JPH1147795A - 特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する方法 - Google Patents
特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する方法Info
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- JPH1147795A JPH1147795A JP9218980A JP21898097A JPH1147795A JP H1147795 A JPH1147795 A JP H1147795A JP 9218980 A JP9218980 A JP 9218980A JP 21898097 A JP21898097 A JP 21898097A JP H1147795 A JPH1147795 A JP H1147795A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 少なくともクロム又はモリブデンのいずれか
1を含有する特殊鋼の表面処理工程で発生する含鉄硫酸
廃液からクロム及びモリブデンを含む重金属を分離した
硫酸第一鉄を回収する特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する技
術の提供。 【解決手段】 少なくともクロム又はモリブデンのいず
れか1を含有する特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工
程で排出される硫酸廃液を陰極室に導入して隔膜電解を
行って陰極に先の両金属を含む重金属を析出・分離さ
せ、ついでこの硫酸廃液を陰極室から取り出し蒸発濃縮
した後、濃縮硫酸廃液を冷却して硫酸第一鉄結晶を析出
させて硫酸第一鉄結晶を取得する。
1を含有する特殊鋼の表面処理工程で発生する含鉄硫酸
廃液からクロム及びモリブデンを含む重金属を分離した
硫酸第一鉄を回収する特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する技
術の提供。 【解決手段】 少なくともクロム又はモリブデンのいず
れか1を含有する特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工
程で排出される硫酸廃液を陰極室に導入して隔膜電解を
行って陰極に先の両金属を含む重金属を析出・分離さ
せ、ついでこの硫酸廃液を陰極室から取り出し蒸発濃縮
した後、濃縮硫酸廃液を冷却して硫酸第一鉄結晶を析出
させて硫酸第一鉄結晶を取得する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、少なくともクロ
ム及び/又はモリブデンが含まれるところの多くの種類
の重金属を含有する特殊鋼を使用して金属製品を製造す
る過程で行われる硫酸酸洗表面処理工程で発生するとこ
ろの多量の第一鉄化合物と、少なくともクロム及び/又
はモリブデンが含まれるところの多くの種類の重金属を
ある程度の量で含有する硫酸廃液を処理する技術を提供
するものである。
ム及び/又はモリブデンが含まれるところの多くの種類
の重金属を含有する特殊鋼を使用して金属製品を製造す
る過程で行われる硫酸酸洗表面処理工程で発生するとこ
ろの多量の第一鉄化合物と、少なくともクロム及び/又
はモリブデンが含まれるところの多くの種類の重金属を
ある程度の量で含有する硫酸廃液を処理する技術を提供
するものである。
【0002】すなわち、この処理によってクロム等の毒
性のある重金属を分離・回収して、硫酸廃液中の毒性の
ある重金属濃度を低減させるとともに、該濃度の低減し
た廃液中から毒性のある重金属成分の低減した鉄化合物
を硫酸第一鉄として回収するものであり、特に水処理用
の凝集剤として大量に利用されているポリ硫酸鉄の製造
原料としても利用可能なほど毒性のある重金属成分の低
減した硫酸第一鉄を回収できる技術を提供するものであ
る。
性のある重金属を分離・回収して、硫酸廃液中の毒性の
ある重金属濃度を低減させるとともに、該濃度の低減し
た廃液中から毒性のある重金属成分の低減した鉄化合物
を硫酸第一鉄として回収するものであり、特に水処理用
の凝集剤として大量に利用されているポリ硫酸鉄の製造
原料としても利用可能なほど毒性のある重金属成分の低
減した硫酸第一鉄を回収できる技術を提供するものであ
る。
【0003】
【従来の技術】鉄イオンを含有する酸廃液については、
鉄鋼の酸洗等の表面処理工程で発生する酸洗廃液があ
り、これは、河川及び海洋の水質汚染等の環境汚染を引
き起こすことから、そのまま投棄することはできず、例
えばピックリング廃塩酸については、中和してスラッジ
とした後海洋投棄する方法あるいは硫酸を添加した後、
塩酸を減圧蒸留法で回収すると同時に、生成した硫酸第
一鉄については、その一部を凝集剤として利用する方法
などが既に知られている。
鉄鋼の酸洗等の表面処理工程で発生する酸洗廃液があ
り、これは、河川及び海洋の水質汚染等の環境汚染を引
き起こすことから、そのまま投棄することはできず、例
えばピックリング廃塩酸については、中和してスラッジ
とした後海洋投棄する方法あるいは硫酸を添加した後、
塩酸を減圧蒸留法で回収すると同時に、生成した硫酸第
一鉄については、その一部を凝集剤として利用する方法
などが既に知られている。
【0004】また、硫酸第一鉄含有硫酸廃液について
は、減圧蒸発濃縮法で処理して、硫酸第一鉄を析出さ
せ、得られた硫酸第一鉄を直接凝集剤として利用する方
法が古くから知られている。それに加えて、この硫酸第
一鉄については、酸化等の処理をしてポリ硫酸鉄とした
後、硫酸第一鉄同様凝集剤として利用することも既に知
られている。
は、減圧蒸発濃縮法で処理して、硫酸第一鉄を析出さ
せ、得られた硫酸第一鉄を直接凝集剤として利用する方
法が古くから知られている。それに加えて、この硫酸第
一鉄については、酸化等の処理をしてポリ硫酸鉄とした
後、硫酸第一鉄同様凝集剤として利用することも既に知
られている。
【0005】これら従来技術のうち、廃塩酸の処理に関
しては、前者の中和処理を行う方法は、中和するのみで
汚染成分を除去することなく海洋等に投棄するという点
からして望ましいものではなく、より高度の廃棄物処理
技術への代替が望まれるものである。そして後者の硫酸
第一鉄を取得する方法は、高度処理が行われており、望
ましいものではあるが、副生した硫酸第一鉄の用途が少
なく、その結果、利用が一部に限られており、この技術
の採用は思うように進んでいない。
しては、前者の中和処理を行う方法は、中和するのみで
汚染成分を除去することなく海洋等に投棄するという点
からして望ましいものではなく、より高度の廃棄物処理
技術への代替が望まれるものである。そして後者の硫酸
第一鉄を取得する方法は、高度処理が行われており、望
ましいものではあるが、副生した硫酸第一鉄の用途が少
なく、その結果、利用が一部に限られており、この技術
の採用は思うように進んでいない。
【0006】この後者の技術については、本発明者ら
は、副生する硫酸第一鉄の純度を向上せしめることが、
この製品のより多くの分野での利用を促し、それにより
用途を拡大し、廃塩酸の高度処理を促すとの認識の下
に、研究・開発を進め、すでに含第一鉄化合物塩酸廃液
から硫酸第一鉄を経由して高純度のポリ硫酸鉄を製造す
る技術を完成させ、特許出願(特願平9ー92901
号)している。
は、副生する硫酸第一鉄の純度を向上せしめることが、
この製品のより多くの分野での利用を促し、それにより
用途を拡大し、廃塩酸の高度処理を促すとの認識の下
に、研究・開発を進め、すでに含第一鉄化合物塩酸廃液
から硫酸第一鉄を経由して高純度のポリ硫酸鉄を製造す
る技術を完成させ、特許出願(特願平9ー92901
号)している。
【0007】ところで、ピックリング廃塩酸には微量の
重金属が含まれており、今回本発明者らが技術開発の対
象とする特殊鋼処理硫酸廃液とは、多量の第一鉄化合物
を含くむ点及び重金属を含有する点では、共通するもの
である。また前記した含第一鉄硫酸廃液の処理について
は、その廃液が第一鉄含有硫酸廃液である点では、同様
に共通している。
重金属が含まれており、今回本発明者らが技術開発の対
象とする特殊鋼処理硫酸廃液とは、多量の第一鉄化合物
を含くむ点及び重金属を含有する点では、共通するもの
である。また前記した含第一鉄硫酸廃液の処理について
は、その廃液が第一鉄含有硫酸廃液である点では、同様
に共通している。
【0008】しかしながら、この特殊鋼を表面処理した
硫酸廃液には、処理対象物が特殊鋼であるということか
ら、炭素鋼処理液中には存在せず、またピックリング廃
塩酸中の含有量に比較すると相当多い量の多種類の重金
属が含有されており、その中には現在既に毒性が問題に
されているクロムあるいは今後問題になりそうなモリブ
デン等もある。
硫酸廃液には、処理対象物が特殊鋼であるということか
ら、炭素鋼処理液中には存在せず、またピックリング廃
塩酸中の含有量に比較すると相当多い量の多種類の重金
属が含有されており、その中には現在既に毒性が問題に
されているクロムあるいは今後問題になりそうなモリブ
デン等もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のとおりであるか
ら、前記鉄鋼酸洗処理廃液処理技術においては、前者の
廃塩酸の場合は、クロム等の重金属の含有量が僅かであ
り、かつ第一鉄が溶解している酸が塩酸であるので、こ
れらの点で特殊鋼を処理した硫酸廃液とは異なってい
る。また、後者の硫酸廃液の場合は、炭素鋼を処理した
ものであるから、本発明の対象液とは異なり重金属の含
有はない。したがって、ピックリング廃塩酸に比較する
と相当多い量の多種の重金属を含有する含鉄硫酸廃液の
場合については、これら先行技術では何等配慮されてい
ない。
ら、前記鉄鋼酸洗処理廃液処理技術においては、前者の
廃塩酸の場合は、クロム等の重金属の含有量が僅かであ
り、かつ第一鉄が溶解している酸が塩酸であるので、こ
れらの点で特殊鋼を処理した硫酸廃液とは異なってい
る。また、後者の硫酸廃液の場合は、炭素鋼を処理した
ものであるから、本発明の対象液とは異なり重金属の含
有はない。したがって、ピックリング廃塩酸に比較する
と相当多い量の多種の重金属を含有する含鉄硫酸廃液の
場合については、これら先行技術では何等配慮されてい
ない。
【0010】そして、特殊鋼処理硫酸廃液については、
これらの重金属成分の存在ゆえに、技術開発の関心も薄
く、着手しようとする意欲も余りみられず、我々が知る
限り有効な廃液処理技術は開発されていない。そのよう
なことで、特殊鋼製品製造メーカーでは、その硫酸廃液
の処分に苦難しており、かかるメーカーから、既に鉄鋼
の表面処理工程で発生する鉄含有廃酸液を処理してポリ
硫酸鉄を製造し、それを排水の凝集剤として多くの自治
体あるいは企業に提供している多くの実績を持つ我々に
有効な処理技術の開発の可能性について打診された。
これらの重金属成分の存在ゆえに、技術開発の関心も薄
く、着手しようとする意欲も余りみられず、我々が知る
限り有効な廃液処理技術は開発されていない。そのよう
なことで、特殊鋼製品製造メーカーでは、その硫酸廃液
の処分に苦難しており、かかるメーカーから、既に鉄鋼
の表面処理工程で発生する鉄含有廃酸液を処理してポリ
硫酸鉄を製造し、それを排水の凝集剤として多くの自治
体あるいは企業に提供している多くの実績を持つ我々に
有効な処理技術の開発の可能性について打診された。
【0011】そこで、我々はそのメーカーから該廃液の
提供を受け、その組成をまず分析したところ、表1に示
すとおりの結果が得られた。この表から、この廃液中に
は、その毒性の故に河川または海洋へ排水することが厳
しく規制されているクロム、あるいは今後毒性が問題に
されそうなモリブデン等多くの重金属が含有されている
ことがわかる。
提供を受け、その組成をまず分析したところ、表1に示
すとおりの結果が得られた。この表から、この廃液中に
は、その毒性の故に河川または海洋へ排水することが厳
しく規制されているクロム、あるいは今後毒性が問題に
されそうなモリブデン等多くの重金属が含有されている
ことがわかる。
【0012】この廃液の主成分が他の鉄鋼表面処理工程
で排出される酸廃液同様第一鉄化合物であることから、
我々は廃液中の重金属成分、特に毒性が問題にされるク
ロム及び/又はモリブデンを除去した後、第一鉄化合物
を取得できれば、ピックリング廃塩酸の場合と同様にこ
れを処理して、ポリ硫酸鉄の原料を取得できるとの認識
の下に開発に着手した。
で排出される酸廃液同様第一鉄化合物であることから、
我々は廃液中の重金属成分、特に毒性が問題にされるク
ロム及び/又はモリブデンを除去した後、第一鉄化合物
を取得できれば、ピックリング廃塩酸の場合と同様にこ
れを処理して、ポリ硫酸鉄の原料を取得できるとの認識
の下に開発に着手した。
【0013】これら重金属を分離する手段としては、硫
酸第一鉄が圧倒的に多いことから、晶析によることは不
可能と考え、少量成分である重金属を選択的に分離でき
る可能性のある技術として、イオン交換、抽出、電解等
を検討し、その中から、我々はまず電解による方法を試
みることにした。この試みに当たり、成功させるために
は、乗り越えねばならないと、我々自身が考えていた壁
が2点あった。
酸第一鉄が圧倒的に多いことから、晶析によることは不
可能と考え、少量成分である重金属を選択的に分離でき
る可能性のある技術として、イオン交換、抽出、電解等
を検討し、その中から、我々はまず電解による方法を試
みることにした。この試みに当たり、成功させるために
は、乗り越えねばならないと、我々自身が考えていた壁
が2点あった。
【0014】その第1の点は、2価鉄と3価鉄との間の
標準酸化還元電位からして、電解槽内で陰陽の両極間を
移動する鉄イオンが、陰極においては3価の鉄が2価の
鉄に還元され、陽極においては2価の鉄が3価の鉄に酸
化される電解反応が優先的に進行し、その結果酸化還元
が繰り返され、電気が無駄に消費されると考えられたこ
とであり、第2の点は、第1の点と同様に鉄及びクロム
の酸化還元電位からすると、クロムイオンの金属への還
元に比し、第一鉄イオンの鉄への還元が優先するのでは
と考えられたことである。
標準酸化還元電位からして、電解槽内で陰陽の両極間を
移動する鉄イオンが、陰極においては3価の鉄が2価の
鉄に還元され、陽極においては2価の鉄が3価の鉄に酸
化される電解反応が優先的に進行し、その結果酸化還元
が繰り返され、電気が無駄に消費されると考えられたこ
とであり、第2の点は、第1の点と同様に鉄及びクロム
の酸化還元電位からすると、クロムイオンの金属への還
元に比し、第一鉄イオンの鉄への還元が優先するのでは
と考えられたことである。
【0015】しかしながら、電解槽に簡単な工夫を行う
ことで、第1の問題点はクリアーでき、また第2の問題
点は、実際には、意外にもクロムが鉄の析出に優先する
ことが判明し、少なくともクロム及び/又はモリブデン
を含むところの重金属成分が特殊鋼表面処理硫酸廃液か
ら分離できることを見出し、これらを除去した硫酸第一
鉄を回収し、本発明を完成させた。それによって、わが
社において、多くの開発実績があり、かつすでに大量に
市販し、排水の凝集剤として多くの自治体あるいは企業
で利用されているポリ硫酸鉄の原料とすることができる
程度に純度の高い硫酸第一鉄を製造することができた。
ことで、第1の問題点はクリアーでき、また第2の問題
点は、実際には、意外にもクロムが鉄の析出に優先する
ことが判明し、少なくともクロム及び/又はモリブデン
を含むところの重金属成分が特殊鋼表面処理硫酸廃液か
ら分離できることを見出し、これらを除去した硫酸第一
鉄を回収し、本発明を完成させた。それによって、わが
社において、多くの開発実績があり、かつすでに大量に
市販し、排水の凝集剤として多くの自治体あるいは企業
で利用されているポリ硫酸鉄の原料とすることができる
程度に純度の高い硫酸第一鉄を製造することができた。
【0016】すなわち、この発明は、少なくともクロム
及び/又はモリブデンを含むところの重金属を含有する
特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工程で発生する硫酸
廃液を処理する廃酸処理技術であって、まずこれら重金
属成分を分離除去し、ついで残る多量の第一鉄を含有す
る硫酸廃液中から、該重金属成分の低減した硫酸第一鉄
を回収することを目的とするものであり、また、その結
果得られた硫酸第一鉄については、排水の凝集剤として
既に多くの企業等で利用されているポリ硫酸鉄の原料と
することができる程度に純度の高い硫酸第一鉄とせしめ
ることのできる処理技術を提供することを目的としてい
る。
及び/又はモリブデンを含むところの重金属を含有する
特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工程で発生する硫酸
廃液を処理する廃酸処理技術であって、まずこれら重金
属成分を分離除去し、ついで残る多量の第一鉄を含有す
る硫酸廃液中から、該重金属成分の低減した硫酸第一鉄
を回収することを目的とするものであり、また、その結
果得られた硫酸第一鉄については、排水の凝集剤として
既に多くの企業等で利用されているポリ硫酸鉄の原料と
することができる程度に純度の高い硫酸第一鉄とせしめ
ることのできる処理技術を提供することを目的としてい
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明が前記目的を達成
するために採用した具体的手段は、少なくともクロム及
び/又はモリブデンを含有する特殊鋼を硫酸にて酸洗す
る表面処理工程から排出される硫酸廃液を陰極室に導入
して隔膜電解を行って陰極に重金属を析出させる工程、
重金属を析出・分離した硫酸廃液を陰極室から取り出し
蒸発濃縮する工程、濃縮硫酸廃液を冷却して硫酸第一鉄
結晶を析出させる工程、析出した硫酸第一鉄結晶を分離
する工程からなるものである。
するために採用した具体的手段は、少なくともクロム及
び/又はモリブデンを含有する特殊鋼を硫酸にて酸洗す
る表面処理工程から排出される硫酸廃液を陰極室に導入
して隔膜電解を行って陰極に重金属を析出させる工程、
重金属を析出・分離した硫酸廃液を陰極室から取り出し
蒸発濃縮する工程、濃縮硫酸廃液を冷却して硫酸第一鉄
結晶を析出させる工程、析出した硫酸第一鉄結晶を分離
する工程からなるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】この発明の処理対象となる廃液
は、クロムあるいはモリブデンのいずれか一つが含有さ
れている特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工程で発生
する硫酸酸洗廃液である。したがって、硫酸酸洗の対象
となっている金属は特殊鋼であるから、鉄が主成分であ
り、この特殊鋼中に少なくともクロム及び/又はモリブ
デンを含有するものであればよく、その含有量について
は、後記する特殊鋼といわれる範囲のものであればよ
く、特に下限についても限定されるものではない。
は、クロムあるいはモリブデンのいずれか一つが含有さ
れている特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工程で発生
する硫酸酸洗廃液である。したがって、硫酸酸洗の対象
となっている金属は特殊鋼であるから、鉄が主成分であ
り、この特殊鋼中に少なくともクロム及び/又はモリブ
デンを含有するものであればよく、その含有量について
は、後記する特殊鋼といわれる範囲のものであればよ
く、特に下限についても限定されるものではない。
【0019】かかる特殊鋼に関しては、JISで規定す
るところの限定的な範囲のものが含まれることは勿論で
あるが、この明細書では、この語については合金鋼とい
うようなより広義な意味で使用するものである。すなわ
ち、この語は、通常炭素鋼に1種又は2種以上の合金元
素を添加して所望の性質を与えたものという意味で使用
されており、本明細書でもかかる広義の意味で使用して
いる。
るところの限定的な範囲のものが含まれることは勿論で
あるが、この明細書では、この語については合金鋼とい
うようなより広義な意味で使用するものである。すなわ
ち、この語は、通常炭素鋼に1種又は2種以上の合金元
素を添加して所望の性質を与えたものという意味で使用
されており、本明細書でもかかる広義の意味で使用して
いる。
【0020】該当する特殊鋼に関して、広く知られてい
る特殊鋼、すなわち合金鋼の名称でで示すと、ステンレ
ス鋼、耐熱鋼あるいはバネ用鋼として使用されるクロム
モリブデン鋼(STBA20〜26あるいはSUP13
等)及び軸受鋼として使用されている高炭素クロム軸受
鋼(SUJ1〜5)等が例示できる。以上のものに該当
する合金は、いずれもクロム又はクロムとモリブデンの
両者を含有するものである。それに対してモリブデンは
含有するがクロムを含有しない特殊鋼は、非常に少ない
ものの耐熱鋼であるモリブデン鋼(STBA12)が例
示できる。
る特殊鋼、すなわち合金鋼の名称でで示すと、ステンレ
ス鋼、耐熱鋼あるいはバネ用鋼として使用されるクロム
モリブデン鋼(STBA20〜26あるいはSUP13
等)及び軸受鋼として使用されている高炭素クロム軸受
鋼(SUJ1〜5)等が例示できる。以上のものに該当
する合金は、いずれもクロム又はクロムとモリブデンの
両者を含有するものである。それに対してモリブデンは
含有するがクロムを含有しない特殊鋼は、非常に少ない
ものの耐熱鋼であるモリブデン鋼(STBA12)が例
示できる。
【0021】ステンレス鋼について、さらに詳細に言及
すると、オーステナイト系、オーステナイト・フェライ
ト系及びマルテンサイト系の何れであってもよく、より
詳細にいうならば、クロム及びモリブデンの両者を含有
するSUS316、316L及び317等は勿論のこ
と、クロムは含有するがモリブテンは含有しないSUS
304であってもよい。なお、この特殊鋼については、
先の2金属以外の他の重金属を含有するものであっても
何等差し支えなく、特殊鋼中に含有する他の金属として
は、ニッケル、銅、タングステン、バナジウム、コバル
ト及びマンガン等が例示できる。
すると、オーステナイト系、オーステナイト・フェライ
ト系及びマルテンサイト系の何れであってもよく、より
詳細にいうならば、クロム及びモリブデンの両者を含有
するSUS316、316L及び317等は勿論のこ
と、クロムは含有するがモリブテンは含有しないSUS
304であってもよい。なお、この特殊鋼については、
先の2金属以外の他の重金属を含有するものであっても
何等差し支えなく、特殊鋼中に含有する他の金属として
は、ニッケル、銅、タングステン、バナジウム、コバル
ト及びマンガン等が例示できる。
【0022】またこの処理液は、クロムあるいはモリブ
デンのいずれか一つが含有されている特殊鋼を硫酸にて
酸洗する表面処理工程で発生する硫酸酸洗廃液単独の場
合だけでなく、これに炭素鋼を処理した硫酸廃液あるい
はクロム又はモリブデンを含有しない特殊鋼を処理した
硫酸廃液を混合したものであってもよい。なお、その場
合にはクロム又はモリブデンの濃度が特殊鋼硫酸処理廃
液と同程度であることが必要である。その理由は、この
両者の濃度が余り低いとこの技術を採用することの技術
的意味が薄れることになるからである。
デンのいずれか一つが含有されている特殊鋼を硫酸にて
酸洗する表面処理工程で発生する硫酸酸洗廃液単独の場
合だけでなく、これに炭素鋼を処理した硫酸廃液あるい
はクロム又はモリブデンを含有しない特殊鋼を処理した
硫酸廃液を混合したものであってもよい。なお、その場
合にはクロム又はモリブデンの濃度が特殊鋼硫酸処理廃
液と同程度であることが必要である。その理由は、この
両者の濃度が余り低いとこの技術を採用することの技術
的意味が薄れることになるからである。
【0023】酸洗廃液中の硫酸濃度については、別段制
限はないが15〜30重量%程度の濃度のものがよい。
この範囲を超えても処理可能ではあるが、硫酸濃度がこ
の範囲より低いと濃縮しなければならなくなり、この範
囲より高いと電解中に水素ガスの発生が多くなり効率が
悪くなり、不向きである。
限はないが15〜30重量%程度の濃度のものがよい。
この範囲を超えても処理可能ではあるが、硫酸濃度がこ
の範囲より低いと濃縮しなければならなくなり、この範
囲より高いと電解中に水素ガスの発生が多くなり効率が
悪くなり、不向きである。
【0024】この硫酸廃液を処理する第1の工程は隔膜
電解であり、その電解室は、隔膜によって、陽極室と陰
極室に区画されている。硫酸廃液は陰極室に導入され、
陰極では、重金属を可能な限り優先して析出させるが鉄
の析出は避けられない。陽極室にも、陰極室同様電解質
溶液が導入されるが、その溶液は特に限定されることは
ないものの特殊鋼硫酸酸洗廃液等の含第一鉄硫酸廃液又
はそれと同程度の濃度の希硫酸が好ましい。陽極室で
は、陰極室から隔膜を透過してきた第一鉄イオンは第二
鉄イオンに酸化されるので、電気の浪費を抑制するに
は、第一鉄イオンが隔膜を透過して陽極室に移動しない
ようにすることが重要である。
電解であり、その電解室は、隔膜によって、陽極室と陰
極室に区画されている。硫酸廃液は陰極室に導入され、
陰極では、重金属を可能な限り優先して析出させるが鉄
の析出は避けられない。陽極室にも、陰極室同様電解質
溶液が導入されるが、その溶液は特に限定されることは
ないものの特殊鋼硫酸酸洗廃液等の含第一鉄硫酸廃液又
はそれと同程度の濃度の希硫酸が好ましい。陽極室で
は、陰極室から隔膜を透過してきた第一鉄イオンは第二
鉄イオンに酸化されるので、電気の浪費を抑制するに
は、第一鉄イオンが隔膜を透過して陽極室に移動しない
ようにすることが重要である。
【0025】さらに隔膜の機能について言及すると、隔
膜は、第一義的には第一鉄イオンが拡散等により、そこ
を透過して陰極室から陽極室に移動して陽極で酸化され
て第二鉄イオンが形成されることを回避するために設置
するものであり、第二義的には酸化された第二鉄イオン
が再び陰極室に移動することを可能な限り回避するため
に設置するものである。したがって、鉄イオンの移動を
抑制できる性質を持つことが必要である。このようにす
ることにより、陰極と陽極の間を繰り返し移動すること
によりおこる第一鉄イオンと第二鉄イオンの酸化還元の
反復を抑え、電気量の浪費を抑制することができるので
あり、このことは本発明の重要な特徴点の一つの点であ
る。
膜は、第一義的には第一鉄イオンが拡散等により、そこ
を透過して陰極室から陽極室に移動して陽極で酸化され
て第二鉄イオンが形成されることを回避するために設置
するものであり、第二義的には酸化された第二鉄イオン
が再び陰極室に移動することを可能な限り回避するため
に設置するものである。したがって、鉄イオンの移動を
抑制できる性質を持つことが必要である。このようにす
ることにより、陰極と陽極の間を繰り返し移動すること
によりおこる第一鉄イオンと第二鉄イオンの酸化還元の
反復を抑え、電気量の浪費を抑制することができるので
あり、このことは本発明の重要な特徴点の一つの点であ
る。
【0026】隔膜にとって、以上の点は最も重要なこと
ではあるが、この隔膜は電解室中に配置されものである
から、それ以外に、多少の液面の揺れ等では陰陽両極室
液の混合が起こらない程度の機密性、可能な限り電解電
圧の上昇を起こさない、耐薬品性に優れている及び膜自
体が複極を形成しない等の特性を有することが要求され
る。これら性質において、すべての点で優れていること
が隔膜として望ましいものであり、それには、例えば塩
化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体であるモドア
クリル、酢酸ビニル、ポリエステル及びサラン等の材料
からなる市販のろ布がある。
ではあるが、この隔膜は電解室中に配置されものである
から、それ以外に、多少の液面の揺れ等では陰陽両極室
液の混合が起こらない程度の機密性、可能な限り電解電
圧の上昇を起こさない、耐薬品性に優れている及び膜自
体が複極を形成しない等の特性を有することが要求され
る。これら性質において、すべての点で優れていること
が隔膜として望ましいものであり、それには、例えば塩
化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体であるモドア
クリル、酢酸ビニル、ポリエステル及びサラン等の材料
からなる市販のろ布がある。
【0027】また、この発明では、陰極における析出金
属の組成をみると、鉄に対するクロムおよびモリブデン
等の重金属の比率が、硫酸廃液中におけるその比率より
高くなっている。したがって、この電解では、酸化還元
電位から予測したところに反し、クロムは、意外にも鉄
に優先して析出している。この重金属の優先的析出によ
り、硫酸廃液中からこれら重金属が除去でき、その結
果、後に取得する硫酸第一鉄中の重金属を低減すること
ができるのであり、この点が本発明のもう一つの重要な
点である。
属の組成をみると、鉄に対するクロムおよびモリブデン
等の重金属の比率が、硫酸廃液中におけるその比率より
高くなっている。したがって、この電解では、酸化還元
電位から予測したところに反し、クロムは、意外にも鉄
に優先して析出している。この重金属の優先的析出によ
り、硫酸廃液中からこれら重金属が除去でき、その結
果、後に取得する硫酸第一鉄中の重金属を低減すること
ができるのであり、この点が本発明のもう一つの重要な
点である。
【0028】電解に使用する陰極については、特に限定
されることはないが、析出した重金属と電極を分離する
手間が省けることからすると、鉄がよい。すなわち、鉄
を陰極として電解を行った場合には、電極を電解室から
取り外した後には、それをそのまま原料の特殊鋼を溶解
する炉に入れて、原材料の一部として利用できるメリッ
トがある。また陽極としては各種の電極が使用可能であ
り、好ましくはDSA(チタン基体の上に酸化ルテニウ
ムR2O あるいは酸化ルテニウムと他の金属酸化物との
複合酸化物を熱分解被覆したものであって、寸法安定電
極とも呼称される)及びPt等がよい。
されることはないが、析出した重金属と電極を分離する
手間が省けることからすると、鉄がよい。すなわち、鉄
を陰極として電解を行った場合には、電極を電解室から
取り外した後には、それをそのまま原料の特殊鋼を溶解
する炉に入れて、原材料の一部として利用できるメリッ
トがある。また陽極としては各種の電極が使用可能であ
り、好ましくはDSA(チタン基体の上に酸化ルテニウ
ムR2O あるいは酸化ルテニウムと他の金属酸化物との
複合酸化物を熱分解被覆したものであって、寸法安定電
極とも呼称される)及びPt等がよい。
【0029】これらの電極の形状等の構造については、
特に限定されことはなく、通常の構造が採用でき、板状
及び網状等が採用可能である。電解における操作条件に
ついては、電圧1.5〜4.0V、電流密度20〜15
0mA/cm2 及び電解液温度15〜70℃で行うのが
よく、電解液温度については、好ましくは20〜50℃
で行うのがよい。
特に限定されことはなく、通常の構造が採用でき、板状
及び網状等が採用可能である。電解における操作条件に
ついては、電圧1.5〜4.0V、電流密度20〜15
0mA/cm2 及び電解液温度15〜70℃で行うのが
よく、電解液温度については、好ましくは20〜50℃
で行うのがよい。
【0030】電解により重金属を低減せしめた硫酸廃液
は、陰極室から取り出された後、蒸発缶にて蒸発濃縮を
行う。この蒸発濃縮を実施する前に硫酸を混合して廃液
の硫酸濃度を増大せしめることは、蒸発濃縮に要する時
間およびエネルギーコストを低減せしめることができる
ことから好ましいことではあるが、不可欠なことではな
い。ここで使用する硫酸は市販のものでもよいが、硫酸
第一鉄分離回収後の母液中の硫酸濃度が高いことから、
この廃硫酸を使用することが好ましい。
は、陰極室から取り出された後、蒸発缶にて蒸発濃縮を
行う。この蒸発濃縮を実施する前に硫酸を混合して廃液
の硫酸濃度を増大せしめることは、蒸発濃縮に要する時
間およびエネルギーコストを低減せしめることができる
ことから好ましいことではあるが、不可欠なことではな
い。ここで使用する硫酸は市販のものでもよいが、硫酸
第一鉄分離回収後の母液中の硫酸濃度が高いことから、
この廃硫酸を使用することが好ましい。
【0031】廃硫酸等の硫酸を混合する場合には、硫酸
混合後の遊離硫酸濃度が20〜50重量%になるように
調整する。次いでこれを蒸発濃縮するが、それは温度7
0〜85℃、圧力150〜200mmHg程度の減圧下
で行うのが好ましい。蒸発濃縮は濃縮終了後に得られる
溶液が、硫酸第一鉄の濃度(FeSO4 として)が25
重量%前後、硫酸の濃度が50重量%前後が好ましい。
混合後の遊離硫酸濃度が20〜50重量%になるように
調整する。次いでこれを蒸発濃縮するが、それは温度7
0〜85℃、圧力150〜200mmHg程度の減圧下
で行うのが好ましい。蒸発濃縮は濃縮終了後に得られる
溶液が、硫酸第一鉄の濃度(FeSO4 として)が25
重量%前後、硫酸の濃度が50重量%前後が好ましい。
【0032】濃縮硫酸廃液を冷却して硫酸第一鉄を析出
させる工程においては、蒸発濃縮時の70〜85℃から
5℃前後まで低下せしめることが望ましい。またその際
の冷却速度は濾過効率の良い結晶を形成することを考慮
すると、5〜10℃/h程度が望ましい。析出した結晶
を分離する工程では、各種の固液分離機が使用可能では
あるが、底部排出型遠心分離機によるのが効率的であ
り、望ましい。
させる工程においては、蒸発濃縮時の70〜85℃から
5℃前後まで低下せしめることが望ましい。またその際
の冷却速度は濾過効率の良い結晶を形成することを考慮
すると、5〜10℃/h程度が望ましい。析出した結晶
を分離する工程では、各種の固液分離機が使用可能では
あるが、底部排出型遠心分離機によるのが効率的であ
り、望ましい。
【0033】得られた硫酸第一鉄については、これを原
料として、所望ならばポリ硫酸鉄を製造することができ
る。その際には、まず硫酸第一鉄を水に溶解して、その
水溶液を生成し、ついで、これにSO4 /Fe=1.0
〜1.5になるように濃硫酸を混合する。水溶液を形成
する際の水の使用量は、FeSO4 結晶(FeSO4・
H20)1kg当たり1800ml程度である。
料として、所望ならばポリ硫酸鉄を製造することができ
る。その際には、まず硫酸第一鉄を水に溶解して、その
水溶液を生成し、ついで、これにSO4 /Fe=1.0
〜1.5になるように濃硫酸を混合する。水溶液を形成
する際の水の使用量は、FeSO4 結晶(FeSO4・
H20)1kg当たり1800ml程度である。
【0034】また製造された硫酸第一鉄のSO4 /Fe
の比率が先の範囲にある場合には濃硫酸を使用する必要
はない。続いてこれを酸化することにより、最終目的物
であるポリ硫酸鉄を製造することになる。酸化剤は特に
限定されるものではないが、酸素或いは過酸化水素が好
ましく、またその際には触媒を存在させるのが好まし
い。触媒には、水性反応用の酸化反応触媒が使用可能で
あるが、例えば窒素酸化物等が好ましい。
の比率が先の範囲にある場合には濃硫酸を使用する必要
はない。続いてこれを酸化することにより、最終目的物
であるポリ硫酸鉄を製造することになる。酸化剤は特に
限定されるものではないが、酸素或いは過酸化水素が好
ましく、またその際には触媒を存在させるのが好まし
い。触媒には、水性反応用の酸化反応触媒が使用可能で
あるが、例えば窒素酸化物等が好ましい。
【0035】
【実施例】重金属を含有する特殊鋼を使用して金属製品
を製造する技術で実施されている硫酸酸洗表面処理工程
において発生する硫酸廃液から重金属を除去した後、硫
酸第一鉄を回収する実施例を以下に示す。使用した廃液
は表1に示すとおりのものであり、この廃液1975g
(1667ml)の内1334mlを陰極室に供給し、
333mlを陽極室に供給した。その際に使用した電解
槽の陰及び陽の両極室の容量はそれぞれ1500ml及
び500mlである。
を製造する技術で実施されている硫酸酸洗表面処理工程
において発生する硫酸廃液から重金属を除去した後、硫
酸第一鉄を回収する実施例を以下に示す。使用した廃液
は表1に示すとおりのものであり、この廃液1975g
(1667ml)の内1334mlを陰極室に供給し、
333mlを陽極室に供給した。その際に使用した電解
槽の陰及び陽の両極室の容量はそれぞれ1500ml及
び500mlである。
【0036】陰及び陽の電極には、それぞれ鉄及びDS
Aを使用し、隔膜には、通常ろ布として使用されている
ポリエステル製の多孔性膜を使用して電解を実施した。
その際の操作条件は、電流10A、電流密度72mA/
cm2 である。廃液1975g中のFe、Cr及びMo
量は、それぞれ表2に示すとおりである。そして、この
表には、これら金属に関し、廃液、析出金属及び陽極液
中における存在量がどのように変化するかを示すため
に、それぞれにおける量(g数)も示してある。
Aを使用し、隔膜には、通常ろ布として使用されている
ポリエステル製の多孔性膜を使用して電解を実施した。
その際の操作条件は、電流10A、電流密度72mA/
cm2 である。廃液1975g中のFe、Cr及びMo
量は、それぞれ表2に示すとおりである。そして、この
表には、これら金属に関し、廃液、析出金属及び陽極液
中における存在量がどのように変化するかを示すため
に、それぞれにおける量(g数)も示してある。
【0037】
【表2】
【0038】またこの表には、処理にしたがって各金属
の含有量がどのように変化するかをより分かり易く示す
ために、各金属の廃液中の存在量をそれぞれ100%と
し、その後の量の変化を百分率で示してある。さらに、
Cr及びMoについて、Feとの量との比率(すなわち
Cr/FeあるいはMo/Fe)が処理にしたがってど
のように変化するかを表3に示した。
の含有量がどのように変化するかをより分かり易く示す
ために、各金属の廃液中の存在量をそれぞれ100%と
し、その後の量の変化を百分率で示してある。さらに、
Cr及びMoについて、Feとの量との比率(すなわち
Cr/FeあるいはMo/Fe)が処理にしたがってど
のように変化するかを表3に示した。
【0039】
【表3】
【0040】以上のことから、この電解によりクロムお
よびモリブデンが優先的に析出し、その結果硫酸廃液中
からクロムおよびモリブデンが効率的に除去できること
が理解できる。すなわち表2をみると、鉄は廃硫酸中に
存在した鉄の11%しか電解で析出しないのに対し、ク
ロムは65.5%が析出し、モリブデンは33.6%が
析出しており、この両者が電解で優先的に析出し、これ
によって、硫酸廃液中から優先的に除去されていくこと
が理解できる。またそのことは表3のCr/Fe及びM
o/Feの変遷によってもよくわかる。
よびモリブデンが優先的に析出し、その結果硫酸廃液中
からクロムおよびモリブデンが効率的に除去できること
が理解できる。すなわち表2をみると、鉄は廃硫酸中に
存在した鉄の11%しか電解で析出しないのに対し、ク
ロムは65.5%が析出し、モリブデンは33.6%が
析出しており、この両者が電解で優先的に析出し、これ
によって、硫酸廃液中から優先的に除去されていくこと
が理解できる。またそのことは表3のCr/Fe及びM
o/Feの変遷によってもよくわかる。
【0041】電解後陰極室から硫酸廃液を取り出し、こ
れに濃度50重量%の濃硫酸4355mlを添加して、
全硫酸濃度が41重量%となるように調整した。ついで
温度78〜82℃、圧力180〜200mmHgに維持
して減圧下で蒸発濃縮を行った。濃縮後冷却速度5℃/
hで5℃まで冷却して、硫酸第一鉄の結晶を析出させ
た。析出した結晶は、底部排出型遠心分離機で遠心分離
し硫酸第一鉄結晶FeSO4・H2O108gを得た。
れに濃度50重量%の濃硫酸4355mlを添加して、
全硫酸濃度が41重量%となるように調整した。ついで
温度78〜82℃、圧力180〜200mmHgに維持
して減圧下で蒸発濃縮を行った。濃縮後冷却速度5℃/
hで5℃まで冷却して、硫酸第一鉄の結晶を析出させ
た。析出した結晶は、底部排出型遠心分離機で遠心分離
し硫酸第一鉄結晶FeSO4・H2O108gを得た。
【0042】得られた結晶等の成分を分析し、表2と同
様に、Fe、CrおよびMoについて、廃液から処理が
進むにしたがい、結晶及びろ液中ではどのように変化す
るかをそれぞれについて、量(g数)及び百分率で示す
と表4のとおりである。またこれらについて、表3同様
にCr及びMoの量をFeの量との比率(すなわちCr
/FeあるいはMo/Fe)で示すと表5のとおりであ
る。
様に、Fe、CrおよびMoについて、廃液から処理が
進むにしたがい、結晶及びろ液中ではどのように変化す
るかをそれぞれについて、量(g数)及び百分率で示す
と表4のとおりである。またこれらについて、表3同様
にCr及びMoの量をFeの量との比率(すなわちCr
/FeあるいはMo/Fe)で示すと表5のとおりであ
る。
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】この両表から、硫酸廃液中に存在したクロ
ムおよびモリブデンが事前に除去され、その結果クロム
については最終的に得られた硫酸第一鉄中には当初廃液
中に存在した量の0.3%しか残存しておらず、またモ
リブデンについては0.8%しか残存していないことが
わかる。以上のとおりであるから、この発明によって毒
性のあるクロム及びモリブデンが除去された硫酸第一鉄
が得られることがよく理解できる。
ムおよびモリブデンが事前に除去され、その結果クロム
については最終的に得られた硫酸第一鉄中には当初廃液
中に存在した量の0.3%しか残存しておらず、またモ
リブデンについては0.8%しか残存していないことが
わかる。以上のとおりであるから、この発明によって毒
性のあるクロム及びモリブデンが除去された硫酸第一鉄
が得られることがよく理解できる。
【0046】
【発明の効果】この発明は、クロムあるいはモリブデン
のいずれか一つを少なくとも含む多くの各種の重金属を
含有する特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工程で発生
する硫酸廃液を処理する廃酸処理技術であって、前記両
金属を含む各種重金属成分を比較的簡便な方法で予め除
去し、ついで残る多量の第一鉄を含有する硫酸廃液中か
ら、重金属成分を低減させた純度の高い硫酸第一鉄を回
収することを可能としたものである。
のいずれか一つを少なくとも含む多くの各種の重金属を
含有する特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工程で発生
する硫酸廃液を処理する廃酸処理技術であって、前記両
金属を含む各種重金属成分を比較的簡便な方法で予め除
去し、ついで残る多量の第一鉄を含有する硫酸廃液中か
ら、重金属成分を低減させた純度の高い硫酸第一鉄を回
収することを可能としたものである。
【0047】また、その結果得られた硫酸第一鉄につい
ては、排水の凝集剤として既に多くの企業等で利用され
ているポリ硫酸鉄の原料とすることができる程度に純度
の高いものを得ることを可能とした。特に排水処理にお
いて、その排出が厳しく制限されているクロム及び今後
規制が強化されるといわれているモリブデンを低減させ
ることができたことは大きなメリットのある発明であ
る。
ては、排水の凝集剤として既に多くの企業等で利用され
ているポリ硫酸鉄の原料とすることができる程度に純度
の高いものを得ることを可能とした。特に排水処理にお
いて、その排出が厳しく制限されているクロム及び今後
規制が強化されるといわれているモリブデンを低減させ
ることができたことは大きなメリットのある発明であ
る。
【図1】この発明の処理方法のフロー図であり、特殊鋼
硫酸酸洗廃液を処理して硫酸第一鉄結晶を取得するまで
のプロセスを示す。
硫酸酸洗廃液を処理して硫酸第一鉄結晶を取得するまで
のプロセスを示す。
【表1】
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C02F 1/62 C23G 1/36 C23G 1/36 C02F 1/46 101B (72)発明者 高橋 信雄 東京都千代田区神田駿河台2−8 日鉄鉱 業株式会社内
Claims (7)
- 【請求項1】 少なくともクロム及び/又はモリブデン
を含有する特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工程から
排出される硫酸廃液を陰極室に導入して隔膜電解を行っ
て陰極に重金属を析出させる工程、重金属を析出・分離
した硫酸廃液を陰極室から取り出し蒸発濃縮する工程、
濃縮硫酸廃液を冷却して硫酸第一鉄結晶を析出させる工
程、析出した硫酸第一鉄結晶を分離する工程からなる特
殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する方法。 - 【請求項2】 硫酸廃液が少なくともクロムを含有する
特殊鋼を硫酸にて酸洗する表面処理工程から排出される
ものである請求項1記載の特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理す
る方法。 - 【請求項3】 隔膜に鉄イオンの通過を阻止する多孔質
の布を使用する請求項1又は2記載の特殊鋼硫酸酸洗廃
液を処理する方法。 - 【請求項4】 重金属を析出・分離した硫酸廃液を陰極
室から取り出した後濃硫酸を混合し、次いで蒸発濃縮を
行う請求項1、2又は3記載の特殊鋼硫酸酸洗廃液を処
理する方法。 - 【請求項5】 濃硫酸が硫酸第一鉄結晶分離後の母液で
ある請求項4記載の特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する方
法。 - 【請求項6】 蒸発濃縮を温度50〜90℃で減圧蒸発
濃縮により行う請求項1ないし5のいずれか1に記載の
特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する方法。 - 【請求項7】 冷却する際の到達温度を0〜25℃とす
る請求項1ないし6のいずれか1に記載の特殊鋼硫酸酸
洗廃液を処理する方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9218980A JPH1147795A (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9218980A JPH1147795A (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1147795A true JPH1147795A (ja) | 1999-02-23 |
Family
ID=16728389
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP9218980A Withdrawn JPH1147795A (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 特殊鋼硫酸酸洗廃液を処理する方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1147795A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002332583A (ja) * | 2001-05-07 | 2002-11-22 | Nippon Paint Co Ltd | リン酸塩皮膜化成処理の水洗水の処理方法及び処理装置 |
CN100389078C (zh) * | 2006-01-24 | 2008-05-21 | 杨淙垣 | 钢板酸洗废液的再生处理方法 |
CN104925986A (zh) * | 2015-04-21 | 2015-09-23 | 杭州科瑞特环境技术有限公司 | 钢材行业酸洗废液及冲洗废水近零排放处理系统及其工艺 |
CN111888831A (zh) * | 2020-06-24 | 2020-11-06 | 刘发业 | 一种废硫酸的回收处理装置及其应用 |
-
1997
- 1997-07-31 JP JP9218980A patent/JPH1147795A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002332583A (ja) * | 2001-05-07 | 2002-11-22 | Nippon Paint Co Ltd | リン酸塩皮膜化成処理の水洗水の処理方法及び処理装置 |
CN100389078C (zh) * | 2006-01-24 | 2008-05-21 | 杨淙垣 | 钢板酸洗废液的再生处理方法 |
CN104925986A (zh) * | 2015-04-21 | 2015-09-23 | 杭州科瑞特环境技术有限公司 | 钢材行业酸洗废液及冲洗废水近零排放处理系统及其工艺 |
CN111888831A (zh) * | 2020-06-24 | 2020-11-06 | 刘发业 | 一种废硫酸的回收处理装置及其应用 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040409 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20070718 |