JP4714064B2 - 水素精製フィルタの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水素精製用フィルタとその製造方法に係り、特に各種の炭化水素系燃料を水蒸気改質して水素リッチガスを生成するための改質器等に使用する水素精製フィルタと、これを簡便に製造することができる製造方法に関する。
近年、地球規模の環境やエネルギー・資源の問題が顕在化し、これらと産業との調和を図るエネルギー供給システムの一つとして燃料電池が注目されている。燃料電池は、予め用意した水素ガスや、天然ガス、ガソリン、ブタンガス、メタノール等の炭化水素系燃料を改質して得られる水素リッチガスを、空気中の酸素と電気化学的に反応させて直接電気を取り出す発電装置である。上記の水素リッチガスを用いる燃料電池は炭化水素系燃料を水蒸気改質して水素リッチガスを生成する改質器と、電気を発生させる燃料電池本体と、発生した直流電気を交流に変換する変換器等で構成されている。
このような燃料電池は、燃料電池本体に使用する電解質、反応形態等により、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体電解質型燃料電池(SOFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)の5種類がある。このうち、固体高分子型燃料電池(PEFC)は、リン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)等の他の燃料電池と比較して、電解質が固体である点において有利な条件を備えている。
しかし、固体高分子型燃料電池(PEFC)は触媒に白金を使用し、かつ、作動温度が低いため、電極触媒が少量のCOによって被毒し、特に高電流密度領域において性能劣化が著しいという欠点がある。このため、改質器で生成された改質ガス(水素リッチガス)に含有されるCO濃度を10ppm程度まで低減する必要がある。
改質ガスからCOを除去して水素を精製する手段の一つとして、Pd合金膜を備えた水素精製フィルタが開発されており、Pd合金膜は、膜にピンホールやクラック等がなければ原理的には水素のみが透過可能であり、改質ガス側を高温高圧(例えば、500℃、3〜10kg/cm2(0.29〜0.98MPa))とすることにより、低水素分圧側に水素を透過する。
上記のようなPd合金膜を使用した水素精製法では、水素の透過速度は膜厚に反比例するため薄膜化が要求されるが、Pd合金膜は機械的強度の面から、単体では30μm程度までの薄膜化が限度であり、膜厚が十数μm程度のPd合金膜を使用する場合には、Pd合金膜の低水素分圧側に多孔構造の支持体を配置していた。しかし、Pd合金膜と支持体とを別体で改質器に装着するので、良好なシーリングを得るための作業性が悪く、また、Pd合金膜と支持体との擦れが生じてPd合金膜の耐久性が十分ではないという問題があった。
上記の問題を解消するために、支持体上に直接Pd合金膜を形成し、Pd合金膜と支持体とを一体化した水素精製フィルタが開発されている。例えば、金属支持体の片面にPd合金膜を形成し、この金属支持体に片面エッチングにより細孔を形成して第1支持体とし、上記のPd合金膜上に、エッチングにより予め貫通孔が形成された第2支持体を積層して製造された水素精製フィルタがある(特許文献1)。また、仮支持体上にPd合金膜を形成し、このPd合金膜上にレジストパターンを形成し、次に、Pd合金膜の30〜95%を覆うように、微細な開口部を有する金属ベース膜を電解めっきで形成し、その後、仮支持体を除去することにより製造された水素精製フィルタがある(特許文献2)。
特開平7−124453号公報 特開2002−292259号公報
しかしながら、上述の特許文献1の水素精製フィルタでは、片面エッチングにより金属支持体(第1支持体)に細孔を形成するので、形成された細孔の内径は、Pd合金膜側が小さいものとなり、水素透過効率が低いという問題があった。一方、水素透過効率を高めるため、細孔の内径を大きくすると、Pd合金膜の形成時の残留応力によって第1支持体に反りが発生し易くなる。さらに、第2支持体との接合のために、Pd合金膜の外周部位に枠部材を設け、また、第2支持体の外周部にも枠部材を設け、この枠部材を溶接して一体化するので、第2支持体とPd合金膜は接合されておらず、第2支持体の支持体としての機能が十分に発現されず、強度が低いという問題があった。
また、上述の特許文献2の水素精製フィルタでは、仮支持体上に成膜されたPd合金膜の密着力が弱く、工程中に剥離を生じ易いという問題があった。また、レジストパターンの厚みが薄いと、電解めっきにて形成する金属ベース膜がレジストパターンの開口部を塞いでしまい、一方、レジストパターンを厚くすると、形成した金属ベース膜の微細な開口部にレジストが残存し易いという問題もあった。さらに、Pd合金膜上への金属ベース膜の電解めっきによる形成に長時間を要し、また、充分な強度を有する厚みの大きな金属ベース膜の形成が困難であるという問題があった。
また、従来の水素精製フィルタは、高温下での長時間の使用により、Pd合金膜中へ支持体の構成材料が拡散して水素透過効率が低下するという問題もあった。
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、水素精製において優れた水素透過効率を示す水素精製フィルタと、このようなフィルタを簡便に製造するための製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の水素精製フィルタの製造方法は、仮支持体の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜を形成する膜形成工程と、前記仮支持体を選択エッチングすることができる導電性部材からなる支持体部材に、両面エッチングにより複数の孔部を穿設して多孔支持体とするエッチング工程と、前記多孔支持体を前記水素透過膜に間隙を設けて対向させ、前記間隙部に電解めっきによりPdまたはPd合金を析出させてPd層またはPd合金層を形成することにより、前記多孔支持体を前記水素透過膜に接合する接合工程と、前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記エッチング工程と前記接合工程との間に、前記多孔支持体の一方の面に導電性の拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程を有し、前記接合工程では、前記多孔支持体に形成された前記拡散防止層を前記水素透過膜に間隙を設けて対向させるような構成とした。
また、本発明の水素精製フィルタの製造方法は、仮支持体の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜を形成する膜形成工程と、前記仮支持体を選択エッチングすることができる支持体部材に、両面エッチングにより複数の孔部を穿設して多孔支持体とするエッチング工程と、前記多孔支持体の一方の面を除く全面にレジスト膜を形成し、また、前記多孔支持体の孔部に対応するように前記水素透過膜上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記多孔支持体のレジスト膜非形成面と前記水素透過膜のレジスト膜非形成部位との間に間隙を設けるように前記多孔支持体を前記水素透過膜に対向させ、真空成膜法により前記間隙部に拡散防止層を形成することにより、前記多孔支持体を前記水素透過膜に接合する接合工程と、前記レジスト膜を除去した後、前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有するような構成とした。
また、本発明の水素精製フィルタの製造方法は、仮支持体の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜を形成する膜形成工程と、前記仮支持体を選択エッチングすることができる支持体部材に、両面エッチングにより複数の孔部を穿設して多孔支持体とするエッチング工程と、前記多孔支持体の一方の面に無電解めっき用の触媒を担持させる触媒担持工程と、前記多孔支持体の触媒担持面と前記水素透過膜との間に間隙を設けるように前記多孔支持体を前記水素透過膜に対向させ、無電解めっき法により前記間隙部に拡散防止層を形成することにより、前記多孔支持体を前記水素透過膜に接合する接合工程と、前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記仮支持体は導電性金属であり、電解めっきにより前記水素透過膜を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記仮支持体は銅であり、前記多孔支持体はステンレス鋼であるような構成とした。
本発明の水素精製フィルタは、多孔支持体と水素透過膜とがPd層またはPd合金層で接合されているので、接合部材であるPd層またはPd合金層も水素透過領域となり、水素透過可能な面積が広く水素透過効率が高いものである。また、Pd層またはPd合金層と多孔支持体との間に拡散防止層が介在する場合には、Pd層またはPd合金層や水素透過膜への多孔支持体の構成材料の拡散が確実に防止され、高温下での長時間の使用でも高い水素透過効率が維持される。
また、本発明の水素精製フィルタは、多孔支持体と水素透過膜との間に拡散防止層を備えるので、水素透過膜中への多孔支持体の構成材料の拡散が確実に防止され、高温下での長時間の使用でも高い水素透過効率が維持されるとともに、拡散防止層が多孔支持体および水素透過膜と高い密着性を確保するので、耐久性に優れたものである。
また、本発明の水素精製フィルタの製造方法は、仮支持体の平坦面上に水素透過膜を形成するので、形成された水素透過膜は厚みが均一なものとなり、この水素透過膜の形成とは別に、支持体部材に両面エッチングで複数の孔部を穿設して多孔支持体を作製するので、高開口率の多孔支持体を得ることができるとともに、水素透過膜の形成と多孔支持体の作製を並行して進行可能であるので、製造時間の短縮が可能である。また、この多孔支持体と水素透過膜を、両者の間隙に電解めっきによりPd層またはPd合金層を形成して接合するので、間隙部への優先的な析出が生じて密着性の高い接合が可能である。さらに、仮支持体は選択エッチングにより容易に除去可能であり、この仮支持体として銅を用いる場合には、水素透過膜との密着性が良好であり、工程途中での剥離が防止される。また、エッチング工程と接合工程との間で、多孔支持体の一方の面に導電性の拡散防止層を形成することにより、Pd層またはPd合金層や水素透過膜への多孔支持体の構成材料の拡散が確実に防止される水素精製フィルタの製造が可能である。
また、本発明の水素精製フィルタの製造方法は、仮支持体の平坦面上に水素透過膜を形成するので、形成された水素透過膜は厚みが均一なものとなり、この水素透過膜の形成とは別に、支持体部材に両面エッチングで複数の孔部を穿設して多孔支持体を作製するので、高開口率の多孔支持体を得ることができるとともに、水素透過膜の形成と多孔支持体の作製を並行して進行可能であるので、製造時間の短縮が可能である。また、この多孔支持体と水素透過膜を、両者の間隙に拡散防止層を形成して接合するので、水素透過膜への多孔支持体の構成材料の拡散が確実に防止される水素精製フィルタの製造が可能である。さらに、仮支持体は選択エッチングにより容易に除去可能であり、この仮支持体として銅を用いる場合には、水素透過膜との密着性が良好であり、工程途中での剥離が防止される。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[水素精製フィルタ]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の水素精製フィルタの一実施形態を示す部分断面図である。図1において、水素精製フィルタ1は、複数の微細な孔部3を有する多孔支持体2と、この多孔支持体2の一方の面2a側に配設されたPd層6またはPd合金層6と、このPd層6またはPd合金層6を介して孔部3を覆うように多孔支持体2に配設された水素透過膜5を備えるものである。
水素精製フィルタ1を構成する多孔支持体2は、SUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼等の材料を用いて作製することができ、厚みは10〜50μmの範囲内で適宜設定することができる。
この多孔支持体2が有する孔部3は、開口径が15〜150μmの範囲であることが好ましい。また、水素透過膜5の配設領域における孔部3の開口の合計面積は、水素透過膜5の面積の20〜80%を占めることが好ましい。尚、多孔支持体2の厚み方向において孔部3の開口径に差がある場合には、上記開口径は最小開口径を意味する。
水素精製フィルタ1を構成する水素透過膜5は、PdまたはPd合金からなる薄膜である。Pd合金からなる水素透過膜5としては、例えば、Pd含有量が60重量%以上であり、添加元素としてAg、Cu、Pt、Au、Ni、Co、V、Nb、Ta、Zr等の1種あるいは2種以上を含有するものであってよい。このような水素透過膜5の厚みは、水素透過速度向上の点から薄いほど好ましいが、例えば、1〜5μmの範囲内で適宜設定することができる。
水素精製フィルタ1を構成するPd層6またはPd合金層6は、多孔支持体2と水素透過膜5とを接合するものであり、Pd合金層6は、Pd含有量が60重量%以上であり、添加元素としてAg、Cu、Pt、Au、Ni、Co、V、Nb、Ta、Zr等の1種あるいは2種以上を含有する層であってよい。このようなPd層6またはPd合金層6の厚みは、例えば、0.1〜3μm、好ましくは0.5〜2μmの範囲で設定することができる。
このような水素精製フィルタ1は、多孔支持体2と水素透過膜5とを接合するためのPd層6またはPd合金層6においても水素の透過が生じるので、水素透過効率が高いものである。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の水素精製フィルタの他の実施形態を示す部分断面図である。図2において、水素精製フィルタ11は、複数の微細な孔部13を有する多孔支持体12と、この多孔支持体12の一方の面12a側に配設された拡散防止層17と、Pd層16またはPd合金層16と、このPd層16またはPd合金層16を介して孔部13を覆うように多孔支持体12に配設された水素透過膜15を備えるものである。
水素精製フィルタ11を構成する多孔支持体12、孔部13、水素透過膜15、Pd層16またはPd合金層16は、上述の水素精製フィルタ1を構成する多孔支持体2、孔部3、水素透過膜5、Pd層6またはPd合金層6と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
水素精製フィルタ11を構成する拡散防止層17は、Pd層16またはPd合金層16中へ、さらに水素透過膜15中へ、多孔支持体12の構成材料が拡散するのを防止し、かつ、多孔支持体12とPd層16またはPd合金層16に対して高い密着性を確保するための層である。このような拡散防止層17は、Ti、Ta、Si、Al、Mg、Ce、Cr、Ca、Zr等から選択される1種以上の元素の窒化物、酸化物、炭化物からなる導電性を有する薄膜であり、例えば、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)、窒化タンタル(TaN)、炭化タンタル(TaC)、窒化クロム(CrN)等の薄膜とすることができる。また、拡散防止層17として、Zr、Mo、Ta、W、Cr、Hf、Nb、Ru等の高融点金属からなる水素透過性を有する薄膜であってもよい。このような拡散防止層17の厚みは適宜設定することができ、例えば、0.01〜5μm、好ましくは0.5〜2μm程度とすることができる。
このような水素精製フィルタ11は、多孔支持体12と水素透過膜15とを接合するためのPd層16またはPd合金層16においても水素の透過が生じるので、水素透過効率が高いものであるとともに、Pd層16またはPd合金層16や水素透過膜15への多孔支持体12の構成材料の拡散が確実に防止され、高温下での長時間の使用でも高い水素透過効率が維持される。
(第3の実施形態)
図3は、本発明の水素精製フィルタの他の実施形態を示す部分断面図である。図3において、水素精製フィルタ21は、複数の微細な孔部23を有する多孔支持体22と、この多孔支持体22の一方の面22a側に配設された拡散防止層27と、この拡散防止層27を介して孔部23を覆うように多孔支持体22に配設された水素透過膜25を備えるものである。
水素精製フィルタ21を構成する多孔支持体22、孔部23、および、水素透過膜25は、上述の水素精製フィルタ1を構成する多孔支持体2、孔部3、水素透過膜5と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
水素精製フィルタ21を構成する拡散防止層27は、多孔支持体22と水素透過膜25とを接合するとともに、水素透過膜25中へ、多孔支持体22の構成材料が拡散するのを防止するための層である。このような拡散防止層27は、Ti、Ta、Si、Al、Mg、Ce、Cr、Ca、Zr等から選択される1種以上の元素の窒化物、酸化物、炭化物からなる薄膜であり、例えば、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO2)、酸化亜鉛(ZnO)等の薄膜とすることができる。また、拡散防止層27として、Zr、Mo、Ta、W、Cr、Hf、Nb、Ru等の高融点金属からなる薄膜であってもよい。このような拡散防止層27の厚みは適宜設定することができ、例えば、0.01〜5μm、好ましくは0.5〜2μm程度とすることができる。
このような水素精製フィルタ21は、水素透過膜25への多孔支持体22の構成材料の拡散が確実に防止され、高温下での長時間の使用でも高い水素透過効率が維持されるとともに、拡散防止層27が多孔支持体22および水素透過膜25と高い密着性を確保するので、耐久性に優れたものである。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明の水素精製フィルタは、これらに限定されるものではない。
[水素精製フィルタの製造方法]
次に、本発明の水素精製フィルタの製造方法を説明する。
(第1の実施形態)
図4は、本発明の水素精製フィルタの製造方法の一実施形態を、上述の本発明の水素精製フィルタ1を例として示す工程図である。
本発明の製造方法は、まず、膜形成工程において、仮支持体8の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜5を形成する(図4(A))。仮支持体8は、別工程にて作製される多孔支持体2に対して選択的にエッチング可能な材料からなるものであり、例えば、多孔支持体2がSUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼である場合には、銅、ニッケル等とすることができる。尚、仮支持体8の水素透過膜5を形成しない面は平坦面でなくてもよく、以下の実施形態においても同様である。
また、水素透過膜5は、仮支持体8が銅等のような導電性材料である場合には、電解めっきによりPdを仮支持体8上に析出させて形成することができる。また、電解めっきにより、Pd合金を構成する各成分の薄膜を仮支持体8上に積層し、その後、熱処理を施して成分拡散によりPd合金膜を形成して水素透過膜5を形成することもできる。この場合、例えば、めっきによりPdを3μmの厚みで形成し、この上にめっきによりAgを1μmの厚みで形成し、その後、500℃、24時間の熱処理を施すことによりPd合金化することができる。また、Pd/Ag/Pd3層、Pd/Ag/Pd/Ag4層等の多層めっきを行った後、熱処理を施してもよい。また、仮支持体8が導電性を具備しない場合には、無電解めっきにより、あるいは、無電解めっきと電解めっきを組み合わせて水素透過膜5を形成することができる。このように形成する水素透過膜5の厚みは1〜5μm程度とすることができる。
一方、エッチング工程にて、導電性部材からなる支持体部材に、両面エッチングにより複数の孔部3を穿設して多孔支持体2を作製する(図4(B))。多孔支持体2を作製するための支持体部材は、上述のように、仮支持体8を選択エッチングすることができる導電性部材であり、例えば、SUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼等を用いることができ、厚みは10〜50μmとすることが好ましい。
孔部3の穿設は、孔部3対応する開口部を有するレジストパターンを支持体部材の両面に形成し、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等のエッチングにより行うことができる。穿設する孔部3の開口径は、例えば、15〜150μmの範囲で適宜設定することができる。このように両面エッチングにより孔部3を形成するので、多孔支持体2の両面における孔部3の開口径を任意に設定することができる。
次に、上述のように別工程で作製した多孔支持体2と水素透過膜5を、接合工程において接合する。本発明では、多孔支持体2を水素透過膜5に間隙Gを設けて対向させ(図4(C))、この間隙部に電解めっきによりPdまたはPd合金を析出させてPd層6またはPd合金層6を形成することにより、多孔支持体2を水素透過膜5に接合する(図4(D))。多孔支持体2と水素透過膜5との間隙Gは、Pd層6またはPd合金層6の厚みを決定するものであり、間隙Gへの優先的な析出が生じ易いように、例えば、0.1〜3μmの範囲で適宜設定することができる。
次いで、除去工程にて、仮支持体8を選択エッチングにより除去することにより、本発明の水素精製フィルタ1を得る(図4(E))。選択エッチングは、例えば、仮支持体8が銅からなる場合には、アンモニア系のエッチング液を使用し、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等により行うことができる。
このような本発明の水素精製フィルタの製造方法は、仮支持体8の平坦面上に水素透過膜5を形成するので、形成された水素透過膜5は厚みが均一なものとなる。また、この水素透過膜5の形成とは別に、支持体部材に両面エッチングで複数の孔部3を穿設して多孔支持体2を作製するので、高開口率の多孔支持体2を得ることができるとともに、水素透過膜5の形成と多孔支持体2の作製を並行して進行できるので、製造時間の短縮が可能である。また、この多孔支持体2と水素透過膜5を、両者の間隙Gに電解めっきによりPd層6またはPd合金層6を形成して接合するので、間隙Gへの優先的な析出が生じて密着性の高い接合が可能である。さらに、仮支持体8は選択エッチングにより容易に除去可能であり、この仮支持体8として銅を用いる場合には、水素透過膜5との密着性が良好であり、工程途中での剥離が防止される。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の水素精製フィルタの製造方法の他の実施形態を、上述の本発明の水素精製フィルタ11を例として示す工程図である。
本発明の製造方法は、まず、膜形成工程において、仮支持体18の一方の面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜15を形成する(図5(A))。この膜形成工程は、上述の製造方法の第1の実施形態における膜形成工程と同様である。
一方、エッチング工程にて、導電性部材からなる支持体部材に、両面エッチングにより複数の孔部13を穿設して多孔支持体12を作製する(図5(B))。このエッチング工程は、上述の製造方法の第1の実施形態におけるエッチング工程と同様である。
次いで、多孔支持体12の一方の面に、導電性の拡散防止層17を形成する(図5(C))。拡散防止層17の形成は、非形成部位にレジストパターンを設けたり、所望のマスクを介して、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の真空成膜法により行うことができる。また、所望の部位に触媒付与を行って無電解めっきにより拡散防止層17を形成することもできる。具体的には、Ti、Ta、Si、Al、Mg、Ce、Cr、Ca、Zr等から選択される1種以上の元素の窒化物、酸化物、あるいは炭化物の薄膜として形成することができ、例えば、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)、窒化タンタル(TaN)、炭化タンタル(TaC)、窒化クロム(CrN)等の薄膜が挙げられる。また、拡散防止層5は、Zr、Mo、Ta、W、Cr、Hf、Nb、Ru等の高融点金属の薄膜として形成することもできる。このような拡散防止層17の厚みは、例えば、0.01〜5μm、好ましくは0.5〜2μmの範囲で適宜設定することができる。
次に、上述のように別工程で作製した多孔支持体12と水素透過膜15を、接合工程において接合する。本発明では、多孔支持体12に形成した拡散防止層17を水素透過膜15に間隙Gを設けて対向させ(図5(D))、この間隙部に電解めっきによりPdまたはPd合金を析出させてPd層16またはPd合金層16を形成することにより、多孔支持体12を水素透過膜15に接合する(図5(E))。多孔支持体12に形成した拡散防止層17と水素透過膜15との間隙Gは、Pd層16またはPd合金層16の厚みを決定するものであり、間隙Gへの優先的な析出が生じ易いように、例えば、0.1〜3μmの範囲で適宜設定することができる。
次いで、除去工程にて、仮支持体18を選択エッチングにより除去することにより、図2に示されるような本発明の水素精製フィルタ11を得ることができる。選択エッチングは、例えば、仮支持体18が銅からなる場合には、アンモニア系のエッチング液を使用し、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等により行うことができる。
このような本発明の水素精製フィルタの製造方法は、仮支持体18の平坦面上に水素透過膜15を形成するので、形成された水素透過膜15は厚みが均一なものとなる。また、この水素透過膜15の形成とは別に、支持体部材に両面エッチングで複数の孔部13を穿設して多孔支持体12を作製するので、高開口率の多孔支持体12を得ることができるとともに、水素透過膜15の形成と多孔支持体12の作製を並行して進行できるので、製造時間の短縮が可能である。また、この多孔支持体12と水素透過膜15を、両者の間隙Gに電解めっきによりPd層16またはPd合金層16を形成して接合するので、間隙Gへの優先的な析出が生じて密着性の高い接合が可能である。さらに、仮支持体18は選択エッチングにより容易に除去可能であり、この仮支持体18として銅を用いる場合には、水素透過膜15との密着性が良好であり、工程途中での剥離が防止される。また、エッチング工程と接合工程との間で、多孔支持体12の一方の面に導電性の拡散防止層17を形成するので、製造された水素精製フィルタ11は、Pd層16またはPd合金層16や水素透過膜15への多孔支持体12の構成材料の拡散が確実に防止される。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の水素精製フィルタの製造方法の他の実施形態を、上述の本発明の水素精製フィルタ21を例として示す工程図である。
本発明の製造方法は、まず、膜形成工程において、仮支持体28の一方の面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜25を形成する(図6(A))。この膜形成工程は、上述の製造方法の第1の実施形態における膜形成工程と同様である。
一方、エッチング工程にて、両面エッチングにより支持体部材に複数の孔部23を穿設して多孔支持体22を作製する(図6(B))。このエッチング工程は、上述の製造方法の第1の実施形態におけるエッチング工程と同様である。
次いで、レジスト膜形成工程において、多孔支持体22の一方の面を除く全面(孔部23の内壁面も含む)に、レジスト膜29aを形成し、また、多孔支持体22の孔部23に対応するように、水素透過膜25上にレジスト膜29bを形成する(図6(C))。これらのレジスト膜29a,29bの厚みは、後述の接合工程での間隙Gへの拡散防止層27の形成に支障を来たさない厚みとすることが必要であり、例えば、間隙Gよりも2〜3μm程度薄い厚みに設定することができる。
次に、上述のように別工程で作製した多孔支持体22と水素透過膜25を、接合工程において接合する。本発明では、多孔支持体22のレジスト膜非形成面と水素透過膜25のレジスト膜非形成部位との間に間隙Gを設けるように多孔支持体22を水素透過膜25に対向させ(図6(C))、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法により間隙Gに拡散防止層27を形成することにより、多孔支持体22を水素透過膜25に接合する(図6(D))。尚、拡散防止層27は、間隙Gのみではなく、レジスト膜29a、29bの全面にも形成されるが、形成図6(D)では、図面が煩雑となることを避けるために、便宜的に間隙Gに形成された拡散防止層27のみを記載している。上述の多孔支持体22と水素透過膜25との間隙Gは、拡散防止層27の厚みを決定するものであり、例えば、1〜10μmの範囲で適宜設定することができる。形成する拡散防止層27は、Ti、Ta、Si、Al、Mg、Ce、Cr、Ca、Zr等から選択される1種以上の元素の窒化物、酸化物、炭化物からなる薄膜であり、例えば、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO2)、酸化亜鉛(ZnO)等の薄膜とすることができる。また、拡散防止層27として、Zr、Mo、Ta、W、Cr、Hf、Nb、Ru等の高融点金属からなる薄膜であってもよい。
次いで、除去工程にて、レジスト膜29a、29bを除去することにより、レジスト膜29a、29b上に形成されている不要な拡散防止層27がリフトオフされ、その後、仮支持体28を選択エッチングにより除去することにより、本発明の水素精製フィルタ21を得ることができる(図6(E))。選択エッチングは、例えば、仮支持体28が銅からなる場合には、アンモニア系のエッチング液を使用し、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等により行うことができる。
(第4の実施形態)
図7は、本発明の水素精製フィルタの製造方法の他の実施形態を、上述の本発明の水素精製フィルタ21を例として示す工程図である。
本発明の製造方法は、まず、膜形成工程において、仮支持体28の一方の面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜25を形成する。この膜形成工程は、上述の製造方法の第1の実施形態における膜形成工程と同様である。
一方、エッチング工程にて、両面エッチングにより支持体部材に複数の孔部23を穿設して多孔支持体22を作製する。このエッチング工程は、上述の製造方法の第1の実施形態におけるエッチング工程と同様である。
次いで、触媒担持工程において、多孔支持体22の一方の面に触媒層24を形成して、無電解めっき用の触媒を担持させる(図7(A))。この触媒層24の形成は、例えば、触媒含有溶液を多孔支持体22の一方の面に塗布し、あるいは、多孔支持体22の一方の面を触媒含有溶液に接触させ、その後、乾燥させることにより行うことができる。
次に、上述のように別工程で作製した多孔支持体22と水素透過膜25を、接合工程において接合する。本発明では、多孔支持体22の触媒層24(触媒担持面)と水素透過膜25との間に間隙Gを設けるように多孔支持体22を水素透過膜25に対向させ(図7(B))、無電解めっき法により間隙Gに拡散防止層27を形成することにより、多孔支持体22を水素透過膜25に接合する(図7(C))。多孔支持体22に形成した触媒層24(触媒担持面)と水素透過膜25との間隙Gは、拡散防止層27の厚みを決定するものであり、例えば、0.1〜5μmの範囲で適宜設定することができる。形成する拡散防止層27は、酸化セリウム、酸化亜鉛、窒化チタン、炭化チタン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化クロム等からなる薄膜であってよい。
次いで、除去工程にて、仮支持体28を選択エッチングにより除去することにより、本発明の水素精製フィルタ21を得ることができる(図7(D))。選択エッチングは、例えば、仮支持体28が銅からなる場合には、アンモニア系のエッチング液を使用し、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等により行うことができる。
このような第3、第4の実施形態では、仮支持体28の平坦面上に水素透過膜25を形成するので、形成された水素透過膜25は厚みが均一なものとなり、この水素透過膜25の形成とは別に、支持体部材に両面エッチングで複数の孔部23を穿設して多孔支持体22を作製するので、高開口率の多孔支持体22を得ることができるとともに、水素透過膜25の形成と多孔支持体22の作製を並行して進行することできるので、製造時間の短縮が可能である。また、この多孔支持体22と水素透過膜25を、両者の間隙Gに拡散防止層27を形成して接合するので、製造される水素精製フィルタ21は、水素透過膜25への多孔支持体22の構成材料の拡散が確実に防止される。さらに、仮支持体28は選択エッチングにより容易に除去可能であり、この仮支持体28として銅を用いる場合には、水素透過膜25との密着性が良好であり、工程途中での剥離が防止される。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明の水素精製フィルタの製造方法は、これらに限定されるものではない。
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
(膜形成工程)
仮支持体として厚み200μmの銅材を準備し、この銅材の一方の面に下記の条件で電解めっきによりPd合金膜(厚み4μm)を形成して水素透過膜とした。
(Pd合金膜の成膜条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:12g/L)
・pH : 7〜8
・電流密度 : 1A/dm2
・液温 : 40℃
(エッチング工程)
支持体として厚み40μmのSUS304材を準備した。次いで、このSUS304材の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、所定のフォトマスクを介して両面のレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、SUS304材の両面に、直径が80μmの円形開口をピッチ110μmで複数備えたレジストパターンを形成した。尚、表裏の円形開口はSUS304材を介して対向するものであった。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、下記の条件でSUS304材を両面からスプレー方式でエッチングした。
(エッチング条件)
・温度 : 50℃
・塩化第二鉄濃度: 45ボーメ
・圧力 : 0.30MPa
上記のエッチング処理が終了した後、水酸化ナトリウムを用いてレジストパターンを除去し、水洗した。これにより、複数の孔部を穿設して多孔支持体とした。これらの孔部は、SUS304材の表面の開口径が85μmであり、深さ方向の中央部での開口径が80μmである断面円形状のものであった。
(接合工程)
上記のように作製した多孔支持体を、仮支持体(銅材)上に形成した水素透過膜に1.5μmの間隙を設けて対向させ、多孔支持体と水素透過膜を外部電極に接続し、この状態で下記の条件で電解めっきを行った。これにより、多孔支持体と水素透過膜との間隙部にPd合金を析出させてPd合金層を形成し、多孔支持体と水素透過膜を接合した。
(Pd合金膜の成膜条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:12g/L)
・pH : 7〜8
・電流密度 : 1A/dm2
・液温 : 40℃
(除去工程)
次に、仮支持体(銅材)を選択的にエッチングして除去した。
上記の除去工程が終了した後、3cm×3cmの寸法に切断して、水素精製用フィルタとした。この水素精製フィルタを改質器に装着し、メタノールと水蒸気の混合物を高温高圧条件(500℃、0.50MPa)で連続100時間供給し、水素精製フィルタの多孔支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低く、また、水素リッチガスの流量は1.5L/分であり、本発明の水素精製フィルタが優れた耐久性、水素透過効率を有することを確認した。
[実施例2]
(膜形成工程)
実施例1と同様にして、仮支持体(銅材)の一方の面に水素透過膜を形成した。
(エッチング工程)
実施例1と同様にして、SUS304材に複数の孔部を穿設して多孔支持体を作製した。
(拡散防止層形成工程)
上記のように作製した多孔支持体の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、多孔支持体の一方の面をマスクで遮蔽してレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、多孔支持体の一方の面のみが露出するようにレジストパターンを形成した。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、多孔支持体が露出する面にスパッタリング法により窒化チタン(TiN)の薄膜(厚み1μm)を形成し、その後、水酸化ナトリウムを用いてレジストパターンを除去し、水洗した。これにより拡散防止層を多孔支持体の一方の面に形成した。
(接合工程)
多孔支持体に形成した拡散防止層を、仮支持体(銅材)上に形成した水素透過膜に1.5μmの間隙を設けて対向させ、多孔支持体と水素透過膜を外部電極に接続し、この状態で下記の条件で電解めっきを行った。これにより、多孔支持体(拡散防止層)と水素透過膜との間隙部にPd合金を析出させてPd合金層を形成し、多孔支持体と水素透過膜を接合した。
(Pd合金膜の成膜条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:12g/L)
・pH : 7〜8
・電流密度 : 1A/dm2
・液温 : 40℃
(除去工程)
次に、仮支持体(銅材)を選択的にエッチングして除去した。
上記の除去工程が終了した後、3cm×3cmの寸法に切断して、水素精製用フィルタとした。この水素精製フィルタを改質器に装着し、メタノールと水蒸気の混合物を高温高圧条件(500℃、0.50MPa)で連続100時間供給し、水素精製フィルタの多孔支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低く、また、水素リッチガスの流量は1.5L/分であり、本発明の水素精製フィルタが優れた耐久性、水素透過効率を有することを確認した。
また、拡散防止層の効果を確認するために、上記の条件でメタノールと水蒸気の混合物を更に1000時間連続供給した。その結果、多孔支持体とPd合金層の相互拡散はみられず、水素リッチガスのCO濃度は5〜10ppm、水素リッチガスの透過流量は1.5L/分が維持され、優れた耐久性、水素透過効率を有することが確認された。
[実施例3]
(膜形成工程)
実施例1と同様にして、仮支持体(銅材)の一方の面に水素透過膜を形成した。
(エッチング工程)
実施例1と同様にして、SUS304材に複数の孔部を穿設して多孔支持体を作製した。
(接合工程)
上記のように作製した多孔支持体の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、多孔支持体の一方の面をマスクで遮蔽してレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、多孔支持体の一方の面のみが露出するようにレジストパターンを形成した。
また、仮支持体(銅材)上に形成した水素透過膜に、感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、所定のフォトマスクを介してレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、水素透過膜上に、直径が80μmの円形パターンをピッチ110μmで複数備えたレジストパターンを形成した。上記の円形パターンは、多孔支持体に形成した複数の孔部に対応した位置に存在するものであった。
次に、多孔支持体のレジストパターン非形成面と水素透過膜のレジストパターン非形成部位との間に2μmの間隙を設けるように両者を対向させた。この状態で、多孔支持体側からイオンプレーティング法により窒化チタン(TiN)の薄膜を形成した。これにより、多孔支持体のレジストパターン非形成面と水素透過膜のレジストパターン非形成部位との間隙部に窒化チタン(TiN)からなる拡散防止層が形成され、多孔支持体と水素透過膜が接合された。
(除去工程)
次に、水酸化ナトリウムを用いてレジストパターンを除去し、水洗した後、仮支持体(銅材)を選択的にエッチングして除去した。
上記の除去工程が終了した後、3cm×3cmの寸法に切断して、水素精製用フィルタとした。この水素精製フィルタを改質器に装着し、メタノールと水蒸気の混合物を高温高圧条件(500℃、0.50MPa)で連続100時間供給し、水素精製フィルタの多孔支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低く、また、水素リッチガスの流量は1.5L/分であり、本発明の水素精製フィルタが優れた耐久性、水素透過効率を有することを確認した。
また、拡散防止層の効果を確認するために、上記の条件でメタノールと水蒸気の混合物を更に1000時間連続供給した。その結果、多孔支持体とPd合金層の相互拡散はみられず、水素リッチガスのCO濃度は5〜10ppm、水素リッチガスの透過流量は1.5L/分が維持され、優れた耐久性、水素透過効率を有することが確認された。
[実施例4]
(膜形成工程)
実施例1と同様にして、仮支持体(銅材)の一方の面に水素透過膜を形成した。
(エッチング工程)
実施例1と同様にして、SUS304材に複数の孔部を穿設して多孔支持体を作製した。
(触媒担持工程)
上記のように作製した多孔支持体の一方の面を、無電解めっき用の触媒含有溶液(上村工業(株)製 酸化亜鉛めっき液)に接触させ、その後、乾燥した。これにより触媒層を多孔支持体の一方の面に形成した。
(接合工程)
多孔支持体に形成した触媒層を、仮支持体(銅材)上に形成した水素透過膜に1μmの間隙を設けて対向させ、この状態で下記の条件で無電解めっきを行った。これにより、触媒層上に酸化亜鉛からなる拡散防止層が形成されて、多孔支持体と水素透過膜との間隙が充填され、両者が接合された。
(無電解酸化亜鉛めっきの条件)
・浴組成 :硝酸亜鉛{Zn(NO32} … 30g/L
ジメチルアミンボラン(DMAB) … 5g/L
Bis−Tris … 0.5g/L
{ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン}
・pH :5.5〜6.8
・液温 :75℃
(除去工程)
次に、仮支持体(銅材)を選択的にエッチングして除去した。
上記の除去工程が終了した後、3cm×3cmの寸法に切断して、水素精製用フィルタとした。この水素精製フィルタを改質器に装着し、メタノールと水蒸気の混合物を高温高圧条件(500℃、0.50MPa)で連続100時間供給し、水素精製フィルタの多孔支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低く、また、水素リッチガスの流量は1.5L/分であり、本発明の水素精製フィルタが優れた耐久性、水素透過効率を有することを確認した。
また、拡散防止層の効果を確認するために、上記の条件でメタノールと水蒸気の混合物を更に1000時間連続供給した。その結果、多孔支持体とPd合金層の相互拡散はみられず、水素リッチガスのCO濃度は5〜10ppm、水素リッチガスの透過流量は1.5L/分が維持され、優れた耐久性、水素透過効率を有することが確認された。
[比較例1]
第1支持体として厚み40μmのSUS304材を準備した。次いで、このSUS304材の一方の面に下記の条件で電解めっきによりPd合金膜(厚み5μm)を形成して水素透過膜とした。
(Pd合金膜の成膜条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:12g/L)
・pH : 7〜8
・電流密度 : 1A/dm2
・液温 : 40℃
次に、このSUS304材の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、所定のフォトマスクを介して両面のレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、SUS304材の水素透過膜が形成されていない面に、直径が80μmの円形開口をピッチ110μmで複数備えたレジストパターンを形成した。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、下記の条件でSUS304材を片面からスプレー方式でエッチングした。
(エッチング条件)
・温度 : 50℃
・塩化第二鉄濃度: 45ボーメ
・圧力 : 0.30MPa
上記のエッチング処理が終了した後、水酸化ナトリウムを用いてレジストパターンを除去し、水洗した。これにより、第1支持体に複数の孔部を形成した。これらの孔部は、SUS304材の表面側の開口径が85μmであり、深さ方向の最奥部(水素透過膜が露出している部位)での開口径が45μmであるテーパー形状であった。
また、第2支持体として厚み40μmのSUS304材を準備した。次いで、このSUS304材の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、所定のフォトマスクを介して両面のレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、SUS304材の両面に、直径が80μmの円形開口をピッチ110μmで複数備えたレジストパターンを形成した。尚、表裏の円形開口はSUS304材を介して対向するものであった。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、下記の条件でSUS304材を両面からスプレー方式でエッチングした。
(エッチング条件)
・温度 : 50℃
・塩化第二鉄濃度: 45ボーメ
・圧力 : 0.30MPa
上記のエッチング処理が終了した後、水酸化ナトリウムを用いてレジストパターンを除去し、水洗した。これにより、複数の孔部を穿設して第2支持体とした。これらの孔部は、SUS304材の表面の開口径が85μmであり、深さ方向の中央部での開口径が80μmである断面円形状のものであった。
次に、第1支持体に支持されている水素透過膜に、第2支持体をレーザー溶接により接合し、その後、3cm×3cmの寸法に切断して、水素精製用フィルタとした。この接合では、第1支持体の孔部と第2支持体の孔部とが、水素透過膜を介して対向するように位置合わせを行った。
このように作製した水素精製フィルタを改質器に装着し、実施例1と同様の高温高圧条件でフィルタのPd合金膜にメタノールと水蒸気の混合物を供給し、フィルタの多孔支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低いものであったが、水素リッチガスの流量は0.6L/分と低いものであった。
[比較例2]
SUS304材に形成するレジストパターンの円形開口の直径を95μmとし、エッチングにより第1支持体に形成する孔部のSUS304材の表面側での開口径を100μm、深さ方向の最奥部(水素透過膜が露出している部位)での開口径を60μmとした他は、比較例1と同様にして、水素精製フィルタを作製した。
この水素精製フィルタを改質器に装着し、メタノールと水蒸気の混合物を高温高圧条件(500℃、0.50MPa)で連続100時間供給し、水素精製フィルタの多孔支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低く、また、水素リッチガスの流量は1.1L/分であり、本発明の水素精製フィルタが優れた耐久性、水素透過効率を有することを確認した。
しかし、この水素精製フィルタの作製工程では、第1支持体に孔部を形成した段階で反りが発生し、その後の工程での作業性が著しく悪いものであった。
高純度の水素リッチガスを必要とする種々の分野に利用することができる。
本発明の水素精製フィルタの一実施形態を示す部分断面図である。 本発明の水素精製フィルタの他の実施形態を示す部分断面図である。 本発明の水素精製フィルタの他の実施形態を示す部分断面図である。 本発明の水素精製フィルタの製造方法の一実施形態を示す工程図である。 本発明の水素精製フィルタの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。 本発明の水素精製フィルタの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。 本発明の水素精製フィルタの製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
符号の説明
1,11,21…水素精製フィルタ
2,12,22…多孔支持体
3,13,23…孔部
5,15,25…水素透過膜
6,16…Pd層またはPd合金層
17,27…拡散防止層
8,18,28…仮支持体
24…触媒層
29a,29b…レジスト膜
G…間隙

Claims (6)

  1. 水素精製フィルタの製造方法において、
    仮支持体の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜を形成する膜形成工程と、
    前記仮支持体を選択エッチングすることができる導電性部材からなる支持体部材に、両面エッチングにより複数の孔部を穿設して多孔支持体とするエッチング工程と、
    前記多孔支持体を前記水素透過膜に間隙を設けて対向させ、前記間隙部に電解めっきによりPdまたはPd合金を析出させてPd層またはPd合金層を形成することにより、前記多孔支持体を前記水素透過膜に接合する接合工程と、
    前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有することを特徴とする水素精製フィルタの製造方法。
  2. 前記エッチング工程と前記接合工程との間に、前記多孔支持体の一方の面に導電性の拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程を有し、前記接合工程では、前記多孔支持体に形成された前記拡散防止層を前記水素透過膜に間隙を設けて対向させることを特徴とする請求項1に記載の水素精製フィルタの製造方法。
  3. 水素精製フィルタの製造方法において、
    仮支持体の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜を形成する膜形成工程と、
    前記仮支持体を選択エッチングすることができる支持体部材に、両面エッチングにより複数の孔部を穿設して多孔支持体とするエッチング工程と、
    前記多孔支持体の一方の面を除く全面にレジスト膜を形成し、また、前記多孔支持体の孔部に対応するように前記水素透過膜上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
    前記多孔支持体のレジスト膜非形成面と前記水素透過膜のレジスト膜非形成部位との間に間隙を設けるように前記多孔支持体を前記水素透過膜に対向させ、真空成膜法により前記間隙部に拡散防止層を形成することにより、前記多孔支持体を前記水素透過膜に接合する接合工程と、
    前記レジスト膜を除去した後、前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有することを特徴とする水素精製フィルタの製造方法。
  4. 水素精製フィルタの製造方法において、
    仮支持体の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜を形成する膜形成工程と、
    前記仮支持体を選択エッチングすることができる支持体部材に、両面エッチングにより複数の孔部を穿設して多孔支持体とするエッチング工程と、
    前記多孔支持体の一方の面に無電解めっき用の触媒を担持させる触媒担持工程と、
    前記多孔支持体の触媒担持面と前記水素透過膜との間に間隙を設けるように前記多孔支持体を前記水素透過膜に対向させ、無電解めっき法により前記間隙部に拡散防止層を形成することにより、前記多孔支持体を前記水素透過膜に接合する接合工程と、
    前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有することを特徴とする水素精製フィルタの製造方法。
  5. 前記仮支持体は導電性金属であり、電解めっきにより前記水素透過膜を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の水素精製フィルタの製造方法。
  6. 前記仮支持体は銅であり、前記多孔支持体はステンレス鋼であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の水素精製フィルタの製造方法。
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