JP4677140B2 - グロープラグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジン予熱用のグロープラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記のようなグロープラグとして、筒状の主体金具の先端部内側に、棒状のセラミックヒータの先端部を突出させる形で配置したものが広く使用されている。セラミックヒータへの通電は、主体金具の後端部に設けられた金属軸(電源に接続される)と、該金属軸及びセラミックヒータを接続する金属リード部を介して行われる。従来のグロープラグにおいてセラミックヒータと金属リード部との接続は、例えば特開平10−205753号公報あるいは特開2000−356343号公報に開示されているように、金属リード部の先端部をコイル状に形成し、ヒータ端子が露出形成されたセラミックヒータの後端部をその内側に挿入して、両者をろう付けすることにより行われてきた。また、セラミックヒータの他方の端子を、金属リングを介して主体金具に接続し、グロープラグが取り付けられるエンジンブロックを介して接地する構造も多く採用されているが、この金属リングもまた、ろう付けによりセラミックヒータに接合されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ろう付けによる接合形態は、ろう材を挟み込む形で被接合材を組み立てる工程や、ろう材を溶融させる加熱工程など工数が多いため能率が悪い欠点がある。また、セラミックと金属リードあるいは金属リング等の金属部材の接合であるため、高価な活性ろう材を使用しなければならず、さらにろう付けのための加熱温度や雰囲気等も調整が微妙であり、前記した工数増大の問題とも相俟って製造コストの高騰につながりやすいという問題がある。そのため、特開2000−356343号公報には、セラミックヒータの接地側端子への金属リングの組み付けを焼き嵌めにより行う方法が開示されている。このように、焼き嵌め、冷し嵌め、圧入等の締め嵌めにより金属リングとセラミックヒータとを嵌合させると、上記工数の増大等の問題は解決することができるが、量産性向上あるいは信頼性向上等の課題がまだ残る。
【0004】
本発明の課題は、金属リング及びセラミックヒータの組付けが簡便であり、量産性及び信頼性の良好なグロープラグを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明のグロープラグは、
棒状の形態を有するとともに自身の先端部に抵抗発熱体が埋設されたセラミックヒータと、該セラミックヒータの外周面に締まり嵌め状態にて取り付けられた金属嵌合部材とを備えたグロープラグにおいて、
抵抗発熱体に通電するための導電性セラミックからなるヒータ端子が、セラミックヒータの外周面に露出形成され、金属嵌合部材とセラミックヒータとの間であって、該セラミックヒータと金属嵌合部材とが締まり嵌めによって当接する領域全体に、金属嵌合部材よりも軟質の金属層が形成され、金属嵌合部材によって金属層を介在させる形にてヒータ端子を覆うとともにこれと導通するようにしたことを特徴とする。
【0006】
本発明のグロープラグにおいては、金属リング等の金属嵌合部材とセラミックヒータとを嵌合することによって接合するようにしている。例えば、圧入により両者を嵌合する場合、両者を十分な緊束力で嵌合しようとすると、圧入前にセラミックヒータの外径と金属嵌合部材の内径との差(以下、締め代ともいう)を適切な範囲に調整する必要がある。しかしながら、十分な緊束力を得るための締め代の適切な範囲(管理幅)が狭いと、その範囲に該締め代を調整するのにより高い加工精度が要求されるため、大変手間がかかり生産性の低下につながる。従って、金属嵌合部材とセラミックヒータとを嵌合する場合には、締め代の管理幅はより広いほうがよい。
【0007】
一方、金属嵌合部材とセラミックヒータとを嵌合する場合、両者の緊束力が弱いと信頼性が低下する。そのため、製品の信頼性を確保するには、両者の緊束力を高めるのが重要となる。この緊束力を向上させるには、締め代をより多く確保することが有効である。しかしながら、締め代を過剰に取りすぎると、嵌合時に限界以上の緊束力が働いて、セラミックヒータに亀裂が生じたり、あるいは変形したり割れたりする問題がある。
【0008】
そこで、本発明者らは、金属嵌合部材とセラミックヒータとの嵌合位置において、それらの間に介在する形にて金属嵌合部材よりも軟質の金属層を形成することで、圧入荷重の低減を図ったり、緊束力を高めるために予め締め代を多めに取っている場合でも、セラミックヒータに生じる亀裂等の問題を抑制することができることを見出し、本発明の完成に至ったものである。これにより、セラミックヒータに亀裂、割れ等の不都合を生じさせることなく、金属嵌合部材とセラミックヒータとの緊束力を高めることができ、製品の信頼性を向上させることができる。また、ある程度多めの締め代を取ることができるので、締め代の管理幅の範囲が広くなり、生産性及び量産性を向上させる。なお、上記金属層は、嵌合前に予め金属嵌合部材側、またはセラミックヒータ側に形成することで実現できる。
【0009】
上記のような効果が得られるのは、金属嵌合部材とセラミックヒータとを嵌合する際に、金属層が比較的変形しやすいことに起因していると考えられる。つまり、締め代を多く確保することにより緊束力を高めることが可能であるが、金属層が変形することにより、セラミックヒータに割れ等の欠陥を生じさせるような過剰な緊束力が回避されるためであると考えられる。さらに、圧入等の嵌合方法を採用する場合は、金属嵌合部材の内周面とセラミックヒータの外周面との滑り摺動性が良好になり、圧入時にセラミックヒータに望まざる応力が働きにくくなるので、セラミックヒータの割れ等の欠陥が生じないものと考えられる。
【0010】
また、抵抗発熱体に通電するためのヒータ端子が、セラミックヒータの外周面に露出形成され、金属嵌合部材は、ヒータ端子を覆うとともにこれと導通する形態を採用できる。この場合、前述した金属層の形成により嵌合後の金属嵌合部材と、セラミックヒータの外周面に露出形成されているヒータ端子との接触抵抗が低減し、抵抗発熱体への通電を良好に行うことが可能となる。このように、金属嵌合部材とヒータ端子との接触抵抗が低減されるのは、両者の嵌合によって、両者がより一層高い緊束力を実現できるように(両者がより一層広い面積で接触するように)金属層が変形するためであると考えられる。つまり、より広い面積での両者の接触が可能となったために、金属嵌合部材とヒータ端子との間の接触抵抗が減少するものである。また、金属嵌合部材とヒータ端子との接触抵抗が低減されるのは、接触面に空気が入り込むことを防止し、接触面での酸化が防止されるためであると考えられる。なお、本明細書中において金属嵌合部材とヒータ端子との「接触抵抗」とは、金属嵌合部材がセラミックヒータに取り付けられている状態で、該金属嵌合部材を介して室温にて抵抗発熱体に通電するときの通電抵抗の測定値R1から、金属嵌合部材をセラミックヒータから取り外して、ヒータ端子をセラミックヒータの外周面に露出させ、該ヒータ端子から直接抵抗発熱体に通電するときの通電抵抗の測定値R2を引いた値(つまり、R1−R2)とする。
【0011】
なお、上記のような効果を得るためには、金属層のマイクロビッカース硬度をHv350以下とするのがよい。マイクロビッカース硬度は、DIN50359−1に準じて超微小硬度計にて測定し、得られたユニバーサル硬度Huをビッカース硬度Hv(ビッカース硬度も同義)に換算した値である。例えば、金属嵌合部材の内部を構成する内層部には、ビッカース硬度がHv170以上であるFe系合金を使用することが推奨される。従って、金属層としては、該金属嵌合部材の内層部よりもビッカース硬度が低いものを使用するのがよい。特に、顕著な効果を得るためには、上記範囲に設定するのがよい。一方、Hv350を超えると、本発明と同一の緊束力を実現しようとしても、セラミックヒータに割れ及びクラック等の欠陥が生じやすくなるため好ましくない。しかしながら、Hv3未満になると、金属層が軟らかすぎ、逆に緊束力が低下する懸念があるため好ましくない。なお、押込み荷重は、金属層の硬度、厚さ及び面粗さ等を考慮し、適宜最適な値に調整することができる。
【0012】
金属層の厚さは0.5〜10μmであるのがよい。これにより、更に本発明の効果を得ることができる。金属層の厚さが0.5μm未満では、金属層を形成しても、セラミックヒータに発生する割れあるいはクラック等の問題を十分に解決できない。また、金属嵌合部材をセラミックヒータに圧入するときの滑り摺動性や、接触抵抗等も良好なものが得られない。他方、10μmを超えるとセラミックヒータの割れ等を防止したり、滑り摺動性及び接触抵抗等を良好なものにする効果が飽和するとともに、製造コストの上昇を招くという問題がある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明のグロープラグの一例を、その内部構造とともに示すものである。また、図2は、その要部を拡大して示すものである。該グロープラグ50は、セラミックヒータ1とこれを保持する主体金具4とを有する。セラミックヒータ1は棒状の形態を有し、自身の先端部2に抵抗発熱体11が埋設されている。また、抵抗発熱体11に通電するための第一ヒータ端子12aが自身の後端部外周面に露出形成されている。第二端子リング3は筒状に形成され、セラミックヒータ1を、後端部及び先端部2をそれぞれ軸線O方向において突出させる形で自身の内側に保持している。主体金具4は、第二端子リング3に同軸的に結合される筒状に形成されている。
【0014】
次に、主体金具4の外周面には、図示しないエンジンブロックにグロープラグ50を固定するための、取付部としてのねじ部5が形成され、後端部には金属軸6が取り付けられている。該金属軸6は棒状の形態をなし、主体金具4の後端部内側に軸線O方向に挿入されるとともに、該軸線O方向において自身の先端面6fがセラミックヒータ1の後端面2rと対向する形で配置されている。他方、セラミックヒータ1の後端部外周面には、第一ヒータ端子12aと導通する第一端子リング14が、締まり嵌め状態にて該第一ヒータ端子12aを覆うように取り付けられている。そして、金属軸6と第一ヒータ端子12aとは、一端が第一端子リング14に結合され、他端が金属軸6に結合された金属リード部17により、電気的に接続されている。
【0015】
セラミックヒータ1の外周面には、軸線O方向において第一ヒータ端子12aよりも前方側に、抵抗発熱体11に通電するための第二ヒータ端子12bが露出形成されている。そして、該第二ヒータ端子12bを覆うとともにこれと導通する円筒状の第二端子リング3が、セラミックヒータ1の後端部を自身の後方側に突出させた状態にて、該セラミックヒータ1の外周面に締まり嵌め状態にて取り付けられている。そして、主体金具4は、円筒状のヒータ保持面4aにおいて該第二端子リング3の外周面に取り付けられている。
【0016】
金属嵌合部材としての第一及び第二端子リング14、3等を構成する素材としては、高温強度と、材料コストとのバランスを考慮して、一定以上の硬度及び耐熱性を有した、例えば、Fe系合金を使用するのが望ましい。特に、分解後締め代(金属嵌合部材とセラミックヒータ1とを分解した後の締め代)を高めて弾性緊束力を十分に確保するためには、ビッカース硬度(JIS−Z2244(1998)に規定の方法により荷重10Nにて測定した値)Hvが170以上(望ましくは350以上)のFe系合金の使用が推奨される。このようなFe系合金として、SUS630あるいはSUS631等の析出硬化系ステンレス鋼を好適に使用できる。例えばSUS630は、JIS−G4303(1988)に規定されたH900、H1025、H1075あるいはH1105のいずれかの熱処理により時効析出硬化させることができ、特にH900処理を行ったものはHv350以上を確保できる。他方、SUS631は同規格のTH1050あるいはRH950の熱処理により時効析出硬化させることができ、いずれもHv350以上を確保できる。また、硬度の点では若干劣るが、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼を使用することもできる。
【0017】
なお、より高い耐熱性を確保し、また、高温での緊束力低下をさらに抑制することが要求される場合には、鉄基超耐熱合金(例えばインコロイ909(インコ社の商品名))の時効硬化品、Ni基超耐熱合金(例えばワスパロイ(ユナイテッド テクノロジー社の商品名))の時効硬化品、あるいは非時効硬化型のNi基耐熱合金(インコネル625(インコ社の商品名))の加工硬化品等を使用することも可能である。ただし、これらの材質は高価であり、グロープラグの通常の使用環境であって、第一端子リング14の到達温度が50〜200℃、第二端子リング3の到達温度が500〜700℃程度までの範囲に留まる場合は、前記した析出硬化型ステンレス鋼など、Ni、Cr、Cu、NbあるいはAlなど、マトリックス固溶強化あるいは析出物形成のために添加する合金元素の合計含有量が、50質量%以下の範囲に制限されたFe系合金にて構成することが望ましい。ただし、これらの合計含有量は、高温強度あるいは耐食性確保の観点から、20質量%以上は添加されていることが望ましい。
【0018】
さらに、本発明においては、金属嵌合部材としての第一端子リング14、第二端子リング3の少なくとも一方に関し、それらリングの内側表層部は、上記したようなリング材料よりも軟質の金属層41とされている。図8は、金属嵌合部材としての第二端子リング3の軸断面を示すものである。図8に示すように、内周面41aからさらに第二端子リング3の内部に向かって、厚さw(μm)の金属層41が形成されている。なお、金属層41の厚さwは、0.5〜10μmとなっている。このような厚さの層を形成するには、たとえば、スパッタ法、メッキ法、真空蒸着法等の方法を好適に採用することができる。なお、このような金属層41はセラミックヒータ1に形成することもできる。すなわち、セラミックヒータ1と端子リングとを締まり嵌めにより組み付けてグロープラグを作製したあかつきに、端子リングと、セラミックヒータ1との間に端子リングよりも軟質の金属層41が形成されればよいのである。従って、各端子リングは、金属層41をセラミックヒータ1との間に介在させる形にて、前述した各ヒータ端子12a,12bを覆うとともにこれと導通するものとされる。
【0019】
さらに、端子リング14、3等の金属嵌合部材が前述のようなビッカース硬度の素材で構成されている場合、金属層41としては、上記規定のビッカース硬度がHv350以下であるものを使用するのがよい。さらに、これらのうちでもCu、Ag、Sn、Ni、Cr、Zn、Pb、Au、Pd、Co及びPtのうちいずれかを主成分とするものから構成されているものを好適に採用することができる。また、特にNiメッキあるいはCuメッキ等のメッキ層にて上記金属層41を形成するのがよい。メッキ層であれば、その形成も比較的に簡便であるとともに、コストの上昇を抑えることができる。なお、Niメッキ層は、メッキの形成方法によりその硬度が非常に変動し易く、所望の硬度のメッキ層を得るのに形成方法等をある程度精度よく制御する必要がある。そのため、どのようなメッキの形成方法であろうと、比較的軟質なものが得られるCuメッキ層を採用するのが、その生産性及びコスト等の観点からより望ましい。
【0020】
また、上記の金属層は一層のみ形成するようにしても良いし、複数層を形成するようにしてもよい。例えば、金属嵌合部材との密着性が悪い金属層を形成しようとした場合、まず、金属嵌合部材と比較的密着性のよい下地金属層を形成した後、所望の成分にてなる金属層を形成してもよい。例えば、金属嵌合部材の内周面上に薄いNiストライクメッキ層を形成した後、さらにCuメッキ層を形成するのが特に効果的である。なお、本実施形態においては端子リングの内周面に、電解メッキ法により金属層を形成したが、周知の無電解メッキ法、スパッタ法、蒸着法、印刷法、CVD法によりセラミックヒータ1側に金属層を形成しても全く同等の効果が見出せる。
【0021】
このような、金属層の形成により、金属嵌合部材としての第一端子リング14及び第二端子リング3をセラミックヒータ1に嵌合することによるヒータ端子12a,12bとの接触抵抗(前述にて規定)を、1000mΩ以下に抑えることができる。このように接触抵抗を低減することができれば、セラミックヒータ1と各端子リング14、3との間の発熱を抑制することができ、ひいては、使用状態における緊束力の低下を抑制する。または、(R1−R2)/R2×100≦20(%)を満足するようにしてもよい。
【0022】
例えば、金属嵌合部材を第二端子リング3としたときの該接触抵抗の測定方法は次のようにする。まず、図7(a)に示すように、グロープラグ50から第二端子リング3が取り付けられたままの状態のセラミックヒータ1を取り出す。このとき、第二ヒータ端子12bと第二端子リング3とは導通状態である。ついで、第二端子リング3と第一ヒータ端子12aとの間に電流を通電し抵抗を測定して、その測定値を分解前抵抗R1(Ω)とする。次に、図7(b)に示すように、嵌合している第二端子リング3をセラミックヒータ1から取り外して分解状態とする。そして、セラミックヒータ1の外周面に露出された第二ヒータ端子12bと第一ヒータ端子12aとの間の抵抗を測定し、分解後抵抗R2(Ω)とする。金属嵌合部材としての第二端子リング3と第二ヒータ端子12bとの接触抵抗は、R2−R1(Ω)として表す。また、第一端子リング14においても、同様の方法において、接触抵抗を測定することができる。なお、分解前抵抗は、第一端子リング14及び第二端子リング3とを取付けたままでの通電抵抗として、これに基づいて第一端子リング14及び第二端子リング3の両者に起因する接触抵抗を、本明細書中の接触抵抗としてもよい。
【0023】
また、本実施形態においては、図5に示すように、セラミックヒータ1から金属嵌合部材としての第一端子リング14あるいは第二端子リング3を取り外した分解状態において、それら端子リング14,3の内径をd1(d1’)、同じく該分解状態における第一ヒータ端子12a(第二ヒータ端子12b)の形成位置でのセラミックヒータ1の外径をd2(d2’)として、d2−d1(d2’−d1’)(以下、分解後締め代という:本明細書では、室温状態での値を意味する)が、8μm以上であって端子リング14,3の取付位置におけるセラミックヒータ1の外径の2%以下の範囲に調整されていることが望ましい。
【0024】
上記分解後締め代は、セラミックヒータ1から取り外したときのリング14,3の弾性復帰量、つまり、リング14,3によるセラミックヒータ1への弾性緊束力を反映したパラメータと見ることができる。該分解後締め代が8μm未満では、前記温度範囲にリング3あるいは4が昇温したとき、必要な緊束力が確保できなくなる。例えば、第一端子リング14においては第一ヒータ端子12aとの接触抵抗の増大が、第二端子リング3においては第一ヒータ端子12bとの接触抵抗の増大が、具体的な不具合として発生することにつながる。他方、分解後締め代が、第一端子リング14あるいは第二端子リング3の取付位置におけるセラミックヒータ1の外径の2%(例えば、該外径が3.5mmの場合、70μm)を超えるとセラミックヒータ1に過剰な緊束力が作用し、割れやクラック等の発生につながる場合がある。なお、各端子リング14,3の肉厚が小さい場合は、リング自体の塑性変形量が増加するため、分解後締め代を上記上限値以上に設定することが本質的に不可能な場合がある。なお、上記分解後締め代d2−d1あるいはd2’−d1’は、より望ましくは15〜40μmの範囲に調整するのがよい。また、同じ分解後締め代の値であっても、弾性緊束力の値を高める観点においてはリングの肉厚が大きい方がより有利である。
【0025】
次に、主体金具4と第二端子リング3との組み付け形態については、例えば両者の内外周面の隙間を充填する形でろう付けするか、あるいは主体金具4の先端側開口内縁と第二端子リング3の外周面とを全周レーザー溶接する形で固定するようにしてもよいが、本実施形態では、主体金具4もヒータ保持面4aにおいて、第二端子リング3の外周面に締まり嵌め状態にて取り付けるようにしている。これにより、グロープラグ50の組立て工程を一層簡略化することができる。また、主体金具4の第二端子リング3に対する嵌合面(ヒータ保持面4a)が軸線O方向において、第二端子リング3とセラミックヒータ1との嵌合面と重なる形となるので、セラミックヒータ1に対する第二端子リング3の緊束力に主体金具4の緊束力が重畳され、第二端子リング3とセラミックヒータ1との嵌合の気密性を一層高めることができる。
【0026】
セラミックヒータ1への各端子リング14,3の組み付けは、例えば図4に示すように、個々の端子リング14あるいは3をセラミックヒータ1に対し、端部から軸線方向に挿入しつつ圧入する方法で組み付けることができる。なお、圧入に代えて焼き嵌めを用いてもよい。このうち、第一端子リング14については、第一ヒータ端子12aとの導通が確保できる程度の緊束力が得られればよい。他方、第二端子リング3については、第二ヒータ端子12bとの導通確保に加え、嵌合面における気密性を確保する必要があることから、第一端子リング14よりは強い緊束力が求められる。いずれも、室温ではもちろん、各部に熱膨張が生ずるセラミックヒータ1の温度上昇時においても、必要十分な緊束力が確保されていることが重要である。一般に、セラミックと金属を比較した場合、インバーなどの特殊な合金を除けば、金属のほうが線膨張係数が高く、端子リング14,3は昇温時には緊束力が緩みやすくなる傾向にある。
【0027】
図2に示すように、金属リード部17は、金属軸6と第一端子リング14との間で屈曲した形で配置されている。これにより、セラミックヒータ1の発熱により加熱/冷却サイクルが加わった場合でも、金属リード部17は、その屈曲部分で膨張/収縮を吸収することができ、ひいては金属リード部17と第一端子リング14との接合部に過度の応力が集中して接触不良や断線等の不具合が生ずることを防止できる。他方、金属リード部17と金属軸6との接合を容易にかつ強固に行なうために、金属リード部17の金属軸6との接合端部が金属軸6の外周面先端部に対し、平面状の接合面をもって結合されている。例えば、金属リード部17と金属軸6とを抵抗溶接により接合する場合、接合面を平面状としておくことは、抵抗溶接時の加圧力を均等に付加し、欠陥の少ない溶接部を形成する上でも有利となる。
【0028】
他方、金属リード部17と第一端子リング14との接合は、第一端子リング14をセラミックヒータ1に圧入等により組み付ける際に邪魔とならないように、先に第一端子リング14をセラミックヒータ1に組み付けておいてから、その組み付けられた第一端子リング14の例えば外周面に金属リード部17の末端部を接合することが望ましい。この場合、その接合方法としては、抵抗溶接やろう付けが採用可能である。
【0029】
次に、セラミックヒータ1は、絶縁性セラミックからなるセラミック基体13中に抵抗発熱体11が埋設された棒状のセラミックヒータ素子として構成されている。本実施形態においては、セラミックヒータ1は、絶縁性セラミックからなるセラミック基体13中に導電性セラミックからなるセラミック抵抗体10が埋設されたものとして構成されている。セラミック抵抗体10は、セラミックヒータ1の先端部に配置される第一導電性セラミックからなり、抵抗発熱体として機能する第一抵抗体部分11と、各々該第一抵抗体部分11の後方側において、セラミックヒータ1の軸線O方向に延伸する形で配置され、先端部が第一抵抗体部分11の通電方向における両端部にそれぞれ接合されるとともに、第一導電性セラミックよりも抵抗率が低い第二導電性セラミックからなる1対の第二抵抗体部分12,12とを有する。そして、セラミック抵抗体10の1対の第二抵抗体部分12,12には、それぞれ軸線O方向における互いに異なる位置に分岐部が形成され、それら分岐部の、セラミックヒータ1の表面への露出部が、それぞれ第一ヒータ端子12a及び第二ヒータ端子12bを形成してなる。
【0030】
なお、抵抗発熱体11への通電は、例えば図6に示すように、セラミック基体13中に埋設されるW等の高融点金属線材からなる埋設リード線18,19を介して行なうこともできる。この場合、第一ヒータ端子は埋設リード線18の、また第二ヒータ端子は埋設リード線19の、各露出部18a及び19aとして形成される。なお、この場合においても、第一端子リング14及び第二端子リング3とセラミックヒータ1との間の接触抵抗は、本発明の範囲内となっている。
【0031】
次に、セラミック基体13を構成する絶縁性セラミックとして、本実施形態では窒化珪素質セラミックが採用されている。窒化珪素質セラミックの組織は、窒化珪素(Si3N4)を主成分とする主相粒子が、後述の焼結助剤成分等に由来した粒界相により結合された形態のものである。なお、主相は、SiあるいはNの一部が、AlあるいはOで置換されたもの、さらには、相中にLi、Ca、Mg、Y等の金属原子が固溶したものであってもよい。
【0032】
窒化珪素質セラミックには、周期律表の3A、4A、5A、3B(例えばAl)及び4B(例えばSi)の各族の元素群及びMgから選ばれる少なくとも1種を前記のカチオン元素として、焼結体全体における含有量にて、酸化物換算で1〜10質量%含有させることができる。これら成分は主に酸化物の形で添加され、焼結体中においては、主に酸化物あるいはシリケートなどの複合酸化物の形態にて含有される。焼結助剤成分が1質量%未満では緻密な焼結体が得にくくなり、10質量%を超えると強度や靭性あるいは耐熱性の不足を招く。焼結助剤成分の含有量は、望ましくは2〜8質量%とするのがよい。焼結助剤成分として希土類成分を使用する場合、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを用いることができる。これらのうちでもTb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybは、粒界相の結晶化を促進し、高温強度を向上させる効果があるので好適に使用できる。
【0033】
次に、セラミック抵抗体10を構成する第一抵抗体部分11及び第二抵抗体部分12,12は、前記した通り電気抵抗率の異なる導電性セラミックにて構成されている。両導電性セラミックの電気抵抗率を互いに異なるものとする方法は特に限定されず、例えば、
▲1▼同種の導電性セラミック相を用いつつ、その含有量を互いに異ならせる方法;
▲2▼電気抵抗率の異なる異種の導電性セラミック相を採用する方法;
▲3▼▲1▼と▲2▼の組合せによる方法;
等、種々例示できるが、本実施形態では▲1▼の方法を採用している。
【0034】
導電性セラミック相としては、例えば、炭化タングステン(WC)、二珪化モリブデン(MoSi2)及び二珪化タングステン(WSi2)等、周知のものを採用できる。本実施形態ではWCを採用している。なお、セラミック基体13との線膨張係数差を縮小して耐熱衝撃性を高めるために、セラミック基体13の主成分となる絶縁性セラミック相、ここでは窒化珪素質セラミック相を配合することができる。従って、絶縁性セラミック相と導電性セラミック相との含有比率を変化させることにより、抵抗体部分を構成する導電性セラミックの電気抵抗率を所望の値に調整することができる。
【0035】
具体的には、抵抗発熱部をなす第一抵抗体部分11の材質である第一導電性セラミックは、導電性セラミック相の含有率を10〜25体積%、残部を絶縁性セラミック相とするのがよい。導電性セラミック相の含有率が25体積%を超えると、導電率が高くなりすぎて十分な発熱量が期待できなくなり、10体積%未満になると逆に導電率が低くなりすぎ、同様に発熱量が十分に確保できなくなる。
【0036】
他方、第二抵抗体部分12,12は、その第一抵抗体部分11に対する導通経路となるものであり、その材質である第二導電性セラミックは導電性セラミック相の含有率を15〜30体積%、残部を絶縁性セラミック相とするのがよい。導電性セラミック相の含有率が30体積%を超えると焼成による緻密化が困難となり、強度不足を招きやすくなるほか、エンジン予熱のために通常使用される温度域に到達しても電気抵抗率の上昇が不十分となり、電流密度を安定化させるための自己飽和機能が実現できなくなる場合がある。他方、15体積%未満では第二抵抗体部分12,12での発熱が大きくなりすぎて、第一抵抗体部分11の発熱効率が悪化することにつながる。本実施形態では、第一導電性セラミック中のWCの含有率を16体積%(55質量%)、第二導電性セラミック中のWCの含有率を20体積%(70質量%)としている(残部いずれも窒化珪素質セラミック(焼結助剤含む)。
【0037】
本実施形態においてセラミック抵抗体10は、第一抵抗体部分11がU字形状をなし、そのU字底部がセラミックヒータ1の先端側に位置するように配置され、第二抵抗体部分12,12は、該U字形状の第一抵抗体部分11の両端部からそれぞれ軸線O方向に沿って後方に延伸する、互いに略平行な棒状部とされている。
【0038】
セラミック抵抗体10において第一抵抗体部分11は、動作時に最も高温となるべき先端部11aに対して電流を集中するために、該先端部11aを両端部11b、11bよりも細径としている。そして、第二抵抗体部分12,12との接合面15は、その先端部11aよりも径大となった両端部11b、11bに形成されている。
【0039】
なお、図6のように、埋設リード線18,19をセラミック中に配置する構造では、高温下でヒータ駆動用の電圧を印加したときに、埋設リード線18,19を構成する金属原子が、その電界勾配による電気化学的な駆動力を受けてセラミック側に強制拡散する、いわゆるエレクトロマイグレーション効果によって消耗し、断線等を生じやすくなる場合がある。しかし、図2の構成では埋設リード線が廃止されていることから、上記エレクトロマイグレーション効果の影響を本質的に受けにくい利点がある。
【0040】
次に、図1に示すように、主体金具4の後端部内側には、前述の通り、セラミックヒータ1に電力を供給するための金属軸6が主体金具4と絶縁状態にて配置されている。本実施形態では、金属軸6の後端側外周面と主体金具4の内周面との間にセラミックリング31を配置し、その後方側にガラス充填層32を形成して固定する形としている。なお、セラミックリング31の外周面には、径大部の形でリング側係合部31aが形成され、主体金具4の内周面後端寄りに、周方向段部の形で形成された金具側係合部4eに係合することで、軸線方向前方側への抜け止めがなされている。また、金属軸6のガラス充填層32と接触する外周面部分には、ローレット加工等による凹凸が施されている(図では網掛けを描いた領域)。さらに、金属軸6の後端部は主体金具4の後方に延出し、その延出部に絶縁ブッシュ8を介して端子金具7がはめ込まれている。該端子金具7は、周方向の加締め部9により、金属軸6の外周面に対して導通状態で固定されている。
【0041】
グロープラグ50は、主体金具4の取付部5において、セラミックヒータ1の先端部2が燃焼室内に位置するようにディーゼルエンジンに取り付けられる。そして、端子金具7を電源に接続することで、金属軸6→金属リード17→第一端子リング14→セラミックヒータ1→第二端子リング3→主体金具4→(エンジンブロックを介して接地)の順序で電流が流れ、セラミックヒータ1の先端部2が発熱して、燃焼室内の予熱を行なうことができる。
【0042】
以下、グロープラグ50の製造方法について説明する。
まず、図3に示すように、セラミック抵抗体10となるべき抵抗体粉末成形部34を、射出成形により作成する。また、セラミック基体13を形成するための原料粉末を予め金型プレス成形することにより、上下別体に形成された基体成形体としての分割予備成形体36,37を用意しておく。これら分割予備成形体36,37には、上記抵抗体粉末成形部34に対応した形状の凹部37a(分割予備成形体36側の凹部は図面に表れていない)をその合わせ面に形成しておき、ここに抵抗体粉末成形部34を収容して分割予備成形体36,37を上記合わせ面において嵌め合わせ、さらにプレス・圧縮することにより、図3(b)に示すように、これらが一体化された複合成形体39を作る。
【0043】
こうして得られた複合成形体39を脱バインダ処理後、ホットプレス等により1700℃以上、例えば約1800℃前後で焼成することにより、焼成体とし、さらに外周面を円筒状に研磨にすればセラミックヒータ1が得られる。そして、図4に示すように、該セラミックヒータ1に第一端子リング14及び第二端子リング3を例えば圧入により締まり嵌め嵌合させ、さらに金属リード部17及び主体金具4などの必要な部品を組み付ければ、図1に示すグロープラグ50が完成する。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行なった実験結果について説明する。
まず、図1に示す形態のセラミックヒータ1を、上記説明した方法により作製した。ただし、セラミックヒータ1の長さは40mm、外径は3.5mmであり、第二抵抗体部分12,12の太さは1mm、さらに第一ヒータ端子12a及び第二ヒータ端子12bは、各々直径0.8mmの円状領域とした。以後、記載の実施例においてセラミックヒータ1はすべて上記のものを使用した。
【0045】
(実施例1)
前述したSUS630(H900時効硬化処理品:Hv=約400)を用いて第二端子リング3を作製した。第二端子リング3は肉厚が0.85mm、軸線O方向への長さが20mm、内径d1i’が3.20〜3.45μmとなる種々のものを用意した。次いで、セラミックヒータ1と嵌合する第二端子リング3の内側に、周知の全塩化物浴を使用してNiストライクメッキ層を形成した後、さらに硫酸塩浴を使用してCuメッキ層を形成し、厚さ3.2μm、ビッカース硬度Hv=210の金属層41とした。金属層41(メッキ層)のビッカース硬度については、DIN50359−1に規定の方法に準じて超微小硬度計(Fischer社製フィッシャースコープH−100)を用い、30mNの荷重にて測定した。該硬度計にて得られたユニバーサル硬度Huを、変換パラメータHplastを用いてビッカース硬度への変換を行っている(以後の実施例においても同様)。
【0046】
このようにして作製した第二端子リング3を治具で固定し、セラミックヒータ1の所定位置に圧入により組み付けた。圧入時において、各リングの内面には潤滑剤(パスキンM30(商品名:共栄社化学(株))を適量塗布し、圧入後に300℃にて該潤滑剤の分解処理を行なっている。また、圧入時に必要とされたセラミックヒータ1に懸かる荷重も測定した。なお、比較例として、第二端子リング3に金属層を形成しないものを同様方法により作製し、同様の方法にてセラミックヒータ1を圧入嵌合させた。
【0047】
そして、上記圧入操作によってセラミックヒータ1に割れあるいはクラック等の欠陥が発生していないか評価した。評価の方法は以下の通りである。すなわち、セラミックヒータ1の全体で全く割れ及びクラック等の欠陥が生じていないものは優(◎)、クラックが生じていたもの及びセラミックヒータが割れてしまったのは不可(×)として評価した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004677140
【0049】
第二端子リング3に、金属層41(メッキ層)を形成した本発明品である実施例においては、素子折れが生じた比較例と同一の寸法であっても割れを生じさせることなくスムーズに圧入できた。
【0050】
(実施例2)
次に、セラミックヒータ1に、周知の蒸着法及びスパッタ法により金属層41としてのCuメッキ層(実施例2−1)、Niメッキ層(2−2)を形成し、実施例1と同様にして作製した第二端子リング3に圧入した。なお、金属層41はセラミックヒータ1を第二端子リング3に圧入するときに、セラミックヒータ1と第二端子リングとが当接する領域全体に形成した。また、結果の判定方法等については実施例1と同様である。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0004677140
【0052】
セラミックヒータ1に金属層41を形成した本発明品である実施例においては、素子折れが生じた比較例と同一の寸法であっても割れを生じさせることなくスムーズに圧入できた。この結果より、セラミックヒータ1側に金属層41を形成しても、端子リング3側に金属層41を形成した場合と同じ効果が得られることがわかる。
【0053】
(実施例3)
次に、メッキ法により第二端子リング3に金属層41を形成する場合であって、メッキ条件を異ならせることにより、メッキ層(金属層41)のビッカース硬度を変化させた。そして、ビッカース硬度の違いにより、どのような差異が生じるかを以下に示す方法によって確かめた。まず、第二端子リング3の内径は3.3mmに固定して作製した。この第二端子リング3の内側に、金属層41としてのNiメッキ層を種々の硬度(Hv=214〜389)に形成した。なお、Niメッキはスルファミン酸塩浴を用いて行い、電流値及び析出時間を変化させることにより異なる硬度を得ている。
【0054】
このようにして得た第二端子リング3に、セラミックヒータ1を圧入により嵌合させた。圧入時においては、セラミックヒータ1に割れ、クラック等の損傷は生じなかった。なお、本実施例3においては、3つの第二端子リング3について全く同一条件にて金属層41を形成するとともに、各々セラミックヒータ1と嵌合させて同一の試験品としている。そして、これらセラミックヒータ1と第二端子リング3との組立体のうち、1組について熱サイクル処理炉内に載置し、一方には500サイクルの冷熱処理を施し、試験炉内から取り出した。他方には2000サイクルの冷熱処理を施して、試験炉内から取り出した。冷熱サイクルは、「上記組立体に450℃での加熱処理を50分間行った後、これを室温に降温して10分間保持する」という処理を1サイクルとした。なお、同一条件にて作製した残りの1つの組立体については冷熱処理を施さずに、次に述べる強度試験の試験品とした。
【0055】
冷熱処理炉内から取り出した各組立体について、以下のようにしてセラミックヒータ1の抗折強度試験を行った。すなわち、図9に示すように、第二端子リング3をアルミ治具で保持して、セラミックヒータ1の先端部2に静荷重を徐々に与えていき、嵌合部口元40において破損にいたるまでに印加された荷重(限界荷重)を測定しそれを抗折強度とした。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
Figure 0004677140
【0057】
まず、冷熱処理を全く施さない組立体、及び500サイクルの冷熱処理を施した組立体に関していえば抗折強度に差は見出せなかった。しかしながら、2000サイクルの冷熱処理を施した組立体に関していうと、金属層41のビッカース硬度Hvが350以下である本実施例とそれ以外の比較例に明らかな差が生じた。すなわち、金属層41のビッカース硬度Hvが350以下である本実施例には、抗折強度の低下は見出せないものの、金属層41のビッカース硬度Hvが350を超える比較例には、抗折強度の著しい低下が見受けられた。冷熱サイクルを多数回繰り返すうちに、第二端子リング3がセラミックヒータに及ぼす熱応力によりセラミックヒータ1に微小なクラックが生じ、これが抗折強度の著しい低下につながっていると考えられる。しかしながら、ビッカース硬度のより低い本実施例については、上記熱応力を緩和してクラックの発生を十分に抑制し、セラミックヒータ1の強度を維持するに至っている。以上の結果より、金属層41のビッカース硬度はHv350以下にすることにより、セラミックヒータ1の強度を維持することができ、ひいてはグロープラグ50の長期にわたる信頼性を確保できるものである。
【0058】
(実施例4)
次に、金属層41を種々の厚さに変化させた場合、実施例3と同様の冷熱処理を施した後、セラミックヒータ1の抗折強度にいかなる変化が生じるかを調べた。第二端子リング3の内径は3.3mmに固定し、その内側に金属層41としてのメッキ層を実施例1と同様にして形成した。その後、実施例3と同様の方法により冷熱処理を施し抗折強度試験を行った。結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
Figure 0004677140
【0060】
得られた結果は、実施例3と類似していることが分かる。すなわち、金属層41としてのメッキ層が0.5μmよりも小さい比較例においては、2000サイクルの冷熱処理後の抗折強度低下が著しい。これは、金属層41の厚さが不足し、クラックの発生を抑制する効果を持続できなくなった為であるといえる。また、メッキ層の厚さが10μm以上である試験品には、圧入時に一部メッキ層の剥がれ落ちが確認された。これは、メッキ層を10μm以上に形成しても、メッキ工程に要する時間やコストを増大させるだけで、効果の向上は望めないことを示唆している。以上の結果より、本発明においては金属層41としてのメッキ層を0.5〜10μmの範囲内に調整して形成すれば、金属層41の備える効果を存分に発揮させることができ、さらにはコストや要する時間も抑制できるといえる。
【0061】
(実施例5)
次に、金属層41を端子リング3とセラミックヒータ1の表面に露出形成された端子リングとの間に介在させることにより、接触抵抗を効果的に低下させることが可能であることを確かめた。まず、内径を3.3mmとした第二端子リング3に、実施例1と同様の方法により、金属層41としてのメッキ層を種々の厚さに形成した。そしてこれらに、セラミックヒータ1を圧入により組み付けた。なお、本実施例4においても同一の条件にて4セットの組立体(第二端子リング3とセラミックヒータとの組立体)を作製した。そして、前述した方法により、第二端子リング3における接触抵抗を求めた。なお、同一の試験品を4セットについて、室温、400℃で100時間加熱後、500℃で100時間加熱後、600℃で100時間加熱後の接触抵抗を各々測定し、変化を調べた。結果を表5に示す。
【0062】
【表5】
Figure 0004677140
【0063】
金属層41を形成しなかった比較例については、室温での接触抵抗も実施例に比べるとやや劣り、熱処理を施すにともない次第に抵抗値が増大した。他方、第二端子リング3に金属層41を形成し、これをヒータ端子12bとの間に介在させた本実施例については、熱処理後も良好な抵抗値に保てた。これは、金属層41が形成されていることにより密着性が良くなり、接触面に空気が入り込むことが防止され、接触面での酸化が防止されるためであるといえる。
【0064】
(実施例6)
次に、金属層41としてのメッキ層が第二端子リング3の内側に形成されている場合であって、メッキ層のビッカース硬度が第二端子リング3のそれよりも大きい場合と小さい場合とでどのような差異が生じるかを確かめた。第二端子リング3の内径は3.3mmに固定、ただし、材質は新たにSUS430(Hv=230)も用意した。これら第二端子リング3の内側に金属層41としてのメッキ層を種々のメッキ浴により形成した。Niメッキ、Cuメッキについては前述のとおりである。Crメッキは、周知のCrメッキ浴を用いた。これらメッキ層の厚さは概ね3μmに調整した。各メッキ層のビッカース硬度は、メッキ条件(メッキ液の組成、印加電流)により調整した。このようにして作製した第二端子リング3の所定位置にセラミックヒータ1を圧入により嵌合させた。その後、実施例3と同様の方法により500サイクルの冷熱処理を施し抗折強度試験を行った。結果を表6に示す。
【0065】
【表6】
Figure 0004677140
【0066】
金属層41が第二端子リング3よりも硬質であるものについては、500サイクルの冷熱処理後の抗折強度は非常に低い値を示した。他方、軟質であるものは、冷熱処理後の抗折強度は良好であった。この結果は、金属層41が第二端子リング3よりも硬質であるものについては、冷熱サイクルがセラミックヒータ1に及ぼす熱応力を、金属層41が長期にわたって緩和できなかったためであることを示唆している。他方、金属層41としてのメッキ層を、第二端子リング3よりも軟質とした本実施例においては、先の実施例3でも述べたとおりの効果が発揮されている。
【0067】
以上の実験結果からも、本発明のグロープラグ50が長期にわたり高いレベルで信頼性を維持できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のグロープラグの一実施例を示す縦断面図。
【図2】図1の要部を示す縦断面図。
【図3】図1のグロープラグの製造工程の説明図。
【図4】図3に続く説明図。
【図5】分解後締め代の算出に使用する部位を説明する図。
【図6】図1のグロープラグの第一変形例を示す要部縦断面図。
【図7】接触抵抗の測定方法を説明する図。
【図8】第二端子リングの内周面領域に形成されている金属被覆層の形態を示す図。
【図9】抗折強度の測定方法を説明する図。
【符号の説明】
1 セラミックヒータ
2 先端部
3 第二端子リング(金属嵌合部材)
4 主体金具(金属嵌合部材)
10 セラミック抵抗体
11 第一抵抗体部分(抵抗発熱体)
12,12 第二抵抗体部分
12a 第一ヒータ端子(ヒータ端子)
12b 第二ヒータ端子(ヒータ端子)
14 第一端子リング(金属嵌合部材)
41 金属層
41a 嵌合面(金属層の表面)
50 グロープラグ

Claims (4)

  1. 棒状の形態を有するとともに自身の先端部に抵抗発熱体が埋設されたセラミックヒータと、該セラミックヒータの外周面に締まり嵌め状態にて取り付けられた金属嵌合部材とを備えたグロープラグにおいて、
    前記抵抗発熱体に通電するための導電性セラミックからなるヒータ端子が、前記セラミックヒータの外周面に露出形成され、
    前記金属嵌合部材と前記セラミックヒータとの間であって、該セラミックヒータと前記金属嵌合部材とが締まり嵌めによって当接する領域全体に、前記金属嵌合部材よりも軟質の金属層が形成され、前記金属嵌合部材によって前記金属層を介在させる形にて前記ヒータ端子を覆うとともにこれと導通するようにしたことを特徴とするグロープラグ。
  2. 前記金属層のマイクロビッカース硬度がHv350以下である請求項1に記載のグロープラグ。
  3. 前記金属層の厚さが0.5〜10μmである請求項1又は2に記載のグロープラグ。
  4. 前記金属層は、Cu、Ag、Sn、Ni、Cr、Zn、Pb、Au、Pd、Co及びPtのいずれかを主成分とするものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のグロープラグ。
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