JP2011085454A - 結晶性熱可塑性樹脂組成物の前処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶性熱可塑性樹脂組成物中の充填材に化学的に結合する結晶性熱可塑性樹脂を分析するための、結晶性熱可塑性樹脂組成物の前処理方法を提供すること。
【解決手段】結晶性熱可塑性樹脂が表面に化学的に結合した充填材、及び、結晶性熱可塑性樹脂を含む結晶性熱可塑性樹脂組成物を、前記結晶性熱可塑性樹脂の良溶媒に接触させ、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とを十分に分離する。
【選択図】図1
【解決手段】結晶性熱可塑性樹脂が表面に化学的に結合した充填材、及び、結晶性熱可塑性樹脂を含む結晶性熱可塑性樹脂組成物を、前記結晶性熱可塑性樹脂の良溶媒に接触させ、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とを十分に分離する。
【選択図】図1
Description
本発明は、充填材に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂を分析するための、結晶性熱可塑性樹脂組成物の前処理方法に関する。
近年、ガラス繊維等の充填材を配合された、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性熱可塑性樹脂の組成物が、電気・電子部品、自動車用途等、多岐に渡る用途に使用されている(特許文献1及び2)。
このため、結晶性熱可塑性樹脂には種々の性能が要求されており、市場の要求に応えるため、種々の充填材を用いて様々な性能の結晶性熱可塑性樹脂組成物が開発されている。そして、結晶性熱可塑性樹脂組成物に要求される多岐に渡る性能を実現するために、充填材の添加により機能が発現するメカニズムに関する検討も進められている。
例えば、結晶性熱可塑性樹脂にガラス繊維等の充填材を配合して強化する場合、結晶性熱可塑性反応性樹脂の末端基との反応性を有する官能基(例えばエポキシ基)を有する表面処理剤により表面処理された充填材を用いることにより、結晶性熱可塑性樹脂の末端基と充填剤の表面の官能基との反応により結晶性熱可塑性樹脂の分子が充填剤の表面に化学的に結合し、未処理の強化材を配合する場合よりも優れた機械物性が発現することが知られている。
このように、充填材の表面と化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂組成物の物性に大きく影響することが知られており、充填材の表面と結晶性熱可塑性樹脂との結合状態の分析ができれば、材料開発において貴重な情報が得られるため、充填材に化学的に結合する結晶性熱可塑性を分析する手法の開発が望まれている。
しかし、結晶性熱可塑性樹脂組成物中の充填材に化学的に結合する結晶性熱可塑性樹脂を分析するための、有効な前処理方法は未だ知られておらず、充填材に化学的に結合する結晶性熱可塑性樹脂の分析は進んでいない。
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、充填剤の表面に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂の分析を可能にする、結晶性熱可塑性樹脂組成物の前処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、結晶性熱可塑性樹脂が表面に化学的に結合した充填材、及び、結晶性熱可塑性樹脂を含む結晶性熱可塑性樹脂組成物を、前記結晶性熱可塑性樹脂の良溶媒に接触させ、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とを十分に分離することにより、充填剤の表面に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂の分析が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
(1) 結晶性熱可塑性樹脂が表面に化学的に結合した充填材、及び、結晶性熱可塑性樹脂を含む結晶性熱可塑性樹脂組成物を、前記結晶性熱可塑性樹脂の良溶媒に接触させ、前記充填材に化学的に結合していない前記結晶性熱可塑性樹脂と前記充填材に化学的に結合している前記結晶性熱可塑性樹脂とを十分に分離する工程を含む、前記充填材に化学的に結合した前記結晶性熱可塑性樹脂を分析するための結晶性熱可塑性樹脂組成物の前処理方法。
(2) 前記充填材がガラス繊維であり、前記結晶性熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレートである、(1)記載の前処理方法。
(3) 前記分析が、前記充填材に結合した前記結晶性熱可塑性樹脂の定量である、(1)又は(2)記載の前処理方法。
(4) 前記結晶性熱可塑性樹脂と前記良溶媒とを接触させる工程が、
前記熱可塑性樹脂と前記良溶媒とを接触させる処理を複数の前記熱可塑性樹脂組成物の試料に対して行い、複数の充填剤の試料を調製し、前記複数の充填材の試料中の結晶性熱可塑性樹脂組成物を定量した場合に、複数の測定結果の平均値と、各測定結果の値との差の絶対値が、いずれも複数の測定結果の平均値の10%以下となる条件で行われる、(1)から(3)いずれか記載の前処理方法。
前記熱可塑性樹脂と前記良溶媒とを接触させる処理を複数の前記熱可塑性樹脂組成物の試料に対して行い、複数の充填剤の試料を調製し、前記複数の充填材の試料中の結晶性熱可塑性樹脂組成物を定量した場合に、複数の測定結果の平均値と、各測定結果の値との差の絶対値が、いずれも複数の測定結果の平均値の10%以下となる条件で行われる、(1)から(3)いずれか記載の前処理方法。
本発明によれば、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂を選択的に除去し、充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂を充填材上に残すように結晶性熱可塑性樹脂組成物を前処理できるため、充填剤の表面に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂の分析が可能となる。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明は、結晶性熱可塑性樹脂が表面に化学的に結合した充填材、及び、結晶性熱可塑性樹脂を含む結晶性熱可塑性樹脂組成物を、結晶性熱可塑性樹脂の良溶媒に接触させ、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とを十分に分離する工程を含む方法により、充填材に結合した前記結晶性熱可塑性樹脂を分析するために、結晶性熱可塑性樹脂組成物の前処理方法を行うことを特徴とする。以下、本発明について結晶性熱可塑性樹脂組成物、良溶媒、溶解工程、及び、充填材に結合した結晶性熱可塑性樹脂の分析について順に説明する。
[結晶性熱可塑性樹脂組成物]
本発明の方法により前処理される結晶性熱可塑性樹脂は、結晶性熱可塑性樹脂が表面に化学的に結合した充填材、及び、結晶性熱可塑性樹脂を含むものである。結晶性熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他に、核剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、及び、難燃剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の方法により前処理される結晶性熱可塑性樹脂は、結晶性熱可塑性樹脂が表面に化学的に結合した充填材、及び、結晶性熱可塑性樹脂を含むものである。結晶性熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他に、核剤、着色剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、及び、難燃剤等の添加剤を含んでいてもよい。
〔結晶性熱可塑性樹脂〕
本発明において結晶性熱可塑性樹脂組成物に含まれる結晶性熱可塑性樹脂は本発明の目的を阻害しない限り特に制限されない。本発明において好適に使用される結晶性熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、弗素樹脂、熱可塑性エラストマー、各種の生分解性樹脂等が挙げられる。これらの結晶性熱可塑性樹脂の中では、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等がより好ましく、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。これらの結晶性熱可塑性樹脂は、二種以上を組み合わせて使用できる。以下、ポリブチレンテレフタレートについて説明する。
本発明において結晶性熱可塑性樹脂組成物に含まれる結晶性熱可塑性樹脂は本発明の目的を阻害しない限り特に制限されない。本発明において好適に使用される結晶性熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、弗素樹脂、熱可塑性エラストマー、各種の生分解性樹脂等が挙げられる。これらの結晶性熱可塑性樹脂の中では、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等がより好ましく、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。これらの結晶性熱可塑性樹脂は、二種以上を組み合わせて使用できる。以下、ポリブチレンテレフタレートについて説明する。
ポリブチレンテレフタレートとはテレフタル酸(テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体)と、炭素数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成誘導体とを少なくとも重合成分とするポリブチレンテレフタレート系樹脂である。
このようなポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)としては、ホモポリブチレンテレフタレートに限らない。例えば、ブチレンテレフタレートが50質量%以上(例えば55質量%から100質量%)、好ましくは60質量%以上(例えば65質量%から100質量%)、さらに好ましくは70質量%以上(例えば75質量%から100質量%)程度含有する共重合体であってもよい。
コポリエステル(ブチレンテレフタレート系共重合体又は変性PBT樹脂)における前記共重合可能なモノマー(以下、単に共重合性モノマーと称する場合がある)としてはテレフタル酸を除くジカルボン酸成分、1,4−ブタンジオールを除くジオール、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等が挙げられる。共重合性モノマーは、1種で又は2種以上組み合わせて使用できる。
ジカルボン酸(又はジカルボン酸成分又はジカルボン酸類)としては脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等のC4〜C40ジカルボン酸、好ましくはC4〜C14ジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸成分(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等のC8〜C12ジカルボン酸)、テレフタル酸を除く芳香族ジカルボン酸成分(例えば、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸等のC8〜C16ジカルボン酸)、又はこれらの反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル(ジメチルフタル酸、ジメチルイソフタル酸(DMI)等のフタル酸又はイソフタル酸のC1〜C4アルキルエステル等)、酸クロライド、酸無水物等のエステル形成可能な誘導体)等が挙げられる。
ジオールには、例えば、1,4−ブタンジオールを除く脂肪族アルキレングリコール[例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール(1,6−ヘキサンジオール等)、オクタンジオール(1,3−オクタンジオール等)、デカンジオール等の低級アルキレングリコール(C2−C12アルキレングルコール、好ましくはC2−C10アルキレングリコール等)]、ポリオキシアルキレングリコール[複数のオキシC2−C4アルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等]、脂環族ジオール[例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等]、芳香族ジオール[例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール等のC6−C14芳香族ジオール;ビフェノール(4,4’−ジヒドロキシビフェニル等);ビスフェノール類;キシリレングリコール等]、及びこれらの反応性誘導体(アルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等のエステル形成性誘導体等)等が挙げられる。
ポリブチレンテレフタレートとしては、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)及び/又はその共重合体(ポリブチレンテレフタレートコポリエステル)が好ましく、ポリブチレンテレフタレートは共重合性モノマーの割合(変性量)が、通常、45モル%以下(例えば0モル%から35モル%程度)、さらに好ましくは30モル%以下(例えば、0モル%から30モル%程度)のホモ又はコポリエステル(特にホモポリエステル)であってもよい。
なお、共重合体において、共重合性モノマーの割合は、例えば0.01モル%から30モル%程度の範囲から選択でき、通常、1モル%から30モル%、好ましくは3モル%から25モル%、さらに好ましくは5モル%から20モル%(例えば5モル%から15モル%)程度である。また、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)と共重合体(コポリエステル)とを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの割合は、共重合性モノマーの割合が、全単量体に対して0.1モル%から25モル%)程度となる範囲であり、通常、前者/後者=99/1〜1/99(質量比)、好ましくは95/5〜5/95(質量比)、さらに好ましくは90/10〜10/90(質量比)程度の範囲から選択できる。
ポリブチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は、1.2dL/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0dL/g以下であってもよい。異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレートをブレンドすることによって、例えば固有粘度1.2dL/gのポリブチレンテレフタレートと0.8dL/gのポリブチレンテレフタレートとをブレンドすることによって、1.0dL/g以下の固有粘度を実現してもよい。なお、固有粘度(IV)は、例えば、o−クロロフォノール中、温度35℃の条件で測定できる。このような範囲の固有粘度を有するポリブチレンテレフタレートを使用すると、十分な靱性の付与と溶融粘度の低減とを効率よく実現しやすい。固有粘度が大きすぎると、成形時の溶融粘度が高くなり、場合により成形金型内で樹脂の流動不良、充填不良を起こす可能性がある。
また、末端カルボキシル基量は特に限定されるものではないが、50meq/kg以下が好ましい。さらに好ましくは30meq/kg以下である。カルボキシル末端基量が30meq/kgを越えると湿熱環境下での加水分解による強度低下が大きくなる場合がある。末端カルボキシル基量は例えば、ポリブチレンテレフタレートの粉砕試料をベンジルアルコール中215℃で10分間溶解後、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液にて滴定することで測定する。
〔充填材〕
本発明において結晶性熱可塑性樹脂組成物に含まれる充填材は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されず、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイト、マイカ、ガラスフレーク、金属箔等の種々の充填材を用いることができる。これらの充填材は二種以上を組み合わせて使用できる。これらの充填剤の中では、結晶性熱可塑性樹脂組成物が機械的に性質に優れたものである点で、ガラス繊維がより好ましい。
本発明において結晶性熱可塑性樹脂組成物に含まれる充填材は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されず、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイト、マイカ、ガラスフレーク、金属箔等の種々の充填材を用いることができる。これらの充填材は二種以上を組み合わせて使用できる。これらの充填剤の中では、結晶性熱可塑性樹脂組成物が機械的に性質に優れたものである点で、ガラス繊維がより好ましい。
以下、ガラス繊維について説明する。
本発明においてガラス繊維は、公知のガラス繊維がいずれも好ましく用いられ、ガラス繊維径や、円筒、繭形断面、長円断面等の形状、あるいはチョップドストランドやロービング等の製造に用いる際の長さやガラスカットの方法にはよらない。本発明において用いるガラス繊維はガラスの種類にも限定されず、ガラスの種類は、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましい。また、本発明において結晶性熱可塑性樹脂組成物中のガラス繊維の平均繊維長及び平均繊維径は特に限定されない。
本発明においてガラス繊維は、公知のガラス繊維がいずれも好ましく用いられ、ガラス繊維径や、円筒、繭形断面、長円断面等の形状、あるいはチョップドストランドやロービング等の製造に用いる際の長さやガラスカットの方法にはよらない。本発明において用いるガラス繊維はガラスの種類にも限定されず、ガラスの種類は、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましい。また、本発明において結晶性熱可塑性樹脂組成物中のガラス繊維の平均繊維長及び平均繊維径は特に限定されない。
結晶性熱可塑性樹脂組成物のガラス繊維含有量は特に制限されないが、通常、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し20〜100質量部用いられる。
〔表面処理剤〕
本発明において、充填材は結晶性熱可塑性樹脂が化学的に充填剤の表面に結合したものである。結晶性熱可塑性樹脂の末端基と反応性を有する官能基を表面に有する充填材を、溶融混練等の常法に従って結晶性熱可塑性樹脂に配合することにより、充填剤の表面に結晶性熱可塑性樹脂が化学的に結合する。結晶性熱可塑性樹脂の末端基と反応性を有する官能基を充填剤の表面に導入するために、充填材は種々の表面処理材により処理される。処理剤としては、結晶性熱可塑性樹脂の末端基との反応性を有する官能基を有するものであれば特に制限されず、シランカップリング剤や種々の有機処理剤が好適に使用される。結晶性熱可塑性樹脂の末端基と反応性を有する官能基は、結晶性熱可塑性樹脂の末端基の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、メタクリル基等が挙げられる。これらの官能基の中では、種々の末端基と反応することからエポキシ基が特に好ましい。
本発明において、充填材は結晶性熱可塑性樹脂が化学的に充填剤の表面に結合したものである。結晶性熱可塑性樹脂の末端基と反応性を有する官能基を表面に有する充填材を、溶融混練等の常法に従って結晶性熱可塑性樹脂に配合することにより、充填剤の表面に結晶性熱可塑性樹脂が化学的に結合する。結晶性熱可塑性樹脂の末端基と反応性を有する官能基を充填剤の表面に導入するために、充填材は種々の表面処理材により処理される。処理剤としては、結晶性熱可塑性樹脂の末端基との反応性を有する官能基を有するものであれば特に制限されず、シランカップリング剤や種々の有機処理剤が好適に使用される。結晶性熱可塑性樹脂の末端基と反応性を有する官能基は、結晶性熱可塑性樹脂の末端基の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、メタクリル基等が挙げられる。これらの官能基の中では、種々の末端基と反応することからエポキシ基が特に好ましい。
[良溶媒]
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂を溶解させる良溶媒は特に限定されず、前述の結晶性熱可塑性樹脂の良溶媒として知られるものを適宜選択すればよい。例えば、結晶性熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルである場合、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を良溶媒として使用できる。良溶媒は、複数の種類の溶媒を混合して使用できる。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂を溶解させる良溶媒は特に限定されず、前述の結晶性熱可塑性樹脂の良溶媒として知られるものを適宜選択すればよい。例えば、結晶性熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルである場合、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を良溶媒として使用できる。良溶媒は、複数の種類の溶媒を混合して使用できる。
[溶解工程]
本発明において、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とを分離する溶解工程は、結晶性熱可塑性樹脂組成物と良溶媒とを接触させることにより行われる。結晶性熱可塑性樹脂組成物と良溶媒とを接触させる方法は、特に限定されず、例えば以下のI)〜IV)の方法等が挙げられる。
I)結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒に浸漬して静置する方法。
II)結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒に浸漬し、良溶媒を攪拌する方法。
III)結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒に浸漬し、良溶媒と結晶性熱可塑性樹脂組成物とが入った容器を振盪する方法。
IV)結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒に浸漬し、良溶媒と結晶性熱可塑性樹脂組成物とが入った容器への溶媒の流入量と流出量とがほぼ等しくなるように、良溶媒を連続的に供給及び排出する方法。
本発明において、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とを分離する溶解工程は、結晶性熱可塑性樹脂組成物と良溶媒とを接触させることにより行われる。結晶性熱可塑性樹脂組成物と良溶媒とを接触させる方法は、特に限定されず、例えば以下のI)〜IV)の方法等が挙げられる。
I)結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒に浸漬して静置する方法。
II)結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒に浸漬し、良溶媒を攪拌する方法。
III)結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒に浸漬し、良溶媒と結晶性熱可塑性樹脂組成物とが入った容器を振盪する方法。
IV)結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒に浸漬し、良溶媒と結晶性熱可塑性樹脂組成物とが入った容器への溶媒の流入量と流出量とがほぼ等しくなるように、良溶媒を連続的に供給及び排出する方法。
良溶媒と結晶性熱可塑性樹脂とを接触させる温度は、結晶性熱可塑性樹脂及び良溶媒の種類にもよるが、典型的には、10〜40℃、より好ましくは20〜30℃である。接触させる温度が低すぎれば、結晶性熱可塑性樹脂が良溶媒に溶解し難くい場合があり、接触させる温度が高すぎる場合には、充填材に結合する結晶性熱可塑性樹脂に望まない副反応が生じる場合がある。
I)、II)、又はIII)の方法では、所定の時間、結晶性熱可塑性樹脂組成物を良溶媒中で静置するか、良溶媒を攪拌又は振盪した後に、結晶性熱可塑性樹脂が溶解した良溶媒を未使用の良溶媒と交換し、再度、結晶性熱可塑性樹脂を良溶媒中に静置するか、良溶媒を攪拌又は振盪して結晶性熱可塑性樹脂を溶解させる工程を行えばよい。溶解工程は、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とが十分に分離されるように、所定の回数繰り返して行われる。
IV)の方法では、容器へ常に未使用の良溶媒を流入させてもよく、容器中の溶媒を循環させてもよい。この方法では、溶解工程は、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とが十分に分離されるように、所定の時間継続して行われる。
また、IV)の方法では、容器中の良溶媒を循環させて使用する場合は、所定の時間で良溶媒の循環を停止し、容器内の結晶性熱可塑性樹脂が溶解した良溶媒を未使用の良溶媒と交換し、再度、良溶媒の循環を行う。溶解工程における良溶媒の交換は、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とが十分に分離されるように、所定の回数繰り返して行われる。
溶解工程後は、充填材を含む液体を静置して不溶物(充填材)を沈降させた後に、容器を静かに傾けて上澄み液を流し去ることにより不溶物を回収する操作であるデカンテーション法により、充填材と良溶媒とを分離する。
本発明は、溶解工程により、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とを十分に分離することを特徴とする。溶解工程の条件が、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とを十分に分離することができる条件であるか否かは、その条件による充填材の試料の調製作業を複数回行い、得られた複数の充填剤の試料に含まれる結晶性熱可塑性樹脂を、後述する分析方法によって定量することにより確認できる。
充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とが、十分に分離されていれば、複数の測定結果は高い再現性を示し、十分に分離されていない場合は複数の測定結果はばらついた値となる。充填剤の試料を同条件で複数調製する回数は、2回以上が好ましく、5回以上がより好ましく、できるだけ多い回数がよい。
ここで、充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂の定量値が再現性を示すとは、複数の測定結果の平均値と、各測定結果の値との差の絶対値が、いずれも複数の測定結果の平均値の10%以下であることをいう。
以上説明した溶解工程により、結晶性熱可塑性樹脂組成物を前処理して得られる充填材は、充填材に化学的に結合していない結晶性熱可塑性樹脂と充填材に化学的に結合している結晶性熱可塑性樹脂とが十分に分離されているため、充填材に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂を分析する種々の方法において試料として好適に使用できる。
[充填材に結合した結晶性熱可塑性樹脂の分析]
充填材に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂を分析する方法としては、従来、結晶性熱可塑性樹脂の定性又は定量方法として知られる種々の方法を用いることができ、定量方法がより好ましく用いられる。充填材に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂の量が分かれば、結晶性熱可塑性樹脂組成物の種々の物性と相関関係を解析することができるためである。
充填材に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂を分析する方法としては、従来、結晶性熱可塑性樹脂の定性又は定量方法として知られる種々の方法を用いることができ、定量方法がより好ましく用いられる。充填材に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂の量が分かれば、結晶性熱可塑性樹脂組成物の種々の物性と相関関係を解析することができるためである。
充填材に化学的に結合した結晶性熱可塑性樹脂の分析及び定量方法として好適なものとしては、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)等の分析方法が挙げられる。これらの結晶性熱可塑性樹脂の分析方法の中では、充填材に結合する結晶性熱可塑性樹脂の量が極微量である場合でも定量可能であること等から熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いるのがより好ましい。
以下、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法について説明する。熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法とは、試料を高温で分解又は揮発させ、次いでこの分解生成物又は揮発成分をガスクロマトグラフィーで分離し、質量分析計によって検出するものである。この熱分解においては、メチル化剤を添加して分解生成物をメチル化するのが好ましい。メチル化剤としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルスルホニウム等が好適に使用される。熱分解は、熱可塑性樹脂の種類に応じた温度を適宜選択して行われる。
熱分解に用いる装置としては、例えば加熱炉型やキューリーポイント型等が挙げられ、原理的に最も正確な加熱温度が得られるため、キューリーポイント型の熱分解装置を用いるのがより好ましい。
次に上記熱分解による分解生成物又は揮発成分は、ガスクロマトグラフによって分離される。さらに、ガスクロマトグラフによって分離された熱分解生成物は、質量分析計によって検出され、パイログラムとマススペクトルが得られる。質量分析計におけるイオン化方法としては、例えば、電子イオン化法(EI)、分子イオン化法等が挙げられ、検出器としては、例えば、四重極型、フーリエ変換型、単収束磁場変更型、イオントラップ型、二重収束型、飛行時間型等が挙げられる。
以上のようにして得られた、パイログラムとマススペクトルを解析することにより、充填材に化学的に結合する結晶性熱可塑性樹脂の定性及び定量が可能となる。
本発明の前処理方法によれば、充填剤に化学的に結合する結晶性熱可塑性樹脂組成物の定性や定量が可能となる。このため、結晶性熱可塑性樹脂と充填材との配合比率が等しく、引張り強度や曲げ強度等の機械的物性値が既に分かっている複数の試料の充填材に化学結合する結晶性熱可塑性樹脂を定量し、一方の軸を充填剤に化学結合する結晶性熱可塑性樹脂の量とし、他方の軸を機械的物性値として検量線を予め作成することができる。この検量線を用いれば、極少量の結晶性熱可塑性樹脂組成物の試料しかない場合でも、灰化等の方法により試料中の充填剤の含有量を測定するとともに、試料中の充填材に化学的に結合する結晶性熱可塑性樹脂を定量することにより、試料の機械的物性値を推定することが可能となる。
また、結晶性熱可塑性樹脂組成物に添加材を配合した場合に、添加剤の使用量毎に充填剤に化学的に結合する結晶性熱可塑性樹脂を定量することにより、結晶性熱可塑性樹脂の化学的結合量に対する添加剤の影響等を知ることが可能となる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
結晶性熱可塑性樹脂組成物として、表面にエポキシ基を有するガラス繊維と、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とを、PBT/ガラス繊維の質量比70/30で溶融混練して得られた、以下のPBT1〜PBT6のポリブチレンテレフタレート組成物を用いた。
<PBT組成物>
PBT1(引張り強度、159MPa)
PBT2(引張り強度、159MPa)
PBT3(引張り強度、155MPa)
PBT4(引張り強度、153MPa)
PBT5(引張り強度、152MPa)
PBT6(引張り強度、149MPa)
PBT1(引張り強度、159MPa)
PBT2(引張り強度、159MPa)
PBT3(引張り強度、155MPa)
PBT4(引張り強度、153MPa)
PBT5(引張り強度、152MPa)
PBT6(引張り強度、149MPa)
なお、PBTはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールを原料とし、定法に従い行ったエステル交換反応において、重合時の熱処理条件を変えることにより得た性質の異なるPBTを用い、ガラス繊維は市販のチョップドストランドを用いた。また、PBT1〜PBT6の引張り強度はISO 527−1,2に準拠して測定した。
〔実施例〕
(前処理工程)
ポリブチレンテレフタレート組成物10mg、及び、ヘキサフルオロイソプロパノール30mlを容量60mlのガラス製容器に入れ、25℃にて12時間静置後、デカンテーションによりヘキサフルオロイソプロパノールを容器から除く。その後、未使用のヘキサフルオロイソプロパノール30mlを加え、同様の操作を繰り返した。
(前処理工程)
ポリブチレンテレフタレート組成物10mg、及び、ヘキサフルオロイソプロパノール30mlを容量60mlのガラス製容器に入れ、25℃にて12時間静置後、デカンテーションによりヘキサフルオロイソプロパノールを容器から除く。その後、未使用のヘキサフルオロイソプロパノール30mlを加え、同様の操作を繰り返した。
このヘキサフルオロイソプロパノールによるPBTの溶解・除去操作を計15回繰り返し行い、最後に溶剤を除去したあとに残ったガラス繊維を分離回収した。
(ガラス繊維のPBT結合量分析)
前処理工程で回収されたガラス繊維のPBT結合量を、以下の方法に従い、熱分解ガスクロマトグラフォー質量分析法によりジメチルテレフタレートの発生量として分析した。ジメチルテレフタレートはPBTの分子鎖中のテレフタロイル単位に由来するものであり、ジメチルテレフタレートの発生量が多いほど、ガラス繊維に化学的に結合しているPBT量が多いことを示す。PBT1〜PBT6の、ガラス繊維1mg当たりのジメチルテレフタレート発生量を表1に記す。
前処理工程で回収されたガラス繊維のPBT結合量を、以下の方法に従い、熱分解ガスクロマトグラフォー質量分析法によりジメチルテレフタレートの発生量として分析した。ジメチルテレフタレートはPBTの分子鎖中のテレフタロイル単位に由来するものであり、ジメチルテレフタレートの発生量が多いほど、ガラス繊維に化学的に結合しているPBT量が多いことを示す。PBT1〜PBT6の、ガラス繊維1mg当たりのジメチルテレフタレート発生量を表1に記す。
<熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法>
試料に水酸化テトラメチルアンモニウムを加えて、パイロライザー・ガスクロマト(GC)/質量分析(MS)装置で測定を行った。なお、PBT量はジメチルテレフタレート(DMT)を標準物質として、DMT換算で求めた。
試料に水酸化テトラメチルアンモニウムを加えて、パイロライザー・ガスクロマト(GC)/質量分析(MS)装置で測定を行った。なお、PBT量はジメチルテレフタレート(DMT)を標準物質として、DMT換算で求めた。
〔比較例〕
PBT1について、ヘキサフルオロイソプロパノールによるPBTの溶解操作を計5回行うことの他は、実施例1と同様にして前処理工程を複数回行い、複数のガラス繊維の試料を調製し、ガラス繊維に対するPBT結合量の分析を行った。その結果、ガラス繊維1mg当たりのジメチルテレフタレート発生量は、0.01〜0.08mgの範囲で大きくばらつき、比較例の前処理工程ではガラス繊維に化学的に結合していないPBTと、ガラス繊維に化学的に結合しているPBTとを十分に分離できていないことが分かった。
PBT1について、ヘキサフルオロイソプロパノールによるPBTの溶解操作を計5回行うことの他は、実施例1と同様にして前処理工程を複数回行い、複数のガラス繊維の試料を調製し、ガラス繊維に対するPBT結合量の分析を行った。その結果、ガラス繊維1mg当たりのジメチルテレフタレート発生量は、0.01〜0.08mgの範囲で大きくばらつき、比較例の前処理工程ではガラス繊維に化学的に結合していないPBTと、ガラス繊維に化学的に結合しているPBTとを十分に分離できていないことが分かった。
表1より、PBT1〜PBT6の複数回のジメチルテレフタレート発生量の測定結果は非常に再現性が高く、実施例1のPBT組成物の洗浄条件によれば、15回の繰り返し洗浄操作で十分にガラス繊維に化学的に結合していないPBTとガラス繊維に化学的に結合しているPBTとを十分に分離できていることが分かる。
また、表1に記載のジメチルテレフタレート発生量と、PBT組成物の引張り強度の関係を表すグラフである図1によれば、ジメチルテレフタレートの発生量が多い、即ち、ガラス繊維に化学的に結合するPBTの量が多いほど、PBT組成物の引張り強度が高いことが分かる。なお、図1のグラフの作成には、表1に記載のジメチルテレフタレート発生量の平均値を用いた。
表1に記載のグラフを用いれば、PBT1〜PBT6と同一又は類似の組成であり引張り強度が分からない試料が少量しかない場合でも、ガラス繊維に結合するPBT量を分析することによって、引張り試験片を射出成形により作成して引張り試験を行うことなく、引張り強度を推定することが可能となる。
Claims (4)
- 結晶性熱可塑性樹脂が表面に化学的に結合した充填材、及び、結晶性熱可塑性樹脂を含む結晶性熱可塑性樹脂組成物を、前記結晶性熱可塑性樹脂の良溶媒に接触させ、前記充填材に化学的に結合していない前記結晶性熱可塑性樹脂と前記充填材に化学的に結合している前記結晶性熱可塑性樹脂とを十分に分離する工程を含む、前記充填材に化学的に結合した前記結晶性熱可塑性樹脂を分析するための結晶性熱可塑性樹脂組成物の前処理方法。
- 前記充填材がガラス繊維であり、前記結晶性熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレートである、請求項1記載の前処理方法。
- 前記分析が、前記充填材に結合した前記結晶性熱可塑性樹脂の定量である、請求項1又は2記載の前処理方法。
- 前記結晶性熱可塑性樹脂と前記良溶媒とを接触させる工程が、
前記熱可塑性樹脂と前記良溶媒とを接触させる処理を複数の前記熱可塑性樹脂組成物の試料に対して行い、複数の充填剤の試料を調製し、前記複数の充填材の試料中の結晶性熱可塑性樹脂組成物を定量した場合に、複数の測定結果の平均値と、各測定結果の値との差の絶対値が、いずれも複数の測定結果の平均値の10%以下となる条件で行われる、請求項1から3いずれか記載の前処理方法。
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CN115791885A (zh) * | 2022-11-25 | 2023-03-14 | 巨石集团有限公司 | 玻纤增强结晶性树脂复合材料中树脂含量的测定方法 |
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-
2009
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