JP4678979B2 - ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融混練時のトルクを低減でき、且つ機械的特性、振動疲労特性および成形品外観に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂および成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は機械的特性および耐熱性に優れるという特徴を活かして様々な産業分野で利用されている。特に自動車エンジンフード周辺では機構部品として材料に高い信頼性が必要であるためガラス繊維で強化することで更に機械的特性を向上させたいわゆる強化ポリアミド樹脂が好適に用いられている。 これらの部品にはエンジンの振動に伴う疲労特性に優れること及び顧客要求の満足を得るためのデザインや信頼性という観点において部品の外観が良好であることが望まれている。
しかしながら、ガラス繊維強化ポリアミドはガラス繊維が成形品表面に露出しやすく、特に大型の部品になるほどそれが顕著に起こるため機械的特性、振動疲労特性の改善や成形品外観を改善すべく、これまでに様々な手法が提案されている。
【0003】
例えば、耐不凍液性、外観および離型性を改善する目的で、特開平11−166119号公報には、ポリアミド樹脂、ガラス繊維、アジン系染料および脂肪族ビスアミド化合物および/または高級脂肪酸金属塩からなる原材料をポリマーが溶融した時点でガラス繊維と混練することにより製造される強化ポリアミド樹脂組成物が提案されている。しかし、この提案には高級脂肪酸金属塩の酸価については触れられておらず、実施例に用いられている酸価の高級脂肪酸金属塩を添加すると機械的特性を損ねる可能性があった。
また、特開平10−28863号公報、特開平10−28865号公報および特開平11−226949号公報には、機械的特性や振動疲労特性を改善する目的で、ポリアミドとガラス繊維界面に存在するグラフト化ポリアミドの量を高める提案がなされている。
しかし、このような複合体では機械的特性および振動疲労に関して改善されるもののグラフト化ポリアミドの量と共に成形時の流動性が低下する傾向にあるため成形品外観についてはむしろ逆の効果であった。
【0004】
また、特開平3−100062号公報および特開平5−247341号公報には、成形品外観を改良するために、ガラス繊維とアスペクト比の比較的小さい無機充填剤とを組み合わせる提案がなされている。しかし、この方法では外観は改善されるものの振動疲労特性や機械的特性が低下してしまう。
さらに、ポリアミドの中でも比較的融点の低いポリアミド6や脂肪族ポリアミドの共重合体を選ぶことで機械的特性と成形品外観を同時に改善しようとする試みが特開平2−265965号公報においてはなされている。しかしながら、単にこれらのポリアミドを用いることのみではガラス繊維強化組成物の振動疲労特性を改善することは困難である。
また、特開昭63−156856号公報や特開昭56−30460号公報には、ポリアミド46やポリエステル中に存在するガラス繊維のアスペクト比や長さを制御することにより外観を改善することが提案されているが、このような形状のガラス繊維では振動疲労特性の向上は期待できない。
【0005】
一方、強化ポリアミド組成物を製造する方法としてポリアミドとガラス繊維等の強化材を押出機等の装置を用いて溶融混練することが一般的であるが、強化材等の無機物を混入すると押出機のトルクが上昇し、生産性を悪化させる要因となっていた。
以上のようにこれまでガラス繊維強化ポリアミド樹脂においては機械的特性、振動疲労特性および成形品外観を同時に改善できる手法がなく、また、強化ポリアミド樹脂組成物を押出機等で溶融混練する際に押出機等のトルク上昇が避けられないため、このような特性を同時に満足し、且つ、溶融混練時のトルクを低減できる手法が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶融混練時のトルクを低減でき、且つ機械的特性、振動疲労特性および成形品外観に優れるガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物および成形品を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド樹脂(A) 及びガラス繊維(B) からなる組成物に、高級脂肪酸アミド化合物(C) 、特定の酸価の高級脂肪酸金属塩(D) を特定の比率で組み合わせた組成物を用いることで、溶融混練時のトルクを低減でき、且つ、優れた機械的特性、振動疲労特性および優れた成形品外観を兼ね備えた組成物および成形体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は;
(1) (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)ガラス繊維20〜170重量部、(C)高級脂肪酸アミド化合物0.01〜5重量部、および(D)酸価0.5mgKOH/g以下の高級脂肪酸金属塩0.005〜5重量部を含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供する。また、
(2) (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、更に(E)アジン系染料0.01〜5重量部を含むことを特徴とする、請求項1記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供する。また、
(3) ポリアミド樹脂(A)とガラス繊維(B)の界面領域に存在するグラフト化ポリアミド樹脂層の、走査型粘弾性顕微鏡測定法により測定される「応答応力信号の振幅」および「刺激歪み信号と応答応力信号との位相差」から算出される動的粘弾性関数の弾性率が、ポリアミド樹脂の弾性率を1とした時、少なくとも1より大きく、且つグラフト化ポリアミド樹脂層の厚みが1.0μm以上20μm以下である点に特徴を有する。また、
(4) ポリアミド樹脂(A)とガラス繊維(B)の界面に該グラフト化ポリアミド樹脂がガラス繊維100重量部(B)に対して0.1〜2重量部存在する点に特徴を有する。また、
(5) 該グラフト化ポリアミドがガラス繊維(B)の全表面積の50〜100%を被覆している点に特徴を有する。また、
(6) ガラス繊維(B)が無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体及びアミノシラン系カップリング剤とを主たる構成成分とする集束剤で表面処理されている点に特徴を有する。また、
(7) ガラス繊維(B)が集束剤をガラス繊維100重量部当たり0.1〜2重量部含有する点に特徴を有する。また、
(8) ポリアミド樹脂(A)中に存在するガラス繊維(B)のアスペクト比(重量平均繊維長さ/数平均繊維直径)が10〜50であり、且つ数平均繊維直径が8〜25μmの範囲である点に特徴を有する。また、
(9) ポリアミド樹脂(A)がポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、これらの共重合体およびブレンド物、およびポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)とポリアミド66、ポリアミド6から選ばれる少なくとも1種との共重合体およびブレンド物から選択される少なくとも1種である点に特徴を有する。また、
(10) ポリアミド樹脂(A)のJISK6810に準じた98%硫酸中濃度1%、25℃で測定する相対粘度が1.6〜3.7の範囲である点に特徴を有する。また、
【0008】
(11) (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)ガラス繊維20〜170重量部、(C)高級脂肪酸アミド化合物0.01〜5重量部、および(D)酸価0.5mgKOH/g以下の高級脂肪酸金属塩0.005〜5重量部を含む強化ポリアミド樹脂からなる成形品を提供する。また、
(12) 強化ポリアミド樹脂が(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、更に(E)アジン系染料0.01〜5重量部を含む点に特徴を有する成形品を提供する。
以上(1)〜(12) 記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物および成形品に関するものである。
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明に係わるポリアミド樹脂(A)としては、一般のポリアミドを用いることができる。
例えば、ジアミンとジカルボン酸との縮合重合で得られるポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド6、ポリアミド12、ωーアミノカルボン酸の自己重縮合で得られるポリアミド11から選ばれた少なくとも1種、及び/またはこれらポリアミドの共重合体もしくはブレンド物などが挙げられる。
上記ポリアミドの中で機械的特性、耐熱性、結晶化温度、成形性および成形品外観の点でポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612から選ばれる単独重合体、共重合体及びブレンド物、およびヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)とポリアミド66、ポリアミド6から選ばれる少なくとも1種との共重合体及びブレンド物が好ましい。
【0010】
本発明に用いるポリアミド樹脂(A)のJIS K6810に準じた98%硫酸中濃度1%、25℃で測定される相対粘度は1.6〜3.7の範囲のポリアミドが好適に用いられ、さらに好ましい相対粘度の範囲は2.0〜3.1である。
相対粘度が1.6未満であれば成形品によっては靱性の不足、機械的強度の低下を招く恐れがある。また、相対粘度が3.7を越えると成形加工が困難となり、外観も悪化する場合がある。
【0011】
尚、ポリアミドには酢酸銅およびヨウ化銅(場合によってはヨウ化カリウムを併用)を成分として含有する銅化合物を添加することにより熱安定性を向上させたポリアミドを用いることが好ましい。
これらの熱安定処方はポリアミド製造中のいずれの工程で実施してもかまわない。
例えば、モノマー中へ酢酸銅およびヨウ化銅を構成成分として含有する銅化合物を添加し、その後、重合を行っても良いし、重合によりポリマーを得た後に押出機や成形機等の加工工程中で溶融状態のポリアミド中に添加してもかまわない。また、直接ポリマーペレットと混合し、その後、成形加工工程に供してもかまわない。
【0012】
更に、本発明のポリアミド樹脂(A)は、アミノ末端基がポリアミド樹脂1kg当たり20〜200ミリ当量であることが好ましく、更に好ましくは30〜60ミリ当量である。
アミノ末端基が20ミリ当量未満であるとガラス繊維との界面にグラフトしたポリアミド層を形成することが困難になり、機械的特性が低下する可能性が高くなり、200ミリ当量を越えるポリアミドは製造が困難であり、得られたとしても分子量の低いものとなるため、機械的特性が不十分となる。
【0013】
本発明に用いるガラス繊維(B)は、ポリアミド樹脂の補強材として用いるものであれば如何なるものを用いても良いが、ガラス繊維をポリアミド樹脂と溶融混合する際のハンドリング性の観点からガラス繊維長さ1〜10mm、平均ガラス繊維直径8〜25μmのチョップドタイプの短繊維が好ましい。特に好ましいガラス繊維の形状は補強効果とガラス繊維分散性の点から、繊維長さ2〜7mm、平均繊維直径8〜15μmのガラス繊維である。
平均直径が8μm未満のガラス繊維は集束が困難であることに加え、溶融混練などの加工工程により繊維長が低下してしまい機械的特性に悪影響およぼす恐れがあるし、25μmを越えると外観は改善されるものの同じガラス繊維濃度では機械的特性を低下させてしまう可能性がある。
【0014】
また、ポリアミド樹脂(A)中に含有されるガラス繊維(B) のアスペクト比は10〜50が好ましく、更に好ましくは20〜40である。
含有されるガラス繊維のアスペクト比が10未満では機械的特性の改善割合が少ないし、50を越えるとガラス繊維が成形品表面に現れ易くなり成形品外観を悪化させる恐れがある。
尚、ここでいうガラス繊維のアスペクト比とはガラス繊維の重量平均繊維長さを数平均繊維直径で除した値である。
また、ポリアミド中に含有されるガラス繊維の直径はポリアミドと混合する以前の状態のガラス繊維原料の直径とほぼ等しい。
【0015】
更に、ガラス繊維(B) はポリアミド樹脂用の集束剤(これはいわゆるサイジングを目的とした集束成分とポリアミド樹脂との接着性を目的とした表面処理成分を含む)で表面処理されているものが好ましい。
ここで用いる集束剤としては、無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体及びシラン系カップリング剤及び/又はアクリル酸系共重合体及び/又はウレタン系ポリマーを主たる構成成分とするものであるが、特に振動疲労特性への改善効果から無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体とアミノ基含有シランカップリング剤を主たる構成成分とするものが最も好ましい。
【0016】
集束剤を構成する無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体として具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体と無水マレイン酸との共重合体が挙げられ、その中でもブタジエン、スチレンと無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。更にこれら単量体は2種以上併用してもよいし、例えば、無水マレイン酸とブタジエンの共重合体と無水マレイン酸とスチレンの共重合体を混合して使用する等のブレンドによって使用してもかまわない。
上記無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体は平均分子量2,000以上であることが好ましい。又、無水マレイン酸と不飽和単量体との割合は特に制限されない。更に無水マレイン酸共重合体に加えてアクリル酸系共重合体やウレタン系ポリマーを併用して用いても何ら差し支えない。
【0017】
本発明の集束剤を構成するもう一つの成分であるシラン系カップリング剤としては、通常ガラス繊維の表面処理に用いられるシラン系カップリング剤がいずれも使用できる。
具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;
γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;
γ−メタクリロキプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルトリエトキシシラン等のメタクロキシシラン系カップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン系カップリング剤などが挙げられる。
これらカップリング剤は2種以上併用して用いることもできる。
これらの中で特にポリアミド樹脂との親和性からアミノシラン系カップリング剤が最も好ましく、その中でもγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシランが最も好ましい。
【0018】
上記無水マレイン酸共重合体とシラン系カップリング剤との使用割合は比較的良好な物性バランスを与える前者100重量部に対して後者1〜100重量部、好ましくは10〜70重量部の割合が望ましい。
通常、無水マレイン酸共重合体とシラン系カップリング剤は水溶媒中で混和して集束剤として用いられるが、更に必要に応じて界面活性剤、滑剤、柔軟剤、帯電防止剤などを加えても良い。
集束剤はガラスを繊維状に加工する工程、あるいは加工された後の工程でガラス繊維表面に付着させて用いるが、これを乾燥させると、上記共重合体とカップリング剤からなる被膜がガラス繊維表面に形成される。
この時の集束剤の乾燥後の最終付着量はガラス繊維100重量部当たり0.1〜2重量部の範囲にあることが好ましい。
付着量が0.1重量部未満ではガラス繊維の集束性が不十分となり、ポリアミド樹脂に配合する際、ガラス繊維同士が絡み合った、いわゆる毛玉が生じて、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の物性が著しく低下する可能性がある。又、付着量が2重量部を越える場合逆にガラス繊維同士が強固に集束されるため成形品中に繊維束が観察され成形品外観が不良となり易い。より好ましい集束剤の付着量はガラス繊維100重量部当たり0.2〜1.0重量部の範囲である。
ここで、集束剤付着量とはガラス繊維の60分間の灼熱後の強熱減量として計測されるものでありJIS R3420に準拠して求められる。
【0019】
本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物におけるガラス繊維の配合量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対してガラス繊維(B) 20〜170重量部、好ましくは20〜150重量部である。
ガラス繊維(B) の配合量が20重量部未満ではガラス繊維強化樹脂組成物を成形して得られる成形品の機械的特性が期待される程には改善されず、又170重量部を越えるものではガラス繊維強化樹脂組成物の成形流動性が著しく低下すると同時にガラス繊維の均一混合分散が達成できず、成形品外観が著しく劣るものなってしまう。
【0020】
本発明のポリアミド樹脂(A)とガラス繊維(B) の界面には集束剤で表面処理されたガラス繊維をポリアミド樹脂と溶融混合することによりグラフト化ポリアミドが形成される。
このグラフト化ポリアミドは集束剤に含まれる酸無水物とポリアミドのアミノ末端基およびシランカップリング剤官能基とポリアミドのカルボキシル末端基との反応による生成物と推定され、グラフト化ポリアミドが存在することによりポリアミド樹脂とガラス繊維の界面にせん断応力が加わった際の界面破壊を抑制するものと予想されるため機械的特性および振動疲労特性には重要な因子として挙げられる。
【0021】
本発明のポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(A)とガラス繊維(B) の界面に存在するグラフト化ポリアミドとは、組成物をポリアミドの溶媒に浸しポリアミドを溶出させガラス繊維を析出させた際、溶媒中に溶出せずガラス繊維表面に残るポリアミドを主成分とする有機物層のことをいい、赤外吸収スペクトル、熱分解ガスクロマトグラフ分析からポリアミドの存在が確認できる。
具体的には、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂組成物を例に挙げて説明すると、まず、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂組成物中のガラス繊維とグラフトしていないポリアミド66を分離するためにフェノール中に溶解する。ポリアミド66−フェノール溶液部分を除去し、残ったガラス繊維部分を、ポリアミド66が溶出しなくなるまで数回フェノールで洗浄した後、フェノールを除去するためにエタノールで数回洗浄後、エタノールを乾燥して除去する。
この様にして得られたものをここではグラフトガラス繊維と表し、グラフトガラス繊維を赤外吸収スペクトル、熱分解ガスクロマトグラフ/マススペクトル(以下、PyGC/MSという)で分析した結果から、ガラス繊維表面に存在する主成分がポリアミド66であることを確認でき、これをグラフト化ポリアミドという。
【0022】
本発明の組成物中のガラス繊維(B) 表面に存在するグラフト化ポリアミドの量は、上記具体例の様にして得られたガラス繊維をJISR3420(強熱減量、Ig.Loss)に従って測定し、その重量減少量から求めることができる。
また、グラフトしたポリアミドがガラス繊維全表面を被覆している割合は、グラフトガラス繊維をXPS(X線光電子分光:別名ESCA)にて表面元素の存在比を測定することにより求められる。
グラフト化ポリアミドの量は、ポリアミド中に含有されるガラス繊維を100重量部として0.1〜2重量部の範囲が好ましく、更に好ましくは0.15〜1重量部である。
グラフト化ポリアミド量が0.1未満では機械的特性の改善効果が少なく、20重量部を越えると組成物の粘性が向上し成形加工性が低下の傾向にある。また、組成物中のグラフト化ポリアミドがガラス繊維の全表面を被覆する割合(以下被覆率と略す)は、50〜100%が好ましく、更に好ましい範囲は70〜100%である。被覆率が50%未満では、機械的物性や疲労特性の改良効果が小さい。
【0023】
本発明に言う、ポリアミド樹脂組成物中のガラス繊維(B) とポリアミド樹脂(A)の界面領域に形成させるグラフト化ポリアミド樹脂層とは、ポリアミド樹脂組成物および成形品を凍結切削することにより鏡面に仕上げられた切削面内に存在するガラス繊維とポリアミド樹脂の界面領域に存在するポリアミド樹脂を主成分とする有機物層のことを言う。
走査型粘弾性顕微鏡測定法により測定される「応答応力信号の振幅」および「刺激歪信号と応答応力信号との位相差」から算出される動的粘弾性関数の弾性率が、図3に示すようにガラス繊維の弾性率からマトリクスのポリアミド樹脂の弾性率になるまで連続的に変化する領域のポリアミド樹脂層のことをいう。
本発明におけるポリアミド樹脂組成物中のグラフト化ポリアミド樹脂層の弾性率は、走査型粘弾性顕微鏡測定法により測定される「応答応力信号の振幅」および「刺激歪信号と応答応力信号との位相差」から算出される動的粘弾性関数から求めることができる。
【0024】
前記走査型粘弾性顕微鏡は、探針と試料表面の間に働く力が斥力領域の状態で、即ち、探針の先端が試料表面に変形を与える状態で試料台のピエゾ素子あるいは探針に正弦的振動を与え、その振動に対応するカンチレバーからの同じ周期の応答振動を検出する装置(例えば、「高分子」46巻、4月号(1997年)、P.249〜251−梶山 千里、高原 淳著「原子間力顕微鏡高分子鎖の分子運動を観察する」参照)であり、この変位と応答応力信号の振幅および位相差から試料表面の動的粘弾性関数を評価できる測定装置である。
【0025】
本発明におけるグラフト化ポリアミド樹脂層の厚みは、既述のように、走査型粘弾性顕微鏡測定法により測定される「応答応力信号の振幅」および「刺激歪信号と応答応力信号との位相差」から算出される動的粘弾性関数の弾性率の2次元分布から求めることができる。
さらに詳しく説明すると、グラフト化ポリアミド樹脂層の厚みは、ポリアミド樹脂組成物および成形品を凍結切削することにより鏡面に仕上げられた切削面内に存在するガラス繊維の円形断面端部から半径方向に測定され、さらに、図3に示すようにガラス繊維の弾性率からマトリクスのポリアミド樹脂の弾性率になるまで連続的に変化する領域の平均厚みと定義した。
【0026】
本発明におけるグラフト化ポリアミド樹脂層は、弾性率がマトリクスのポリアミド樹脂の弾性率よりも高く、かつ、グラフト化ポリアミド樹脂層の厚みが1.0μm以上20μm以下であるような構成とすることが必要であり、好ましくは1.5μm以上20μm以下であるような構成とする。
前記グラフト化ポリアミド樹脂層の厚みが1.0μm未満ではガラス繊維とポリアミド樹脂の界面領域での応力集中が大きく、得られた組成物および成形品の機械的強度、耐疲労性および耐クリープ性が充分でない。また、20μmを越えると、成形に際して組成物の溶融流動性の低下により射出成形時の圧力が高くなり、さらにはガラス繊維の開繊不良によりガラス繊維の分散が悪くなる恐れがある。
【0027】
本発明に用いる高級脂肪酸アミド化合物(C) とは、例えば、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスラウリルアミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスラウリルアミド、エチレンビスベヘニルアミド、ジオクタデシルアジピン酸アミド、ジオクタデシルコハク酸アミド、ジヘキシルアジピン酸アミド、ジヘキシルコハク酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルコハク酸アミドが挙げられる。これらの中ではエチレンビスステアリルアミドが成形性改良効果が高く好ましい。
本発明の高級脂肪酸アミド化合物(C) の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し0.01〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部である。
本発明に用いる高級脂肪酸アミド化合物(C) の配合量が0.01重量部未満では離型性の悪化に伴い良好な成形品外観が得られないし、5重量部を越えると成形加工中にブリードアウト等の問題が生じる。
【0028】
本発明に用いる高級脂肪酸金属塩(D) は酸価が0.5mgKOH/g以下であり、更に好ましくは0.1以下である。
酸価が0.5mgKOH/gを越えると分子量低下が大きくなり、そのため機械的特性が損なわれる。
ここで酸価とは試料1g中に含まれる遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。
本発明に用いる高級脂肪酸金属塩(D) としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、エルカ酸等の炭素数9以上の脂肪酸のナトリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩等が挙げられるが、作用効果の高いものとして、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウムが好適に用いられる。又、これら、高級脂肪酸金属塩を2種以上併用しても良い。
本発明に用いる高級脂肪酸金属塩(D) の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し0.005〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部である。
本発明に用いる高級脂肪酸金属塩(D) の配合量が0.005重量部未満では良好な成形品外観が得られないし、溶融混練時のトルクも低減できない。また、5重量部を越えると成形加工中にブリードアウト等の問題が生じる。
【0029】
これらの高級脂肪酸アミド化合物(C) および高級脂肪酸金属塩(D) は、ポリアミド樹脂(A)とガラス繊維(B) を押出機等を用いて溶融混合する際に添加することで溶融混練時のトルクを低減することができる。
この時、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物表面から高級脂肪酸アミド化合物(C) および高級脂肪酸金属(D) が脱落しない様に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の展着剤を本発明の目的を損なわない範囲で少量添加することもできる。
【0030】
本発明にはアジン系染料(E) を添加することもできる。
本発明のアジン系染料(E) とは、例えばアニリンとニトロベンゼンと塩酸とを主原料とし、酸化第2鉄等を触媒として得られるトリフェナジンオサジン、フェナジンアジン等のアジン系化合物の混合物であって、プラスチック、皮革等の黒着色剤として良く知られているが、ガラス繊維強化ポリアミドに配合したときにのみ、当該組成物を成形して得られる成形品の光沢性が著しく向上するという特異的な挙動を示す。
かかるアジン系染料(E) としては、Nigrosine Base EXBP、Nubian Complex Black G−02、Nubian Black PA−0800、Nubian Black PA−0801、Nubian Black PA−0850、Nubian Black PA−2800、Nubian Black PA−2801、Nubian BlackPA−9800、Nubian Black PA−9801、NubianBlack PA−9811,Nubian Black PA−9802、Nubian Black PA−9803、Nubian Black EP−3、NigrosineBase EE、NigrosineBase EX、Special Black EB、NigrosineBase SA、NigrosineBase SAP、およびNigrosineBase NB、Orient Spirit BlackSB(いずれもオリエント化学社製)、Spirit Black No.850(住友化学社製)、Nigrosine Base LK(BASF社製)、NYB27620B(山陽化工社製)等の商品名で市販されているものを使用することができる。
本発明には用いるアジン系染料(E) の好ましい配合量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜3重量部である。
アジン系染料(E) の配合量が5重量部より多い場合、成形時の離型性が低下し好ましくない。
【0031】
本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、例えば、二軸押出機を用いて、最も上流側に位置するフィード孔(トップフィード)より、所定量のポリアミド樹脂および成形性改良剤を供給し、当該ポリアミド樹脂が溶融状態に到達した時点で、所定形状のガラス繊維を所定量サイドフィードし、押出機下流側先端に取り付けられた紡孔でストランド状に成形した後、冷却し切断することで得られる。
ここで言うポリアミド樹脂が溶融状態に到達した時点とは、当該ポリアミド樹脂をDSC(示差走査熱量計)を用いて昇温速度20℃/分で測定したときの吸熱ピーク温度(融点)プラス20℃の温度以上に溶融ポリアミド樹脂の温度が到達した時点を言う。なお、複数の混合ポリアミド樹脂を用いる場合は融点の最も高いポリアミド樹脂の融点プラス20℃の温度以上に到達した時点を当該混合ポリアミド樹脂が溶融状態に到達したものとする。
【0032】
本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形等の成形加工に用いることができる。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の樹脂組成物には所望に応じて種々の添加剤、例えば銅化合物およびリン化合物等のポリアミド用熱安定剤、ヒンダードフェノールおよびヒンダードアミン等の酸化劣化防止剤、マンガン化合物等の光安定剤、タルク、ボロンナイトライド等の核剤、炭酸カルシウム、ウオラストナイト、カオリン、焼成カオリンおよびマイカ等のミネラルフィラー、カーボンブラック、酸化チタン、およびフタロシアニン系染料等の着色剤や可塑剤、帯電防止剤、他の熱可塑性樹脂等を配合できる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
〔原材料〕
[1]ポリアミド樹脂
PA−1:ポリアミド66、相対粘度2.5、アミノ末端基数45m当量/kg、銅系安定剤添加品(Cu濃度100ppm)
PA−2:ポリアミド66、相対粘度2.5、アミノ末端基数45m当量/kg
PA−3:ポリアミド66/6I、相対粘度2.0、アミノ末端基60m当量/kg
PA−4:ポリアミド6、相対粘度2.5、アミノ末端基50m当量/kg
【0034】
[2]ガラス繊維
GF−1:ガラス繊維平均直径10μm、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分[ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.4重量%
GF−2:ガラス繊維平均直径13μm、ガラス繊維平均長さ6mm、集束剤主要成分[スチレン−無水マレイン酸共重合体、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.6重量%
GF−3:ガラス繊維平均直径10μm、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分[ウレタン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.4重量%
GF−4:ガラス繊維平均直径10μm、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分[ウレタン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.05重量%
GF−5:ガラス繊維平均直径10μm、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分[アクリル−無水マレイン酸共重合体、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量1.8重量%
【0035】
[3]高級脂肪酸アミド化合物
EBS:エチレンビスステアリルアミド(ライオン社製アーモワックスEBSパウダー)
[4]高級脂肪酸金属塩
StCa−1:ステアリン酸カルシウム(酸価0.02mgKOH/g 遊離脂肪酸0.01%)
StCa−2:ステアリン酸カルシウム(酸価1.0mgKOH/g 遊離脂肪酸0.5%)
[5]アジン系染料
ニグロシン(オリエント化学工業製Nubian Black PA−9801)
【0036】
〔試験片の作成〕
▲1▼ 引張強度試験片および曲げ試験片の作成
射出成形機(日精樹脂製:PS40E)を用い、金型温度80℃で、ASTMD638TYPEIおよび長さ5インチ×幅0.5インチ×厚さ1/8試験片を成形した。
▲2▼ 疲労試験片の作成
射出成形機(日精樹脂製:PS40E)を用い、金型温度80℃で、ASTM−D1822引張衝撃ダンベル(TypeS)を成形した。得られた試験片の吸水率は0.2重量%以下に調整した。
【0037】
[測定方法]
(1)グラフト化ポリアミド樹脂層の弾性率および界面厚みの測定:
ポリアミド樹脂組成物または成形品をダイアモンドナイフで凍結切削し、試料の測定面を鏡面に仕上げた。
この様にして得られた切削面を測定対象試料として、走査型粘弾性顕微鏡(セイコーインスツルメンツ(株)製:SPA300HV)を用いて、その切削面内に存在するガラス繊維とポリアミド樹脂の界面領域における応答応力信号の振幅および刺激歪信号と応答応力信号との位相差から算出される動的粘弾性関数の弾性率の2次元分布を以下の条件で測定した。
なお、カンチレバーはSi34製、両面金コート、ばね定数0.09N・m
−1のものを使用した。
測定環境:真空中、周波数:4kHz、温度:30℃、動的歪振幅;1.0nm、探針への荷重:約5.0nN
【0038】
さらに具体的に説明すると、予めシリコンウエハーの硬い試料で装置上の応答応力信号の振幅(A’)および刺激歪信号と応答応力信号との位相シフト(φH)を測定しておく。次に、測定対象試料の応答応力信号の振幅(A)および刺激歪信号と応答応力信号との位相差(φ)の値を計算する。
次に、位相の補正値(φcal=φ−φH)および振幅の補正比(β=A/A’)を算出する。そして、弾性率の相対値(E)は以下の式により求めた。
E=HEcβ(cosφcal−β)/(1+β2−2βcosφcal)
(但し、H:探針と試料表面の接触に関する形状因子、Ec:カンチレバーのばね定数)
また、グラフト化ポリアミド樹脂層の厚みは、弾性率の2次元分布より求めた。
さらに具体的に説明すると、グラフト化ポリアミド樹脂層の厚みは、ガラス繊維の円形断面端部から半径方向に測定され、図3に示すようにガラス繊維の弾性率からマトリクスのポリアミド樹脂の弾性率になるまで連続的に変化する領域の平均厚みから求めた。
【0039】
(II)グラフト化ポリアミドの量
ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物5gを90%フェノール100mlと混合する(40℃、2時間攪拌)。静置することでガラス繊維部分を沈殿させ、上澄みのポリアミド−フェノール溶液を除去する。残ったガラス繊維部分に90%フェノール100mlを加えて更にガラス繊維部分を洗浄する(40℃、2時間攪拌)。これを静置しガラス繊維部分を沈殿させ上澄みの溶液を除去する。この操作を3回繰り返した後、99.5%エタノール100mlを加えてフェノールを取り除く(40℃、2時間攪拌)。これを静置しガラス繊維部分を沈殿させ上澄みの溶液を除去する。この操作を3回繰り返した後、エタノールを除去するために窒素フロー乾燥機で80℃、2昼夜乾燥する。
このようにして得られたものをここではグラフト化ガラス繊維という。
この様にして得られたグラフト化ガラス繊維を、JISR3420に準じ、以下のようにして求めた。グラフト化ポリアミド量を求めた。グラフトしたガラス繊維を1g以上採りその質量を測定する。
次に、110±5℃で1時間以上乾燥した後、デシケーターに入れて室温まで放冷してその質量を測定する(m1)。
これを625±20℃に保った電気炉で恒量になるまで(15分間)加熱した後、取り出し、デシケーターに入れて室温まで放冷してその質量を測定する(m2)。下記式(1)に従って強熱減量を算出し、グラフトした量(W0重量%)を求める。
W0={(m1−m2)/m1}×100 ・・・(1)
【0040】
(III)高級脂肪酸金属塩の酸価
試料20gを三角フラスコにはかり取り、エチルエーテル(一級)3重量部に対してエチルアルコール(一級)7重量部の混合溶剤30mLを加え溶解する。さらに、試料が溶解した前記溶液にフェノールフタレイン指示薬溶液0.3mLを加え、0.1mol/L水酸化カリウムメタノール標準溶液で滴定する。
中和の判定は微紅色が30秒間継続したところとし、以下の計算式(2)により酸価を算出した。
酸価(mgKOH/g)=(A×f×K)/M ・・・(2)
(ここで、A:滴定に要した水酸化カリウムメタノール標準溶液の使用量(mL)、f:水酸化カリウムメタノール標準溶液のファクター、K:5.611、M:試料量(g)を表す。)
【0041】
(IV)引張強度
ASTMD638に準じて、試験片を引張試験機(東洋精機製:UTM25)で、23℃、クロスヘッドスピード5mm/分の条件で測定を行った。
(V)曲げ弾性率
ASTM D790に準じて、試験片を引張り試験機(東洋精機製:UTM25)で、23℃、クロスヘッドスピード5mm/分、スパン50mmの条件で測定を行った。
(VI)疲労特性
振動疲労試験機(鷺宮製作所製:油圧サーボ疲労試験機EFH−50−10−3)を用いて、引張荷重制御、チャック間距離:20mm、周囲温度:120℃、周波数:20Hz、応力モード:引張−引張、最小荷重5.4MPa、120℃の条件下で測定を行った。
【0042】
(VII)成形品外観
東芝機械製IS150E成形機と130mm×130mm×3mmの平板金型を用いて、金型温度80℃で充填時間1.2秒で成形した試験片の中央部の表面外観をJIS−K7105に準じて堀場製作所製ハンディ光沢計IG−320を用いて光沢度を測定した。
(VIII)リブ付き平板の荒れ
東芝機械製IS150E成形機と図2に示すリブ付き平板金型を用いて、金型温度80℃で充填時間1.2秒で成形した試験片のリブ裏面表面外観をJIS−K7105に準じて堀場製作所製ハンディ光沢計IG−320を用いて光沢度を測定した。
(IX)離型性
図1に示す離型力測定装置を取り付けた金型を用いて、日精樹脂製FN3000射出成形機でシリンダー温度290℃、射出圧力400kg/cm2 の条件下で成形を行い、金型から成形品を突き出す際の突き出し応力を測定した。
この値が小さいほど離型性に優れるとした。
【0043】
【実施例1〜11】
東芝機械(株)製TEM35BS、2軸押出機を用いてシリンダー設定温度290℃、スクリュウ回転数300rpm、トータルフィード量50kg/hrでトップフィード孔にガラス繊維以外の混合原料を供給、サイドフィード孔からガラス繊維を溶融したポリアミド樹脂中に表1の比率になるように供給し、紡孔より押し出されたストランドを冷却後、長さ3mm、直径3mmのペレット状に切断、乾燥して、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレットを上述の方法でシリンダー温度290℃の条件で成形し、評価した。その結果を表1に示す。
【比較例1〜6】
トップフィードする混合原料およびサイドフィードするガラス繊維を表2に示す組成とした以外は実施例1と同様の方法でガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得て、諸特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004678979
(注)(11) :図3の曲線11のような弾性率の厚み方向変化を示す。
(12) :図3の曲線12のような弾性率の厚み方向変化を示す。
【0045】
【表2】
Figure 0004678979
(注)(11) :図3の曲線11のような弾性率の厚み方向変化を示す。
(12) :図3の曲線12のような弾性率の厚み方向変化を示す。
【0046】
【発明の効果】
本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、溶融混練時のトルクを低減できる。
その組成物を成形して得られる成形品は、機械的特性および耐久性に優れるばかりでなく、表面外観にも優れ、更には成形時の流動性が向上しているため、厳しい信頼性や良成形品外観の要求されるエンジンカバー、ラジエータータンク、カーヒータータンク、ウォーターバルブ、ウォーターポンプ、ラジエーターパイプ等の自動車アンダーフード部品に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において、離型性の測定に用いた金型の概略図である。
【図2】本発明の実施例において、リブ付き平板の外観荒れ測定に用いた試験片の外力図である。
【図3】ガラス繊維とポリアミド樹脂の界面に存在するグラフト化ポリアミド樹脂層の弾性率を厚み方向に示した模式図である。図中の曲線11は、グラフト化ポリアミド樹脂層の弾性率が常にポリアミド樹脂の弾性率より高い場合である。一方、曲線12はグラフト化ポリアミド樹脂層の弾性率がポリアミド樹脂の弾性率より低い部分がある場合である。
【符号の説明】
1 スプルランナー
2 カップ状成形品
3 エジェクターピン
4 エジェクタープレート
5 圧力センサー
6 エジェクターロッド
7 離型力記録計
8 リブ部
9 スプルー
10 荒れ測定面
11 界面層のモデルケース1
12 界面層のモデルケース2

Claims (12)

  1. (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)ガラス繊維20〜170重量部、(C)高級脂肪酸アミド化合物0.01〜5重量部、および(D)酸価0.5mgKOH/g以下の高級脂肪酸金属塩0.005〜5重量部を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  2. (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(E)アジン系染料0.01〜5重量部を含むことを特徴とする、請求項1記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  3. ポリアミド樹脂(A)とガラス繊維(B)の界面領域に存在するグラフト化ポリアミド樹脂層の、走査型粘弾性顕微鏡測定法により測定される「応答応力信号の振幅」および「刺激歪み信号と応答応力信号との位相差」から算出される動的粘弾性関数の弾性率が、ポリアミド樹脂の弾性率を1とした時、少なくとも1より大きく、且つグラフト化ポリアミド樹脂層の厚みが1.0μm以上20μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  4. ポリアミド樹脂(A)とガラス繊維(B)の界面に該グラフト化ポリアミド樹脂が、ガラス繊維(B)100重量部に対して0.1〜2重量部存在することを特徴とする、請求項3記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  5. 該グラフト化ポリアミドがガラス繊維(B)の全表面積の50〜100%を被覆していることを特徴とする、請求項4記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  6. ガラス繊維(B)が無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体及びアミノシラン系カップリング剤とを主たる構成成分とする集束剤で表面処理されていることを特徴とする、請求項1又は2記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  7. ガラス繊維(B)が集束剤をガラス繊維100重量部当たり0.1〜2重量部含有することを特徴とする、請求項6記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  8. ポリアミド樹脂(A)中に存在するガラス繊維(B)のアスペクト比(重量平均繊維長さ/数平均繊維直径)が10〜50であり、且つ数平均繊維直径が8〜25μmの範囲であることを特徴とする、請求項1又は2記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  9. ポリアミド樹脂(A)がポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、これらの共重合体およびブレンド物、およびポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)とポリアミド66、ポリアミド6から選ばれる少なくとも1種との共重合体およびブレンド物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1又は2記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  10. ポリアミド樹脂(A)のJISK6810に準じた98%硫酸中濃度1%、25℃で測定する相対粘度が1.6〜3.7の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
  11. (A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(B)ガラス繊維20〜170重量部、(C)高級脂肪酸アミド化合物0.01〜5重量部、および(D)酸価0.5mgKOH/g以下の高級脂肪酸金属塩0.005〜5重量部を含む強化ポリアミド樹脂からなることを特徴とする成形品。
  12. 強化ポリアミド樹脂が(A)ポリアミド樹脂100重量部に対し、(E)アジン系染料0.01〜5重量部を含む強化ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項11記載の成形品。
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