以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂
本発明に用いる(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂の他、アルキレンテレフタレートのコポリエステル、あるいはこれらのポリアルキレンテレフタレート樹脂の混合物などが挙げられる。
ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、ジオール成分とテレフタル酸からなる。ジオール成分としては、エチレングリコール、1、4ーブタンジオール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2ービス(2’−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
本発明に用いるポリアルキレンテレフタレート樹脂としては、具体的には例えば、ポリブチレンテレフタレート(以下にPBTと略記することがある。)、ポリエチレンテレフタレート(以下にPETと略記することがある。)、ポリトリメチレンテレフタレートなどが挙げられ、中でもPBT、PETが好ましい。
アルキレンテレフタレートのコポリエステルとしては、アルキレンテレフタレート構成単位を主構成単位とするコポリエステルであり、2種以上のジオール成分とテレフタル酸からなるコポリエステルや、ジオール成分、テレフタル酸およびテレフタル酸以外のジカルボン酸からなるコポリエステル等が挙げられる。共重合されるモノマーは、ポリアルキレンテレフタレートを構成するモノマーの内、25モル%以内であることが、本発明に用いるポリアルキレンテレフタレートの耐熱性の低下を抑制できるので好ましい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などが挙げられる。アルキレンテレフタレートのコポリエステルとしては、用いるジオール成分として上述のジオール成分を2種類以上共重合することにより得られる。
アルキレンテレフタレートのコポリエステルとしては、具体的には例えば、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。中でもイソフタル酸成分が25重量%以内のものが、耐熱性の低下を抑制できるので好ましい。
ポリアルキレンテレフタレート樹脂の混合物としては、具体的には例えば、PBTとPBT以外のポリアルキレンテレフタレートとの混合物、PBTとアルキレンテレフタレートのコポリエステルとの混合物などが挙げられる。中でもPBTとPETとの混合物、PBTとポリトリメチレンテレフタレートとの混合物、PBTとPBT/イソフタレートコポリマーとの混合物などが好ましい。
ポリアルキレンテレフタレート樹脂の混合物における、PBTと、PET等の他種のポリアルキレンテレフタレート樹脂との重量比は、100/0〜40/60であることが好ましく、中でも95/5〜65/45であることが好ましい。PBT以外のポリアルキレンテレフタレート樹脂等を含有することで表面性が改善される傾向にあり、逆にPBTが少なすぎると耐熱性が低下する傾向にある。尚、この様に耐熱性が低下する傾向は、溶融混練時や成形時の加熱条件下でのエステル交換反応に起因するので、必要に応じて有機リン酸エステル化合物などを配合すればよい。
本発明に用いるポリアルキレンテレフタレート樹脂の固有粘度〔η〕は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、低すぎると機械的強度が不十分となり、逆に大き過ぎても溶融成形時の流動性が低下し、また難燃性の確保が困難になると言う傾向にあるので、通常、0.5〜1.5である。尚、本発明における固有粘度は、フェノールとテトラクロクエタンの1:1(重量比)の溶媒中、30℃にて測定した値である。例えばポリアルキレンテレフタレート樹脂として用いるPBTの固有粘度は、0.6〜1.4であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.6〜1.0であることが好ましい。
本発明に用いるポリアルキレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、高過ぎると樹脂組成物ペレットブレンド物の溶融成形時にガスが発生しやすく、逆に低すぎても、過度に末端カルボキシル濃度の低いポリアルキレンテレフタレート樹脂は製造が困難であり、生産性が低下する傾向にあるので、通常、120μeq/g以下、中でも10〜80μeq/gであることが好ましい。
尚、末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mlにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解させ、水酸化ナトリウム0.01モル/lベンジルアルコール溶液を使用し、滴定により求めた値である。末端カルボキシル基濃度を調整する方法としては、従来公知の任意の方法によればよいが、例えば、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調節する方法の他に、末端封鎖剤を反応させる方法などが挙げられる。
(B)弾性重合体
本発明においては、耐衝撃性向上、例えば金属等をインサート成形した成形品の高・低温衝撃性(ヒートショック性)を改善する目的で、種々の弾性重合体、具体的には例えばオレフィン系エラストマーやアクリル系ゴム等を配合することが好ましい。
本発明に用いる(B) 弾性重合体としては、従来公知の各種エラストマー等、常温ではゴム状弾性をもつ固体であるが、加熱すると粘度が低下する為に、(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と溶融混合可能な性質を有する高分子物質であれば任意のものを使用できる。この様なものとしては例えば、各種熱可塑性エラストマーや、コアシェルポリマー等が挙げられる。熱可塑性樹エラストマーとしては、具体的には例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系、珪素系等の各種エラストマーが挙げられる。
オレフィン系エラストマーとして、エチレン及び/又はプロピレンを主成分とする共重合体を用いることが好ましい。具体的には例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体や、これらの変性物等が挙げられる。
この様な、官能基を有さないオレフィン系エラストマーに、各種官能基を導入することで、耐衝撃性が向上するので好ましい。官能基を導入する方法としては、従来公知の任意の方法から適宜選択して決定すればよい。具体的には例えば、オレフィン系エラストマーを不活性溶媒中または溶融状態にてハイドロパーオキサイド類、過酸類などのエポキシ化剤を用いてα,β−不飽和酸またはα,β−不飽和酸のグリシジルエステルと反応させる方法が挙げられる。ハイドロパーオキサイド類としては過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイド等が、また過酸類としては過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸などが挙げられる。
また官能基導入に際しては、適宜、触媒を用いてもよい。触媒としては、具体的には例えばエポキシ化剤として過酸を用いる場合には、炭酸ソーダなどのアルカリや硫酸等の酸を触媒として用いればよい。またハイドロパーオキサイド類の場合には、タングステン酸と苛性ソーダの混合物や、モリブデンヘキサカルボニルを用いればよい。
上記変性エラストマーの官能基当量は140〜3000g/molであることが好ましく、特に好ましくは 200〜2500g/molである。官能基当量が3000g/molを超えると、相溶性が十分でなく、相分離が起こりやすい。また140g/mol未満では、特にゲル化物などの副反応を重合体の単離中に起こしやすくなるので好ましくない。
本発明における(B)弾性重合体として用いるオレフィン系エラストマーとしては、中でもオレフィン系共重合体のグラフト重合体を用いることが好ましい。具体的には、(a−1)エチレン−不飽和カルボン酸共重合体や、そのアルキルエステル共重合体、又は(a−2)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを含むオレフィン系共重合体;と、(b)主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位で構成された重合体又は共重合体との一種又は二種以上;が、分岐又は架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体が、特に熱衝撃特性の改善に効果があり、好ましい。
(但し、Rは水素または低級アルキル基、Xは−COOH、−COOCH
3、−COOC
2H
5、−COOC
4H
9、−COOCH
2CH(C
2H
5)C
4H
9、−COOC
6H
5、−CNからなる群より選ばれる基を表す。)
(a−1) の具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、などの共重合体が挙げられ、さらにこれらの共重合体を併用してもよい。
そして(a−2)のオレフィン系共重合体を構成する一方のモノマーであるα−オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、ブテン−1等が挙げられ、中でもエチレンが好ましい。また(a−2)成分を構成するα,β−不飽和酸のグリシジルエステルとは、下記一般式(2)で示される化合物を表し、具体的には例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられ、中でもメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。
(a−2)の共重合体は、α−オレフィン(例えばエチレン)と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとを、従来公知の任意のラジカル重合反応により共重合することで得ることができる。(a−2)の共重合体においては、通常α−オレフィンが70〜99重量%、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルが30〜1重量%であることが好ましい。
これらのオレフィン系共重合体(a−1)や(a−2)と、グラフト重合させる(共)重合体(b)としては、例えば、先述の一般式(1)で示される繰り返し単位のうち、一種又は二種以上を任意の割合含む共重合体が挙げられる。具体的には例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸−2−エチルヘキシル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体等が挙げられる。中でもアクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体を用いることが好ましい。これらの重合体又は共重合体(b)も、対応する従来公知の、任意のビニル系モノマーのラジカル重合方法により得ることができる。
この様なグラフト共重合体の製造方法は、従来公知の任意の方法、例えば連鎖移動法、電離放射線照射法などを用いればよい。中でもグラフト効率が高く、熱による二次凝集が抑制され、得られるグラフト共重合体の性能が高い点等から、以下の方法が好ましい。即ち主鎖成分粒子中で(b)成分の単量体とラジカル(共)重合性有機過酸化物とを共重合させたグラフト化前駆体を溶融混練し、重合体同士をグラフト化反応する方法が好ましい。
グラフト共重合体における、(a−1)又は(a−2)と、(b)の割合は、適宜選択して決定すればよいが、通常、95:5〜5:95(重量比)であり、中でも80:20〜20:80であることが好ましい。
このグラフト共重合体は従来公知の任意の方法によって製造すればよく、具体的には例えば、連鎖移動法、電離放射線照射法など何れの方法によってもよい。中でも、グラフト化率が高く、熱による二次凝集抑制の為に、主鎖成分である(a−1)又は(a−2)の粒子中にて、(b)の単量体とラジカル(共)重合性有機過酸化物とを共重合せしめたグラフト化前駆体を溶融混練し、重合体同士をグラフト化する方法が好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、例えばスチレン等のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化、及び/又は水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとを含むブロック共重合体が挙げられる。ここでブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを含むブロック共重合体であり、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合比は5/95〜70/30、特に10/90〜60/40であることが好ましい。
ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第三級ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、1,1−ジフェニルスチレン等が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピレリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの併用が好ましい。
スチレン系エラストマーブロック共重合体の数平均分子量は、通常、5000〜600000、好ましくは10000〜500000であり、分子量分布[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)]は10以下である。またこのブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状のいずれでも、またこれらを任意の割合で含むものであってもよい。例えば、A−B−A、B−A−B−A、(A−B−)4Si、A−B−A−B−A等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体が挙げられる。更に、ブロック共重合体の共役ジエン化合物の不飽和結合は部分的に水素添加したものでもよい。
スチレン系エラストマーブロック共重合体の製造方法としては、上記した構造を有するものが得られるのであればどのような製造方法もとることができる。例えば、特公昭40−23798号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭56−28925号公報等に記載された方法により、リチウム触媒などを用いて不活性溶媒中でビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を製造することができる。更に特公昭42−8704号公報、特公昭43ー6636号公報、特公昭59−133203号公報等に記載の方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して、本発明に供する部分的に水添したブロック共重合体を製造することができる。
ポリエステル系エラストマーの例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートといった芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコールといったポリエーテル、またはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンといった脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ポリアミド系エラストマーの例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ウレタン系エラストマーの例としては、ハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合体が挙げられる。ハードセグメントとしては、具体的には例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとエチレングリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールとを反応させることによって得られるポリウレタンが挙げられる。
そしてソフトセグメントとしては、具体的には例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルもしくはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルが挙げられる。
珪素系エラストマーとしては、オルガノシロキサン単量体を重合させて製造されるもので、オルガノシロキサンとしては、例えばヘキサメチルトリシクロシロキサン、オクタメチルシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、トリメチルトリフェニルシロキサン、テトラメチルフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が用いられる。
本発明に用いる(B)弾性重合体であるコアシェルポリマーは、多層構造を有し、好ましくは平均粒径1μm以下のゴム層をガラス状の樹脂が包含したコアシェル型グラフト共重合体である。コアシェルポリマーのゴム層は、通常、平均粒径1μm以下であり、中でも0.2〜0.6μmであることが好ましい。ゴム層の平均粒径が1μmを越えると、耐衝撃特性の改善効果が不十分な場合がある。コアシェル型共重合体のゴム層としては珪素系、ジエン系エラストマー単独またはこの中から選ばれる2種以上のエラストマー成分系を共重合/グラフト共重合させたものを用いることができる。
コアシェルポリマーのシェル層は、通常、ビニル系重合体が用いられる。ビニル系重合体は例えば、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステル系単量体、及びアクリル酸エステル単量体の中から選ばれた少なくとも一種の単量体を重合あるいは共重合させて得られる。コアシェルポリマーのゴム層とシェル層は、グラフト共重合によって結合されている。
このグラフト共重合化の際、必要に応じて、ゴム層の重合時にシェル層と反応するグラフト交差剤を添加し、ゴム層に反応基を与えた後、シェル層を形成させてもよい。グラフト交差剤としては、シリコーン系ゴムでは、ビニル結合を有したオルガノシロキサンあるいはチオールを有したオルガノシロキサンが挙げられ、具体的には中でも、アクロキシシロキサン、メタクリロキシシロキサン、ビニルシロキサンが好ましい。
また本発明に用いる(B)成分は、変性剤としてエポキシ化合物を含有するか、予めこの様な変性剤によりエポキシ変性されていてもよい。エポキシ化合物は、単官能性、二官能性、三官能性または多官能性の何れでも、また、これらの2種類以上の混合物でもよい。特に、二官能性、三官能性、多官能性のエポキシ化合物、すなわち、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。また、エポキシ化合物は、アルコール、フェノール系化合物またはカルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応から得られるグリシジル化合物、脂環式エポキシ化合物などの何れでもよい。
エポキシ化合物の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル;
安息香酸グリシジルエステル、ソルビン酸グリシジルエステル等の脂肪酸グリシジルエステル;アジピン酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等の脂環式ジエポキシ化合物、N−グリシジルフタルイミド等のグリシジルイミド化合物などが挙げられる。
中でも、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応から得られるグリシジルエーテル化合物、特にビスフェノールAジグリシジルエーテルが好ましい。エポキシ当量や分子量は適宜選択して決定すればよいが、エポキシ当量が低すぎるとエポキシ基の量が多すぎて増粘する場合があり、逆に高すぎてもエポキシ基の量が少なくなり、ヒートショック性の向上効果が不十分となる。また分子量が大きすぎると、例えば(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂としてPBTを用いる際には相溶性が低下し、強度が低下する傾向にある。よってエポキシ当量は100〜500g/eq、分子量は2000以下であることが好ましい。
(B)弾性重合体の変性剤であるエポキシ化合物の配合量は、適宜選択して決定すればよいが、多すぎると架橋化が過度に進行し、成形時の流動性が低下する傾向にある。逆に少な過ぎても(B)弾性重合体の分散改善効果が不十分となる。よってその配合量は、例えば(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂としてPBTを用いる際には、PBT100重量部当たり、0.1〜20重量部であることが好ましく、中でも0.2〜15重量部であることが好ましい。
本発明に用いる(B)弾性重合体は、2種以上を併用することも可能である。また、弾性重合体の一部または全部に、エポキシ変性および/またはその誘導体の他に、種々の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体や、ビニル単量体をグラフト反応または共重合して得られる変性物も、好ましく使用することができる。この場合、グラフト反応または共重合されている不飽和カルボン酸および/またはその誘導体や、ビニル単量体の量は、(B)弾性重合体に対して0.05〜5重量%である。
グラフト反応あるいは共重合に用いる不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸等が挙げられる。また、それらの誘導体としては、アルキルエステル、グリシジルエステル、ジ−またトリ−アルコキシシリル基を有するエステル、酸無水物またはイミド等が挙げられ、これらの中で、グリシジルエステル、ジ−またトリ−アルコキシシリル基を有する不飽和カルボン酸エステル、酸無水物、イミドがより好ましい。
またビニル単量体の例としてはスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物を例示することができ、これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体あるいはビニル単量体は2種以上を併用してもよい。なお、これら不飽和カルボン酸またはその誘導体あるいはビニル単量体をグラフト反応させる方法については公知のラジカル開始剤による共重合化手法を用いることができる。
本発明に用いる(B)弾性重合体としては、上述した中でも、特に耐衝撃の観点から、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、エポキシ変性スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−α−オレフィン系共重合の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体による変性物が、好ましい。
本発明における(B)弾性重合体の含有量は、ペレット(a)においては(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂50〜100重量部に対して、0〜50重量部である。中でも、本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物において0〜25重量部であることが好ましい。
例えば(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂としてPBTを用いる際には、本発明のポリアルキレンテレフタレート(PBT)樹脂組成物ペレットブレンド物中における含有量は、1〜45重量%であり、衝撃性と流動性の観点から、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
(C)臭素系難燃剤
本発明に用いる(C)臭素系難燃剤としては、従来公知の任意のものから、適宜選択して決定すればよい。具体的には例えば、芳香族臭素化合物、臭素化ポリカーボネート樹脂、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ブロム化イミド等が挙げられる。
中でも、臭素化ポリカーボネート、グリシジル臭素化ビスフェノールA、またはペンタブロモベンジルポリアクリレートは、耐衝撃性に対する低下を阻害しない点で好ましい。
本発明における(C)臭素系難燃剤の含有量は、ペレット(b)において(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と(B)弾性重合体の合計100重量部に対して、10〜100重量部である。本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物においては、通常0.5〜23重量%であり、中でも4〜20重量%、特に3〜15重量%であることが好ましい。(C)難燃剤が0.5重量%未満では、十分な難燃性が得られにくく、23重量%を越えると物性、特に機械強度低下が抑制できる傾向がある。
(D)アンチモン化合物、硼酸亜鉛
本発明においては、難燃助剤として、(D)アンチモン化合物および硼酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種(以下、単に「(D)」と記す場合がある。)を含有させる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb2O3)、五酸化アンチモン(Sb2O5)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。臭素系難燃剤との相乗効果から、特に三酸化アンチモンが好ましい。尚、上述したアンチモン化合物と硼酸亜鉛を併用することで難燃性、比較トラッキング指数特性、絶縁性が改善される。
本発明における(D)であるアンチモン化合物、又は硼酸亜鉛の含有量は、その合計が、ペレット(b)において(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と(B)弾性重合体の合計100重量部に対して、5〜50重量部である。本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物においては、通常1〜15重量%である。中でも、本発明における(D)の含有量は、(C)臭素系難燃剤に対する重量比(D/C)が0.3〜1、中でも0.4〜0.8であることが好ましい。
本発明に用いる(C)臭素系難燃剤と、(D)アンチモン化合物および/または硼酸亜鉛、の含有量は、上記した範囲内において、各成分の長所と短所を勘案し、また最終樹脂成形体(樹脂製品)への要求性能に応じて適宜選択して決定すればよい。臭素系難燃剤およびアンチモン化合物はUL94規格による難燃性の向上効果があるが、含有量が多過ぎるとIEC60112規格による比較トラッキング指数(絶縁性)が低下する傾向にあり、また硼酸亜鉛はアンチモン化合物に比べると難燃性向上効果は低いが、比較トラッキング指数向上に顕著な効果があり、電気絶縁性の改良に寄与する。
(E)長繊維状強化材
本発明に用いる(E)長繊維状強化材とは、樹脂組成物(長繊維強化樹脂組成物ペレット(a))中の平均繊維長が2以上の長繊維状強化材である。その上限は特に制限はないが、通常、50mmである。この平均繊維長は、中でも2.2〜30mm、特に2.5〜25mmであることが好ましい。
尚、平均繊維長は例えば、本発明における樹脂組成物ペレット(長繊維強化樹脂組成物ペレット(a))を灰化後、任意の繊維300本以上を選択し、画像処理付き顕微鏡を用いて繊維長を測定し、繊維長の総和を測定繊維数で除した値として求めればよい。
また、本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物を溶融成形してなる樹脂成形体中での、長繊維状強化材の平均繊維長は、その樹脂成形体の用途に応じて適宜選択し決定すればよい。例えば射出成形などの方法により溶融成形する際には、繊維強化材は成形機内で折れるので、クリューやゲート径等を調節し、平均繊維長を調整すればよいが、通常0.1〜10mmである。
長繊維状強化材は、無機、有機、何れでもよい。無機繊維としてはガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、硼素繊維、窒化硼素繊維、チタン酸化カリ繊維、玄武岩繊維、金属繊維等が挙げられ、また有機繊維としては全芳香族ポリアミド繊維および全芳香族ポリエステル繊維等が挙げられる。
中でも、生産性という観点から無機繊維が好ましく、とりわけガラス繊維、炭素繊維が好ましく、特に入手が容易で経済性の高いガラス繊維が好ましい。本発明に用いる(E)長繊維状強化材は、その取扱い及び樹脂との密着性から、収束剤及び/又は表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
収束剤及び/又は表面処理剤としては、具体的には例えばエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等や、その他公知の集束材、表面処理剤を用いることができる。またこれらの使用量(付着量)は、長繊維状強化材重量の0.05重量%以上であることが好ましい。強化繊維はこれらの化合物により、あらかじめ表面処理又は収束処理を施して用いてもよいし、本発明の樹脂成形品に用いる樹脂組成物ペレット製造の際に、これら処理剤を同時に添加してもよい。
本発明における(E)長繊維状強化材の含有量は、ペレット(a)において(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と(B)弾性重合体の合計100重量部に対して、25〜250重量部である。本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物においては、通常、上述(A)〜(D)の各成分の合計量100重量部に対して、25〜150重量部である。中でも衝撃性と強度の観点から、25〜130重量部であることが好ましく、更には25〜100重量部であることが好ましい。
本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物は、上述した各成分を、それぞれ(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂30〜90重量部、好ましくは35〜88重量部、更に好ましくは40〜85重量部、(B)弾性重合体0〜25重量部、好ましくは5〜23重量部、更に好ましくは10〜20重量部、(C)臭素系難燃剤4〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、更に好ましくは7〜20重量部、(D)アンチモン化合物および硼酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種を1〜15重量部、好ましくは2〜13重量部、更に好ましくは5〜11重量部含有し、更にこれら(A)〜(D)成分の合計量100重量部に対して、上述の(E)長繊維状強化材を25〜150重量部含有するものである。
ペレット(a)、(b)の製造方法
本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物中のペレット(a)の製造方法は、特に制限はなく、従来公知の任意の方法を使用すればよい。具体的には例えば、長繊維状強化材マットの両側から溶融樹脂シートでプレスし、シートカッターでカットし、直方体粒状物を得る方法や、電線被覆の要領で長繊維状強化材ロービング表面に樹脂を被覆して得たストランドを切断する方法等が挙げられる。
中でも長繊維状強化材をペレットの長さ方向に効率よく平行に配列させることができ、繊維の分散も良好にすることができる点から、引抜き成形法により製造することが好ましい。引抜き成形は、従来公知の任意の方法を用いればよく、引抜き成形における強化繊維のロービング形状、プラー方法、強化繊維の予熱方法、開繊方法、熱可塑性樹脂への強化繊維の含浸方法、樹脂含浸後の賦形方法、冷却方法、カッティング方法等も、適宜選択して決定すればよい。
具体的な引抜き成形法としては、先ず(E)長繊維状強化材の連続した繊維を開繊して、(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂のエマルジョン、溶液又は溶融物である含浸液に浸漬させる。そして乾燥又は冷却して硬化させて切断し、長繊維強化樹脂組成物ペレット(a)を製造することができる。また(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂、(C)臭素系難燃剤、および(D)アンチモン化合物および硼酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種を含有させて難燃樹脂組成物ペレット(b)を製造し、上記ペレット(a)と混合することにより、本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物を製造することができる。
尚、(B)弾性重合体は、上述したペレット(a)とペレット(b)の製造時に他の原料と共に用いてもよく、または(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と(B)弾性重合体からなる耐衝撃樹脂組成物ペレットを別に製造して、ペレット(a)、(b)の製造時に混練機等に投入して含有させても良い。
ペレット(a)を製造する際の、ポリアルキレンテレフタレート樹脂の含浸液の温度は、通常240〜320℃であり、粘度と熱安定性の観点から、250〜310℃が好ましく、260〜300℃が更に好ましい。
また、難燃樹脂組成物ペレット(b)は、(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂、(C)臭素系難燃、(D)アンチモン化合物および硼酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種、および必要に応じて(B)弾性重合体を混合した後、単軸あるいは2軸押出機にて溶融、混練し、ペレット化すればよい。押出機のシリンダー温度は、通常230〜300℃であり、好ましくは240〜270℃である。
ペレット(a)とペレット(b)の混合比率は、上述した各成分の所定の含有量、すなわち(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂30〜90重量部、(B)弾性重合体0〜25重量部、(C)臭素系難燃剤4〜30重量部、(D)アンチモン化合物および硼酸亜鉛から選べられる少なくとも1種を1〜15重量部含有し、更にこれら(A)〜(D)成分の合計100重量部に対して、(E)長繊維状強化材を30〜150重量部含有するように混合すればよい。
また本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物におけるペレット(a)とペレット(b)との重量比(ペレット(a)/ペレット(b))は、各ペレットの分散性の観点から1〜12であり、中でも2〜10であることが好ましい。
本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物におけるペレットの形状は任意だが、通常ペレット(a)の平均長さは2〜50mm、中でも2.5〜30mm、特に3〜15mmであることが好ましく、ペレット(b)では、通常1〜15mm、中でも2〜13mmであることが好ましい。
またペレット(a)および(b)の平均径は、通常1〜6mmであり、好ましくは1.5〜5mmである。ここで平均径とは、ペレットの長軸方向に垂直な断面の短径と長径の平均値(各ペレットについて、長軸方向に垂直な断面の短径と長径を足して2で除した値を求め、任意に選択した100粒のペレットについての平均値をとった値)である。
本発明において、ペレット状とは、円柱状に限定されるものではなく、球状や板状でもよく、球状の場合は、球の直径が平均長および平均径に該当し、また板状の場合は、板の厚みが平均径に該当し、板の最長径が平均長に該当する。
本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物には、公知の他樹脂(芳香族ポリカーボネート樹脂等とのアロイ)を配合することができる。また顔料、染料、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤その他の周知のプラスチック用添加剤を、ペレット(a)またはペレット(b)に配合し混練することもできる。また、本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物ペレットブレンド物を溶融成形してなる樹脂成形体は、上述の樹脂組成物ペレットを射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形等の各種成形機に供給して、常法に従って成形することにより得ることができる。
成形品としては、種々の工業部品、例えば電気電子部品、建材、自動車内外装、自動車アンダーフード部品などの用途に利用でき、中でも高い衝撃性と難燃性を活かして、ブレーカー、OA機器ハウジング、電動工具部品などの電気電子部品に好適に利用することができ、特にブレーカーに好適に利用できる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。使用した原材料、樹脂組成物の製造法、および物性評価法は以下の通りである。
(A)PBT樹脂 三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバデュラン5007
(B)弾性重合体
(B−1)三菱化学社製 S502(不飽和カルボン酸をグラフト反応したエチレン−α−オレフィン系共重合体
(B−2)住友化学社製 ボンドファースト2C(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体)
(B−3)呉羽化学社製 パラロイドEXL2315(アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体
(B−4)ダイセル化学社製 エポフレンドA1010 エポキシ変性スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ESBS)
(C)臭素系難燃剤(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)ブロムケム社製 FR1025
(D−1)アンチモン化合物(三酸化アンチモン) 森六社製 MIC−3
(D−2)硼酸亜鉛 BORAX社製 FireBreak ZB
(E)長繊維状強化材
(E−1)日本電気硝子社製 長繊維状強化材(ロービングタイプガラス繊維、平均径17μm、アミノシラン処理剤およびノボラックエポキシ化合物で表面処理されたガラスロービング)
(E−2)日本電気硝子社製 短繊維強化材T187(チョップドストランドガラス繊維、平均径13μm、ストランド長3mm、アミノシラン処理剤およびノボラックエポキシ化合物で表面処理されたチョップドストランドガラス繊維)
[成形品の物性評価]
上述の方法で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂ブレンド物を、射出成形機(日本製鋼所製 型式J75ED)を使用し、シリンダー温度260℃で、各々の評価試験項目に応じた試験片を成形した。以下に各物性の評価法を示す。
平均繊維長:長繊維強化樹脂組成物ペレットを灰化後、任意の繊維300本以上を選択し、画像処理付顕微鏡を用いて繊維長を測定した。その繊維長の総和を測定繊維数で除した値を平均繊維長として求めた。
落錘衝撃試験(衝撃性):100mm×100mm×3mmの試験片を径75の穴の開いたサンプル台に取り付け、落錘(重さ2kg、先端R15mm)を落下させた。落錘が試験片を完全に貫通する場合に試験不合格とし、合格する最大高さを求めた。なお、同じ高さで3回合格した場合に、その高さに対して合格高さとした。高さ刻みは2.5cmである。
ノッチ付きシャルピー衝撃試験(衝撃性):ISO179に準じて測定した。
燃焼試験(難燃性):UL94(試験片厚み2mm)に準拠して、バーナー着火燃焼性試験を行った。またIEC60695−2−12に準拠して試験片厚み2mmのグローワイヤー試験(GWFI)を行った。
比較トラッキング指数(CTI:絶縁性):IEC60112に準拠して測定した。
(実施例1〜9)
(長繊維強化樹脂組成物ペレット(a)の製造法)
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)弾性重合体を、タンブラーミキサーにて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所製、形式TEX30C)によって、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量10kg/hrの条件下で溶融混練し、含浸樹脂(マトリックス樹脂)のペレットを得た。
このマトリックス樹脂ペレットを溶融温度270℃で溶融し、そしてガラス繊維ロービングを開繊しながら連続して引きながら、引取速度20cm/minで含浸させた後、賦形ダイを通してストランドとして引き抜き、水冷却後に切断して、ペレット(a)を製造した。
(難燃樹脂組成物ペレット(b)の製造法)
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(C)臭素系難燃剤および(D)アンチモン化合物をタンブラーにて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所製 形式TEX30C)を用い、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量10kg/hrの条件で溶融混練して得られたストランドを切断し、難燃樹脂組成物ペレット(b)を得た。
(ポリアルキレンテレフタレート樹脂ブレンド物の製造法)
各実施例に於いては、表1の組成になる様に、上述の方法により得られた繊維強化樹脂ペレット(a)と難燃樹脂組成物ペレット(b)とを混合してポリブチレンテレフタレート樹脂ブレンド物を製造した。またこのブレンド物を溶融成形して得られた樹脂成形体について物性の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1〜4、6〜8)
(短繊維強化樹脂組成物ペレット(c)の製造法)
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)弾性重合体を、タンブラーミキサーにて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所製、形式TEX30C)のホッパーより供給し、短繊維強化材(E−2)をサイドフィード口より供給した。シリンダー温度250℃、スクリュー回転数200rpmの条件で、溶融混練して、短繊維強化樹脂組成物ペレット(c)を得た。
(ポリアルキレンテレフタレート樹脂ブレンド物の製造法)
表2の組成になる様に、上述の方法により得られた繊維強化樹脂ペレット(c)と難燃樹脂組成物ペレット(b)とを混合してポリブチレンテレフタレート樹脂ブレンド物を製造した。またこのブレンド物を溶融成形して得られた樹脂成形体について物性の評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例5)[難燃剤を含んだ長繊維強化樹脂ペレットの製造法]
(A)、(B)、(C)および(D)のすべての成分をタンブラーにて混合し、二軸押出機により溶融混練して得た含浸樹脂(マトリックス樹脂)を用いて、ガラス繊維ロービングに含浸させた以外は、同様にして樹脂組成物の製造を試みた。その結果、ガラスロービンを含浸させる際に、含浸中に(C)臭素系難燃剤が分解し、含浸液中に気泡が発生し、また含浸液がこげるというトラブル現象が生じ、難燃剤を含んだ長繊維強化樹脂ペレットを得ることができなかった。
尚、表1、2における樹脂組成物を構成する各成分A〜Eにおいては、その樹脂組成物中に占める重量%と重量部の両方を、「重量%/重量部」として記した。また(E)ガラス繊維の欄においては、「重量%/A〜Dの合計100重量部に対する重量部」を示す。
表1および表2より次のことが明らかになる。実施例1と比較例5を比べると、長繊維強化樹脂組成物ペレット(a)と難燃樹脂組成物ペレット(b)のブレンド物である実施例1においては、生産性が優れ、衝撃性と難燃性が良好な成形品得られたことが判る。
長繊維ガラス繊維を使用した実施例1〜9と比較例1および4を比べると、(C)難燃剤を配合しても、衝撃性が低下することもなく、衝撃性と難燃性のいずれも良好な性能を有していることが判る。
比較例6、7と比較例2、3を比べると、短繊維のガラス繊維を使用した場合(比較例2、3)には、難燃剤を配合すると、衝撃性が低下し、また難燃性も不十分であることがわかる。
実施例1〜6と実施例7とを比べると、(B)弾性重合体を配合した場合には、衝撃性および絶縁性が向上することがわかる。硼酸亜鉛を配合した実施例8のCTIは、著しく向上していることがわかる。
本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物のブレンド物により得られる成形品は、UL94による難燃性が、試験片厚み2mmでV−0であり、且つIEC60112による比較トラッキング指数が250V以上の性能を示すという点でメリットがあり、ブレーカー等の高い難燃性が要求される電気電子部品に好適である。また、落錘衝撃試験による合格高さが65cm以上、特に80cm以上、またはISO179に準拠するノッチ付きシャルピー衝撃強度が20KJ/m2以上、特に30KJ/m2以上の性能を示す点でメリットがあり、ブレーカーハウジングなどのハウジング類にも有用である。