JP5422982B2 - 水素精製フィルタの製造方法 - Google Patents
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Description
このような燃料電池は、燃料電池本体に使用する電解質、反応形態等により、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体電解質型燃料電池(SOFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)の5種類がある。このうち、固体高分子型燃料電池(PEFC)は、リン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)等の他の燃料電池と比較して、電解質が固体である点において有利な条件を備えている。
改質ガスからCOを除去して水素を精製する手段の一つとして、Pd合金膜を備えた水素精製フィルタが開発されており、Pd合金膜は、膜にピンホールやクラック等がなければ原理的には水素のみが透過可能であり、改質ガス側を高温高圧(例えば、500℃、3〜10kg/cm2(0.29〜0.98MPa))とすることにより、低水素分圧側に水素を透過する。
上記の問題を解消するために、支持体上に直接Pd合金膜を形成し、Pd合金膜と支持体とを一体化した水素精製フィルタが開発されている。例えば、金属支持体の片面にPd合金膜を形成し、この金属支持体に片面エッチングにより細孔を形成して第1支持体とし、上記のPd合金膜上に、エッチングにより予め貫通孔が形成された第2支持体を積層して製造された水素精製フィルタがある(特許文献1)。また、仮支持体上にPd合金膜を形成し、このPd合金膜上にレジストパターンを形成し、次に、Pd合金膜の30〜95%を覆うように、微細な開口部を有する金属ベース膜を電気めっきで形成し、その後、仮支持体を除去することにより製造された水素精製フィルタがある(特許文献2)。
また、上記の特許文献2の水素精製フィルタでは、仮支持体上に成膜されたPd合金膜の密着力が弱く、工程中に剥離を生じ易いという問題があった。また、レジストパターンの厚みが薄いと、電気めっきにて形成する金属ベース膜がレジストパターンの開口部を塞いでしまい、一方、レジストパターンを厚くすると、形成した金属ベース膜の微細な開口部にレジストが残存し易いという問題もあった。さらに、Pd合金膜上への金属ベース膜の電気めっきによる形成に長時間を要し、また、充分な強度を有する厚みの大きな金属ベース膜の形成が困難であるという問題があった。
しかし、特許文献3の水素精製フィルタでは、水素透過に寄与しない多孔支持体の孔部壁面や多孔支持体の反対面(PdまたはPd合金からなる水素透過膜が接合されていない面)にも電気めっきによりPdまたはPd合金が析出してしまい、製造コストの低減に限界があった。また、水素透過膜のうち、接合部材であるPd層またはPd合金層を介して多孔支持体に接合されている部位は、接合部材が水素透過能をもたない金属部材である場合に比べると水素透過に寄与するものの、多孔支持体の孔部に位置する水素透過膜に比較すると水素透過効率が低く、水素精製フィルタの水素透過効率の向上には限界があった。
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、水素精製において優れた水素透過効率を示す安価な水素精製フィルタと、このようなフィルタを簡便に製造するための製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記接合工程では、前記水素透過膜が形成された前記仮支持体と前記多孔支持体とを、前記孔部領域の外側の領域にて圧着し、孔部領域では、周辺部から中央部に向けて前記間隙が大きくなるようにするような構成とした。
[水素精製フィルタ]
図1は、本発明の水素精製フィルタの一実施形態を示す平面図であり、図2は図1に示される水素精製フィルタのI−I線における拡大断面図である。図1および図2において、水素精製フィルタ1は、複数の微細な孔部4からなる孔部領域3(図1では、斜線を付して示している)を有する多孔支持体2と、この多孔支持体2の一方の面2a側に配設されたPdまたはPd合金からなる水素透過膜6を備えるものである。尚、図1では、多孔支持体2側から見た平面を示しており、図2における孔部4の数、大きさは便宜的なものである。
この多孔支持体2が有する孔部4は、開口径が15〜150μmの範囲であることが好ましい。また、水素透過膜6の配設領域における孔部4の開口の合計面積は、水素透過膜6の面積の20〜80%を占めることが好ましい。尚、多孔支持体2の厚み方向において孔部4の開口径に差がある場合には、上記開口径は最小開口径を意味する。このような複数の孔部4からなる孔部領域3の形状、大きさは適宜設定することができる。
水素精製フィルタ1を構成するPd層7またはPd合金層7は、孔部領域3の周辺部3aにおいて多孔支持体2と水素透過膜6とを接合するものであり、Pd合金層7は、Pd含有量が60重量%以上であり、添加元素としてAg、Cu、Pt、Au、Ni、Co、V、Nb、Ta、Zr等の1種あるいは2種以上を含有する層であってよい。このようなPd層7またはPd合金層7の厚みは、例えば、0.1〜3μm、好ましくは0.5〜2μmの範囲で設定することができる。
水素精製フィルタ1′を構成する拡散防止層9は、Pd層7またはPd合金層7中へ、さらに水素透過膜6中へ、多孔支持体2の構成材料が拡散するのを防止し、かつ、多孔支持体2とPd層7またはPd合金層7に対して高い密着性を確保するための層である。このような拡散防止層9は、Ti、Ta、Si、Al、Mg、Ce、Cr、Ca、Zr等から選択される1種以上の元素の窒化物、酸化物、炭化物からなる導電性を有する薄膜であり、例えば、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)、窒化タンタル(TaN)、炭化タンタル(TaC)、窒化クロム(CrN)等の薄膜とすることができる。また、拡散防止層9として、Zr、Mo、Ta、W、Cr、Hf、Nb、Ru等の高融点金属からなる水素透過性を有する薄膜であってもよい。このような拡散防止層9の厚みは適宜設定することができ、例えば、0.01〜5μm、好ましくは0.5〜2μm程度とすることができる。尚、拡散防止層9は多孔支持体2の全面に設けられていてもよい。
上述の実施形態は例示であり、本発明の水素精製フィルタは、これらに限定されるものではない。
次に、本発明の水素精製フィルタの製造方法を説明する。
図4は、本発明の水素精製フィルタの製造方法の一実施形態を、上述の本発明の水素精製フィルタ1を例として示す工程図である。
本発明の製造方法は、まず、膜形成工程において、仮支持体8の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜6を形成する(図4(A))。仮支持体8は、別工程にて作製される多孔支持体2に対して選択的にエッチング可能な材料からなるものであり、例えば、多孔支持体2がSUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼である場合には、銅、ニッケル等とすることができる。尚、仮支持体8の水素透過膜6を形成しない面は平坦面でなくてもよい。
孔部4の穿設は、孔部4対応する開口部を有するレジストパターンを支持体部材の両面に形成し、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等のエッチングにより行うことができる。穿設する孔部4の開口径は、例えば、15〜150μmの範囲で適宜設定することができる。このように両面エッチングにより孔部4を形成するので、多孔支持体2の両面における孔部4の開口径を任意に設定することができる。
上述の実施形態は例示であり、本発明の水素精製フィルタの製造方法は、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
(膜形成工程)
仮支持体として厚み100μmの銅材を準備し、この銅材の一方の面に下記の条件で電気めっきによりPd合金膜(厚み4μm)を形成して水素透過膜とした。
(Pd合金膜の成膜条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:12g/L)
・pH : 7〜8
・電流密度 : 1A/dm2
・液温 : 40℃
支持体として厚み40μmのSUS304材を準備した。次いで、このSUS304材の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、所定のフォトマスクを介して両面のレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、SUS304材の両面に、直径が80μmの円形開口をピッチ110μmで複数備えたレジストパターンを形成した。尚、表裏の円形開口はSUS304材を介して対向するものであった。また、この円形開口が複数形成された領域は40mm×60mmの長方形状とした。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、下記の条件でSUS304材を両面からスプレー方式でエッチングした。
(エッチング条件)
・温度 : 50℃
・塩化第二鉄濃度: 45ボーメ
・圧力 : 0.30MPa
上記のエッチング処理が終了した後、水酸化ナトリウムを用いてレジストパターンを除去し、水洗した。これにより、複数の孔部を穿設して40mm×60mmの長方形状の孔部領域を有する多孔支持体とした。これらの孔部は、SUS304材の表面の開口径が85μmであり、深さ方向の中央部での開口径が80μmである断面円形状のものであった。
上記のように作製した多孔支持体の一方の面の孔部領域(40mm×60mmの長方形状)の中央に、28mm×48mmの長方形状でレジスト膜(厚み25μm)を形成した。これにより、孔部領域は幅6mmの回廊形状の周辺部のみが露出したものとなった。レジスト膜は、28mm×48mmの長方形状のドライフィルムレジスト(デュポン(株)製 FRA063)を多孔支持体にラミネートすることにより形成した。
上記のように作製した多孔支持体のレジスト膜が形成されていない面を、仮支持体(銅材)上に形成した水素透過膜に対向させ、孔部領域の長手方向の両外側の部位を圧着(トルク値2N・m)した。これにより多孔支持体の孔部領域を水素透過膜に対して約1.5μmの間隙を設けて対向させた。この状態で多孔支持体と水素透過膜をカソードとし、アノード板(チタン−白金合金板)と対向させ、下記の条件で電気めっきを行った。これにより、多孔支持体の孔部領域の周辺部(レジスト膜が形成されていない部位)において、多孔支持体と水素透過膜との間隙にPd合金が析出してPd合金層が形成され、多孔支持体と水素透過膜との接合がなされた。また、この接合部位よりも内側では、多孔支持体と水素透過膜は接合されていないものとなった。
(Pd合金膜の成膜条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:12g/L)
・pH : 7〜8
・電流密度 : 1A/dm2
・液温 : 40℃
次に、レジスト膜を5%水酸化ナトリウム水溶液を用いて除去し、その後、アンモニア系のエッチング液を使用し、スプレー方式にて仮支持体(銅材)を選択的にエッチングして除去した。
上記の除去工程が終了した後、40mm×60mmの長方形状の孔部領域が中央に位置するように50mm×70mmの長方形状に切断して、水素精製用フィルタとした。この水素精製フィルタを改質器に装着し、メタノールと水蒸気の混合物を高温高圧条件(500℃、0.50MPa)で連続100時間供給し、水素精製フィルタの多孔支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低く、また、水素リッチガスの流量は1.8L/分であり、本発明の水素精製フィルタが優れた耐久性、水素透過効率を有することを確認した。
(膜形成工程)
実施例1と同様にして、仮支持体(銅材)の一方の面に水素透過膜を形成した。
(エッチング工程)
実施例1と同様にして、SUS304材に複数の孔部を穿設して多孔支持体を作製した。
上記のように作製した多孔支持体の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、多孔支持体の一方の面をマスクで遮蔽してレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、多孔支持体の一方の面のみが露出するようにレジストパターンを形成した。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、多孔支持体が露出する面にスパッタリング法により窒化チタン(TiN)の薄膜(厚み1μm)を形成し、その後、水酸化ナトリウムを用いてレジストパターンを除去し、水洗した。これにより拡散防止層を多孔支持体の一方の面に形成した。
多孔支持体の上記拡散防止層が形成されていない面に、実施例1と同様にして、レジスト膜を形成した。
多孔支持体に形成した拡散防止層を、仮支持体(銅材)上に形成した水素透過膜に対向させた他は、実施例1と同様にして電気めっきを行った。これにより、多孔支持体の孔部領域の周辺部(レジスト膜が形成されていない部位)において、多孔支持体(拡散防止層)と水素透過膜との間隙にPd合金が析出してPd合金層が形成され、多孔支持体と水素透過膜との接合がなされた。また、この接合部位よりも内側では、多孔支持体(拡散防止層)と水素透過膜は接合されていないものとなった。
次に、実施例1と同様にして、レジスト膜と仮支持体(銅材)を除去した。
上記の除去工程が終了した後、40mm×60mmの長方形状の孔部領域が中央に位置するように50mm×70mmの長方形状に切断して、水素精製用フィルタとした。この水素精製フィルタを改質器に装着し、実施例1と同様にして、水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低く、また、水素リッチガスの流量は1.8L/分であり、本発明の水素精製フィルタが優れた耐久性、水素透過効率を有することを確認した。
また、水素精製用フィルタの水素透過膜と多孔支持体との接合部位よりも内側の領域において、多孔支持体上のPd合金層の存在を実施例1と同様に観察した。その結果、多孔支持体の孔部非形成部位と水素透過膜の間に隙間が存在し、両者は密着しておらず、多孔支持体の孔部非形成部位上にはPd合金めっきがほとんどされていない状態であり、Pd合金層は痕跡程度の存在であることが確認された。
接合工程において、仮支持体(銅材)と多孔支持体との圧着を更に高い圧力(トルク値8N・m)した他は、実施例1と同様にして、水素精製用フィルタを作製とした。この接合工程では、多孔支持体の孔部領域の周辺部と水素透過膜の間隙が約1.5μmであり、孔部領域のレジスト膜が存在する部位と水素透過膜の間隙が3〜10μmであり、周辺部よりも大きな間隙となっていた。そして、多孔支持体の孔部領域の周辺部(レジスト膜が形成されていない部位)において、多孔支持体と水素透過膜との間隙にPd合金が析出してPd合金層が形成され、多孔支持体と水素透過膜との接合がなされた。また、この接合部位よりも内側では、多孔支持体と水素透過膜は接合されていないものとなった。
また、水素精製用フィルタの水素透過膜と多孔支持体との接合部位よりも内側の領域において、多孔支持体上のPd合金層の存在を実施例1と同様に観察した。その結果、多孔支持体の孔部非形成部位と水素透過膜の間に隙間が存在し、両者は密着しておらず、多孔支持体の孔部非形成部位上にはPd合金めっきがほとんどされていない状態であり、Pd合金層の存在は痕跡程度であり、実施例1よりも更に微量であることが確認された。
レジスト膜を形成しない他は、実施例1と同様にして、水素精製用フィルタを作製とした。この場合、接合工程では、多孔支持体の孔部領域全域において、多孔支持体と水素透過膜との間隙にPd合金が析出してPd合金層が形成され、多孔支持体と水素透過膜との接合がなされた。
このように作製した水素精製フィルタを改質器に装着し、実施例1と同様にして、水素リッチガスのCO濃度、および、水素リッチガスの流量を測定した。その結果、改質開始直後から300時間経過するまでの間のCO濃度は5〜10ppmと極めて低いものであったが、水素リッチガスの流量は1.2L/分であり、実施例1の水素精製フィルタに比べて水素透過効率が低いものであった。
また、水素精製用フィルタの多孔支持体の孔部領域におけるPd合金層の存在を実施例1と同様に観察した。その結果、孔部領域の全域において多孔支持体上にPd合金層が形成されていることが確認された。
2…多孔支持体
3…孔部領域
4…孔部
6…水素透過膜
7…Pd層またはPd合金層
8…仮支持体
9…拡散防止層
11…レジスト膜
G…間隙
Claims (3)
- 水素精製フィルタの製造方法において、
仮支持体の一方の平坦面にPdまたはPd合金からなる水素透過膜を形成する膜形成工程と、
前記仮支持体を選択エッチングすることができる導電性部材からなる支持体部材に、両面エッチングにより貫通孔形状の複数の孔部を穿設して、孔部領域を備えた多孔支持体を形成するエッチング工程と、
前記多孔支持体の少なくとも一方の面に、窒化チタン、炭化チタン、窒化タンタル、炭化タンタル、窒化クロムの少なくとも1種からなる導電性の拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程と、
前記多孔支持体の他方の面の前記孔部領域に、該孔部領域の周辺部のみが露出するようにレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記多孔支持体の前記レジスト膜を形成した面と反対側の面を、前記孔部領域と前記水素透過膜との間に間隙を設けるようにして前記水素透過膜に対向させ、前記間隙に電気めっきによりPdまたはPd合金を析出させてPd層またはPd合金層を形成することにより、前記孔部領域の周辺部において前記多孔支持体と前記水素透過膜とを接合する接合工程と、
前記レジスト膜を除去し、前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有することを特徴とする水素精製フィルタの製造方法。 - 前記仮支持体は導電性金属であり、電気めっきにより前記水素透過膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の水素精製フィルタの製造方法。
- 前記接合工程では、前記水素透過膜が形成された前記仮支持体と前記多孔支持体とを、前記孔部領域の外側の領域にて圧着し、孔部領域では、周辺部から中央部に向けて前記間隙が大きくなるようにすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水素精製フィルタの製造方法。
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