JP5368892B2 - 水素選択透過膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水素選択透過膜とその製造方法に係り、特に各種の炭化水素系燃料を水蒸気改質して水素リッチガスを生成するための改質器等に使用する水素選択透過膜と、これを簡便に製造することができる製造方法に関する。
近年、地球規模の環境やエネルギー・資源の問題が顕在化し、これらと産業との調和を図るエネルギー供給システムの一つとして燃料電池が注目されている。燃料電池は、予め用意した水素ガスや、天然ガス、ガソリン、ブタンガス、メタノール等の炭化水素系燃料を改質して得られる水素リッチガスを、空気中の酸素と電気化学的に反応させて直接電気を取り出す発電装置である。上記の水素リッチガスを用いる燃料電池は炭化水素系燃料を水蒸気改質して水素リッチガスを生成する改質器と、電気を発生させる燃料電池本体と、発生した直流電気を交流に変換する変換器等で構成されている。
このような燃料電池は、燃料電池本体に使用する電解質、反応形態等により、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体電解質型燃料電池(SOFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)の5種類がある。このうち、固体高分子型燃料電池(PEFC)は、リン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)等の他の燃料電池と比較して、電解質が固体である点において有利な条件を備えている。
しかし、固体高分子型燃料電池(PEFC)は触媒に白金を使用し、かつ、作動温度が低いため、電極触媒が少量のCOによって被毒し、特に高電流密度領域において性能劣化が著しいという欠点がある。このため、改質器で生成された改質ガス(水素リッチガス)に含有されるCO濃度を10ppm程度まで低減する必要がある。
改質ガスからCOを除去して水素を精製する手段の一つとして、Pd合金膜を備えた水素選択透過膜が開発されており、改質ガス側(一次側)を高温高圧(例えば、500℃、3〜10kg/cm2(0.29〜0.98MPa))とすることにより、低水素分圧側(二次側)に水素を透過する。このような水素選択透過膜としては、例えば、金属製の支持体でPd合金膜を挟持したもの(特許文献1)、あるいは、微細な開口部を有する金属製支持体上にPd合金膜を備えたもの(特許文献2)が開発されている。
特開平7−124453号公報 特開2002−292259号公報
Pd合金膜を使用した水素精製法では、Pd合金膜にピンホールやクラック等がなければ原理的には水素のみが透過可能であり、水素の透過速度は水素拡散律速としてとらえられ、Pd合金膜の薄膜化が進められていた。しかし、従来の水素選択透過膜では、低水素分圧側(二次側)に金属製の支持体が存在するため、改質ガス側(一次側)よりも表面積が小さく、Pd合金膜中を拡散した水素原子の再結合反応が律速となって、薄膜化を進めるわりに水素透過速度が向上しないという問題があった。
本発明は上述のような実情に鑑みてなされたものであり、水素精製において優れた水素透過効率を示し信頼性の高い水素選択透過膜と、このような水素選択透過膜を簡便に製造するための製造方法を提供することを目的とする。
本発明の水素選択透過膜の製造方法は、導電性部材からなる仮支持体の一方の平坦面に、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第1Pd合金膜を形成する膜形成工程と、前記仮支持体を選択エッチングすることができる金属支持体に、両面エッチングにより複数の貫通孔を穿設するエッチング工程と、仮支持体に形成した前記第1Pd合金膜に前記金属支持体を間隙を設けて対向させ、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより前記間隙を埋めるように前記第1Pd合金膜上に第2Pd合金膜を形成して、前記第1Pd合金膜とともに一次側Pd合金膜とするとともに、該一次側Pd合金膜に前記金属支持体を接合する前期めっき工程と、前記金属支持体の前記貫通孔に露出する前記一次側Pd合金膜上に、めっき浴を攪拌することなく電気めっきにより厚みが0.1〜20μmの範囲内の二次側Pd合金膜を形成する後期めっき工程と、前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前期めっき工程では、前記第1Pd合金膜と前記金属支持体との間隙を0.1〜3μmの範囲で設定するような構成とした。
本発明の他の態様として、後期めっき工程では、増粘剤を添加して動粘度を1.00×10-7〜1.00×10-42/秒の範囲としためっき浴を使用するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記仮支持体は銅を使用し、前記金属支持体はステンレス鋼を使用するような構成とした。
本発明の水素選択透過膜は、一次側Pd合金膜と、金属支持体の貫通孔に露出するように一体的に配設された二次側Pd合金膜を備え、二次側Pd合金膜の比S/Aが2以上、厚みが0.1〜20μmの範囲内なので、一次側Pd合金膜を拡散した水素原子が低水素分圧側である二次側Pd合金膜の表面で容易に再結合することができ、従来の拡散・再結合反応律速が解消され、水素透過速度が従来の水素選択透過膜に比べて大幅に向上したものである。また、金属支持体をステンレス鋼とした場合には、高温雰囲気下での長時間耐久性が高いものとなる。
本発明の水素選択透過膜の製造方法は、膜形成工程にて、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第1Pd合金膜を形成するので、この第1Pd合金膜はピンホール等の欠陥のない緻密な層であり、さらに、前期めっき工程にて、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第2Pd合金膜を形成するので、この第2Pd合金膜もピンホール等の欠陥のない緻密な層であり、したがって、これら第1Pd合金膜と第2Pd合金膜とからなる一次側Pd合金膜は欠陥のない緻密な層となり、一方、後期めっき工程にて、めっき浴を攪拌することなく電気めっきにより厚み0.1〜20μmの範囲内の二次側Pd合金膜を形成するので、この二次側Pd合金膜はPdが柱状、針状、あるいは粒状に成長し、粗面を有するものとなり、これにより、一次側Pd合金膜(改質ガス側)と二次側Pd合金膜(低水素分圧側)の表面積比を制御することが可能となり、Pd合金膜表面での水素分子の解離反応と再結合反応による律速が制御可能となり、水素透過速度が大幅に向上した水素選択透過膜の製造が可能である。また、Pd合金膜の形成を電気めっきにより行うことができるため、従来の無電解めっきによる製造方法に比べて量産性に優れたものである。また、後期めっき工程にて、増粘剤を添加して動粘度を1.00×10-7〜1.00×10-42/秒の範囲としためっき浴を使用する場合には、表面積(比S/A)が更に大きな二次側Pd合金膜の形成が可能となる。また、仮支持体として銅を使用し、金属支持体としてステンレス鋼を使用する場合には、除去工程での仮支持体除去が容易であるとともに、高温雰囲気下での長時間耐久性が更に高い水素選択透過膜の製造が可能である。
本発明の水素選択透過膜の一実施形態を示す部分断面図である。 本発明の水素選択透過膜の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[水素選択透過膜]
図1は、本発明の水素選択透過膜の一実施形態を示す部分断面図である。図1において、水素選択透過膜1は、複数の微細な貫通孔3を有する金属支持体2と、この金属支持体2の一方の面2a側に貫通孔3を覆うように配設された一次側Pd合金膜4と、この一次側Pd合金膜4が貫通孔3に露出する面に一体的に配設された二次側Pd合金膜5とを備えている。尚、本発明では、Pd合金膜の用語は、その材質がPdのみからなるものも包含する。
水素選択透過膜1を構成する金属支持体2は、SUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼、銅、ニッケル等の電気導電性を有する材料を用いて作製することができ、厚みは10〜100μm、好ましくは20〜50μmの範囲内で適宜設定することができる。
この金属支持体2が有する貫通孔3は、開口径が10〜500μm、好ましくは15〜150μmの範囲とすることができる。また、貫通孔3の開口の合計面積は、金属支持体2の面積の20〜80%、好ましくは30〜80%を占めるように設定することができる。尚、貫通孔3の開口とは、Pd合金膜4が形成されている金属支持体2の表面2aにおける開口を意味する。
水素選択透過膜1を構成する一次側Pd合金膜4は、厚さが0.5〜20μm、好ましくは1〜5μmの範囲内であり、ピンホール等の欠陥のない緻密な層である。一次側Pd合金膜4の厚さが0.5μm未満であると、ピンホール等の欠陥が生じ易く、また、20μmを超えると水素拡散律速に因って水素透過速度が低下するので好ましくない。尚、一次側Pd合金膜4に緻密性は、窒素ガスおよびヘリウムガスを用いてガスリーク試験を行ったときに、窒素ガスリーク量が0.001cc/分/cm2以下、ヘリウムガスリーク量が0.01cc/分/cm2以下であることを意味する。
水素選択透過膜1を構成するニ次側Pd合金膜5は、一次側Pd合金膜4が貫通孔3に露出する面に一体的に配設されたものである。したがって、水素選択透過膜1の低水素分圧側に位置するPd合金膜はニ次側Pd合金膜5のみとなる。このニ次側Pd合金膜5は粗面を有するものであり、実測表面積Sと測定領域面積Aとの比S/Aが2以上、好ましくは2〜10の範囲内である。ニ次側Pd合金膜5の比S/Aが2未満であると、表面反応律速に因って水素透過速度が低下して好ましくない。尚、比S/Aは、(株)菱化システム製 Vert Scan 2.0を用いて所定の測定領域面積Aにおける実測表面積Sを測定して算出することができる。このような二次側Pd合金膜5の実測表面積は、一次側Pd合金膜4の実測表面積よりも大きいことが好ましい。これにより、一次側Pd合金膜4を拡散した水素原子が低水素分圧側である二次側Pd合金膜5の表面で容易に再結合することができる。
また、ニ次側Pd合金膜5の厚みは、0.1〜20μm、好ましくは1〜15μmの範囲内であり、厚みが0.1μm未満であると、表面反応律速に因って水素透過速度が低下し、20μmを超えると、膜中での水素拡散律速に因って、本発明の特徴を活かすことができなくなり好ましくない。尚、ニ次側Pd合金膜5の厚みは、(株)フィッシャー・インストルメンツ製の蛍光X線膜厚計を用いて測定する。
このような一次側Pd合金膜4とニ次側Pd合金膜5は、Pd含有量が60重量%以上の薄膜であり、上述のように、その材質がPdのみからなるものも包含する。一次側Pd合金膜4やニ次側Pd合金膜5がPd合金である場合、添加元素としてAg、Cu、Pt、Au、Ni、Co、V、Nb、Ta、Zr等の1種あるいは2種以上を含有するものであってよい。また、一次側Pd合金膜4とニ次側Pd合金膜5の材質は、同一であってもよく、また、相違するものであってもよい。
このような水素選択透過膜1は、一次側Pd合金膜4と、金属支持体2の貫通孔3に露出するように一体的に配設された二次側Pd合金膜4とを備え、二次側Pd合金膜5の比S/Aが2以上、厚みが0.1〜20μmの範囲内なので、一次側Pd合金膜4を拡散した水素原子が低水素分圧側である二次側Pd合金膜5の表面で容易に再結合することができ、従来の拡散・再結合反応律速が解消され、水素透過速度が従来の水素選択透過膜に比べて大幅に向上したものである。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明の水素選択透過膜は、これらに限定されるものではない。
[水素選択透過膜の製造方法]
次に、本発明の水素選択透過膜の製造方法を説明する。
図2は、本発明の水素選択透過膜の製造方法の一実施形態を、上述の本発明の水素選択透過膜1を例として示す工程図である。
本発明の製造方法は、まず、膜形成工程において、仮支持体6の一方の平坦面に、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第1Pd合金膜4aを形成する(図2(A))。仮支持体6は、別工程にて作製される金属支持体2に対して選択的にエッチング可能な材料からなるものであり、例えば、金属支持体2がSUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼である場合には、銅、ニッケル等とすることができる。尚、仮支持体6の第1Pd合金膜4aを形成しない面は平坦面でなくてもよい。
また、電気めっきによる第1Pd合金膜4aの形成では、めっき浴が攪拌されているので、PdまたはPd合金の析出が均一なものとなり、形成された第1Pd合金膜4aはピンホール等の欠陥のない緻密なものとなる。
一方、エッチング工程にて、複数の開口部を有するレジストパターンを金属支持体2の両面に形成し、このレジストパターンをマスクとして金属支持体2を表裏からエッチングして貫通孔3を穿設する(図2(B))。この金属支持体2は、上述のように、仮支持体6を選択エッチングすることができる導電性部材であり、例えば、SUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼等を用いることができ、厚みは10〜50μmとすることが好ましい。
貫通孔3を穿設するためのエッチングは、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等の従来公知のエッチングにより行うことができる。このエッチング工程では、貫通孔3の開口面積の合計が金属支持体2の面積の20〜80%、好ましくは30〜80%を占めるように複数の貫通孔3を穿設することができる。穿設する各貫通孔3の開口径は、例えば、10〜500μm、好ましくは15〜150μmの範囲で適宜設定することができる。このように水素透過膜の形成前に金属支持体2に両面エッチングで複数の貫通孔3を穿設して金属支持体2を作製するので、高開口率の金属支持体2を得ることができる。
次に、前期めっき工程において、仮支持体6に形成した第1Pd合金膜4aに金属支持体2を間隙Gを設けて対向させ(図2(C))、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより間隙Gを埋めるように第1Pd合金膜4a上に第2Pd合金膜4bを形成する。これにより、第1Pd合金膜4aと第2Pd合金膜4bとからなる一次側Pd合金膜4を形成するとともに、この一次側Pd合金膜4に金属支持体2を接合する(図2(D))。金属支持体2と第1Pd合金膜4aとの間隙Gは、第2Pd合金膜4bの厚み、したがって一次側Pd合金膜4の厚みを決定するものであり、例えば、0.1〜3μmの範囲で適宜設定することができる。尚、本発明では、間隙Gに優先的に析出が生じることにより、金属支持体2と第1Pd合金膜4aとの間隙Gと、第1Pd合金膜4a上の他の領域とで、第2Pd合金膜4bの厚みがことなるものであってもよい。
次いで、後期めっき工程において、金属支持体2の貫通孔3に露出する一次側Pd合金膜4上に、めっき浴を攪拌することなく電気めっきにより二次側Pd合金膜5を形成する(図2(E))。この電気めっきによる二次側Pd合金膜5の形成では、めっき浴が攪拌されていないので、PdまたはPd合金の析出が不均一となり、析出した微小な核に選択的にPdまたはPd合金が析出して柱状、針状、あるいは粒状に成長し、二次側Pd合金膜5は粗面を有するものとなる。このようなニ次側Pd合金膜5は、厚みが0.1〜20μm、好ましくは1〜15μmの範囲内となるように形成する。使用するめっき浴は、前期めっき工程において使用するめっき浴と同じ組成であってよく、また、組成が異なるものでもよい。さらに、使用するめっき浴に増粘剤を添加して、動粘度を1.00×10-7〜1.00×10-42/秒とすることにより、二次側Pd合金膜5の表面状態をより粗面とすることができる。使用する増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(分子量20,000)等を挙げることができ、添加量は、例えば、0.1〜195g/L程度とすることができる。尚、動粘度の測定は、柴田科学(株)製 ウベローデ型粘度計を使用して行なう。
次いで、除去工程にて、仮支持体6を選択エッチングにより除去することにより、本発明の水素選択透過膜1を得る(図2(F))。選択エッチングは、例えば、仮支持体6が銅からなる場合には、アンモニア系のエッチング液を使用し、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等により行うことができる。
このような本発明の水素選択透過膜の製造方法は、膜形成工程にて、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第1Pd合金膜4aを形成するので、この第1Pd合金膜はピンホール等の欠陥のない緻密な層であり、さらに、前期めっき工程にて、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第2Pd合金膜4bを形成するので、この第2Pd合金膜もピンホール等の欠陥のない緻密な層である。したがって、これら第1Pd合金膜4aと第2Pd合金膜4bとからなる一次側Pd合金膜4は、欠陥のない緻密な層となる。一方、後期めっき工程にて、めっき浴を攪拌することなく電気めっきにより厚み0.1〜20μmの範囲内の二次側Pd合金膜5を形成するので、この二次側Pd合金膜5はPdが柱状、針状、あるいは粒状に成長し、粗面を有するものとなる。したがって、本発明では、一次側Pd合金膜4(改質ガス側)と二次側Pd合金膜5(低水素分圧側)の表面積比を制御することが可能となり、Pd合金膜表面での水素分子の解離反応と再結合反応により律速を制御することが可能となり、水素透過速度が大幅に向上した水素選択透過膜の製造が可能である。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明の水素選択透過膜の製造方法は、これらに限定されるものではない。
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
(膜形成工程)
仮支持体として厚み50μmの銅材を準備し、この銅材の一方の面に、めっき浴を攪拌しながら下記の条件で電気めっきによりPd合金膜(厚み13.5μm、Pd含有量77重量%)を形成して第1Pd合金膜とした。めっき浴の攪拌条件は600〜800rpm(攪拌機はアズワン(株)製 CT−3A使用)とした。
(電気めっき(第1Pd合金膜の形成)条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:25g/L)
・pH : 7〜9
・電流密度 : 5.0A/dm2
・液温 : 60℃
・動粘度 : 5.90×10-72/秒
形成した第1Pd合金膜について、窒素ガスおよびヘリウムガスを用いてガスリーク試験を行った結果、窒素ガスリーク量が0.0001cc/分/cm2、ヘリウムガスリーク量が0.001cc/分/cm2であり、緻密であることが確認された。
(エッチング工程)
金属支持体として厚み50μmのSUS304材を準備した。次いで、このSUS304材の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、所定のフォトマスクを介して両面のレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、SUS304材の両面に、直径が80μmの円形開口をピッチ110μmで複数備えたレジストパターンを形成した。尚、表裏の円形開口はSUS304材を介して対向するものとした。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、下記の条件でSUS304材を両面からスプレー方式でエッチングした。
(エッチング条件)
・温度 : 50℃
・塩化第二鉄濃度: 45ボーメ
・圧力 : 0.30MPa
上記のエッチング処理が終了した後、水酸化ナトリウムを用いてレジストパターンを除去し、水洗した。これにより、複数の貫通孔を穿設して金属支持体とした。これらの貫通孔は、SUS304材の表面の開口径が85μmであり、深さ方向の中央部での開口径が50μmである断面円形状のものであった。そして、貫通孔の開口面積の合計は、金属支持体であるSUS304材の面積の54%であった。
(前期めっき工程)
上記のように貫通孔を穿設した金属支持体を、仮支持体(銅材)上に形成した第1Pd合金膜に1.5μmの間隙を設けて対向させ、金属支持体とPd合金膜を外部電極に接続し、この状態でめっき浴を攪拌しながら電気めっきを行った。これにより、金属支持体と第1Pd合金膜との間隙部にPd合金を析出させて第2Pd合金膜を形成し、上記の第1Pd合金膜と一体化させ一次側Pd合金膜(厚み15.0μm)とするとともに、一次側Pd合金膜と金属支持体とを接合した。尚、めっき浴の攪拌条件、電気めっき条件は、上述の膜形成工程と同様とした。
形成した一次側Pd合金膜について、窒素ガスおよびヘリウムガスを用いてガスリーク試験を行った結果、窒素ガスリーク量が0.0001cc/分/cm2、ヘリウムガスリーク量が0.001cc/分/cm2であり、緻密であることが確認された。
(後期めっき工程)
次に、金属支持体の貫通孔に露出する一次側Pd合金膜上に、めっき浴を攪拌することなく下記の条件で電気めっきによりPd合金膜(厚み4μm、Pd含有量77%)を形成して二次側Pd合金膜とした。
(電気めっき(二次側Pd合金膜の形成)条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:25g/L)
(増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度:1.0g/L)
・pH : 7〜8
・電流密度 : 5.0A/dm2
・液温 : 60℃
・動粘度 : 8.00×10-5 2/秒
形成した二次側Pd合金膜の実測表面積Sと測定領域面積Aとの比S/Aを、(株)菱化システム製 Vert Scan 2.0を用いて測定した結果、比S/Aは2.6であった。尚、二次側Pd合金膜の厚みは、(株)フィッシャー・インストルメンツ製の蛍光X線膜厚計を用いて測定した。
また、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを、(株)菱化システム製 Vert Scan 2.0を用いて測定した結果、S>S′であった。
(除去工程)
次に、アンモニア系のエッチング液を使用して、スプレー方式により仮支持体(銅材)を選択的にエッチングして除去した。
これにより、水素選択透過膜が得られた。
[実施例2]
後期めっき工程での電気めっき時間を短くして、二次側Pd合金膜の厚みを0.1μmとし、比S/Aを2.0とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
[実施例3]
後期めっき工程で、増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度を125g/Lとして動粘度を1.60×10-5 2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の厚みを14μmとし、比S/Aを3.2とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
[実施例4]
後期めっき工程で、増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度を125g/Lとして動粘度を1.60×10-5 2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の厚みを10μmとし、比S/Aを2.9とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
[実施例5]
後期めっき工程で、増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度を125g/Lとして動粘度を1.60×10-7 2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の厚みを20μmとし、比S/Aを3.7とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
[実施例6]
後期めっき工程でのめっき浴の攪拌を弱めに行い、二次側Pd合金膜の比S/Aを2.0とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
[比較例1]
後期めっき工程を省略し、二次側Pd合金膜を形成しない他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
[比較例2]
後期めっき工程で、めっき浴の攪拌を行った他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。このような後期めっき工程で形成したニ次側Pd合金膜について、実施例1と同様にガスリーク試験を行った結果、窒素ガスリーク量が0.0001cc/分/cm2、ヘリウムガスリーク量が0.001cc/分/cm2であり、緻密であることが確認された。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S<S′であった。
[比較例3]
後期めっき工程での電気めっき時間を短くするとともに、めっき浴の攪拌を強めて、二次側Pd合金膜の厚みを0.05μmとし、比S/Aを2.0とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
[比較例4]
後期めっき工程での電気めっき時間を長くし、増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度を1g/Lとして動粘度を6.30×10-7 2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の厚みを24μmとし、比S/Aを6とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
[比較例5]
後期めっき工程でのめっき浴の攪拌を弱めに行い、二次側Pd合金膜の比S/Aを1.7とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S<S′であった。
[比較例6]
後期めっき工程でのめっき浴の攪拌を弱めに行い、二次側Pd合金膜の比S/Aを1.3とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S<S′であった。
[比較例7]
後期めっき工程でのめっき浴に増粘剤(ポリエチレングリコール)を添加せず、動粘度を5.90×10-7 2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の比S/Aを1.2とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S<S′であった。
[評 価]
上記のように作製した各水素選択透過膜を3cm×3cmの寸法に切断して改質器に装着し、メタノールと水蒸気の混合物を高温高圧条件(500℃、0.50MPa)で連続供給し、改質開始直後から300時間経過するまでの間の水素選択透過膜の金属支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度(ppm)、および、水素リッチガスの流量(L/分)を測定し、下記の表1に示した。
Figure 0005368892
表1に示されるように、一次側Pd合金膜に厚さ0.1〜20μmの二次側Pd合金膜が一体的に形成された構造で、かつ、二次側Pd合金膜の比S/Aが2以上である本発明の水素選択透過膜(実施例1〜6)は、優れた水素選択透過性を具備し水素透過速度が高いことが確認された。
これに対し、二次側Pd合金膜を備えていない水素選択透過膜(比較例1)、および、二次側Pd合金膜が一次側Pd合金膜と同様に緻密な膜である水素選択透過膜(比較例2)は、水素リッチガスの流量が本発明の水素選択透過膜(実施例1〜6)に比べて大きく劣るものであった。
また、二次側Pd合金膜の厚さが0.1〜20μmから外れる水素選択透過膜(比較例3、4)、および、二次側Pd合金膜の比S/Aが2未満である水素選択透過膜(比較例5〜7)は、水素リッチガスの流量が本発明の水素選択透過膜(実施例1〜6)に比べて低いものであった。
高純度の水素リッチガスを必要とする種々の分野に利用することができる。
1…水素選択透過膜
2…金属支持体
3…貫通孔
4…一次側Pd合金膜
4a…第1Pd合金膜
4b…第2Pd合金膜
5…一次側Pd合金膜
6…仮支持体

Claims (4)

  1. 導電性部材からなる仮支持体の一方の平坦面に、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第1Pd合金膜を形成する膜形成工程と、
    前記仮支持体を選択エッチングすることができる金属支持体に、両面エッチングにより複数の貫通孔を穿設するエッチング工程と、
    仮支持体に形成した前記第1Pd合金膜に前記金属支持体を間隙を設けて対向させ、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより前記間隙を埋めるように前記第1Pd合金膜上に第2Pd合金膜を形成して、前記第1Pd合金膜とともに一次側Pd合金膜とするとともに、該一次側Pd合金膜に前記金属支持体を接合する前期めっき工程と、
    前記金属支持体の前記貫通孔に露出する前記一次側Pd合金膜上に、めっき浴を攪拌することなく電気めっきにより厚みが0.1〜20μmの範囲内の二次側Pd合金膜を形成する後期めっき工程と、
    前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有することを特徴とする水素選択透過膜の製造方法。
  2. 前期めっき工程では、前記第1Pd合金膜と前記金属支持体との間隙を0.1〜3μmの範囲で設定することを特徴とする請求項1に記載の水素選択透過膜の製造方法。
  3. 後期めっき工程では、増粘剤を添加して動粘度を1.00×10-7〜1.00×10-42/秒の範囲としためっき浴を使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水素選択透過膜の製造方法。
  4. 前記仮支持体は銅を使用し、前記金属支持体はステンレス鋼を使用することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水素選択透過膜の製造方法。
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