A.第1実施例:
A1.排水処理装置800の構成:
図1は、排水処理システム900の概略構成を示す説明図である。排水処理システム900は、排水処理装置800と、排水処理装置800に接続されたブロワ500と、を有している。本実施例の排水処理装置800は、一般家庭等からの排水(原水とも呼ばれる)の浄化処理を行う(このような装置は「浄化槽」とも呼ばれる)。排水処理装置800は、複数のステップを経て浄化処理を行うために、上流側(図1の左側)から順番に、沈殿分離槽810、嫌気濾床槽820、接触濾床槽830、処理水槽840、消毒槽850を、有している。流入口802を通じて排水処理装置800に流入した排水は、沈殿分離槽810、嫌気濾床槽820、接触濾床槽830、処理水槽840、消毒槽850で順次処理された後に、放流口804を通じて排水処理装置800の外部に放流される。以下、各水処理槽を流れる水を「被処理水」あるいは、単に「水」と呼ぶ。ブロワ500は、酸素を含むガス(ここでは、空気)を、排水処理装置800に供給する。排水処理装置800は、ブロワ500からのガスを利用して、浄化処理を進行する。
図2は、横を向いて見た排水処理装置800の概略図である。図3(A)は、下方を向いて見た排水処理装置800の概略図である。これらの図中において、低水位LWLと高水位HWLとは、それぞれ、排水処理装置800に予め対応付けられた、動作の基準となる水位である。低水位LWLと高水位HWLとは、排水処理装置の機種毎に、予め決められる。本実施例では、処理水槽840の水は、後述する消毒槽850に設けられた移流開口852を通って、消毒槽850へ移流する。低水位LWLは、移流開口852の下端の高さの水位である。低水位LWLは、排水処理装置800が正常に動作し、排水処理装置800への排水の流入が無い状態での安定した水位を示している(以下、低水位LWLを、基準水位LWLとも呼ぶ)。また、高水位HWLは、後述する消毒槽850に設けられた越流開口854の下端の高さの水位である。越流開口854は、移流開口852よりも高い位置に配置されている。排水処理装置800への流入水の単位時間当たりの量が多い場合、水位WLは、低水位LWLから徐々に高くなる。そして、水位WLが高水位HWLに到達すると、処理水槽840の水は、移流開口852に加えて、越流開口854を通って、消毒槽850へ移流する。この結果、水位WLが、高水位HWLから更に高くなることは、抑制される。排水処理装置800への排水の流入が停止すると、水位WLは、低水位LWLまで低下する。
また、Z方向は、鉛直方向の下方から上方へ向かう方向を示し、X方向は、排水処理装置800の長手方向(水平な方向)を示し、Y方向は、X方向とZ方向とのそれぞれと直交する方向(水平な方向)を示している。以下、X方向側を「+X側」とも呼び、X方向の反対方向側を「−X側」とも呼ぶ。Y方向、Z方向についても、同様である。図2は、排水処理装置800の長手方向に垂直なY方向を向いて見た概略図である。
沈殿分離槽810(図1)は、排水中の固形物を分離する水処理槽である。沈殿分離槽810には、流入バッフル812(図2、図3(A))が設けられている。沈殿分離槽810の+X側には、沈殿分離槽810と嫌気濾床槽820とを仕切る仕切壁819が設けられている。本実施例では、仕切壁819は、排水処理装置800の外壁801(槽本体801とも呼ぶ)に接続されており、槽本体801によって形成される内部空間(特に、高水位HWL以下の部分)を、X方向に対して垂直に、2つに仕切っている。この仕切壁819には、沈殿分離槽810と嫌気濾床槽820とを連通する移流開口814が、形成されている。本実施例では、移流開口814は、基準水位LWLよりも低く、かつ、移流開口814と沈殿分離槽810の底との最短距離よりも移流開口814と基準水位LWLとの最短距離の方が小さい位置に、形成されている。
本実施例では、流入バッフル812は、底が塞がれ、側面に開口811を有する箱状の処理部である。流入口802からの排水(汚水とも呼ばれる)は、流入バッフル812に流入する。流入バッフル812に流入した水は、開口811を通じて沈殿分離槽810の内部に移動し、移流開口814を通じて、嫌気濾床槽820へ移流する。水が、流入バッフル812の開口811から移流開口814へ移動する間に、水に含まれる固形物は、沈殿分離槽810の底部に沈降して、分離される。沈降した固形物は、沈殿分離槽810の底部に堆積して、貯留される(堆積汚泥とも呼ばれる)。また、流入バッフル812の開口811が、流入バッフル812の底ではなく側面に形成されているので、水は、開口811から、下方向ではなく水平に近い方向に流出する。これにより、沈殿分離槽810の底部に沈殿した固形物が、開口811からの水流によって意図せずに巻き上がることを抑制できる。ただし、流入バッフル812の開口811は、流入バッフル812の底に設けられていてもよい。
嫌気濾床槽820(図1)は、嫌気性微生物による嫌気処理を行う水処理槽である。図2、図3(A)に示すように、嫌気濾床槽820には、濾材826と、移流バッフル823と、が設けられている。濾材826には、嫌気性微生物が付着し得る。濾材826に付着した嫌気性微生物によって、嫌気処理が進行する。濾材826は、嫌気濾床槽820の底よりも高く、移流開口814よりも低い位置に、配置されている。濾材826としては、網状の部分を含む部材や、板状の部分を含む部材など、微生物を保持可能な種々の部材を採用可能である。
嫌気濾床槽820の+X側には、嫌気濾床槽820と接触濾床槽830とを仕切る仕切壁829が設けられている。本実施例では、仕切壁829は、槽本体801に接続されており、槽本体801の内部空間(特に、高水位HWL以下の部分)を、X方向に対して垂直に、2つに仕切っている。
移流バッフル823は、仕切壁829の嫌気濾床槽820側の面(ここでは、−X側の面)に固定されている。図3(A)に示すように、移流バッフル823の水平な(すなわち、Z方向に垂直な)断面形状は、−X側に凸な略U字状である。図2に示すように、移流バッフル823は、基準水位LWLよりも低い位置(具体的には、濾材826の下端826b以下の高さ、かつ、嫌気濾床槽820の底より高い位置)から、高水位HWLよりも高い位置まで、Z方向に延びるアーチ状の部材である。移流バッフル823の−Z側の端部は、下開口824を形成し、移流バッフル823の+Z側の端部は、高水位HWLよりも+Z側に設けられている。嫌気濾床槽820は、移流バッフル823の外の部分である第1部分821と、移流バッフル823の内の部分である第2部分822と、に区分される。濾材826は、第1部分821に設けられている。
仕切壁829には、嫌気濾床槽820と接触濾床槽830とを連通する開口200、300が、形成されている。本実施例では、開口200、300は、仕切壁829のうちの移流バッフル823に覆われた部分に形成されており、嫌気濾床槽820の第2部分822と接触濾床槽830とを連通する。
図2に示すように、移流開口814から嫌気濾床槽820に流入した水は、濾材826を有する第1部分821を下方に向かって流れ、そして、移流バッフル823の下開口824から第2部分822に移動し、第2部分822を上方に向かって流れ、開口200、300を通じて、接触濾床槽830に移流する。
嫌気濾床槽820では、濾材826に付着した嫌気性微生物による嫌気処理によって、被処理水中の有機物が分解される。また、後述するように、嫌気濾床槽820には、接触濾床槽830で好気処理された水(硝酸イオンを含む水(硝化液とも呼ばれる))が、循環エアリフトポンプ920と沈殿分離槽810とを通じて、流入する。嫌気濾床槽820では、嫌気性微生物に含まれる脱窒菌の働きにより、硝酸イオンが還元されて窒素ガスが生成され、生成された窒素ガスが空気中に放出される(いわゆる脱窒)。また、濾材826は、被処理水中の浮遊物を捕捉し得る。
図2、図3(A)に示すように、移流バッフル823内には、汚泥移送エアリフトポンプ910が設けられている。図2に示すように、汚泥移送エアリフトポンプ910の吸込口911は、移流バッフル823の下開口824よりも低く嫌気濾床槽820の底よりも高い位置、すなわち、嫌気濾床槽820の底部(本実施例では、濾材826の下端826bよりも低い位置)に配置されている。汚泥移送エアリフトポンプ910の流出口912は、沈殿分離槽810の上方(本実施例では、流入バッフル812の上方)に配置されている。汚泥移送エアリフトポンプ910には、ブロワ500からのガスが供給される。汚泥移送エアリフトポンプ910は、ブロワ500からのガスを利用して、嫌気濾床槽820の底部に堆積した固形物(例えば、汚泥)を、沈殿分離槽810へ移送可能である。
接触濾床槽830(図1)は、好気性微生物による好気処理を行う水処理槽である。図2、図3(A)に示すように、接触濾床槽830には、接触材836と、散気装置838a、838bと、が設けられている。
接触材836は、接触濾床槽830の底よりも高く、開口200、300よりも低い位置に、配置されている。散気装置838a、838bは、接触材832の下方に配置されている。図3(A)に示すように、第1散気装置838aは、接触濾床槽830の+Y側に配置され、第2散気装置838bは、接触濾床槽830の−Y側に配置されている。これらの散気装置838a、838bは、それぞれ、下面に形成された複数の貫通孔を有するパイプで形成されている。散気装置838a、838bには、ブロワ500からの酸素を含むガスが供給される。酸素を含むガスは、散気装置838a、838bの複数の貫通孔から水中に吐出される。吐出されたガスによる多数の気泡は、接触材836の内部を通過して、水位WLの水面(以下、水面WLとも呼ぶ)に到達する。気泡の移動によって水流が生じ、接触濾床槽830内の水が撹拌される。また、接触材836には、好気性微生物が保持される。好気性微生物は、気泡に含まれる酸素を利用して、好気処理を行う。例えば、好気性微生物は、被処理水中の有機物を分解する。また、好気性微生物に含まれる硝化菌の働きにより、被処理水に含まれるアンモニウムイオンが酸化されて、亜硝酸イオン、そして、硝酸イオンが生成される(硝化)。硝酸イオンを含む水(硝化液)は、後述する循環エアリフトポンプ920によって、沈殿分離槽810に移送される。なお、接触材836としては、網状の部分を含む部材や、板状の部分を含む部材など、微生物を保持可能な種々の部材を採用可能である。
接触濾床槽830の+X側には、接触濾床槽830と処理水槽840とを仕切る仕切壁839が設けられている。本実施例では、仕切壁839は、槽本体801に接続されており、槽本体801の内部空間(特に、高水位HWL以下の部分)を、X方向に対して垂直に、2つに仕切っている。図2に示すように、仕切壁839の下端の少なくとも一部は、槽本体801の底から+Z側に離れた位置に配置され、移流開口834を形成している。移流開口834は、接触濾床槽830と処理水槽840とを連通している。
開口200、300から接触濾床槽830に流入した水は、接触濾床槽830で好気処理された後、移流開口834を通じて処理水槽840に移流する。
処理水槽840(図1)は、接触濾床槽830から移流した水を一時的に滞留して、水中の固形物(例えば、汚泥や浮遊物質等)を沈降・分離する水処理槽である。図2に示すように、処理水槽840の上部には、消毒槽850が配置されている。消毒槽850は、箱状の壁部859を用いて構成された処理槽である。壁部859は、移流開口852(流入口852とも呼ぶ)と、越流開口854とを、形成している。流入口852は、例えば、円形状の開口である。流入口852の下端は、基準水位LWLの高さに配置されている。移流開口834から処理水槽840に流入した水は、処理水槽840内を+Z方向に向かって移動し、流入口852に至る。水に含まれる固形物は、処理水槽840の底部に沈降して、分離される。処理水槽840の水面WL近傍の水(固形物が分離された水)は、流入口852から消毒槽850に流入する。
越流開口854は、例えば、矩形状の開口である。越流開口854は、流入口852よりも高い位置に配置されており、具体的には、越流開口854の下端は、高水位HWLの高さに配置されている。また、越流開口854の水平な方向の幅は、流入口852の幅よりも、大きい。水位WLが高水位HWLまで上昇した場合には、越流開口854は、流入口852と比べて、単位時間当たりに多量の水を処理水槽840へ移送可能である。この結果、水位WLが高水位HWLから更に上昇することは、抑制される。
処理水槽840には、循環エアリフトポンプ920が設けられている。図2に示すように、循環エアリフトポンプ920の吸込口921は、処理水槽840の底部(本実施例では、散気装置838a、838bの複数の貫通孔よりも低い位置)に配置されている。循環エアリフトポンプ920の流出口922は、沈殿分離槽810の上方(本実施例では、流入バッフル812の上方)に配置されている。循環エアリフトポンプ920には、ブロワ500からのガスが供給される。循環エアリフトポンプ920は、ブロワ500からのガスを利用して、処理水槽840の底部に堆積した固形物(例えば、汚泥)を、沈殿分離槽810へ移送可能である。
消毒槽850(図2、図3(A))は、消毒剤(例えば、固形塩素剤)が充填された薬剤筒856を有している。流入口852と越流開口854とから消毒槽850に流入した水は、消毒剤と接触して消毒される。消毒された水は、放流口804を通じて、排水処理装置800の外部へ放流される。
排水が流入口802を通じて排水処理装置800へ流入すると、流入した水量と同じ量の水が、沈殿分離槽810から移流開口814を通じて嫌気濾床槽820へ移流する。さらに、同量の水が、嫌気濾床槽820から開口200、300を通じて接触濾床槽830へ移流し、接触濾床槽830から移流開口834を通じて処理水槽840へ移流し、処理水槽840から流入口852を通じて消毒槽850へ移流し、消毒槽850から放流口804を通じて排水処理装置800の外に流出する。消毒槽850よりも上流側の処理槽810、820、830、840において、水位WLはおおよそ同じである。また、消毒槽850の流入口852の大きさは、多量の水が短い時間内に処理水槽840から消毒槽850へ移流することを抑制するように、小さく構成されている。例えば、一時的に大量の排水が排水処理装置800に流入した場合(例えば、ピーク流入時)、流入口852は、処理水槽840から流入口852を通って消毒槽850へ移流する水の単位時間当たりの量を、排水処理装置800に流入する水の単位時間当たりの量よりも少ない量に、制限する。この結果、処理槽810、820、830、840の水位WLは、低水位LWLから上昇する。
図3(B)は、ガスの流路の概略図である。排水処理装置800の槽本体801には、送気口807が固定されている。槽本体801の外部では、送気口807に、パイプを介して、ブロワ500が接続されている。槽本体801の内部では、送気口807に、送気管100が接続され、送気管100は、3つの管110〜130に分岐している。
第1管110は、三方バルブ838v(分配バルブ838vとも呼ぶ)を介して2つの管111、112に分岐している。2つの管111、112は、2つの散気装置838a、838bに、それぞれ接続されている。第2管120は、調整バルブ910v(移送バルブ910vとも呼ぶ)を介して、汚泥移送エアリフトポンプ910に接続されている。第3管130は、調整バルブ920v(循環バルブ920vとも呼ぶ)を介して、循環エアリフトポンプ920に接続されている。
移送バルブ910vは、汚泥移送エアリフトポンプ910による単位時間当たりの移送量(汚泥移送水量とも呼ぶ)を、調整可能である。本実施例では、汚泥移送水量の適切な範囲は、予め決められている。ユーザ(例えば、排水処理装置800の管理者)は、汚泥移送エアリフトポンプ910(図2)の流出口912から沈殿分離槽810へ移送される水の実際の単位時間当たりの量が、適切な範囲内となるように、移送バルブ910vを調整することが好ましい。
循環バルブ920vは、循環エアリフトポンプ920による単位時間当たりの移送量(循環水量とも呼ぶ)を、調整可能である。本実施例では、循環水量の適切な範囲は、予め決められている。例えば、循環水量の適切な範囲は、その循環水量が一日継続された場合の1日分の循環水量の合計が、日平均汚水量の2倍以上、4倍以下の範囲内となるような量である。ユーザは、循環エアリフトポンプ920(図2)の流出口922から沈殿分離槽810へ移送される水の実際の単位時間当たりの量が、適切な範囲内となるように、循環バルブ920vを調整することが好ましい。
分配バルブ838vは、2つの散気装置838a、838bの間の散気の偏りを緩和可能である。排水処理装置800が傾いて設置された場合、散気装置838a、838bのうちの一方から、他方よりも強く散気が行われ得る。ユーザは、散気装置838a、838bによる散気がおおよそ均等になるように、分配バルブ838vを調整することが好ましい。
ブロワ500からのガスは、バルブ910v、920v、838vに応じて、3つの管110、120、130に分配される。なお、本実施例では、ブロワ500は、連続的にガスを排水処理装置800に供給する。従って、ブロワ500から、タイマや電磁弁などのブロワ500の動作を制御する装置を省略できる。
A2.開口200、300の構成:
図4は、図3(A)中のV−V断面から接触濾床槽830側(ここでは、+X側)を向いて見た排水処理装置800の概略図である。図中には、仕切壁829に形成された第1開口200と第2開口300とが示されている。図中の下部には、仕切壁829のうちの第1開口200と第2開口300とを含む部分の拡大図が示されている。
本実施例の排水処理装置800では、第1開口200と第2開口300とは、それぞれ、円形状の開口である。第1開口200の中心200cは、基準水位LWLと同じ高さに配置され、第1開口200の上端200uは、基準水位LWLよりも高い位置に配置され、第1開口200の下端200dは、基準水位LWLよりも低い位置に配置されている。なお、第1開口200の上端200uは、第1開口200の縁のうちの最も高い部分である。第1開口200の下端200dは、第1開口200の縁のうち最も低い部分である。他の開口の上端と下端も、同様に特定される。第2開口300の中心300cは、基準水位LWLよりも低い位置に配置され、第2開口300の上端300uは、基準水位LWL以下の高さの位置に配置され、第2開口300の下端300dは、基準水位LWLよりも低い位置に配置されている。本実施例では、第2開口300の下端300dは、第1開口200の下端200dよりも低い位置に配置されている。
図中の内径D20は、第1開口200の内径であり、内径D30は、第2開口300の内径である。本実施例では、D20=D30である。第1距離D1は、第1開口200の中心200cから、第2開口300の中心300cまでの、鉛直下方向(−Z方向)の距離である。第2距離D2は、基準水位LWLから第2開口300の上端300uまでの、鉛直下方向(−Z方向)の距離である。
図示するように、本実施例では、第2開口300は、第1開口200よりも低い位置に配置されている。具体的には、第1開口200は、基準水位LWLよりも低い位置から基準水位LWLよりも高い位置まで拡がっている。すなわち、第1開口200は、基準水位LWLと重なっている。第2開口300は、第2開口300の全体が基準水位LWL以下の高さとなるように、配置されている。このように、第1開口200と第2開口300との間で高さが異なる理由は、接触濾床槽830から嫌気濾床槽820への固形物(例えば、汚泥)の移送を促進するためである。
図5は、汚泥移送のメカニズムの説明図である。図中には、簡略化された嫌気濾床槽820と接触濾床槽830とが示されている。図中では、図を見やすくするために、第2開口300の全体が、第1開口200の下端200dよりも低い位置に示され、また、濾材826と接触材836との図示が省略されている。図中の実線の矢印は、水の流れを示し、点線の矢印は、固形物SSの流れを示している。
接触濾床槽830では、散気装置838a、838bから吐出される気泡G2によって、上向流UFが生じる。上向きに流れる水は、水面WL(ここでは、低水位LWL)に到達する。水面WLに到達した水は、水面WLに沿って水平な方向に移動する(矢印HF)。接触濾床槽830のうち、散気の弱い部分(例えば、下方向(−Z方向)を向いて見る場合に、散気装置838a、838bと重ならない部分)では、下向流DFが生じる。水面WLに沿って移動する水の一部は、第1開口200に到達する。第1開口200は、基準水位LWLよりも低い位置から基準水位LWLよりも高い位置まで拡がっているので、第1開口200に到達した水は、第1開口200を通じて嫌気濾床槽820へ移動し得る。このような接触濾床槽830から上流側の嫌気濾床槽820への水の移動は、排水が排水処理装置800へ流入していない時に、生じ易い。接触濾床槽830内の固形物SSは、このような水の流れによって、第1開口200を通じて嫌気濾床槽820(本実施例では、第1開口200に連通する第2部分822)へ移動し得る。
本実施例では、第2開口300は、基準水位LWL以下の位置に配置されている。従って、水面WLに沿って流れる水は、第1開口200と比べて、第2開口300を通りにくい。すなわち、水面WLに沿って流れる水は、第1開口200から嫌気濾床槽820へ移流しやすく、第2開口300から嫌気濾床槽820へは移流しにくい。これにより、第1開口200から嫌気濾床槽820へ移動した水は、第2開口300を通じて接触濾床槽830へ戻り得る。高さが異なる第1開口200と第2開口300を用いることによって、第1開口200と第2開口300を上記のように流れる水の循環を、定常的に生じさせることができる。
嫌気濾床槽820では散気が行われていないので、嫌気濾床槽820での水の流れは、接触濾床槽830での水の流れと比べて、緩やかである。特に、開口200、300に連通する第2部分822において、散気が行われていないので、開口200、300の嫌気濾床槽820側での水の流れが緩やかである。従って、第1開口200から嫌気濾床槽820へ移動した固形物SSは、第1開口200から嫌気濾床槽820へ移動した水が第2開口300へ移動する間に沈降し、第2開口300から接触濾床槽830へ戻らずに、嫌気濾床槽820の底部に沈殿し得る。このように、第1開口200を通じて、接触濾床槽830から嫌気濾床槽820へ固形物SSを移送できる。上述したように、嫌気濾床槽820の底部に堆積した固形物は、汚泥移送エアリフトポンプ910(図2)によって、沈殿分離槽810へ移送される。汚泥移送エアリフトポンプ910は、嫌気濾床槽820で生じた汚泥に加えて、接触濾床槽830で生じた汚泥も、沈殿分離槽810へ移送できる。
また、図3に示すように、鉛直下方向を向いて見る場合に、第1開口200と第2開口300とは、互いに離れている。従って、第1開口200から第2開口300へ水が移動する際に、水に含まれる固形物は、第2開口300へ到達せずに沈降し得る。ここで、固形物の沈降を促進するためには、第1開口200と第2開口300との水平方向の距離が遠いことが好ましい。
A3.評価試験:
次に、試験槽を用いた試験とその結果とについて説明する。図6は、試験槽1000の概略図である。試験槽1000は、嫌気濾床槽820の第2部分822と、接触濾床槽830と、第1開口200と第2開口300と、を実現したものである。試験槽1000は、透明な樹脂を用いて形成された。図示を省略するが、試験槽1000の接触濾床槽830内には、接触材836に相当する接触材と、散気装置838a、838bに相当する散気装置と、も設けられている。以下、試験槽の要素の符号として、上記実施例の排水処理装置800の対応する要素の符号と同じ符号を用いる。
図6(A)は、−Z方向を向いて見た試験槽1000の概略図であり、図6(B)は、−Y方向を向いて見た試験槽1000の概略図であり、図6(C)は、+X方向を向いて見た試験槽1000の概略図であり、図6(D)は、図7(A)中のD−D断面から嫌気濾床槽820側(ここでは、−X側)を向いて見た仕切壁829の概略図である。図6(A)に示すように、接触濾床槽830の水平な断面形状は、矩形である。接触濾床槽830の形状は、この水平な断面形状を底面とする略四角柱である。なお、底部の角は、丸められている。また、図6(A)に示すように、嫌気濾床槽820の第2部分822の水平な断面形状は、−X側に向かって徐々にY方向の幅が小さくなる台形である。第2部分822の形状は、この水平な断面形状を底面とする略四角柱である。第2部分822の底と、接触濾床槽830の底とは、同じ高さに配置されている。図示を省略するが、接触濾床槽830と第2部分822とのそれぞれの下部には、水抜き用のバルブが設けられている。
図中の幅W1aは、第2部分822の台形の−X側の底の長さ(Y方向の幅)であり、幅W1bは、第2部分822の台形の+X側の底の長さ(Y方向の幅)である。幅W2は、接触濾床槽830のY方向の幅である。長さL1は、第2部分822のX方向の長さであり、長さL2は、接触濾床槽830のX方向の長さである。水深Hは、試験槽1000の底(ここでは、第2部分822と接触濾床槽830の底と同じ)からの、基準水位LWLの高さである。本試験で用いられた試験槽1000では、W1a=458mm、W1b=300mm、W2=1000mm、L1=186mm、L2=350mm、H=1200mmであった。
本試験で用いられた試験槽1000の第1開口200と第2開口300との構成(図4)については、以下の通りである。D20=D30=77mmであった。第1距離D1に関しては、0mm、50mm、100mmの3つの値が、試験された。すなわち、第2距離D2に関しては、−38.5mm、11.5mm、61.5mmの3つの値が試験された。なお、D1=0mmは、第1開口200と第2開口300とが同じ高さに配置されていることを、示している。
試験方法は、以下の通りである。まず、接触濾床槽830と第2部分822とに水を張り、開口200、300を蓋で閉じた状態で、予め決められた量のトイレットペーパーの粉砕物を、固形物として、接触濾床槽830に投入した。そして、接触濾床槽830での散気を行って、接触濾床槽830内を撹拌した。これにより、接触濾床槽830内で、固形物の分布は、おおよそ均等になった。この状態で、接触濾床槽830内の水を採水して、浮遊物質(SS(suspended solid)とも呼ばれる)の濃度を測定した。浮遊物質濃度は、SSとも呼ばれる(以下、SS濃度とも呼ぶ)。次に、接触濾床槽830での散気を行った状態で、開口200、300の蓋を取り外した。これにより、接触濾床槽830内の固形物の一部が、第1開口200を通じて第2部分822へ移動した。蓋を取り外した後、30分が経過する毎に接触濾床槽830内の水を採水してSS濃度を測定した。蓋を取り外してから180分が経過した段階で、散気を停止した。そして、散気を停止した後に、第2部分822内の水を採水し、第2部分822内のSS濃度を測定し、第2部分822内の固形物総量を算出した。
図7は、試験結果を示すグラフである。図7(A)のグラフでは、横軸は、蓋を取り外してからの経過時間(単位は、分)を示し、縦軸は、濃度割合(単位は、%)を示している。濃度割合は、蓋を取り外す前のSS濃度に対する、経過時間でのSS濃度の割合である。図示するように、0mm、50mm、100mmのいずれの第1距離D1に関しても、時間の経過とともに、接触濾床槽830内の濃度割合は、低下した。
蓋を取り外し、散気した状態の接触濾床槽830を観察すると、粉砕された固形物が移動する様子、すなわち、接触濾床槽830内での水の流れを、確認できた。水面WLに近い表層部分と、表層部分よりも深い部分と、の間では、水の流れる方向に差異がみられた。深い部分では、散気で吐出された気泡が上昇することに応じて、上昇する流れが観察され、また、気泡が少ない部分では、下降する流れが観察された。このように、水面WLから下方向に離れた部分では、鉛直方向に平行な双方向の流れが観察された。水面WLの近傍では、水面WLに沿った流れ、すなわち、水平な方向の流れが多く観察された。この理由は、上昇する水が水面WLに到達すると、水は水面WLよりも高い位置には移動できないので、水が水平方向に移動せざるを得ないからだと推定される。
水面WLに沿って移動する水の一部は、上記の深い部分の下降する流れに沿って、下方向に移動した。第1開口200の近傍では、水面WLに沿って移動する水が、第1開口200を通り抜けて、第2部分822へ移動した。これにより、接触濾床槽830内の固形物が第1開口200を通じて第2部分822へ移動した。第2部分822へ移動した固形物の一部は、接触濾床槽830へは戻らずに、第2部分822の底部へ沈降した。この観察結果は、図7(A)のグラフにおいて、時間の経過に応じて接触濾床槽830内のSS濃度の割合が減少したことと、整合している。
第1距離D1がゼロよりも大きい場合、すなわち、第1開口200と第2開口300との間で高さが異なる場合、第1開口200では、水は、定常的に、接触濾床槽830から第2部分822へ流れ、第2開口300では、水は、定常的に、第2部分822から接触濾床槽830へ流れた。この理由は、図5で説明したように、水面WLに沿って流れる水は、第1開口200から第2部分822へ移流しやすく、第2開口300から第2部分822へは移流しにくいからだと推定される。
一方、第1距離D1がゼロである場合、すなわち、第1開口200と第2開口300との間で高さが同じである場合、第1開口200と第2開口300との双方において、接触濾床槽830から第2部分822への水の流れと、第2部分822から接触濾床槽830への水の流れとが、不規則に生じた。この理由は、第1開口200と第2開口300との双方において、水面WLに沿って流れる水が、第2部分822へ移流しやすいからだと推定される。
これらの観察結果は、図7(A)のグラフにおいて、第1距離D1がゼロである場合と比べて、第1距離D1がゼロよりも大きい場合に、濃度割合が大幅に小さくなることと、整合している。具体的には、D1=0mm(D2=−38.5mm)の場合には、180分の経過時間での濃度割合は、20%を超えていたが、D1≧50mm(D2≧11.5mm)の場合には、180分の経過時間での濃度割合は、15%以下まで改善した。
図7(B)のグラフは、0mm、50mm、100mmのそれぞれの第1距離D1の返送率(単位は%)を示している。ここで、返送率は、接触濾床槽830に投入された固形物総量に対する、180分の試験の後の第2部分822内の固形物総量の割合である。図示するように、第1距離D1がゼロである場合と比べて、第1距離D1がゼロよりも大きい場合に、返送率は大幅に向上した。具体的には、D1=0mm(D2=−38.5mm)の場合には、返送率は70%未満であったが、D1≧50mm(D2≧11.5mm)の場合には、返送率は、75%を超えた。この測定結果は、図7(A)のグラフにおいて、第1距離D1がゼロである場合と比べて、第1距離D1がゼロよりも大きい場合に、濃度割合が大幅に小さくなることと、整合している。なお、図7(A)の180分の経過時間での濃度割合と、図7(B)の返送率との合計が、100%よりも小さい理由は、固形物の一部が接触濾床槽830の接触材に付着したからである。
以上のように、第1開口200(図4)の下端200dが、基準水位LWLよりも低い位置に配置され、第1開口200の上端200uが、基準水位LWLよりも高い位置に配置されている場合には、接触濾床槽830の固形物は、容易に、第1開口200を通じて、第2部分822(すなわち、嫌気濾床槽820)へ移動できる。そして、嫌気濾床槽820へ移動した固形物の少なくとも一部は、接触濾床槽830へ戻らずに嫌気濾床槽820の底部に沈降する。従って、エアリフトポンプなどの移送装置を用いずに、接触濾床槽830から嫌気濾床槽820へ固形物を移送できる。特に、本実施例では、嫌気濾床槽820には、散気装置は設けられておらず、接触濾床槽830には、散気装置が設けられている。従って、接触濾床槽830から第1開口200を通じて嫌気濾床槽820へ移動する水流を、容易に実現できる。さらに、第2開口300の上端300uが、基準水位LWLよりも低い位置に配置されている場合には、第1開口200から嫌気濾床槽820への水の流れやすさと、第2開口300から嫌気濾床槽820への水の流れやすさと、の間に適切に差を設けることができる。この結果、接触濾床槽830から第1開口200を通じて嫌気濾床槽820へ流れ、嫌気濾床槽820から第2開口300を通じて接触濾床槽830へ流れる、という水の流れを、定常的に生じさせることができる。これにより、2つの開口200、300が同じ高さに配置されている場合と比べて、接触濾床槽830から第1開口200を通じて嫌気濾床槽820への固形物の移送を促進できる。そして、接触濾床槽830内の固形物の量が多くなることを抑制できる。この結果、接触濾床槽830の閉塞を抑制できる。また、排水処理装置800の適切な運転に必要な接触濾床槽830の逆洗の頻度を低減できる。また、接触濾床槽830の負荷が大きくなることを抑制できる。これにより、接触濾床槽830を小型化できる。なお、接触濾床槽830の逆洗は、例えば、第1散気装置838aと第2散気装置838bとのうちの一方が散気を行い他方が散気を停止するように分配バルブ838vを調整することによって、実現可能である。ユーザは、このような逆洗を、排水処理装置800の点検時に行うことが好ましい。
また、図6の試験槽1000のように、第1開口200の形状と、第2開口300の形状とが、同じ内径の円形状である場合、第1開口200と第2開口300とを、容易に形成できる。例えば、同じ外径のホールソーを用いて、開口200、300を容易に形成できる。また、第2開口300の中心300cは、第1開口200の中心200cよりも低い位置に配置されている。従って、第1開口200を通じた固形物の移動を促進可能な第1開口200と第2開口300とを、容易に形成できる。
また、図2、図3で説明したように、本実施例の嫌気濾床槽820は、移流バッフル823を備えている。本実施例では、移流バッフル823の下側の下開口824の全体が、第1開口200の下端200dと第2開口300の下端300dとのいずれよりも低い位置に配置されている。そして、移流バッフル823は、下開口824と、開口200、300と、を連通している。従って、嫌気濾床槽820から開口200、300を通じて接触濾床槽830へ水が移流する場合には、水は、嫌気濾床槽820のうちの移流バッフル823の下開口824以下の高さの部分を移動した後に、開口200、300まで上昇する。この際、水に含まれる固形物は、開口200、300まで上昇せずに、嫌気濾床槽820の底部に沈降し得る。この結果、嫌気濾床槽820は、固形物を底部(特に、下開口824の下端824dよりも低い部分)に貯留できる。また、嫌気濾床槽820は、接触濾床槽830から第1開口200を通じて嫌気濾床槽820へ移動した固形物も、底部に貯留できる。なお、本実施例では、下開口824は、鉛直方向に垂直な(すなわち、水平な)開口である。従って、下開口824の全体(より具体的には、下開口824の縁の全体)が、下開口824の下端824dに対応する。
また、図2、図3で説明したように、本実施例の排水処理装置800は、汚泥移送エアリフトポンプ910を備えている。汚泥移送エアリフトポンプ910の吸込口911は、嫌気濾床槽820の底部に配置され、汚泥移送エアリフトポンプ910の流出口912は、沈殿分離槽810に配置されている。従って、汚泥移送エアリフトポンプ910は、嫌気濾床槽820内の水(ひいては、汚泥などの固形物)を、排水処理装置800の複数の処理槽810〜850のうちの嫌気濾床槽820と接触濾床槽830とのいずれとも異なる別の沈殿分離槽810へ移送できる。この結果、接触濾床槽830から開口200通じて嫌気濾床槽820へ固形物が移動する場合であっても、嫌気濾床槽820内の固形物の量が多くなることを抑制できる。
特に、本実施例では、汚泥移送エアリフトポンプ910の吸込口911の全体が、嫌気濾床槽820内の第1開口200の下端200dと第2開口300の下端300dとのいずれよりも低い位置に配置されている。従って、汚泥移送エアリフトポンプ910は、嫌気濾床槽820の底部に堆積した固形物を、適切に移送できる。また、本実施例では、吸込口911の全体が、移流バッフル823の下開口824の下端824dよりも低い位置に配置されている。従って、汚泥移送エアリフトポンプ910は、下開口824の下端824dよりも低い位置に堆積した固形物を、適切に、嫌気濾床槽820の外に移送できる。
また、嫌気濾床槽820(図2)へ流入する水は、移流開口814によって嫌気濾床槽820へ導入される(以下、移流開口814を、導入部814とも呼ぶ)。本実施例では、移流開口814の下端814dは、移流バッフル823の下開口824の上端824uよりも高い位置に配置されている。従って、移流開口814から嫌気濾床槽820へ導入された水は、移流開口814から移流バッフル823の下開口824へ下向きに流れる。この結果、水に含まれる固形物の沈降を、促進できる。なお、上述したように、移流バッフル823の下開口824は水平な開口であるので、下開口824の全体(より具体的には、下開口824の縁の全体)が、下開口824の上端824uに対応する。
また、排水処理装置800には、接触濾床槽830と処理水槽840とを連通する移流開口834が設けられている(以下、連通部834とも呼ぶ)。本実施例では、移流開口834の全体が、第1開口200の下端200dと第2開口300の下端300dとのいずれよりも低い位置に配置されている。従って、接触濾床槽830内において嫌気濾床槽820に移動せずに開口200、300よりも低い位置に移動した固形物は、移流開口834を通じて、処理水槽840へ移動可能である。また、排水処理装置800は、循環エアリフトポンプ920を備えている。循環エアリフトポンプ920は、処理水槽840内の水を、処理槽820、830、840とは異なる別の処理槽である沈殿分離槽810へ移送する。これにより、接触濾床槽830から処理水槽840に移動した固形物は、循環エアリフトポンプ920によって別の処理槽(本実施例では、沈殿分離槽810)へ移送され得る。このように、接触濾床槽830内の固形物は、処理水槽840と循環エアリフトポンプ920とを通じて別の処理槽へ移送されるので、接触濾床槽830内の固形物の量が多くなることを抑制できる。
特に、本実施例では、接触濾床槽830の上流側に汚泥移送エアリフトポンプ910が設けられ、接触濾床槽830の下流側に循環エアリフトポンプ920が設けられている。そして、接触濾床槽830内の固形物は、嫌気濾床槽820に移動して汚泥移送エアリフトポンプ910によって移送され得る。また、接触濾床槽830内の固形物は、処理水槽840に移動して循環エアリフトポンプ920によって移送され得る。このように、接触濾床槽830内の固形物は、上流側の汚泥移送エアリフトポンプ910と、下流側の循環エアリフトポンプ920との、双方によって、移送され得る。従って、接触濾床槽830内の固形物の量が過剰になることを抑制できる。
また、接触濾床槽830(図2)のうち、上流側の汚泥移送エアリフトポンプ910へ向かう水が接触濾床槽830から流出する領域は、開口200、300の領域である。また、接触濾床槽830のうち、下流側の循環エアリフトポンプ920へ向かう水が接触濾床槽830から流出する領域は、移流開口834の領域である。本実施例では、移流開口834の全体が、開口200、300の下端200d、300dのいずれよりも低い位置に配置されている。従って、接触濾床槽830のうちの比較的高い部分に存在する固形物は、比較的高い位置の開口200から除去される。接触濾床槽830のうちの比較的低い部分に存在する固形物は、比較的低い位置の移流開口834から除去される。このように、接触濾床槽830のうちの比較的高い領域(ここでは、開口200、300)と比較的低い領域(ここでは、移流開口834)との両方から固形物が除去されるので、接触濾床槽830内での固形物濃度が大きく偏ることを抑制できる。
A4.水位WLの変動と固形物の移送について:
次に、水位WLの変動を用いる固形物の移送のメカニズムの説明図である。図8(A)、図8(B)には、それぞれ、図5と同様に簡略化された、排水処理装置800が示されている。図8(A)は、水位WLが低水位LWLである状態を示し、図8(B)は、水位WLが高水位HWLである状態を示している。
図8(A)の状態では、図5でも説明したように、接触濾床槽830内の固形物SSは、第1開口200を通じて、嫌気濾床槽820の第2部分822へ移動し得る。そして、汚泥移送エアリフトポンプ910は、嫌気濾床槽820の底部から、固形物SSを、沈殿分離槽810へ、移送し得る。図中の揚程H1aは、汚泥移送エアリフトポンプ910によって実際に水が汲み上げられる高さを示している(配管の損失等は、省略されている)。また、接触濾床槽830内の固形物SSは、連通部834を通じて、処理水槽840へ移動し得る。そして、循環エアリフトポンプ920は、処理水槽840の底部から、固形物SSを、沈殿分離槽810へ、移送し得る。図中の揚程H2aは、循環エアリフトポンプ920によって実際に水が汲み上げられる高さを示している(配管の損失等は、省略されている)。
図8(B)に示すように、水位WLが高水位HWLである場合、水位WLが低水位LWLである場合(図8(A))と同様に、汚泥移送エアリフトポンプ910は、嫌気濾床槽820から沈殿分離槽810へ、固形物SSを移送し得、また、循環エアリフトポンプ920は、処理水槽840から沈殿分離槽810へ、固形物SSを移送し得る。
ここで、水位WLは、低水位LWLから高水位HWLへ、上昇している。従って、汚泥移送エアリフトポンプ910の揚程H1bは、WL=LWL(図8(A))の状態の揚程H1aよりも、小さくなる。このように、揚程H1bが小さくなるので、汚泥移送エアリフトポンプ910による水の単位時間当たりの移送量は、WL=LWL(図8(A))の状態と比べて、多くなる。この結果、嫌気濾床槽820から沈殿分離槽810への固形物SSの移送が、促進される。
同様に、循環エアリフトポンプ920の揚程H21bは、WL=LWL(図8(A))の状態の揚程H2aよりも、小さくなる。このように、揚程H2bが小さくなるので、循環エアリフトポンプ920による水の単位時間当たりの移送量は、WL=LWL(図8(A))の状態と比べて、多くなる。この結果、処理水槽840から沈殿分離槽810への固形物SSの移送が、促進される。
図9は、ピーク流入時の水位WLの変動の例を示すグラフである。横軸は、ピーク流入の開始からの経過時間T(単位は、分)を示し、縦軸は、低水位LWLから測定した水位WLの高さHL(単位は、cm)を示している。HL=ゼロは、水位WLの高さが低水位LWLと同じであることを示している。第1グラフG1は、排水処理装置800の試験槽を用いた試験結果を示し、第2グラフG2は、シミュレーションの結果を示している。試験槽は、上述した排水処理装置800を、処理対象人員=7人を想定して、実現したものである。消毒槽850の移流開口852は、内径25mmの円形状の開口である。この移流開口852の内径は、ピーク流入時に処理槽の水位を上昇させることを意図していない場合に一般的に用いられる移流開口の大きさ(例えば、内径が77mm)と比べて、大幅に小さい。また、ピーク流入は、47L/分の流入速度での排水処理装置800への水の流入が、流入水の総量が308Lとなるように、継続するものである。このピーク流入は、7人槽の浄化槽の性能評価試験で用いられているピーク流入と、同じである。
図9中の流入時間Tiは、ピーク流入の継続時間である。本試験では、6.6分である。図示するように、この流入時間Tiの間、水位WLの高さHLは、低水位LWLから上昇する。そして、流入時間Tiの経過後、すなわち、ピーク流入の終了後、水位WLの高さHLは、徐々に、低下する。
図中の低下時間Txは、ピーク流入が終了してから、水位WLの高さHLが低水位LWLへ戻るまでの時間である。水位WLの高さHLの変化速度は、水位WLが低水位LWLに近いほど、遅くなる。そこで、本試験では、処理水槽840から消毒槽850への移流速度(すなわち、排水処理装置800からの放流速度)が0.5L/分以下になった時点で、水位WLが低水位LWLに到達したこととして、低下時間Txを特定することとした。試験結果を示す第1グラフG1の低下時間Txは、21分であった。
図示するように、シミュレーション結果を示す第2グラフG2は、試験結果を示す第1グラフG1と、おおよそ一致している。このように、シミュレーションは、実際の試験槽での水位WLの変動を、適切に再現している。
ピーク流入によって水位WLが低水位LWLよりも高い期間(例えば、図9の流入時間Tiの開始から低下時間Txの終わりまでの期間Tu)において、図8(B)で説明したように、エアリフトポンプ910、920による固形物SSの移送は、促進される。排水処理装置800が一般家庭からの排水を処理する場合、このようなピーク流入は、1日に数回(例えば、2回)、自然に生じる。汚泥移送エアリフトポンプ910は、このように自然に生じる流入水の単位時間当たりの量の変動を利用して、追加のエネルギを用いずに、固形物SSを嫌気濾床槽820から沈殿分離槽810へ、移送できる。これにより、汚泥移送エアリフトポンプ910は、排水処理システム900の運転のために消費されるエネルギの増大を抑制しつつ、嫌気濾床槽820内の固形物SSの量が多くなることを、適切に、抑制できる。また、循環エアリフトポンプ920も、同様に、消費エネルギの増大を抑制しつつ、処理水槽840内の固形物SSの量が多くなることを、適切に、抑制できる。
なお、本実施例では、ブロワ500(図1、図3(B))は、水位WLに拘わらずに、定常的に、空気を排水処理装置800に供給し続ける。すなわち、汚泥移送エアリフトポンプ910は、水位WLに拘わらずに、定常的に、水を、嫌気濾床槽820から沈殿分離槽810へ、移送する。そして、水位WLが低水位LWLから上昇すると、汚泥移送エアリフトポンプ910による単位時間当たりの移送量が、増大する。循環エアリフトポンプ920も、同様に、水位WLに拘わらずに、定常的に、水を、処理水槽840から沈殿分離槽810へ、移送する。そして、水位WLが低水位LWLから上昇すると、循環エアリフトポンプ920による単位時間当たりの移送量が、増大する。
例えば、排水処理装置800の上述した試験槽(処理対象人員=7人)では、水位WLが低水位LWLである場合、循環エアリフトポンプ920による単位時間当たりの移送量は、おおよそ、3.5L/minであった。水位WLが低水位LWLよりも高い場合、循環エアリフトポンプ920による移送量は、低水位LWLからの水位WLの高さHLにおおよそ比例して、増大した。そして、水位WLの高さHLが8cmである場合、移送量は、おおよそ9.9L/minであった。このように、水位WLが低水位LWLから上昇する場合に、循環エアリフトポンプ920による単位時間当たりの移送量は、適切に、増大する。汚泥移送エアリフトポンプ910による移送量についても、同様に、水位WLが低水位LWLから上昇する場合に、増大する。
低下時間Txが長いほど、エアリフトポンプ910、920による固形物SSの移送が促進される時間は、長い。従って、処理槽820、840内の固形物SSの量が多くなることを抑制するためには、低下時間Txが長いことが好ましい。ここで、移流開口852の大きさ(例えば、内径、面積など)を小さくすることによって、低下時間Txを、長くできる。
図10は、水位WLの変動のシミュレーションの結果を示す表である。この表は、処理対象人員Nと、WL=LWLでの水面の面積S(m2)と、日平均汚水量Q(L/日)と、ピーク流入の流速Fp(L/分)と、日平均汚水量Qに対するピーク流入量Qpの割合Rp(%)と、ピーク流入量Qp(L)と、移流開口852の内径D(mm)と、越流開口854の水平方向の幅W(mm)と、ピーク流入時の低水位LWLからの水位WLの最大上昇量Hmax(mm)と、流入時間Ti(分)と、低下時間Tx(分)と、ピーク流入時に処理水槽840から消毒槽850へ移流した総水量に対する越流開口854を移流した水量の割合Ro(%)との、対応関係を示している(括弧内は、単位)。面積Sは、処理槽810〜840の水面WLの面積の和である。流速Fpと割合Rpとピーク流入量Qpと流入時間Tiとは、性能評価試験で用いられている処理対象人員Nに対応するピーク流入のパラメータFp、Rp、Qp、Tiと、同じである。このように、ピーク流入としては、浄化槽の性能評価試験で用いられるピーク流入と同じ流入が、用いられた。また、ピーク流入は、流速Fpとピーク流入量Qpとによって、定められてよい(割合Rpは、Q/Qpで算出され、流入時間Tiは、Qp/Fpで算出される)。
7人の処理対象人員Nの値は、図9の第1グラフG1の特定に利用された試験槽の構成と試験結果とを示している。7人以外の処理対象人員Nの値は、シミュレーションの構成と結果を示している。このシミュレーションは、図9の第2グラフG2の特定に利用されたシミュレーションと同じである。従って、処理対象人員Nが7人とは異なる場合のシミュレーションの結果は、実際の排水処理装置800を用いると仮定した場合の結果を、精度よく再現していると推定される。
図示するように、移流開口852の内径Dは、N=7の場合に25mmであり、14≦Nの場合に35mmであった。N=35、42、50の場合、内径Dが35mmの移流開口852が、2つ設けられた。N≦30の場合、移流開口852の総数は、1個であった。このように、移流開口852の内径Dは、処理対象人員Nが多い場合に、大きかった。また、移流開口852の総数は、処理対象人員Nが多い場合に、多かった。以上により、移流開口852の総面積は、処理対象人員Nが多い場合に、大きかった。
図示するように、いずれの処理対象人員Nにおいても、低下時間Txは、16分以上、53分以下であった。このように、各処理対象人員Nの移流開口852の構成(ここでは、内径Dと総数)は、16分以上の長い低下時間Txを、実現できた。低下時間Txが長い場合、エアリフトポンプ910、920による固形物SSの移送は、促進される。すなわち、各処理対象人員Nの移流開口852の構成は、固形物SSの移送を促進できる。
ところで、ピーク流入時に処理槽の水位を上昇させることを意図していない浄化槽においても、ピーク流入時には、水位は上昇し得る。ただし、低下時間Txは、短く、例えば、N=7である場合に、10分程度である。
エアリフトポンプ910、920による固形物SSの移送を促進するためには、低下時間Txがより長くなるように、移流開口852の大きさ(例えば、面積)が、構成されていることが好ましい。例えば、低下時間Txは、10分を超えることが好ましく、13分以上であることが特に好ましく、16分以上であることが、最も好ましい。
一方、低下時間Txが過度に長い場合、大量の水がエアリフトポンプ910、920によって、処理槽820、840から沈殿分離槽810へ移送される。このような大量の水の移送は、処理槽810〜840の処理に、悪影響を与え得る。例えば、汚泥移送エアリフトポンプ910によって酸素を含む大量の水が沈殿分離槽810へ移送される場合、沈殿分離槽810、そして、沈殿分離槽810の下流側の嫌気濾床槽820の嫌気性微生物の活動が抑制され得る。従って、低下時間Txが過度に長くならないように、移流開口852の大きさ(例えば、面積)が、構成されていることが好ましい。例えば、低下時間Txは、90分以下であることが好ましく、75分以下であることが特に好ましく、60分以下であることが最も好ましい。
低下時間Txの好ましい範囲は、流入時間Tiに基づいて特定されてもよい。例えば、図10の例では、流入時間Tiに対する低下時間Txの割合(Tx/Ti)は、2.07以上、3.27以下の範囲内である。このような範囲は、流入時間Tiと低下時間Txとの妥当な範囲を示していると推定される。ここで、低下時間Txは、流入時間Ti以上であることが好ましく、流入時間Tiの1.5倍以上であることが特に好ましく、流入時間Tiの2倍以上であることが、最も好ましい。そして、低下時間Txは、流入時間Tiの5倍以下であることが好ましく、流入時間Tiの4倍以下であることが特に好ましく、流入時間Tiの3.5倍以下であることが最も好ましい。
移流開口852の構成は、上記の好ましい範囲内の低下時間Txを実現する種々の構成であってよい。
いずれの場合も、排水処理装置へのピーク流入が開始してから、水位WLが低水位LWLから上昇した後に、水位WLが低水位LWLへ戻るまでの時間であるピーク変動時間(具体的には、図9の期間Tuの時間)は、1時間以下であることが好ましい。この構成によれば、エアリフトポンプ910、920による処理槽820、840から沈殿分離槽810への過剰な水の移送が抑制されるので、処理槽810〜840の処理性能の低下を、抑制できる。ピーク変動時間を調整方法としては、消毒槽850の移流開口852と越流開口854とのそれぞれの構成を調整する方法が、採用されてよい。例えば、移流開口852の大きさが大きいほど、ピーク変動時間は、短くなる。また、越流開口854の幅が大きいほど、ピーク変動時間は、短くなる。
また、いずれの処理対象人員Nにおいても、最大上昇量Hmaxは、60mm以上、73m以下であった。このように、各処理対象人員Nの移流開口852の構成(ここでは、内径Dと総数)は、60mm以上の大きな最大上昇量Hmaxを、実現できた。最大上昇量Hmaxが大きい場合、エアリフトポンプ910、920の揚程が小さくなるので、エアリフトポンプ910、920による固形物SSの移送は、促進される。すなわち、各処理対象人員Nの移流開口852の構成は、固形物SSの移送を促進できる。
ところで、ピーク流入時に処理槽の水位を上昇させることを意図していない浄化槽においても、ピーク流入時には、水位は上昇し得る。ただし、最大上昇量Hmaxは、小さく、例えば、N=7である場合に、39mm程度である。
エアリフトポンプ910、920による固形物SSの移送を促進するためには、最大上昇量Hmaxがより大きくなるように、移流開口852の大きさ(例えば、面積)が、構成されていることが好ましい。例えば、最大上昇量Hmaxは、40mm以上であることが好ましく、50mm以上であることが特に好ましく、60mm以上であることが最も好ましい。
一方、最大上昇量Hmaxが過度に大きい場合、処理槽810〜850のいずれかから、意図せず水が溢れる可能性がある。従って、最大上昇量Hmaxが過度に大きくないように、移流開口852の大きさ(例えば、面積)が、構成されていることが好ましい。例えば、最大上昇量Hmaxに対応する水位WLは、高水位HWL+50mm以下であることが好ましく、高水位HWL+40mm以下であることが特に好ましく、高水位HWL+30mm以下であることが最も好ましい。
移流開口852の構成は、上記の好ましい範囲内の最大上昇量Hmaxを実現する種々の構成であってよい。
移流開口852の構成(例えば、内径D、総数、総面積、形状、など)は、種々の構成であってよい。例えば、移流開口852の形状は、矩形状であってもよい。一般的には、移流開口852の大きさは、排水処理装置800への流入水の単位時間当たりの量が、排水処理装置800に予め対応付けられたピーク流入によって一時的に増大する場合に、移流開口852を移流する水の単位時間当たりの量をピーク流入の単位時間当たりの量より少ない量に制限することによって、嫌気濾床槽820と接触濾床槽830との水位を一時的に上昇させるように、構成されていることが好ましい。この構成によれば、ピーク流入時に、嫌気濾床槽820の水位WLが一時的に上昇するので、汚泥移送エアリフトポンプ910による嫌気濾床槽820から沈殿分離槽810への固形物SSの移送を、促進できる。
また、排水処理装置800に予め対応付けられたピーク流入としては、排水処理装置800の性能評価試験で用いられるピーク流入を採用可能である。また、排水処理装置800が、性能評価試験の対象ではない場合、ピーク流入の構成は、排水処理装置800を継続的に使用する場合に、排水処理装置800が受け入れることが想定された設計上のピーク流入の構成と同じであってよい。このような設計上のピーク流入の構成としては、排水処理装置800に関連する書類(例えば、取扱説明書、仕様書など)に記載された構成を、採用してよい。
B.変形例:
(1)開口200、300の構成は、上述した構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、第2開口300の内径D30が、第1開口200の内径D20と異なっていてもよい。また、第1開口200と第2開口300との少なくとも一方の形状は、円形状とは異なる形状であってもよい(例えば、矩形状、楕円形状)。また、図4の実施例、そして、後述する図11、図12の実施例において、第1開口200の中心200cの位置は、基準水位LWLよりも高い位置であってもよく、基準水位LWLよりも低い位置であってもよい。
また、上述したように、試験槽1000の観察結果によれば、水面WLの近傍で、水は、水面WLに沿って流れ易い。水面WLに沿って流れる水が第1開口200を通過するためには、第1開口200の下端200dが、基準水位LWLよりも低い位置に配置され、第1開口200の上端200uが、基準水位LWL以上の高さの位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、水面WLに沿って流れる水は、容易に第1開口200を通過できるので、この水の流れによって、第1開口200を通じて固形物を移送できる。
また、第2開口300の上端300uは、基準水位LWL以下の高さの位置であって、第1開口200の上端200uよりも低い位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、水は、接触濾床槽830から第1開口200を通じて嫌気濾床槽820へ、比較的、流れ易く、接触濾床槽830から第2開口300を通じて嫌気濾床槽820へは、比較的、流れにくくなる。従って、水は、定常的に、接触濾床槽830から第1開口200を通じて嫌気濾床槽820へ流れ、嫌気濾床槽820から第2開口300を通じて接触濾床槽830へ流れることができる。この結果、接触濾床槽830から第1開口200を通じて嫌気濾床槽820への固形物の移送を促進できる。例えば、第1開口200の上端200uが基準水位LWLよりも高く、第2開口300の上端300uが基準水位LWLと同じ高さに配置されてもよい。また、水面WLに沿って流れる水が第2開口300へ流入することを抑制するためには、第2開口300の上端300uは、基準水位LWLよりも低い位置に配置されていることが好ましい。例えば、第1開口200の上端200uが基準水位LWLと同じ高さに配置され、第2開口300の上端300uが基準水位LWLよりも低い位置に配置されてもよい。
なお、図7の試験結果で説明したように、D1=50mm、100mm(すなわち、D2=11.5mm、61.5mm)のいずれの場合も、良好な濃度割合と返送率とを実現した。従って、基準水位LWL(図4)から第2開口300の上端300uまでの第2距離D2の好ましい範囲としては、11.5mm以上、61.5mm以下の範囲を採用可能である。また、ゼロに近い第2距離D2(11.5mm)が、良好な濃度割合と返送率とを実現したので、ゼロ以上11.5mm未満の種々の第2距離D2が、良好な濃度割合と返送率とを実現できると推定される。また、ゼロと比べて十分に大きな第2距離D2(61.5mm)が、良好な濃度割合と返送率とを実現した。そして、第2距離D2が更に大きいことは、開口200、300による固形物の移送を抑制する要因とはならないと推定される。従って、61.5mm以上の種々の第2距離D2も、良好な濃度割合と返送率とを実現できると推定される。
なお、第1開口200の下端200dは、第2開口300の下端300dよりも高い位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第1開口200を通じて嫌気濾床槽820へ移動した固形物が、第1開口200の下端200dよりも低い位置に沈降する前に、第1開口200を通じて接触濾床槽830へ戻ることを抑制できる。
また、第1開口200の上端200uと、第2開口300の上端300uと、の両方が、基準水位LWL以上の高さの位置に配置されていてもよい。すなわち、第1開口200と第2開口300とは、それぞれ、基準水位LWLよりも低い位置から基準水位LWLよりも高い位置まで拡がっていてもよい。図11は、開口200、300の変形例を示す概略図である。図4に示す実施例との差異は、第2開口300が、基準水位LWLと重なる位置に配置されている点だけである。図11の変形例では、第2開口300の上端300uは、基準水位LWLよりも高く、第2開口300の下端300dは、基準水位LWLよりも低い。また、第2開口300の中心300cは、第1開口200の中心200cよりも低い。また、第2開口300の中心300cは、基準水位LWLよりも低い。また、第2開口300の下端300dは、第1開口200の下端200dよりも低い。
図中の第1幅W20は、基準水位LWLの高さにおける第1開口200の幅である。第2幅W30は、基準水位LWLの高さにおける第2開口300の幅である。図11の変形例では、第1幅W20は、第2幅W30よりも広い。この構成によれば、水面WL(ここでは、基準水位LWL)に沿って流れる水は、接触濾床槽830から第1開口200を通じて嫌気濾床槽820へ移流しやすく、接触濾床槽830から第2開口300を通じて嫌気濾床槽820へは移流しにくい。従って、第1開口200を通じて適切に固形物を移送できると推定される。
なお、第1開口200の第1幅W20は、第1開口200のループ状の縁のうち基準水位LWLの高さの2つの部分P2a、P2bの間の最短距離によって表される。同様に、第2開口300の第2幅W30は、第2開口300のループ状の縁のうち基準水位LWLの高さの2つの部分P3a、P3bの間の最短距離によって表される。
また、第1開口の総数は、2以上であってもよい。また、第2開口の総数は、2以上であってもよい。図12は、仕切壁に形成された開口の変形例を示す概略図である。図4に示す実施例との差異は、2個の第1開口200と、2個の第2開口300と、が設けられている点である。図12の2個の第1開口200のそれぞれの高さは、図4の第1開口200の高さと同じである。図12の2個の第2開口300のそれぞれの高さは、図4の第2開口300の高さと同じである。図12の変形例では、第1開口200と第2開口300とは、水平な方向(ここでは、Y方向)に沿って、交互に並んでいる。処理対象人員が多い場合(例えば、処理対象人員が14人以上である場合)、嫌気濾床槽820から下流側の接触濾床槽830へ移流する水の量が多くなり得る。このような場合に、第1開口の総数と第2開口の総数との少なくとも一方が2以上であれば、嫌気濾床槽820から下流側の接触濾床槽830への水のスムーズな移流を実現できる。なお、複数の第2開口の間で、大きさ(例えば、内径D30)と高さと形状との少なくとも1つが異なっていてもよい。例えば、図4の高さの第2開口300と、図11の高さの第2開口300とが、1つの仕切壁に形成されていてもよい。同様に、複数の第1開口の間で、大きさ(例えば、内径D20)と高さと形状との少なくとも1つが異なっていてもよい。さらに、第1開口と第2開口との間で、大きさと形状との少なくとも1つが異なっていてもよい。
いずれの場合も、仕切壁には、基準水位LWLよりも低い位置の下端と基準水位LWL以上の高さの位置の上端とを有する1以上の第1開口が設けられていてよい。そして、仕切壁には、1以上の第2開口が設けられていてよい。ここで、1以上の第2開口は、以下のような開口であることが好ましい。すなわち、水面WL(ここでは、基準水位LWL)に沿って流れる水が接触濾床槽830から開口を通じて上流側の嫌気濾床槽820へ移流する容易さに関し、第2開口の移流の容易さは、1以上の第1開口のいずれの移流の容易さよりも、低い。
このような第1開口と第2開口とのそれぞれの構成としては、種々の構成を採用可能である。例えば、仕切壁に設けられた1以上の第1開口としては、予め決められた基準水位よりも低い位置に配置された下端と、基準水位以上の高さの位置に配置された上端と、を有する種々の開口を採用可能である。水面に沿って流れる水は、このような第1開口を通じて、容易に、下流側の処理槽から、上流側の処理槽へ移動できる。従って、このような第1開口は、固形物を、下流側の処理槽から上流側の処理槽へ、容易に移送できる。そして、仕切壁に設けられた1以上の第2開口は、以下の2種類の開口の少なくとも一方を含むことが好ましい。
(A)基準水位以下の高さの位置であって、1以上の第1開口のそれぞれの上端のいずれよりも低い位置に配置された上端を有する開口である低開口
(B)1以上の第1開口のそれぞれの下端のいずれよりも低い位置から、基準水位よりも高い位置まで拡がっており、基準水位の高さにおける開口の幅が、基準水位の高さにおける1以上の第1開口のそれぞれの幅のいずれよりも小さい開口である狭開口
水面に沿って流れる水は、第1開口と比べて、このような第2開口からは、上流側の処理槽へは流れにくい。これにより、水が、下流側の処理槽から第1開口を通じて上流側の処理槽へ流れ、そして、上流側の処理槽から第2開口を通じて下流側の処理槽へ流れる、という循環が生じ得る。このような水の流れによって、固形物は、下流側の処理槽から、第1開口を通じて、上流側の処理槽へ、移動できる。
仕切壁に、基準水位LWLよりも低い位置の下端と、基準水位LWL以上の高さの上端と、を有する複数の開口が形成されている場合には、それらの複数の開口のうちの、基準水位の高さにおける開口の幅が最も広い開口を、第1開口として採用すればよい。すなわち、仕切壁に設けられた複数の開口(具体的には、仕切壁の上流側の処理槽(図2の例では、嫌気濾床槽820)と下流側の処理槽(図2の例では、接触濾床槽830)とを連通する複数の開口)が、予め決められた基準水位よりも低い位置に配置された下端と、基準水位以上の高さの位置に配置された上端と、を有する1以上の開口(水位開口と呼ぶ)を含む場合に、1以上の第1開口は、1以上の水位開口のうち、基準水位の高さにおける開口の幅が最も広い1以上の開口であってよい。ここで、開口の上端の高さが基準水位の高さと同じである場合には、開口の幅として上端の幅を採用すればよい。そして、仕切壁に設けられた複数の開口のうち、この最広の第1開口を基準として用いて、上記の低開口に対応する開口と、上記の狭開口に対応する開口とを、第2開口として採用してよい。このような構成によれば、第1開口と第2開口とを用いて、適切に、固形物を移送できる。図12の変形例では、2個の開口200のそれぞれが、最広の第1開口に対応し、2個の開口300のそれぞれが、低開口(すなわち、第2開口)に対応する。また、図12の変形例において、1個の開口300の高さが、図11の第2開口300の高さと同じであり、別の1個の開口300の高さが、図4、図12の第2開口300の高さと同じであってもよい。この場合、図11の高さの開口300は、狭開口に対応し、図4、図12の高さの開口300は、低開口に対応する。そして、2個の開口200のそれぞれが、最広の第1開口に対応する。
最広の第1開口を基準として用いる場合に、低開口と狭開口とのいずれにも対応していない開口は、第1開口と第2開口とを用いた固形物の移送に対する影響が小さい開口であると推定される。そのような開口は、第1開口と第2開口とのいずれにも該当しない開口として、扱ってよい。このように、1以上の第2開口は、低開口と狭開口との少なくとも一方で構成されてよい。
また、仕切壁に設けられた1以上の第1開口は、基準水位LWLよりも高い位置に配置された上端を有する1以上の開口を含み、さらに、仕切壁に設けられた1以上の第2開口は、基準水位LWLよりも低い位置に配置された上端を有する1以上の開口を含んでいてもよい。この構成によれば、第1開口を通じた固形物の移動を、促進できる。なお、基準水位LWLよりも高い上端を有する1以上の第1開口は、仕切壁に設けられた1以上の第1開口のうちの、一部であってもよく、全部であってもよい。また、基準水位LWLよりも低い上端を有する1以上の第2開口は、仕切壁に設けられた1以上の第2開口のうちの、一部であってもよく、全部であってもよい。
また、仕切壁に設けられた1以上の第1開口のうちの1以上の特定の第1開口のそれぞれの形状と、仕切壁に設けられた1以上の第2開口のうちの1以上の特定の第2開口のそれぞれの形状とは、同じ内径の円形状であり、1以上の特定の第2開口のそれぞれの中心は、1以上の特定の第1開口のそれぞれの中心のいずれよりも低い位置に配置されてもよい。この構成によれば、第1開口を通じた固形物の移送を促進可能な第1開口と第2開口とを、容易に形成できる。なお、1以上の特定の第2開口の間で、中心の高さが異なっていてもよい。また、1以上の特定の第1開口は、仕切壁に設けられた1以上の第1開口のうちの、一部であってもよく、全部であってもよい。また、1以上の特定の第2開口は、仕切壁に設けられた1以上の第2開口のうちの、一部であってもよく、全部であってもよい。そして、1以上の特定の第1開口のそれぞれの上端が、基準水位LWLよりも高い位置に配置されていてもよく、1以上の特定の第1開口の少なくとも1つの第1開口の上端が、基準水位LWLと同じ高さの位置に配置されていてもよい。また、1以上の特定の第2開口のそれぞれの上端が、基準水位LWLよりも低い位置に配置されていてもよく、1以上の特定の第2開口の少なくとも1つの第2開口の上端が、基準水位LWL以上の高さの位置に配置されていてもよい。
いずれの場合も、複数の第1開口が仕切壁に設けられる場合には、水平な方向の位置に関して、任意の2個の第1開口が1以上の第2開口を挟むように、複数の第1開口と1以上の第2開口とが配置されていることが好ましい。ここで、水平な方向の位置に関して2個の第1開口が第2開口を挟むことは、第2開口の水平方向の位置(特に、仕切壁に平行な水平方向の位置。例えば、図12の変形例では、Y方向の位置)が、2個の第1開口それぞれの水平方向の位置の間にあることを意味している。この構成によれば、1個の第1開口を通じて上流側へ移動した固形物が、隣の第1開口を通じて下流側へ戻ることを抑制できる。ただし、2個の第1開口が、第2開口を挟まずに水平方向に並ぶように、配置されてもよい。
また、いずれの場合も、1以上の第1開口のそれぞれの形状は、円形状に限らず、種々の形状であってよい。同様に、1以上の第2開口のそれぞれの形状も、円形状に限らず、種々の形状であってよい。例えば、楕円、多角形(例えば、三角形、四角形、N角形(Nは3以上の整数))から任意に選択された形状を採用してもよい。また、複数の第1開口の間で形状が異なっていてもよく、複数の第2開口の間で形状が異なっていてもよい。また、少なくとも1つの第1開口と少なくとも1つの第2開口との間で、形状が異なっていてもよい。一般的には、第1開口の縁は、直線状の縁部分を形成する直線部分と、曲線状の縁部分を形成する曲線部分と、の少なくとも一方を含んでよい。また、第1開口の縁は、第1開口の外側から内側に向かって凸な部分を含まずに、第1開口の内側から外側に向かって凸な部分を含むことが好ましい。同様に、第2開口の縁は、直線状の縁部分を形成する直線部分と、曲線状の縁部分を形成する曲線部分と、の少なくとも一方を含んでよい。また、第2開口の縁は、第2開口の外側から内側に向かって凸な部分を含まずに、第2開口の内側から外側に向かって凸な部分を含むことが好ましい。
(2)鉛直下方向を向いて見る場合に、第2開口300の少なくとも一部が、第1開口200と重なっていてもよい。また、開口200、300を通じた水の循環(図5)を適切に生じさせるためには、開口200、300の間の基準水位LWL以下の部分の面積の差が小さいことが好ましい。例えば、第1開口200の基準水位LWL以下の部分の面積と第2開口300の基準水位LWL以下の部分の面積とのうち、大きい方の面積が小さい方の面積の300%以下であることが好ましく、大きい方の面積が小さい方の面積の200%以下であることが特に好ましい。第1開口200の総数と第2開口300の総数との少なくとも一方が2以上である場合、1以上の第1開口200のそれぞれの基準水位LWL以下の部分の合計面積と、1以上の第2開口300のそれぞれの基準水位LWL以下の部分の合計面積と、のうち、大きい方の面積が小さい方の面積の300%以下であることが好ましく、大きい方の面積が小さい方の面積の200%以下であることが特に好ましい。
(3)排水処理装置の構成は、上記の排水処理装置800の構成に変えて、他の種々の構成であってよい。例えば、沈殿分離槽810に代えて、濾材を有する嫌気濾床槽が設けられていてもよい。また、嫌気濾床槽820に代えて、濾材が省略された沈殿分離槽が設けられてもよい。また、接触濾床槽830に代えて、粒状担体が流動する担体流動槽が設けられていてもよい。
一般的には、排水処理装置は、嫌気処理槽と、嫌気処理槽の下流側に設けられた好気処理槽と、を含む複数の処理槽を備え、好気処理槽に散気装置が設けられ、嫌気処理槽と好気処理槽との間を仕切る仕切壁に、固形物を好気処理槽から嫌気処理槽へ移動させるための1以上の開口200と1以上の開口300とが設けられることが好ましい。
嫌気処理槽は、例えば、種々の嫌気処理槽であってよい。例えば、濾材が省略された沈殿分離槽を採用してもよい。また、嫌気処理槽の水を、嫌気処理槽と好気処理槽とは異なる別の処理槽へ移送する第1移送ポンプの構成は、上述の汚泥移送エアリフトポンプ910の構成に代えて、他の種々構成であってよい。例えば、エアリフトポンプに代えて、他の種類のポンプ(例えば、電気モータを用いて水を移送する電動ポンプ)を採用してもよい。また、第1移送ポンプの吸込口(例えば、汚泥移送エアリフトポンプ910の吸込口911)の少なくとも一部が、仕切壁に設けられた1以上の第1開口200のそれぞれの下端200dと、仕切壁に設けられた1以上の第2開口300のそれぞれの下端300dとのうちの最も低い下端(「最低下端」と呼ぶ)よりも高い位置に配置されていてもよい。例えば、図4、図11、図12の実施例では、第2開口300の下端300dが、最低下端に対応する。一般的には、第1移送ポンプの吸込口は、1以上の第1開口200のそれぞれの下端200dと1以上の第2開口300のそれぞれの下端300dとのうちの最低下端よりも低い部分を含むことが好ましい。この構成によれば、第1移送ポンプは、開口200、300よりも低い位置に沈降した固形物を、容易に移送できる。なお、吸込口の縁が、最低下端よりも低い部分を含む場合に、吸込口は、下端200d、300dのいずれよりも低い部分を含んでいるということができる。なお、嫌気処理槽の水を他の処理槽へ移送する第1移送ポンプが、省略されてもよい。
嫌気処理槽に設けられる移流バッフルの構成は、上記の移流バッフル823の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、下開口824の少なくとも一部が、1以上の第1開口200のそれぞれの下端200dと1以上の第2開口300のそれぞれの下端300dとのうちの最も低い最低下端よりも高い位置に配置されていてもよい。一般的には、下開口824は、1以上の第1開口200のそれぞれの下端200dと1以上の第2開口300のそれぞれの下端300dとのうちの最低下端よりも低い部分を含むことが好ましい。この構成によれば、嫌気処理槽内の固形物が、嫌気処理槽の底部に沈降せずに、下開口824から移流バッフル823内に移動して、開口200、300から好気処理槽へ流出することを、抑制できる。また、移流バッフル823の下開口824は、水平な開口ではなく、比較的低い位置から比較的高い位置まで拡がっていてもよい。例えば、移流バッフル823の底が塞がれて、移流バッフル823の側面に下開口824が形成されていてもよい。なお、下開口824の縁が、最低下端よりも低い部分を含む場合に、下開口824は、下端200d、300dのいずれよりも低い部分を含んでいるということができる。なお、移流バッフルが省略されてもよい。
嫌気処理槽へ流入する水を嫌気処理槽へ導く導入部の構成は、上記の移流開口814の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、パイプを通じて嫌気処理槽へ水が導入されてもよい。この場合、パイプの流出口が、導入部に対応する。一般的には、導入部の下端が、移流バッフル823の下開口824の上端824uよりも高い位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、水は、導入部から移流バッフル823の下開口824へ下側に向かって流れるので、嫌気処理槽内の固形物を、嫌気処理槽の底部で容易に貯留できる。ただし、導入部の下端が、移流バッフル823の下開口824の上端824uよりも低い位置に配置されてもよい。
好気処理槽は、種々の好気処理槽であってよい。例えば、担体が流動する流動槽であってよい。また、好気処理槽の散気装置は、連続的に散気するためのものであってもよく、代わりに、間欠的に散気するためのものであってもよい。
好気処理槽に設けられる散気装置としては、パイプに複数の孔を設けたものに代えて、気泡を生成可能な任意の部材を採用可能である。例えば、多孔質散気装置、ディスクディフューザ、などを採用可能である。多孔質散気装置としては、例えば、焼結型散気装置、メンブレン型散気装置、などを採用可能である。また、好気処理槽に設けられる散気装置の総数は、1以上の任意の数であってよい。複数の散気装置が設けられる場合には、複数の散気装置は、鉛直下方向を向いて見る場合に、好気処理槽内の互いに異なる位置に配置されていることが好ましい。そして、複数の散気装置には、複数の散気装置の間の散気のバランスを調整するための分配バルブが接続されていることが好ましい。そして、ブロワからのガスは、この分配バルブを介して、複数の散気装置に供給されることが好ましい。これにより、複数の散気装置の間の散気の偏りを緩和できる。
また、接触濾床槽830よりも下流側において、水を下流側へ移流させる移流開口であって、ピーク流入時の単位時間当たりの水量を制限する移流開口を形成する移流開口形成部は、図2等で説明した消毒槽850の壁部859に代えて、他の種々の部材であってよい。例えば、処理水槽840と消毒槽850とを連通するパイプが、移流開口を形成してもよい。この場合、パイプの端の開口が、移流開口に対応してよい。また、移流開口は、処理水槽840と消毒槽850とを連通する開口に限らず、他の種々の処理槽を連通する開口であってよい。
開口200、300を形成する仕切壁は、図3(A)の仕切壁829のように、排水処理装置の外壁(例えば、図3(A)の外壁801)に接続された仕切壁に代えて、種々の仕切壁であってよい。例えば、排水処理装置の外壁と他の仕切壁との両方に接続された仕切壁に、開口200、300が形成されてもよい。また、排水処理装置の外壁には接続されずに他の仕切壁に接続された仕切壁に、開口200、300が形成されてもよい。なお、仕切壁には、第1開口200と第2開口300とに加えて、他の開口が形成されてもよい。但し、開口200、300による固形物の移送に対する他の開口の影響が小さいことが好ましい。
また、好気処理槽の下流側に、別の処理槽である下流側処理槽が設けられてもよい。下流側処理槽は、処理水槽840に代えて、任意の処理槽であってよい。例えば、別の好気処理槽が設けられてもよい。
好気処理槽と下流側処理槽とを連通する連通部の構成は、上記の接触濾床槽830と処理水槽840との間を仕切る仕切壁839によって形成される開口834の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、好気処理槽の底から鉛直上方向に離れた位置に、連通部が配置されていてもよい。また、連通部は、パイプによって形成されてもよい。いずれの場合も、連通部によって形成される水が流れる領域が、仕切壁に設けられた1以上の第1開口200のそれぞれの下端200dと、仕切壁に設けられた1以上の第2開口300のそれぞれの下端300dとのうちの最も低い最低下端よりも低い流路を含む(すなわち、連通部は、最低下端よりも低い流路を形成する部分を含む)ことが好ましい。この構成によれば、好気処理槽内で下端200d、300dのいずれよりも低い位置に沈降した固形物は、連通部を通じて、下流側処理槽へ移動できる。従って、好気処理槽内の固形物の量が過剰となることを抑制できる。例えば、図2の実施例のように、移流開口834の全体が、最低下端(ここでは、下端300d)よりも低い場合、移流開口834によって形成される水が流れる領域(ここでは、移流開口834の内の部分)の全体が、下端200d、300dのいずれよりも低い流路を形成している。ここで、連通部が、好気処理槽の底から連通部を経て下流側処理槽の底まで、底の高さが変化しない流路を形成することが好ましい。この構成によれば、好気処理槽から連通部を通じて下流側処理槽への固形物の移動を促進できる。なお、連通部の底が、最低下端よりも高い位置に配置されていてもよい。
また、下流側処理槽内の水を、第1と第2と第3の処理槽とは異なる別の処理槽へ移送する第2移送ポンプの構成は、上述の循環エアリフトポンプ920の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、エアリフトポンプに代えて、他の種類のポンプ(例えば、電気モータを用いて水を移送する電動ポンプ)を採用してもよい。いずれの場合も、第2移送ポンプの吸込口(例えば、循環エアリフトポンプ920の吸込口921)は、下流側処理槽の底部に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第2移送ポンプは、下流側処理槽の底部に堆積した固形物を、下流側処理槽の外に移送できる。一般的には、移送ポンプの吸込口は、1以上の第1開口200のそれぞれの下端200dと1以上の第2開口300のそれぞれの下端300dとのうちの最も低い最低下端よりも低い部分を含むことが好ましい。この構成によれば、第2移送ポンプは、下流側処理槽内において、開口200、300よりも低い位置に存在する固形物を、容易に移送できる。ただし、下流側処理槽の水を他の処理槽へ移送する第2移送ポンプが、省略されてもよい。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。