JP3937957B2 - 電解リン酸塩化成処理浴から有効成分を回収する方法 - Google Patents

電解リン酸塩化成処理浴から有効成分を回収する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属の表面処理、特にリン酸塩化成被膜を利用する金属の表面処理に関し、更に詳しくは皮膜を形成する処理浴(水溶液)の有効成分を効率よく回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属の表面処理の1つとして、無電解リン酸塩化成処理が広く利用されている。無電解リン酸塩化成処理浴は、(i)リン酸イオンおよびリン酸、(ii)リン酸塩結晶を形成し皮膜となる金属イオン(亜鉛、マンガン、鉄等)、(iii)溶液中の陽イオンが還元され金属として皮膜を構成する金属イオン(ニッケル、銅等)、(iv)上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオン(硝酸イオン等)、(v)且つ皮膜成分とならない金属イオン(ナトリウム等)を含む。
【0003】
このような化学成分イオンは、無電解リン酸塩化成処理反応を行うには、有用な成分であるが、環境に対して影響を与えうる成分を含むために、これらのイオンを含む排水は、排水処理(除去処理)され環境に排出されるのが通常である。この除去には排水処理設備が必要であり、それを稼動させるための費用も必要である。近年環境汚染防止の要求は高くなり、環境への排出規制の項目は、従来の重金属イオン(陽イオン)のみでなく、リン(リン酸)および窒素(硝酸イオン)に対しても求められるようになった。なぜなら、リン、窒素が環境に排出されると、河川、及び海域の富栄養化を促進することになり、それを抑えることが要請される状況になっているからである。このリン、窒素の除去は新たな排水処理設備を必要とするものである。
【0004】
ところで、このような無電解リン酸塩化成処理においては、(i)処理浴のpHを調整してリン酸の解離状態を調整するために、Naイオン等の皮膜形成に関与しない成分イオンが含まれる。さらに、(ii)スラッジ等の固形分が処理浴に生成する。(iii)H2PO4 -、HNO2等の解離度の小さいイオンを含む等の特徴を有する。このため、化成処理槽に続く水洗槽の水溶液(被処理物が随伴した処理浴の化学成分が希釈されている)から皮膜形成に関与する有効成分イオンのみを濃縮して回収し、溶液状態で化成処理槽に返却し再利用することはできなかった。それは、Naイオン等の皮膜成分とならない陽イオンも同時に濃縮されるため、再利用するには陽イオンの中からNaイオン等の皮膜成分とならないイオンを更に除去する必要があるからである。そして、実質的に陽イオンの中からNaイオン等のみを選択的に除去する事は不可能であるからである。
【0005】
本発明者は、先に電解リン酸塩化成処理に関する特許出願を行った(特開2000−234200号)。この発明におけるリン酸塩化成処理浴は、Naイオン等の皮膜形成に関与しない陽イオン(金属イオン)を含まない。したがって、上記の水洗槽水溶液を濃縮してもNaイオン等が濃縮されることはない。
【0006】
さて、本発明では水洗槽水溶液を濃縮する手段として、電気透析技術(装置)を用いる。そして、電気透析は、溶液に電圧、電流を加え、溶解したイオンを電気透析膜を通過させる事で分離し、濃縮及び希釈する方法である。すなわち、電気透析は、溶液及び溶液に溶解したイオンのみを対象とする分離技術である。
【0007】
ところが、リン酸塩化成処理浴は、その成分を反応させて皮膜を形成させるものであり、その反応に伴って、溶液中に溶解した成分イオンは、固体(皮膜、スラッジ)および気体となる。そのため、リン酸塩化成処理浴およびその水洗水を電気透析に適用するには、処理浴中の溶液状態を固体及び気体を含まない状態とし、できれば各種イオンの溶解状態(酸解離状況、移動度等)を一定の状態に制御することが望まれる。
【0008】
しかし、上記の特開2000−234200号の発明においても、処理浴からこれらの固体および気体を確実に除去する方法は説明されておらず、したがってリン酸塩化成処理浴およびその水洗水を電気透析に適用するための情報は、何ら開示されていない。
【0009】
本発明者は、種々の検討を行い、さらに実用化に適した電解リン酸塩化成処理法を見出した(特願2001−49017および2002−20568号)。これらの発明においては、電解リン酸塩化成処理浴を確実に溶液状態に維持しうる方法が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、リン酸塩化成処理浴に関連して、電気透析を利用できる環境を作り、それを利用することにより、電解リン酸塩化成処理浴の有効成分イオンを回収し、その場で再利用しうる手段を提供するものであり、それにより併せてリン酸塩化成処理浴から環境への窒素、リン、及びフッ素等の排出を防止するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様によれば、リン酸塩化成処理浴に導電性を有する金属材料を接触させ、この金属材料被処理物を、前記リン酸塩化成処理浴にて電解処理することにより、前記被処理物表面にリン酸塩化合物を含む皮膜を形成し、ついで化成処理後に被処理物に付着したリン酸塩化成処理液を水溶液に接触して希釈洗浄する際に、
(a)リン酸塩化成処理浴として、リン酸イオンおよびリン酸と、リン酸塩結晶を形成し皮膜となる金属イオンと、溶液中の陽イオンが還元され金属として皮膜を構成する金属イオンと、上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオンである硝酸イオン及び / またはフッ素イオンを含み、且つ皮膜形成に関与しないイオンであるNaイオンを0.5g/L以下(リン酸塩化成処理浴中)としたリン酸塩化成処理浴を用い、(b)化成処理後に被処理物に付着したリン酸塩化成処理液を水溶液に接触させて希釈洗浄した水洗槽の水溶液を電気透析して、前記水溶液中の有効成分を回収し、化成処理浴に戻す、ことを特徴とする電解リン酸塩化成処理浴の有効成分を回収する方法である。
【0012】
すなわち、本発明の課題は、電解リン酸塩化成処理浴を確実に溶液状態に維持しうる上記の発明(特願2001−49017および2002−20568号)を基礎として、実用的なレベルで電気透析を利用して有用成分を回収することにより達成される。
【0013】
この態様においては、まずリン酸塩化成処理浴に導電性を有する金属材料を接触させ、この金属材料被処理物を、前記リン酸塩化成処理浴にて電解処理することにより、前記被処理物表面にリン酸塩化合物を含む皮膜が形成される。ついで、この化成処理後に、リン酸塩化成処理液が付着した被処理物は水洗槽で水溶液と接触させて希釈洗浄される。
【0014】
本発明方法においては、このリン酸塩化成処理浴として、リン酸塩化成処理浴として、リン酸イオンおよびリン酸と、リン酸塩結晶を形成し皮膜となる金属イオンと、溶液中の陽イオンが還元され金属として皮膜を構成する金属イオンと、上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオンを含み、且つ皮膜形成に関与しないイオンを実質的に含有しないリン酸塩化成処理浴を用いることが必要である。リン酸塩化成処理浴中でリン酸およびリン酸イオンと錯体を形成し、リン酸塩化成処理反応を行なってリン酸塩結晶を形成する金属イオンとしては、Zn、Fe、MnまたはCaの1種以上であることが好ましい。また、溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオンとしては、硝酸イオン及び又はフッ素イオンであることが好ましい。
【0015】
また、皮膜形成に関与しないイオンは、すなわち皮膜形成を妨害するイオンを意味するものであり、処理浴にそのような成分を実質的に含有させないことが特に重要である。皮膜形成に関与しない陽イオンは、皮膜となる成分以外の金属イオンをいい、それを実質的に含有しないとは、被膜となる成分以外の金属イオンの含有量がゼロであるか、皮膜形成電解反応及び、水洗槽から有価物を回収する電気透析に実質的に影響を与えない濃度以下、または0.5g/L以下(リン酸塩化成処理浴中)であることをいう。
【0016】
ついで、化成処理後にリン酸塩化成処理液が付着した被処理物は水洗槽で水溶液と接触させて希釈洗浄される。そして、希釈洗浄した水洗槽の水溶液を電気透析して前記水溶液中の有効成分を回収する。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP)(標準水素電極に対する電位で表す)が770mV以上、さらに好適には840mV以上に維持される。
【0018】
さらに、本発明の第3の態様によれば、電気透析の極液としてリン酸水溶液を用いることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の第4の態様によれば、有効成分が、リン酸イオンおよびリン酸と、リン酸塩結晶を形成に皮膜となる金属イオンと、溶液中の陽イオンが還元され金属として皮膜を構成する金属イオンと、上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオンとからなるのが好ましい。
【0020】
そして、好ましくは、皮膜形成に関与する通常のイオンは、硝酸イオンである。
【0021】
さらに、本発明の第6の態様によれば、このような皮膜形成に関与するイオンとしては、金属材料被処理物としてアルミニウムを用いた場合に使用されるフッ素イオンである。
【0022】
そして、本発明の第7の態様によれば、回収された有効成分は、リン酸塩化処理浴に添加され再使用される。
【0023】
さらに、本発明の第8の態様によれば、電気透析は、化成処理後被処理物に付着したリン酸塩化成処理浴成分を希釈洗浄する水洗槽の水溶液を電気透析槽に導入することにより行われるのが好ましい。
【0024】
さらに、本発明の第9の態様によれば、希釈洗浄した水洗槽の水溶液はリン酸塩化成処理浴の10倍以上に水希釈されている。
【0025】
そして、本発明の第10の態様によれば、電気透析設備(槽)は、陰イオン膜および陽イオン膜を交互に組合わせた多室構造を有する。
【0026】
また、本発明の第11の態様によれば、電気透析槽の膜間電圧を溶媒である水が分解する電圧以下で電気透析するのが好ましい。
【0027】
そして、本発明の第12の態様によれば、電気透析槽は、さらに極液を収容する極液槽および該極液槽に隣接して電気透析されるイオンが極液槽に浸透するのを防止する遮断槽を設けるのが好ましい。
【0028】
さらに、本発明の第13の態様によれば、電気透析によりイオン濃縮された濃縮水はリン酸塩化成処理浴にもどされる。
【0029】
本発明の第14の態様によれば、イオン濃縮倍率は10〜1000倍であるのが好ましい。
【0030】
本発明の第15の態様によれば、電気透析によりイオン希釈された希釈水は、化成処理後被処理物に付着したリン酸塩化成処理浴成分を希釈洗浄する水洗槽の洗浄水に使用される。
【0031】
さらに、本発明の第16の態様によれば、イオン希釈倍率は10〜1000倍であるのが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明においては、まずリン酸塩化成処理浴として、リン酸イオンおよびリン酸と、リン酸塩結晶を形成し皮膜となる金属イオンと、溶液中の陽イオンが還元され金属として皮膜を構成する金属イオンと、上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオンを含み、且つ皮膜形成に関与しないイオンを実質的に含有しないリン酸塩化成処理浴を用いて電解リン酸塩化成処理を行う。次いで、化成処理後に被処理物に付着したリン酸塩化成処理液を水溶液に接触させて希釈し洗浄した、水洗槽の水溶液を電気透析して前記水溶液中の有効成分を濃縮回収する。
【0033】
本発明において、上記のように希釈洗浄した水洗槽の水溶液を電気透析して上記水溶液中の有効成分を回収するには、まず(1)濃縮した溶液が電解リン酸塩化成処理液として再利用できることであり、ついで(2)該溶液を電気透析を実施しうる状態にできることである。そして、
(1)濃縮した溶液がリン酸塩化成処理液として再利用できるためには、
(i)皮膜成分および皮膜形成に関与する成分以外のイオンを実質的に含まないこと。
【0034】
(ii)電気透析に用いる極液(電解質液)の影響がないこと。そのためには、極液の選択に留意すればよく、リン酸塩化成処理浴を構成する成分イオンから選ばれること。
【0035】
(2)電気透析を実施しうる溶液の条件は、
(iii)水溶液の溶質が実質的にイオンのみであり、ガス、固体が除去されていること。
【0036】
(iv)水溶液イオンの解離状態を揃える。
【0037】
各種イオンによる解離状態の違いは、透析速度の違いをもたらし、分離濃縮速度の大きな差異をもたらす。そのことは、電気透析により得られた回収液が、当初の組成からずれる可能性を示唆する。故に、各種イオンの解離状態を揃えることは必要である。
【0038】
(v)水溶液を濃縮しても相転移(固形化、ガス化)がない。
【0039】
ことである。
【0040】
上記の(i)〜(v)についてさらに説明すると、
(i)皮膜成分および皮膜形成に関与する成分以外のイオンを実質的に含まないようにするには、リン酸塩化成処理浴成分を、リン酸イオンおよびリン酸と、リン酸塩結晶を形成し皮膜となる金属イオンと、溶液中の陽イオンが還元され金属として皮膜を構成する金属イオンと、上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオンを含み、且つ皮膜形成に関与しないイオンを実質的に含有しないリン酸塩化成処理浴を用いることで対応しうる。
【0041】
なお、上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオンとは、通常硝酸イオンを指す。また、被処理金属がアルミニウムである場合には、通常の硝酸イオンに加えてフッ素イオンを挙げることができる。このフッ素イオンは電解化成処理反応中のアルミニウム材の表面を酸化物でない状態にするために必要なイオンであり、皮膜形成反応に関与するイオンである。このイオンは、皮膜成分として取り込まれないため、有用成分として100%回収されると、建浴時に所定の濃度を入れるだけで後の補給は必要でなくなる。もし95%の回収ならば、薬品として補給する際には従来の5%の補給でよいことになり、補給量を1/20に低減できる。フッ素イオンは環境汚染物質であり、工場外への排出は不可である。故に、後工程でその除去が必要であり、このイオンの排出量低減は環境対策として有効である。
(ii)電気透析に用いる極液(電解質液)の影響が、リン酸塩化成処理浴に生じないようにするためには、極液として、リン酸塩化成処理浴の主成分であるリン酸溶液を用いるのが最も好適である。
(iii)水溶液であるためには、反応する処理浴が、ガス(気体)、固体(スラッジ)を実質的に含まないようにできることである。処理浴でスラッジが生成すると処理浴成分が皮膜形成反応以外で消費されることになる。そのため、処理浴中の化学成分イオンの構成をリン酸塩皮膜形成反応の進行状況に従って制御することは不可となる。
【0042】
処理浴でスラッジを生成させないための第1の手段は、リン酸の解離状況をpHで制御することである。具体的には電解処理浴のpHをpH2.5以下とする。より望ましくはpH2以下である。
【0043】
スラッジを生成させないための第2の手段は、処理浴に溶解するFeイオン量の制御である。Feイオンは、被処理物として鉄鋼材料を用いる時、ならびに電解化成処理に皮膜形成金属電極としてFe電極を用いる時、処理浴に溶解する。Feの溶解は、Fe→Fe2+ →Fe3+ と進み、Fe2+ またはFe3+ の状態で処理浴に溶解し存在する。
【0044】
Fe2+ →Fe3+ +e (770mV)による Feイオンの溶解度の低下に伴うスラッジの生成の対応を説明する。この式の意味することは、ORP(酸化還元電位、水素標準電極電位)770mV以下では、FeイオンはFe2+ の状態で存在するが、770mV以上では、Fe3+ の状態で存在することである。そして、Fe2+ はFe3+に比較して多く溶解できる。その為、処理浴のORPが、770mV以下の溶液で、何らかの理由でORPが770mV以上に上昇すると、溶液中のFeイオンは、Fe2+ →Fe3+ と進んでも、溶解した状態で存在することができず、酸化された Fe3+ は固体化する。すなわち、リン酸塩化成処理浴中では、スラッジとなる。
【0045】
電解リン酸塩化成処理は、処理浴の電極間に10V程度以下の電圧を印加するのが通常である。すなわち、鉄鋼材料を陽極として陽極電解した時、ならびにFe電極を陽極として、被処理物を陰極として陰極電解した時、Feは処理浴に溶解する( Fe→ Fe2+ +2e)。また、鉄鋼材料の被処理物をpH2.5以下の処理浴に、電圧を印加しない状態で浸漬するとFeイオンは溶解する。処理浴の電極間に1〜10V程度の電圧が印加されていると、溶解した Fe2+ は更に酸化されることになる。すなわち、電解処理浴では、Feイオンは容易に、Fe2+ →Fe3+ と進む状況である。この時、処理浴のORP(酸化還元電位)が、770mV未満であればFe2+ →Fe3+ と酸化されたFeイオン(Fe3+ )は溶解できず固形化する。すなわちスラッジが発生する。しかし、処理浴のORPが770mV以上であれば、その溶液に溶解しているFe3+ 量が少ないため、電圧・電流印加によるスラッジ生成を抑える事ができる。電圧・電流印加条件によっては、ゼロとすることも可能と考えられる。
【0046】
したがって、処理浴のORP(酸化還元電位)を770mV以上とすることは、スラッジ生成を防止し、溶液反応を防止するのに好適である。
【0047】
本発明において、電解処理に伴い処理浴に生成する気体であるNO2, N24および/またはNOを処理浴から分離する手段について説明する。好適には、リン酸塩化成処理槽を電解処理を行う電解処理槽と電解処理を行わない予備槽に分離し、処理浴をその2つの槽の間で循環させ、上記2つの槽の間、または2つの槽の中で、処理液を大気に開放する機構を設けることにより、電解処理槽で発生し溶解した気体であるNO,NO2および/または N24を浴中から除去することができる。そして、前記電解処理を行わない予備槽として、処理液が網目状の固体構造物を通過する機構を設けるか、または処理浴をろ過する機構を有するろ過機を用いるのが好適である。さらに、ろ過機内のろ過部材に導入される前の位置で処理液の一部を抜き取り、大気に開放して処理液中に存在する気体である窒素酸化物を除去した後に、電解槽に返却する液回路を有するのが好適である。
【0048】
この態様においては、処理浴のろ過・循環経路は基本的に開放系である。すなわち、電解処理槽において電解処理された処理浴が、循環ポンプおよびろ過機を経由して該電解処理槽に戻る循環系に、電解処理に伴い処理浴で生成する窒素酸化物を除去する機構を設ける。この機構は、基本的には処理浴のろ過・循環系を開放系にすることである。
【0049】
ろ過・循環系が閉鎖系では、処理浴は経路内では加圧された状態となる。加圧された状態では、処理浴中に可溶した気体は溶液から抜けにくい。そして、ろ過・循環系を大気に開放する機構にすれば、すなわち、減圧する機構とすれば、可溶した気体は溶液から抜けやすくなる。
【0050】
特に、気体を抜けやすくする機構として、ろ過部材に導入される前の処理液の一部を抜き出して大気に開放する機構を設ける。ろ過機のろ過部材前は、処理浴が最も加圧される状況にある。その最も加圧された状況では、処理浴に溶解した気体が、溶液から押出され濾布に凝集した状況になる。その凝集した状況の溶液の一部を抜き出して大気に開放すれば、凝集した気体は速やかに大気に放出される。
【0051】
なお、この態様では、ろ過機はスラッジを除去する機能とともに、溶液に溶解した窒素酸化物ガス(NOx)を捕集する機能を有する。それは、溶液がろ布を通過することで、溶解した気体(NOx)はろ布に析出する。この作用は、ろ布が気体の除去に対し触媒的に作用するためである。
【0052】
このように、ろ過・循環系を工夫することで、電解リン酸塩化成処理の要素反応は異なってくる。電極界面でNO3 -が還元される反応は、(1)および(2)がある。
【0053】
NO3 -+4H++3e→NO + 2H2O :960mV (1)
NO3 -+2H++e→ 1/2 N2O4 + H2O :800mV (2)
これらの反応は、いずれも溶液(液体)からガス(気体)を発生させるものである。また、NO3 -の分解という視点から見ると、N24 (g)は分解の途中過程であり、NO(g)が分解した最終的な形である。すなわち、NO3 -の分解は、NO3 - → N24(g)→ NO(g)と進む。
【0054】
このNO3 - の還元反応は、反応によって容積が増加する(液体から気体になる)。
【0055】
化学反応の基本原則であるルシャトリエの原理によれば、このような気体を発生し圧力が増加する反応系では、反応系の圧カを減少させ方向に設定すれば、その反応は圧力を増加させる方向(すなわち、気体をより発生する方向)に進む。
【0056】
すなわち、反応系の圧力を減少させれば、NO3 - の分解は、NO3 - →N24(g)→ NO(g)と容易に進む方向となる。しかし、逆に反応系の圧力が減少しないと、NO3 - の分解は、NO3 - →N24(g)で止まる可能性があることを示している。
【0057】
すなわち、処理浴のろ過・循環経路が基本的に閉鎖系である場合には、NO3 -の分解は、途中で止まる可能性を有する。その状況を化学反応式で示せば、NO3 - の分解は、(2)式となる。この(2)式の反応は、処理浴のORPが800mV以下で可能であり、そのため、処理浴のORPは800mV以下となる。
【0058】
これに対し、処理浴のろ過・循環経路が基本的に開放系である場合には、NO3 - の分解反応は、(1)式なる。処理浴のORPが960mV以下の場合、(1)式は反応で可能である。したがって、電気化学反応の原理に従えば、処理浴のORPが800mVを超える場合には、NO3 - の分解反応は(1)式でのみ行われ、それは配管系のガス抜き機構を設けることにより、達成容易となる。以上のように、本発明の好適な1態様は、処理浴のろ過・循環系を開放系とすることにより達成成されうる。
【0059】
本発明の好適な1態様は、電解処理槽において電解処理された処理浴が、循環ポンプおよびろ過機を経由して該処理槽に戻される循環系に、電解処理に伴い処理浴で生成するNOxガスを除去する機構を設ける。そのNOxガスを除去する機構は、ろ過機のろ過部材に導入される前の処理液の一部を抜き出して大気に関放して、NOxガスを除去した後に、これを該処埋槽に戻すのが好適である。この場合、該処理浴のORPは、800mV以上、もっと好ましくは840mV以上とし、処理浴のNO3 - が分解し生成するガスを NO(g)のみとするのが好適である。
【0060】
なお、処理浴を840mv以上に維持することの必要性は(3)式に由来する。
【0061】
NO3 -+2H++2e→ NO2 - + H2O (840mV) (3)
(3)式の反応は、溶液相内での相転移を伴わない反応である。そして、(3)式の反応の意味することは、処理浴のORPが840mV以下では、溶液中のNO3 -が NO2 - に変化する可能性が存在することを示している。そのような処理浴の変化は、処理浴の安定性に有害である。故に、処理浴のORPを840mVより大きく維持することは、(3)式の反応を防ぐのに好適である。
(iv)水溶液イオンの解離状態をそろえるのは、電気透析設備の中で、各種イオンの移動度を、水(溶媒)の分解する電圧以下で、電気透析膜を通過、分離し、もとの化成処理浴組成と同様な組成の状態に維持できる様にする為必要である。
【0062】
リン酸塩化成処理浴の成分イオンは、(i)リン酸イオンおよびリン酸と、(ii)リン酸塩結晶を形成に皮膜となる金属イオン(Zn、Mn、Fe等)と、(iii )溶液中の陽イオンが還元され金属として皮膜を構成する金属イオン(たとえば、Ni、Cu等)と、(iv)上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオン(たとえば硝酸イオン)である。
【0063】
電気透析の効率は、水の分解電圧以下の電圧を溶液に印加した時のイオンの移動速度に依存している。各種のイオンが混在している時には、それらのイオン全ての移動度を出来るだけ揃えるのが好適である。リン酸塩化成処理浴では、上記の4種類のイオンの移動速度を出来るだけ揃えるのが好適である。
【0064】
水の分解電圧を把握することについて本発明の実施例により説明する。図3の結果は、実施例で電気透析槽に電圧・電流を印加した時の電流と電圧の関係を示したものである。図3に示されるグラフの結果は、6V印加までの電流の流れ方と、6V以上での電流の流れ方が異なっていることを示している。そして、6V以上では、電圧上昇が急になっていることを示している。これは、6V以上と以下では電気透析の状況が異なっていることを示している。具体的には、6V以下では溶質イオンのみが移動するのに対し、6V以上では溶媒である水の分解を伴っていると推定される。溶媒の分解は、溶質成分の電気化学状態に影響を与えることが考えられ(具体的にはスラッジの生成に関連する)、望ましくない。
【0065】
溶質成分を回収し、再利用するには溶質成分が変化しないことが必要である。そのためには溶媒が分解しない電圧で電気透析を実施することが望まれる。上記の例では、6V以下で電気透析することが適切である。
【0066】
溶媒(水)が分解しない電圧は、上記の様に電気透析設備に印加する電圧、電流を順次上昇させ、電圧/電流の関係が変化する電圧を決めることにより把握できる。そして、溶媒(水)が分解しない設備全体の電圧は単位電解室の数に依存する。単位電解室あたりの電圧は、水の理論的電気分解電圧である1.23Vを上回ることは出来ない。図3の例は、全10室の電解槽(室)から構成されている例である。故に、実施例の5.5Vでの電圧は、単位電解室あたりでは0.55Vとなる。そして、0.55Vは1.23Vより小さい値であり、水の電気分解を伴わない電圧である。
【0067】
イオン移動度は、イオンの解離状態に依存して変化する。解離度の大きなイオンは、通常イオンの動きが良好であり、電圧印加で容易に移動するが、解離度の小さいイオンは、溶液中で非イオン的な分子に近い状態で存在する可能性が大きいので、電圧印加で僅かしか移動しない。したがって、溶液状態としては、イオンの解離度をできるかぎり揃えることが望ましい。上記のリン酸塩化成処理浴のイオンの中では、リン酸の解離状態が注目される。リン酸はイオン解離の状態変化が顕著である。リン酸は、H3PO4→H2PO4 -→HPO4 2- →PO4 3-と解離状態が変化する。それぞれのリン酸の状態での解離状況はpKa(酸解離指数:解離定数の逆数の対数値)で表示できる。H3PO4の解離定数の算出を示す。
【0068】
解離定数(Ka:H3PO4)=[H2PO4 -][H+] / [H3PO4]
3PO4=2.15
2PO4 -=7.2
HPO4 2-=12.35
また、H3PO4の解離状態は、溶液のpH(水素イオン濃度)で変化する。その詳細を図5に示す。すなわち、水溶液中でリン酸の解離度を大きくするためには、リン酸の状態をできるだけH3PO4の状態に維持すること、そしてそのために処理浴のpHを2.5以下程度、好ましくは2以下に維持するのが好適であることがわかる。さらに、もう1つの陰イオンである硝酸イオン(NO3 -)についても同様に検討する。硝酸イオンの酸解離状況は、NO3 -(HNO3)→NO2 -(HNO2)→NOと進む。その解離指数は、
NO3 -(HNO3)=−1.8
NO2 -(HNO2)=3.15
である。
【0069】
HNO3は解離度が大きすぎるために、リン酸塩化成処理浴を形成する反応系には不適である。したがって、リン酸塩化成処理浴に、硝酸イオンをHNO3の状態で補給することは適切ではない。本発明のリン酸塩化成処理浴への硝酸イオン(NO3 -)の補給は、すべて亜鉛塩(Zn(NO32)もしくはニッケル塩(Ni(NO32)の形で行い処理浴の酸解離状態(解離が大きくならないように)を制御するのが好適である。
【0070】
さらに、HNO2については、それが処理浴に残留しないような処置が必要であり、処理浴のORPを好ましくは770mV以上、さらに好ましくは840mV以上とすることで達成される((3)式参照)。
【0071】
このように、水溶液イオンの解離状態をそろえるためには、処理浴のpHおよびORPの管理が重要であり、溶液内にイオン相互間の平衡反応を形成させないように、pHは2.5以下、ORPは770mV以上とするのが好適である。
(v)本発明によれば、上記の水溶液を電気透析し、所定の化成浴濃度まで濃縮してもスラッジおよびガスが生じないことが確認された。
【0072】
さらに、本発明によれば電気透析は、化成処理後、被処理物に付着したリン酸塩化成処理液を水溶液に接触させ、希釈洗浄する水洗槽の水溶液を電気透析槽に導入することにより行われるのが好ましい。この希釈洗浄した水洗槽の水溶液は、通常リン酸塩化成処理浴の10倍以上に水希釈されている。
【0073】
電気透析槽は、陰イオン膜および陽イオン膜を交互に組合わせた多室構造を有するのが通常である。イオン交換膜の選定は常法によることができる。たとえば陽イオンを選択的に透過させる陽イオン交換膜としては、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸基等を有するものが、そして陰イオンを選択的に透過させる陰イオン交換膜としては、各級アミン、第四級アンモニウム基等を有するものが挙げられるが、強酸性のスルホン酸基および強塩基性の第四級アンモニウム塩が一般的である。さらに、膜構造からは、均質膜、不均質膜のいずれも使用されうるが、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる橋かけ均質系膜が好適であり、補強布にこれらのモノマーを含浸し、重合させた後にスルホン化もしくはアミノ化反応を施して所望のイオン交換膜を製造しうる。
【0074】
また、電気透析は、電気透析槽の膜間電圧を溶媒である水の分解電圧以下で電気透析するのが好ましい。
【0075】
そして、好適には、電気透析槽は、さらに極液を収容する極液槽および該極液槽に隣接して電気透析されるイオンが極液槽に浸透するのを防止する遮断槽を設けるのが好ましい。
【0076】
電気透析によりイオン濃縮された濃縮水はリン酸塩化成処理浴にもどされる。
【0077】
この場合、イオン濃縮倍率は10〜1000倍であるのが好ましい。
【0078】
一方、電気透析によりイオン希釈された希釈水は、化成処理後のリン酸塩化成処理浴の洗浄に使用される。この場合、イオン希釈倍率は10〜1000倍であるのが好ましい。
【0079】
【実施例】
実施例1
表1に示すリン酸塩化成処理液を20倍に希釈し、その溶液を図1の電気透析装置に導入し、電気透析を行った。さらに、図2は、図1の電気透析装置の電気透析層(旭硝子株式会社製CH−O型。有効膜面積0.21m2、陽イオン交換膜:「セレミオン」CMT、陰イオン交換膜:「セレミオン」AMT)1の構造を示す。
【0080】
【表1】
Figure 0003937957
【0081】
すなわち、リン酸塩化成処理液を20倍に希釈した溶液を図1に示す電気透析装置の脱塩液タンク5および濃縮液タンク6に入れる。電極液タンク7には4g/Lのリン酸溶液を入れる。それぞれのタンクの溶液は、脱塩液循環ポンプ2、濃縮液循環ポンプ3および電極液循環ポンプ4を用いて電気透析層を循環する(8:濃縮液分取タンク)。その循環経路は以下のとおりである。
【0082】
脱塩液循環ポンプ2からの液は、図2の電気透析層D1〜D10に導入され循環する。D1〜D10において、陰イオンは、A(陰イオン交換膜)を通過し、一方において陽イオンは、K(陽イオン交換膜)を通過する。このため、D1〜D10を通過する溶液は、脱イオンされる。
【0083】
濃縮液循環ポンプ3からの液は、電気透析層C1〜C10に導入され循環する。C1〜C10において、陰イオンは、A(陰イオン交換膜)を通過し、一方において陽イオンは、K(陽イオン交換膜)を通過して流入する。このため、C1〜C10を通過する溶液は、イオン濃縮されることになる。
【0084】
極液循環ポンプ4からの液(4g/Lのリン酸溶液)は、図2のE槽(極液槽)に送られ循環する。D‘槽(遮断槽)は、電気透析させるイオンがE槽に浸透するのを防止する役割を果たす。
【0085】
なお、図2に示される電気透析設備は、ユニットの電気透析膜が2.1dm2/枚であり、それを10対重ねて使用するものである。それぞれのポンプは、250L/時間の循環量で作動された。この実施例1において、電気透析設備の膜間電圧を5.5Vとして直流電圧・電源が印加された。図3は、上記の電気透析設備に直流電圧・電流を印加した時の電圧と電流の関係を示す。この図3は印加電圧が約6V以上と以下では電流の流れ方が異なり、6V以上では電圧上昇が急であり、電流が流れなくなる傾向になることを示している。これは、6V以上と以下で電気透析の状況が異なっていることを示している。具体的には、6V以下では、溶質イオンのみが移動するのに対して、6V以上では溶媒である水の分解を伴っていると推定される。溶媒の分解は、溶質の状態に影響すると考えられる。具体的には溶質成分が反応しスラッジを生じると考えられ、望ましいものではない。溶質成分を回収し再利用するには、溶質成分が変化しないことが必要であるので、実施例1の反応系では膜間電圧を6V以下とした。
【0086】
表1における脱塩液及び濃縮液の状況は、設備全体の電気透析膜間の印加電圧を5.5Vに設定し、約20時間電気透析した結果を示したものである。電気透析を開始した状態から比較すると、脱塩液は約1/20に希釈され、濃縮液は20倍に濃縮され、化成処理浴の濃度まで達していることが示されている。但し、脱塩液のリン酸の希釈状況は、他のイオンに比較し小さい。これは、電極液にリン酸溶液を使用しているためと考えられる。
【0087】
この結果は、電気透析を用いることにより、電解リン酸塩化成処理槽直後の水洗槽への給水、排水を停止し、有用成分を回収できることを示している。
実施例2
図4は、リン酸塩化成処理が電着塗装下地に用いられる際に、電気透析を利用して有用成分を回収する例を示す。化成槽に続く水洗槽には化成処理成分イオン(リン酸、NO3 -、Ni2+、Zn2+等)が持ち込まれる。この水洗槽を実施例1の脱塩槽に相当させ、化成槽を濃縮液分取タンクに相当させる電気透析システムを形成する。(極液槽もリン酸を用いて実施例1と同様に形成する。)この電気透析システムは、実施例1と基本的に同じである。すなわち、脱塩槽となる水洗槽には、化成処理槽からリン酸塩化成処理成分イオンが持ち込まれるが、その液は電気透析設備の希釈室に導入される。そして、希釈室に持ち込まれたイオンは、電気透析されて濃縮槽側に移動する。その結果、電気透析の希釈槽に相当する化成処理後の水洗槽には、成分イオンが蓄積されることなく、逆に希釈される。それは、化成処理後水洗槽への給水無しで行われることであり、排水ゼロを意味することでもある。
【0088】
一方、電気透析の濃縮槽側に集まった成分イオンは、化成槽の濃度まで濃縮され、適宜、化成槽に戻される。
【0089】
また、化成処理後水洗槽から次の水洗槽に持ち込まれるリン酸塩化成処理成分イオンは、表1の脱塩液の濃度である。その値は、電気透析を実施しない場合の値(表1の20倍希釈液)より低い(約1/20)。故に、電着塗装設備から排出される化成処理成分イオン量も約1/20に低下することになる。
【0090】
【発明の効果】
本発明は、リン酸塩化成処理浴に関連して、電気透析を利用できる環境を作り、それを利用することにより、電解リン酸塩化成処理浴の有効成分イオンを廃水処理することなく回収し、その場で再利用しうる方法を提供するものであり、それにより併せて排水中の窒素、リン等の環境影響物質を除去しうるものである。
【0091】
さらに、アルミニウム材にリン酸塩化成処理を適用する場合には、その処理浴はさらにフッ素イオンを含むのが一般的である。このため、このような排水を処理するためには従来の重金属除去設備およびリン酸・硝酸イオン除去設備に追加して、フッ素イオン除去の排水処理設備も設置して稼動させる必要がある。本発明によれば、このような場合にもフッ素イオン除去設備を不要とし得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いられる電気透析装置の1実施態様を示す。
【図2】図1の電気透析装置における電気透析層1の構造の1例を示す概略図。
【図3】電気透析層における電圧と電流の関係を示す。
【図4】リン酸塩化成処理による電着塗装において、本発明方法を用いて有用成分を回収する1例を示す。
【図5】H3PO4の解離状態と溶液のpHの関係を示す。

Claims (16)

  1. リン酸塩化成処理浴に導電性を有する金属材料を接触させ、この金属材料被処理物を、前記リン酸塩化成処理浴にて電解処理することにより、前記被処理物表面にリン酸塩化合物を含む皮膜を形成し、ついで化成処理後に被処理物に付着したリン酸塩化成処理液を水溶液に接触して希釈洗浄する際に、(a)リン酸塩化成処理浴として、リン酸イオンおよびリン酸と、リン酸塩結晶を形成し皮膜となる金属イオンと、溶液中の陽イオンが還元され金属として皮膜を構成する金属イオンと、上記溶解したリン酸及び各金属イオンが皮膜形成する反応に関与するイオンである硝酸イオン及び / またはフッ素イオンを含み、且つ皮膜形成に関与しないイオンであるNaイオンを0.5g/L以下(リン酸塩化成処理浴中)としたリン酸塩化成処理浴を用い、(b)化成処理後に被処理物に付着したリン酸塩化成処理液を水溶液に接触させて希釈洗浄した水洗槽の水溶液を電気透析して、前記水溶液中の有効成分を回収し、化成処理浴に戻す、ことを特徴とする電解リン酸塩化成処理浴の有効成分を回収する方法。
  2. リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP)(標準水素電極に対する電位で表す)が770mV以上に維持される請求項1記載の方法。
  3. リン酸塩化成処理浴の酸化還元電位(ORP)(標準水素電極に対する電位で表す)が840mV以上に維持される請求項1記載の方法。
  4. 電気透析の極液としてリン酸水溶液を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 有効成分が、リン酸イオンおよびリン酸と、硝酸イオンと、リン酸塩化処理浴中でリン酸イオンと錯体を形成する金属イオンとからなる皮膜成分を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 皮膜形成に関与するイオンが、金属材料被処理物としてアルミニウムを用いた場合に使用されるフッ素イオンである請求項5記載の方法。
  7. 有効成分が、リン酸塩化処理浴に添加され再使用される請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 電気透析が、該希釈洗浄した水洗槽の水溶液を電気透析槽に導入することにより行われる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 該希釈洗浄した水洗槽の水溶液が化成処理後のリン酸塩化成処理浴の10倍以上に水希釈されている請求項8記載の方法。
  10. 電気透析槽が、陰イオン膜および陽イオン膜を交互に組み合わせた多室構造を有する請求項8記載の方法。
  11. 電気透析槽の膜間電圧を水の分解電圧以下で電気透析する請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 電気透析槽が、さらに極液を収容する極液槽および該極液槽に隣接して電気透析されるイオンが極液槽に浸透するのを防止する遮断槽を設ける請求項10記載の方法。
  13. 電気透析によりイオン濃縮された濃縮水がリン酸塩化成処理浴にもどされる請求項8記載の方法。
  14. イオン濃縮倍率が10〜1000倍である請求項13記載の方法。
  15. 電気透析によりイオン希釈された希釈水が、化成処理後のリン酸塩化成処理浴の希釈洗浄に使用される請求項8記載の方法。
  16. イオン希釈倍率が10〜1000倍である請求項15記載の方法。
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