JP7290458B2 - 水処理装置及びその運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は、戸建住宅や集合住宅等から排出される排水を処理する水処理装置のうち、嫌気ろ床槽を備えた水処理装置及びその運転方法に関する。
一般家庭等から排出される生活排水を処理する水処理装置は、これまでに様々な処理方法が提案されている。
従来の水処理装置の槽内は複数の仕切壁により仕切られ、上流側から嫌気ろ床槽、好気処理槽、沈殿槽、消毒槽の順で配列されている。
前記した従来の水処理装置の嫌気ろ床槽の構造として、嫌気ろ床槽のろ床部に充填された濾材に生息した微生物により、流入口より水処理装置内に流入した流入汚水中に含まれる有機物の分解を行い、嫌気的処理で発生した汚泥を嫌気ろ床槽底部に貯留する構造である。
今日、浄化槽の開発において小容量化が進められているものの、嫌気ろ床槽の小容量化には限りがあるため、限られた容積で効率よく嫌気処理をすることが要求されていた。
また、浄化槽の清掃については、浄化槽法により年1回実施と定められているため、1年間性能を悪化させずに汚泥貯留ができることも要求されていた。
特開2001-79576号公報 特開2004-136187号公報
特許文献1による浄化槽では、流入した被処理水が沈殿分離槽に循環流を形成する構成になっており、沈殿分離槽に堆積した汚泥の界面を流入水の流速により乱し、汚泥の界面の乱れにより堆積汚泥や浮遊物(SS)を後段の嫌気ろ床槽に流出させてしまう課題があった。
特許文献2による嫌気ろ床槽では、文献中図2に示す嫌気ろ床槽に配置されたバッフル壁155により形成されたバッフル領域163において、濾材が配置されない状態で区画領域として形成される構造であるため、固形物や浮遊物(SS)の捕捉・除去を行うことができず、沈殿分離槽から嫌気ろ床槽に移流した被処理水の流速により、ろ床底部に堆積した汚泥の界面を乱し、汚泥の界面の乱れにより堆積汚泥や浮遊物(SS)を装置外に流出させてしまう課題があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、嫌気ろ床槽の小型化を図りながらも、汚泥貯留を向上させ、嫌気処理の効率を安定化させることができる水処理装置及びその運転方法の提供を目的とする。
本発明は、上記課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(1)上流側から沈殿分離槽と嫌気ろ床槽の順に配列してなる水処理装置であって、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽を区分する仕切壁の上端が、前記嫌気ろ床槽のろ床部より上方で、かつ、水面より下方になるように配置され、前記沈殿分離槽の流入口に底壁を有し、下端が前記仕切壁より上方、上端が水面より下方に移流開口部を設けた流入バッフルを備え、前記嫌気ろ床槽の前記ろ床部が、前記ろ床部の下端から水面よりも上方に設けた阻流板によって分割してあり、前記阻流板の上流側を第一のろ床部、下流側を第二のろ床部とし、前記第一のろ床部と前記第二のろ床部の下方に連通した汚泥堆積部を設け、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽には2つのスカム貯留部が設けられ、第一のスカム貯留部は、前記沈殿分離槽と前記第一のろ床部の上方が連通した領域に形成され、第二のスカム貯留部は、前記第二のろ床部の上方に形成され、前記第二のろ床部の下方の、前記汚泥堆積部に貯留されている汚泥を、前記沈殿分離槽の前記流入バッフル内部に移送することができるポンプを備えることを特徴とする。
(2)本発明の項(1)に記載の水処理装置において、前記嫌気ろ床槽にポンプを備え、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽の水面上方に流量調整部を設けることを特徴とする。
(3)本発明に係る水処理装置の運転方法は、上流側から沈殿分離槽と嫌気ろ床槽の順に配列してなる水処理装置であって、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽を区分する仕切壁の上端が、前記嫌気ろ床槽のろ床部より上方で、かつ、水面より下方になるように配置され、前記沈殿分離槽の流入口に底壁を有し、下端が前記仕切壁より上方、上端が水面より下方に移流開口部を設けた流入バッフルを備え、前記嫌気ろ床槽の前記ろ床部が、前記ろ床部の下端から水面よりも上方に設けた阻流板によって分割してあり、前記阻流板の上流側を第一のろ床部、下流側を第二のろ床部とした水処理装置を運転するに際し、前記第二のろ床部の下方の、汚泥堆積部に貯留されている汚泥を、常時、前記沈殿分離槽の前記流入バッフル内部に移送することを特徴とする。
(4)本発明の項(3)に記載の水処理装置の運転方法において、前記水処理装置として、前記第一のろ床部と前記第二のろ床部の下方に連通した汚泥堆積部を設け、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽に2つのスカム貯留部を設け、第一のスカム貯留部を前記沈殿分離槽と前記第一のろ床部の上方が連通した領域に形成し、第二のスカム貯留部を前記第二のろ床部の上方に形成した水処理装置を用いることができる。
(5)本発明の項(3)または項(4)に係る水処理装置の運転方法において、前記嫌気ろ床槽にポンプを備え、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽の水面上方に流量調整部を設けた水処理装置を用いることができる。
本発明によれば、嫌気ろ床槽には1年間十分に汚泥を貯留でき、優れた汚水浄化能力を備えた水処理装置を提供することができる。
特に、阻流板によって第一のろ床部と第二のろ床部の2つに分割したろ床部を有し、2分割したろ床部どうしの下方を汚泥堆積部で連通し、阻流板の上流側に沈殿分離槽と第一のろ床部の上方が連通した領域を形成することにより広範囲に第一のスカム貯留部を設け、阻流板の下流側にも第二のスカム貯留部を設けているので、スカム貯留量を増加できるとともに、第二のろ床部の存在により汚泥堆積部から発生した浮遊物の系外への流出を防ぎ、2分割したろ床部によって限られた容積で嫌気処理を効率良く実施できる。また、汚泥堆積部の堆積汚泥をポンプで浮遊物とともに沈殿分離槽に設けた流入バッフル内部に戻すことで汚泥堆積部に堆積する汚泥量を少なくすることができ、繰り返しの処理ができる。これらの効果が相俟って1年間十分に汚泥を貯留でき、優れた汚水浄化能力を発揮できる水処理装置を提供できる。
本発明に係る水処理装置の運転方法によれば、沈殿分離槽と嫌気ろ床槽を区分する仕切壁の上端を水面より下方に設置し、阻流板によって第一のろ床部と第二のろ床部の2つに分割したろ床部を有し、2分割したろ床部どうしの下方を汚泥堆積部で連通した水処理装置を運転するに際し、汚泥堆積部の汚泥を常時沈殿分離槽の流入バッフル内部に移送しながら運転する。
これにより、堆積汚泥をポンプで沈澱分離槽に戻すことで汚泥堆積部に堆積する汚泥量を少なくしながら、繰り返しの処理ができる。また、2分割したろ床部を利用し、限られた容積で効率良く嫌気処理ができるとともに、2分割したろ床部下方の汚泥堆積部に、より多くの汚泥を堆積でき、汚泥堆積部の下流側に設けた第二のろ床部の存在により汚泥堆積部から発生した浮遊物の系外への流出を防ぎつつ処理ができる。
これらにより、上述の水処理装置を用いて長い間汚泥を貯留でき、優れた汚水浄化能力を発揮できる水処理ができる。
図1は本発明に係る第一実施形態に基づく水処理装置の一部を破断とした斜視図である。 図2は本発明に係る第一実施形態に基づく水処理装置の断面図である。 図3は本発明に係る第二実施形態に基づく水処理装置の一部を破断とした斜視図である。 図4は本発明に係る第二実施形態に基づく水処理装置の断面図である。 図5は本発明に係る第一実施形態に基づく水処理装置の実施例を示す断面図である。 図6は本発明に係る第一実施形態に基づく水処理装置の試験例であって、原水の流入が終了した後のSS分布の状態を示す断面図である。 図7は本発明に係る第一実施形態に基づく水処理装置の試験例であって、沈澱分離槽の底部にある汚泥堆積部の頂部まで汚泥を堆積させた状態で、原水の流入が終了した後の汚泥の堆積状態を示す断面図である。 図8は本発明に係る第一実施形態に基づく水処理装置の試験例であって、好気ろ床槽の底部にある汚泥堆積部の頂部まで汚泥を堆積させた状態で、原水の流入が終了した後の汚泥の堆積状態を示す断面図である。
「第一実施形態」
以下、本発明の第一実施形態に基づく水処理装置について図1及び図2を用いて説明する。
図1は本発明の第一実施形態の水処理装置の一部を破断とした斜視図であり、図2は同水処理装置の断面図である。
本実施形態の水処理装置1は、側壁1A、1B、1C、1Dの4つの側壁と、これら4つの側壁からなる周壁の底部側開口を閉じるように底壁1Eが設けられた槽から構成され、さらにこの槽の内部を仕切壁20で仕切って構成されている。
この実施形態の水処理装置1は、沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11を有している。
この実施形態において、沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11は隣接して配置され、上端が嫌気ろ床槽11のろ床部22よりも上方で、かつ、水面50より下方になるように配置された仕切壁20により区分され、仕切壁20の上流側に沈殿分離槽10が、下流側に嫌気ろ床槽11が構成されている。図1、図2に示すように水処理装置1の左側に沈殿分離槽10が設置され、右側に嫌気ろ床槽11が設置されている。
沈殿分離槽10は、側壁1Aの上部に流入管の接続される流入口2を備え、流入口2には流入バッフル3が接続され、流入部が構成されている。
流入バッフル3は、図1に示すように鉛直方向に備えられた4つの側壁3B、3C、3D、3Eを有し、底部には水平方向に底壁3Aを有する形状が好ましく、側壁3C、3Eの下方にそれぞれ移流開口部25が設けられている。
移流開口部25の鉛直方向の位置は、下端を仕切壁20の上端より上方に、上端を水面50より下方に設けることが好ましく、開口数は流入方向に対して略直角方向に少なくとも2箇所あることが好ましい。流入バッフル3の側壁は4つに限定されることはなく、側壁の数は多くても少なくてもよく、形状も直線形又は曲線形どちらでもよく、様々な形状を採用可能であり、流入した被処理水の方向がバッフル内で変更され、流入時の水流のエネルギーが分散される構成であれば良い。
沈殿分離槽10に汚泥堆積部30が設けられ、この汚泥堆積部30は鉛直方向において底壁1Eから仕切壁20の上端より下方の領域に形成され、汚泥を貯留可能に構成されている。
嫌気ろ床槽11に、濾材を充填したろ床部22が仕切壁20の上端より下方に設けられ、ろ床部22が、ろ床部の下端から水面50よりも上方に突出するように設けた阻流板21によって分割されており、阻流板21の上流側に第一のろ床部23が、阻流板21の下流側に第二のろ床部24が設けられている。
充填される濾材の形状は、網様円錐台状濾材が好ましいが、形状は限定されることはなく、板状、ヘチマ様板状、網様円筒状、骨格様球状など様々な形状の濾材を採用可能である。
ろ床部22の下方には汚泥堆積部31が設けられ、この汚泥堆積部31の水平方向は仕切壁20と側壁1Bの間に形成され、第一のろ床部23と第二のろ床部24の下方に連通した領域としての汚泥堆積部31が設けられている。
図2に示すように、ろ床部23、24の上方にも各々汚泥貯留部32、33が設けられている。
沈殿分離槽10の上部側と嫌気ろ床槽11の上部側には2つのスカム貯留部が設けられている。
第一のスカム貯留部34は、沈殿分離槽10の上部側と嫌気ろ床槽11の上部側にわたり連続して設けられ、鉛直方向は上端が水面50より下方、下端が流入バッフル3の移流開口部25の上端より上方、水平方向は側壁1Aと阻流板21の間の領域に形成され、沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11の上部を連通した領域として第一のスカム貯留部34が設けられている。
第二のスカム貯留部35は、嫌気ろ床槽11の上部に設けられ、水平方向は阻流板21と側壁1Bの間の領域に形成されている。第二のスカム貯留部35は、鉛直方向の上端が水面50より下方、下端が流入バッフル3の移流開口部25の上端より上方の領域に形成されている。
嫌気ろ床槽11は、汚泥堆積部31に貯留されている汚泥を、沈殿分離槽10に移送することができるポンプ6を備えている。
ポンプ6の吸込口6Aは側壁1B近くの汚泥貯留部31に設けられ、吸込口6Aから堆積汚泥を吸い込み、この堆積汚泥をポンプ6に設けた移送管7により流入バッフル3の内部に移送することができる。
嫌気ろ床槽11に備えるポンプ6は、特に限定されるものではなく、エアリフトポンプ、電動式の水中ポンプ等を用いることができるが、好ましくは、安価で維持管理が容易なエアリフトポンプを用いることができる。
嫌気ろ床槽11の側壁1Bには、ろ床部24より上方に流出領域26が設けられており、装置外に被処理水を排出することができる。このため、流出領域26の下端高さにより沈殿分離槽10の水位と嫌気ろ床槽11の水位が規定される。
流出領域26には、流出バッフル5を備えることが好ましく、流出バッフル5の上端は水面50より上方に、流出バッフル5の下端は第二のスカム貯留部35より下方に設けることが好ましい。
嫌気ろ床槽11には、上端が水面50より上方、下端がろ床部22より下方になるように配置した清掃孔4が備えられている。清掃孔4の水平方向の位置は特に限定されることはないが、維持管理の作業性を考慮し、仕切壁20又は阻流板21に、あるいは、側壁1Bに隣接する位置が望ましい。
ここで、図1及び図2に基づいて汚水処理の処理工程について説明する。
流入口2から水処理装置1に流入した被処理水41は、下向きの流入軌跡で流入バッフル3の内部に移流され、流入バッフル3の底壁3Aにより、流れの向きを下向きから水平方向に変えられ、流入バッフル3の2つの移流開口部25から汚泥堆積部30の上方に移流される。
流入バッフル3の底壁3Aにより移流される被処理水42の流速を緩和し、被処理水42の方向を水平向きとすることで、汚泥堆積部30に堆積した汚泥の界面10Aを乱すことを防止し、汚泥の界面10Aの乱れにより堆積汚泥が流出することを防ぐことができる。
移流された被処理水42には、固形物や夾雑物が含まれており、沈殿するものは移流開口部25の下方の汚泥堆積部30に底部汚泥として貯留され、浮くものは移流開口部25の上方の第一のスカム貯留部34にスカムとして貯留される。また、底部汚泥として汚泥堆積部30に貯留された汚泥の一部は、微生物により分解される過程で発生したガスを伴って浮上し、第一のスカム貯留部34でスカムとして貯留される。スカムの一部は、水面上に露出するため、水分が減少して固形物濃度を高めることができるため、汚泥の減容化を図ることができる。
沈殿分離槽10の分離除去を受けた被処理水43は、汚泥堆積部30に堆積された汚泥を撹拌することなく、仕切壁20の上方から嫌気ろ床槽11に移流される。被処理水44は第一のろ床部23の上部から移流され、下向流で第一のろ床部23を通過する。第一のろ床部23に設けられている濾材には微生物が生息しており、被処理水45に含まれる固形物の捕捉と有機物の分解が行われる。
第一のろ床部23を通過した被処理水46は、阻流板21の下方を経由した後、第二のろ床部24の下部から移流され、上向流で第二のろ床部24を通過し、充填された濾材により被処理水47に含まれる有機物の分解が行われる。
嫌気ろ床槽11に設けた阻流板21により、2つのろ床部23、24を構成することで、図2に示すように下向流と上向流からなる側面視U字型の水路を形成でき、長水路で嫌気処理が可能となる。これにより限られた容積の嫌気ろ床槽11において、嫌気処理を効率的に行うことができる。
発生汚泥は、ろ床部22の下方に設けられた汚泥堆積部31、第一のろ床部23の上方に設けられた汚泥堆積部32、第二のろ床部24の上方に設けられた汚泥堆積部33にそれぞれ貯留される。
スカムは、沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11の上部に設けられた第一のスカム貯留部34に流動可能に貯留されると共に、第二のスカム貯留部35にも貯留される。
第一のろ床部23の上方にある汚泥堆積部32に貯留された汚泥は、分解により発生したガスを伴って、第一のスカム貯留部34に浮上し、汚泥堆積部30から由来したスカムと一緒に貯留されて濃縮化する。同様に、第二のろ床部24の上方にある汚泥堆積部33に貯留された汚泥は、分解により発生したガスを伴って、第二のスカム貯留部35に浮上して濃縮化する。
嫌気処理を受けた被処理水48は、側壁1Bに備えられた流出バッフル5の下方からその内部に移流し、側壁1Bに設けられた流出領域26から装置外に排出される。
なお、流出領域26の手前に濾材を充填した第二のろ床部24を設けることにより、被処理水45の流速による乱れにより汚泥堆積部31から発生した浮遊物(SS)を捕捉することが可能となり、流出領域26から装置外に堆積汚泥や浮遊物(SS)を流出することを防ぐことができる。
嫌気ろ床槽11に備えたポンプ6の吸込口6Aから浮遊物(SS)を捕捉できることで、第二のろ床部24の上方に浮遊物(SS)を移流させることも防ぐことが可能となり、汚泥堆積部33に堆積する汚泥量を限りなく少なく抑えることにも効果的である。
汚泥堆積部31に貯留した堆積汚泥は、嫌気ろ床槽11に設けられたポンプ6により、流入バッフル3内部に常時移送され、再度沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11において繰り返しの処理を受けることになる。これにより嫌気ろ床槽11の堆積汚泥をスカム化する機会を増やすことに繋がり、汚泥を濃縮したスカムで貯留することで、嫌気ろ床槽11の限られた容積の中で、有効的な汚泥貯留が可能となる。
「第二実施形態」
以下、本発明の第二実施形態に基づく水処理装置について図3及び図4を用いて説明する。
図3は本発明の第二実施形態の水処理装置1Rの一部を破断とした斜視図であり、図4は同水処理装置1Rの断面図である。
第二実施形態の水処理装置1Rと第一実施形態の水処理装置1の相違点は、嫌気ろ床槽11にポンプ8を備え、沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11の水面上方に、流量調整部36を設けている点である。
第二実施形態の水処理装置1Rの構造は、前記した相違点に関わる部分以外は、第一実施形態の水処理装置1の構造と同じである。相違する部分に関する説明を以下に記載し、共通部分の説明は省略する。
嫌気ろ床槽11は、ポンプ8を側壁1Bに近接する位置に備え、ポンプ8を用いて装置外に被処理水を排出することができる。ポンプ8を備えることにより、沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11の上部に、被処理水を一時的に貯留する流量調整部36が設けられ、流量調整部36には低水位(L.W.L)から高水位(H.W.L)までの範囲に被処理水を貯留できるようになる。
なお、沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11の低水位(L.W.L)は、ポンプ8に設けられている吸込口8Aの高さにより規定され、流量調整部36は低水位(L.W.L)より上方に設けられる。図3、図4に示す形態では吸込口8Aは上方に開口されているので、この開口の高さが低水位(L.W.L)を規定する。
沈殿分離槽10、嫌気ろ床槽11の順に処理された被処理水は、ポンプ8の排出口8Bから装置外に移送される。
ポンプ8は移送水量を調節する機能を有し、移送水量を調節することにより低水位(L.W.L)から高水位(H.W.L)の間に調整しながら汚水処理を行うことができる。即ち、流量調整部36に一時的に処理水を貯留することが可能となり、流入水の水量負荷を緩和することができる。流入水の水量負荷を緩和する機能は、流量調整機能、あるいは、ピークカット機能とも言うことができる。
嫌気ろ床槽11に備えるポンプ8は、特に限定されるものではなく、エアリフトポンプ、電動式の水中ポンプ等を用いることができるが、好ましくは、安価で維持管理が容易なエアリフトポンプを用いることができる。
吸込口8Aの周囲には、流出バッフル5を備えることが好ましく、流出バッフル5は吸込口8Aの周囲を取り囲み、流出バッフル5の上端は高水位(H.W.L)より上方、下端は第二のスカム貯留部35より下方に設けることが好ましい。
浴槽排水等のように短時間で多くの水量が流入する場合に、汚泥堆積部33に堆積した汚泥が被処理水47の流速により乱され、一度は上昇する水面に追従して高水位(H.W.L)下方に浮遊物(SS)として浮遊するが、ポンプ8の吸込口8Aは流出バッフル5の下方から内部に移流した被処理水を吸い込む構造のため、浮遊物(SS)を吸い込むことを限りなく防ぐことができ、装置外に堆積汚泥又は浮遊物(SS)を流出させることを防ぐことに効果的である。
また、汚泥堆積部33に堆積した汚泥を、高水位(H.W.L)下方に浮遊させることは、汚泥をスカム化する機会を増やし、スカム貯留部35で汚泥を濃縮したスカムとして貯留することにより、汚泥堆積部33に堆積する汚泥の量を限りなく少なく抑えることにも効果的である。
第一実施形態の水処理装置1は流量調整機能を有しない処理方式であり、流量調整機能を有しなくとも汚泥貯留を向上させ嫌気処理の効率を安定化させることができるが、第二実施形態の水処理装置1Rのように流量調整機能を有することにより更に効果的な処理が可能になる為、ポンプ8を備える第二実施形態の構成が最も好ましい。
その他、第二実施形態の水処理装置1Rで得られる作用効果については、第一実施形態の水処理装置1と同様に得ることができる。
以下、本発明の実施例について図5を用いて説明する。
図5に断面構造を示すように本実施例の水処理装置1Sは、各仕切壁により複数の槽に区分され、上流側から沈殿分離槽10、嫌気ろ床槽11、接触ばっ気槽12、沈殿槽13、消毒槽14の順で配列されている。
沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11は、上端が嫌気ろ床槽11のろ床部22よりも上方で、かつ、水面50より下方になるように配置された仕切壁20により区分されている。
接触ばっ気槽12と沈殿槽13は仕切壁27の下流に設けられ、仕切壁28により区分されされている。
沈殿分離槽10の流入口2には、流入バッフル3が接続され流入部が構成されている。流入バッフル3は、4つの側壁と底壁3Aを有し、側壁の下方に移流開口部25を2箇所設けている。
嫌気ろ床槽11に、網様円錐台状濾材を充填したろ床部22が仕切壁20の上端より下方に設けられ、ろ床部22がろ床部の下端から水面50よりも上方に設けた阻流板21によって分割されており、阻流板21の上流側を第一のろ床部23として、下流側を第二のろ床部24として各ろ床部が設けられている。
仕切壁20には、上端が水面50より上方、下端がろ床部22より下方になるように配置した清掃孔4を奥行方向の中央に備えている。
嫌気ろ床槽11と後段の接触ばっ気槽12を仕切る仕切壁27に、ろ床部24より上方に、後段の接触ばっ気槽12に被処理水を移流する流出領域26が設けられている。流出領域26には、上端が水面50より上方、下端が第二のスカム貯留部35より下方に設けた流出バッフル5を備えている。
流出バッフル5は、第二のスカム貯留部35に貯留されたスカムの流出を防止するため、下部の水面積が上部の水面積よりも狭くなっている。
接触ばっ気槽12は、ヘチマ様円筒状担体が充填され、好気処理を受けた被処理水は後段の沈殿槽13へ移流される。
沈殿槽13は、接触ばっ気槽12から移流した被処理水に含まれる浮遊物(SS)を沈殿分離して、上澄水は消毒槽14へ移流される。
消毒槽14に移流された被処理水は、流出口29から装置外に排出される。
前述の構成を有した水処理装置1Sの汚泥貯留容量は、汚泥堆積部30が仕切壁20の上端までを貯留可能高さとして208L、第一のろ床部23が148L、第二のろ床部24が122L、汚泥堆積部31が191L、第一のスカム貯留部34が99L、第二のスカム貯留部35が17Lである。
図6に示すように水処理装置1Sを、前述の実施例の構成で作成し、沈殿分離槽10及び嫌気ろ床槽11のSSの捕捉性能を確認する為の試験を行った。
本試験を行うための装置として、流入口2の装置外に原水を貯水する水槽61と、原水を流入口2へ定めた水量負荷で投入するためのポンプ62を備え、流出口29の装置外には、排出された処理水を貯水する水槽63を設けた。
尚、本試験では流入のみによる影響を確認する為に、汚泥堆積部31に貯留されている堆積汚泥を流入バッフル3内部に移送することはしない条件で、ポンプ6及びポンプ8は取り付けない構成を用いた。
汚泥捕捉性能試験について以下に示す。
「試験方法1」
図6に示す、清水を張った水処理装置1Sに、浴槽排水を模した水量の原水を流入させた後、沈殿分離槽10、嫌気ろ床槽11、接触ばっ気槽12及び沈殿槽13に残存したSS量を測定し、SS捕捉率を算出して評価した。
「試験条件」
流入原水はSS濃度が1000mg/L、流入水量は59L/分×4.2分、合計250Lに設定した。
「試験結果」
本試験の結果、各槽のSS捕捉率は、沈殿分離槽10で55%、嫌気ろ床槽11で42%、接触ばっ気槽12及び沈殿槽13で2%、装置外に排出した処理水に含まれるSSは1%であった。
この結果から、沈殿分離槽10と嫌気ろ床槽11で合計97%のSS捕捉率であり、流入原水に含まれるSSのほぼ全てを捕捉でき、優れたSS捕捉性能があることが確認された。
次に、図7に示す水処理装置1Sを、前述の実施例の構成で作成し、沈殿分離槽10の汚泥保持性能を確認する為の試験を行った。
本試験を行うための装置として、流入口2の装置外に原水を貯水する水槽61と、原水を流入口2へ定めた水量負荷で投入するためのポンプ62を備え、流出口29の装置外には、排出された処理水を貯水する水槽63を設けた。
尚、本試験では流入のみによる影響を確認する為に、汚泥堆積部31に貯留されている堆積汚泥を流入バッフル3内部に移送することはしない条件で、ポンプ6及びポンプ8は取り付けない構成を用いた。
汚泥保持性能試験について以下に示す。
「試験方法2」
図7に示す、清水を張った水処理装置1Sの、沈殿分離槽10の汚泥堆積部30に濃縮汚泥を静かに投入し、次に浴槽排水を模した水量の1.5倍相当の水量負荷を掛けた原水を流入させた後、沈殿分離槽10に残存したSS量を測定し、汚泥保持率を算出して評価した。
「試験条件」
流入原水は水道水、流入水量は59L/分×6.4分、合計375Lに設定した。
投入汚泥は、下水処理施設の濃縮汚泥を使用し、汚泥濃度はMLSS14000mg/Lに設定し、仕切壁20の上端まで投入した。
「試験結果」
沈殿分離槽の汚泥保持試験の結果、図7に示す水処理装置1Sにおける汚泥保持率は、沈殿分離槽10で98.1%、嫌気ろ床槽11で1.7%、接触ばっ気槽12及び沈殿槽13で0.2%、装置外に排出した処理水に含まれるSSは0%であった。
この結果から、沈殿分離槽10の汚泥保持率が98.1%であり、汚泥堆積部30に堆積したほぼ全ての堆積汚泥を、嫌気ろ床槽11に流出させずに汚泥堆積部30に保持でき、優れた汚泥保持性能があることが確認された。
次に、図8に示す水処理装置1Sを、前述の実施例の構成で作成し、嫌気ろ床槽11の汚泥保持性能を確認する為の試験を行った。
本試験を行うための装置として、流入口2の装置外に原水を貯水する水槽61と、原水を流入口2へ定めた水量負荷で投入するためのポンプ62を備え、流出口29の装置外には、排出された処理水を貯水する水槽63を設けた。
尚、本試験では流入のみによる影響を確認する為に、汚泥堆積部31に貯留されている堆積汚泥を流入バッフル3内部に移送することはしない条件で、ポンプ6及びポンプ8は取り付けない構成を用いた。
汚泥保持性能試験について以下に示す。
「試験方法3」
図8に示す、清水を張った水処理装置1Sの、嫌気ろ床槽11の汚泥堆積部31に濃縮汚泥を静かに投入し、次に浴槽排水を模した水量の1.5倍相当の水量負荷を掛けた原水を流入させた後、嫌気ろ床槽11に残存したSS量を測定し、汚泥保持率を算出して評価した。
「試験条件」
流入原水は水道水、流入水量は59L/分×6.4分、合計375Lに設定した。
投入汚泥は、下水処理施設の濃縮汚泥を使用し、汚泥濃度はMLSS14000mg/Lに設定し、ろ床部22の下端まで投入した。
「試験結果」
嫌気ろ床槽の汚泥保持試験の結果、図8に示す水処理装置1Sにおける汚泥保持率は、沈殿分離槽10で0%、嫌気ろ床槽11で99.9%、接触ばっ気槽12及び沈殿槽13で0.1%、装置外に排出した処理水に含まれるSSは0%であった。
この結果から、嫌気ろ床槽11の汚泥保持率が99.9%であり、汚泥堆積部31に堆積したほぼ全ての堆積汚泥を、装置外に流出させずに汚泥堆積部31に保持でき、優れた汚泥保持性能があることが確認された。
これらの試験で、ポンプ6及びポンプ8を稼働させなくとも優れた性能があることが確認されたことから、ポンプを稼働させればSSの捕捉と、汚泥の保持に効果的に働き、更に性能の向上が期待できる。
これらの結果から、図8に示す水処理装置1Sの嫌気ろ床槽11には1年間十分な汚泥堆積部を形成でき、優れた汚水浄化能力を備えた水処理装置1Sを提供できることが分かった。
1…水処理装置、1A…側壁、1B…側壁、1C…側壁、1D…側壁、1E…底壁、
1R、1S…水処理装置、2…流入口、3…流入バッフル、3A…底壁、4…清掃孔、
5…流出バッフル、6…ポンプ、6A…吸込口、7…移送管、8…ポンプ、
8A…吸込口、8B…排出口、10…沈殿分離槽、10A…汚泥の界面、11…嫌気ろ床槽、
12…接触ばっ気槽、13…沈殿槽、14…消毒槽、20…仕切壁、21…阻流板、
22…ろ床部、23…第一のろ床部、24…第二のろ床部、25…移流開口部、
26…流出領域、27…仕切壁、28…仕切壁、29、流出口、30…汚泥堆積部、
31…汚泥堆積部、32…汚泥堆積部、33…汚泥堆積部、34…第一のスカム貯留部、
35…第二のスカム貯留部、41…被処理水、42…被処理水、43…被処理水、
44…被処理水、45…被処理水、46…被処理水、47…被処理水、48…被処理水、
50…水面、61…水槽、62…ポンプ、63…水槽。

Claims (5)

  1. 上流側から沈殿分離槽と嫌気ろ床槽の順に配列してなる水処理装置であって、
    前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽を区分する仕切壁の上端が、前記嫌気ろ床槽のろ床部より上方で、かつ、水面より下方になるように配置され、
    前記沈殿分離槽の流入口に底壁を有し、下端が前記仕切壁より上方、上端が水面より下方に移流開口部を設けた流入バッフルを備え、
    前記嫌気ろ床槽の前記ろ床部が、前記ろ床部の下端から水面よりも上方に設けた阻流板によって分割してあり、前記阻流板の上流側を第一のろ床部、下流側を第二のろ床部とし、
    前記第一のろ床部と前記第二のろ床部の下方に連通した汚泥堆積部を設け、
    前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽には2つのスカム貯留部が設けられ、第一のスカム貯留部は、前記沈殿分離槽と前記第一のろ床部の上方が連通した領域に形成され、第二のスカム貯留部は、前記第二のろ床部の上方に形成され、
    前記第二のろ床部の下方の、前記汚泥堆積部に貯留されている汚泥を、前記沈殿分離槽の前記流入バッフル内部に移送することができるポンプを備えることを特徴とする水処理装置。
  2. 請求項1に記載の水処理装置において、前記嫌気ろ床槽にポンプを備え、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽の水面上方に流量調整部を設けたことを特徴とする水処理装置。
  3. 上流側から沈殿分離槽と嫌気ろ床槽の順に配列してなる水処理装置であって、
    前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽を区分する仕切壁の上端が、前記嫌気ろ床槽のろ床部より上方で、かつ、水面より下方になるように配置され、
    前記沈殿分離槽の流入口に底壁を有し、下端が前記仕切壁より上方、上端が水面より下方に移流開口部を設けた流入バッフルを備え、
    前記嫌気ろ床槽の前記ろ床部が、前記ろ床部の下端から水面よりも上方に設けた阻流板によって分割してあり、前記阻流板の上流側を第一のろ床部、下流側を第二のろ床部とした水処理装置を運転するに際し、
    前記第二のろ床部の下方の、汚泥堆積部に貯留されている汚泥を、常時、前記沈殿分離槽の前記流入バッフル内部に移送することを特徴とする水処理装置の運転方法。
  4. 前記水処理装置として、前記第一のろ床部と前記第二のろ床部の下方に連通した汚泥堆積部を設け、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽に2つのスカム貯留部を設け、第一のスカム貯留部を前記沈殿分離槽と前記第一のろ床部の上方が連通した領域に形成し、第二のスカム貯留部を前記第二のろ床部の上方に形成した水処理装置を用いることを特徴とする請求項3に記載の水処理装置の運転方法。
  5. 請求項3または請求項4に記載の水処理装置の運転方法において、前記嫌気ろ床槽にポンプを備え、前記沈殿分離槽と前記嫌気ろ床槽の水面上方に流量調整部を設けた水処理装置を用いることを特徴とする水処理装置の運転方法。
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