JP4716581B2 - 半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムとその製造方法及びその使用 - Google Patents

半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムとその製造方法及びその使用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流・電圧印加での使用に際し、所望する表面抵抗率と体積抵抗率とが個々に独立的に自由に得られることを可能にし、電気抵抗バランスのとれた半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムと、その製造方法及びその使用に関するものである。該フイルムは、例えばタンデム式カラー複写機の紙搬送兼転写用ベルトとしての使用が有効である。
【0002】
【従来の技術】
例えばゼログラフィーのカラー複写に関し、近年感光ドラム上のトナー顕像を中間に転写ベルトを介して(複写)紙に転移し定着する、いわゆる中間転写方式を取り入れた機種が多くなってきている。この方式の最大の特長は、紙のサイズを選ばず厚手紙や葉書、封筒のようなものでもコピーできることであるが、この方式に次の二つのタイプがある。
その一つは該トナー顕像を一旦該ベルトに転写(一次転写)して後、これを紙に(二次転写)転写して定着部に送って定着固定する方法、その二つは紙を該ベルトに吸着しつつ感光ドラムの下まで搬送し、該ベルト上の紙に転写して、最後に定着部に送って定着固定する方法がある(紙搬送兼転写方式とか、フラット搬送方式とかとも呼んでいる)。ここで該ベルトに対峙する感光ドラムは、1胴でもって構成するか、4個をタンデムに横設又は縦設して構成されている。
【0003】
前記ゼログラフィーのカラー複写手段では、いずれの方式も感光ドラム上のトナー顕像の形成から始まって、ベルトによる紙の移動、該顕像の紙への転写の全てが帯電によるクーロン力の作用によって行われている。その作用は該ベルトの有する電気抵抗特性(特に表面抵抗率と体積抵抗率)の微妙なバランスによるところが多い。例えば、表面抵抗率が体積抵抗率よりも大きいベルトでは、特殊環境下(低温・低湿)での複写や両面複写するような場合に、転写画像に乱れがで易いとか、ベルト上に静電吸着された紙が剥離の段階で、離れ難くなると言ったことがある。これは該ベルト表面を流れる電流よりも厚み方向に流れる電流の方が流れ易く、その結果過剰に電流が流れた場合は、その分厚み方向に流れて行く結果として起こるではないかと考られるが、明白ではない。
【0004】
一般に前記ベルトとしては、導電性カーボンブラックにより付与された半導電性ポリイミド系と同様に付与された半導電性フッ素樹脂系が知られている。そしてこれが一層である場合もあれば、二層で構成されている場合もある。両者は基本特性において大きな差があり、いずれを選択するかは複写機メーカー(各機種)の判断によっている。いずれのベルトでも前記のバランスの問題はあり、半導電性ポリイミド系ベルトでは既に解決を見、本願出願人によって既に特許出願も行っているところである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、例えば導電性カーボンブラックにより付与された半導電性フッ素樹脂系ベルトでは、前記の表面と厚み方向との電流の流れのバランスの問題については、未だ解決されていないのが実状である。
又、最近では複写機のより高度化、機種の多様化によってベルトに求められる電気抵抗特性も様々である。つまり各メーカーによって求められるベルトの表面抵抗率と体積抵抗率とは異なり、しかも表面抵抗率はこの値で体積抵抗率はこの値でと、個々に独立的に要求されるようになってきてもいる。しかし従来の技術では表面抵抗率と体積抵抗率は連動し、前者が決まれば自ずと後者も決まってしまい、この要求にも答えられていないのも問題の一つであった。
更に、該フッ素樹脂系ベルトでは、一般に付与された電気抵抗にバラツキがで易い傾向があり、この点でも十分に解決されていないのも実状である。
【0006】
本発明は半導電性フッ素樹脂系に関し、前記の3つの問題点を主たる課題として、これを解決するために鋭意検討して見い出されたものである。その解決手段は次の通りである
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
即ち本発明は、請求項1に記載する半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムであり、これは全体の有する体積抵抗率の絶対値が表面層の有する表面抵抗率の絶対値以上を有してなる少なくとも二層で構成されているものである。
【0008】
又、請求項1に従属する発明として請求項2〜4に記載する発明も提供する。
【0009】
又、前記各請求項に記載する半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムの製造方法の発明として、請求項5を提供する。
つまり、7〜30重量%の導電性カーボンブラック粉体が、融点200〜290℃のフッ素樹脂に、溶融混練による複数回の繰り返しによって混合分散されてなる半導電性フッ素樹脂粒Aと5〜28重量%の範囲で、且つ該フッ素樹脂粒Aの含有する導電性カーボンブラック粉体よりも少量の導電性カーボンブラック粉体が、融点200〜290℃のフッ素樹脂に、溶融混練による複数回の繰り返し混合分散されてなる半導電性フッ素樹脂粒Bとを成形原料として、これを二層丸ダイ付き押出機に同時に供給し該半導電性フッ素樹脂粒Aが表面層に、該半導電性フッ素樹脂粒Bが裏面層になるように溶融共押出しつつ、実質的に延伸することなく冷却して引き取ることを特徴とする。
【0010】
又、半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムの有効な用途の一つとして請求項6を提供する。以上の提供によって本発明は達成されるが、これの詳細を次の実施形態で説明することにする。
【0011】
【発明の実施の形態】
前記請求項1〜4から説明する。
まず本発明の半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルム(以下半導電SL多層フイルムと呼ぶ)のベースを形成する、フッ素樹脂(以下F樹脂)は次のようなものであある。
このF樹脂は一般に知られているもので特別のものではないが、半導電化のために使用される、例えば後述する導電性カーボンブラック(以下CB粉体)との混合分散性、それによって発現する電気抵抗のより安定性の確保、そして少なくとも二層での同時積層がより円滑に高厚み精度をもって形成できる等の点を考慮して、より好ましいものを選択するのがよい。かかる点から考慮すると融点200〜290℃を有するF樹脂が良い。具体的にはポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン等のホモポリマ、テトラフルオロエチレンとエチレン、塩化三フッ化エチレンとエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン等との各二元コポリマ、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロアルキルビニルエーテル等との三元コポリマが例示できる。より好ましいのはテトラフルオロエチレンとエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン等のコポリマに見られる融点260〜280℃の二元コポリマである。
【0012】
そして前記F樹脂は、各層が半導電性をもって無端管状(継ぎ目なし)で少なくとも二層からなるフィルム体であるが、まず無端管状であることで、どの場所をとって見ても同一の特性を有しているので、付与された特性がバラツクとか、ベルト回転使用で破損すると言ったような危惧もない。
【0013】
そして各層は半導電性、つまり各層はある表面抵抗率をもって成っているが、その条件は層全体として有する体積抵抗率の絶対値が、表面層の有する表面抵抗率の絶対値以上になるような構成にあると言うことである。この条件にある半導電SL多層フイルムに限って前記課題は解決されることになる。従って、仮に二層であっても体積抵抗率の絶対値が小さければ、前記する従来の単層又は二層と同じ機能を有するものと言うことになり、本発明の課題は解決されない。
ここで両者の抵抗率の値としては、該多層フイルムの用途によって異なる。例えば請求項2で提供する、体積抵抗率としては10〜1014Ω・cm、該表面抵抗率としては10〜1014Ω/□を提示することができるが、これは例えば請求項6で提供する、紙搬送兼転写用ベルトとして使用する場合に求められる望ましい範囲であり、より好ましくは体積抵抗率1010〜1012Ω・cm、該表面抵抗率としては1010〜1012Ω/□である。このような電気抵抗率関係にある事で、例えばあるユーザーが紙搬送兼転写用ベルトとして表面の抵抗率として1010Ω/□桁一定にして、体積抵抗率として1011Ω・cmと1012Ω・cm桁のもの2本のF樹脂系無端管状ベルトが欲しいとの要望があった場合、容易に供給することができると言うことになる。
【0014】
前記体積抵抗率と表面抵抗率の絶対値の関係は、好ましくは裏面に設けられる裏面層の表面抵抗率を変えることで達成できる。この表面抵抗率は、半導電性を付与するのに使用する導電剤、例えばCB粉体の混合量を適宜変えれば良いと言うことになる。つまり体積抵抗率は、裏面層の有する表面抵抗率に依存することになる。ここで裏面層の有する表面抵抗率を例示すると、10〜1015Ω/□の範囲が示され(請求項4)、この範囲で裏面層の表面抵抗率を変えれば、体積抵抗率として10〜1014Ω・cmのものが得られると言うことになる。勿論裏面層の表面抵抗率が変わったからといって表面層のそれが変わることはない。
尚、前記例示する表面層の表面抵抗率と裏面層の表面抵抗率を見ると、後者が一桁大きいが、これは好ましい例である。両層が同じ桁数の表面抵抗率であった場合でも、得られる全体の有する体積抵抗率の絶対値は、表面層の有する表面抵抗率の絶対値と同一か又は大きくなる場合もある。実際に両層の表面抵抗率が同一である場合、体積抵抗率の絶対値を見ると、表面層の表面抵抗率の絶対値よりも若干大きく発現される。この理由は良く判らない。
【0015】
本発明における半導電SL多層フイルムは、半導電性の表面層と半導電性の裏面層との少なくとも二層からなる。従ってそれが三層であっても良いが、その場合は中間層の表面抵抗率は一定にしておき、最裏面層(三層目)の表面抵抗率を変えることで、体積抵抗率を変えることになる。この場合中間層(二層目)もある表面抵抗率を有しているので、その分体積抵抗率に積算されることになる。従ってそのことを事前に知って、最裏面層の表面抵抗率を変える事を考ねばならない。
【0016】
尚各層の厚みは、特にベルト状での使用の場合に必要とされる、適度の柔軟性を維持しつつある硬さもあること、そして十分な耐屈曲性と耐絶縁破壊性等もあること等の点から考慮して決めるのが良く、この点から見れば全厚として約50〜300μm、好ましくは80〜230μmとするのが良い。但しこの範囲の中での各層は、いずれか一方が少なくとも5μm以上になるようにするのが良い。
【0017】
又前記多層とは言っても好ましいのは二層である。これは三層、更にそれ以上では中間層の有する表面抵抗率が体積抵抗率に増々加算されるようになり、その結果、最裏面層で行う表面抵抗率の変化の幅が狭くなり、本発明の体積抵抗率が自由に変えられる範囲が小さくなることによる。
【0018】
前記各層の半導電化は、F樹脂にCB粉体を混合分散することで好ましく行われるが(請求項3)、CB粉体と言ってもその製造原料(天然ガス、アセチレンガス、コールタール等)と製造条件(燃焼条件)とによって種々の物性(電気抵抗、揮発分、比表面積、見掛け比重、粒径、pH値、DBP吸油量、ストラクチャーの発達の程度、導電指標の高低等)を有したものがある。
本発明では電気抵抗としては10−1Ω・cm程度で、可能な限りストラクチャーの発達が良く、pH値が高く(揮発分が少ない)、見掛け比重が小さく、粒径の小さいCB粉体であるのがよい(アセチレン系に多い)。このようなものを選ぶことで、ムラなく安定した半導電性が付与でき易いのは勿論、表面精度(平滑性)がより良化する。
尚CB粉体の混合量は、どのような値で表面層の表面抵抗率と全体の体積抵抗率を所望するかによって決まるが、具体的には次に説明する製造方法で例示する。
【0019】
次に前記半導電SL多層フイルムの製造手段について説明する。
該手段については、種々あるので特定はされないが、しかしその中でも請求項5で提供する方法が好ましい。ここではこの製造方法を中心に説明することにする。
【0020】
まず成形原料として半導電性フッ素樹脂粒Aと同樹脂粒Bとが調製されるが、該樹脂粒Aは次のように調製される。
前記好ましくは例示する融点200〜290℃、更には260〜280℃のF樹脂の粉体に、前記選ばれたCB粉体を約7〜30重量%(該F樹脂の粉体に対して)、好ましくは10〜25重量%添加し混合分散する。ここで混合分散は溶融混練による複数回の繰り返しによって行われる。溶融混練は、両者の混合粉体を2軸の溶融押出機に供給して溶融しつつ混合することで好ましく行われる。この溶融混練で押し出される状態は一般にガットであり、従ってこれをペレット状にカットしてペレット粒として得る。そして単に一回溶融混練に留まらずに、一回目のペレット粒を再び押出機に供給して溶融混練してペレット粒として得るのが良い。こ反復回数は3〜6回が好ましい。この反復溶融混練による効果は、特に電気抵抗の非バラツキと、経時及び環境(特に高温多湿)変化に対して、安定した電気抵抗性の付与が好ましく行われるが、その回数も二回では十分とは言えず、逆に7回以上になるとこの効果は減少傾向になると言うことである。かくして調製された該樹脂粒Aが、フイルム状に成形されると、付与される表面抵抗率は約10〜1014Ω/□の範囲と言ったところである。勿論該CB粉体7〜30重量%をはずれた範囲が除かれるのではないが、成形性が悪くなるとか、安定した表面抵抗が得られ難い等の理由で好ましいとは言えない。
【0021】
そしてもう一つの半導電性フッ素樹脂粒Bは次のように調製される
これも溶融混練については、前記樹脂粒Aと同じ理由で複数回の反復にて行われるが、CB粉体の混合量については異なる。混合率は約5〜28重量%、好ましくは8〜20重量%の範囲とし、しかもこの範囲で常に該樹脂粒Aの含有する混合量よりも少ない量で、前記F樹脂粉体に混合し分散するようにする。例えば前記樹脂粒Aが15重量%含有したとすると、該樹脂粒Bは14重量%以下含有することになる。これにより二層で得られる管状フイルムの体積抵抗率(約10〜1015Ω・cm)の絶対値は、表面層(該樹脂粒Aによる)の表面抵抗率の絶対値よりも大きいものになり、体積抵抗率は自由自在に変えられると言うことになる。
尚、該樹脂粒A、B共にF樹脂の短所又は新たな特性の付与を目的として第三成分の添加は許容される。例えばF樹脂自身が一般に若干軟質であるので、これを補う(固くする)為に例えばメチルメタアクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂粉体の微量添加の例である。
【0022】
次に前記調製された二種の半導電性フッ素樹脂粒Aと同Bは、二層丸ダイ付き押出機に同時に供給され共押出して積層されるが、この時該樹脂粒Aは表面層(外層)に、該樹脂粒Bは裏面層(内層)になるように供給する。押し出しは、一般に二台の単軸溶融押出機を使って、一つの二層丸ダイから同時に押し出される。押し出し温度は、一般に使用されるF樹脂の有する融点よりも40〜60℃高い温度で行う。最終得られる半導電SL多層フイルムの全厚が、50〜300μmの範囲におさまるように各層の環状ノズル幅は設定されるが、実質的無延伸にて引き取るために、各層の厚みに対してあまりにも大きい幅は要しない。例えば多層フイルムの表面層の厚さ約75μm、裏面層の厚さ約75μmとして得る場合は、各ノズル幅は約10μmの二層丸ダイを使う。
そして、該丸ダイからは常温の空気中に押出されるが、形状維持(内外径の寸法)、裏表面のより優れた平滑性等を得るためには、インサイドにサイジングマンドレルを配置して、形状を維持しつつ内面を滑走させながら冷却するのがよい。該マンドレルの温度は30〜70℃程度とするのが良い。
【0023】
前記サイジングマンドレルを経て冷却された二層管状フイルムは、後方に設けられた引き取り機にて引き取られるが、この前で延伸(又は加熱延伸)するようなことを行っては良くない。ここで延伸が行われると、特に折角安定した状態で付与された電気抵抗が乱れて不安定な状態にもどってしまう危険性があるからである。従って、かかる危険性のない範囲での僅少の延伸は許容されるにしても延伸は良くない。
【0024】
尚、前記二成分粉体の溶融混練にしても、これにより得られた成形原料にしても、押出機に供給する際には、十分に乾燥させて供給するのがよい。微細な気泡の混入も防止するためである。
【0025】
本発明の半導電SL多層フイルム前記の通りであるが、優れた帯電性と適度の徐電性、耐熱性、耐薬品性、優れた離型性、ベルトとしての有効な機械的特性等を有することから、その用途は多方面に及ぶ。請求項6に挙げるタンデム式カラー複写機における紙搬送兼転写用ベルトとしての使用は、この特性が有効に生かされる例である。
尚該ベルトのタンデム式カラー複写機への使用は、機構等に特別の変更はなく装着されるので、構造の説明は割愛する。
【0026】
【実施例】
以下に比較例と共に実施例によって更に詳細に説明する。
尚、本例における表面抵抗率(Rs)、体積抵抗率(Rv)及び画質についてはは次の条件で測定した。
●Rs(Ω/□)、Rv(Ω・cm)
アドバンテスト社製の電気抵抗測定計“Ra8320”を用いて、印加電圧500Vの下で10秒後に測定した値。
●画質
サンプルを四連タンデム式カラー複写機の紙搬送転写ベルトとして実装し、該ベルトの裏面から20μmAの直流電流を印加して、複写速度12枚/分で単色で複写し、得られた画像を目視でチェックした。原稿と比較して、色ムラと色抜けを見て有りと無しとした。
尚、ここで使用した原稿(A3サイズ)は赤と黒で各々作製した、50%ハーフトンとベタ画像をもって作製されたものである。従って複写はブラックとマゼンタの二種を使い、各原稿に対して各々単色複写してチェックした。
【0027】
(実施例1)
まずエチレンと4フッ化エチレンとのコポリマ(旭硝子株式会社製のアフロンCOP−55AXT、融点260℃)粉体にCB粉体(体積抵抗率10−1Ω・cmのアセチレンブラック)を17重量%と15.5重量%とを添加して二つの混合粉体を調製し、そしてこの各々の混合粉体を二軸溶融押出機(バレル温度220〜300℃)に供給して溶融混練しつつペレタイズしてペレット粒として得た。そしてこの第一回で得られたペレット粒を再び該押出機に供給し二回目の溶融混練を行った。この繰り返しを更に二回行い、合計四回行なって成形原料とした。ここで17重量%のCB粉体含有のペレットを17粒Aと呼び、15.5重量%のそれを15.5粒Bと呼ぶ。
【0028】
そして前記得た二種の17粒Aと15.5粒Bとを、次の条件で同時共押出しを行い、二層の半導電SL多層フイルムを得た。
◎溶融押出装置
二層丸ダイ(構造・ダイ内積層方式)に原料同時供給する2台の単軸押出機が設置され、そして該ダイの吐出口には、インナーサイシングの為に温度50℃に温調されたサイジングマンドレルが配置され、その後に該丸ダイを通過しつつ、常温に冷却され送られてくる管状フイルムを受けて引き取る為の半円形の受台が配置されている。
尚、該二層丸ダイは表面層に相当する円形ノズルの内径は210mm、ノズル幅10μm、そして裏面層に相当する円形ノズルの内径は209.8mm、ノズル幅10μmでもってなっている。
◎押出し条件
二台の前記押出機のバレル温度は200〜300℃(原料供給口から出口に向かって)、二層丸ダイの温度は300℃に制御して、そして成形原料の17粒Aは表面層を、15.5粒Bは裏面層を形成するように、各供給量は50g/分として同時に押出した。冷却されつつ半円形の受台上を滑走して送られてくる積層管状フイルムは実質的無延伸で引き取った(所定サイズにカットしながら引き取る)。
【0029】
得られた半導電二層SLフイルムの全厚は150±10μm(表面層50μm)、内径は205mmであった。そして全体の有するRv、表面層の有するRs、裏面層の有するRsについて表1にまとめた。
【0030】
(実施例2)
実施例1において表面層に相当するCB粉体の混合量は同じで、これに対する裏面層に相当するCB粉体の混合量を10.0重量%と13.0重量%の二つに変える以外は、同一条件で各々押出し成形して相当する二本の半導電SL多層フイルムを得た。ここで裏面層10.0重量%含有によりなる該フイルムは10SLフイルム、13.0重量%含有のそれは13SLフイルムと呼ぶ。
【0031】
前記得られた10SLフイルムの全厚は、150±11μm(表面層50μm)、内径は205mmであった。一方13SLフイルムについては、全厚150±11μm(表面層40μm)、内径は205mmであった。
そして各フィルムの、全体の有するRv、表面層の有するRs、裏面層の有するRsについて表1にまとめた。
【0032】
以上実施例1と2は、表面層のRsは1010Ω/□桁で、Rvを1011Ω・cm桁と1012Ω・cm桁と1013Ω・cm桁で、各々積層成形された3本の半導電二層SLフイルムが欲しいとの要求があった場合の例と言うことになる。
尚、例えば表面層のRsを10Ω/□桁にして、これに対してRvは1011Ω・cm桁と1012Ω・cm桁に調整した2本の半導電二層SLフイルムが欲しいとの要求があった場合は、各々CB粉体の混合量を変えて同様に成形すればよいことになる。
【0033】
(比較例1)(表面層のRsの絶対値がRvの絶対値より大きい場合)
実施例1において、同様にしてまず17粒Aと15.5粒Bとを得た。そしてここでは逆に17粒Aを裏面層に、15.5粒Bを表面層になるように同様にして共押出しを行って半導電性二層無端管状フッ素樹脂フイルムを得た。
得られた該フイルムの全厚は150±13μm(表面層50μm)、内径は205mmであった。そして全体の有するRv、表面層の有するRs、裏面層の有するRsについて表1にまとめた。
実施例1に対して体積抵抗率のバラツキも大きい結果にもなっている。
【0034】
【表1】
Figure 0004716581
【0035】
(実施例3)(画質テスト)
実施例1で得た半導電二層SLフイルム(以下実例1フイルムと呼ぶ)と比較例1で得た半導電性二層無端フッ素樹脂フイルム(以下比較1フイルムと呼ぶ)とを各々幅320mmにカットして、紙搬送転写ベルトとして仕上げ、これをタンデム式カラー複写機に実装して、500枚の複写を行った。
【0036】
前記各ベルトについて、複写された中、490枚(最初の10枚は捨てる)の画質をチェックした。その結果実例1フイルムでの複写では、各色のハーフトーンとベタ画像のいずれも色ムラもなく、白抜けも見られずに、均一にシャープさももって着色されていた。一方比較1フイルムでの複写では、所々に色ムラも、白抜けも見られた。又特にハーフトーンでは、各色とも網点エッジが薄れ気味でシャープさに欠けていた。
【0037】
【発明の効果】
本発明は前記の通り構成されているので、次のような効果を奏する。
表面と全体の有する電気抵抗(表面抵抗率と体積抵抗率)のバランスがより改善されたことで、例えば複写機の紙搬送兼転写ベルトとして使用すると、画質がより改善され、美麗に複写されるようになった。
【0038】
表面の表面抵抗率と全体の体積抵抗率に関し、各独立して得られるようになり、複写機メーカー(各機種)からのいずれの要望にも容易に答えられるようになった。
又電気抵抗のバラツキもより少なくなり、ムラなく均一に安定して帯電できるようになった。
【0039】
ある物体を帯電作用(静電吸着力)をもってベルト搬送することが、従来に増してより安定して確実に行えるようになったので、種々の用途に一層有効に使用できるようになった。例えばタンデム式カラー複写機の紙搬送兼転写用ベルトとしての使用がより有効になった。

Claims (4)

  1. 全体の有する体積抵抗率の絶対値が表面層の有する表面抵抗率の絶対値以上を有してなり、全ての層がフッ素樹脂層であることを特徴とする半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムであって、導電性カーボンブラックにより付与された表面抵抗率が10 〜10 14 Ω/□である半導電性フッ素樹脂表面層と、導電性カーボンブラックにより付与された表面抵抗率が10 〜10 15 Ω/□である半導電性フッ素樹脂裏面層の少なくとも二層からなる、半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルム。
  2. 前記体積抵抗率が10〜1014Ω・cmの範囲によりなる請求項1に記載の半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルム。
  3. 7〜30重量%の導電性カーボンブラック粉体が、融点200〜290℃のフッ素樹脂に、溶融混練による複数回の繰り返しによって混合分散されてなる半導電性フッ素樹脂粒Aと、5〜28重量%の範囲で、且つ該フッ素樹脂粒Aの含有する導電性カーボンブラック粉体よりも少量の導電性カーボンブラック粉体が、融点200〜290℃のフッ素樹脂に、溶融混練による複数回の繰り返しによって混合分散されてなる半導電性フッ素樹脂粒Bとを成形原料として、これを二層丸ダイ付き押出機に同時に供給し該半導電性フッ素樹脂粒Aが表面層に、該半導電性フッ素樹脂粒Bが裏面層になるように溶融共押出しつつ、実質的に延伸することなく冷却して引き取ることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムの製造方法。
  4. タンデム式カラー複写機における紙搬送兼転写用ベルトとしての請求項1又は2に記載の半導電性無端管状多層フッ素樹脂フイルムの使用。
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