JP4382259B2 - 熱可塑性樹脂ペレット組成物および射出成形によって得られる成形品 - Google Patents
熱可塑性樹脂ペレット組成物および射出成形によって得られる成形品 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂ペレット組成物および射出成形によって得られる成形品に関する。さらに詳しくは、繊維強化熱可塑性樹脂のペレット組成物、および難燃性熱可塑性樹脂のペレット組成物の2種類のペレット組成物を含む、剛性、耐衝撃性、面衝撃強度、加工性に優れた熱可塑性樹脂ペレット組成物、およびこのペレット組成物から射出成形によって得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS樹脂とポリカーボネート樹脂を混合してなる難燃化した樹脂成形材料は、OA機器、家電材料、パソコン筐体、PPC部品などに広く使用されている。特にノートブック型パソコンは、製品の薄型化が進んでおり、この製品の筐体に使用される材料にも薄肉であっても高剛性を発揮することが要求されている。薄肉でも高剛性を発揮させる方法としては、原料樹脂に炭素繊維など繊維状充填材を配合したものを使用する方法が提案されており、実用化されている。しかしながら、原料樹脂に繊維状の無機充填材を配合すると、得られる成形品は耐衝撃性、面衝撃強度などが低下するという問題が生じる。
【0003】
実用的な剛性を保持した上で、高耐衝撃性、高面衝撃強度を得るには、原料樹脂組成物中の繊維状充填材の残存繊維長を長くする方法が提案されている。熱可塑性樹脂組成物中の繊維状充填材の残存繊維長を長くするには、押出加工時(ペレット化工程)において、シリンダー温度を高くすることが効果的である。しかし、通常、熱可塑性樹脂組成物にはエラストマー、ゴム強化樹脂等の衝撃改良剤が配合されており、これらは熱安定性が乏しいので、シリンダー温度を高くすることができない。さらに、これらのエラストマー、ゴム強化樹脂を配合すると、ペレット化工程で組成物の粘度が高くなるので、配合組成物中の繊維状充填材が折れ易くなる問題がある。
【0004】
また、一方で、繊維状充填材の紡糸状繊維をそのまま混練りする長繊維を含んだ熱可塑性樹脂ペレットも提案されている。長繊維タイプの熱可塑性樹脂ペレットとは、繊維長がペレットの長さと同じものをいう。従って、長繊維タイプの熱可塑性樹脂ペレットを成形すると、剛性、衝撃強度に優れた成形品を得ることができる。しかし、これらの長繊維タイプの熱可塑性樹脂ペレットを得るには、特殊な加工機器が必要なためコスト高となる上に、繊維状充填材の繊維長が長いために射出成形時の加工性(特に、流動性)が劣るという問題がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を一挙に解消した技術を提供すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち本発明の目的は、射出成形時の加工性に優れ、かつ、剛性、耐衝撃性、面衝撃性などに優れた成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1発明では、下記のペレット(I)20〜80重量%とペレット(II)80〜20重量%[但し、(I)+(II)=100重量%]とを含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂ペレット組成物を提供する。
ペレット(I);
(A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂40〜80重量%と、(B)繊維状充填材60〜20重量%[但し、(A)+(B)=100重量%]からなる繊維状充填材配合の繊維強化熱可塑性樹脂のペレット組成物。
ペレット(II);
(C)ゴム状重合体(a)の割合が5〜70重量%、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、酸無水物系単量体およびマレイミド系化合物の群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(b)の割合が95〜30重量%であるゴム強化樹脂30〜60重量%、
(D)難燃剤9〜40重量%、
(E)難燃助剤1〜10重量%[但し、(C)+(D)+(E)=100重量%]からなる難燃性熱可塑性樹脂のペレット。
【0007】
さらに、本発明の第2発明では、下記のペレット(I)20〜80重量%とペレット(III)80〜20重量%[但し、(I)+(III)=100重量%]とを含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂ペレット組成物を提供する。
ペレット(I);
(A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂40〜80重量%と、(B)繊維状充填材60〜20重量%[但し、(A)+(B)=100重量%]からなる繊維状充填材配合の繊維強化熱可塑性樹脂のペレット組成物。
ペレット(III);
(A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂5〜30重量%と、
(C)ゴム状重合体(a)の割合が5〜70重量%、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、酸無水物系単量体およびマレイミド系化合物の群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(b)の割合が95〜30重量%であるゴム強化樹脂30〜60重量%、
(D)難燃剤9〜50重量%、
(E)難燃助剤1〜10重量%[但し、(A)+(C)+(D)+(E)=100重量%]からなる難燃性熱可塑性樹脂のペレット。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、繊維強化熱可塑性樹脂のペレット組成物{以下、これを単にペレット(I)と記載することがある}と、難燃性熱可塑性樹脂のペレット{以下、これを単にペレット(II)と記載することがある}との2種類のペレットよりなる。ペレット(I)は、(A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂40〜80重量%{以下、これを単に(A)成分と記載することがある}と、(B)繊維状充填材{以下、これを単に(B)成分と記載することがある}60〜20重量%[但し、(A)+(B)=100重量%]からなる。
【0009】
本発明において(A)成分を構成する芳香族ポリカーボネートとしては、種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの反応によって得られるもの(ホスゲン法)、またはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応によって得られるもの(エステル交換法)が挙げられる。代表的な芳香族ポリカーボネートとしては、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとホスゲンとの反応により得られる芳香族ポリカーボネートである。脂肪族系のポリカーボネートは、熱安定性が劣るので好ましくない。
【0010】
芳香族ポリカーボネートの原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、ヒドロキノン、レゾルシンなどが挙げられる。
【0011】
芳香族ポリカーボネートは、その重量平均分子量は15,000〜35,000の範囲のものが好ましくい。この範囲であると、成形加工性の優れる熱可塑性樹脂ペレット組成物が得られる。重量平均分子量のさらに好ましい範囲は17,000〜28,000であり、中でも特に好ましいのは18,000〜26,000である。
【0012】
(A)成分を構成する芳香族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸、エステルまたはそのエステル形成誘導体とジオールとを、従来から知られている縮合重合方法によって製造されるものが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アジピン酸およびセバシン酸、ならびにそれらのエステル形成誘導体が挙げられる。
【0013】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2〜6個の炭素原子を有するポリメチレングリコール、または、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノール−A、およびこれらのエステル形成誘導体が挙げられる。これらを組み合わせて得られる芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ビスフェノール−A−イソフタレートなどが挙げられ、中でもポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。
【0014】
芳香族ポリエステルは、その極限粘度(o−クロロフェノールを溶媒とし、25℃の温度で測定)が0.5〜1.4の範囲のものが好ましい。極限粘度が0.5より低いと、熱可塑性樹脂ペレット組成物の流動性が優れ、得られる成形の外観は好ましいものとなるが、耐衝撃性が劣る傾向になる。極限粘度の特に好ましい範囲は、0.6〜1.2である。
【0015】
(A)成分を構成するポリアミドとしては、特に限定されるものではなく、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、m−キリシレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの脂肪族、芳香族ジアミンとアジピン酸、スペリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、芳香族ジカルボン酸とから導かれるポリアミド、またはε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタムなどのラクタム類の開環重合によって得られるポリアミド、6−アミノカプロン酸、1,1−アミノウデカン酸、1,2−アミノドデカン酸などから導かれるポリアミドまたはこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドなどを挙げることができる。これらの中で工業的に安価でかつ多量に製造されているポリアミド−6、ポリアミド66、ポリアミド−12、ポリアミド−11、ポリアミド−10などが好ましい。
【0016】
ポリアミドの好ましい相対粘度(重合体1グラムを98%の硫酸100mlに溶解し、25℃の温度で測定)は、1.8〜6の範囲である。相対粘度がこの範囲にあると、耐衝撃性と成形加工性のバランスに優れた熱可塑性樹脂ペレット組成物が得られる。相対粘度のさらに好ましい範囲は、2〜5である。
【0017】
(A)成分を構成するのは、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上熱可塑性樹脂であるが、好ましい構成例としては、(1)芳香族ポリカーボネート単独、(2)芳香族ポリエステル単独、(3)ポリアミド(ポリアミド−6が好ましい)単独、(4)芳香族ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートとの混合物、などである。なお、芳香族ポリカーボネートとポリアミドとを混合すると、芳香族ポリカーボネートの分解が促進されるので好ましくない。また、ペレット(I)を上記(4)の構成とする場合には、リン酸2水素ナトリウム、リン酸1水素2ナトリウム等の無機リン化合物などをペレット(I)100重量部に対して0.1〜0.5部配合するのが好ましい。これらの無機リン化合物を配合すると、芳香族ポリカーボネートと芳香族エステルとのエステル交換反応による分解反応を抑制することができる。
【0018】
本発明において(B)成分は、繊維状充填材である。繊維状充填材としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、ガラス繊維などが挙げられる。これらはいずれも、細い直径の長繊維を複数本撚り、収束剤によって収束させて切断したチョップドストランドの形態のものが好ましい。チョップドストランドの長さは、2〜10mmの範囲が好ましく、特に好ましいのは4〜8mmである。
【0019】
PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリルを原料として焼成して得られるPAN系の炭素繊維である。好ましい炭素繊維径は5〜15μm、さらに好ましくは6〜10μmである。好ましい引っ張り弾性率は100〜700GPa、さらに好ましくは200〜500GPaである。ピッチ系炭素繊維はピッチを原料として紡糸し、熱処理して得られるピッチ系炭素繊維である。好ましい炭素繊維径は5〜15μm、さらに好ましくは8〜12μmである。好ましい引っ張り弾性率は10〜900GPa、さらに好ましくは30〜600GPaである。炭素繊維の集束剤の使用量は3〜9重量%程度である。
【0020】
ガラス繊維は、一般的なCガラスまたはEガラスを紡糸したものである。好ましいガラス繊維径は、7〜18μmの範囲であり、さらに好ましくは8〜15μm、特に好ましくは10〜13μmである。ガラス繊維用の集束剤の種類としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)系樹脂などが挙げられる。ガラス繊維を集束する場合、集束剤の好ましい使用量は0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0021】
(A)成分として芳香族ポリカーボネートを用いる場合には、(B)成分(繊維状充填材)は収束剤としてアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、AS系樹脂のものを使用した繊維状充填材が好ましい。(B)成分としてウレタン系樹脂の収束剤のものを用いると、芳香族ポリカーボネートが分解するので好ましくない。
【0022】
繊維強化熱可塑性樹脂{ペッレット(I)}に含まれる(B)成分の残存繊維長を長くするには、押出機でペレット化する際のシリンダー温度を高くすることが最も効果的である。好ましいシリンダー温度は、260〜310℃の温度範囲であり、さらに好ましくは270〜300℃である。ペッレット(I)には熱安定性の乏しいゴム強化樹脂、エラストマーなどを含有しないので、押出機でペレット化する際のシリンダー温度を高くすることができる。これにより、(B)成分が解繊して折れるのを防ぐことができる。押出機は2軸押出機が好ましく、2軸押出機のスクリューディメンジョンは、練りパーツが少ないものが好ましい。
【0023】
ペレット(I)を調製する好ましい方法としては、(1)2軸押出機によって(A)成分を溶融させ、押出機のシリンダーの先端(ダイス側)に近い位置で(B)成分をフィード(途中フィード)する方法、(2)(B)成分を2種以上用いる場合には、あらかじめ2種以上の(B)成分をタンブラーで混合し、押出機のシリンダーの先端(ダイス側)に近い位置で、途中フィードする方法、などが挙げられる。タンブラーで混合する場合の条件は、回転数1〜20回転/分で、混合時間は1〜3分間前後とするのが好ましい。回転数が速すぎても、ブレンド時間が長すぎても、(B)成分の解繊が生じ好ましくない。なお、炭素繊維のみをタンブラーで混合する際にポリエチレンワックス、硬化ひまし油などの滑剤を配合すると、混合時および2軸押出機でフィードする際の炭素繊維の解繊を防止することができ、好ましい。
【0024】
繊維強化熱可塑性樹脂{ペレット(I)}は、(A)成分を40〜80重量%、(B)成分を60〜20重量%とする[但し、(A)+(B)=100重量%]。(A)成分が80重量%を越える{即ち、(B)成分が20重量%未満である}と、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の剛性が劣り、一方、(A)成分の配合量が40重量%未満である{即ち、(B)成分の配合量が60重量%を越える}と、(B)成分のペレット(I)中での平均残存繊維長が短くなり、最終的に得られる熱可塑性樹脂ペレット組成物の剛性が小さくなり好ましくない。また、製品のペレット組成物から得られる成形品は、外観、耐衝撃性なども劣り、好ましくない。上記範囲の中でも(A)成分と(B)成分の好ましい配合割合は、(A)成分50〜70重量%、(B)成分30〜50重量%であり、特に好ましいのは、(A)成分55〜65重量%、(B)成分35〜45重量%である。
【0025】
難燃性熱可塑性樹脂のペレット{ペレット(II)}は、(C)ゴム強化樹脂{以下、これを単に(C)成分と記載することがある}、(D)難燃剤{以下、これを単に(D)成分と記載することがある}、(E)難燃助剤{以下、これを単に(E)成分と記載することがある}、さらに必要があれば前記した(B)成分と、(F)その他の樹脂添加剤とからなる。
【0026】
(C)成分のゴム強化樹脂は、ゴム状重合体(a)の割合が5〜70重量%、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、酸無水物系単量体およびマレイミド系化合物の群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(b)の割合が95〜30重量%のものをいう。(C)成分のゴム強化樹脂は、ゴム状重合体(a)の存在下、単量体成分(b)をグラフト重合することによって、容易に製造することができる。
【0027】
ゴム状重合体(a)としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、エチレン−ブテン−1−(非共役ジエン)共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、SEBSなどの水素添加ジエン系(ブロック、ランダム、およびホモ)重合体、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中で、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、水素添加ジエン系重合体、シリコーンゴム、アクリルゴムなどが好ましい。また、シリコーンゴムを用いる場合は、ビニル基を含有するグラフト交叉剤{例えば、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチレンメチルジメトキシシランなど}を、少量存在させて共縮合したポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0028】
また、ゴム状重合体(a)を用いる際、ゴムの平均粒径の異なる2種以上のグラフト重合体を組み合わせると、(C)成分は耐衝撃性などの物性に優れ、最終的に得られる熱可塑性樹脂ペレット組成物の耐衝撃性などの物性にも好ましい影響を与える。平均粒径の異なる2種以上のグラフト重合体を組み合わせる方法は、(1)平均粒径の異なる2種のゴム状重合体(a)の存在下で単量体成分(b)を重合して(C)成分を製造する方法、(2)平均粒径の異なる2種のゴム状重合体(a)に単量体成分(b)を重合した(C)成分を別々に製造し、2種の(C)成分を混合する方法、のいずれの方法であってもよい。粒径の異なるゴム状重合体を組み合わせる場合には、平均粒径が800〜1,800オングストロームの程度のものと、1,800〜4,800オングストロームの程度のものを組み合わせるのが好ましい。
【0029】
単量体成分(b)は、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、酸無水物系単量体およびマレイミド系化合物の群から選ばれた少なくとも1種の単量体である。単量体成分(b)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(b)成分の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、臭素化スチレンなどが挙げられる。これらの中でスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどが好ましい。シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルが挙げられ、中でもメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルが好ましい。
【0032】
酸無水物系単量体としては、無水マレイン酸が好ましい。マレイミド系単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられ、N−フェニルマレイミドが好ましい。特に、単量体(b)中にマレイミド系単量体を20〜80重量%共重合すると、(C)成分の耐熱性を向上させることができる。
【0033】
(C)成分の組成割合は、前記したとおり、(a)成分5〜70重量%、(b)成分95〜30重量%とする。(a)成分が5重量%未満であると、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の耐衝撃性が十分でなく、逆に(a)成分が70重量%を越えると、本発明に係るペレット組成物の成形加工性の低下や、このペレット組成物から得られる成形品の外観不良が生じ、好ましくない。(a)成分に対する(b)成分の特に好ましい組成割合は、(a)成分10〜55重量%、(b)成分90〜45重量%であり、中でも特に好ましいのは、(a)成分12〜40重量%、(b)成分88〜60重量%である[但し、(a)+(b)=100重量%]。
【0034】
ゴム強化樹脂(C){(C)成分}の好ましいグラフト率は、50〜150重量%の範囲である。グラフト率が50重量%未満であると、(C)成分の衝撃強度が十分でなく、(C)成分を含む本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から得られる成形品外観不良が生じ好ましくない。また、150重量%を越えると本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の成形加工性が劣る。グラフト率のさらに好ましい範囲は、60〜130重量%であり、中でも特に好ましいのは65〜120重量%である。なお、本発明でグラフト率とは、上記(C)成分1g中のゴム成分をx、(C)成分のメチルエチルケトン不溶分をyとして、次の計算式すなわち、グラフト率(%)=[(y−x)/x}×100、により算出される値をいう。
【0035】
また、(C)成分のマトリックス樹脂の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、0.1〜1.0dl/gの範囲が好ましい。極限粘度[η]がこの範囲であると、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の耐衝撃性と成形加工性(流動性)のバランスが優れたものとなり、好ましい。極限粘度[η]は、上記範囲の中でも0.3〜0.8dl/gが特に好ましい。
【0036】
(C)成分は、従来から知られている方法、例えば、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法などによって、容易に製造することができる。乳化重合法により製造した場合には、通常、乳化重合法によって重合した後に凝固剤によって凝固し、得られた重合体を水洗して乾燥することによって、粉末の形態の(C)成分を得ることができる。
【0037】
(C)成分は、一種類のグラフト重合体、2種以上のグラフト重合体を組み合わせた混合物、これらグラフト共重合体と単量体成分(b)のみを重合した重合体とを組み合わせた混合物、のいずれであってもよい。単量体成分(b)のみを重合した重合体としては、アクリロニトリル−スチレン重合体(好ましいアクリロニトリル含有量は20〜30重量%であり、さらに好ましくは22〜28重量%である)、スチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸メチル重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド重合体などが挙げられる。
【0038】
(C)成分の好ましい構成例としては、(1)ABS樹脂単独、(2)ABS樹脂とAS樹脂との混合物、(3)AES樹脂とAS樹脂との混合物、(4)シリコーンゴム強化樹脂とAS樹脂との混合物、などが挙げられる。(C)成分は、ここに例示した構成に限定されるものではない。
【0039】
ペレット(II)に含まれる(D)成分は、難燃剤である。難燃剤としては、臭素、塩素などのハロゲン系化合物、リン系難燃剤などが挙げられ、両者を併用して使用することもできる。最近、環境問題の観点から、従来主に使用されていた臭素系難燃剤に代わって、リン系難燃剤が使用されている。
【0040】
ハロゲン系化合物としては、テトラブロモビスフェノール−Aとエピクロルヒドリンなどとのオリゴマー(両末端または片側の末端のエポキシ基が、トリブロモフェノール、メタノール、エタノールなどで封止されていてもよい)、臭素化スチレンの重合体、後臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネートのオリゴマー、テトラブロモビスフェノール−A、デカブロモジフェニルエーテル、脂肪族塩素化合物、臭素化トリアジン(第一工業製薬製SR−245)などが挙げられる。中でも、テトラブロモビスフェノール−Aとエピクロルヒドリンなどとの反応によるオリゴマーが好ましい。このオリゴマーの好ましい分子量は800〜6,000であり、さらに好ましくは1,200〜3,500程度である。また、ハロゲン化合物の好ましい臭素含有量は40〜70重量%、さらに好ましくは45〜60重量%である。また、ハロゲン系化合物の好ましい軟化点(融点)は、70〜280℃であり、さらに好ましくは80〜200℃、特に好ましくは90〜150℃である。
【0041】
リン系難燃剤には、単分子型リン系難燃剤とオリゴマー型リン系難燃剤とが挙げられる。単分子型リン系難燃剤としては、トリフェニルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルチオフォスフェート等が挙げられる。オリゴマー型リン系難燃剤として、ハイドロキノンビス(ジフェニルフォスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシレニルフォスフェート)、トリフェニルフォスフェートのオリゴマー、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルフォスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジキシレニルフォスフェート)などが挙げられる。これらの中でも、トリフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニルフェスフェート)、トリフェニルフォスフェートのオリゴマー、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルフォスフェート)が好ましい。単分子型リン系難燃剤は、オリゴマー型リン系難燃剤よりも難燃性付与効果は優れているが、成形時に金型汚染の原因になる虞があり、この観点でオリゴマー型リン系難燃剤が好ましい。
【0042】
リン系難燃剤の好ましいリン含有量は4〜30重量%の範囲が好ましく、より好ましくは6〜25重量%である。リン系難燃剤は常温(23℃)で液体のものから、融点が140℃までのものが好ましく、常温液体のリン系難燃剤を押出機で溶融混練りする際には、押出機のシリンダーの途中でフィードすることが望ましい。途中でフィードする際には、リン系難燃剤をあらかじめ40〜70℃前後に加温してフィードすることが望ましい。常温固体のリン系難燃剤は、融点が45〜130℃のものが好適である。
【0043】
(D)成分の難燃剤は、(A)成分の熱可塑性樹脂の種類に応じて選定する必要がある。例えば、(A)成分が芳香族ポリカーボネートの場合には、(D)成分としては臭素系難燃剤、リン系難燃剤のいずれでも優れた難燃性が達成される。他方、(A)成分が芳香族ポリエステル、ポリアミドの場合には、(D)成分は臭素系難燃剤が好ましい。環境問題の観点からリン系難燃剤を選定した場合、リン系難燃剤単独では優れた難燃性は達成し難く、従来の技術ではリン系難燃剤として赤燐などを配合することによって優れた難燃性が達成される。しかしながら、赤燐を配合すると燃焼時のホスフィンガスの発生が懸念され、安全上の観点から好ましくない。また、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から得られる成形品は、外観色目が赤くなる傾向にあるので、熱可塑性樹脂ペレット組成物を使用する際に制約がある。
【0044】
環境問題の点から止むを得ずリン系難燃剤を選定する場合には、ノボラック樹脂などのフェノール樹脂を、ペレット(II)100重量部に対して5〜30重量部、好ましくは8〜25重量部配合すると、リン系難燃剤を配合した組成物でも優れた難燃性が達成得される。フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などが使用できるが、中でもノボラック型フェノール樹脂が好ましい。レゾール型フェノール樹脂を用いると、成形条件によってはこのレゾール樹脂が硬化して、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の衝撃強度、流動性を低下させる場合があるので、ノボラック型フェノール樹脂の使用が好ましい。
【0045】
ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、p−オクチルフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、p−シアノフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂などが好ましく、中でもフェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂が好ましい。フェノールの芳香環上には、例えばアルキル基などの置換基がないノボラック樹脂が特に好ましい。
【0046】
(D)成分としてリン系難燃剤とフェノール樹脂とを組み合わせた場合に、優れた難燃性が達成される機構としては、フェノールの芳香環上の架橋反応によって不燃膜(Char)が形成されるからであると推測される。従って、芳香環上に置換基があると、架橋反応を抑制するだけでなく、芳香環上の置換基が不燃焼成分となると推測される。
【0047】
レゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、反応性のメチロール基が3〜15重量%の範囲のものが好ましい。メチロール基の含有量が15重量%を越えると架橋反応が急速に起こり、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の衝撃強度、流動性を損なうので、好ましくない。
【0048】
フェノール樹脂の好ましい平均分子量は300〜10,000であり、さらに好ましくは400〜5,000である。1分子中のフェノールの数は、8〜20核体が好ましい。フェノール樹脂の好ましい軟化点は、70〜140℃の範囲である。軟化点が70℃未満であると、ペレットIIを製造する際にホッパーでの喰い込み不良が起き易い。140℃を越えると、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の成形加工性が劣る。フェノール樹脂の特に好ましい軟化点は、90〜120℃である。
【0049】
(E)成分は難燃助剤であり、具体例には三酸化アンチモン、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載することがある)などが挙げられる。三酸化アンチモンは、市販されているものが使用でき、好ましい平均粒径は5μm以下のものであり、更に好ましくは3μm以下のものである。PTFEは、成形品が燃焼する際のドリッピング(溶融液だれ)を防止するように機能する。PTFEは、分子量が50万以上のものが好ましく、特に百万以上のものが好ましい。
【0050】
PTFEは粉末状のものであり、粉末の平均粒径は90〜600μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは100〜500μm、特に好ましくは120〜400μmである。好ましい比重は1.5〜2.5、2.1〜2.3である。好ましい嵩密度は、0.5〜1.0g/mlであり、さらに好ましくは0.6〜0.9g/mlである。PTFEを配合すると、成形品燃焼時のドリッピングを防止できるので、より優れた難燃性を発揮することができる。PTFEは、水などの分散媒、または滑剤(ポリエチレンレンワックス、有機酸、ステアリル酸マグネシウム等の有機金属塩)に分散させたディスパージョン型として使用することができる。
【0051】
次に、難燃性熱可塑性樹脂のペレット(II)の配合割合について記載する。ペレット(II)は、(C)成分、(D)成分および(E)成分と、場合により(B)成分が配合されていてもよい。これら各成分の配合割合は、(C)成分30〜60重量%、(D)成分9〜40重量%、(E)成分1〜10重量%[但し、(C)+(D)+(E)=100重量%]とする。(C)成分が30重量%未満であると、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の衝撃強度が劣り、60重量%を越えると難燃性が劣る。(D)成分が9重量%未満であると難燃性が劣り、逆に、40重量%を越えると耐衝撃性が劣る。(E)成分が1重量%未満であると難燃性補助効果が小さく、逆に、10重量%を越えると加工性、耐衝撃性が劣る。
【0052】
難燃性熱可塑性樹脂のペレット(II)には、前記(B)成分を配合することができる。(B)成分は、繊維強化熱可塑性樹脂のペレット(I)に全量を配合することが好ましいが、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物[(I)+(II)=100重量部]中に占める(B)成分の配合量が30重量%を越える場合には、越える部分を(B)難燃性熱可塑性樹脂のペレット(II)に配合するのが好ましい。
【0053】
ペレット(II)を製造するには、(C)成分に(D)成分および(E)成分をタンブラーで混合し、混合物を押出機によって溶融混練し、場合によっては押出機のシリンダー途中で、(B)成分をフィードしてストランド状に押出し、切断して直径が2〜5mm、長さが3〜8mmの円柱状ペレットとする方法が好適である。しかし、この方法に限定されるものではなく、混合物を加熱ロール上で混練し、シート状とした後に切断して3〜5mm角の角状ペレットとする方法であってもよい。
【0054】
本発明の第1発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、繊維状充填材配合の繊維強化熱可塑性樹脂のペレット(I)20〜80重量%と、難燃性熱可塑性樹脂のペレット(II)80〜20重量%とを含有する[但し、(I)+(II)=100重量%]。ペレット(I)とペレット(II)とは、ドライブレンド物として、成形材料に供するのが好ましい。ペレット(I)の配合量が20重量部未満であると、熱可塑性樹脂ペレット組成物の剛性が小さくなり、逆に、80重量部を越えると成形加工性、衝撃強度が劣る。ペレット(I)とペレット(II)とをドライブレンドするには、タンブラー、ヘンシェルミキサーなどが使用できるが、タンブラーによるのが好ましい。
【0055】
本発明の第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、上記ペレット(I)と、難燃性熱可塑性樹脂のペレット(III){以下、単にペレット(III)と記載することがある}の2種類のペレットを含有する。
【0056】
ペレット(III)は、前記ペレット(II)を構成する(C)成分、(D)成分、(E)成分にさらに前記(A)成分を配合したものであり、場合により、前記(B)成分を配合することができる。ペレット(III)のこれら各成分の配合割合は、(A)成分5〜30重量%、(C)成分40〜90重量%、(D)成分9〜50重量%、(E)成分1〜10重量%、(B)成分0〜20重量とする[但し、(A)+(C)+(D)+(E)+(B)=100重量%]。
【0057】
(A)成分が5重量%未満であると、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の衝撃強度が劣り、30重量%を越えると成形加工性(特に、成形加工性)が劣る。(C)成分が40重量%未満であると衝撃強度が劣り、60重量%を越えると難燃性が劣る。(D)成分が9重量%未満であると難燃性が劣り、逆に、50重量%を越えると衝撃強度が劣る。(E)成分が1重量%未満であると難燃性補助効果が顕著でなく、逆に、10重量%を超えると、成形加工性、耐衝撃性などが劣る。(B)成分は20重量%を超えるとペレット中での残存繊維長が短くなり、剛性付与効果が顕著でなく、好ましくない。
【0058】
ペレット(III)における(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分および(B)成分の好ましい配合割合は、(A)成分10〜25重量%、(C)成分35〜55重量%、(D)成分15〜30重量%、(E)成分2〜8重量%、(B)成分3〜15重量%であり、さらに好ましくは、(A)成分15〜20重量%、(C)成分40〜50重量%、(D)成分17〜25重量%、(E)成分3〜7重量%、(D)成分5〜10重量%である[但し、(A)+(C)+(D)+(E)+(B)=100重量%]。
【0059】
ペレット(III)を製造するには、(A)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分をタンブラーで混合し、混合物を押出機で溶融混練し、押出機のシリンダー途中で、(B)成分をフィードしてストランド状に押出し、切断して直径が2〜5mm、長さが3〜8mmの円柱状ペレットとする方法が好適である。
【0060】
本発明の第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、繊維状充填材配合の繊維強化熱可塑性樹脂のペレット(I)20〜80重量%と、難燃性熱可塑性樹脂のペレット(III)80〜20重量%とを含有する[但し、(I)+(III)=100重量%]。ペレット(I)の配合量が20重量部未満であると剛性付与効果が小さく、逆に、80重量%を越えると成形加工性、衝撃強度が劣る。上記配合割合の中で、好ましい割合は、ペレット(I)30〜80重量%、ペレット(III)70〜20重量%であり、さらに好ましいのは、ペレット(I)40〜70重量%、ペレット(III)60〜30重量%であり、特に好ましいのは、ペレット(I)45〜65重量%、ペレット(III)55〜35重量%[但し、(I)+(III)=100重量%]である。
【0061】
本発明の第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、(B)成分の含有量は好ましくは10〜40重量%である。(B)成分がこの範囲にあると、ペレット組成物の成形加工性、このペレット組成物から得られる成形品の剛性、衝撃強度などのバランスに優れる。(B)成分のさらに好ましい範囲は、13〜30重量%である。
【0062】
上記の第1発明、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物には、さらに剛性を付与する目的で、従来から知られている他の充填材を配合することができる。他の充填材としては、ワラストナイト、タルク、マイカ、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ガラスビースなどが挙げられる。これらの無機充填材の中では、タルク(好ましい平均粒径0.5〜20μm)、マイカが好ましい。充填材の配合量は、熱可塑性樹脂ペレット組成物100重量部に対して、好ましくは5〜30重量部である。
【0063】
これらの無機充填材は、シランカップリング剤で表面を処理したものが好ましい。無機充填材をシランカップリング剤で処理する場合のカップリング剤の量は、0.1〜5重量%の範囲、好ましくは0.5〜3重量%とするのが好ましい。シランカップリング剤は、分子中にエポキシ基、アミノ基、ビニル基、ヒドロキシル基などの官能基を有する化合物が挙げられ、中でもエポキシ基、アミノ基を有する化合物が好ましい。
【0064】
上記の第1発明、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物には、従来から知られている耐候性改良剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、シリコーンオイルなどの各種樹脂添加剤を配合することができる。耐候性改良剤としては、リン系、硫黄系の有機化合物、水酸基、ビニル基を含有する有機化合物、紫外線吸収剤などが挙げられる。帯電防止剤としては、ポリエーテル、アルキル基を有するスルホン酸塩などが挙げられる。これらの添加剤の好ましい配合量は、熱可塑性樹脂ペレット組成物100重量部に対して、0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部である。
【0065】
上記の第1発明、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物には、これらペレット組成物の用途に応じて、さらに他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを配合することができる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルエステルアミドなどが挙げられる。これらの他の熱可塑性樹脂の配合量は、本発明の第1発明、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。
【0066】
本発明に係る第1発明、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から得られる成形品は、平均残存繊維長が0.10〜0.50mmと長く、従って(B)成分による補強効果が十分に発揮される。なお、成形品中の平均残存繊維長の測定法は、成形品をジクロロメタン(またはメチルエチルケトン、強酸、o−クロロフェノール)に溶解して、(B)成分のみを分離し、200〜500本抽出し、電子顕微鏡によって写真撮影し、この写真を画像処理により解析する方法によることができる。
【0067】
本発明の第1発明、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、射出成形によって各種成形品に製造することができる。上記成形法によって得られる成形品は、本発明の第1発明、第2発明に係るペレット組成物の優れた性質を利用して、OA製品、家電製品のハウジング、特にパソコン、DVD、CD−ROMの筐体、各種トレーなどの成形用材料として使用することができ、中でもパソコン筐体成形用材料に適している。さらに、本発明の第1発明、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から製造した成形品は、(B)成分として炭素繊維を使用した成形品は、優れた導電性(電磁波シール性)を発揮するので、ICトレー製造用としても適している。本発明に係るペレット組成物から製造した成形品には、レーザーマーキング方法によって、印字、マーキングすることができる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下に掲げる実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、部および%は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、以下の例において、各種の測定項目は次に記載の方法に従って測定した。
【0069】
(1)平均粒子径:分散粒子の平均粒子径は、あらかじめ乳化重合法で製造したゴム状重合体ラテックスの粒子径が、そのまま(C)成分中の分散粒子の粒子径を示すことを電子顕微鏡で確認した。このため、ゴム状重合体ラッテクス中の分散粒子の粒子径を光散乱法によって測定した。測定で使用した機器は大塚電子(株)製、LPA−3100であり、70回積算でキュムラント法に従った。今回使用したポリブタジエンラテックス中の平均粒径は、280nmであった。
(2)グラフト率(%):本文中に詳細を記載した方法によって算出した。
(3)極限粘度:溶媒であるメチルエチルケトンにサンプルを溶解し、30℃の温度条件下でウベローデ型粘度計を使用して測定した。
【0070】
(4)シャルピー耐衝撃強度(KJ/m2):ISOに準拠し、ノッチ付き試験片で測定した。
(5)熱変形温度(℃):JIS K7207に準拠して測定した。
(6)曲げモジュラス(MPa):JIS K7203に準拠して測定した。
(7)燃焼試験:厚さ1.0mm試験片につき、UL−94 Vテストに準拠して評価した。評価結果は、V−0基準に合格したものを「V−0」、合格しなかったものを「not
V」と判定した。
【0071】
(8)成形品外観:成形品の外観を目視観察し、繊維状充填材が成形品表面に表われず平滑性に優れているものを「○」と判定し、成形品表面に繊維状充填材などが表われ平滑性に劣るものを「×]と判定した。
(9)面衝撃強度:射出成形法で調製した10cm×10cm×2.4mmの試験片につき、デュポンインパクト測定装置を用いて、重さ200gの球を高さ10〜50cm範囲で、高さを5cmづつ変えて落下させて、試験片が割れた時の高さを記載した。割れた時の高さが30cm以上であると、面衝撃強度が優れているということができる。
(10)繊維の残存繊維長:本文中に詳細を記載した方法によって測定した。
【0072】
以下に記載の例において使用した、(A)成分ないし(E)成分、およびその他の添加剤は、次のとおりである。
【0073】
(A)成分:
A−1;芳香族ポリカーボネート(出光石油化学社製、商品名:タフロンFN2200、分子量:22,000)
A−2;芳香族ポリエステル(ポリプラスチックス社製、商品名:ジュラネックス101EP、IV値=0.50)
A−3;ポリアミド6(カネボウ社製、商品名:MC102)
【0074】
(B)成分:
B−1;PAN系炭素繊維(東邦レーヨン社製、商品名:HTA−C6、長さ約5mmのチョップドストランド)
B−2;ガラス繊維(日本板硝子社製、長さ約4mmのチョップドストランド)
【0075】
(C)成分:
C−1;ABS樹脂の調製
撹拌機、温度計、単量体連続添加装置を備えた容量7lのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5重量部、t−ドデシルメルカプタン0.1重量部、ポリブタジエンラテックス(a)40重量部(固形分換算)、スチレン15重量部およびアクリロニトリル5重量部を加え、撹拌しながら昇温した。フラスコ内温が45℃に達した時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1重量部、硫酸第1鉄0.003重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・2水和物0.2重量部、およびイオン交換水15重量部よりなる活性剤水溶液、ならびにジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.1重量部を添加し、1時間反応を続けた。
【0076】
その後、イオン交換水50重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、t−ドデシルメルカプタン0.1重量部、ジイソプロピルヒドロパーオキサイド0.2重量部、スチレン30重量部およびアクリロニトリル10重量部からなる単量体混合物を、45℃で3時間に亘って連続的に添加し重合反応を続けた。連続添加終了後、さらに撹拌下、同温度で1時間反応を続けた後、2,2−メチレン−ビス−(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、反応生成物をフラスコから取り出した。反応生成物のラテックスを硫酸で凝固し、良く水洗した後、反応生成物を75℃で24時間乾燥し、白色粉末を得た。重合添加率は97.2%、グラフト率は73%、極限粘度は0.41dl/gであった。
【0077】
C−2;乳化重合法によって製造した、スチレン/アクリロニトリル=75/25(重量%)のAS樹脂であって、極限粘度が0.47dl/gのもの。
【0078】
(D)成分:
D−1;レゾルシノールビス(ジキシンレニルフォスフェート)(大八化学社製、商品名:PX200)
D−2;ビスフェノール−Aビス(ジフェニルフォスフェート)(旭電化社製、商品名:FP600)
D−3;臭素化エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名:YDB−408)
【0079】
(E)成分:
E−1;テトラフルオロエチレン(ヘキスト社製、商品名:TF1620、平均粒径220μm、嵩密度0.85g/dl)
E−2;三酸化アンチモン
【0080】
(F)その他の添加剤:
無機リン化合物;リン酸2水素ナトリウム・2水和物
ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:PSM4326)
【0081】
[実施例1〜実施例2]
<ペレット(I)の調製>
(A)成分および(B)成分を、表−1に記載の割合で秤量した。(A)成分を2軸押出機を使用し、シリンダー温度を280〜300℃として混練し、(B)成分をシリンダーの途中に穿設された穴からフィードし、押出機先端に装着した口金から直径5mmのストランド状に押出し、長さ5mmの繊維強化熱可塑性樹脂のペレット(I)を調製した。
【0082】
<ペレット(II)の調製>
(C)成分、(D)成分、(E)成分および(B)成分を、表−1に記載の割合で秤量した。(A)成分、(C)成分、(D)成分のうちD−1および(E)成分をタンブラーでブレンドし、ブレンド物を押出機のシリンダー温度を220〜240度でとして混練した。(D)成分のうちD−2を50〜60℃前後に加温し、これと(B)成分とを、押出機シリンダーの途中でフィードし、押出機先端に装着した口金から直径5mmのストランド状に押出し、長さ5mmの繊維強化熱可塑性樹脂のペレット(II)を調製した。
【0083】
<熱可塑性樹脂ペレット組成物の調製、試験片の成形、評価試験>
ペレット(I)とペレット(II)とを、表−1に記載した割合で秤量し、タンブラーでドライブレンドしてペレット組成物の調製した。上記2種類のペレットのドライブレンド物を、射出成形機によって試験片を成形した。得られた試験片につき、上記(4)ないし(10)の項目につき、評価試験を行なった。評価結果を、表−1に示す。
【0084】
[比較例1〜比較例2]
ペレット(I)とペレット(II)とを、表−1に記載した割合で秤量し、タンブラーでドライブレンドしてペレット組成物の調製した。ドライブレンド物を、実施例におけると同様に、射出成形機によって試験片を成形した。得られた試験片につき、上記(4)ないし(10)の項目につき、評価試験を行なった。評価結果を、表−1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表−1より、次のことが明らかとなる。
(1)本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から得られる成形品は、いずれも優れた曲げモジュラスによって表わされる剛性、シャルピー耐衝撃強度および面衝撃強度によって表わされる耐衝撃性などが優れている(実施例1〜実施例2参照)。
(2)本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から得られる成形品は、表面外観にも優れている(実施例1〜実施例2参照)。
(3)これに対して、比較例1の組成物は、(D)成分の含有量が本発明で必須とする範囲を超えており、シャルピー耐衝撃強度、熱変形温度が劣る。
(7)比較例2の組成物は、ペレット(I)に占める(A)成分の配合量が、本発明で必須とする範囲未満であるので、シャルピー耐衝撃強度、面衝撃強度などが劣る。
【0087】
[実施例3〜実施例7]
<ペレット(I)の調製>
(A)成分および(B)成分を、表−2に記載の割合で秤量した。(A)成分を2軸押出機を使用し、シリンダー温度を280〜300℃として混練し、(B)成分をシリンダーの途中に穿設された穴からフィードし、押出機先端に装着した口金から直径5mmのストランド状に押出し、長さ5mmの繊維強化熱可塑性樹脂のペレット(I)を調製した。
【0088】
<ペレット(III)の調製>
(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分および(B)成分を、表−3に記載の割合で秤量した。(A)成分、(C)成分、(D)成分のうちD−1および(E)成分をタンブラーでブレンドし、ブレンド物を押出機のシリンダー温度を220〜240度でとして混練した。(D)成分のうちD−2を50〜60℃前後に加温し、これと(B)成分とを、押出機シリンダーの途中でフィードし、押出機先端に装着した口金から直径5mmのストランド状に押出し、長さ5mmの繊維強化熱可塑性樹脂のペレット(III)を調製した。
【0089】
<熱可塑性樹脂ペレット組成物の調製、試験片の成形、評価試験>
ペレット(I)とペレット(III)とを、表−2に記載した割合で秤量し、タンブラーでドライブレンドしてペレット組成物の調製した。上記2種類のペレットのドライブレンド物を、実施例1で使用したのと同じ射出成形機によって試験片を成形した。得られた試験片につき、上記(4)ないし(10)の項目につき、評価試験を行なった。評価結果を、表−2に示す。
【0090】
[比較例3〜比較例7]
ペレット(I)とペレット(III)とを、表−3に記載した割合で秤量し、タンブラーでドライブレンドしてペレット組成物の調製した。ドライブレンド物を、実施例におけると同様に、射出成形機によって試験片を成形した。得られた試験片につき、上記(4)ないし(10)の項目につき、評価試験を行なった。評価結果を、表−3に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
表−2および表−3より、次のことが明らかとなる。
(1)本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から得られる成形品は、いずれも優れた曲げモジュラスによって表わされる剛性、シャルピー耐衝撃強度および面衝撃強度によって表わされる耐衝撃性などが優れている(実施例3〜実施例7参照)。
(2)本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から得られる成形品は、表面外観にも優れている(実施例3〜実施例7参照)。
(3)本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、ペレット(III)に(A)成分のポリカーボネートを含有させた場合には、ハロゲン系難燃剤を含有させなくても、V−0の難燃性を達成することができる(実施例3、実施例7参照)。
(4)これに対して、比較例3の組成物は、射出成形後の配合組成は実施例3のものと同等であるが、繊維強化熱可塑性樹脂(I)のペレット(I)を含まず、剛性、シャルピー耐衝撃強度、面衝撃強度が、実施例3のこれら物性より大幅に劣る(実施例3、比較例3参照)。
【0094】
(5)また、比較例4のペレット組成物は、ペレット組成物中に占めるペレット(I)の配合量が、本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物の必須範囲を超えているので、難燃性において劣る。
(6)比較例5の組成物は、ペレット(I)に占める(B)成分の配合量が、本発明の必須範囲を超えているので、剛性、成形外観において劣る。
(7)比較例6の組成物は、ペレット(III)に占める(C)成分の配合量が、本発明の必須範囲を超えているので、剛性、難燃性において劣る。
(8)比較例7の組成物は、ペレット(III)に占める(D)成分の配合量が、本発明の必須範囲を超えているので、シャルピー耐衝撃強度、面衝撃強度などが劣る。
【0095】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明の第1発明および第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、剛性、耐衝撃性、面衝撃性、難燃性などと、加工性とのバランスに優れており、成形材料として有用である。
2.本発明の第1発明および第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、ペレット(I)とペレット(II)、または、ペレット(I)とペレット(III)とを組み合わせているので、繊維状充填材、難燃剤などをペレット組成物に好ましく含有させることができ、剛性、難燃性の優れた成形材料として有用である。
3.本発明の第1発明および第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、ペレット(II)とペレット(III)に、流動性と耐衝撃性に優れた(C)成分を含有しているので、成形品表面に表われる繊維状充填材を被覆するので、表面外観に美麗な成形品が得られる。
4.本発明の第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、ペレット(III)に(A)成分のポリカーボネートを含有させた場合には、ハロゲン系難燃剤を含有させなくても、V−0の難燃性を達成することができる。
5.本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、繊維状充填材としてチョップドストランド状の形態のものを使用した場合には、繊維状充填材がペレット化工程で解繊し難く、折れ難く、成形品中に含まれる繊維の残存繊維長が長く、成形品は優れた剛性、耐衝撃性を発揮する。
6.本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、繊維状充填材を押出機を使用して押出機のシリンダーに穿設した穴から途中フィードすると、繊維状充填材が折れ難く、成形品中に含まれる繊維の残存繊維長が長く、成形品は優れた剛性、耐衝撃性を発揮する。
7.本発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物は、繊維状充填材として炭素繊維を使用した場合には、成形品は導電性(電磁波シール性)を発揮するので、ICトレー製造用として適している。
成物の優れた性質を利用して、OA製品、家電製品のハウジング、特にパソコン、DVD、CD−ROMの筐体、各種トレーなどの成形用材料として使用することができ、中でもパソコン筐体成形用材料に適している。さらに、本発明の第1発明、第2発明に係る熱可塑性樹脂ペレット組成物から製造した成形品は、(B)成分として炭素繊維を使用した成形品は、優れた導電性(電磁波シール性)を発揮するので、ICトレー製造用としても適している。本発明に係るペレット組成物から製造した成形品には、レーザーマーキング方法によって、印字、マーキングすることができる。
Claims (6)
- 下記のペレット(I)20〜80重量%とペレット(II)80〜20重量%[但し、(I)+(II)=100重量%]とを含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂ペレット組成物。
ペレット(I);
(A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂40〜80重量%と、(B)繊維状充填材60〜20重量%[但し、(A)+(B)=100重量%]からなる繊維状充填材配合の繊維強化熱可塑性樹脂のペレット組成物。
ペレット(II);
(C)ゴム状重合体(a)の割合が5〜70重量%、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、酸無水物系単量体およびマレイミド系化合物の群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(b)の割合が95〜30重量%であるゴム強化樹脂30〜60重量%、
(D)難燃剤9〜40重量%、
(E)難燃助剤1〜10重量%[但し、(C)+(D)+(E)=100重量%]からなる難燃性熱可塑性樹脂のペレット。 - 下記のペレット(I)20〜80重量%とペレット(III)80〜20重量%[但し、(I)+(III)=100重量%]とを含有することを特徴とする、熱可塑性樹脂ペレット組成物。
ペレット(I);
(A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂40〜80重量%と、(B)繊維状充填材60〜20重量%[但し、(A)+(B)=100重量%]からなる繊維状充填材配合の繊維強化熱可塑性樹脂のペレット組成物。
ペレット(III);
(A)芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂5〜30重量%と、
(C)ゴム状重合体(a)の割合が5〜70重量%、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、酸無水物系単量体およびマレイミド系化合物の群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(b)の割合が95〜30重量%であるゴム強化樹脂30〜60重量%、
(D)難燃剤9〜50重量%、
(E)難燃助剤1〜10重量%[但し、(A)+(C)+(D)+(E)=100重量%]からなる難燃性熱可塑性樹脂のペレット。 - (B)成分がチョップドストランドである、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂ペレット組成物。
- (B)成分が、押出機シリンダーの途中でフィードされて繊維強化熱可塑性樹脂のペレット組成物とされたものである、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂ペレット組成物。
- (B)成分が炭素繊維である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレット組成物。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂ペレット組成物を原料とし、射出成形によって得られる成形品。
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