JP4712953B2 - 汚水浄化槽 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流量調整槽、嫌気処理槽及び汚水浄化槽に関する。更に詳しくは、し尿や雑排水などの汚水又は排水を処理する汚水浄化槽の槽内に設けられ、特にその形状に特徴がある流量調整槽及び嫌気処理槽並びにこの流量調整槽及び嫌気処理槽を槽内に組み込んだ汚水浄化槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
汚水浄化槽は、従来から種々知られている。これらのうちの一例は、図5に示すように上流側から順に、嫌気濾床槽(第1室)、嫌気濾床槽(第2室)、好気処理槽、沈殿槽及び消毒槽が配置され、かつ、嫌気処理槽の上方部に流量調整部(図5のH.W.L.とL.W.L.とで挟まれる部分)が設けられた汚水浄化槽である(特開平4−367793号公報)。
【0003】
ここで、流量調整部の目的は、槽内へ多量の汚水が流入した場合であっても汚水処理を安定に行うこと、すなわち、槽内へ流入した多量の汚水を一時的に貯留しながら、これを下流側の処理槽へ所定の流速で供給(送液)して、汚水浄化槽における汚水処理を安定に行うことである。また、汚水の液面は、通常、最高水位(HWL)と最低水位(LWL)との間の流量調整域を上下する。ここで、最低水位よりも下の空間を無駄にすることは、高効率化・小型化を狙った汚水浄化槽の設計では避けなければならない。
上記の特開平4−367793号公報の例では、流量調整部の下方を嫌気処理槽とすることでこの問題に対処している。
【0004】
図6に、他の従来例の汚水浄化槽を示す。上流側から、嫌気濾床槽2、好気処理槽4、沈殿槽5及び消毒槽6が配置され、かつ、嫌気処理槽2内の上部の一画に沈降分離室14が設けられた汚水浄化槽である(実開昭54−120165号公報)。
【0005】
ここで、嫌気処理槽の目的は、汚水浄化槽に流入した汚水の固液分離を行ない、上澄液を次槽に送液し、沈降した固体分(堆積汚泥)を嫌気処理することである。
この嫌気処理を効率よく進行させるためには、堆積汚泥に酸素を供給させない、すなわち流入水を堆積汚泥に接触させないようにしなければならない。また、流入水ショックによる堆積汚泥の流出を防止しなければならない。
【0006】
上記の実開昭54−120165号公報の例では、嫌気処理槽の上部に沈降分離室を設けることでこの問題に対処している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、流量調整槽又は嫌気処理槽を備える汚水浄化槽であって、従来の汚水浄化槽よりも更にその性能を向上させ、コンパクトで、汚水を安定に処理できる汚水浄化槽を提供すること、あるいはそのような汚水浄化槽に好適に使用される流量調整槽又は嫌気処理槽を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明の汚水浄化槽では次の構成をとった。
【0009】
すなわち、本発明は、先ず、流量調整槽であって、その最高水位(HWL)の半分の水位(以下、HWL/2と略す)の水平面によってこの流量調整槽を有効な上部と有効な下部とに二分するとき、前記有効な下部の容積は前記有効な上部の容積より小さい流量調整槽を備え、更に、嫌気処理槽であって、その最高水位(HWL)の半分の水位の水平面によってこの嫌気処理槽を有効な上部と有効な下部とに二分するとき、前記有効な上部の容積に比べて前記有効な下部の容積が大きい嫌気処理槽とが、上流側から任意の順に並設されているとともに、前記流量調整槽と前記嫌気処理槽とが共通の仕切壁で隔てられ隣接され、前記流量調整槽の槽内の最高水位と最低水位との間に充填材を充填した濾床が形成されている、汚水浄化槽に関する。
また、本発明は、流量調整槽であって、その最高水位(HWL)の半分の水位の水平面によってこの流量調整槽を有効な上部と有効な下部に二分するとき、前記有効な下部の容積は前記有効な上部の容積より小さい流量調整槽と、嫌気処理槽であって、その最高水位(HWL)の半分の水位の水平面によってこの嫌気処理槽を有効な上部と有効な下部とに二分するとき、前記有効な上部の容積に比べて前記有効な下部の容積が大きい嫌気処理槽とが、上流側から任意の順に並設されているとともに、前記流量調整槽と前記嫌気処理槽とが共通の仕切壁で隔てられ隣接され、前記嫌気処理槽の槽内の上部の一画には沈降分離室が設置されてなる汚水浄化槽に関する。
【0010】
言い換えれば、HWL/2の水平面によって槽を上部と下部に二分するとき、前記下部(底面からHWL/2まで)の容積は前記上部(HWL/2からHWLまで)の容積の10%〜90%(好ましくは15%〜75%、更に好ましくは20%〜60%)となるように、その形状を下に絞り込んだ構造(頭でっかち又は逆L字状の構造)とした流量調整槽3を備えている。なお、前記下部の容積が前記上部の容積の10%未満の場合は、エアリフトポンプ等の送液ポンプの揚水管を配するスペースが狭すぎて、好ましくない。
【0011】
ここで、流量調整槽3の四周は、通常、汚水浄化槽の外壁8と一又は二以上の仕切壁9とによって囲い、その仕切壁9の少なくとも一は途中に屈曲部(絞り部)9bを有して立設してなる仕切壁が好ましい。
【0012】
その場合、前記屈曲部9bは、好ましくは、最低水位(LWL)又はその近傍の高さに形成する。ここで「近傍」とは流量調整槽の最高水位(HWL)時の水深の概ね20%以内を意味する。
【0013】
また、この流量調整槽3における流量調整装置は、好ましくは、流量調整槽の最低水位(LWL)より下の汚水を揚水して次槽に送るエアリフトポンプ及び移送管からなるものである。
【0014】
また、最高水位(HWL)と最低水位(LWL)との間の槽内には、好ましくは、充填材を充填した濾床13を形成させる。
【0015】
本発明は、また、汚水浄化槽内に設けられる嫌気処理槽、すなわち、その最高水位(HWL)の半分の水位の水平面によってこの嫌気処理槽を有効な上部と有効な下部とに二分するとき、前記有効な上部の容積は前記有効な下部の容積(これを100とする。)に対して20%〜90%(好ましくは30%〜80%、更に好ましくは40%〜70%)であることを特徴とする嫌気処理槽2にも関する。
なお、上記有効な上部の容積が、有効な下部の容積の20%未満では、堆積汚泥がスカム化して浮上した場合、このスカムを貯留するスペースが狭すぎて好ましくない。
【0016】
ここで、嫌気処理槽2の四周は、通常、汚水浄化槽の外壁8と一又は二以上の仕切壁9とによって囲われ、仕切壁9の少なくとも一は、好ましくは、前記仕切壁の少なくとも一は途中に屈曲部9bを有して立設してなる仕切壁である。
【0017】
また、上記嫌気処理槽2の槽内の上部の一画には沈降分離室を設置し、汚水をこの沈降分離室で受け、受けた沈降性固形物を沈降分離室の下部から嫌気処理槽の底部へ落として堆積させる構造が好ましい。
【0020】
また、上記流量調整槽3及び嫌気処理槽2の下流側には、更に好気処理槽及び消毒槽を配置することが好ましい。
【0021】
【作用】
本発明の流量調整槽3においては、その有効な下部の容積は、有効な上部の容積よりも小さく、また最低水位は、通常、屈曲部(絞り部)又はその近傍に存在するため、最低水位以下の空間、つまり送液不能な無駄な空間は小さい。そのため流量調整槽がコンパクトになる。
【0022】
本発明の嫌気処理槽2においては、その有効な上部の容積は、有効な下部の容積よりも小さいので、汚水の流入時に堆積汚泥に接触する確率が低いままに、上澄液を次槽に送液できる。また、流入水ショックによる堆積汚泥の流出も少ない。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を添付図面により更に具体的に説明する。図1は本発明の第一形態の汚水浄化槽の構成略図である。上流側から、流量調整槽3、嫌気処理槽2、好気処理槽4、沈殿槽5及び消毒槽6の順に配列されている。流量調整槽3の仕切はその3面が汚水浄化槽の外壁(外槽)8で兼用され、残る1面が嫌気処理槽2との間の仕切壁9(9a/9b/9c)が使われている。流量調整槽3に流入した汚水は、流量調整槽3に配置された流量調整装置によって、下流側の嫌気処理槽2に送液される。
【0024】
流量調整槽3の仕切壁9は垂直部9a/9cと屈曲部(絞り部)9bとからなり、その屈曲部(絞り部)9bのレベルにLWLが形成されている。図には示さなかったが、最高水位(HWL)の半分の水位(HWL/2)も屈曲部(絞り部)9b又はその近傍にある。また、図1から分かるように、屈曲部(絞り部)9bよりも上の部分は嫌気処理槽2側に向かって張り出しており(言い換えれば、屈曲部9bよりも下の部分で嫌気処理槽2が流量調整槽3側に向かって張り出しており)、流量調整槽3におけるLWL以下の容積は小さい(逆に、隣接する嫌気処理槽2の下部の容積が大きい)。
【0025】
また、流量調整槽3の最高水位(HWL)と最低水位(LWL)の間には充填材を充填した濾床13が形成されている。使用される充填材としては、網様円筒状、骨格様球状、板状ヘチマ様、小円筒状、波板状等がある。
流量調整槽3に濾床13を設けることは必須ではないが、濾床13があれば、これが汚水中への水没と空気中への露出とを繰り返し、流量調整槽3中においても好気生物反応を進行させうるので好ましい。この好気生物反応には、特別な部材及び装置(例えば、散気部材からの曝気)を必要としない。
【0026】
ここで、流量調整装置は、汚水揚水用のエアリフトポンプ10と移送管11とで構成され、分水計量マス12も付設されているものである。エアリフトポンプの代わりに、汎用の電動ポンプを使うこともできる。
【0027】
次に、汚水の流れを図1で説明する。汚水は、先ず、流入口1から流量調整槽3に入り、エアリフトポンプ10により揚水され、分水計量マス12によって分水計量後、移送管11を経て嫌気処理槽2へ送液される。嫌気処理槽2では、夾雑物の除去と共に汚水は嫌気分解を受け、次に好気処理槽4へ移流する。好気処理槽4では、曝気により有機物の酸化・分解とアンモニアの硝化が行われ、沈殿槽5へと移流する。そして、消毒槽6で滅菌され、流出口7から放流される。
【0028】
図2は本発明の第二形態の汚水浄化槽の構成略図である。図1の汚水浄化槽と異なる点は、流量調整槽3と嫌気処理槽2との順序を逆に配置させた点である。すなわち、第1槽を嫌気処理槽2とし、第2槽を流量調整槽3とし、第3槽以降は図1と同様で、好気処理槽4、沈殿槽5及び消毒槽6の順で配列されている。嫌気処理槽2の仕切はその3面が汚水浄化槽の外壁8(外槽)で兼用され、残る1面が流量調整槽3との間の仕切壁9(9a/9b/9c)である。
【0029】
嫌気処理槽2の上部に比べて下部の容積が大きいと、嫌気処理槽2の底部に堆積される汚泥(堆積汚泥)は液の流れの影響を受けにくく、堆積汚泥が次槽へ流出することなくそこで嫌気生物反応が進行しやすい。堆積汚泥の嫌気生物反応が進行すると堆積汚泥が消化されるため、堆積汚泥の貯留に必要な容量は小さくてすむ。
【0030】
図2における汚水の流れは、先ず、汚水原水が流入口1から嫌気処理槽2に入り、固液分離され、嫌気処理を受けて流量調整槽3へ移流する。流量調整槽3に入った汚水は、エアリフトポンプ10により揚水され、移送管11を経て好気処理槽4へ送液される。好気処理槽4以降は、図1の説明と同様である。
【0031】
図3は、本発明の実施形態の汚水浄化槽の構成略図である。図2の汚水浄化槽と異なる点は、嫌気処理槽2の上部に沈降分離室14が設置されている点である。
【0032】
沈降分離室14は2枚の区画板15(15a/15b)から構成されており、側面から見ると、この区画板15の一方の15aが「く」の字型、他方の15bが逆「く」の字型であり、互いに向き合って下方が上方より狭まっている漏斗形状をなしている。そして、他方の15bの下端は、一方の15aの下端よりも下側に入り込む形状になっているため、堆積汚泥がスカム化して浮上しても、この沈降分離室14内に浮上することはない。
【0033】
嫌気処理槽2の上部に沈降分離室14を設置することにより、さらに、堆積汚泥は液の流れの影響を受けにくくなり、堆積汚泥が次槽へ流出することなくそこで嫌気生物反応が進行する。
【0034】
なお、図1〜図3の例では、流量調整槽3を囲う四周の仕切壁の少なくとも一を垂直に立ち上がる垂直部と斜めに立ち上がる屈曲部とからなるものとしたが、これに代わり、図4のように、平板状又は略平板状の仕切を斜めに配置して(断面形状は略台形となる)、下部の容積を上部の容積の10%〜90%とすることもできる。この場合、上記したような明確な垂直部及び屈曲部(絞り部)は存在しない。
【0035】
【発明の効果】
本発明に備えた流量調整槽によれば、有効な下部の容積が前記有効な上部の容積より小さい流量調整槽を備えているので、最低水位よりも下の空間を無駄なく有効に利用できる。最高水位と最低水位の間に濾床を設ければ、特別な部材及び装置(例えば、散気部材からの曝気)を設けることなく、そこで好気生物反応も促進させることができる。また、最低水位以下の空間が小さいので、流量調整槽をコンパクトにできる。
本発明に備えた嫌気処理槽によれば、有効な上部の容積に比べて前記有効な下部の容積が大きいので、槽底の堆積汚泥が汚水の流入による液乱れの影響を受けにくく、また次槽に流出しにくく、嫌気生物反応も進みやすいとともに、汚水の流入時に堆積汚泥に接触する確率が低いままに、上澄水を次槽に送液できる。また、嫌気処理槽の上部に沈降分離室を設置すれば、更に、槽底の堆積汚泥は液流の影響を受けにくく、次槽に流出しにくく、嫌気生物反応も進みやすい。
本発明の汚水浄化槽によれば、その性能は更に向上し、コンパクトで、汚水を安定に処理できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一形態の汚水浄化槽の構成略図(正面から見た図)である。
【図2】本発明の第二形態の汚水浄化槽の構成略図(正面から見た図)である。
【図3】本発明の実施形態の汚水浄化槽の構成略図で、(a)は正面から見た図、(b)は嫌気処理槽部を側面から見た図である。
【図4】本発明の第四形態の汚水浄化槽の構成略図(正面から見た図)である。
【図5】従来例の汚水浄化槽の構成略図である。
【図6】他の従来例の汚水浄化槽の構成略図である。
【符号の説明】
1:流入口 2:嫌気処理槽3:流量調整槽 4:好気処理槽5:沈殿槽 6:消毒槽7:流出口 8:汚水浄化槽の外壁(外槽)9:仕切壁 9a,9c:仕切壁の垂直部9b:仕切壁の屈曲部(絞り部)10:エアリフトポンプ11:移送管 12:分水計量マス13:濾床 14:沈降分離室15a,15b:区画板16: 散気部材(散気管)17:濾床

Claims (6)

  1. 流量調整槽であって、その最高水位(HWL)の半分の水位の水平面によってこの流量調整槽を有効な上部と有効な下部に二分するとき、前記有効な下部の容積は前記有効な上部の容積より小さい流量調整槽と、嫌気処理槽であって、その最高水位(HWL)の半分の水位の水平面によってこの嫌気処理槽を有効な上部と有効な下部とに二分するとき、前記有効な上部の容積に比べて前記有効な下部の容積が大きい嫌気処理槽とが、上流側から任意の順に並設されているとともに、前記流量調整槽と前記嫌気処理槽とが共通の仕切壁で隔てられ隣接され、前記流量調整槽の槽内の最高水位と最低水位との間に充填材を充填した濾床が形成されている、汚水浄化槽。
  2. 流量調整槽であって、その最高水位(HWL)の半分の水位の水平面によってこの流量調整槽を有効な上部と有効な下部に二分するとき、前記有効な下部の容積は前記有効な上部の容積より小さい流量調整槽と、嫌気処理槽であって、その最高水位(HWL)の半分の水位の水平面によってこの嫌気処理槽を有効な上部と有効な下部とに二分するとき、前記有効な上部の容積に比べて前記有効な下部の容積が大きい嫌気処理槽とが、上流側から任意の順に並設されているとともに、前記流量調整槽と前記嫌気処理槽とが共通の仕切壁で隔てられ隣接され、前記嫌気処理槽の槽内の上部の一画には沈降分離室が設置されてなる汚水浄化槽。
  3. 前記流量調整槽の四周は汚水浄化槽の外壁と一又は二以上の仕切壁とによって囲われ、前記仕切壁の少なくとも一は途中に屈曲部を有し、屈曲部よりも上の流量調整槽の部分は嫌気処理槽側に向かって張り出し屈曲部よりも下の部分で嫌気処理槽が流量調整槽側に向かって張り出すように立設してなるものである、請求項1または2に記載の汚水浄化槽。
  4. 前記屈曲部は最低水位(LWL)又はその近傍の高さに形成されている、請求項の汚水浄化槽。
  5. 前記流量調整槽における流量調整装置は、流量調整槽の最低水位(LWL)より下の汚水を揚水して次槽に送るエアリフトポンプ及び移送管からなるものである、請求項の汚水浄化槽。
  6. 前記嫌気処理槽の四周は汚水浄化槽の外壁と一又は二以上の仕切壁とによって囲われ、前記仕切壁の少なくとも一は途中に屈曲部を有して立設してなるものである、請求項1〜5のいずれかの汚水浄化槽。
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