JP5368892B2 - 水素選択透過膜の製造方法 - Google Patents
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Description
このような燃料電池は、燃料電池本体に使用する電解質、反応形態等により、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体電解質型燃料電池(SOFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)の5種類がある。このうち、固体高分子型燃料電池(PEFC)は、リン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)等の他の燃料電池と比較して、電解質が固体である点において有利な条件を備えている。
改質ガスからCOを除去して水素を精製する手段の一つとして、Pd合金膜を備えた水素選択透過膜が開発されており、改質ガス側(一次側)を高温高圧(例えば、500℃、3〜10kg/cm2(0.29〜0.98MPa))とすることにより、低水素分圧側(二次側)に水素を透過する。このような水素選択透過膜としては、例えば、金属製の支持体でPd合金膜を挟持したもの(特許文献1)、あるいは、微細な開口部を有する金属製支持体上にPd合金膜を備えたもの(特許文献2)が開発されている。
本発明は上述のような実情に鑑みてなされたものであり、水素精製において優れた水素透過効率を示し信頼性の高い水素選択透過膜と、このような水素選択透過膜を簡便に製造するための製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、後期めっき工程では、増粘剤を添加して動粘度を1.00×10-7〜1.00×10-4m2/秒の範囲としためっき浴を使用するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記仮支持体は銅を使用し、前記金属支持体はステンレス鋼を使用するような構成とした。
[水素選択透過膜]
図1は、本発明の水素選択透過膜の一実施形態を示す部分断面図である。図1において、水素選択透過膜1は、複数の微細な貫通孔3を有する金属支持体2と、この金属支持体2の一方の面2a側に貫通孔3を覆うように配設された一次側Pd合金膜4と、この一次側Pd合金膜4が貫通孔3に露出する面に一体的に配設された二次側Pd合金膜5とを備えている。尚、本発明では、Pd合金膜の用語は、その材質がPdのみからなるものも包含する。
水素選択透過膜1を構成する金属支持体2は、SUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼、銅、ニッケル等の電気導電性を有する材料を用いて作製することができ、厚みは10〜100μm、好ましくは20〜50μmの範囲内で適宜設定することができる。
水素選択透過膜1を構成する一次側Pd合金膜4は、厚さが0.5〜20μm、好ましくは1〜5μmの範囲内であり、ピンホール等の欠陥のない緻密な層である。一次側Pd合金膜4の厚さが0.5μm未満であると、ピンホール等の欠陥が生じ易く、また、20μmを超えると水素拡散律速に因って水素透過速度が低下するので好ましくない。尚、一次側Pd合金膜4に緻密性は、窒素ガスおよびヘリウムガスを用いてガスリーク試験を行ったときに、窒素ガスリーク量が0.001cc/分/cm2以下、ヘリウムガスリーク量が0.01cc/分/cm2以下であることを意味する。
このような一次側Pd合金膜4とニ次側Pd合金膜5は、Pd含有量が60重量%以上の薄膜であり、上述のように、その材質がPdのみからなるものも包含する。一次側Pd合金膜4やニ次側Pd合金膜5がPd合金である場合、添加元素としてAg、Cu、Pt、Au、Ni、Co、V、Nb、Ta、Zr等の1種あるいは2種以上を含有するものであってよい。また、一次側Pd合金膜4とニ次側Pd合金膜5の材質は、同一であってもよく、また、相違するものであってもよい。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明の水素選択透過膜は、これらに限定されるものではない。
次に、本発明の水素選択透過膜の製造方法を説明する。
図2は、本発明の水素選択透過膜の製造方法の一実施形態を、上述の本発明の水素選択透過膜1を例として示す工程図である。
本発明の製造方法は、まず、膜形成工程において、仮支持体6の一方の平坦面に、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第1Pd合金膜4aを形成する(図2(A))。仮支持体6は、別工程にて作製される金属支持体2に対して選択的にエッチング可能な材料からなるものであり、例えば、金属支持体2がSUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼である場合には、銅、ニッケル等とすることができる。尚、仮支持体6の第1Pd合金膜4aを形成しない面は平坦面でなくてもよい。
また、電気めっきによる第1Pd合金膜4aの形成では、めっき浴が攪拌されているので、PdまたはPd合金の析出が均一なものとなり、形成された第1Pd合金膜4aはピンホール等の欠陥のない緻密なものとなる。
貫通孔3を穿設するためのエッチングは、スプレー方式、浸漬方式、吹きかけ方式等の従来公知のエッチングにより行うことができる。このエッチング工程では、貫通孔3の開口面積の合計が金属支持体2の面積の20〜80%、好ましくは30〜80%を占めるように複数の貫通孔3を穿設することができる。穿設する各貫通孔3の開口径は、例えば、10〜500μm、好ましくは15〜150μmの範囲で適宜設定することができる。このように水素透過膜の形成前に金属支持体2に両面エッチングで複数の貫通孔3を穿設して金属支持体2を作製するので、高開口率の金属支持体2を得ることができる。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明の水素選択透過膜の製造方法は、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
(膜形成工程)
仮支持体として厚み50μmの銅材を準備し、この銅材の一方の面に、めっき浴を攪拌しながら下記の条件で電気めっきによりPd合金膜(厚み13.5μm、Pd含有量77重量%)を形成して第1Pd合金膜とした。めっき浴の攪拌条件は600〜800rpm(攪拌機はアズワン(株)製 CT−3A使用)とした。
(電気めっき(第1Pd合金膜の形成)条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:25g/L)
・pH : 7〜9
・電流密度 : 5.0A/dm2
・液温 : 60℃
・動粘度 : 5.90×10-7m2/秒
金属支持体として厚み50μmのSUS304材を準備した。次いで、このSUS304材の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製 OFPR)をディップ法により塗布(塗布量7μm(乾燥時))した。次に、所定のフォトマスクを介して両面のレジスト塗膜を露光し、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して現像した。これにより、SUS304材の両面に、直径が80μmの円形開口をピッチ110μmで複数備えたレジストパターンを形成した。尚、表裏の円形開口はSUS304材を介して対向するものとした。
次に、上記のレジストパターンをマスクとして、下記の条件でSUS304材を両面からスプレー方式でエッチングした。
(エッチング条件)
・温度 : 50℃
・塩化第二鉄濃度: 45ボーメ
・圧力 : 0.30MPa
上記のように貫通孔を穿設した金属支持体を、仮支持体(銅材)上に形成した第1Pd合金膜に1.5μmの間隙を設けて対向させ、金属支持体とPd合金膜を外部電極に接続し、この状態でめっき浴を攪拌しながら電気めっきを行った。これにより、金属支持体と第1Pd合金膜との間隙部にPd合金を析出させて第2Pd合金膜を形成し、上記の第1Pd合金膜と一体化させ一次側Pd合金膜(厚み15.0μm)とするとともに、一次側Pd合金膜と金属支持体とを接合した。尚、めっき浴の攪拌条件、電気めっき条件は、上述の膜形成工程と同様とした。
形成した一次側Pd合金膜について、窒素ガスおよびヘリウムガスを用いてガスリーク試験を行った結果、窒素ガスリーク量が0.0001cc/分/cm2、ヘリウムガスリーク量が0.001cc/分/cm2であり、緻密であることが確認された。
次に、金属支持体の貫通孔に露出する一次側Pd合金膜上に、めっき浴を攪拌することなく下記の条件で電気めっきによりPd合金膜(厚み4μm、Pd含有量77%)を形成して二次側Pd合金膜とした。
(電気めっき(二次側Pd合金膜の形成)条件)
・使用浴 : 塩化Pdめっき浴(Pd濃度:25g/L)
(増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度:1.0g/L)
・pH : 7〜8
・電流密度 : 5.0A/dm2
・液温 : 60℃
・動粘度 : 8.00×10-5 m2/秒
また、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを、(株)菱化システム製 Vert Scan 2.0を用いて測定した結果、S>S′であった。
次に、アンモニア系のエッチング液を使用して、スプレー方式により仮支持体(銅材)を選択的にエッチングして除去した。
これにより、水素選択透過膜が得られた。
後期めっき工程での電気めっき時間を短くして、二次側Pd合金膜の厚みを0.1μmとし、比S/Aを2.0とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
後期めっき工程で、増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度を125g/Lとして動粘度を1.60×10-5 m2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の厚みを14μmとし、比S/Aを3.2とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
後期めっき工程で、増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度を125g/Lとして動粘度を1.60×10-5 m2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の厚みを10μmとし、比S/Aを2.9とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
後期めっき工程で、増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度を125g/Lとして動粘度を1.60×10-7 m2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の厚みを20μmとし、比S/Aを3.7とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
後期めっき工程でのめっき浴の攪拌を弱めに行い、二次側Pd合金膜の比S/Aを2.0とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
後期めっき工程を省略し、二次側Pd合金膜を形成しない他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
後期めっき工程で、めっき浴の攪拌を行った他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。このような後期めっき工程で形成したニ次側Pd合金膜について、実施例1と同様にガスリーク試験を行った結果、窒素ガスリーク量が0.0001cc/分/cm2、ヘリウムガスリーク量が0.001cc/分/cm2であり、緻密であることが確認された。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S<S′であった。
後期めっき工程での電気めっき時間を短くするとともに、めっき浴の攪拌を強めて、二次側Pd合金膜の厚みを0.05μmとし、比S/Aを2.0とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
後期めっき工程での電気めっき時間を長くし、増粘剤(ポリエチレングリコール)濃度を1g/Lとして動粘度を6.30×10-7 m2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の厚みを24μmとし、比S/Aを6とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S>S′であった。
後期めっき工程でのめっき浴の攪拌を弱めに行い、二次側Pd合金膜の比S/Aを1.7とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S<S′であった。
後期めっき工程でのめっき浴の攪拌を弱めに行い、二次側Pd合金膜の比S/Aを1.3とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S<S′であった。
後期めっき工程でのめっき浴に増粘剤(ポリエチレングリコール)を添加せず、動粘度を5.90×10-7 m2/秒とすることにより、二次側Pd合金膜の比S/Aを1.2とした他は、実施例1と同様にして、水素選択透過膜を作製した。
尚、一次側Pd合金膜の実測表面積S′と二次側Pd合金膜の実測表面積Sを実施例1と同様に測定した結果、S<S′であった。
上記のように作製した各水素選択透過膜を3cm×3cmの寸法に切断して改質器に装着し、メタノールと水蒸気の混合物を高温高圧条件(500℃、0.50MPa)で連続供給し、改質開始直後から300時間経過するまでの間の水素選択透過膜の金属支持体側へ透過する水素リッチガスのCO濃度(ppm)、および、水素リッチガスの流量(L/分)を測定し、下記の表1に示した。
これに対し、二次側Pd合金膜を備えていない水素選択透過膜(比較例1)、および、二次側Pd合金膜が一次側Pd合金膜と同様に緻密な膜である水素選択透過膜(比較例2)は、水素リッチガスの流量が本発明の水素選択透過膜(実施例1〜6)に比べて大きく劣るものであった。
また、二次側Pd合金膜の厚さが0.1〜20μmから外れる水素選択透過膜(比較例3、4)、および、二次側Pd合金膜の比S/Aが2未満である水素選択透過膜(比較例5〜7)は、水素リッチガスの流量が本発明の水素選択透過膜(実施例1〜6)に比べて低いものであった。
2…金属支持体
3…貫通孔
4…一次側Pd合金膜
4a…第1Pd合金膜
4b…第2Pd合金膜
5…一次側Pd合金膜
6…仮支持体
Claims (4)
- 導電性部材からなる仮支持体の一方の平坦面に、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより第1Pd合金膜を形成する膜形成工程と、
前記仮支持体を選択エッチングすることができる金属支持体に、両面エッチングにより複数の貫通孔を穿設するエッチング工程と、
仮支持体に形成した前記第1Pd合金膜に前記金属支持体を間隙を設けて対向させ、めっき浴を攪拌しながら電気めっきにより前記間隙を埋めるように前記第1Pd合金膜上に第2Pd合金膜を形成して、前記第1Pd合金膜とともに一次側Pd合金膜とするとともに、該一次側Pd合金膜に前記金属支持体を接合する前期めっき工程と、
前記金属支持体の前記貫通孔に露出する前記一次側Pd合金膜上に、めっき浴を攪拌することなく電気めっきにより厚みが0.1〜20μmの範囲内の二次側Pd合金膜を形成する後期めっき工程と、
前記仮支持体を選択エッチングにより除去する除去工程と、を有することを特徴とする水素選択透過膜の製造方法。 - 前期めっき工程では、前記第1Pd合金膜と前記金属支持体との間隙を0.1〜3μmの範囲で設定することを特徴とする請求項1に記載の水素選択透過膜の製造方法。
- 後期めっき工程では、増粘剤を添加して動粘度を1.00×10-7〜1.00×10-4m2/秒の範囲としためっき浴を使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水素選択透過膜の製造方法。
- 前記仮支持体は銅を使用し、前記金属支持体はステンレス鋼を使用することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水素選択透過膜の製造方法。
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