実施例1)。一方、原水に水酸化ナトリウム水溶液を注入してpH6に調整し、同様に試験した(比較例1)。リン酸、硝酸、酢酸の阻止率の結果を表1に示すが、実施例1ではリン酸は除去され、硝酸、酢酸は透過して分離されるのに対し、比較例1ではすべてが除去され、分離されないことが分かる。
Figure 0005135749
〔実施例2〕:
<リン酸および純水の回収>:
リン酸550mg/L、硝酸50mg/L、酢酸50mg/L、インジウム0.3mg/L、ナトリウム1mg/Lを含む伝導率122mS/m、pH2.4の液晶基板のエッチング後の洗浄排水を図1の装置で処理し、リン酸および純水を回収した。カチオン交換塔2はH形強酸性カチオン交換樹脂(三菱化学(株)製、DiaionSK1B)を10L充填し、塩酸で再生した。アニオン交換塔5はOH形強塩基性アニオン交換樹脂(三菱化学(株)製、Diaion SA11A)をそれぞれ10L充填し、水酸化ナトリウムで再生した。アニオン交換塔7はPO形強塩基性アニオン交換樹脂(三菱化学(株)製、Diaion SA11A)を10L充填し、水酸化ナトリウムでOH形に再生後、リン酸濃縮液でPO形にした。逆浸透装置4として日東電工(株)製の逆浸透膜ES−20のスパイラル膜モジュールを有する装置に0.7MPaで通液して逆浸透処理し、6倍濃縮した。蒸発濃縮装置8としてはロータリエバポレータを用いて、リン酸濃度75%に濃縮した。各工程における各成分の濃度を表2に示す。
Figure 0005135749
本発明は、リン酸含有水からリン酸および純水を回収する方法および装置、特に液晶基板やウエハーその他の電子機器をエッチングした後の洗浄排水からリン酸などの有価物と、処理水である純水の回収に適したリン酸を回収する方法および装置に利用可能である。
実施形態におけるリン酸回収装置のフロー図である。
符号の説明
1 原水槽
1a 原水
2 カチオン交換塔
2a カチオン交換樹脂層
3 脱カチオン水槽
3a 脱カチオン水
4 逆浸透装置
4a 逆浸透膜
4b 透過液室
4c 濃縮液室
5 アニオン交換塔
5a、7a アニオン交換樹脂層
6 回収水槽
6a 回収水
7 第2アニオン交換塔
8 蒸発濃縮装置
9 回収リン酸槽
9a 回収リン酸液

Claims (10)

  1. カチオンを除去したリン酸含有水からリン酸を回収する方法であって、
    カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透装置に供給して逆浸透処理を行い、リン酸以外の酸を水とともに透過液室側に透過させて、リン酸を濃縮液室側に濃縮し、リン酸濃縮液を回収することを特徴とするリン酸の回収方法。
  2. カチオンを除去したリン酸含有水を逆浸透膜装置に供給する前に、前処理としてカチオンを含む不純物の除去を行う請求項1記載の方法。
  3. 逆浸透膜装置の透過水からリン酸以外の酸を除去して純水を回収する請求項1または2記載の方法。
  4. リン酸濃縮液からアニオン交換によりリン酸以外の酸を除去して精製する請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. リン酸濃縮液を蒸発濃縮して、水とともに揮発性成分を除去して濃縮する請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  6. カチオンを除去したリン酸含有水からリン酸を回収する装置であって、
    カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で膜分離処理して、リン酸以外の酸を水とともに透過液室側に透過させ、リン酸を濃縮液室側に濃縮する逆浸透装置と、
    カチオンを除去したリン酸含有水をpH3以下の条件下で逆浸透膜装置の濃縮液室側に供給する原水供給部と、
    逆浸透装置の透過液室側から透過液を取出す透過液取出部と、
    逆浸透装置の濃縮液室側から濃縮リン酸液を取出す濃縮リン酸液取出部と
    を有することを特徴とするリン酸回収装置。
  7. カチオンを含む不純物の除去を行う前処理装置を原水供給部に有する請求項6記載の装置。
  8. 逆浸透膜装置の透過水からリン酸以外の酸を含む不純物を除去する不純物除去装置を有する請求項6または7記載の装置。
  9. リン酸濃縮液からアニオン交換によりリン酸以外の酸を除去する精製装置を有する請求項6ないし8のいずれかに記載の装置。
  10. リン酸濃縮液を蒸発濃縮して、水とともに揮発性成分を除去して濃縮する蒸発濃縮装置を有する請求項6ないし9のいずれかに記載の装置。
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