JP4688991B2 - 塩化ビニル系重合体の製造方法 - Google Patents
塩化ビニル系重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル系重合体の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、主分散剤として使用される特定の部分ケン化ポリビニルアルコールを、重合開始前と重合開始後に分割して添加することにより、高生産性で還流凝縮器による除熱を伴う製造法においても品質の低下を招くことなく、多孔性で可塑剤吸収性に優れ、成形した際のフィッシュアイが少なく、かつ嵩比重が高い塩化ビニル系重合体を安定かつ生産性よく製造することが可能な塩化ビニル系重合体の製造方法であり、更に、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性が低く、生産性を低下させることなく未反応塩化ビニル系単量体を除去することが可能な塩化ビニル系重合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系重合体は、その軟質分野においては可塑剤の吸収が速くかつフィッシュアイが少ないことが望まれている。これらの要求に応えるために種々の方法が提案されており、特開昭53−136089号公報等には、ケン化度60〜90モル%、重合度300〜3000のポリビニルアルコールである一次分散剤に低ケン化度かつ低重合度の部分ケン化ポリビニルアルコールを二次分散剤として併用する方法、特開平4−154809号公報、特開平4−277503号公報、特開平5−1104号公報、特開平5−230115号公報等では、分散安定剤として重合度が500〜900かつケン化度が65〜75モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールと重合度が1000以上かつケン化度が75〜85モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール及び重合度が100〜1200かつケン化度が15〜54モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールとを併用することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法が提案されている。
【0003】
しかし、これらの製造方法では、可塑剤吸収性およびフィッシュアイは改善されるもの、嵩比重が著しく低下するという問題があった。また、近年、一般的になりつつある、100m3以上の大型重合器を用いて、かつ還流凝縮器を使用して重合系の除熱効率を上げ、さらに重合開始剤を多量に、しかも分解温度の異なる複数の開始剤を使用して時間あたりの発熱量を平準化させて、5時間以下の短時間で重合を終わらせる方法では、フィッシュアイが悪化する等の品質低下の問題があるだけでなく、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性も高くなり、未反応塩化ビニル系単量体を除去する際、激しく発泡するため未反応塩化ビニル系単量体の除去に極めて長い時間を要し、結果として生産性を著しく低下させるという問題があった。
【0004】
一方、可塑剤吸収性に優れ、フィッシュアイも少なく、かつ、嵩比重も高い塩化ビニル系重合体の製造方法として、特開平7−179507号公報、特開平7−53607号公報および特開平5−222104号公報等では、特定の分散剤を使用し、かつ重合中に特定の部分ケン化ポリビニルアルコールを添加する方法が提案されている。
【0005】
しかし、これらの製造方法も、前述のような100m3以上の大型重合器で、還流凝縮器を使用し、5時間以下の短時間で重合を終わらせる方法では、フィッシュアイが悪化する等の品質低下の問題があるだけでなく、重合時の重合分散系が著しく不安定となり、重合中にブロック化したり、得られる塩化ビニル系重合体粒子が粗大化したりするといった問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高生産性で還流凝縮器による除熱を伴う製造法においても品質の低下を招くことなく、多孔性で可塑剤吸収性に優れ、成形した際のフィッシュアイが少なく、かつ嵩比重が高い塩化ビニル系重合体を安定かつ生産性よく製造することが可能な塩化ビニル系重合体の製造方法であり、更に、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性が低く、生産性を低下させることなく未反応塩化ビニル系単量体を除去することが可能な塩化ビニル系重合体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、分散剤として重合度が2000以上、ケン化度が75モル%以上の部分ケン化ポリビニルアルコール及び重合度が100〜700かつケン化度が20〜55モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールを特定の使用量、比率で併用し、かつ重合度が2000以上、ケン化度が75モル%以上の部分ケン化ポリビニルアルコールを重合開始前と重合開始後に分割して重合系に添加した場合にのみ上記の課題を解決できることを見出だし本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、還流凝縮器を付設した容積100m3以上の大型重合器を用いて重合時間5時間以内で、塩化ビニル系単量体を水性媒体中で油溶性ラジカル開始剤を用い懸濁重合させるに際し、分散剤として重合度が2000以上かつケン化度が75モル%以上の部分ケン化ポリビニルアルコール(A)を塩化ビニル系単量体100質量部に対し0.04〜0.08質量部、及び、重合度が100〜700かつケン化度が20〜55モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール(B)を塩化ビニル系単量体100質量部に対し0.01〜0.1質量部使用し、かつ部分ケン化ポリビニルアルコール(A)の全使用量のうち10〜80%を重合開始前に仕込み、残りを重合転化率が1〜10%に達した時点で重合系に添加することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法に関するものである。
【0009】
本発明は、還流凝縮器を付設し、容積が100m3以上の重合器を用い、重合時間5時間以内で重合を行うことにより、高い生産性で塩化ビニル系重合体を得ることができる。また、このような過酷な条件においても、品質の低下を招くことなく多孔性で可塑剤吸収性に優れ、成形した際のフィッシュアイが少なく、かつ嵩比重が高い塩化ビニル系重合体を製造することができるだけでなく、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性が低く、生産性を低下させることなく未反応塩化ビニル系単量体を除去することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について更に詳細に説明する。
【0011】
本発明において、分散剤として用いられる部分ケン化ポリビニルアルコール(A)は、重合度が2000以上、好ましくは2000〜4000、より好ましくは2000〜3000であり、ケン化度が75モル%以上、好ましくは75〜95モル%、より好ましくは75〜85モル%であり、重合度が2000〜3000かつケン化度が75〜85モル%であることが特に好ましい。ここで部分ケン化ポリビニルアルコール(A)の重合度が2000未満、又は、ケン化度が75モル%未満であると重合時の重合分散系が不安定となり、重合中にブロック化したり、得られる塩化ビニル系重合体粒子が粗大化したりする。
【0012】
また、(A)の使用量は塩化ビニル系単量体100質量部に対し0.04〜0.08質量部、好ましくは0.04〜0.06質量部、より好ましくは0.045〜0.055質量部である。
【0013】
部分ケン化ポリビニルアルコール(A)の使用量が、塩化ビニル系単量体100質量部に対し0.04質量部未満であると、重合時の重合分散系が不安定となり、重合中にブロック化したり、得られる塩化ビニル系重合体粒子が粗大化したりする。一方、(A)の使用量が0.08質量部より大きい場合、多孔性、及び、可塑剤吸収性が低下し、成形した際のフィッシュアイを減少させる効果が不十分になる。
【0014】
本発明において、部分ケン化ポリビニルアルコール(A)は、その全使用量のうち10〜80%、好ましくは30〜60%、より好ましくは40〜50%を重合開始前に仕込み、残りを重合転化率が1〜10%、好ましくは1〜5%、より好ましくは1〜3%に達した時点で重合系に添加する。重合開始後に(A)を添加するに際しては、全量を一括で添加しても良いし、連続的または2回以上に分割して添加しても良い。ここで、重合開始前に仕込む(A)の量がその全使用量の10%未満であったり、残りの(A)を添加する時期が重合転化率が10%に達した以降であると、重合時の重合分散系が不安定となり、重合中にブロック化したり、得られる塩化ビニル系重合体粒子が粗大化したりする。また、重合開始前に仕込む(A)の量がその全使用量の80%より大きい場合、または残りの(A)を添加する時期が重合転化率が1%に達する以前であると、多孔性、及び、可塑剤吸収性が低下し、成形した際のフィッシュアイを減少させる効果が不十分になる。
【0015】
本発明においては、(A)を重合開始前と重合開始後に特定の比率に分割して添加し、かつ重合開始後に添加する(A)を特定の時期に添加することにより、多孔性および可塑剤吸収性に優れ、成形した際のフィッシュアイが少なく、かつ嵩比重も高い塩化ビニル系重合体を得ることができる。従って、(A)の分割添加は必要不可欠である。
【0016】
本発明において、分散剤として用いられる部分ケン化ポリビニルアルコール(B)は、重合度が100〜700、好ましくは200〜600、より好ましくは250〜550、かつ、ケン化度が20〜55モル%、好ましくは25〜50モル%、より好ましくは30〜45モル%のものであり、重合度が250〜550かつケン化度が30〜45モル%であることが特に好ましい。ここで部分ケン化ポリビニルアルコール(B)の重合度またはケン化度が上記の範囲をはずれた場合、多孔性、及び、可塑剤吸収性が低下し、成形した際のフィッシュアイを減少させる効果が不十分になる。また、(B)の使用量は塩化ビニル系単量体100質量部に対し0.01〜0.1質量部、好ましくは0.02〜0.08質量部、より好ましくは0.02〜0.05質量部である。
【0017】
部分ケン化ポリビニルアルコール(B)の使用量が、塩化ビニル系単量体100質量部に対し0.01質量部未満であると、多孔性、及び、可塑剤吸収性が低下し、成形した際のフィッシュアイを減少させる効果が不十分になる。一方、(B)の使用量が0.1質量部より大きい場合、嵩比重が著しく低下するとともに、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性が高くなり、未反応塩化ビニル系単量体を除去する際、激しく発泡するため未反応塩化ビニル系単量体の除去に極めて長い時間を要し、結果として生産性が著しく低下する。
【0018】
また、部分ケン化ポリビニルアルコール(B)は、水中に粒径1μm以下に微分散した分散液として使用されることが好ましい。このようにすることによって、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性が低くなり、未反応塩化ビニル系単量体を除去する際の発泡が著しく抑制される。また、得られる塩化ビニル系重合体の可塑剤吸収性の向上効果や製品フィッシュアイ低減効果がより一層顕著となる。
【0019】
分散剤として、さらに重合度が300〜1000、好ましくは500〜800、かつケン化度が65〜75モル%、好ましくは67〜73モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール(C)を部分ケン化ポリビニルアルコール(A)の全使用量との質量比(A)/(C)が4/1〜9/1、好ましくは4/1〜7/1となる範囲で併用することにより、より一層のフィッシュアイ改良効果を得ることができる。
【0020】
また、部分ケン化ポリビニルアルコール(C)は、分子鎖の少なくとも一つの末端にメルカプト基を有することが好ましい。
【0021】
このようにすることによって、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性が低くなり、未反応塩化ビニル系単量体を除去する際の発泡が著しく抑制される。また、得られる塩化ビニル系重合体の可塑剤吸収性の向上効果や製品フィッシュアイ低減効果がより一層顕著となる。
【0022】
本発明において用いられる重合開始剤としては、一般的に懸濁重合法に重合開始剤として用いられるものでよく、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物;2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2、4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物などが挙げられ、これらは1種または2種以上の組合せで使用することができる。特に分解速度の異なる2種類以上の開始剤を併用することで重合によって発生する重合熱を均一化することが好ましい。また、該重合開始剤の使用量は、高速重合が可能となることから塩化ビニル系単量体100質量部に対し、0.05〜0.02質量部使用することが望ましい。
【0023】
本発明の方法では、上記のように開始剤を多量に使用して少なくとも5時間以内で重合を終わらせることが可能となった。なお、重合時間の下限は2.5時間程度である。
【0024】
本発明において重合時間は、重合原料を仕込み、昇温して内温が所定の温度に達した時間から、この際の圧力から単量体が重合体に転化し、単量体が減少して内圧が初期の圧力より0.176MPa低下した時までの時間を重合時間とした。
【0025】
本発明において使用される重合器は、通常高速重合で使用される還流凝縮器付きの重合器で100m3以上のものが使用される。重合器の容量の上限は特に限定されないが300m3程度まで本願の方法が適用される。
【0026】
本発明では還流凝縮器による除熱量は全重合発熱量の30〜80%、好ましくは40〜60%である。還流凝縮器は重合器内の塩化ビニル系単量体懸濁液の温度が重合温度に達するまでは重合温度以上に保つのが好ましい。また、還流凝縮器により除熱を行う際には、還流凝縮器による除熱量を一定としてジャケットによる除熱量を制御してもよく、逆にジャケット温度を一定として還流凝縮器による除熱量を制御してもよい。
【0027】
本発明において使用される重合器の攪拌機に特に制限はなく、所望によりバッフルも使用される。攪拌機については通常塩化ビニル系単量体の重合に使用されるタービン翼、ファンタービン翼、ファウドラー翼及びブルーマージン翼が、バッフルとしてはフィンガー型、円筒型、D型及びループ型等が例示される。
【0028】
本発明においては、本発明を実施する際には、塩化ビニル単量体と共重合可能なビニル系単量体又は塩化ビニル単量体とグラフト重合可能なポリマーを必要に応じて添加して重合してもよい。
【0029】
本発明における塩化ビニル系単量体とは、塩化ビニル単量体、又は塩化ビニル単量体と共重合可能なビニル系単量体との混合物をいう。
【0030】
塩化ビニル単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;イソブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキル又はアリールビニルエーテル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニル、塩化アリル、臭化ビニル等のハロゲン化オレフィン類;エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のアクリル系誘導体類等を挙げることができる。
【0031】
又、塩化ビニル単量体とグラフト共重合可能なポリマーとしては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリウレタン、ポリブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MBS)、ポリブタジエン−アクリロニトリル−(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、ポリブチルアクリレート、ブチルゴム、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、架橋アクリルゴム等を挙げることができる。
【0032】
本発明において重合終了後に未反応塩化ビニル系単量体を回収する方法としては公知の方法が適用でき、重合器から直接回収しても良いし、未反応単量体回収容器に重合終了後の塩化ビニル系重合体スラリーを移送後、回収しても良い。また、重合体スラリーを移送しながら未反応単量体を回収しても良い。
【0033】
例えば、重合終了後に重合器から未反応単量体回収容器への重合体スラリーの移送を開始し、重合器の圧力と未反応単量体回収容器との圧力差が0.1MPa以下となった時点で重合器と未反応単量体回収容器の圧力を均圧とし、その後、均圧下で重合体スラリーを移送しながら、未反応単量体の回収を同時に行う方法が挙げられる。なお、本明細書の実施例ではこの方法で単量体の回収を行った。この際、重合体スラリーの発泡性が低ければ短時間で未反応の単量体の回収が可能となり生産性が向上する。
【0034】
本発明の製造方法によると、高生産性で還流凝縮器による除熱を伴う製造法においても品質の低下を招くことなく、多孔性で可塑剤吸収性に優れ、成形した際のフィッシュアイが少ない塩化ビニル系樹脂を安定に、かつ、生産性良く得ることができる。また、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性が低いため、生産性を低下させることなく未反応塩化ビニル系単量体を除去することが可能である。
【0035】
【実施例】
以下の実施例によって、本発明を更に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。実施例及び比較例により得られた重合体の物性は、下記の方法により評価を行った。
【0036】
〜平均粒径〜
得られた塩化ビニル系重合体の50%の重合体粒子が通過するふるいの目の大きさ(μm)を平均粒径とした。
【0037】
〜嵩比重〜
JIS K−6721に準じて測定した。
【0038】
〜可塑剤吸収量〜
得られた重合体に過剰の可塑剤(ジオクチルフタレート;DOP)を加え、室温で10分間放置した後、遠心分離機(国産遠心器(株)製)を用いて3000rpmで遠心し重合体に吸収されなかった可塑剤を除去した。遠心後の重合体に保持されている可塑剤量を測定し、重合体に対する重合体に保持された可塑剤の割合を百分率で表したものを可塑剤吸収量とした。
【0039】
〜フィッシュアイ〜
得られた塩化ビニル系重合体100質量部,Ca−Zn系粉末複合安定剤1.5質量部、有機燐系安定化助剤0.5質量部、群青3質量部及びDOP(ジオクチルフタレート)50質量部を混合し、150℃のロールで厚さ0.35mmとして3分混練し、0.35mmのシートを分取し、シート50cm2中の透明粒子の数をもって示した。
【0040】
実施例1
還流凝縮器を有する内容積120m3の重合器に純水140質量部、ケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコール0.03質量部、水中に粒径0.1μmに微分散したケン化度40モル%、重合度550の部分ケン化ポリビニルアルコール0.04質量部、tert−ブチルパーオキシネオデカネート0.043質量部、クミルパーオキシネオデカネート0.047質量部を入れ減圧状態にした。次いで、塩化ビニル単量体100質量部を仕込み、重合器内を攪拌しながら57℃に昇温した後、還流凝縮器へ冷却水を通水し還流凝縮器による除熱量が全重合発熱量の50%となるように調節して重合を継続した。重合転化率が3%に達した時点でケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコール0.02質量部を重合系に添加し、その後、重合器の圧力が重合反応の定常状態における圧力から0.176MPa低下した時点で重合を終了した。重合時間は3.0時間であった。重合終了後、得られた塩化ビニル重合体スラリーから未反応単量体の回収を行ったが、未反応塩化ビニル単量体の回収における泡立ちはみられなかった。
【0041】
未反応塩化ビニル単量体を回収した後、得られた塩化ビニルスラリーを脱水乾燥したところ、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表1に示す。得られた塩化ビニル重合体は、嵩比重が高く可塑剤吸収性にも優れ、かつ成形した際のフィッシュアイが少ないものであった。
【0042】
実施例2
実施例1において使用したケン化度40モル%、重合度550の部分ケン化ポリビニルアルコールの代わりに、ケン化度48モル%、重合度250の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用し、かつケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールのの代わりにケン化度88モル%、重合度3000の部分ケン化ポリビニルアルコールを重合開始前に0.02質量部仕込み、更に転化率1%で0.03質量部を添加した以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
【0043】
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表1に示す。
未反応塩化ビニル単量体の回収における泡立ちはみられず、また、得られた塩化ビニル重合体は、嵩比重が高く可塑剤吸収性にも優れ、かつ成形した際のフィッシュアイが少ないものであった。
【0044】
実施例3
実施例1において使用したケン化度40モル%、重合度550の部分ケン化ポリビニルアルコールの代わりに、ケン化度35モル%、重合度300の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用し、かつケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールの代わりにケン化度78モル%、重合度2200の部分ケン化ポリビニルアルコールを重合開始前に0.04質量部仕込み、更に転化率=5%で0.01質量部添加した以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
【0045】
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表1に示す。未反応塩化ビニル単量体の回収における泡立ちはみられず、また、得られた塩化ビニル重合体は、嵩比重が高く可塑剤吸収性にも優れ、かつ成形した際のフィッシュアイが少ないものであった。
【0046】
実施例4
実施例1において重合開始前に仕込んだケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールの使用量を0.02質量部とし、かつケン化度70モル%、重合度500であり分子鎖の一方の末端にメルカプト基を有する部分ケン化ポリビニルアルコール0.01質量部を併用した以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
【0047】
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表1に示す。未反応塩化ビニル単量体の回収における泡立ちはみられず、また、得られた塩化ビニル重合体は、嵩比重が高く可塑剤吸収性にも優れ、かつ成形した際のフィッシュアイが少ないものであった。
【0048】
実施例5
実施例1において使用したケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールの重合開始前および重合転化率3%の時点それぞれの添加量を0.015質量部および0.03質量部とし、かつケン化度72モル%、重合度800の部分ケン化ポリビニルアルコール0.005質量部を併用した以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
【0049】
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表1に示す。未反応塩化ビニル単量体の回収における泡立ちはみられず、また、得られた塩化ビニル重合体は、嵩比重が高く可塑剤吸収性にも優れ、かつ成形した際のフィッシュアイが少ないものであった。
【0050】
実施例6
実施例5において重合開始前に仕込んだケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールおよびケン化度72モル%、重合度800の部分ケン化ポリビニルアルコールの使用量をそれぞれ0.01質量部とした以外は実施例5と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
【0051】
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表1に示す。未反応塩化ビニル単量体の回収における泡立ちはみられず、また、得られた塩化ビニル重合体は、嵩比重が高く可塑剤吸収性にも優れ、かつ成形した際のフィッシュアイが少ないものであった。
【0052】
比較例1
実施例1において重合転化率3%で添加したケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールを添加しなかった以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表2に示す。未反応塩化ビニル単量体の回収における泡立ちはみられなかったが、得られた塩化ビニル重合体は、粒径が粗く、可塑剤吸収性も低く、かつ成形した際のフィッシュアイが多いものであった。
【0053】
比較例2
実施例1で重合開始前および重合転化率3%で添加したケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールを分割せずに重合開始前に一括して添加した以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
【0054】
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表2に示す。未反応塩化ビニル単量体の回収における泡立ちはみられなかったが、得られた塩化ビニル重合体は、嵩比重が低く、かつ成形した際のフィッシュアイが多いものであった。
【0055】
比較例3
比較例2で使用したケン化度40モル%、重合度550の部分ケン化ポリビニルアルコールを0.1質量部に増量した以外は比較例2と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表2に示す。未反応塩化ビニル単量体回収の際に泡立ちがみられたため回収速度を低下させたところ、72分を要した。また、得られた塩化ビニル重合体は、可塑剤吸収性が高く、かつ成形した際のフィッシュアイが少ないものであったが、嵩比重が著しく低いものであった。
【0056】
比較例4
実施例1で重合転化率3%で添加したケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールを重合転化率15%で添加した以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表2に示す。未反応塩化ビニル単量体回収の際の泡立ちはみられなかったが、得られた塩化ビニル重合体は粒径が粗く、成形した際のフィッシュアイが多いものであり、かつ嵩比重が著しく低いものであった。
【0057】
比較例5
比較例4で重合開始前に仕込んだケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールの使用量を0.1質量部とした以外は比較例4と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
【0058】
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表2に示す。未反応塩化ビニル単量体回収の際の泡立ちはみられず、得られた塩化ビニル重合体は嵩比重は高いものであったが、可塑剤吸収性が低く、かつ成形した際のフィッシュアイが多いものであった。
【0059】
比較例6
比較例4で重合転化率15%で添加したケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールの使用量を0.1質量部とした以外は比較例4と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表2に示す。未反応塩化ビニル単量体回収の際の泡立ちはみられず、得られた塩化ビニル重合体は嵩比重が高いものであったが、可塑剤吸収性が低く、かつ成形した際のフィッシュアイが多いものであった。
【0060】
比較例7
実施例1において重合開始前に仕込んだケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用せず、代わりにケン化度70モル%、重合度500で分子鎖の一方の末端にメルカプト基を有する部分ケン化ポリビニルアルコール0.05質量部を使用した以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表3に示す。未反応塩化ビニル単量体回収の際に泡立ちがみられたため回収速度を低下させたところ、53分を要した。得られた塩化ビニル重合体は嵩比重が低く、かつ粒径が粗く成形した際のフィッシュアイが多いものであった。
【0061】
比較例8
実施例1で使用したケン化度40モル%、重合度550の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用せず、代わりにケン化度70モル%、重合度500で分子鎖の一方の末端にメルカプト基を有する部分ケン化ポリビニルアルコールを0.09質量部使用した以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表3に示す。未反応塩化ビニル単量体回収の際に泡立ちがみられたため回収速度を低下させたところ、103分を要した。また、得られた塩化ビニル重合体は成形した際のフィッシュアイは少ないが、嵩比重が著しく低いものであった。
【0062】
比較例9
実施例1において重合転化率3%で添加したケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用せず、ケン化度70モル%、重合度500で分子鎖の一方の末端にメルカプト基を有する部分ケン化ポリビニルアルコールを0.02質量部を重合開始前に仕込んだ以外は実施例1と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表3に示す。未反応塩化ビニル単量体回収の際に泡立ちはみられず、得られた塩化ビニル重合体は成形した際のフィッシュアイは少ないものであったが、嵩比重が著しく低いものであった。
【0063】
比較例10
比較例9において重合開始前に仕込んだケン化度80モル%、重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコールおよびケン化度70モル%、重合度500で分子鎖の一方の末端にメルカプト基を有する部分ケン化ポリビニルアルコールの使用量をそれぞれ0.02質量部および0.05質量部とした以外は比較例9と同様に行い、約85%の重合転化率で塩化ビニル重合体を得た。
未反応塩化ビニル単量体回収時の発泡状況および得られた塩化ビニル重合体の評価結果を表3に示す。未反応塩化ビニル単量体回収の際に泡立ちがみられたため回収速度を低下させたところ、69分を要した。また、得られた塩化ビニル重合体は成形した際のフィッシュアイは少ないが、嵩比重が著しく低いものであった。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、高生産性で還流凝縮器による除熱を伴う製造法においても品質の低下を招くことなく、多孔性で可塑剤吸収性に優れ、成形した際のフィッシュアイが少ない塩化ビニル系重合体を安定かつ生産性よく製造することが可能であり、かつ、重合後の塩化ビニル系重合体スラリーの発泡性が低く、生産性を低下させることなく未反応塩化ビニル系単量体を除去することが可能である。従って、本発明は工業的価値が非常に高いものである。
Claims (2)
- 還流凝縮器を付設した容積100m3以上の大型重合器を用いて重合時間5時間以内で、塩化ビニル系単量体を水性媒体中で油溶性ラジカル開始剤を用い懸濁重合させるに際し、分散剤として重合度が2000〜3000かつケン化度が75〜85モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール(A)を塩化ビニル系単量体100質量部に対し0.04〜0.08質量部、及び、重合度が100〜700かつケン化度が20〜55モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール(B)を塩化ビニル系単量体100質量部に対し0.01〜0.1質量部使用し、かつ部分ケン化ポリビニルアルコール(A)の全使用量のうち10〜80%を重合開始前に仕込み、残りを重合転化率が1〜10%に達した時点で重合系に添加することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法。
- 分散剤としてさらに、重合度が300〜1000かつケン化度が65〜75モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール(C)を部分ケン化ポリビニルアルコール(A)の全使用量との質量比(A)/(C)が4/1〜9/1となる範囲で併用することを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
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