JP4472264B2 - 強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続したガラス繊維を押出機で溶融混練することにより得られるガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物及びその成形品に関する。更に詳しくは生産性が高く、強度・剛性、特に高温時の強度・剛性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物及びその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維強化ポリアミド樹脂は機械的特性および耐熱性に優れるという特徴を活かして様々な産業分野で利用されている。ポリアミド樹脂の強度を更に向上させる手段としてガラス繊維等の繊維状強化材を配合することが知られており、一般には、ポリアミド樹脂とチョップドストランド等の短繊維を押出機で混練する繊維強化ポリアミド樹脂の製造が行われている。例えば、更に機械的特性や振動疲労特性を改善する目的で、ポリアミドとガラス繊維界面に存在するグラフト化ポリアミドの量を高める提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では押出機での混練中に繊維の折損が避けられないため、高温時の強度・剛性に優れた機械的強度等の要求に応えることはできないばかりか、射出成形時の流動性が高く、成形機のノズルからの樹脂漏れが多くなるという課題がある。
【0003】
これに対し近年、配合される繊維状強化材が本来有する性能を充分に引き出すための方法として、ポリアミド樹脂の強化繊維を長くすることが検討されている。このような長繊維強化ポリアミド樹脂は、連続した強化繊維のロービングからストランドを引抜きながら樹脂を含浸するプルトルージョン法により、得られるものであり、上記短繊維強化ポリアミド樹脂と比較して高温下での機械的特性に優れているばかりでなく、成形時の成形機のノズルからの樹脂漏れも非常に少ない(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、このようなプルトルージョン法では、樹脂に含浸させながら連続した強化繊維のストランドを引抜いてペレタイジングするため、ペレット中の繊維長は一定であるが、生産性が悪く、かつ低粘度の樹脂でなければ繊維に十分含浸させることができないという欠点があるばかりか、成形品中の繊維の分散も不均一であるという課題がある。
また、開繊度合を制御して強化繊維を均一に分散させると共に、重量平均繊維長を長く保ったまま、混練作用によって特定の繊維長分布にする事によって、生産性、流動性、機械的性質や表面平滑性等を改善することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この特許文献3には、ガラス繊維の集束剤に関して、シランカップリング剤等の表面処理という記載しかなく、本発明のような無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体については何ら示されていない。また、製造方法も押出機のスクリュー及び/またはシリンダの内壁の一部に特殊な加工が必要であるため通常の押出機では製造が困難である。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−226949号公報
【特許文献2】
特公昭52−3985号公報
【特許文献3】
特開2001−192466号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生産性が高く、強度・剛性、特に高温時の強度・剛性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の集束剤によって表面処理を施された連続したガラス繊維からなるロービングを用いて、単軸または多軸のスクリュー式押出機により溶融混練された組成物が、ポリアミド樹脂とガラス繊維の界面にグラフトしたポリアミド層を形成せしめることで、生産性が高く、強度・剛性、特に高温時の強度・剛性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物及びその成形品を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は次のとおりである。
1.ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、ガラス繊維(B)成分10〜170重量部からなり、(A)成分と(B)成分との界面にグラフトしたポリアミドが(B)成分の0.1〜2.0重量%存在し、かつガラス繊維のアスペクト比が50〜2000である樹脂組成物の製造方法であって、ポリアミド樹脂と、表面が無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体およびアミノシラン系カップリング剤とを主成分とする集束剤で処理された平均直径5〜20μmの連続したガラス繊維のロービングを溶融混練することを特徴とするガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【0009】
2.(A)ポリアミド樹脂が、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)から選ばれる少なくとも1種及び/またはこれらの共重合体もしくはブレンド物であることを特徴とする上記1に記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【0010】
3.(B)連続したガラス繊維が、集束剤をガラス繊維100重量部に対して0.1〜2重量部付着していることを特徴とする上記1または2に記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【0011】
以下に本発明を詳しく説明する。本発明に係わる(A)ポリアミド樹脂としては、一般のポリアミドを用いることができる。例えば、ジアミンとジカルボン酸との縮合重合で得られるポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド6、ポリアミド12、ω−アミノカルボン酸の自己重縮合で得られるポリアミド11から選ばれた少なくとも1種、及び/またはこれらポリアミドの共重合体もしくはブレンド物などが挙げられる。上記ポリアミドの中で機械的特性、耐熱性、成形性および成形品外観の点でポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド6Iから選ばれる単独重合体、共重合体もしくはブレンド物が好ましい。
【0012】
本発明に用いる(B)ガラス繊維はポリアミド樹脂の補強剤として用いる連続した単繊維を集束したロービングであれば特に限定されるものではない。
また、ガラス繊維の平均繊維直径は、集束の点から5μm以上であり、機械的性質の点から20μm以下であり、好ましくは平均繊維直径8〜17μmが組成物の機械的性質の向上の観点から好ましい。この記載は不要です。繊維の集束本数は、繊維モノフィラメントを1000〜10000本集束したストランドがハンドリングの点から好ましい。
【0013】
また、ポリアミド樹脂中に含有するガラス繊維のアスペクト比は50より大きく2000以下であり、更に好ましくは60より大きいものである。
また、ここでいうガラス繊維のアスペクト比とはガラス繊維の重量平均長さを数平均繊維直径で除した値である。また、ポリアミド中に含有されるガラス繊維の直径はポリアミドと混合する以前の状態のガラス繊維原料の直径とほぼ等しい。ここで、ガラス繊維の重量平均長さとはガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を650℃電気炉内でポリアミド樹脂のみ燃焼させた後、光学顕微鏡下で観察し、画像解析装置を用いて、無作為に選んだガラス繊維400本の長さを測定した値から求められる。
【0014】
更に、ガラス繊維はポリアミド樹脂用の集束剤(これはいわゆるサイジングを目的とした集束成分とポリアミド樹脂との接着性を目的とした表面処理成分を含む)で表面処理されている。ここで用いる集束剤としては、無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体及びシラン系カップリング剤及び/またはアクリル酸系共重合体及び/またはウレタン系ポリマーを主たる構成成分とするものであるが、特に無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体とアミノ基含有シランカップリング剤を主たる構成成分とするものが機械的特性向上の観点から最も好ましい。
【0015】
集束剤を構成する無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体として具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体と無水マレイン酸との共重合体が挙げられ、その中でもブタジエン、スチレンと無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。更にこれら単量体は2種以上併用してもよいし、例えば、無水マレイン酸とブタジエン共重合体と無水マレイン酸とスチレンの共重合体を混合して使用する等のブレンドによって使用してもかまわない。上記無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体は平均分子量2,000以上であることが好ましい。また、無水マレイン酸と不飽和単量体との割合は特に制限されない。更に無水マレイン酸共重合体に加えてアクリル酸系共重合体やウレタン系ポリマーを併用して用いても何ら差し支えない。
【0016】
本発明の集束剤を構成するもう一つの成分であるシラン系カップリング剤としては通常ガラス繊維の表面処理に用いられるシラン系カップリング剤がいずれも使用できる。具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤が挙げられる。
【0017】
また、γ−メタクリロキプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルトリエトキシシラン等のメタクロキシシラン系カップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン系カップリング剤などが挙げられる。
【0018】
これらカップリング剤は2種以上併用して用いることもできる。これらの中で特にポリアミド樹脂との親和性からアミノシラン系カップリング剤が最も好ましく、その中でもγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシランが最も好ましい。上記無水マレイン酸共重合体とシラン系カップリング剤との使用割合は比較的良好な物性バランスを与える前者100重量部に対して後者0.01〜20重量部の割合が好ましい。通常、無水マレイン酸共重合体とシラン系カップリング剤は水溶媒中で混和して集束剤として用いられるが、更に必要に応じて界面活性剤、滑剤、柔軟剤、帯電防止剤などを加えても良い。
【0019】
集束剤はガラスを繊維状に加工する工程、あるいは加工された後の工程でガラス繊維表面に付着させて用いるが、これを乾燥させると、上記共重合体とカップリング剤からなる被膜がガラス繊維表面に形成される。この時の集束剤の乾燥後の最終付着量はガラス繊維100重量部当たりガラス繊維の集束性の点から0.1重量部以上であり、ガラス繊維の操作性の点から2重量部の範囲にあることが好ましい。より好ましい集束剤の付着量はガラス繊維100重量部当たり0.2〜1重量部の範囲である。ここで、集束剤付着量とはガラス繊維の60分間の灼熱後の強熱減量として計測されるものでありJIS R3420に準拠して求められる。
【0020】
本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物におけるガラス繊維の配合量は(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して(B)ガラス繊維は、機械的性質の面から10重量部以上であり、繊維の折損んなどの点から170重量部以下であり、好ましくは20〜150重量部である
本発明の(A)ポリアミド樹脂と(B)ガラス繊維の界面には集束剤で表面処理されたガラス繊維をポリアミド樹脂と溶融混練することによりグラフトしたポリアミドが形成される。このグラフトしたポリアミドは集束剤に含まれる酸無水物とポリアミドのアミノ末端基およびシランカップリング剤官能基とポリアミドのカルボニル末端基との反応による生成物と推定され、グラフトしたポリアミドが存在することによりポリアミド樹脂とガラス繊維の界面にせん断応力が加わった際の界面破壊を抑制するものと予想されるため機械的性質には重要な因子として挙げられる。
【0021】
本発明のポリアミド樹脂組成物中のポリアミドとガラス繊維の界面に存在するグラフトしたポリアミドとは、組成物をポリアミドの溶媒に浸しポリアミドを溶出させガラス繊維を析出させた際、溶媒中に溶出せずガラス繊維表面に残るポリアミドを主成分とする有機物層のことをいい、赤外吸収スペクトル、熱分解ガスクロマトグラフ分析からポリアミドの存在が確認できるものをいう。
具体的には、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂組成物を例に挙げて説明すると、まず、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂組成物中のガラス繊維とグラフトしていないポリアミド66を分離するためにフェノール中に溶解する。ポリアミド66−フェノール溶液部分を除去し、残ったガラス繊維部分を、ポリアミド66が溶出しなくなるまで数回フェノールで洗浄した後、フェノールを除去するためにエタノールで数回洗浄後、乾燥してエタノールを除去する。
【0022】
このようにして得られたものをここではグラフトガラス繊維と表し、グラフトガラス繊維を赤外吸収スペクトル、熱分解ガスクロマトグラフ/マススペクトル(以下、Py GC/MSという)で分析した結果から、主成分がポリアミド66であることを確認でき、これをグラフトしたポリアミドという。
本発明の組成物中のガラス繊維表面に存在するグラフトしたポリアミドの量は、上記具体例の様にして得られたガラス繊維をJIS R3420(強熱減量、Ig.Loss)に従って測定し、その重量減少量から求めることができる。
【0023】
また、グラフトしたポリアミドがガラス繊維全表面を被覆している割合は、グラフトガラス繊維をXPS(X線光電子分光:別名ESCA)にて表面元素の存在比を測定することにより求められる。
グラフトしたポリアミドの量は、ポリアミド中に含有されるガラス繊維を100重量部として0.1〜2重量部の範囲が好ましい。グラフトしたポリアミド量が0.1未満では機械的性質が改善されず、2重量部を越えると組成物の粘性が向上し成形加工性の悪化を招く。また、組成物中のグラフトしたポリアミドがガラス繊維の全表面を被覆する割合(以下被覆率と略す)は、機械的性質の面から50〜100%が好ましく、更に好ましい範囲は70〜100%である。
【0024】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、単軸または多軸のスクリュー式の押出機によって製造されるものであって、その内部に繊維の開繊度合や繊維長の制御機構部を含む押出機をいう。押出機としては、特に、最も一般的な二軸押出機が好ましく、同方向、異方向、噛み合い型、非噛み合い型、どのタイプでも良い。また、スクリューとしても、深溝や浅溝、1条、2条、3条ネジ等が利用できる。特に、スクリューの回転数によってガラス繊維の長さを一定に制御できるようなガラス繊維切断スクリューを用いるのが好ましい。
【0025】
例えば、二軸押出機を用いて、トップフィードより、所定量のポリアミド樹脂を供給し、当該ポリアミド樹脂が溶融状態に到達した時点で、連続したガラス繊維のロービングを、ガラス繊維供給管を通じて、スクリューフライトとシリンダ間のせん断力によって押出機に巻き込み、ガラス繊維切断スクリューを通過し、押出機先端に取り付けられた紡口でストランド上に成形した後、冷却し切断することで得られる。ここで言うポリアミド樹脂が溶融状態に到達した時点とは、当該ポリアミド樹脂をDSC(示差走査熱量計)を用いて昇温速度20℃/分で測定したときの吸熱ピーク温度(融点)プラス20℃の温度以上に溶融ポリアミド樹脂の温度が到達した時点を言う。なお、複数の混合ポリアミド樹脂を用いる場合は融点の最も高いポリアミド樹脂の融点プラス20℃の温度以上に到達した時点を当該混合ポリアミド樹脂が溶融状態に到達したものとする。また、ガラス繊維供給管とはガラス繊維のストランドを円滑に押出機内に供給するための管であって、押出機内に供給される前に複数のストランドが絡み合うのを防ぐことを目的とする。なお、特に管の材質は限定されるものではない。
【0026】
本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形等公知の成形加工に用いることができる。成形の際は、強化繊維の破損を押さえるため、ノズルやゲート形状を大きくし、深溝の成形機スクリューを使用することが好ましい。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の樹脂組成物には所望に応じて種々の添加剤、例えば銅化合物及びリン化合物等のポリアミド用熱安定剤、ヒンダードフェノール及びヒンダードアミン等の酸化劣化防止剤、マンガン化合物等の光安定剤、タルク、ボロンナイトライド等の核剤、炭酸カルシウム、ウオラストナイト、カオリン、焼成カオリン及びマイカ等のミネラルフィラー、カーボンブラック、酸化チタン、アジン系染料及びフタロシアニン系染料等の着色剤や、可塑剤、帯電防止剤、他の熱可塑性樹脂等を組成物製造の様々な工程で配合できる。
【0027】
本発明の成形品の用途としては、強度・剛性、特に高温時の強度・剛性が求められる自動車用部品が挙げられる。具体的にはシリンダーヘッドカバー、ラジエータータンク、タイヤ圧センサー、カーヒータータンク、ウォーターバルブ、ラジエーターパイプ、インテークマニホールド、エンジンマウント、フロントエンドモジュール、ドアモジュール、ペダル等に好適に使用される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
〔原材料〕
[1]ポリアミド樹脂
PA−1:ポリアミド66、旭化成製 レオナ1300−001
【0029】
[2]ガラス繊維
GF−1:ガラス繊維平均繊維直径10μm、ガラス繊維束(ロービング)、集束剤主要成分[ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.4重量%
GF−2:ガラス繊維平均直径13μm、ガラス繊維束(ロービング)、集束剤主要成分[スチレン−無水マレイン酸共重合体、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.6重量%
GF−3:ガラス繊維平均直径10μm、ガラス繊維束(ロービング)、集束剤なし。
GF−4:ガラス繊維平均繊維直径10μm、チョップドストランド、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分[ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.4重量%
【0030】
GF−5:ガラス繊維平均直径13μm、チョップドストランド、ガラス繊維平均長さ6mm、集束剤主要成分[スチレン−無水マレイン酸共重合体、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.6重量
GF−6:ガラス繊維平均直径10μm、チョップドストランド、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分[ウレタン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.4重量
GF−7:ガラス繊維平均直径10μm、チョップドストランド、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分[ウレタン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]、集束剤付着量0.05重量
【0031】
〔試験片の作成〕
曲げ試験片の作成
射出成形機(日精樹脂製:FN3000)を用い、金型温度80℃で、ISO3167に準じた多目的試験片A形を成形し、曲げ試験片に機械加工した。
【0032】
[測定方法]
(1)グラフトしたポリアミドの量及び被覆率
ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物5gを90%フェノール100mlと混合する(40℃、2時間撹拌)。静置することでガラス繊維部分を沈殿させ、上澄みのポリアミド−フェノール溶液を除去する。残ったガラス繊維部分に90%フェノール100mlを加えて更にガラス繊維部分を洗浄する(40℃、2時間撹拌)。これを静置しガラス繊維部分を沈殿させ上澄みの溶液を除去する。この操作を3回繰り返した後、99.5%エタノール100mlを加えてフェノールを取り除く(40℃、2時間撹拌)。これを静置しガラス繊維部分を沈殿させ上澄みの溶液を除去する。この操作を3回繰り返した後、エタノールを除去するために窒素フロー乾燥機で80℃、2昼夜乾燥する。このようにして得られたものをここではグラフトしたガラス繊維という。
【0033】
この様にして得られたグラフトしたガラス繊維を、JIS R3420に準じ、グラフトしたポリアミド量を以下のようにして求めた。グラフトしたガラス繊維を1g以上採りその質量を測定する。次に110±5℃で1時間以上乾燥した後、デシケーターに入れて室温まで放冷してその質量を測定する(m1)。これを625±20℃に保った電気炉で恒量になるまで(15分間)加熱した後、取り出し、デシケーターに入れて室温まで放冷してその質量を測定する(m2)。式1に従って強熱減量(重量部)を算出し、グラフトした量(W0重量部)を求める。
W0={(m1−m2)/m1}×100 式1
【0034】
(2)グラフトしたポリアミドの被覆率
上記(1)と同様の処理をして得られたグラフトしたガラス繊維を、以下の条件により測定した。XPS装置:VG社製 ESCALAB 200−X
励起源:MgKα 14kV×20mA
取込領域:1100〜0eV(Wide Scan)
取込領域:C1S、N1S、Si2P、O1S,Al2P,Ca2P(Narrow Scan)
Pass Energy:100eV(Wide Scan)
Pass Energy:20eV(Narrow Scan)
表面元素組成比の定量は、得られたNarrow Scanスペクトルの面積強度と装置ライブラリー中の相対感度係数(C1S:1.00、N1S:1.77、Si2P:0.87、O1S:2.85,Al2P:0.57,Ca2P:5.10)から、元素の存在比(atomic %)として求められる。
【0035】
上記(1)と同様の方法で得られたグラフトしたガラス繊維を用いて、XPS装置で測定される表面元素存在比から、次のようにして被覆率を求めた。XPS装置の試料台に、このグラフトしたガラス繊維を両面テープで固定して、上記条件で測定し、表面の各種元素の存在比を求めた。グラフトしたポリアミドのないガラス繊維(無垢のガラス繊維)では、アルミニウム(Al)の存在比が最大:Almax=6.9(atomic %)となる。
また、グラフトしたポリアミドで被覆されたガラス繊維(実施例及び比較例のガラス繊維)では、表面のアルミニウムの存在比:Al(atomic %)が減少する。この結果から、式2を用いて被覆率(%)を算出した。
【0036】
(3)ガラス繊維の重量平均長さ
ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物1g以上を650℃電気炉内でポリアミド樹脂のみ燃焼させた後、光学顕微鏡下で観察し、画像解析装置を用いて、無作為に選んだガラス繊維400本の長さを測定した値からガラス繊維の重量平均長さを求めた。
(4)曲げ弾性率、曲げ強度
23℃における曲げ試験は、ISO 178に準じて、試験片をオートグラフ(島津製作所製:AG−5000D形)で、周囲温度23℃、クロスヘッドスピード5mm/min、スパン64mmの条件下で測定を行った。
150℃における曲げ試験は、ISO 178に準じて、試験片をオートグラフ(島津製作所製:AG−5000D形)で、周囲温度150℃、クロスヘッドスピード5mm/min、スパン64mmの条件下で測定を行った。
【0037】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0038】
【実施例1〜4】
2軸押出機ZSK40MC(WERNER&PFLEIDERER製)を用いてシリンダ温度295℃でトップフィード口にポリアミド樹脂を供給、連続したガラス繊維を表1に示す組成で、ガラス繊維供給管を通じて、ガラス繊維投入口から溶融したポリアミド樹脂中に供給し、紡口より押し出されたストランドを冷却後、長さ8mm、直径5mmのペレット状に切断、乾燥して、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を上述の方法でシリンダ温度290℃の条件で成形し、評価した。その結果を表1に示す。
【0039】
【比較例1〜4】
2軸押出機TEM35BS(東芝機械(株)製)を用いてシリンダ温度295℃でトップフィード口にポリアミド樹脂を供給、サイドフィード口からチョップドストランドガラス繊維を表2に示す組成で、溶融したポリアミド樹脂中に供給し、紡口より押し出されたストランドを冷却後、長さ3mm、直径2mmのペレット状に切断、乾燥して、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は実施例と同様の方法で成形し、評価した。その結果を表2に示す。
【0040】
【比較例5】
ガラス繊維をGF−3とした以外は、実施例1〜4と同様の方法でガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得て、諸特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形品は、強度・剛性、特に高温時の強度・剛性に優れているため、高温時の機械的特性が要求されるシリンダーヘッドカバー、ラジエータータンク、タイヤ圧センサー、カーヒータータンク、ウォーターバルブ、ラジエーターパイプ、インテークマニホールド、エンジンマウント、フロントエンドモジュール、ドアモジュール、ペダル等の自動車用部品に好適に用いることができる。
Claims (3)
- ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、ガラス繊維(B)成分10〜170重量部からなり、(A)成分と(B)成分との界面にグラフトしたポリアミドが(B)成分の0.1〜2.0重量%存在し、かつガラス繊維のアスペクト比が50〜2000である樹脂組成物の製造方法であって、ポリアミド樹脂と、表面が無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体およびアミノシラン系カップリング剤とを主成分とする集束剤で処理された平均直径5〜20μmの連続したガラス繊維のロービングを溶融混練することを特徴とするガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- (A)ポリアミド樹脂が、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)から選ばれる少なくとも1種及び/またはこれらの共重合体もしくはブレンド物であることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- (B)連続したガラス繊維が、集束剤をガラス繊維100重量部に対して0.1〜2重量部付着していることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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