JP6893132B2 - 無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体 - Google Patents
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Description
本発明の課題は、自動車部品や小型精密部品等に好適な、機械的強度や外観に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供することである。
(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上である。
(C)非繊維状無機充填材は、数平均粒子径が10〜40μmであることが好ましい。
(C)非繊維状無機充填材は、酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されることがより好ましい。
まず、本発明で使用することのできる各成分について詳しく述べる。
「ポリアミド」とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。本発明で用いられるポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、(a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(b)ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(c)ジアミンおよびジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられる。ポリアミドは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。以下、本発明で用いられるポリアミド樹脂の原料について説明する。
上記(c)ポリアミドは、それぞれ1種単独または2種以上のジアミンおよびジカルボン酸を併用して縮合させたものであってもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維を含んでいてもよい。ガラス繊維および/または炭素繊維を含有することにより、優れた機械的強度、耐衝撃性、剛性が得られる。
ガラス繊維の繊維径は、偏平状の場合は、優れた機械的強度と外観、低反り性の観点から、平均短径が3〜15μmが好ましく、より好ましくは4〜10μmであり、さらに好ましくは5〜9μmである。
ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上のガラス繊維および/または炭素繊維を任意に選択し、SEM(走査型電子顕微鏡Scanning Electron Microscope)で観察して、これらの繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定する。併せて、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求める。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
特に、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
具体的には、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、集束剤をガラス繊維および炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによりガラス繊維および炭素繊維が得られる。
繊維ストランドはロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を行いチョップドガラスストランドとして使用してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(C)非繊維状無機充填材を含んでいる。非繊維状無機充填材を含有することにより、優れた機械的強度、外観と剛性が得られる。非繊維状無機充填材としては、球状、板状、棒状、針状、粒状、鱗片状の形状であることが好ましい。
非繊維状無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトが挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
S水蒸気とS窒素は、非繊維状無機充填材の原料となる鉱石によって異なるため、上記方法で分析することによって、非繊維状無機充填材を選定することが好ましい。
また、本発明で用いられる非繊維状無機充填材は、上記のように親水性が高いため、表面処理剤との親和性も高くなることから、表面処理による機械強度や耐衝撃性の向上効果がより一層発現する傾向にある。
酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤等を添加することもできるし、他の熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。
熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族および第IVb族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、耐熱エージング性向上の観点から、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上することができる。
特に、耐熱エージング性の向上という観点から、好ましくはヨウ化カリウムおよび臭化カリウム、並びにこれらの混合物であり、より好ましくはヨウ化カリウムである。
脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、飽和または不飽和の、直鎖状または分岐状の、脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、モンタン酸等が挙げられる。
アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカアミド等が挙げられる。特に、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、およびN−ステアリルエルカアミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミドおよびN−ステアリルエルカアミドがより好ましい。
脂肪酸と塩を形成する金属元素としては、元素周期律表の第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
金属元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;が好ましい。
これら脂肪酸金属塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このようにして得られる組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形により各種部品の成形体として成形できる。
(1)ポリアミド
(1−1)ポリアミド66(以下、PA−1と略記)
VN(硫酸):147ml/kg、アミノ末端基:50mmol/kg、
カルボン酸末端基:80mmol/kg
(1−2)ポリアミド6(以下、PA−2と略記)
VN(硫酸):125ml/kg、アミノ末端基:90mmol/kg、
カルボン酸末端基:30mmol/kg
(2−1)平均繊維径13μmのガラス繊維(以下、GF−1と略記)
(2−2)平均短径7μm、平均長径28μmの扁平形状断面のガラス繊維(以下、GF−2と略記)
(3−1)平均粒子径19.4μmのタルク(以下、T−1と略記)
窒素ガス吸着BET比表面積S窒素:3.3m2/g
水蒸気吸着BET比表面積S水蒸気:1.9m2/g
S水蒸気/S窒素:0.58
(3−2)平均粒子径17.8μmのタルク(以下、T−2と略記)
窒素ガス吸着BET比表面積S窒素:7.2m2/g
水蒸気吸着BET比表面積S水蒸気:2.5m2/g
S水蒸気/S窒素:0.35
モンタン酸ナトリウム[Licomont(登録商標)NaV101(クラリアントケミカルズ社製)](以下、WAXと略記)
以下に、評価方法について述べる。
<引張強度>
実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 3167、多目的試験片A型の成形片を成形した。得られた成形片を用いて、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/minで引張試験を行い、引張強度を測定した。
上記多目的試験片A型を切削して使用し、80mm×10mm×4mmの試験片を用いて、ISO 179/1eAに準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、金型温度を80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 294−3に従いタイプD1の金型を用いて、60mm×60mm×2mmの成形片を、射出時の充填時間を1秒、保圧5秒でそれぞれ成形し、目視で外観を判定した。10枚の成形片の両面(合計20面)を観察し、全ての面で充填材の浮きやシルバーストリーク等による白化部分が観察されないものをA、白化部分が観察される面の数が5つ以下のものをB、白化部分が観察される面が6つ以上のものをCとした。
タルク(T−1)3kgとγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−3と略記)を得た。
タルク(T−1)3kgとγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−4と略記)を得た。
タルク(T−2)3kgとγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−5と略記)を得た。
タルク(T−2)3kgとγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−6と略記)を得た。
タルク(T−1)3kgと3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−7と略記)を得た。
タルク(T−1)3kgと3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−8と略記)を得た。
タルク(T−2)3kgと3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−9と略記)を得た。
タルク(T−2)3kgと3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T−10と略記)を得た。
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口、9番目のバレルに下流側第2供給口、11番目のバレルに真空脱揮口を有した、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口からダイまでを300℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量25kg/hで、表1記載の割合となるように、上流側供給口よりポリアミド、滑剤を供給し、下流側第1供給口より無機充填材、下流側第2供給口よりガラス繊維を供給し、真空脱揮口より減圧して溶融混練し樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物を、樹脂温度290℃、金型温度80℃にて成形し、引張強度、シャルピー衝撃強度、外観を評価した。物性値を組成とともに表1に併記した。
Claims (6)
- (A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0〜150質量部、(C)非繊維状無機充填材10〜200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上である無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。 - 前記(C)非繊維状無機充填材の数平均粒子径が10〜40μmである、請求項1記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
- 前記(C)非繊維状無機充填材が、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理される、請求項1または2記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
- 前記(C)非繊維状無機充填材が、酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理される、請求項3に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
- 前記(A)ポリアミド樹脂が、ISO 307に準拠して質量分率96%の硫酸で測定される粘度数が80〜150ml/gである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
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